モルモット亜硝酸曝露実験における肺組織影響

モルモット亜硝酸曝露実験における肺組織影響
-光学顕微鏡と電子顕微鏡による量-反応関係-
2010 年
○大山正幸1), 西村公志1), 安達修一2), 竹中規訓3)
1)
大阪府立公衆衛生研究所, 2)相模女子大, 3)大阪府立大学工学研究科
【はじめに】大気中に亜硝酸が存在する。また、亜硝酸の喘息
影響を示唆する報告がいくつかある。我々は亜硝酸の生体影響
を動物曝露実験で検討するため、亜硝酸ガス発生装置を開発し、
3.6ppm 亜硝酸と副生した窒素酸化物の曝露で肺気腫様変化な
どが起きることを報告してきた。今回は、環境中濃度レベルの
亜硝酸ではどの程度の肺組織影響があるか検討することを目
的として、モルモットに対し、複数の濃度の亜硝酸を曝露し肺
の組織学的検索により量-反応関係を調べたので報告する。
【方法】
亜硝酸ガス発生:岡らの亜硝酸ガス発生法(大気環境学会誌
45:73-80(2010))に基づき、亜硝酸ナトリウム水溶液(18mM,
6mM, 2mM)と乳酸水溶液(18mM)を混合後、直ちに曝露チ
ェンバー供給用清浄空気で多孔性ポリテトラフルオロエチレ
ンチュ-ブ内に噴霧し、チューブ外に透過する亜硝酸ガスを含
む空気を曝露チェンバーに導入した。
窒素酸化物濃度の測定:炭酸ナトリウム環状デニューダーを用
いるハーバード EPA 法で各チェンバー内空気を捕集し、イオ
ンクロマトで測定した。NO2-イオン濃度から亜硝酸濃度を求め、
NO3-イオン濃度から NO2 濃度を求めた。
動物実験:モルモット(Slc:Hartley SPF 6 週令オス)20 匹を
購入し 4 群に分け、チェンバー内で清浄空気による 1 週間のな
らし飼育の後、3 種類の濃度の亜硝酸を 4 週間曝露した(高濃
度順に H 群、M 群、L 群)
。対照群(C 群)は 4 週間清浄空気
で飼育した。
肺組織学的観察:モルモットをペントバルビタールナトリウム
麻酔下にて放血死させ、1 群 5 匹中 3 匹の肺には 20 cm 水柱圧
で中性緩衝ホルマリンを注入して固定し光学顕微鏡用標本と
した。2 匹の肺には 20cm 水柱圧で中性緩衝グルタールアルデ
ヒドを注入して固定し電子顕微鏡用標本とした。
【結果及び考察】
チェンバー内の亜硝酸濃度は低濃度順に 0.0、0.1、0.4、1.7ppm
だった。NO2 濃度は各チェンバーとも検出限界以下だった。
走査型電子顕微鏡写真を右に示す。H 群では昨年の 3.6ppm
亜硝酸曝露の実験結果で観察された気管支腔の拡張と類似の
結果が観察され、再現性を確認した。また、末梢気管支上皮細
胞の肺胞道への進展も同様に再現性を確認した。すなわち、C
群では肺胞道表面の細胞は比較的平たんな状態で観察される
のに対し、H 群では上皮細胞のはっきりとした形態が肺胞道の
深部まで観察できた。また、肺胞道表面の細胞のその様な形態
については亜硝酸ガス曝露濃度に依存した、量-反応関係が認
められた。
大気環境学会発表