中国自動車部品工業レポート

日本自動車部品工業会
中国自動車部品工業レポート
第 33 号
2006 年 5 月 24 日
注目の記事
政策
●車体への中国語標識政策をめぐる現状
「汽車産品外部標識管理弁法」により、車体後部に中国語標識を付けることが
義務付けられることに。ただし今のところ、販売への大きな影響はない模様。
●吉林省、自動車部品産業の外資進出を奨励
吉林省政府は自動車部品産業のさらなる発展を図るため、
「自動車部品の発展
加速に関する意見」を発表し、自動車部品産業への外資導入について、特別な
優遇政策を定めた。
産業
●中国自動車産業、自主イノベーションが加速
科技部の尚勇・副部長は「中国はマイカーがブームとなっている今こそ、自
主ブランド車発展の絶好のチャンス」と強調。中国地場メーカーによる自主ブ
ランド車の発展は、今後もますます続くものと予想される。
市場
●2006 年1-4月、中国の自動車輸入が大幅増に
2006 年1-4月に中国が輸入した自動車は、前年同期の2倍近くの7万 2000
台に達した。
部品
●中国の外資系部品メーカーの「独資化」が加速
中国では、自動車部品製造分野への外資の出資比率規制の廃止に伴い、デル
ファイ、マーレ、ボッシュなど外資系部品メーカーの間で「独資化」のペース
が速まりつつある。
数字で見る中国経済と自動車・部品産業
●2006 年3月の中国の経済統計
◎貿易統計
◎工業生産統計
1元=約 14 円(5月 24 日)
注目の記事
政策
●車体への中国語標識をめぐる現状
◆消費者:中国語標識を気にする人は少ない模様
北京の複数の汽車交易市場やディーラーを訪れた際、2006 年に発売されたば
かりの新車はすべて「汽車産品外部標識管理弁法」(以下、「弁法」)に従い、後
部に中国語標識を付けていることが分かった。例えば、5月1日に発売された
ばかりの新型シビックの後部右側には、
「東風本田」の中国語プレートが付けら
れている。プジョー206 や新型ジェッタなどにも、後部に中国語標識が取り付け
られた。アジア村汽車交易市場(以下、アジア村)の関係者は「メーカーは基
本的に中国政府の規定により中国語標識を付けているが、市場の売れ行きには
あまり影響していない。消費者からの問い合わせもほとんどない」とコメント
している。
「弁法」は、標識の大きさや材料についても明確に規定しているという。ボデ
ィーの長さが 4.2m を超える車種は、標識の大きさが 25mm 以上でなければなら
ず、4.2m 以下の車種については、同 20mm 以上でなければならないとしている。
各合弁メーカーは、2社それぞれの中国語名称の略称あるいは商標を合同で登
録している場合に限り、平行して(中国の)生産企業の名称を表記しなくても
よいとしている。また、乗用車や商用車については、前部・後部に付ける標識
のうち、メーカーの名称、商品商標、車種名称などが永久に消えないようにし
なければならず、ペンキによる噴射や粘着テープによる標記を禁止している。
◆ディーラー:中国語標識を付けていない在庫もまだ販売
市場では、まだ中国語標識を付けていないアウディ車が今もなお販売されて
いる。アジア村の関係者は「これらは5月1日以前にラインオフした在庫であ
る。このため市場では、中国語標識を付けている車もあれば、付けていない車
もある。しかし、この状況は少しずつ改善されるだろう」と話す。なお、アウ
ディの4S 店や多くの特許販売チャンネルでは比較的規範化されており、アウデ
ィのあるディーラー担当者は「現在、ディーラーチャンネルの新車はいずれも
“弁法”に従って中国語標識を付けており、売れ行きも順調だ」としている。
北京のある BMW ディーラーを訪れたところ、店内には中国製車種の在庫がな
くなっていた。販売員に中国語標識の件について尋ねたが、詳しくは聞いてい
ないという。また、「40 万元余りの BMW325 が同店に納車されることになってい
るが、これには中国語標識は取り付けられていない」とはっきり述べた。華晨
BMW の広報関係者は、次のように説明する。
「華晨 BMW は、
“弁法”に従って厳格に中国語表記の付記を行っており、新た
にラインオフした BMW 車にはすでに、後部右側に中国語標識を取り付けている。
ただし、
(中国語標識を取り付けた車種は)まだディーラーには届いていない」。
◆専門家:「中国語標識は中国企業の地位向上につながる」
中国汽車工業諮詢公司の賈新光・首席分析師は、次のようにコメントする。
「中国製完成車の外部に中国メーカーの企業名称の標識を付けるのは、中国
企業の地位を示すためである。これによる販売への影響は基本的にはないだろ
う。
“弁法”は主にハイエンド車を対象としており、消費者のこれらの車やブラ
ンドに対する認識はすでに成熟しているため、標識が購入活動に影響すること
はないとみられる」。
国家発展・改革委員会の関係者および中国汽車工業協会(CAAM)の関係者は
「自動車の外部標識の形態を管理する最も根本的な目的は、企業のブランド保
護意識を高めることである。同時に、中国政府が企業の自主発展を支持してい
るというメッセージを示すためでもある。上海 VW や北京現代の企業略称の標識
は、まさに“弁法”に従ったものである」と話す。
専門家の間では、中国での生産が許可されたからには、中国の標識を付ける
べきとの意見が多い。こうすることで、中国のイメージアップにつながると期
待を寄せているのである。
(2006/5/12 『北京娯楽信報』)
●吉林省、自動車部品産業の外資進出を奨励
吉林省政府はこのほど、自動車部品産業の一層の発展を図るため、
「自動車部
品の発展加速に関する意見」
(以下、「意見」)を発表。その中で、自動車部品産
業への外資導入について、特別な優遇政策を定めた。
「意見」は、2006 年より、経営期間 10 年以上で総投資額が 3000 万米ドルを
超える新設の外資系部品企業について、従来の規定に基づく「免2減3」
(注1参
照)政策の適用期間が過ぎた後、さらに3年間 15%の軽減税率で企業所得税を徴
収する(注2参照)ことを打ち出している。
「意見」はさらに、部品国有企業の株式会社化を積極的に誘導し、外資など
の資本がさまざまな形式で部品国有企業を買収、合併、再編することを奨励し、
この場合に国有企業改革の優遇政策を受けられるとしている。外資が部品国有
企業を買収することにより設立された外資系企業は、人員削減、人員の処遇、
再就職の面で、国有企業制度改革の政策を適用される。同時に、旧国有企業が
生じさせた過去の滞納税金は、関係規定に従って免除される。旧工業地帯に対
する国の支援分野に当たる外資系部品プロジェクトは、旧工業地帯の優遇政策
を受けられる。
「意見」はまた、外資系企業や海外の有名企業が全額出資、合弁などの方式
で、吉林省に部品 R&D センターを設立することを奨励し、認可を受けた外資系
の技術センターが、国内で生産できない自用のための材料、プロトタイプ、サ
ンプル、試薬を輸入する場合、関税と輸入段階の付加価値税を免除するとして
いる。
自動車部品は、吉林省で比較的大きな優位性と潜在力を持つ重要な産業で、
同省の自動車産業の発展を支える重要な力でもある。吉林省は、
「第 11 次五カ
年計画」期間中に、自動車部品産業を工業発展の「成長点」とすることをすで
に打ち出している。
(2006/5/11 『新華社』)
(注1)
「中華人民共和国外資系企業・外国企業所得税法」第8条第1項には「生産的外資系企
業で、経営期間が 10 年以上のものについては、利益が上がり始めた年から、1年目と2年目は
企業所得税を免除し、3年目から5年目にかけては、企業所得税を半分に軽減する」とあり、俗
に「免2減3」と呼ばれている。
(注2)同法第5条によると「外資系企業の企業所得税および外国企業が中国国内に設置した生
産、経営機構・場所の所得について納付すべき企業所得税は、課税所得金額に応じて計算するも
のとし、税率は 30%とする」とされている。
産業
●中国自動車産業、自主イノベーションが加速
先ごろ、科学技術部(以下、科技部)と中国汽車工程学会主催による「2006
中国自動車自主創新発展フォーラム」が北京で開催された。
中国自動車工業は、80 年代から外国メーカーの完成車技術の導入を行ってき
た。その後、経済の発展とともに、中国は自主ブランド車の開発に力を入れる
ようになった。
科技部の尚勇・副部長氏は、フォーラムで次のようにコメントした。
「中国自動車産業は、成熟しつつある。中国自動車工業の歩みは、中国の工業
体系に大きな影響を与えた。改革開放以来、中国自動車工業は急成長し、技術
レベルも飛躍的に向上した」。
「中国のトラックと大型バスの技術レベルはすでに世界レベルに近づきつつ
あり、多くの企業が自主知的財産権を有している。乗用車生産においては、外
国メーカーから先進技術を導入することで、デザイン・製造技術を向上させ、
先進的な管理・経営モデルも学んだ。中国の自主ブランドが外国メーカーのブ
ランド力に及ばないことは言うまでもないが、技術導入を通して得た成果は決
して否定できない。乗用車業界を見ると、ここ数年、奇瑞汽車、吉利汽車、長
安汽車といった中国地場メーカーが、自主ブランドの研究開発において、大き
な成果を収めている。技術水準や技術革新の面から見ても、中国はすでに自主
ブランドを主とする自動車工業の基礎を固めたといえる」。
同氏は最後に「中国は、自動車生産では世界第3位の自動車大国となり、現
在最も潜在力のある市場である。マイカーがブームとなっている今こそ、自主
ブランド車発展の絶好のチャンスだろう。もしこれを逃してしまうと、中国は
歴史的なチャンスを失うこととなる」と強調した。 (2006/5/6 『中新社』)
市場
●2006 年1-4月、中国の自動車輸入が大幅増に
2006 年1-4月に中国が輸入した自動車は、前年同期の2倍近くの7万 2000
台に達した。4月は2万 1000 台で、1-3月は5万 1000 台。税関総署が5月 12
日に明らかにした。
輸出製品をみると、機械・電気製品の輸出が大きな割合を占め、伝統的な大
口輸出製品の輸出が大幅に増加。1-4月の機械・電気製品の輸出額は、前年同
期比 32.7%増の 1587 億 2000 万米ドルで、中国の同期における輸出総額の 57.9%
を占めた。うち電器と電子製品の輸出額は同 40.2%増の 644 億 1000 万米ドル、
機械と設備は同 24.3%増の 557 億米ドル、ハイテク製品は同 34.4%増の 812 億
4000 万米ドルであった。
一方、原油と石油製品の輸出は共に減少。1-4月の原油輸出は同 2.8%減の
240 万トンで、石油製品は同 12.8%減の 420 万トンであった。
輸入製品をみると、石油製品と大豆の輸入が小幅に増加し、鋼材が大幅減と
なった。1-4月に中国が輸入した一次産品は、同 32.2%増の 585 億 3000 万米
ドルで、鉄鉱石の輸入は同 23.5%増の1億 1000 万トン、石油製品は同 3.5%増
の 1116 万トン、大豆は同 9.1%増の 798 万トン。同期に輸入した工業製品は同
19.1%増の 1819 億 6000 万米ドルで、機械電気製品の輸入は同 28.5%増の 1295
億 6000 万米ドル、鋼材の輸入は同 26.4%減の 629 万トンであった。
(2006/5/12 『新華社』)
部品
●中国の外資系部品メーカーの「独資化」が加速
自動車部品製造分野への外資の出資比率規制の廃止に伴い、中国にある外資
系部品メーカーの間では、
「独資化」のペースが速まりつつある。この半年間で
は、デルファイ、マーレ、ボッシュなど世界の自動車部品大手が中国内で 10 カ
所以上の製造拠点を立ち上げているが、そのうち 90%が独資企業となっている。
また、これらの海外部品メーカーは、独資の R&D センターの整備にも力を入れ
ており、2006 年に入ってからは、投資総額1億元以上のものだけでも3カ所設
立されている。
デルファイの関係者によると、同社は現在、中国国内に8カ所の製造拠点と
設立したばかりの R&D センター1カ所を持っているが、2005 年末から 2006 年
初めにかけて立ち上げた2つの部品製造拠点と1つの技術センターはいずれも
単独出資によるものである。中でも、独資の R&D センターが今後の発展におい
て要となる拠点であり、中国の R&D センターで開発された技術は、デルファイ
の所有になるという。
独資化のペースが最も速いエンジン部品メーカーのマーレは、すべての中国
拠点において 50%超の出資比率を持っている。そのうち、南京、重慶にあるエ
ンジン工場は完全に独資にシフトしており、立ち上げたばかりの技術センター
も独資によるもの。同社関係者によると、同社の新規投資において中国での投
資は 10%を占めるまでに至っており、しかもさらに拡大する方向にあるという。
ボッシュもまた、同社の新規投資に占める中国での投資の割合を拡大してい
く方針で、2005 年から 2007 年にかけて、中国で 6.5 億ユーロに及ぶ投資を行う
ことを計画しており、2007 年までに売上倍増を目指すとしている。
中国の外資系部品メーカーの間で「独資化」の傾向が強まっていることにつ
いて、業界アナリストは、次の2つの理由があると指摘する。第1は、中国自
動車産業の急成長に伴い、各種完成車メーカーによる部品の購入額が 800 億元
にも上ったことである。第2は、完成車製造分野ではいまだに外資の出資比率
規制が残っているが、世界貿易機関(WTO)加盟後の移行期間の満了に伴い、中
国の新しい自動車産業発展政策において、エンジン製造分野への出資比率規制
が廃止されたことである。
「海外メーカーは、独資の部品R&Dセンターと製造拠点を設立することによ
り、中国自動車業界から多くの新技術と知財を略取している」──中国汽車技
術研究中心(CATARC)の専門家はこう指摘する。中国自動車産業のバリューチ
ェーンは、部品分野にシフトしつつある。2003年の自動車業界全体の売上は9290
億元であったが、部品部門の売上は3003億元で約3分の1を占めた。2004年に
は、部品部門の売上が4400億元に増加し、完成車の売上とほぼ肩を並べるよう
になった。
(2006/4/28 『新聞晨報』)
数字で見る中国経済と自動車・部品産業
経済統計資料(2006 年3月)
貿易
資料1:中国の貿易(2006 年1-3月)
項目
単位:億米ドル
輸出入
輸出
前年同期比
(%)
輸入
前年同期比
(%)
前年同期比
(%)
3713.0
125.80
1973.04
126.60
1739.96
124.80
1567.9
123.40
819.80
124.40
748.14
122.30
352.3
112.90
197.13
113.90
155.21
111.60
1429.2
131.00
876.04
130.80
553.17
131.50
・外資系企業が投資として
輸入する設備等
67.4
100.30
-
67.42
100.30
・保税倉庫の輸出入貨物
80.5
162.90
23.84
162.80
56.64
163.00
215.6
-
56.23
-
159.38
-
貿易総額
・通常貿易
・来料加工(委託加工
貿易)・組立貿易
・進料加工貿易(加工貿易)
・その他
-
(出所)『国際貿易』
中国の 2006 年1-3月の貿易総額は、前年同期比 25.8%増の 3713 億米ドル。
そのうち、輸出総額は同 26.6%増の 1973 億米ドル、輸入総額は同 24.8%増の
1740 億米ドルで、大幅な黒字となった。
資料2:中国工業生産統計(2006 年3月)
生 産 量
前年同月比
(%)
117.8
十億元
668.0
単 位
工業生産総額(付加価値)
*うち国有及び
国有株式制企業
集団企業
株式制企業
外資系企業
原油
ガソリン
銑鉄
粗鋼
鋼材
銅材
アルミ材
自動車
〃
〃
〃
〃
千㌧
〃
千㌧
〃
〃
〃
〃
千台
247.6
109.0
22.0
336.0
191.6
15717.2
4709.5
32537.9
32889.0
38003.7
468.8
567.9
791.7
114.7
118.1
120.4
100.1
104.1
122.2
120.1
121.8
112.2
137.3
129.5
(出所)『国際貿易』
中国の3月における工業生産額は、前年同期比 17.8%増の 6680 億元。製品別
では、アルミ材の生産量の伸び率が最高で、同 37.3%増であった。