診断に苦慮した びまん性骨髄疾患の一例

診断に苦慮した
びまん性骨髄疾患の一例
ゆうあいクリニック 放射線科
川本 雅美
症例:69歳女性
• 主訴
非常に激しい腰痛
• 変形性脊椎症 あるいは 骨粗鬆症の疑いで
リハビリテーション中
• MRIで 「Th12・L3・L5に腫瘍状の病変あり」
• CTや内視鏡検査では異常所見なし
• 原発不明癌の疑いで FDG-PET/CT 依頼
前医で撮られたMRI T1強調画像
胸椎
腰椎
中部胸椎椎体や椎弓、さらに腰椎に、T1強調画像にて軽度低信号を示す病変が認められる
FDG-PET画像
FDG-PET/CT融合画像
骨(骨髄)以外には異常なFDG集積は認められない
原発腫瘍を示すFDG集積は明らかではない
CTでは・・・
骨病変はびまん性に存在する
高集積部位は骨破壊性病変として認められる
頭蓋冠のCT骨条件
内板・外板ともに小さな 抜き打ち像 がびまん性に存在しており、全体に肥厚している
通常の転移性骨腫瘍ではない
びまん性の骨・骨髄疾患か? 副甲状腺機能亢進症? あるいは・・・?
抜き打ち像 “punched-out lesion”
・・・といえば?
教科書的には せいぜい この程度
多発性骨髄腫 multiple myeloma
多発性骨髄腫 multiple myeloma
• 免疫グロブリンを産生する形質細胞の腫瘍性疾患
• モノクローナルな免疫グロブリン、すなわちM蛋白を
大量に産生するため・・・血清検査では電気泳動にてMピーク、免疫
電気泳動ではM-bowを認め・・・尿中には免疫グロブリンのL鎖
であるBence Jones蛋白を検出する
• 骨病変の存在は診断、予後の判定に重要であり、
単純X線写真で 「辺縁明瞭な溶骨性病変である
“punched-out lesion”(抜き打ち像) 」を呈するのが
特徴である
• M蛋白の早期増加や貧血、骨破壊、腎障害の進行、
β2ミクログロブリンの高値、高カルシウム血症を呈
する症例は予後不良
鑑別診断?
• 転移性骨腫瘍(多発骨転移)
– 理想的にはFDG-PETで原発腫
瘍を指摘したい!
• 副甲状腺機能亢進症
– 臨床症状や血液生化学検査
– 骨シンチグラフィ?
Increased 18F-Fluorodeoxyglucose Uptake in
a Brown Tumor in a Patient with Primary
Hyperparathyroidism
Kuwahara K et al.
The Journal of Clinical Endocrinology &
Metabolism, July, 2007, 92(7):2408-2409
副甲状腺機能亢進症 vs 多発性骨髄腫
少なくともFDG-PET画像では違いはない・・・
考 察
• 昨今、比較的容易にFDG-PET、あるいはFDGPET/CT検査を受けることが可能となった。
• 従来はFDG-PET検査まで行わずとも診断すること
ができた疾患でも、とりあえずFDG-PET検査が行
われている現状は否めない。
• 臨床症状や血液生化学検査、そして順序立てて画
像を見ていけば、早期に診断できていたであろう症
例も、最初にFDG-PET画像から入ってしまうと、か
えって診断が難しくなる。
結 語
• 最初に? FDG-PET/CT検査が施行されたが
故に、 診断に苦慮することになってしまった
多発性骨髄腫を経験した。
• ある意味で 「FDG-PET画像は非特異的」 で
あり、確定診断には単純X線写真やCTなど
従来の画像を忘れてはならない。