視覚障がい乳幼児のアセスメント について感じること 1.特殊 2.役立ち

2010/8/30
1.特殊
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眼科の診断 : 診断結果からわかること 子どもにできること
• 眼科の診断結果は正確で客観的
視覚障がい乳幼児のアセスメント
について感じること
• 眼科の診断結果は子どもへの最も低い評価を出しているかも
• 治療できない病気も多い
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機能的視機能評価(Functional Vision Assessment)
• 視覚を使って「できる」ことは何か
山本利和 (大阪教育大学)
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重複する障害 : 重複する障害を知る必要性
• 聴覚障害 肢体不自由 知的障害 発達障害 脳障害による視覚障がい
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子どもの少なさ : 少数の事例しか体験できない
• 視覚障がい児の数は少ないが、それぞれの子どもは多様
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知能検査・発達検査 : アセスメントに使える決定的な検査がない
• 人数が少ないので、検査の信頼性や妥当性を示すことができない
2.役立ちそうな知識
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視覚について
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病気と見え方との関係
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疫学
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視覚以外の障害について
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発達検査や知能検査の知識
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補助機器について
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教材について
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たくさんの視覚障がい者との出会い
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制度
3.心構え(Attitude)重視
Skills
Knowledge
Attitude
技術と知識は大切だ
が、それ以上に、教育
の目標を見失わない
心構えが大切。目標
がとらえられていない
と、技術も知識も支援
に生かせなくなる。
(例)生活が大切。だ
からコミュニケーション
技術と知識をカリキュ
ラムに組み込もう。
Willis,R. (1998)
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アセスメントの例:未熟児網膜症
機能的視機能評価
機能的視機能評価の構成
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眼科の診断結果、治療履歴、アドバイス (保護者経由)
→ 見え方を予測
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→ 行動面から長期的な確認作業
(2)視力のスクリーニング
(眼科の計測結果を、教育場面で再評価する。)
超低出生体重児の知識
→ 視覚障がい 発達障害 知的障害
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(1)背景にある情報
行動面の問題の原因は何?
(3)近見視に関連した活動
(4)遠見視に関連した活動
(5)視野に関連した活動
→ 視覚障がい? 発達障害? 知的障害?
→ 知能検査や発達検査を断片的に利用
(視野
も近見視と遠見視を考慮する と)
(視野についても近見視と遠見視を考慮すること)
(6)目の動きに関連した活動
(7)コントラストに関連した活動
(8)色の認識に関連した活動
機能的視機能評価
乳幼児を評価する時に注意する事項
機能的視機能評価(補足)
見ることの背景にある情報とは
子どもの状態、年齢、身体条件、コミュニケーション能力
(1)視機能の成熟があるので、結果的に視覚機能を過小評
価しがちになる。
(2)見えていないのか、あるいは視覚情報を処理できていな
いのか。
(3)言葉の表出能力と言葉の理解力はあるのか。
様々な文脈
日常場面の観察と正式の検査
課題を繰り返すことの効果
環境
検査実施の時間、光の状態、その他の環境
評価結果の応用
(4)課題を なすだけの身体機能や体力を持 ているのか
(4)課題をこなすだけの身体機能や体力を持っているのか。
(1)他の指導への照会
(5)検査課題を見ようとするだけの動機づけがあるのか。注
意を引き出しているのか。
(2)環境作りへの提言
(6)課題と活動との関連性。
歩行訓練、作業療法 など
シンボルの使用、採光、教材との距離、
教材を提示する角度 等
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機能的視機能評価
低出生体重児と発達障がい等との関係
例:乳幼児の場合
目を合わせることができるのか?
視覚的コミュニケーションはあるのか
コミュニケ ションを増やす方法はあるのか
コミュニケーションを増やす方法はあるのか
ベッド脇のモビールや絵を見ることができるか?
絵などの位置は適切か
光る玩具が必要か?
他のおもちゃには興味がないのか
頭を動かして見ようとするか?
頸の筋肉を動かす動作はでたか
自分の手がよく見えているか?
みせるための工夫をしているか。
見たい物に焦点を合わせられるか?
認知発達の遅れや、小児自閉症の可能性はあるか。メガネは有効か。
小さなものがつまめるか?
絵がわかるか?
実物と絵の関係がわかるか。
金澤忠博 他(2004) 児童発達心理の立場から見た低出生体重児の予後
750g以下で生まれた子どもには顕著
な障害が伴う可能性が高くなる。
アセスメントの例:水頭症
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視神経萎縮
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脳障害は
→ 中心視野障害の恐れ :細かな物がわかる? 色覚は?
25%
20%
15%
10%
5%
0%
痺
→ 皮質視覚障害が伴う場合、視覚障害は視覚系だけの問題
でないかもしれない
害
麻
害
障
性
障
的
75
7 5 0 0 g以 下
g~
出産
期 産 149
9 g出
産
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機能的視機能検査
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発達検査
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長期的関わりと適切な個別の移行計画
重
度
視
覚
知
脳
満
Hack et al.(1994)
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中枢性異常による視覚障がい乳幼児の
視反応を促進する方法
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(Groenveld, Jan, & Leader, 1990)
指標の種類と提示の順序
• 1.光刺激・方向性を持たない運動反応の様相
• 2.光源への方向性を持つ視反応の様相
• 4.水平方向追視が持続し安定する様相
訓練の成果
26人 距離知覚に改善があった。しかし重度な知覚障害が残った。
• 5.垂直方向での追視反応が発生してくる様相
追 が
追視がしやすくなる条件を整えておくと眼球偏位が減る
整
が
• 姿勢負荷を最小にする
1人以外に重複障害があった
知的障害、脳性麻痺、てんかん、水頭症、聴覚障害
• 3.水平方向での追視反応が飛び飛びに発生する様相
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皮質視覚障害と診断された123人の子どもの
医学的経過のレビュー
97人 3~10フィートの距離で物を見ることができるようになった。ただし、反応に
は一貫性がなかった。
単純な指標やなじみ深い指標を使う
• まばたきが出ない時には指標を提示しない
等々
今野正良・渡邊文章・唐木剛(1999)
脳性麻痺児に視覚障害が出現する割合
視覚認知障害
Scheiman (1990)
斜視
弱視(amblyopia)
屈折異常
眼振
視神経萎縮
15~60%
6~16%
19~69%
2~ 9%
2~17%
脳性麻痺児での視覚に関する問題発生率はノーマルよりも78%以上多い
これは知的状態と特に関連しているわけではない。 Duckman(1979)
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Anton症候群
病態失認
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視覚失認
提示された物品が何であるかわからない
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色彩失認
色覚はあるが名前を言えない
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相貌失認
誰の顔かがわからない
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地誌的障害
建物が認知出来ない・地図が書けない
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Bálint症候群
注意が一つにしか向かない など
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視覚性運動失調
周辺視野で対象を視覚的に捉えられない
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構成障害
構成する物の空間的関係が正しく作れない
など
武田克彦・宮森孝史(2002)
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知的障害児(0~6歳)の屈折異常:
ダウン症児での発生率が高い
屈折異常
(遠視性・近視性)
全体
42.2%
経過観察
聴覚障害と視覚障害
問題なし

31.5%
28.3%
自閉症児
3.8%
36.5%
57.7%
ダウン症児
77.5%
19.2%
2.5%
その他児童
30.7%
35.5%
30.7%
ろう児での視覚障害の発生率は高い
38~76%

(ノーマル1%)
Scheiman(1990)
聴覚障害児(2-14歳)54人の調査
Siatkowski, Flynn, Hodges, &Balkany(1994)
視覚に異常 61% (屈折異常が44%) 斜視、付属器異常、白内障も
あった
原因
風疹網膜症;アッシャー症候群;網膜色素変性症;ワルテンベルグ症候群、
虹彩異色〔症〕
佐島(2000)
ダウン症児には 白内障、斜視、眼振、睫毛内反が同じくらいの
割合で出現ダウン症児以外では斜視が多い。
視覚聴覚二重障がいの原因疾患と発生する障害
発生する主な障害
視覚障害
Usher Syndrome
聴力低下と網膜色素変性
症 進行性
網膜色素変性症
Goldenhar Syndrome
眼と耳と脊椎の異常 顔
面顎の低形成
乱視 視野欠損 眼振 斜視
網膜剥離 眼窩の小ささ
Hurler Syndrome
聴覚と視覚異常 特異な
相貌 知的・身体障害
進行性
角膜白濁 網膜変質
blindspotの発生
CHARGE Association (C)虹彩、網膜、脈絡
膜欠損 (H)心臓欠陥
(A)後鼻孔閉鎖症(R)
成長の遅れ (G)生殖
器異常 (E)聴覚異常
技術
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点字
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歩行指導

補助具の指導
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使われている技術を知っているとアセスメントが技術に生かし
やすくなる。
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結局、アセスメントを行う場合には、障がい児をどのように育
てるのかというヒューマニスティックな態度が重要になる。
など
虹彩、網膜、脈絡膜欠損 視
野障害(上部視野欠損)
Congenital Rubella
風疹ウィルス感染 難聴、 白内障 緑内障 角膜混濁
白内障、動脈管開存症、 網脈絡膜炎 小眼球 斜視
知的障害 他
Brain Trauma or
Damage and CVI
脳の機能低下
脳障害に起因する視覚障害
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