知的障害 Q45 1 性に関する指導では、どのように考えて指導したらよいですか。 小学校低学年から意識した指導 ○ 知的障害児に対する性に関する指導を難しくする大きな要因は、知的発達のスピードと身 体発達のスピードにギャップがあることです。例えば、幼稚園の男の子がデパートのトイレ でズボンを下ろしてお尻を出して用を足していてもおかしくないですが、同じ知的発達の程 度でも中学生がしていたらびっくりするでしょう。知的な発達を待ってから指導をしたので は遅いのが、この性に関する指導です。 ○ 「手を洗う」「下着を取り替える」なども、広い意味で性に関する指導といえます。「日常 生活の指導」で取り上げていることの多くが、性に関する指導へとつながっていくものとし て見直してみてください。 2 生活習慣からのアプローチ ○ 一つ一つの行動様式を覚えるのに時間がかかる子どもたちです。障害の重い子どもたちの 場合、女の子には早い時期からお尻を拭くのは前から後ろに拭くように習慣化させるなど、 先を見通した日常生活での動作が身につくようにしていきます。 3 身近な事柄との関係 ○ 生物学的な知識のみを知らせるのではなく、「自分の誕生」 「家族」「自分の将来」など身 近な事柄との関係を通して指導しましょう。 ○ 性に関する指導は人間教育であり、道徳の領域をも含みます。 4 ソーシャルスキルとしてとらえた性に関する指導 ○ 正しい知識とともに心を育てることが大切なのが性に関する指導ですが、知的障害児の場 合、具体的な人間関係の中でどのように振る舞えばよいかといった技能(ソーシャルスキル) を高めてやることも大切です。 ○ 同じ友達でも同性と異性では接し方が異なりますが、同じように振る舞う子どもたちもい ます。好意を抱いている相手にしつこく接して嫌われてしまう子どもたちもいます。このよ うに人の気持ちを感じ取ることが苦手な子どもたちには、そのようなとき相手がどんな気持 ちになるのかを理解する学習と同時に、どのような振る舞い方をすれば相手に嫌われない、 あるいは、好かれるのかといった行動の仕方を身につける学習などが必要です。 ○ 特に自閉的傾向のある子どもたちは、人の気持ちを察するということが特に苦手です。で すから、相手がどんな気持ちになるのかを理解する学習を徹底していくことはかえって苦痛 になるだけです 。「こんな状況のときには、こんな行動は×(バツ)、こういう行動をするの が○(マル)」といった技能として指導する方が、問題の解決に近いでしょう。 5 性犯罪被害の防止という視点 ○ 近年は性犯罪被害に遭う危険性が増えているようです。そのよ うな危険から身を守る術を指導する必要も高まっています。 ○ 言い聞かせるだけでは指導としては不十分です。具体的な場面 設定をした中で、具体的な行動を判断して選ぶ学習を用意すると 確実に身につくことが多いです。 -1-
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