成形プラスチック歯車ガイド

LNP*特殊コンパウンド
成形プラスチック歯車ガイド
2 SABICイノベーティブプラスチックス
はじめに
プラスチック歯車はさまざまな用途において、従来の金属歯車に代わる
重要な部品となっています。プラスチック歯車の利用は、伝達トルクの
比較的低い精密機器から、より高い動力伝達が求められる用途へと拡大
しています。設計者たちがプラスチック歯車の用途の限界を広げていく
につれ、プラスチックの持つ諸特性を歯車に有効活用する道がより開か
れてきました。
プラスチック歯車には、金属歯車に比べて多くの利点があります。重量
も軽く慣性も低い上、金属歯車よりはるかに静かに動作します。プラス
チック歯車は多くの場合、潤滑剤を必要としません。あるいは、PTFEや
シリコーンのような内部潤滑剤を添加して改質することもできます。プ
ラスチック歯車は通常金属歯車よりも単価が安く、組立品に必要な他の
機能と併せて部品点数を削減する事も可能です。また、さまざまな腐食
環境に対する耐性もあります。
最初に熱可塑性プラスチックに置き換わった歯車
は、低速/低負荷条件で回転する、ナイロンやアセ
タールの歯車でした。熱可塑性プラスチック歯車
の利点が明らかになり、より高性能な新素材が開
発されるにつれ、設計技師たちはプラスチック歯
車をより難しい用途にも使用し始めました。こう
いった新素材に強化材や内部潤滑剤を添加するこ
とで、用途はさらに広がりました。
しかし歯車への熱可塑性プラスチック素材の利用
は、負荷容量や摩耗性能に関する実証済みデータ
(少なくとも金属素材に対して比較された、歯車
や素材の性能について容易に入手できるもの)が
ないために、その用途展開が妨げられました。金
属歯車に関しては、無数の既存用途についてデー
タが収集され、その性能も実証されており、それ
らは多くの歯車設計技師の間で十分に認知されて
います。歯車の素材としての熱可塑性プラスチッ
クの利用は始まってまだ日が浅いため、各荷重条
件におけるデータが十分に蓄積されておらず、さ
らに熱可塑性プラスチックの独特な機械的特性お
よび熱的特性から、この値をすでに発表されてい
るデータから導き出そうとした研究者たちの努力
も失敗に終わりました。
それでも、熱可塑性プラスチックをギアに使用す
る場合にそれが技術的に可能かどうかを推定する
ための一定のガイドラインは存在します。このガ
イドラインに含まれる手法の多くは、もともと金
属素材について生成された方程式から発達したも
のであるため、熱可塑性プラスチック素材特有の
性質の一部は考慮されていません。
本書では、これらの方程式および手法を使用して
熱可塑性プラスチック歯車を評価する際に考慮
すべき重要なポイントのいくつかを明らかにして
いきます。内容は主に平歯車を対象としています
が、基本的なポイントは他の種類の歯車にも適用
可能です。
目次
歯車の種類と配置
4
歯車の動作
5
歯車設計における応力分析のプラスチック歯車
への適用
• 曲げ応力
• 安全係数
• 接触応力
7
成形プラスチック歯車の基本設計
• 歯部の設計
• 歯車における部品設計全般について
• 歯車のレイアウト
• 組立部品
• 部品点数の削減
8
テスト
15
歯車の故障メカニズム
16
素材
• 内部潤滑剤
• 強化材
• 歯車における素材の組み合わせ
• プラスチック歯車同士の摩耗
• 高い温度環境で使用される歯車
17
歯車の加工方法
• 歯車の精密度に対する素材の影響
• 金型の設計と歯車の精密度
• 成形条件の影響
21
SABICイノベーティブプラスチックス 3
歯車の種類と配置
歯車の種類と配置
歯車には多くの種類がありますが、最も簡単な歯
車の分類は、軸の交わり方による分類です。歯車
が平行軸で噛み合うためには、スパーギア(平歯
車)またはヘリカルギア(はすば歯車)が必要で
す。軸が直角に交差する場合は、通常ベベルギア
(かさ歯車)およびウォームギアが使用されま
す。軸が交差も平行もしていない場合は、食い違
い軸のヘリカルギア、ウォームギア、ハイポイド
歯車およびらせん歯車が使用されます。最も一般
的なプラスチック歯車はスパーギア、ヘリカルギ
ア、およびウォームギアですが、必要に応じてそ
れ以外の種類のものも使用されます。
歯車は1個では役に立たないため、必ず対で使用
されます。2つの歯車の歯をかみ合わせると、一
方の歯車の回転によって他方の歯車も回転しま
す。2つの歯車の直径が異なる場合、小さいほう
の歯車(小歯車、ピニオン)は大きいほう(大歯
車、ギア) よりも速く、より小さい回転力で回り
ます。
平歯車は、円筒形をした形状で、歯車の歯すじが
歯車軸と平行になります。歯が軸の外方向を向い
ているものは外歯車です(図1)。歯が軸側を向いて
いるものは内歯車です(図2)。平歯車の構造は比較
的単純で、製造が容易です。平歯車はベアリング
にラジアル荷重のみを発生し、さまざまな噛み合
い状態で稼動できるため、取り付けも比較的容易
になっています。大部分の設計技師は20°の圧力
角を使用していますが、14.5°も一般的です。圧
力角が20°以上の場合、より高い負荷容量を実現
できますが、動作の滑らかさや静音性は損なわれ
ます。
はす歯車(ヘリカルギア)は平歯車に似ていま
すが、歯すじが歯車軸に対して斜めになってい
ます(図3)。実際、歯すじのらせん角度が0°のは
すば歯車が平歯車です。はすば歯車は高速かつ
高負荷の動作環境で使用されます。単純なはす
ば歯車はベアリングにラジアル荷重とスラスト
荷重の両方を発生させるため取り付けも容易で
はありませんが、一般的に平歯車よりも動作が
静かかつ滑らかです。多くの場合、歯すじの向
きが逆のヘリカルギアを同一の軸に取り付ける
ことでスラスト荷重を相殺します。この歯車は
ダブルヘリカルギア(やまば歯車)と呼ばれま
す(図4)。
図1スパーギア(平歯車)
図2スパーギア(内歯車)
図3ヘリカルギア(はすば歯車)
図4へリングボーン(やまば)歯車
図5ストレートベベルギア(すぐ
ばかさ歯車)
図6フェイスギア
図7ウォームギア
図8円筒ウォームギア
図9鼓形ウォームギア
4 SABICイノベーティブプラスチックス
歯車の動作
かさ歯車(べベルギア)は円錐形で、歯は円錐の
頂点方向へ行くほど厚みも減り高さも低くなりま
す。歯の幅は一方の端では広く、他方の端では狭
くなっています。歯の寸法は幅の広い側を基準に
表示されますが、強度は歯車の中央部分を基準に
計算されます。
もっともシンプルなかさ歯車は、ストレートか
さ歯車(すぐばかさ歯車) です (図5)。この歯車は
90°に交差する軸に多く使用されていますが、実
際どのような角度でも利用できます。この歯車は
スラスト荷重とラジアル荷重の両方を発生させる
ため、正確に動作させるには精密な取り付けが必
要となります。プラスチックのかさ歯車はあまり
一般的ではありませんが、徐々にその用途が研究
されだしています。その他のかさ歯車には、まが
りばかさ歯車およびゼロールかさ歯車がありま
す。
フェイスギアは、歯車の表面に歯が刻まれた特殊
な歯車です(図6)。フェイスギアの歯の先端は、歯
車の軸と同じ方向を向いており、平歯車またはは
すば歯車とかみ合わせるものです。かさ歯車の場
合と同様、2つの歯車の軸は交差する必要があり、
軸角は通常90°になります。
一般にウォームギアと呼ばれる歯車には3種類あ
ります。ウォームギアは交差も平行もしない軸に
取り付けることができますが、最も一般的な配置
は交差しない90°の軸です。ウォームギアの特徴
は、一方の歯車にねじ山があることです。この部
分が、ウォームと呼ばれます (図7)。これとかみ合
う歯車がウォームギアと呼ばれるものです。
プラスチック歯車装置の場合、金属(プラスチッ
クの場合もあり)のウォームをプラスチックの
ヘリカルギアと組み合わせるのが非常に一般的で
す。この配置は実際、食い違い軸のヘリカルギア
と呼ばれます。食い違い軸のヘリカルギアは、交
差しない軸に取り付けるもので、歯車同士は一定
の角度(通常 90°)をとる配置になります。食い違い
軸のヘリカルギアは、ラジアル荷重とスラスト荷
重の両方がベアリングにかかります。
食い違い軸のヘリカルギアは、軸間距離および軸
角が多少変化しても、歯車精度を維持する事がで
きるのが特徴で、最も取り付けやすい歯車の1つ
となっています。ただし歯折れ無く、一定期間の
使用に耐え、ある程度摩耗された状態になれば点
接触であったものが円筒ウォームギアに似た線接
触に変わるため、負荷容量も増大します。これは
金属ウォームをプラスチックのヘリカルギアと組
み合わせる理由の1つです。ヘリカルギアが先に
摩耗し、ほぼウォームギアと同じものになるから
です。また金属ウォームをプラスチックのウォー
ムギアやヘリカルギアと組み合わせる別の理由に
は、プラスチックウォームとウォームギアの組み
合わせの場合に起こりやすい大量の発熱を抑えら
れることにあります。プラスチックのウォームギ
アが熱により損傷することは珍しくありません。
本来のウォームギア装置は、円筒ウォームギアま
たは鼓形ウォームギアと呼ばれるものです。円筒
ウォームギア装置のウォームギアはねじれた形状
をしており、ナットがねじ山にかみ合うようにこ
のギアがウォームとかみ合って回転します(図8)。
これによって接触面積が増え、負荷容量もヘリカ
ルギアに比べて2~3倍に増加します。鼓形ウォー
ムギアでは、ウォーム(図9)とウォームギアの両
方がねじれた形状をしており、互いにかみ合う構
造になっています。鼓形のウォームまたはウォー
ムギアは製作が非常に難しいため、一般的にはウ
ォームとヘリカルギア(食い違い軸のヘリカルギ
ア)の組み合わせが多く使用されています。
歯車の動作
プラスチック歯車に生じる応力についての分析を
行うには、まず歯車の動作について理解する必要
があります。歯車のそれぞれの歯は事実上、一方
の端で支えられている片持ち梁であるといえま
す。接触点からは、この梁を曲げて部品本体から
もぎ取ろうとする力がかかります。そのため歯車
の素材は、高い曲げ強度と硬度を備えている必要
があります。
次に発生する力は主として表面上の力です。歯の
表面上で、摩擦力および点接触や線接触による応
力(ヘルツ接触応力)が発生します。歯車が動く
と、それぞれの歯は互いの上を転がりながら滑っ
て離れることをくり返します。歯同士がかみ合う
と、最初の接触荷重が発生します。歯車の転がり
運動により、接触応力(特殊な圧縮応力)が接点
の先へ押されていくと同時に、かみ合いの際に接
触する時間の長さは歯の部位によって異なるた
め、滑りが発生します。このため摩擦力が発生
し、それによって接点のすぐ後ろに引張応力の領
域が生まれます。図10の矢印のうち「R」と示し
てあるものは転がりの方向を、「S」は滑りの方
向を表しています。この2つの動きが逆方向にな
っている部分は、発生する応力が最も問題となる
部分です。
図10aは、歯車がちょうど接触した時点を表した
ものです。駆動歯車の「1」のポイントでは、素
材には転がり運動によってピッチ点方向への圧縮
力が、さらに滑りによる摩擦抵抗によってピッチ
点と逆方向への張力がかかっています。この応力
の組み合わせにより、表面の亀裂、疲労、および
発熱が起こる場合があります。これらはすべて著
しい摩耗を引き起こす要因となるものです。
SABICイノベーティブプラスチックス 5
歯車の動作
従動歯車の「2」のポイントでは、転がりと滑り
の運動はいずれも同じピッチ点の方向に向かって
います。この場合、「2」のポイントには圧縮力
(転がり運動によるもの)が、「3」のポイント
には張力(滑りによるもの)がかかっています。
これは駆動歯車側ほど過酷な状況ではありません。
図10a
接触の開始時
従動歯車
図10bは2つの歯車の接触が終わるところです。転
がりの向きは同じですが、滑りの方向は変わって
います。ここでは「4」のポイントに圧縮力(転が
りによる)と張力(滑りによる)の両方がかかっ
ているため、従動歯車の基盤が最も高い負荷を受
けています。「5」のポイントには圧縮応力が、「
6」には引張応力がかかっているため、駆動歯車の
先端はそれほどの負荷を受けていません。
滑り応力はピッチ点で方向を変え、滑り運動のゼ
ロ点が形成されます(純転がり)。歯車のこの部分
には表面上の欠損が最も生じにくいだろうと思わ
れるかもしれませんが、現実にはピッチ点は最初
に深刻な欠陥が発生する部位の1つです。ピッチ
点では組み合わせ応力は発生しませんが、高い単
位荷重がかかります。歯車の接触の開始時または
終了時には、前または次の歯に荷重の一部が分散
されるため、単位荷重は軽減されます。最大の点
荷重は、歯車同士がピッチ線またはピッチ線のや
や上で接触するときに発生します。この点では通
常、一対の歯が荷重のすべてまたは大部分を支え
ることになるため、これが疲労による破損、高い
発熱、歯面の劣化などにつながる場合があります。
ピッチ線
ピッチ線
駆動歯車
図10b
接触の終了時
従動歯車
ピッチ線
ピッチ線
駆動歯車
6 SABICイノベーティブプラスチックス
歯車設計における応力分析のプラスチック歯車への適用
歯車設計における応力分析のプラスチッ
ク歯車への適用
歯車の最も重要な部位は歯の部分です。歯がなけ
れば歯車は単なるホイールであり、運動や動力を
伝達するための役には立ちません。歯車の耐荷重
性を測定するための基本的な方法は、歯車の歯の
強度を測ることです。歯車のプロトタイプを作成
することは常套手段ですが、費用も時間もかかる
ため、歯車の実現可能性を判断するための何らか
の手段が必要になります。
曲げ応力
ピッチ線で荷重を受けた際に標準的な歯車の歯に
かかる曲げ応力は、ルイスの式で次のように計算
できます。
解説
Sb
F
Pd
f
Y
=
=
=
=
=
曲げ応力
ピッチ線における歯の剪断荷重
直径ピッチ
歯幅
ピッチ点に荷重がかかったプラ
スチック歯車ルイスの歯型係数
テストの結果、歯への最も大きな負荷は、ピッチ
線に接線方向への荷重がかかり、接触している歯
が1対に近付いた際に発生します。また装置に必
要な馬力がわかっている場合には、次の方程式も
有効です。
解説
HP =
D =
w =
馬力
ピッチ円直径
速度(rpm)
さらに次のようなルイス方程式の一種は、ピッチ
線速度およびサービスファクタも取り入れています。
解説
y
=
V =
Cs =
歯の先端におけるルイスの歯型
係数
ピッチ線速度(fpm)
サービスファクタ
歯車の入力トルクおよび負荷サイクルの質を示す
サービスファクタの一般的な値は次のとおりです。
表1サービスファクタ
24
8-10
断続的
不定期
時間/日
時間/日
3時間/日
1/2時間/日
不変
1.25
1.00
0.80
0.50
軽度衝撃
1.50
1.25
1.00
0.80
中度衝撃
1.75
1.50
1.25
1.00
重度衝撃
2.00
1.75
1.50
1.25
負荷の種類
どの応力方程式でも、許容応力( Sall)の値を
Sbに代入して他の変数を解くことができます。安
全応力(許容応力)は一般的なデータシートの応
力レベルではありませんが、標準的な形状の歯を
持つ歯車の素材を実際にテストして判定された許
容応力の値です。許容応力の値には素材の安全係
数が組み込まれています。どのような素材でも、
許容応力のレベルは次のような多数の要素に大き
く依存します
• 寿命サイクル
• 稼働環境
• ピッチ線速度
• 対向する歯面の状態
• 潤滑の有無
許容応力の値は強度の値を素材の安全係数で割っ
たものと等しいため(Sall = S/n)、これは歯車
の安全係数について考える際に有効なポイントで
す。安全性とは、部品が耐用年数全体にわたって
故障なく正しい機能を果たすための性能を意味し
ます。安全係数を決めるには、まず用途ごとの機
能、耐用年数、および部品の欠陥について定義す
る必要があります。
安全係数はさまざまな方法で定義できますが、基
本的には許容される事柄と欠陥を引き起こす事柄
の関係を表す数値といえます。安全係数の基本的
な適用方法は3種類あります。係数全体を強度な
どの素材特性に適用するか、係数全体を荷重に適
用するか、または個々の係数を個別の荷重や素材
特性に適用するかです。
この中で最も有用なのは、多くの場合最後の方法
です。個々の荷重を検討してから安全係数を適用
して、絶対的な最大負荷を判断することができる
からです。その後それぞれの最大負荷の値を使用
して応力解析を行い、幾何学的条件と境界条件か
ら許容応力を算出します。許容応力の限界値は、
強度の安全係数を実際の使用条件下における素材
の強度に掛け合わせて計算します。
負荷の安全係数は従来式の方法で求めることがで
きます。しかしプラスチック素材の強度の安全係
数は、多くの場合計算が容易ではありません。こ
れはプラスチックの強度の値が定数ではなく、実
際の使用条件下における強度の値の統計的分布で
あるためです。そのため設計技師は、たとえば温
度、歪み、負荷持続時間などという、実際の使用
SABICイノベーティブプラスチックス 7
成形プラスチック歯車の基本設計
条件を理解する必要があります。ウェルドライン
の状態、素材の持つ異方性の影響、残留応力、加
工方法による特徴などを理解するには、製造加工
に関する知識も必要です。中でも最も重要なのは
素材に関する知識です。これは実際の使用条件下
における素材の特性をよく理解するほど、より正
確な安全係数を確立できるため、結果的に最適な
部品形状を判断することが可能になるからです。
定義が甘く不明要素の数が多いほど、大きな安全
係数の値が必要になります。用途を十分に分析し
た場合でも、安全係数は最低でも2にすることを
お勧めします。計算済みの許容応力データが存在
しない場合は(プラスチック素材の場合は通常存
在しませんが)、歯車の設計技師は前述のあらゆ
る要素をできる限り慎重に考慮して、適切な安全
係数を設定しSallを算出する必要があります。類似
の実験データが存在してもしなくても、必ずプロ
トタイプの金型を製作し、予想される実際の使用
条件下で歯車のテストを行ってください。
接触応力
前述の方程式はいずれも、歯車の歯を曲げて部品
本体からもぎ取ろうとする応力を算出するための
ものでした。この力が加わることで、静荷重や疲
労により歯車の歯が折損します。この他の力とし
て、我々が歯車動作を調べているときに観察した
もののなかに、歯の接触と歯同士の相対的な運動
によって表面応力を発生させたものがありまし
た。このような応力により、歯車の歯表面の破損
や摩耗が起こります。十分な耐用年数を確保する
には、動的な表面応力が素材表面の許容限度の範
囲内になるように歯車を設計する必要があります。
次の方程式は、2つのシリンダー間の接触応力に
関するヘルツ理論から導き出され、さらに歯車装
置特有の表記法を採用して修正されたものです。
解説
SH
Wt
Dp
µ
E
ø
m
N
=
=
=
=
=
=
=
=
表面の接触応力(ヘルツ応力)
伝達される負荷
ピッチ円直径、ピニオン
ポアソン比
弾性率
圧力角
速度比、Ng/Np
歯数
8 SABICイノベーティブプラスチックス
下付き文字「p」および「g」は、それぞれピニオ
ン(pinion)と駆動歯車(gear)を表します。まず歯車
の表面の接触応力を算出し、次にそれを素材表面
の疲れ限度値と比較します。ただしプラスチック
素材の場合、このデータが存在することは滅多に
ありません。このような種類のデータを得るため
の最良の方法はやはり、使用条件下で実際に多数
の歯車の稼動テストを行ってみることです。ただ
しこの計算からは、素材の純粋な圧縮強度(この
データは容易に入手できます)に対して歯車表面
がどの程度の応力を受けるかをある程度理解する
ことができます。
成形プラスチック歯車の基本設計
歯部の設計
金属歯車の歯切りのためのホブは広く販売されて
いるため、市販の既製歯車を設計する技師は経済
的な理由から、それ以外の歯の形状を採用するこ
とはめったにありません。ただし射出成形による
歯車では、材料固有の収縮分の補正を考慮に入れ
る必要があるため、金型を製作する際には、材料
収縮に見合った個別の金型設計が必要となるた
め、このような標準的ホブを使用する必要はあ
りません。標準的な圧力角のホブを使用して金
型の切削を行うと、素材の成形収縮によって歯の
形状に深刻な欠陥が発生します。そのため設計技
師は、歯車の性能を最大限に高めるためさまざま
なテクニックを駆使する必要が有ります。プラス
チック歯車の歯にはさまざまな形状が存在します
が、いずれもプラスチックの設計における基本技
術を駆使してデザインを最適化しています。
プラスチック歯車に最もよく使用される修整法
は、高い負荷を受ける金属歯車の修整法から発展
したものです。最も一般的に行われる基本的修整
は、歯元フィレット半径の修整、歯先の修整、ア
ンダーカットの除去、および円弧歯形歯車の歯厚
バランスの補正です。
歯元フィレット半径の修整
プラスチック成形部品の場合、尖った角は応力集
中を増大させるため望ましくありません。歯車の
歯同士の間をフィレット処理すれば、角を丸める
とともに負荷を最大20%以上減少させることがで
きます。フィレット処理はあらゆるプラスチック
歯車で行う必要があります。
歯先の修整
歯が荷重によって曲がると、次に回ってくる歯の
邪魔になる場合があります。これは大きな荷重を
受ける金属歯車に見られる現象ですが、程度の差
はあるもののほとんどのプラスチック歯車にも見
られます。この種の障害は騒音や過剰な摩耗を引
き起こすだけでなく、滑らかで均一な動作が損な
われる原因にもなります。この曲がりを抑制する
には、歯の中ほどから上を先端に向かって細く加
工します。この修整は大きな荷重(その素材にと
って)を受ける歯車に最も有効であり、プラスチ
ック歯車には必ずしも必要とは限りません。
アンダーカットの排除
歯数の少ない歯車では、歯元の部分にアンダーカ
ットが発生することがよくあります。これは歯車
の強度を著しく低下させるため、プラスチック歯
車では発生を防止する必要があります(図13)。
円弧歯形歯車の歯厚バランスの補正
かみ合う2つの歯車の歯が標準的に設計されてい
る場合、歯数の少ないほうの歯車(ピニオン)の
歯は、歯元の部分が駆動歯車の歯よりも細くなり
ます(図14)。ピニオンは駆動歯車ほど大きな負荷
を伝達することはできず、デザイン上の脆弱箇所
となります。歯車装置の負荷容量を最適化するに
は、円弧歯形ピニオンの歯の厚みを増やし、逆に
円弧歯形駆動歯車の歯の厚みを減らす必要があり
ます(図15)。
これらの修整を取り入れたプラスチック歯車の
2種類の歯形は、AGMA PT歯形(図16)とISO R53修
整歯型(図17)です。この2つの歯形は根本的には
同じものであり、名称が異なっているだけです。
ISO歯形はメートルモジュール(m)を使用している
のに対し、AGMA PT歯形は直径ピッチ(Pd)を使用
しています。この2つの歯形は便利ですが、唯一
の選択肢というわけではありません。この他のデ
ザインも活用して、それぞれの用途に最適な歯車
装置を作成することができます。
図13
アンダーカット
図14
標準的なピッチ円直径32のピニオ
ンおよび駆動歯車
アンダーカット アンダーカットなし
• 歯の強度低下
• 動きの連続性の
阻害
• 摩耗の促進
歯数13
歯数60
歯の強度のバランスが悪い
図15
歯数13
歯数60
歯の強度のバランスが良い
図16
AGMA PT歯形
P = 直径ピッチ
a = 歯先
p = 円ピッチ
h = 歯元部のうち歯元半径
の曲線開始点までの直
線部分の高さ
b = 歯元
20° = 圧力角
ht = 歯の高さ
rf = 歯元半径
図17
修整されたISO規格の基本的ラック
m = モジュール
a = 歯先
p = 円ピッチ
h = 歯元部のうち歯元半
径の曲線開始点まで
の直線部分の高さ
b = 歯元
20° = 圧力角
ht = 歯の高さ
rf = 歯元半径
SABICイノベーティブプラスチックス 9
Overall part design
成形プラスチック歯車の基本設計
これらの修整を行う際は、方程式で歯の曲げ応力
および許容応力を少々調整する必要があります。
歯の厚みを修整した場合は、標準的な歯厚のルイ
スの歯型係数に、標準的な歯厚に対する修整した
歯厚の比率を掛け合わせます。
歯車における部品設計全般について
前述の歯の修整法は歯車の歯の設計に関するもの
ですが、同時にプラスチック部品の設計に関する
基本的ガイドラインから派生したものでもありま
す。そのためプラスチック部品を設計する際は必
ず、これらのルールを念頭に置く必要がありま
す。またプラスチック歯車はなんらかのプラスチ
ック部品に取り付けられるものであるため、装置
全体の設計にも必ずこのルールを適用してください。
基本肉厚
優れたプラスチック部品の設計における最も重要
な要素の1つは基本肉厚です。基本肉厚は部品の
形状を支える基本的な要素です。基本肉厚は部品
の強度、コスト、重量、および精度に影響を与え
ます。一般的な射出成形法は、部品の基本肉厚が
0.762~5.08ミリ(0.030~0.200インチ)の範
囲内である場合に最も有効です。射出成形プラス
チック部品に平均肉厚などというものは存在しま
せんが、一般的な厚みは3.175ミリ(0.125イン
チ)です。また基本肉厚を変更する場合は、収縮
率の低い素材なら25%以内、収縮率の高い素材な
ら15%以内の変更にとどめることが非常に重要で
す。それ以上の大幅な肉厚変更が必要な場合は、
数段階に分けて行う必要があります(図18)。肉厚
の大幅な変更にともなう最大の問題は、厚い部分
が薄い部分よりも冷却に時間がかかるためより多
く収縮することです。これは部品の反りにつなが
り、成形品が寸法公差から外れてしまう原因とな
ります。均一な肉厚を維持する1つの方法は、部品
をくり抜く際に両側から均等に行うことです(図19)。
半径
プラスチック部品の中の、2つの壁が接して角が
できる部分では、応力集中が起こり、材料の円滑
な流動が損なわれる可能性があります。部品内側
の角を曲線的にすれば、応力はより広い範囲に分
散します。また外側の角を曲線的にすれば、材料
の流れを向上させるとともに基本肉厚を維持する
ことができます。一般的には、内側の角について
は基本肉厚の最低25%~最高75%の範囲で丸める
ことをお勧めします。曲線の半径が大きいほど応
力集中は抑制されますが、設計面では部品に厚い
部分ができてしまうという短所があります。内側
の角に対応する外側の角がある場合、外側の曲線
の半径は均一な肉厚を保てるように設定する必要
があります。内側の半径が基本肉厚の50%である
場合、外側の半径は150%にします(図20)。
図18
壁の肉厚を変えるときのデザイン
壁部分の肉厚変化断面
壁の肉厚変化遷移デザイン
材料の流動方向
段階的肉厚変化 - 望ましい設計比約3対1
図19
肉ぬすみ
両面から均等に肉をぬすむ
目標均一な肉厚、および均等な圧力分布
と均等な冷却
図20
Poor
10 SABICイノベーティブプラスチックス
良
不良
Better
リブ
プラスチック部品は極めて単純な形状のもの以
外、みな基本肉に何らかの形の突起物が付いてい
ます。この突起物は補強リブ、ガセット(壁面補
強用三角リブ)、ボスなどの場合があります。最も
一般的なのは補強リブです。補強リブは通常、部
品の硬度を高めたり、キャビティ全体にわたる溶
液の流動性をコントロールしたりするために取り
付けます。リブの高さは通常、基本肉厚の2.5~
3倍にする必要があります。背の高いリブは部品の
剛性を向上させますが、適切に成形するのが難し
く、充填、ガス抜き、および突き出しが容易では
ありません。このため一般的には、背の高いリブ
を1つ使用するかわりに、短めのリブを2つ使用す
ることが多くなっています。
リブの厚みは、収縮率の高い素材では基本肉厚の
約半分、収縮率の低い素材では基本肉厚の75%程
度にします。この厚みに設定すれば、リブと基本
肉厚の接触部における収縮率のコントロールに役
立ちます。接触点は基本肉の厚みの最低25%程度
丸める必要があります。この曲線の半径が大きい
と、接触部の厚みが増し、補強リブの反対側の表
面にひけが発生します。複数のリブを使用する場
合は、それぞれのリブの間隔を基本肉厚の2倍以上
開けるようにしてください。リブ同士をそれ以上
近付けると冷却が難しくなり、その結果大きな成
形残留応力が発生する可能性があります(図21)。
図21
リブ/ボス/ガセット(壁面補強三角リブ/突起物)
リブ
抜き勾配
ボス
ボスの内部に発生す
る応力に応じてtの
最適値を定める
ガセット(壁面補強用の
三角リブ)
SABICイノベーティブプラスチックス 11
成形プラスチック歯車の基本設計
ギヤ設計
熱可塑性プラスチック素材を成形して歯車を作る
ための設計を行う際は、前述したプラスチック部
品の設計に関する基本的ガイドラインを念頭に置
いてください。最も単純な歯車は、中央にゲート
を取り付けた、リムもハブもない平歯車です(図
22)。この歯車は基本肉厚が1つで厚みの変化も
ないため、収縮率の差異も最小限にとどめられま
す。この歯車の厚みは6.35ミリ(0.250インチ)
を超えないようにします。厚みが4.57(0.180イ
ンチ)以上なら、ウェブおよびハブの導入はより
効果的な設計になる場合があります。
ハブおよびリムのあるプラスチック歯車を設計す
る際は、さまざまな部位の厚みを慎重に検討する
必要があります。歯の厚みおよび高さは、歯の強
度に関する要件によってすでに定められていま
す。難しいのは、歯車のどの部分が基本肉厚にな
り、その機能と他の部分との関係がどうなるかを
決めることです。歯車の各部分は、プラスチック
部品設計の基本ガイドラインを念頭に置きつつ、
それぞれが望ましい機能を果たすように設計する
必要があります。どのような設計ガイドラインで
もそうですが、妥協が必ず必要になってきます。
歯車の歯を壁(リム)の突起物として扱うなら、
リムの厚みは歯の厚みの1.25~3倍にする必要が
あります(図23)。ウェブおよびハブは少なくとも
リムと同等の厚みにします。大部分の歯車はウェ
ブ上にゲートがあるため、ウェブはハブやリムよ
り厚くしてもかまいません。ただしここでも、ウ
ェブの厚みをリムやハブの1.25~3倍以上にはし
ないでください。ハブを厚くする必要がある場合
(圧入工法の場合など)は、歯車のゲートをハブ
上にするかまたは中央にダイヤフラムゲートを取
り付けます。いずれの場合も、中央のダイアフラ
ムゲートが最も均一な注入を可能にするため、こ
の方法をお勧めします。内側のすべての角は肉厚
の50~75%程度に丸めてください。
ウェブに穴を開けるのは避ける必要があります。
これは歯車にウェルドラインができる他、リムに
収縮率の高い領域と低い領域が発生して歯車の強
度が落ち、公差の管理が困難になるからです(図
24)。リブも同じ理由で公差に影響を与える可能
性があるため、どうしても必要な場合以外は使用
しないでください。リブを追加する必要がある場
合は、歯車の両面につけるようにし、互いのちょ
うど反対側にこないようにデザインする必要があ
ります(図25)。
12 SABICイノベーティブプラスチックス
図22
ハブもリムもない歯車
.030" to .180"
(一般的)
図23
RIM is 1.25 to 3t
HUB
リム、ハブ、およびウ
ェブは同じ厚みにする
WEB
WEB
図24
ウェブに穴があるために発生した
ウェルドラインと低い収縮率
図25
前面
背面
リブは必要に応じて両面に取り付け、厚い部分ができ
るのを避けるため前面と背面での位置をずらす
SABICイノベーティブプラスチックス 13
成形プラスチック歯車の基本設計
組立部品
前述した標準的な歯車設計および基本的な熱可塑
性プラスチック部品設計ガイドラインに対する
4種類の「修整」を採用すれば、より強度の高い
射出成形プラスチック歯車を製造することができ
ます。ただし歯車は常に正しい点でかみ合う必要
があります。2つの歯車がしっかりとかみ合った
とき、歯車同士の中心間の距離は両標準ピッチ円
直径の合計の半分になり、これが標準軸間距離と
呼ばれます。平歯車(スパーギア)およびはすば
歯車(ヘリカルギア)は軸間距離がずれても動作
し、標準軸間距離が最適な稼動軸間距離になるこ
とはまれです。また、設計技師は軸間距離に影響
を与えうるあらゆる環境条件に合わせて歯車の補
正を行う必要があります。歯車同士の軸間距離が
狭すぎると、熱的および環境的な影響によって軸
間距離がさらに狭まり、歯車同士が固着してしま
う場合があります。
ナイロンのような素材では、吸湿時の寸法変化が
より重要になる場合もあります。一般的に許容さ
れる吸湿率の例を次に示します。
素材
吸水による
寸法変化率(%)
アセタール
0.05
ナイロン6/6
0.25
ナイロン6/6 + 30%ガラス繊維
0.15
ポリカーボネート
0.05
扱っている素材がこの表にない場合は、低水分の
素材ならポリカーボネートの値を、吸湿性のある
素材ならナイロン6/6の数値を参照してください。
歯車の稼動軸間距離に影響を与える要素には、歯
車部、軸、筐体部に使用される素材の熱膨張率、
吸湿による寸法の変化、歯車の取り付けに使用さ
れているベアリングの振れ、歯車自体の全体的な
精密度などがあります。こういった変化によって
歯車が固着してしまうことを防ぐには、場合によ
っては軸間距離を広げる必要があります。この軸
間距離の広げ方は次の方程式で計算できます。
解説
∆c
Tct
C
T
=
=
=
=
a
=
M =
TIR =
必要な軸間距離の拡大幅
歯車の最大総複合公差
かみ合わせ時の軸間距離
歯車が受ける最高運転温度(°F)
素材の線膨張率(in./in./°F)
ハブ素材の吸湿による膨張率(in./in.)
許容される最大のベアリングの振れ
下付き文字「1」、「2」、および「H」は、それ
ぞれ歯車1、歯車2、およびハウジングを表しま
す。線膨張率は通常、素材のメーカーが提供する
データシートで確認できます。ただし吸湿による
膨張率は不明な場合が多く、この値はデータシー
トに通常記載されている吸水率の値と同じではあ
りません。検討対象となっている歯車がすぐに高
い湿度にさらされるのでなければ、大部分のプラ
スチック素材の吸水による寸法変化率は最小限で
あり、成形残留応力が徐々に低下する際に発生す
るわずかな収縮によって相殺される場合もあります。
14 SABICイノベーティブプラスチックス
テスト
部品点数の削減
熱可塑性プラスチックによる射出成形歯車の最も
便利な点の1つは、多数の異なる部品を1つの多機
能部品に統合できることです。この最も単純な例
は、歯車軸と歯車を単一のユニットとして成形す
ることです。また、複数の平歯車(スパーギア)
またははすば歯車(ヘリカルギア)を一つの歯車
として成形するのも非常に一般的です。こうした
方法で歯車を成形する際は、基本肉厚およびフィ
レット処理に関するルールを念頭に置くことが重
要です。単に2つの歯車を重ねるだけでは、不均
等な厚み、不均一な冷却時間、および許容負荷の
低下につながります。図26は良い設計と肉厚が厚
すぎる設計とを比較したものです。
テスト
プラスチック歯車も金属歯車も、歯車素材の設計
限界を超える負荷がかかると故障しますが、故障
にいたるメカニズムは同じです。そのためどのよ
うな新しい用途についても必ずプロトタイプを作
成し、実際の動作環境と同じかそれに近い状態で
テストを行う必要があります。棒材から機械加工
によって切り出したギアをテストすればよいと考
えがちですが、射出成形したギアの場合とはテス
ト結果が異なる場合があります。これは、表面状
態、成形圧力、精密度その他さまざまな点が異な
るからです。歯車の性能を真に測定するための唯
一の方法は、プロトタイプの成形歯車をテストす
ることです。
対象となる用途で必要とされる速度を超えた速度
での加速試験には、多くの場合意味はありませ
ん。温度を通常の運転温度よりも上げると急速に
故障を引き起こされ、逆に通常の運転温度よりも
下げると歯車の動作が良すぎるかもしれません。
そのためテスト環境は必ず、実際の使用環境にで
きるだけ近くなるように設定する必要がありま
す。たとえば歯車が実際の使用環境で高い負荷を
受けるもののそれがあくまで断続的である場合、
継続的な運用テストは避ける必要があります。実
際の使用状況下では、各サイクル間の冷却が可能
だからです。歯車が低速かつ低頻度で使用される
場合は、連続運転テストを行ってもかまいません
が、歯における温度上昇を最小限に抑えてテスト
する必要があります。歯車が動作中に非常に短時
間で最高温度に達する場合も、継続テストが可能
です。歯車が疲れ限度に近い状態で使用されるの
でなければ、歯の静的負荷テストは役に立ちま
す。長い耐用年数を期待して設計されている歯車
の場合は、静的負荷テストにおける負荷を実際の
使用環境における負荷の8~10倍にしてください。
図26
悪い設計の例
過剰かつ不均一な厚み
結果
ひけ、大きすぎる空洞
部、長い成形サイク
ル、反り
良い設計の例
• 均一な肉厚
• 改善されたウェブ配置
• ツールのコスト上昇は
製造による収益で相殺
SABICイノベーティブプラスチックス 15
歯車の故障メカニズム
歯車の故障メカニズム
凝着摩耗(「正常な」摩耗)
この種の摩耗は、断続溶着、および反対側の摩耗表
面の一部に起こる引裂によって発生します。溶着が
顕微鏡レベルの大きさであれば、摩耗は通常の均一
な速度で進行します。歯車に外部潤滑剤を使用す
れば、表面同士が固着することもなく摩耗も防止
できます。熱可塑性プラスチックにPTFEを混合する
と、駆動歯車と従動歯車の両方の表面にPTFEの薄膜
が形成され、これが潤滑剤の役割を果たします。こ
のPTFEの移動膜は摩擦率も摩耗率も低くなっていま
す。プラスチック歯車同士を組み合わせた歯車装置
の場合、少なくとも一方の歯車はPTFEを含んでいる
必要があります。PTFEによる潤滑性能を持つ歯車に
外部潤滑剤を使用しても、あまり良い効果は得られ
ない場合があります。これはグリースが離型剤の役
目を果たし、移動膜の形成を阻害する可能性がある
からです。ただしPTFEを含む歯車には慣らし運転の
期間があり、この期間中移動膜が形成されるまでは
摩耗率が高くなるため、薄膜の形成を疎外しない程
度に外部潤滑剤を軽く塗布すれば、始動時の歯車の
摩耗を遅らせることも可能です。
潤滑剤を含まないプラスチック歯車では、通常不均
一または過剰な摩耗によってピッチ線上の欠損が発
生します。この種の摩耗は摩擦熱を高め(素材を軟
化させ)、断面の小さくなった歯のピッチ線の負荷
を増大させます(図27)。これによって通常、歯がピ
ッチ線で折れ曲がり、歯のスミアや完全な折損につ
ながります。これは疲労による破損に見えるかもし
れませんが、実際は摩耗による破損です。歯車に十
分な潤滑剤を使用しておけば、摩擦力が軽減される
ため発熱や摩耗の度合いも低減できます。
通常、異なる素材の歯車を組み合わせれば、同素材
の場合よりも摩耗状態は良くなります。ただし常に
そうとは言い切れないため、必ず何らかの摩耗試験
を実施し、その結果が良好であれば、対象となる歯
車のペアをプロトタイプによってテストしてくださ
い。プラスチック歯車を金属歯車と組み合わせる場
合、金属歯車の耐摩耗性を高めるには表面仕上げを
16µインチにする必要があります。
ざらつき摩耗
ざらつき摩耗は、接触面の間に硬質の粒子が存在す
る場合に発生します。この物質はいずれかの歯車の
摩耗くずであったり、あるいは周囲環境から入り込
む塵である場合もあります。またこの種の摩耗は、
一方の歯車(通常は金属歯車)の表面が他方より粗
い場合にも発生することがあります。粒子はまず素
材の中に入り込み、次に表面素材の一部を「鋤です
くように」 かき出します。ざらつき摩耗が起こるよ
うな条件は取り除かなければなりません。
ピッチング
ピッチングは、素材の疲れ限度を超えた際に発生す
る、表面疲労による破損と定義されます。負荷のか
かった歯車は表面上および表面下に応力を受けま
す。負荷の大きさと応力サイクルの頻度がいずれも
一定のレベルに達すると、負荷を受けた領域は疲労
16 SABICイノベーティブプラスチックス
して表面から剥がれ落ちます。ピッチ線の領域は最
も高い応力を受ける部分であり、ピッチングが最も
起こりやすい部位です。孔食は疲労に関連した現象
で、通常は潤滑性とは無関係です。プラスチック部
品にピッチングはあまり発生しませんが、装置に大
量の潤滑剤が使用されている場合(摩耗が少ない場
合)には起こる可能性があります。
塑性流動
塑性流動は高い接触応力と、かみ合わせ時の転がり
および滑りの運動によって発生します。これは表面
および表面下の素材の降伏によって表面が変形する
現象です。プラスチックは断熱材であり溶解温度が
(金属に比べて)低いため、金属歯車なら傷が付く
ような状況で溶解し流動することがよくあります。
プラスチック歯車では、最初の塑性流動は半径方向
に発生します。これはひとりでに元に戻る場合もあ
るので、必ずしも有害ではありません。ただしより
深刻なケースでは、流動が軸方向に向かって発生
し、その結果まもなく歯の折損が起こります。塑性
流動の発生は、装置の稼動条件が過酷であり、部品
の破損も間近であることを示しています。潤滑剤(内
部および外部)を使用し、摩擦による熱を低く抑える
ことでこの状況を回避しやすくなります(図28)。
破壊
破壊は、歯の全体あるいは少なくとも大部分が折損
することによる故障です。これは歯に素材の疲れ限
度を超える過負荷(失速や衝撃等による)や連続的
な応力(疲労)がかかった結果、発生することが
あります。このような種類の破壊は通常、歯元のフ
ィレット部分から発生し、歯元全体に広がります。
潤滑剤を使用していないギア列における破壊は、一
般に過負荷によって起こります。歯のより高い部分
で起こる破壊は通常、摩耗に関連するものです(図
29)。
図27
摩耗の進行による歯厚
の減少
熱サイクル疲労
歯車は潤滑剤の使用不使用によらず、熱サイクル疲
労によって故障する場合があります。歯の曲げ応力
は常に多少のヒステリシス加熱を発生させますが、
プラスチックは非常に優れた断熱材であるため、こ
れによって素材の動作温度が上昇します。この温度
上昇によって素材の強度が落ち、ピッチ線の変形(
歯の倒れ)が起こる場合があります。
図28
過剰な熱による歯の変形
図29
過負荷による歯元部分
の破壊
素材
歯車の素材に求められる要素には幾つかの基本的な
ものがあります。素材は歯にかかる負荷を支えるの
に十分な強度のほか、対になる歯車の素材に対する
優れた耐摩耗性および耐摩擦性も備えている必要が
あります。また一部の用途では、耐衝撃性および耐
腐食性も重要です。歯車の設計技師は歯車に求めら
れるこのような要件を環境的および機械的の両側面
から慎重に評価し、これらの要件を予定素材の特性
データと比較する必要があります。
前述したように、歯車の評価に使用される値は多く
の場合データシートには記載されていません。素材
の標準的な機械的および物理的特性の評価条件は、
歯車の場合にはそぐわない条件です。等時応力-歪
曲線、引張クリープ、曲げ疲労などのような工学的
性質をさまざまな温度および歪み速度で評価したデ
ータがあれば、素材の挙動をよりよく把握すること
ができます。必要なデータが存在する場合も、プロ
トタイプによるテストは実施することを強くお勧め
します。
摩耗に関するデータの大部分は、歯車装置に直接適
用することはできませんが、スラストワッシャ、ブ
ロックオンリング法、ピンオンディスク法などによ
る摩耗データがあれば、候補となる素材の相対的な
順位付けを行うことができます。スラストワッシャ
に関しては、熱可塑性プラスチックをスチール、そ
の他の金属(アルミニウム、真ちゅう等)および熱
可塑性プラスチック同士の組み合わせにおける実験
結果に基づくデータが、室温および高温下等異なる
条件下のもとで、幅広く収集されています。この種
のデータは歯車のプロトタイプを作成する際、素材
の有力候補を選別するために役立ちます。非充填ナ
イロン6/6の200という比摩耗量は、複合材の摩耗
率が許容範囲内かどうかを判断する際の基準になり
ます。比摩耗量が200を超える場合、素材の摩耗率
が許容範囲を超えており、ほとんどの歯車装置には
適さないことがわかります。摩擦係数が200以下で
あれば、その素材は歯車に使用できる可能性があり
ます。
り、耐摩耗性が高まるとともに摩擦も軽減されてい
るほか、各種フィラー充填により強度も向上してい
ます。
内部潤滑剤
最も広く利用されている潤滑剤には、PTFE粉末(ポ
リテトラフルオロエチレン)およびシリコーン溶液
があります。PTFEの粒子は摩耗表面の微細な隙間か
ら歯面の表層に現れ膜を形成し、相手歯車の歯面に
移行します。その結果、摩擦係数および摩耗率が大
幅に低下します。たとえばPES(ポリエーテルサル
フォン)に潤滑剤としてPTFEを15%添加すると、動
的摩擦係数は0.51から0.30に低下し、比摩耗量は
3940から106まで下がります。この非結晶樹脂は
摩耗係数が200以下であるため、歯車素材の候補に
含めることができます(図30)。非結晶樹脂は、結晶
樹脂に比べて成形時の収縮率が低いため、より精密
な歯車を成形できるという利点があります。
もう1つの一般的な潤滑剤であるシリコーン溶液
は、摩耗表面に移行して回転初期の段階から潤滑
剤としての役目を果たします。シリコーン溶液は
単独で使用されるほか、PTFEとの併用によって更
に低い比摩耗量が得られます。2%のシリコーン潤
滑剤を添加したポリカーボネートLubricomp* DL4410の摩耗係数は、2500から386に下がります。
13%のPTFEと2%のシリコーン溶液を併用すれば
(Lubricomp DL-4530の場合)、摩耗係数はさらに
42まで低下します。PTFEとシリコーン溶液を併用
すると、装置の高速運転がより滑らかになるため、
この方法は周期的な高速運動や振動が発生する用途
で多く利用されています。
図30
さまざまな樹脂における
PTFE潤滑剤の効果
スチールと比較した摩耗係数
10-10 in.5 min / ft. lb. hr.
素材
歯車の素材を選択する際に参考とすべきもう1つの
値は、限界PV値です。この値は使用素材が耐え得
る荷重または速度の限界を示します。PVテストで
は、回転する試験片に徐々に荷重を増やしていき摩
耗が急激に大きくなる条件を見つけ出します。複合
材を選択する際は通常、安全係数を考慮してPV制
限値の最大50%を基準にします。スラストワッシャ
およびPV制限値のテストに関する詳細は,「A Guide
to LNP*’s Internally Lubricated Thermoplastics(内部潤
滑性熱可塑性プラスチックコンパウンドガイド)」
を参照してください。歯車に初めて一般的に使用
された熱可塑性プラスチックには、非充填アセター
ルや非充填ナイロンなどがあります。これらの結晶
樹脂はもともと、優れた耐摩耗性、低い摩擦係数、
および優れた耐薬品性を備えています。ただし成形
収縮率が高く速度や負荷容量の制限値も低いため、
使用可能な用途は限られます。現在では多くの熱可
塑性プラスチック樹脂に内部潤滑剤が混合されてお
非充填
SABICイノベーティブプラスチックス 17
素材
強化材
ガラス、炭素、アラミドなどの強化繊維を樹脂に混合すると、素材の機械的性能が向上します。機械的
強度と硬度の向上に最も効果があるのは炭素繊維による強化で、次にガラス繊維、アラミド繊維と続
きます。強化繊維を添加するだけでも、大部分の樹脂系の比摩耗量は大幅に下がります(図3)。さらに
PTFEと強化繊維を併用すれば、比摩耗量を更に低下させることが可能です。15%のPTFE潤滑剤を含むナ
イロン6/6に一般的な繊維強化(ガラスおよび炭素の場合は30%、アラミドなら15%)を行えば、摩耗
係数は20以下にまで下がります。
ガラス繊維および炭素繊維の主な短所は、成形収縮量に異方性を引き起こすため、歯車の精度が落ちる
ことです。アラミド繊維の場合はより等方的に収縮し、繊維による配向は小さくなります。ミルド・ガ
ラスやガラスビーズ等、形状がより粒子状の強化材を使用すると、異方性は小さくなるという利点があ
ります、ただしこれらの強化材では通常、一般の繊維状強化材ほどの補強効果(機械的特性の向上)は
得られず、比摩耗量も比較的高くなります。
強化複合材が金属歯車に代わる材料となる可能性を高めた技術の一つが、長繊維の活用です。ガラス長
繊維およびガラス短繊維によって強化された、ガラス繊維とPTFEを含むナイロン6/6の特性を比較する
と、長繊維強化のほうが曲げ強度および耐衝撃性が大幅に向上していることがわかります。繊維端の数
が減るため、摩耗率が大きく上がることもありません。強度と耐衝撃性が高いということは、一部の歯
車装置で発生する高トルク下において歯の強度および疲労耐性が向上することを意味します(表4)。
歯車における素材の組み合わせ
プラスチック歯車の摩耗は、対になる歯車(カウンターフェイス)に大きく依存します。プラスチック
歯車と金属歯車の組み合わせの場合、対になる歯車が1141スチールのような比較的硬質な金属の場合
とアルミニウムや真ちゅうのような軟質金属の場合とで複合材の摩耗の度合いは異なり、さらに一部の
複合材は他のものに比べ耐摩耗性が優れています。また金属歯車の表面仕上げも、プラスチック歯車の
摩耗度に影響を与えます。プラスチック歯車と組み合わせて使用する金属歯車の望ましい表面仕上げの
範囲は12~16µインチです。
たとえば、2種類のナイロン6/6複合材を例にとってみます。1つは30%炭素繊維強化した15% PTFE潤滑
ナイロン6/6、もう1つは10%アラミド繊維強化した10% PTFE潤滑ナイロン6/6で、いずれもスチールに
対する摩耗係数は13です。しかしアルミニウムに対しては、炭素繊維複合材の摩耗係数は175、アラミ
ド繊維複合材の摩耗係数は45です。また別の重要な点として、アルミニウム軸はアラミド繊維複合材に
対する場合(4)よりも、炭素繊維強化複合材に対してより多く摩耗する(95)という現象も見られます。ア
ラミド繊維強化材は金属の摩耗粉の発生を最小限に抑えるのに役立つため、軟質金属および焼結金属の
歯車との組み合わせで使用するのが有効です。
プラスチック歯車同士の摩耗
プラスチック歯車同士のペアの場合、複合材の選択方法はより複雑になってきます。このペアの摩耗度
の予測はきわめて難しく、確実に把握するにはテストを行うしかありません。一般的には、異なる素材
の歯車を組み合わせるほうが許容可能な摩耗率の組み合わせとなります。熱可塑性プラスチック複合材
の種類によっては同じ素材同士でも優れた摩耗率を実現できます。ただし、熱可塑性プラスチック複合
材の種類によっては、同じ素材同士でも優れた摩耗率を実現できるものもあります。
多くの場合、素材そのものが優れた潤滑性を備えている場合は摩耗率が高くなっています。一般に優
れた潤滑性を備えると考えられている非充填アセタールの歯車同士を組み合わせた場合、摩耗係数は
10,000を超えます。ただし20%のPTFEを添加すれば、この素材同士の歯車のペアでも摩耗係数は許容可
能な40程度になります。
高い温度環境で使用される歯車
高温環境で使用される歯車への熱可塑性プラスチック複合材の利用は限られています。これは温度が融
点やガラス転移点まで上昇してしまうためです。高温環境用のプラスチック歯車を設計する際は、その
温度下での素材の機械的性能を理解することが重要です。これには摩耗データも含まれます。摩耗率は
多くの場合、温度の上昇につれて高まるからです。大部分の高温用途向け歯車には、PES(ポリエーテ
ルスルホン)、PEI (ポリエーテルイミド)、PPS(ポリフェニレン・サルファイド)、PPA (ポリフタルアミ
ド)、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン)などの、溶解温度およびガラス転移温度の高い樹脂が採
用されています。高温用途向け歯車にはほぼ必ず、繊維強化剤か内部潤滑剤、あるいはその両方が使用
されています。
18 SABICイノベーティブプラスチックス
表3ナイロン6/6基質に強化繊維を添加した場合の比較
特性
ASTM法
単位
非充填
30%のガラス
30%の炭素
繊維
繊維
繊維
15%のアラミド
収縮率
D955
%(流動性/転移)
1.5/1.8
0.40/1.5
0.08/0.56
0.02/0.03
引張強度
D630
psi/MPa
12000/83
24000/165
38600/266
1400/97
曲げ弾性率
D790
ksi/GPa
410/2.8
1370/9.4
2720/18.8
560/3.9
LNP*
静的/動的
0.55/0.65
0.57/0.11
0.30/0.32
0.75/0.73
LNP
10-10in5 - min.
200
75
36
19
摩擦係数
摩耗係数
ft.-lb.-hr.
表4ガラス長繊維およびガラス短繊維で強化したPTFE潤滑ナイロン6/6の比較
ASTM法
単位
40%のガラス長繊維
10%のPTFE
30%のガラス短繊維
10%のPTFE
引張強度
D630
psi/MPa
30000/207
26600/183
引張伸長
D630
%
2.5
3.2
曲げ弾性率
D790
Ksi/GPa
1730/11.9
1350/9.3
ノッチ付きアイゾッド衝撃強度
D256
ft.-lb./in. / J/m
5.1/257
2.1/106
特性
SABICイノベーティブプラスチックス 19
素材
1982年度の基準との対比における概算値
表5
等級の詳細
AGMA 2000-A88
DIN 3963/1978
AA
超高精度
実現しうる最高の精度。特殊なツールルームによる製造法を必要とする。マスターギアに
使用される。通常は特別な高速用途用歯車か、または最高の負荷容量と信頼性がともに要
求される歯車で使用される
14以上
2または3
A
高精度
高精度。一流の工具と経験豊富な技術者による削り出し、シェービングをもって製造され
る。タービン歯車および航空宇宙産業用歯車に幅広く使用される
12または13
4または5
B
中~高精度
比較的高精度。削り出し、シェービングにより製造され、品質よりは生産性が重視され
る。最高の装置および望ましい条件下でのホブ切りや形削りによっても製造できる。中速
の用途で使用される産業用歯車や、重要な車両用歯車に利用される
10または11
6または7
C
中精度
良精度。一流の機械装置と技術者によるホブ切り、形削り、または射出成形で製造され
る。代表的な用途は、比較的低速で使用される車両用歯車および電気モーター用歯車。
8または9
8または9
D
低精度
最低限の精度。ホブ切り、形削り、および成形による製造は比較的古い装置と経験の浅い
技術者でも可能。代表的な用途は、摩耗によって適当な形状に馴らされていく低速用歯車
(軟質金属)、および大部分のプラスチック歯車
6または7
10または1
低速・軽負荷の用途用の歯車に使用される精度。鋳造または成形で製造できる。代表的な
用途は玩具や小道具。限られた寿命と信頼性しか要求されない低硬度のパワーギアにも使
用可能
5または4
12
一般的なプラス
チック歯車の
精度範囲
等級
E
非常に低い精度
20 SABICイノベーティブプラスチックス
歯車の加工方法
射出成形歯車の総合的な精度は、素材の組成、部品
の設計、および製造加工(金型の設計および加工)
によって決まります。素材や部品設計がいかに優れ
ていても、金型設計が不十分であったり、不適切な
加工方法では精密な歯車は作製できません。歯車の
成形をいかに精密に行えるかを検討する前に、まず
歯車の精密度の測定方法を考えてみます。
標準的な歯厚の2つの歯車がしっかりとかみ合っ
たとき、その軸間の距離は両標準ピッチ円直径の
合計の半分になります。この距離はこの両歯車の
標準軸間距離と呼ばれます。歯車同士が標準軸間
距離を保って回転できるのは両方の歯車が完璧に
製造されている場合のみで、何らかの欠陥があれ
ば回転中のいずれかの段階で固着が発生します。
発生する欠陥の種類は次のように分類できます
• 振れ
• 横方向の振れ(揺れ)
• ピッチエラー
• 形状エラー
ピッチエラーと形状エラーが両方存在する場合、
歯のかみ合いエラー(TTE)と呼ばれる状態が発生
します。これは歯車の各歯の形状および位置がば
らついていることを示します。歯車の全体的な振
れ、すなわち歯車の回転が完璧な円を描かない分
量を、歯のかみ合いエラーに加えると、総かみ合
いエラー(TCE)が算出されます。歯車の歯のか
み合いエラーおよび総かみ合いエラーは、歯車を
規準となるマスターギアとしっかり噛み合わせ、
さまざまな軸間距離で回転させてみることで測定
できます。歯車を回転させると、軸間距離は歯車
の精度によって変化します。この半径方向偏位は
測定してチャートにまとめることができます。こ
のチャートの一例を示したものが図31です。歯車
が完璧であれば、このチャートは1本の直線にな
ります。プラスチック歯車の場合、通常は歯のか
み合いよりも歯車の全体的な振れのほうに大きな
エラーが出ます。
射出成形歯車の品質を評価するための基準に
は、欧米においてはAGMA 2000-A88およびDIN
3963/1978の2つがあります。AGMAのシステム
では、歯車はそれぞれに認められる歯のかみ合い
エラーおよび総かみ合いエラーの最大公差を基準
とした精度を示す値で分類されます。この数値は
AGMA Quality Numberと呼ばれ、数値が高いほど
歯車の公差は狭くなります。これらの基準は金属
歯車に使用されている基準と同じものであり、す
なわちAGMA Q8の成形プラスチック歯車はAGMA
Q8のホブ切りスチール歯車と同じ品質です。たと
えば直径ピッチが48でピッチ円直径1.00”の平歯
車をAGMA Q7にする場合、最大の歯のかみ合いエ
ラー(TTE)公差は0.00138”、最大の総かみ合いエ
ラー(TCE)公差は0.00275”になります。同じ歯車
をAGMA Q10にするには、許容される最大TTEは
0.00036”、 最 大 TCEは 0.00010”と な り ま す 。
AGMA Quality Numberとそれに対応する直径ピッ
チおよびピッチ円直径の最大公差は、American
Gear Manufacturers Association(米国歯車工業
会)の「Gear Handbook, 390.03」に一覧表示さ
れています。
なおこの品質レベルは、大きく6つの精密度レベ
ルに分けることができます。成形歯車の大部分
はAGMA Q4~Q8の範囲内になりますが、AGMA
Q10の成形歯車も製造されています。
歯車を設計する際、設計技師は材料を入手する販
売店の品揃えの範囲内で実現可能な精度レベルを
選ぶ必要があります。また、妥当なコストで歯車
を作製することも重要です。競争社会において
は、単に最良の歯車が必要とされるわけではあり
ません。むしろ可能な限りの低コストで負荷、寿
命、信頼性、および静音性の要件を十分に満たせ
る歯車が求められています。
図31
総
かみ合いエ
ラー
歯のかみ合い
エラー
Runout
歯車の1回転
SABICイノベーティブプラスチックス 21
歯車の加工方法
歯車の精密度に対する素材の影響
素材の選択は、歯車の精密度に影響を与える場合
があります。非晶性樹脂の収縮は結晶樹脂に比べ
てより等方的であり、また粒子充填剤も繊維強化
剤に比べてより等方的な性質を持ちます。素材の
収縮特性がよく分かっていれば、その素材に最適
な金型設計を行うことにより精密な歯車を成形す
ることができます。勿論、配向の少ない素材を利
用するほうが、金型加工は容易になります。
さまざまな樹脂や充填剤が成形歯車の精密度に与
える影響を評価するため、多様な熱可塑性プラス
チックコンパウンドを射出成形して、直径ピッチ
32, 圧力角20°,ピッチ円直径1.25”,幅0.125”の平
歯車を、小型のピニオン歯車と一体化させた形で
成形しました(図32)。この歯車にはウェブの中心
からずれた位置に1点のゲートを設けました。ベー
ス樹脂として使用したのはナイロン6/6およびポ
リカーボネートです。
このような一般的に歯車素材として使用される熱可
塑性プラスチック樹脂は、大きく2種類に分けるこ
とができます。高収縮率の結晶素材(ナイロン、ア
セタール、ポリオレフィン等)と、低収縮率の非結
晶コンパウンド(ポリカーボネート、ポリスルホ
ン、ポリエーテルイミド等)です。いずれの樹脂も
強化材、充填材の種類に関わることなく、一般的な
成形条件をもって成形してみました。
それぞれの樹脂について、40%のガラス繊維強化
剤、30%のガラスビーズ充填剤、および30%のガラ
ス繊維強化剤と15%のPTFE潤滑剤を添加した複合
材を成形しました。各複合材のTCE(全かみ合い誤
差)のチャートを図33に示します。いずれのベー
ス樹脂を用いた場合においても、ガラス繊維強化
複合材は単一の大きなピークを示しました。この
ピークはこの歯車のもっとも半径の大きい部位で
あり、ゲート位置の反対側に繊維が集中すること
により発生しています。
ガラスビーズ充填ナイロン6/6コンパウンドも単
一のピークを示しましたが、ガラス繊維強化ナイ
ロンほどの振れは見られませんでした。この結果
からビーズ状の強化材は等方的に収縮し、またそ
の歯車の端における配向も、それ程精度に影響し
ないことがわかります。このコンパウンドのピー
クは結晶性素材そのものが持つ異方的な性質によ
って発生しています。ガラスビーズ充填ポリカー
ボネートは原則として等方的に収縮したため、チ
ャートが平坦な曲線になっています。試験では、
このコンパウンドから最も精密な歯車を成形する
ことができました。
30%のガラス繊維強化剤と15%のPTFE潤滑剤を添加
したコンパウンドのTCEチャートは、40%のガラス
繊維強化コンパウンドと同様にひとつのピークを
示しました。PTFEをガラス強化コンパウンドに添
加しても、振れへの影響はあまりありません。
22 SABICイノベーティブプラスチックス
図32
テスト用歯車直径ピッチ32のコンパウンド歯車
1点ゲート
多点(13)ゲート
図33
0.025ミリ(0.001インチ)
0.025ミリ(0.001インチ)
40%ガラス繊維強化ナイロン6/6
40%ガラス繊維強化ポリカーボネート
0.025ミリ(0.001インチ)
0.025ミリ(0.001インチ)
30%ガラスビーズ充填ナイロン6/6
30%ガラスビーズ充填ポリカーボネート
0.025ミリ(0.001インチ)
0.025ミリ(0.001インチ)
30%ガラス繊維強化、15%PTFE潤滑ナイ
ロン6/6
30%ガラス繊維強化、15%PTFE潤滑ポリカ
ーボネート
SABICイノベーティブプラスチックス 23
金型の設計と歯車の精密度
熱可塑性プラスチックで精密な成形歯車を作製す
るには、精密な金型が必要です。金型両面および
キャビティの配置は、歯車成形におけるきわめて
重要なポイントです。金型の両面の間にインター
ロックを取り付けて、ガイドシステムのすきまば
めを防止することをお勧めします。空気焼入鋼は
熱処理中の寸法安定性が向上しているため、油焼
入鋼よりも望ましい素材といえます。また公差の
狭い設計品の場合、炭素含有量の多さにより総合
的な硬度に優れ、さらにクロム含有量の多さによ
り(充填素材に対する)耐摩耗性にも優れたスチ
ールの使用をお勧めします。公差を管理しやすく
するには、H-13またはA-2のスチールを採用し、ゲ
ート挿入部、コアピン、その他の摩耗率が高い領
域にはD-2スチールを使用することをお勧めします。
成形歯車の公差管理を行うには、冷却処理がきわ
めて重要になります。素材を計算通りの割合で均
等に収縮させるには、金型全体にわたって均一な
温度を維持する必要があります。不均一な収縮は
寸法公差のばらつきにつながります。コアピンや
深いコア部分には熱だまりが発生しやすいため、
特に注意を払う必要があります。
公差幅の狭い歯車成形の場合、自然にランナーバラ
ンスの取れた3枚プレート型を使用することが望ま
れます。マルチキャビティ成形は一般的ですが、フ
ァミリーモールドはお勧めできません。ランナーレ
ス(ホットランナー)方式を使用することも可能で
すが、ツールの許容能力が下がる可能性もありま
す。ランナー部分を高温に保つための熱はツールの
一部も加熱してしまうため、追加的な冷却を行う必
要が出てきます。ホットランナー方式を採用する場
合は、十分な冷却プレートを使用して金型の温度を
適切にコントロールしてください。
ガスベントが重要なのは、ガス抜きが不十分だと
金型の中にエアートラップが発生し、溶解温度や
部品を充填する際のキャビティ圧にばらつきが生
じる可能性があるからです。これらの条件は公差
範囲にも影響を与えます。ツールには可能な限り
のガス抜きを行い、特に最後に充填される領域に
は注意を払ってください。金型から成形品を取り
出す際は、歪みが出来るだけ低くなるようにイジ
ェクター部を設計する必要があります。
コアピン、スライド、サイドアクションなどは、
たいていどの歯車の金型に見られます。これらの
部分は、できる限りひとつのパーツだけではな
く、入れ子のようにしてもう一方の金型に固定さ
れるようにする必要があります。こうすること
で、加工処理中にプラスチックのフローフロント
による反復的な衝撃によって発生するその部分の
長期間のたわみを防止できます。
24 SABICイノベーティブプラスチックス
成形歯車のゲート位置は、歯車の精度(特に振
れ)に大きな影響を与える場合があります。射出
成形歯車に最適な種類のゲートはディスクゲート
(ダイアフラムゲート)です。図34は、ディスク
ゲート、1点ゲート、および多点ゲートを持つ非
常に単純な歯車の金型における充填解析の結果で
す。ディスクゲートの場合、完全に均一なフロー
が放射状に見られ、ウェルドラインも発生してい
ません。その結果、歯車はすべての方向に均等に
収縮します。通常これは量産歯車には実用的では
ないため、一般的にゲートが歯車のウェブ上に配
置されます。
ウェブ上にゲートを設ける場合、複数のゲートを
歯車の周囲に沿って均等な間隔で配置することが
望まれます。1点ゲートを使用する場合は、中央の
コアピンを中心に樹脂が流れる必要があります。
この場合はコアピンの近くに小さなメルドライン
が形成され、フローフロントは中央から外側へと
移動します。このフローパターンにより、ゲート
の反対側の面では放射状の繊維配向性が強くなり
ます。多点ゲートの場合、フローパターンはより
不規則になります。フローはゲートの位置から外
に向かって放射状に移動し、流れがぶつかった部
位に3本のウェルドラインが形成されます。ウェル
ドラインでは、繊維の向きが多くの場合フローフ
ロントと平行になります。この結果歯車では、繊
維はウェルドラインの位置では放射状の配向パタ
ーンに、それ以外の場所ではより不規則な配向に
なります。このため、ウェルドラインに沿って収
縮率の低い領域が発生します。ウェルドラインと
それ以外の場所における繊維配向の違いの程度は
1点ゲートの歯車の場合よりも小さいため、結果的
により精度の高い歯車を作製できます。
これをさらに詳細に解説するため、素材の考察
(20ページの図32)で使用したのと同じピッチ
32、圧力角20°、厚み0.125”の平歯車を、ウェブ
上に1点ゲートおよび等間隔の3点ゲートを配置し
て成形してみました。図35は、40%のガラス繊維
強化ナイロン6/6を使用した1点ゲートおよび3点
ゲートの歯車のTCEチャートを比較したものです。
1点ゲートの歯車のチャートはひとつの大きなピー
クを示しており、歯車が玉子型になっていること
がわかります。このピークはこの歯車における高
値点であり、ゲート裏面の高い繊維配向性と相関
性があります。放射状の繊維配向によって歯車片
面の収縮率が下がった結果、この歯車の高値点が
生じています。
3点ゲートの歯車では、ウェルドラインが3本存在
するため高部位も3つ観察されます。ただし高値点
の値の高さはより低くなっています。これは樹脂
の流動距離が短く、繊維の配向の影響が出づらい
為です。多点ゲートのシステムは、ディスクゲー
トを使用した場合と同じ、同心円状の均一なフロ
ーの条件を生み出しやすいことがわかります。
成形条件の影響
成形条件は歯車の全体的な精度に対して確かに一
定の影響を及ぼすものと思われますが、これは結
晶樹脂と非結晶樹脂で異なるようです。前述の1点
ゲートによる歯車を使用して、40%のガラス繊維
強化ナイロン6/6および30%のガラス繊維強化ポリ
カーボネートを標準的な成形条件で成形してみま
した。成形条件は射出圧力、射出速度、保圧、シ
リンダー温度、および金型温度などの条件を変え
てみました。(24ページの表6)。結晶性樹脂である
ナイロンの場合は、素材の固化に影響を及ぼす要
素(低い金型温度や冷却時間の維持が最適化され
た場合に、TCEが最も低く(精度が高く)なりまし
た。一方、非晶性樹脂であるポリカーボネートで
は、溶融時のせん断が最小の場合(融点が高けれ
ば高いほど)最も精密な歯車を作製できました。
プラスチック歯車を成形する際のより重要な点と
思われるのは、射出成形プロセス自体の安定性お
よび再現性です。クローズドループ・プロセス・
コントロールの使用を強くお勧めします。前述し
たように、充填圧、溶解温度、および素材の混練
方法を変更すると素材の収縮率に大きな影響が出
る可能性がありますが、クローズドループ・プロ
セス・コントロールを使用すれば必要最低限の調
整を行って成形条件を一定に保つことができます。
図34
中心1点ゲートによる充填パターンとその結果の繊維配向。繊維配向は均一
非中心の1点ゲートでは繊維配向が不均一になり、成形収縮率に差異が生じる
多点ゲートを使用すると、繊維配向および充填パターンはいずれもより均一
になる。ウェルドラインの影響は最小限にとどまる
図35
歯車のTCE比較
1点ゲート
40%ガラス強化ナイロン6/6
3点ゲート
40%ガラス強化ナイロン6/6
SABICイノベーティブプラスチックス 25
加工
表6
30%のガラス繊維
強化
ナイロン6/6
TCE(in x 10-4)
TTE(in x 10-4)
30%のガラス繊維
強化
ポリカーボネート
TCE(in x 10-4)
一般的な条件
33
TTE(in x 10-4)
7
18
7
低い射出圧力
26
7
18
7
高い射出圧力
40
8
20
6
遅い射出速度
30
7
18
6
短い保持圧力
70
13
18
6
長い保持圧力
43
5
18
5
低いバレル温度
40
9
–
–
高いバレル温度
46
6
13
5
クッションなし
50
6
19
6
高温の金型
48
8
–
–
低温の金型
–
–
20
7
成形変数
ルイスの歯型係数-y(歯先への荷重時に使用)
歯数
20°並歯
20°低歯
12
0.245
0.311
13
0.261
0.324
14
0.276
0.339
15
0.289
0.348
16
0.295
0.361
17
0.302
0.367
18
0.308
0.377
19
0.314
0.386
20
0.320
0.393
21
0.327
0.399
22
0.330
0.405
24
0.336
0.415
26
0.346
0.424
28
0.352
0.430
30
0.358
0.437
34
0.371
0.446
38
0.383
0.456
43
0.396
0.462
50
0.408
0.474
60
0.421
0.484
75
0.434
0.496
100
0.446
0.506
150
0.459
0.518
300
0.471
0.534
ラック
0.484
0.550
26 SABICイノベーティブプラスチックス
ルイスの歯型係数-Y(ピッチ点における歯
の剪断荷重を計算した場合)
歯数
20°並歯
20°低歯
12
0.415
0.502
13
0.442
0.524
14
0.468
0.540
15
0.490
0.565
16
0.500
0.577
17
0.512
0.588
18
0.520
0.605
19
0.533
0.617
20
0.544
0.626
21
0.551
0.640
22
0.557
0.646
24
0.571
0.665
26
0.587
0.677
28
0.595
0.687
30
0.605
0.697
34
0.629
0.712
38
0.650
0.730
43
0.671
0.738
50
0.696
0.756
60
0.712
0.775
75
0.734
0.791
100
0.758
0.807
150
0.780
0.832
300
0.802
0.854
ラック
0.824
0.882
記号一覧
C = かみ合わせ時の軸間距離
Cs
=
サービスファクタ
D
=
ピッチ円直径
Dp =
ピッチ円直径、ピニオン
E
=
弾性率
f
=
歯幅
F
=
ピッチ線における歯の剪断荷重
HP =
馬力
mg =
速度比、Ng/Np
M
=
ハブ素材の吸湿による膨張率(in./in.)
n
=
安全係数
N
=
歯数
Pd
=
直径ピッチ
T
=
歯車が受ける最高運転温度(°F)
Tct =
歯車の最大総複合公差
TIR =
許容される最大のベアリングの振れ
V
=
ピッチ線速度(fpm)
w
=
速度(rpm)
Wt =
伝達される負荷
y
=
歯の先端におけるルイスの歯型係数
Y
=
ピッチ点に荷重がかかったプラスチック
歯車のルイスの歯型係数
a
=
素材の線膨張率(in./in./°F)
∆c =
必要な軸間距離の拡大幅
µ
=
ポアソン比
Sb
=
曲げ応力
Sh
=
表面の圧縮応力(ヘルツ応力)
ø
=
圧力角
参考文献
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Dekker.
Breeds, A.R. et al 1993. Wear Behavior of Acetal
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Gears”, LNP Engineering Plastics reprint from
Machine Design.
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