JQ International Review 2015 November Vol.11 新製品開発におけるフロント・エンド・ローディング ‘Innovative Made in Japan’を導く ― 品質保証の再構築 ― (株)ジョンクェルコンサルティング 落合 以臣 A Front End Loading in New Product Development “Restructuring of quality management” Shigemi Ochiai, Jonquil Consulting Inc. Keywords: 品質・日本製品・時代・短期・リコール・品質保証・再構築 アベノミクスの効力を受けて、‘Innovative Made in Japan’の製品も再発見されたように思い ます。昨年から始まりました諸外国、とりわけ中国からの爆買いは、まさに日本製品の品質を第 一と考えた表れではないでしょうか。この流れは、当分続くのではないかと思います。しかしな がら、製品そのものの品質を見た場合、日本が脚光を浴びたころの製品と同一と言えるでしょ うか。もちろん時代は移り変わり、当時と比べたら比較にならないほど製品を構成する機能が 複雑になり、それを支える中間材の数も多く、それに加えてソフトウェーも多様化し、そういう意 味ではモノづくりが 180 度転換したと言っても過言ではないかもしれません。必ずしも断言でき ませんが、一番大きく変わったのは品質保証についてではないかと思います。現在の製品は、 スマホに代表されるように、品質保証の期間をおおよそ 2 年と設定した製品があたり前となりま した。一方で、耐久消費財は短期で 7 年、長くて 10 年という期間の品質保証をしなければなり ません。ところが、中間材そのものの寿命が、短期保証で製作されているので、それを中期、 長期の製品に搭載することに、当然のことながら無理が生じます。したがって、ここ数年の間、 自動車、白物家電などのリコールが多いと思われます。また、B to C を進めているメーカーは、 一時の過度な競争を避けることを考えたのか、下請け同士を平等に採用する、つまり、競争に 打ち勝たせてその地位を獲得させることから、納入の数を均等に与えて納入させる、いわば一 種のカルテルを推し進めているように思われます。たとえば、ある自動車メーカーでは、A とい う自家用車を 50,000 台生産するとすれば、そこに組み込むタイヤは、10 のタイヤメーカーに 5,000 台分のタイヤを納入させるという仕組みです。顧客が B というタイヤを装備した車を希望 しても、生産ライン上の車に装備させるタイヤは、10 台ごとにタイヤメーカーを代えるため、注 文した時点でどの生産ライン上の車に当たるかわからないということになります。このようなこと が、自動車メーカーだけでなく、多くの製品を作っている企業でも起きているようです。 このようなことに鑑みますと、時代の流れが品質保証という概念を変え、いつの間にかそれ が当たり前になってしまったことへの反省をすべき時期にさしかかったのではと思います。この 背景には、機関投資家(Institutional investors)の存在が多くなったことが、ひとつの要因とし て上がられるのではないでしょうか。つまり、個人ではなく企業体で投資を行っている大口の投 資家のために、一般投資家と異なり動かす金額も大きく、金融市場に占める存在感は常に大 きい。今の企業の株主構成は、この機関投資家が多く、3 割~4 割を占めるといわれます。しか しながら、機関投資家の目的は、その企業自身の内なるものの繁栄を期待するのではなく、あ くまで利益の還元のみとなります。したがって、企業運営はどうしても短期勝負ということになる のでしょう。このような状況の中で、品質保証の原点回帰を再構築できる企業が、今後の繁栄 を見込まれるのではないでしょうか。 この JQ International Review が、愛読される方の背中をさらに押すことができれば幸いです。 All Rights Reserved. Copyright © 2015 Jonquil Consulting Inc. Publication: 1st November 2015
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