「確かな学力」の向上を図る継続的な検証改善サイクルの確立 ~ 学力向上グランドデザインの全職員の共通理解に基づいた確実な実践と改善 ~ 学力向上グランドデザインを使う目的は、自校の学習指導とその改善を、組織として全職員で日々確実に実践 することです。キーワードは、「組織」 、「確実な実践と改善」です。学力向上グランドデザインに決まった様式 はありませんが、次のようなものが考えられます。 授業での共通実践事項 ○主体的な学習態度の育成 ○知識・技能の習得 ○思考力・判断力・表現力等の育 成 (できるだけ具体的な表現) 目指す児童生徒像 豊かな心 健やかな体 確かな学力 学習習慣、生活習慣の育成の ための実践事項 ○わかる・できる授業の実践 ○学習習慣、生活習慣の確立 ○中学校区単位での小中連携 ○地域の教育力の活用 確実な PDCA(内容、方法) 少人数教育の実践事項 授業を支える実践事項 ○全国学力・学習状況調査 ○福島県学力調査 ○定着確認シート ○週案の活用 ○意識改革 ○指導力向上 ○指導方法の工夫 ○弾力的な運用 ○目的の明確化 ○学校図書館を活用した読書指導 の充実 求められる 確実な PDCA 確実に実践するよ うにしたいもので す。 企業における PDCA 確実な Do が あってこその PDCA ですね 学力向上グランドデザインを確実に機能させるためには、現職教育の計 画と関連させることが効果的です。 学力向上グランドデザインは、必要に迫られて作成しているものではな いことから、それを意識せずに日々の学習指導が進められてしまうという ことが起こりえます。現に、学力向上グランドデザインが複数年度全く同 じという学校が見受けられます。これは、学力向上グランドデザインが使 われていない表れだと思われます。 一方、現職教育の計画は、仮説に基づく実践を行い、その成果と課題を まとめるため、実践事項を意識して授業を行うことが必要になります。 学力向上グランドデザインも現職教育計画も、自校の学習指導の充実改 善という点では目的は同じです。現職教育計画の大切な部分を1枚の用紙 に端的にまとめたものが学力向上グランドデザインであると捉えることも できます。 このようにして、学力向上グランドデザインと現職教育の具体的な実践 事項を関連させて確実に進めることが必要です。 元々PDCAとは、企業等の品筆管理に適応されていた考え方で、 「Plan (計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)の 4 段階 を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する。」というものです。 企業の行うPDCAは、Do(実行)したことが有効だったか、本当に この Do(実行)の内容でよいのかを売り上げ等の客観的な数値で Check (評価)し、それが目標値に到達していなければ、Do(実行)の内容や 方法をよりよいものに Action(改善)していくというものです。この場 合、確実な Do(実行)は大前提であり、Do(実行)のない PDCA サイ クルは考えられません。 「確かな学力」の向上を図る継続的な検証改善サイクルの確立 ~ 学力向上グランドデザインの全職員の共通理解に基づいた確実な実践と改善 ~ 学校における PDCAの課題 学校に PDCA という考え方が導入されて久しいですが、特に、学力向上 グランドデザインに組み込まれている PDCA については、PDCA 本来の 機能を果たしているとはいえない状況にある学校がみられます。それは、 学力向上グランドデザインに記載されている、共通実践事項〈日々の授業 で Do(実行)すること〉として設定されている内容が、以下のような状況 になっていることが考えられます。 ○ そうですね。確か に実行しようと 思っても難しい ですね。 共通実践事項(授業における Do の内容)が実行 しにくいか、実行できないような、あいまいな 表現になっている。 例:話合いを重視する 重視するとは、具体的にどうするのか不明 学習形態を工夫する 工夫するとは、具体的にどうするのか不明 個に応じた支援を工夫する どのような支援をどのように工夫するのか不明 アンダーアチーバーを減らす 具体的にどうやって減らすのかが不明 このような内容の共通実践事項の場合、実行することが難しいので実行 されず、さらに、Check(評価)されることもありません。つまり、PDCA の機能が働いていないということです。大切な Do(実行)が行われないの で、学力向上グランドデザインを作成したことが意味のないものになって しまっていると考えられます。 求められる、具体 的で誰もが実践で きる Do の設定 学力向上グランドデザインの、共通実践事項〈日々の授業で Do(実行) すること〉については、誰もが実践できる具体的な内容になっていること が望まれます。 例えば、次のような内容が考えられます。 ○ ねらい(目標)を明確にする。 ○ 学びたくなるような「めあて(課題) 」を設定する。 ○ 言語活動を充実させる。 ○ まとめや振り返りの活動を確実に行う。 3つめの「言語活動を充実させる。」については、さらに具体的にする 必要がありますが、他の3つの事項は、どれも、授業の基本、かつ大変重 要な要素です。しかも、実行できたかできなかったか、はっきりわかるも のです。 このような共通実践事項ならば、学校が組織として、授業を担当してい る先生がみんなで共通して実践することが可能になってきます。 平成 26 年度、会津教育事務所では、学力向上担当者等研修会、小中学校教育課程研究協議会、全国学力・学習状況調 査の結果を踏まえた個別支援等で、学力向上グランドデザインの「共通実践事項」を具体的にして確実に実践することに ついて指導助言を行ってきました。その結果、学力向上グランドデザインに「平成 26 年度○月版」等と記載し、年度途 中でも、 「共通実践事項」をより具体的なものに改善し、確実に実践している学校が増えてきています。このように、改善 の時期は年度末や学期末と決まっているわけではありません。必要と感じたらすぐに改善し、実行しましょう。 「確かな学力」の向上を図る継続的な検証改善サイクルの確立 ~ 学力向上グランドデザインの全職員の共通理解に基づいた確実な実践と改善 ~ 求められる 確実な Do(実行) 授業を担当してい るすべての先生が 確実に実行するこ とが大切です。 先ほどの企業の場合、Check(評価)するのは実践事項の有効性です。 実践事項の内容が、目標達成のために有効だったのかということです。こ れは、実践事項は計画通り間違いなく行われるということが前提となって います。学校の場合、実践事項が有効だったかどうかを評価することはと ても難しいことです。 しかし、学校においても、確実に実践事項を Do(実行)することが必 要不可欠です。そのために、教職員一人一人が日々意識して意図的・計画 的に取り組むことができるようにすることが最も重要です。そこで、学校 の場合、Check(評価)の内容に、次の項目を入れてみてはいかかでしょ う。 ○ 確実に Do(実行)が行われているかを Check(評 価)のひとつとして組み込む。 本来の PDCA では、手立て(実践事項)の有効性を Check(評価)す るのが「C」ですが、学校の場合、手立て(実践事項)の有効性はもちろ ん、全員が確実に Do「手立て(実践事項)」を行っているかどうかについ ても確認することが必要です。 確認する方法のひとつとして、例えば、次のようなものが考えられます。 ○ 週案の裏を実践事項のチェックリストとして毎週 自己評価する。 ○ 学力向上担当者や管理職が週案や授業参観によっ て状況を把握する。 週案の裏面を使い、授業担当者が全員、日々の授業で共通実践事項を行 っているか、自己 Check(評価)することは、次の効果があります。 ○ マンネリ化して、形だ ○ けになってしまわな いような工夫が必要 だと思うわ。 ○ 授業担当者が、毎週、学力向上グランドデザイン に書かれている日々の授業における共通実践事項 を目にすることになる。毎週目にすることで、確 実な実践につながる。 学力向上担当者や管理職が Do(実行)の状況を把 握することができる。状況が思わしくなければ、 改善を促すことができる。Check(評価) 、Action (改善)を行うことができる。 週単位という非常に短いスパンで状況を把握す る。Check(評価)、Action(改善)についても 同じように短いスパンで行うことができるように なる。 注意! ○ 毎週の Check(評価)ではマンネリ化しやすい。 ○ Check(評価)項目が多いと負担になり長続きし ない。 各学校が創意工夫して、学力向上グランドデザインを機能させるように することがとても大切です。 「確かな学力」の向上を図る継続的な検証改善サイクルの確立 ~ 学力向上グランドデザインの全職員の共通理解に基づいた確実な実践と改善 ~ 本来の Check (評価) 目指す児童生徒像の実現に向けた取組が有効であるかどうかの Check (評価)を確実に行うことが求められています。また、指導の改善のため には、児童生徒の実態を把握する必要もあります。 児童生徒の実態を把握したり、実践事項の取組の成果と課題を把握した りするために、次の調査等を活用しましょう。 ○ 全国学力・学習状況調査 ○ 福島県学力調査 ○ 授業改善のための定着確認シート これらはすべて指導の改善を目的として実施されている調査やシート です。全国学力・学習状況調査及び福島県学力調査は、1年に1度の実施 ですから、ロングスパンでの実態把握や指導の改善について、「授業改善 のための定着確認シート」は、年間6回提供されていますので、約2ヶ月 のショートスパンでの指導の改善について Check(評価)することがで きます。 これらを用いて、自校の学習指導やその改善の状況を把握して、自校の 学力向上のための方策が適切かどうか確認し、改善しながら進めていくこ とが大切です。 ○全国学力・学習状況調査の目的(抜粋) ・学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる。 ○福島県学力調査の目的(抜粋) ・各学校の学習指導上等の課題の把握及びその改善に向けた取組に資する。 ○授業改善のための定着確認シートの目的(抜粋) ・各学校が児童生徒の学習内容の定着状況を把握し、日々の授業改善を図る。 授業を支える 実践事項 朝や放課後の時間を活用して、○○タイムと名付け、学力向上のために 活用している学校があります。こういった活動は、 「わかる・できる授業」 を側面から支える内容となっていることが大切です。 年間を通して、一斉指導による同じようなドリル的な内容を行うのでは なく、授業との関連を踏まえ、次の方法を取り入れましょう。 ○ 個別指導やグループ別指導 ○ 繰り返し指導 ○ 学習内容の習熟の程度に応じた指導 ○ 児童の興味・関心等に応じた課題学習 ○ 補充的な学習や発展的な学習などの学習活動を取り入れた 指導 ○ 調べ学習、発表や討論、話合い、暗唱等 これらについては、授業で行うことはもちろんですが、授業を支える活 動の場面でも、ねらいや授業との関連を踏まえ、授業に生かす、授業に返 すという視点で、積極的に行っていくようにすることが大切です。
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