1 はじめに (1)研究の背景と動機 私の通う川俣小中学校は栃木県北西部の 山間部に位置した小中併設校で、小学生が 5人、中学生は私(中3)と私の妹(中1) の2人しかいない極小規模校である。そし て、残念ながら私が9年間通った川俣小中 研究テーマ 学校は、今年で廃校になる予定だそうであ 「サクラマス」 といって遊ぶところもなく、また同級生の る。そんな環境のため、地元川俣ではこれ 友人も地元にはいないというのが現状であ る。ただ、まわりには豊かな自然がある。 サブテーマ ~ 色 素 ア ス タ キ サ ン チン の研究~ 特に川俣ダムにより鬼怒川がせき止められ てできた川俣湖は魚の多い湖で、魚釣りに くる観光客がたいへん多い。私は、小さい ころから、魚釣りの好きな父親と一緒に釣 りをしていた。そして、川俣湖には「サク ラマス」という大きくて美しい魚がいるこ とを知った。そして、私もいつかこの「サ クラマス」を釣ってみたいと思うようにな っ た 。そ し て 、釣 る た め に も「 サ ク ラ マ ス 」 のことについてより詳しく知りたいと思う よ う に な り 、小 学 校 6 年 か ら「 サ ク ラ マ ス 」 の研究をすることにした。 (2)本研究の目的 小学校の時から「総合的な学習の時間」 を中心に「サクラマス」のことを調べてき 栃木県日光市立川俣中学校 3年 ○○○○ た。そして、昨年は「サクラマスとヤマメ の違い」という点について焦点をしぼり研 究した。その研究では、サクラマスとヤマ メにはいろいろな違いがあることがわかっ てきたが、サクラマスの肉の色が赤いとい う点については、納得のいく結論が出ずに 中途半端になってしまった。そこで、今年 は、サクラマスの肉の色が赤い原因につい て 徹 底 的 に 追 求 し よ う と 思 い 、 テ ー マ :「 サ ク ラ マ ス 」、 サ ブ テ ー マ : ~ 色 素 ア ス タ キ サ ンチンの研究~とした。 本 研 究 で 、「 ~ 色 素 ア ス タ キ サ ン チ ン の 研 究~」としたのは、サクラマスの肉の色が 赤いのは、サクラマスの回遊性という行動 -1- -2- に関連するのではなく、どうやら、食べて いるエサからくる色素に原因していると予 想したからである。海から遡上してくるサ ケの肉の色が赤いのは、アスタキサンチン という色素があるからであり、その色素は サケが食べているオキアミなどの甲殻類か ら摂取しているからだということを知った。 そこで、川俣湖に生息しているサクラマス も、アスタキサンチンという色素をもって いるから身の色が赤いのではないかと考え 本研究をすることにした。 そこで、サクラマスの肉にアスタキサン チンが含まれていることを、まずつきとめ ④プランクトン プランクトンネットを使用し、ボートで引い て大量に採取した。 たいと思った。そして、そのアスタキサン チンが川俣湖の食物連鎖を通してサクラマ スに蓄積されていくことについても調べた い。さらに、産卵期になるに連れアスタキ サンチンの量が肉・卵・皮の部位ごとにど う変化していくかについても調べたい。 (ボートでプランクトンネットを引いている様子) 2 実験の方法 (1)実験に使用する生物の採取 ①サクラマス 週一回の「総合的な学習の時間」にトローリ ングで釣る。ただし、数多く釣れる魚ではない ので、父や知り合い、学校の先生方にも協力し ていただいた。 (プランクトンを採取しているところ) ②ワカサギ ⑤その他(サクラマス以外のマス類) 5月下旬~6月にかけての産卵期に川に遡上 してきたものを捕獲した。 (ニジマス、ヒメマス、ヤシオマス、ヤマメ) ニジマスは川俣湖のトローリングで、ヤマメ は川俣の渓流で釣りをして、ヒメマスは中禅寺湖 ③エビ(スジエビ) のトローリングで、ヤシオマスは栗山の土呂部の 6月ごろになると川俣湖の岸の浅いところに 養殖場で買ってきたものを使用した。 寄ってくるので、そこを網で捕獲した。 -3- -4- (2)色素の抽出 ③分離 サクラマスやワカサギ、スジエビ、プランクトン などから色素を抽出するためにいくつかの方法を ミキサーでかくはんしたものを、遠沈管に入れ、 遠心分離器にかけた。 試してみた。いろいろな方法で試してみたが、な かなかうまくいかず、2ヶ月かかって次の方法で 抽出することにした。 ①使用した薬品 飼料30gにヘキサン25mlと50%メタノー ル50mlを混ぜミキサーでかくはんした。 遠心分離は、 回転数:3000 時 釣ってきた魚のはらわたを取り除き、三枚にお 間:10分 ④分取 ろした。そして、皮の部分を剥ぎ取り肉片だけに 遠心分離器にかけると、1番上に色素が溶け した。ただし、全ての生物によって、質量を統一 たヘキサン層ができるので、そのヘキサン層だ できなかったため、 けを分取した。 飼料 : ヘキサン:50%メタノール 30g (6 25ml : 5 50ml : 10) というように、3つの比が常に一定になるように した。 ②かくはん ミキサーでのかくはんは全て3分とした。 -5- (抽出した色素) -6- (3)色素の分析 うかを調べた。一般的にはRf値(展開速度の比) ①薄層クロマトグラフィーによる定性分析 を使用するわけだが、さまざまな条件を同じにす クロマトグラフィーにより、抽出した色素を分 離できるため、その色素の中にアスタキサンチン が含まれているかどうかの定性分析を行った。ま ることが困難と考え、人工アスタキサンチンを使 用することにした。 〈人工アスタキサンチンについて〉 た、色の濃さによって色素の量が多いか少ないか 栗山地区の土呂部の養殖場から人工アスタキサ をある程度判断できるため、半定量分析としても ンチンと天然アスタキサンチンを頂いた。天然ア 使用した。 スタキサンチンは、麦芽から採取したもので、薄 最初はペーパークロマトグラフィーでやってみ 層クロマトグラフィーでは、アスタキサンチン以 たが色が薄くあまりはっきりわからなかったので、 外の色素も含まれていたため、アスタキサンチン より鮮明にしかも半分の時間で結果のわかる薄層 しかない人工アスタキサンチンを使用した。 クロマトグラフィーを使用することにした。 ②分光光度計による定性分析 色素が多いか少ないかの違いは、目で見た色の 濃さによってもある程度判断できるが、客観的な 数値として比較したかったため、分光光度計を使 用した。 (スポッティングしているところ) ・ベース補正:ヘキサンで実施した。 ・波長:400~700nm ・速度:中速 ・結果:吸収曲線のグラフとピーク時ABS (展開しているところ) 薄層クロマトグラフィーによる定性分析では飼 料の色素と同時に人工アスタキサンチンをスポッ トし、展開した。そして、展開速度の比較(移動 距離)により、その色素がアスタキサンチンかど (分光光度計による分析結果の例) -7- -8-
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