第 50 回日本理学療法学術大会 (東京) 6 月 7 日(日)ABC 区分 ポスター会場(展示ホール)【予防理学療法 6】 P3-C-1084 地域在住一般中高年女性の年代別による運動機能の変化及び転倒歴との関連に ついて 倉地 洋輔1),柳原 順子2),加藤 剛平3) 1) からだ康房,2)町田市堺第 2 高齢者支援センター,3)相生リハビリテーションクリニック key words 高齢者・運動機能・転倒予防 【はじめに】 加齢に伴う運動機能の低下は ADL の低下や転倒を招き, 容易に要支援・要介護状態になることが指摘されており, 運動機能低下予防は喫緊の課題である。しかし各地域で健康増進及び転倒予防のための事業が盛んに行われている一方で,介護 予防事業における健康指導に際して性差や年齢の区別なく画一的な内容が指導され,十分な配慮が不足している場合が多いと の報告(中ら,1997)もある。そこで本研究の目的は,東京都 M 市において効果的な転倒予防プログラム立案のために,東京 都 M 市在住の一般中高年女性の年代別による運動機能の変化及び転倒歴との関連を明らかにすることとした。 【方法】2012 年 10 月∼2014 年 9 月までに東京都 M 市 O 地区において開催された歩く力測定会及び地域介護予防教室に参加し た者のうち女性 73 名(年齢:73±6.4 歳,身長:150.4±6.1cm,体重:50.6±7.9kg)を対象とした。運動機能は①等尺性膝伸展 筋力体重比② 30 秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS 30)③握力④ Timed Up Go Test(以下,TUGT)⑤開眼片脚立ちとした。 ①については,端坐位膝 90̊ 屈曲位にてアニマ社製 μ tas を用いて等尺性膝伸展筋力を左右それぞれ 2 回測定し,左右の最大値 の平均値を体重で除した値を用いた。転倒歴については測定日に参加者が記入した基本チェックリストの過去 1 年以内の転倒 歴を尋ねる項目を用いた。運動機能測定結果と年齢との関係について Spearman の順位相関係数を用いて検討した。各運動機能 測定結果の各年代(60 代,70 代,80 代)の群間比較については Tukey 検定を用いた。各運動機能結果と転倒との関連について ロジスティック回帰分析を用いて検討した。統計解析には統計ソフト R3.0.0 を用い,統計学的有意水準 5% 未満とした。 【結果】年齢との間に有意な相関を示したのは等尺性膝伸展筋力体重比(rho= 0.30) ,TUGT(rho=0.53) ,握力(rho= 0.43) , 開眼片脚立ち(rho= 0.517)であり,CS 30 は有意な相関は認められなかった。等尺性膝伸展筋力体重比の平均値は,60 代で 0.38±0.10kgf kg,70 代 で 0.37±0.11kgf kg,80 代 で 0.32±0.08kgf kg あ っ た。CS 30 の 平 均 値 は,60 代 で 17.8±4.6 回,70 代で 17.5±4.1 回,80 代で 16.0±6.5 回であった。握力の平均値は,60 代で 23.1±3.3kg,70 代で 20.9±3.4kg,80 代で 18.3±5.9 kg あった。TUGT の平均値は,60 代で 6.59±1.2 秒,70 代で 7.22±1.31 秒,80 代で 8.64±1.67 秒であった。開眼片脚立ちの平 均値は,60 代で 51.1±16.2 秒,70 代で 43.7±19.6 秒,80 代で 19.4±21.9 秒であった。TUGT において 60 代と 80 代,70 代と 80 代,握力において 60 代と 80 代,開眼片脚立ちにおいて 60 代と 70 代,70 代と 80 代,60 代と 80 代との間に有意差が認められ た。各運動機能測定結果と転倒歴との間には有意な関連は認められなかった。 【考察】運動機能測定項目 5 項目のうち,CS 30 を除いた 4 項目において年齢との相関が認められた。年代別にみると動的バラ ンステストである TUGT は 60 代と 70 代の間では有意な差が認められなかったが,静的バランステストである開眼片脚立ちテ ストでは 60 代から 70 代の間に有意にその能力が低下しており,動的バランスに先んじて静的バランスの能力が早期から低下 する可能性が示唆された。一方で,下肢筋力に関連する等尺性膝伸展筋力体重比,CS 30 に関しては年代毎における有意差が認 められなかった。一般中高年女性の加齢による運動機能への影響を評価する方法としては,筋力測定より開眼片足立ちテストが 鋭敏に評価できる可能性が示唆された。各運動機能測定結果と転倒歴との間には有意な関連は認められず,本研究から転倒の原 因を明らかにすることはできなかった。高齢者に於いて運動機能レベルが高いにも関わらず転倒している場合は二重課題遂行 能力の低下との関連が指摘(山田 2012)されており,転倒予防のためには運動機能検査だけでなく二重課題遂行能力などの認知 機能検査も視野に入れて評価項目を再検討する必要があると考えられた。本研究の限界として,対象者数が 73 名と少ないこと が上げられ,本研究の結果を一般化するには注意が必要である。今後は対象者数を増やし,年代別の運動機能の変化と転倒歴と の関係を検討するとともに地域に合わせた転倒予防プログラムを作成していきたい。 【理学療法学研究としての意義】理学療法士として地域の健康増進・介護予防に関わるに当たり,その地域の年代別の運動機能 特性を考慮したうえで運動プログラムを作成することが必要である。本研究の結果は東京都 M 市における運動プログラム作成 の基礎資料になると考えられる。 " " ! " " " ! ! " " " "
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