理系のための博物館資料論6月20日 第11講:保存科学とIPM 1.標本被害(収蔵庫、展示室、調査研究、輸送中) 1)物理的:変形、変質、汚染、欠損、滅失 ・日常的なもの:異常温度、異常湿度、水濡れ(漏水・結露・雨漏り)、光(日射・照明)、震動 ・自然災害:地震、津波、落雷、浸水 ・人為災害:火災、事故、破壊行為 2)化学的:化学変化、腐食、汚染 ・日常的なもの:高温低温、水分、化学物質(殺虫剤、建材内化学物質)、大気汚染物質、酸性雨 ・自然災害:火山ガス、温泉ガス ・人為災害:火災、化学物質 3)生物的:腐敗、食害 ・微生物、カビ、昆虫・その他の小型節足動物、鳥類(糞)、哺乳類(ネズミ) 4)社会的:形状変化なし ・盗難、誹謗中傷、良い/悪い象徴 2.対策 1)施設(収蔵庫・展示室) ・入口の二重扉化、自動温湿度管理装置(空気調節装置=空調)の導入、防虫剤の使用、 ・湿度調整素材(木材)の使用、照明の調節、(入館者による)防塵対策 ・温湿度調整保管設備=保存箱の使用(茶箱、桐箱、中性紙容器) 2)日常管理 ・燻蒸→臭化メチルは2005年から使用禁止のため代替方法による ・防虫剤・殺虫剤の散布・塗布(収蔵資料・展示資料) ・冷凍・高温乾燥(新規受入資料、借用資料) 冷凍処理:-20--40℃7日間、 高温処理:55-60℃、8-18時間 ・温湿度調節 保存空間、展示空間、輸送空間 ・監視(モニタリング)と記録 温湿度、振動など→自動記録装置(データロガー)が普及 3.個別対策 1)照明 2)温湿度 美術・博物館用蛍光灯の使用、低照度展示 空調設備、展示ケースの使用 3)害虫 臭化メチル使用禁止により日常管理の重要性増加 4)カビ 上記の害虫対策では殺菌できない→防カビには湿度(相対湿度)を60%以下に保つ 5)輸送 美術梱包(個別固定、クッション、専用箱、エアーサスペンション車、特殊カプセル) 6)地震 建物の耐震補強、免震装置の導入 7)防犯 監視員の配置、監視カメラの設置 4.とくに注意を要する資料と被害因子 ・皮製品(皮革、毛皮、その他):昆虫(イガ、コイガ)の食害 →防虫・殺虫の徹底 ・酸性紙:とくに戦時中から戦後まもなく(1940年代後半から1950年代前半) →アルカリ性物質散布 ・CD、DVD:温度変化、高温、物理的損傷に脆弱 →恒温保存、バックアップデータの分散保存 【参考文献】 京都造形芸術大学編.2006.文化財のための保存科学.375pp.角川学芸出版、東京. 馬淵久夫他編.2003.文化財科学の事典.522pp.朝倉書店、東京. 5.東日本大震災と資料の救出 1)文化財レスキュー事業 ・実施主体は文化庁文化財部美術学芸課 ・正式名称は「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援事業」 文化財レスキュー事業について http://www.bunka.go.jp/bunkazai/tohokujishin_kanren/pdf/bunkazai_rescue_jigyo_ver04.pdf 文化庁長官メッセージ http://www.bunka.go.jp/bunkazai/tohokujishin_kanren/chokan_message.html ・類似の対策に「東日本大震災被災文化財建造物復旧支援事業」(文化財ドクター派遣事業) http://www.bunka.go.jp/bunkazai/tohokujishin_kanren/pdf/bunkazai_doctor_jigyo.pdf ・文化財保護・芸術研究助成財団が資金援助(通称:平山財団、募金も受付中) http://www.bunkazai.or.jp/index.html ・阪神・淡路大震災で初実施 http://www.bunkazai.or.jp/02bunkazai/02_01.html 2)陸前高田市立博物館の押葉標本救出作戦 ・西日本自然史系博物館ネットワーク/日本生態学会の人脈を活かし、岩手県立博物館が実施 日本生態学会「博物館と生態学」 西日本自然史系博物館ネットワーク 岩手県立博物館による説明 知床博物館も参加 http://sites.google.com/site/museumecology/jjecol http://www.naturemuseum.net/blog/ http://www.geocities.jp/curaiwt/rescue/botany.htm http://shir-etok.myftp.org/news/押し葉標本の修復作業が終了しました
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