2010.老舗企業を考える

山添・参考資料
22.07.12
1 .日 本 の 老 舗 企 業
昔から日本は独創性が無く、外国の真似をするのが上手である言われているが本当にそ
うだろうか。
例 え ば 文 学 の 世 界 で の 源 氏 物 語 は 世 界 的 に 有 名 で あ る 。ま た 万 葉 集 は 宮 廷 人 か ら 、防 人 、
読み人知らずと幅広い人たちに読まれているのは豊富な感性と教養がある。また、中国か
ら 入 っ て き た 漢 字 に し て も 使 い 勝 手 の 良 い 文 字 に 換 え 、カ タ カ ナ・
「 ひ ら が な 」の 創 出 と 創
造 性 の 高 さ が う か が え る 。米 国 か ら 入 っ た 9 人 制 の 野 球 に し て も そ の 時 の 人 数 に よ り 三 角
ベース、キャッチャ無しのゲームへと変えて遊んだ。子供のときから日本の四季を利用し
て自然の中で遊びを創造することで、想像性豊かに育っている。特に農耕民族として自然
の天候と四季に合わせて創意・工夫が日本の歴史である。
伝創立年
名
称
業
種
場 所 と ホームペ ージ
589 年
金剛組
宮大工
大 阪 市 ( h t t p: / / w w w. ko n g ogu m i. c o. jp /)
708 年
慶雲閣
温泉旅館
山 梨 県 ( h ttp: / / www. keiu n kan .co. jp /)
717 年
古 まん
温泉旅館
兵 庫 県 ( h ttp: / / www. sen ne n n o yu- ko m an. c o m/ )
718 年
法 師 (善 吾 桜 )
温泉旅館
小 松 市 ( h ttp: / / www. h o- sh i.co. jp/ )
889 年
㈱田 中 伊 雅 仏 具 展
仏具
京 都 市 ( h ttp: / / www. tan akaig a. co m /)
971 年
平井常栄堂
医薬品
京 都 市 ( h t t p: / / w w w. jyo e id o. c om / jyo e ido /)
一 和 (一 文 字 屋 和 輔 )
和菓子
京都市
10 00 年
( 参 考 : http://homepage2.nifty.com/shinise/Book/nen_1.htm)
表‐1
1000 年 以 上 続 い て い る 老 舗
我が国は、世界で群を抜く「老舗企業大国」でもある。創業百年を超える老舗企業が、
個 人 商 店 や 小 企 業 を 含 め る と 、1 0 万 社 以 上 あ る と 推 定 さ れ て い る 。そ の 中 に は 飛 鳥 時 代 、
西 暦 578 年 に 設 立 さ れ た 創 業 1400 年 の 建 築 会 社 「 金 剛 組 」 だ と か 、 創 業 1300 年 に な ろ
う か と い う 北 陸 の 旅 館 、1200 年 以 上 の 京 都 の 和 菓 子 屋 な ど 、千 年 以 上 の 老 舗 企 業 も 少 な く
ない。
世界で千年以上も続いている老舗企業は 7 件もあり、その総てが日本に存在している。
(老舗企業の研究・横澤利昌より一部追記)
国名
世 界 の 老 舗 が 加 盟 し て い る と い う 経 済 団 体 「 エ ノ キ ア ン 」( 本
老舗企業数
3146
部 : パ リ ) が あ り ま す 。 1981 年 に 設 立 さ れ 、 家 業 歴 200 年 以 上
ドイツ
837
の 企 業 の み が 加 盟 で き ま す 。現 在 、加 盟 企 業 は 42 社 。ヨ - ロ パ
オランダ
222
の 伝 統 産 業 は ワ イ ン 、ガ ラ ス 製 品 、宝 石 な ど で 、イ タ リ ア 16 社 、
フランス
196
フ ラ ン ス 12 社 、 ド イ ツ 4 社 、 オ ラ ン ダ 1 社 、 北 ア イ ル ラ ン ド 1
アメリカ
14
社、ベルギー1 社、スイス 2 社です。そこに日本の企業が 5 社
日本
中国
9
台湾
7
インド
3
表‐2
加盟(月桂冠㈱、岡谷鋼機㈱、㈱赤福、虎屋㈱、法師旅館)
200年以上続いている世界の老舗企業
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ヨ ー ロ ッ パ に は 200 年 以 上 の 会 社 の み 入 会 を 許 さ れ る「 エ ノ キ ア ン ( Henokiens) 協 会 」
( 本 部 パ リ http://www.henokiens.com/index_gb.php) が あ る が 、最 古 の メ ン バ ー は 1291 年 に 設
立 さ れ た イ タ リ ア の ガ ラ ス 工 芸 メ ー カ ー ( BAROVIER&TOSO ) で あ る 。 し か し 、 こ れ よ
りも古い会社や店が、我が国には百社近くもある。
お隣の韓国には俗に「三代続く店はない」と言われており、せいぜい創業80年ほどの
会社がいくつかあるに過ぎない(隣国の韓国は2社
斗 山 ( 1 8 9 6 年 )、 東 洋 薬 品 工 業 ( 1 8 9 7 年 ))。 中 国 で も 「 世 界 最 大 の 漢 方 薬 メ ー カ ー 」 北
京同仁堂が創業340年ほど、あとは中国茶、書道用具など百年以上の老舗が何軒かある
程度である。
さらに興味深いのは、百年以上の老舗企業10万社のうち、4万5千社ほどが製造業で
あり、その中には伝統的な工芸品分野ばかりでなく、携帯電話やコンピュータなどの情報
技術分野や、バイオテクノロジーなど先端技術分野で活躍している企業も少なくないこと
だ 。ま た 、200 年 以 上 続 い て い る 老 舗 企 業 は 世 界 で 約 4,400 社 あ り 、そ の 内 約 70%( 3,146
社)が日本の企業である。中国や韓国では国家や政府を信用せず、頼りになるのは家族と
金 し か な い と す る 価 値 観 で あ る 。 一 方 、 わ が 国 は 約 100 年 に 及 ぶ 戦 国 時 代 , 明 治 維 新 、 西
洋文化の輸入、不況に明け暮れた大正時代、第二次世界大戦、敗戦、アメリカ物質文明と
大きな筋目では多くの老舗が消え、新しい企業が発生している。これらの長寿企業は何も
しないと伝統の殻に閉じこもり、長寿の老廃物の山、頑固者と半端者が並存し、衰退の道
を歩む。
長年の伝統によって培われた信用を守り、改良に改良を重ね、洗練された品質や技術が
一般に知られている知名(暖簾・ブランド)だが、ある反面、陰気で時代に取り残される
面もある。
米国流の原理・原則を言い、数・定量化を忘信するべきではない。この手法が蔓延る以
前、日本の技術層は自らの経験則を大切にしていたはずである。今こそ、原点を取り戻す
べきではないか、生きてきた経験から学んだ事を無視すべきではない。なぜなら、それら
は他の何よりも現実そのものである。
終身雇用・年功序列システムの中には社員教育によるレベルアップ、能力のある者には
チャレンジする機会を与え、技術の不足時には外部の力を借り、外部からの人材登用シス
テムをも取り入れ、常に工夫と改善に努めて老舗企業へと成長してきた。
商人は創業者の才覚一つで億万長者になれるような急成長ができるだろうが、しかし、そ
こには事業を支えている独自技術がないので、創業者が代替わりしてしまえば、あっとい
う間に没落もする。
『職人』は技術を磨くのに何年も、何代もかかり、急に富豪になったりしないが、その
技術を生かせば、時代の変換を乗り越えて、事業を営んでいけるのである。その基には企
業理念が存在している。
このノウハウを文書化し、記録に残すことで技能・技術文書の貴重書伝承という形で受
け継がれる。
時代のニーズに合わせて伝承技術を生かすのに役立つ手法の一つとして情報管理があると
考える。
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2.何を継承してきたのか
私たちが事業を継承する時には次の3つを継承する
①名称の継承
永 年 に 培 っ て き た 仕 事 の 信 用 に よ る 「 の れ ん 」「 ブ ラ ン ド 」
②権限の継承
仕事を遂行する上での権限を与えられるが、同時に責任も継承している。これは権限
を 遂 行 す る た め に は 部 下 の 教 育 と 仕 事 を 円 滑 に 進 め る た め の 社 員 の 環 境( 従 業 員 の 満 足
度 )が 大 き く 影 響 す る 。そ の た め に も 仕 事 に 対 す る 厳 し さ の 中 に 、俗 に 言 う「 面 倒 見 の
良い上司」であることを忘れてはいけない。
③資産の継承
組織の資産である人・もの・金を継承するが、これは資産を消費するのでなく、組織
の創造により資産を殖やし、次世代に継承する役目がある。
1)ブランド
ブランドとはありがたいものである。新しく世間から認知されるまでに大変な努力と時
間が必要であるが、商品に対しても絶対的に信頼され、品質的に問題されることなく購入
される。だが、一旦、顧客を裏切るとその瞬間に事業が立ち行かなくなるのもブランドの
怖さである。
老舗の社長は自分の会社の製品に絶対の自信を持っている。これが老舗の強みだとおも
う 。と こ ろ が 同 時 に そ の 自 信 が 視 野 の 狭 さ を も た ら し 、変 化 へ の 対 応 を 遅 ら す こ と に な る 。
これが弱みである。
変化を生み出していくためには、いまを変えなくてはならないのであるが、変え方が問
題なのである。
本当の伝統とは、単に受け継ぐだけの伝承とは異なり、その中に新たに発展する生命力
をもち、つねに新しいものを創造していく力があるものである。いつの時代も、若者たち
が前の時代のものを受け継ぎ、それを作り変えて、次の時代へと渡してきた。その結果が
老舗としてのブランドである。
2)理念
老舗は、初めから老舗であったわけではない。長い年月をかけ、代々暖簾を育んできた
結果生まれるものである。
変えるものと、変えないものがあってこそ初めて意味を持つ。
変えるとは変えないものを探し出すことなのでもある。
老舗の「3種の神器」を考えると次のことが挙げられる
①商売・屋号の継続性:長い年月をかけて培ってきた商売と看板
②家訓:家訓・社訓といった経営理念の存在
③創業者一族の支配:創業者一族が経営の支配権を握っていること
( 老 舗 の 教 え 1996 年 2 月 神 田 良 、岩 崎 尚 人 著
日本能率協会マネジメントセンター発行)
ビ ジ ネ ス の 継 承 は 血 の 継 承 で は な く 、「 知 の 継 承 」 で な け れ ば な ら な い
どういった人材が自社にとって必要な人材かを見極め、企業閨閥や内部の論理といった
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しがらみに縛られることなく登用・活用していくことは、事業継続の重要な要素である。
知の発展には知を外部から取り込むことが必要不可欠となる。この取り組みそのものに
も、実は知恵がいるのである。そう簡単に、外部から知を取り入れられるわけがない。
老舗は、絶えず伝統を問い直し、何を伝え、何を変えるか真摯な態度で追及し続けてい
る。そして、こうした努力の結果こそが、老舗の看板をつくっているのである。
3)技能と技術
技能と技術の定義はあるいは区分は明確ではないが、以下のように理解できるのでは
(1 )ナ レ ッ ジ と し て の 技 術 と 技 能
①技術は形式知
*コストをかければ自動化できる作業能力や知識
*言葉や数値で表現できる(言語的)作業能力や知識
②技能は暗黙値
*コストをかけても自動化できない作業能力や知識
*言葉や数値で言い表せないような(非言語的)作業能力や知識
つまり、技能と技術はものづくりでは車の両輪である。どちらがかけても上手く走らな
い。また、ベテランの技術者は技術を上手に活用するための技能を取得していることを忘
れてはいけない。
(2 )技 術 の レ ベ ル
技術者が得る情報の質やレベルによって、技術者の質やレベルも変わる。企業の技術が
市 場 で 活 躍 し て い る の は 図 -1 に 図 示 し た よ う に ほ ん の 一 部 で あ る 。市 場 に 出 る 技 術 が 生 み
出すまでに多々の眠っている技術が存在することを忘れている。
商品・製品
市
場
技術の質・レベル
企業内
企業マネジメント
企業理念
水 の 比 重 : 0.9168
図-1
市場に現れる企業の技術
例えば、失敗しなかったデータは無難であるが、その分使えないことが多い。
それは規定内の答えしか出てこないから。
失敗のデータは価値が高い
失敗したから失敗なのではない。失敗を失敗のまま放置したとき、失敗が失敗として固
定 さ れ て し ま う 。(「 抜 く 技 術 」 上 原 春 男 )
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失敗とか限界を逆境として捉えるのでなく、次の成功や再成長へのステップとして考え
ることが大切である。
(3 )技 能 伝 承 で の 問 題 点
①熟練技能の伝承がうまくいっていない
②自動化や機械化の進展によって技能伝承の機会が少なくなっている
③熟練技能の伝承期間が長くなっている
④熟練技能者の高齢化によって、早期伝承の可能性に対する危機感があり、将来の見通
しを悪化させている
⑤現行の伝承システム・方策は、必ずしもうまく機能していない
⑥ 熟 練 技 能 者 の 育 成 ・ 確 保 の 方 法 に つ い て は 、 職 場 の OJT 断 然 1 位 を 占 め る に も か か わ
ら ず 、 OJT の 効 果 的 な 実 施 事 例 の 報 告 が 見 ら れ な い
⑦ OJT の プ ロ セ ス ・ 方 法 論 研 究 が 不 十 分 で あ る
(4 )技 能 の レ ベ ル
①基本技能:本人の努力が重要な要素
② 実 践 技 能 : 作 業 習 熟 ( 標 準 書 作 成 ・ 実 施 ・ 作 業 観 察 と 改 善 ・ 作 業 書 改 定 )・ 従 来 型 OJT
③熟練技能:勘・コツの技能取得
師弟関係をつくる、師匠の技を盗む、やらせてみて評価する仕組みをつくる
④卓越技能
(「 熟 練 技 能 伝 承 シ ス テ ム の 研 究 」 山 本
孝著
白桃書房刊より)
現実には専門職・ライン監督職と熟練技能労働者に分けることが出来る。だが、この熟
練 技 能 の 取 得 に は 約 10 年 は か か る と 言 わ れ て い る が 、製 造 現 場 の 自 動 化 の 導 入 に よ り 次 の
ように分けられている
①単純技能労働者
②ライン作業者
③実践技能者
4)伝承するものを選別する
会社の仕事は一定のパターンがあり、どの部署にも似たような課題が発生し、先輩が残
した資料を読めば、会社におきたことをどう解決したか、何が重要で何が重要でなかった
か直に分かる。
新しい課題に見えても、実は似たような課題が過去に何度も検討されている。それを学
んだ方が、自分のわずかな経験や知識よりはよほど効率的で効果的に処理が出来る。
問 題 は 永 年 に わ た っ て 蓄 積 さ れ た 貴 重 な 資 料 が 重 要 な『 宝 』
( 技 術 )で あ る と い う 意 識 が
ない。また、それを体系的に伝えていくシクミが出来ていない。その為に、往々にして過
去の思い出としてオフィスや書庫で鎮座している。
3.どのような方法で
米国の景気に左右されて、日本の景気も左右されているのはご存知のようである。これ
は、米国の考え方が正しいと言う思考によるところが多い。また米国イコール世界と言う
考 え 方 、『 米 国 か ぶ れ 』 と い う こ と が こ の 度 の 不 景 気 を 作 り 出 し た 原 因 で あ る と 考 え る 。
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1)日米の考え方の相違
(1)日本と米国の資本主義の違い
①法人資本主義(日本型)
法 人 企 業 を 支 配 す る の は 経 営 者 で あ る 。( 株 は 投 資 )
企業の利害関係者とは従業員、株主、顧客、仕入先、取引先、取引銀行、地域など
企業は「継続する事業関連体
a.長 期 的 な 事 業 展 開 を 企 て る
b.多 様 な 利 害 関 係 者 か ら 成 り 立 つ
日 本 で は 個 人 投 資 家 が 自 分 の 年 金 作 り の 一 環 と し て 、 株 式 を 10 年 、 20 年 ず っ と 保 有
し、毎年の配当金を楽しみにもらえる図式であり、個人投資家は企業にとって最終顧客
でもある。生活者、消費者としてその企業の製品やサービスを熱烈支援してくれ、同時
に株主として企業の長期安定を見守っている。つまり、企業のパートナーでもある。
② 株 主 資 本 主 義 (米 国 型 )
企 業 の 所 有 者 は 株 主 で あ る 。 経 営 者 は 株 式 価 値 を 高 め る 役 目 で あ る 。 (株 は 投 機 )
企業は株主のための存在である。
企業を構成する従業員はそれぞれ個人的利益を求め、一時的にそこで仕事をしている
だけだ。企業組織は長期的に継続する実体でなく、そこで利益(報酬)を稼ごうと諸個
人の集まりに過ぎない。
企業組織は存在しない。実体を持たない擬制された法人に過ぎない。従業員はただ、
契約によって請け負った仕事を遂行していだけである。
(『 大 転 換 』 脱 成 長 社 会 へ
佐伯啓思著
NTT出版を参考に作成)
そ の 結 果 、 1995 年 か ら の 10 年 間 を 比 較 し て み る と 、 大 企 業 に お い て は 企 業 の 利 益 が
2倍であるが、従業員の給与は横ばいで役員の給与は2倍から3倍に、配当は4倍に膨
れている。これは顧客や従業員を無視して、株主と役員のために企業があるようになっ
ている。
日本が手本にした米国経済には二つの側面がある。
a.産 業 経 済 : 製 作 者 本 能 に よ る 産 業 活 動 … 日 本
b.金 融 経 済 : 略 奪 的 本 能 ( = 財 民 資 本 主 義 ) に よ る 金 融 ( 技 術 ) 活 動 … 米 国
日 本 が 米 国 よ り 生 産 性 が 高 く な っ た 時( 1980 年 代 )に 、日 本 型 シ ス テ ム が 時 代 遅 れ で あ
る(現実には議論がされていない)と構造改革(グローバル経済)が米国より押し付けら
れ た ( 均 質 的 な 巨 大 競 争 市 場 が で き て い る わ け で は な い )。
現 実 の 1980 年 代 の 米 国 を 見 て み る と 政 治 的 権 力 闘 争 が 行 わ れ て い た 感 が あ る 。
a.北 米 型 : 自 動 車 ・ 電 機 産 業 に よ る 大 量 生 産 、 大 量 消 費
産業主導型、労働賃金の上昇による消費拡大の循環
b.南 部 型 : 奴 隷 制 度 と 植 民 地 的 プ ラ ン テ ー シ ョ ン に よ る 一 次 産 品
搾取型経済類型、低賃金、コストを抑えることによって利潤を生み出す
c.東 部 型 : 金 融 業 、 高 度 な サ ー ビ ス
d.西 部 型 : 自 由 な フ ロ ン テ ィ ア 精 神 、 ベ ン チ ャ ー ビ ジ ネ ス
東西型は個人主義的、市場競争的であり、非常勤労働(派遣?)が多い。
(2)文化と文明
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日本文化というが、文化とは伝統を積み上げていくことでその国の価値体系に意味を
与える。一方、アメリカ文明というこの文明は普遍的な力を持っているが、同時に衰退
が始まる(共同社会の約束事を壊していく:戦争と略奪により成り立つ社会)
日本文化には老舗(のれん)という考えがある。
老舗の要件として次の 3 つが挙げられる
①先祖代々続いていること
②今なお繁盛していること
③地域から認められている
『のれん』は信用の象徴であり、暖簾を傷つけないということが最重要ごとである。
① た だ 、古 い か ら で な く 善 徳 を 積 む こ と に よ っ て 、社 会 の 信 望 を 得 て い る か ら で あ る 。
また、時代の変化に対応する根強い生命力を培養したものでもある
②暖簾は闘志の象徴(自助独立)
競争は社会発展の原動力であり、それによって産業が栄え、国民生活が豊かになる
③暖簾は人の和の象徴である
一人一人の人間性を尊重している
企業として生命を保持してゆくためにいかなる基本的態度が必要か
①自己革新を繰り返さねばならない
②人材養成
人間を尊重し、かつその実力養成に力点を置く
③地域社会への奉仕(地域振興)
地域住民の支援と協力によって可能となる
(3)構造改革や規制緩和
日本社会は過度に平等すぎる、これはまるで社会主義のようなもので、能力に応じて
格 差 を つ け る の が 望 ま し い 。( 格 差 を つ け る こ と で 人 々 の 勤 労 意 欲 は 高 ま る だ ろ う )
フリーター・派遣労働・ワーキングプアーを作ることで、労働市場を流動化し、労働
形態を多様化し、労働コストを下げる。
その結果次のマイナス面が現れた
a.所 得 格 差
b.フ リ ー タ ー や 派 遣 労 働 と い う 雇 用 不 安
c.ワ ー キ ン グ プ ア 問 題
d.金 融 危 機
e.食 料 や 資 源 価 格 の 暴 騰 ・ 暴 落
構造改革が生み出した問題点を示すと
a.所 得 格 差 と 労 働 の 不 安 定 性
b.金 融 市 場 の 不 安 定 性
c.食 糧 ・ 資 源 市 場 の 不 安 定 性
d.I T 市 場 の 不 安 定 性
(4)日本型システムが時代遅れであったのだろうか?
日本による生産活動では労働・資本・自然資源・知識という生産要素を商品化して生
産物が出来ている。
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米国のように個々を市場で商品化として取り扱うには無理がある
Ex. 労 働 : 労 働 時 間 の 規 制 、 賃 金 の 規 制 、 雇 用 契 約 ・ 保 証
(日本では長期雇用、年功賃金制という慣行)
資本:金・銀ではなく紙幣はたんなる紙切れにすぎない
資源:自然的条件による
知識:公共的な性格を持ち、世代を超えて伝達する教育
資本のグローバルな自由化や金融の規制の撤廃はバブル的投機を引き起こすような条
件により金融危機を作り出した。
日本の物価水準が高すぎるので消費者が割を食っている。
a.規 制 緩 和 と グ ロ ー バ ル 化 に よ っ て 物 価 は 下 が り 、 消 費 者 の 満 足 は 増 大 し た か ?
b.物 価 の 低 下 は 生 産 コ ス ト の 削 減
c.労 働 コ ス ト が 引 き 下 げ ら れ
d.海 外 に 生 産 拠 点 を 移 転 す る
e.労 働 者 ・ 授 業 員 と し て の 生 活 状 況 の 悪 化
IT 革 命 は 実 学 よ り 虚 学 を 求 め ら れ た 。
a.我 々 の 生 活 で は 膨 大 な 情 報 蓄 積 を 必 要 と し な い
b.過 剰 な 情 報 量 は IT バ ブ ル を 引 き 起 こ し た
c.そ の 過 剰 性 が バ ブ ル を 崩 壊 さ せ た
d.先 発 後 進 ( 投 資 効 果 ? )
2)終身雇用制度・年功序列型賃金制度の活用
この制度は企業の基礎技能・知識の修得から、よき企業人・社会人としての育成に至る
まで、積極的に経営資源(人・設備・資金等)を投入して、まさに自前によるフルコース
での整備・充実がなされている。
終身雇用制度は雇用の安定化と教育投資効果による確実な回収が見込まれ、年功序列型
賃金は年齢に対する技能・知識の取得と責任を課するものでもある。
また、技能伝承教育として機能し、わが国における製造業の発展をベースの部分で支え
てきたと言える。だが、現実には海外への移転や厳しいリストラ等により、熟練技能の伝
承にも支障が生じているのが実体である。
企業にとって大事なのは大きくすることでなく。永続することである。
(伊那食品工業会長
塚越
寛
Nikkei Business
2009 年 5 月 25 日 号 よ り )
a.人 件 費 は コ ス ト で は な い 。 だ か ら 、 リ ス ト ラ は し な い
b.社 員 が 安 心 し て 働 け る よ う に 、 年 功 序 列 制 度 を 守 る 。
成果主義、能力給は導入しない
c.急 成 長 は 必 ず し も 善 で は な い 。 低 成 長 で も 末 広 が り の 「 年 輪 経 営 」 を 目 指 す
d.売 り 上 げ や 利 益 は 目 的 で は な く 、 企 業 経 営 の 手 段 に 過 ぎ な い 。
企業の成長とは、
去年より今年、今年より来年と、社員が幸せや豊かさを感じられるようになること
3 ) OJT・ 教 育 制 度
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ものの作り方を二つに分類すると
a.熟 練 型 ・ 日 本 : 完 璧 な 仕 事 を 期 待 す る
支持は要点だけで、具体的な判断は各所の熟練技能者に任される(分散処理)その
為にも基本をしっかりと叩き込む
b.マ ニ ュ ア ル 型 ・ 米 国 : 非 熟 練 工 で あ っ て も 、 一 定 の 品 質 が 製 造 で き る
製造工程全体に付いて詳細なマニュアルを準備し、設計変更の際には技術者の負
担が大である(中央処理型)
日本では伝統工芸の分野では高度な技能を、質を落とさず可能な限り完全な形で次の世
代 に 伝 え て い く こ と が 大 切 で あ り 、徒 弟 制 度 や 世 襲 と い う 形 で 技 能 の 継 承 が 行 わ れ て き た 。
一方、近代工業では、仕事の種類は同じであっても熟練技能者に求められる技能の内容
は日々高度化し、熟練技能者が自ら獲得した新しい技能の積み重ねが大きな原動力となっ
てクリエイティブな技能者が国際競争力を支えてきた。
吸収力
技術レベル
技
術
知
識
基礎技術力
時間(年齢)
図-2
年齢と技術知識
図-2に示すように、若い時は吸収力が高く、基礎技術を応用技術にすることにより、技
術レベルが上がった。
従 来 の 技 能 は 個 人 が 培 っ た も の で あ る が 、IT 技 術 を 活 用 す る こ と で 、個 々 の 人 間 と い う
制約を超えて、高度な技能・技術を共有することが可能となる。だが、技術がマニュアル
化した瞬間、自動化やロボット化に移り、進歩は止まるだろう。
将来の発展の芽となるような、優れた感覚と感性を身につけた熟練技能者・技術者を意
図 的 に 育 て る 必 要 が あ る 。そ の 方 法 の 一 つ が OJT、Off-OJT に よ る 教 育・育 成 制 度 で あ る 。
とりわけ勘・コツ(暗黙知)の部分に対する伝承策については伝統工芸的伝承方法が求
められる。
『古きもの新しきものなり、新しきもの古きものなり』
4 ) 若 い 人 の 登 用 (チ ャ レ ン ジ の 機 会 )
現場を知らない技術者が多く、机とペンで物が作れると思っている。これは技術偏重主
義によるところが多いのでは、製造現場で多くの経験が人を育て、人を伸ばし、基礎技術
の取得が可能である。
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技 術 に お け る 原 理 ・ 原 則 は 現 場 に お け る 3 G( 現 場 ・ 現 物 ・ 現 実 ) を 形 式 知 に し た 結 果
であり、現場の条件が変わると原理原則も変わる。つまり、原理原則は不変ではなく、時
間とともに変化するものである。また、言い換えると熟練技能を数値化したものであり、
この熟練技能には無数の解が存在し、唯一の解というものは存在しない。
若年層
20
中堅層
30
40
熟練技術
高齢層
定年(再就職)
50
60
70
ライン管理職
専門職
実践技術
ライン監督職
基礎技術
ライン職
(離職)
定年延長・再雇用
図-3
技術者のライフサイクル
技術者のライフサイクルを図-3に表した。この図より、基礎技術を学んでいる中で企
業や職場の環境により、離職する人が出てくる。実践技術では専門分野におけるラインの
責任者として知識の取得レベルが上がる。熟練技術者になると、専門分野以外の幅広い技
術とマネジメント知識を備えた管理者としてのリーダシップが求められる。
いずれは若い世代に譲らなければいけない職を、早く経験させることで伸び、熟練技術
者の豊富な知識をより新しい創造に利用する機会が出てくる。
つまり、技術の伝承とは
① トレーニング伝承(日々の仕事で)
② 基礎知識として勉学する
③ 感性を磨く(創造力等)
これらは内部のみならず、外部との接触により新しい仕事の領域が出来ることもある。
4.老舗企業としての課題は文書管理であったのか?
多年の事業活動の中で、老舗として信用を得て、生き残るためには様々なトラブルを克
服し、顧客ニーズを捉え、提供した結果であろうと思う。
この様々な出来事を伝える方法として図-4のように、口伝として伝える方法と文字や
記号をとして記録をする方法がある。
伝
承
口伝
特定の人へ
一子相伝
行事
グ ル ー プ で /役 割 分 担
責任を持って伝承行動
記録
不 特 定 の 人・何 時 で も
媒体の蓄積
図-4伝承の方法
記 録 さ れ た も の は 時 間・場 所・伝 承 す る 相 手 に 関 係 な く 伝 承 す る 事 が 可 能 で あ る 。だ が 、
時間を経過することにより、文字や言葉が変化し、解釈が異なり、正確に伝えることが難
し い 事 も あ る ( CD: 現 金 自 動 支 払 い シ ス テ ム → コ ン パ ク ト デ ィ ス ク 等 )。
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折角の記録も蓄積されるだけで、例繰方のように索引をつけ、検索するシステムを構築
して、活用することをしなければ、死蔵した記録は管理コスト(スペース)が増えるだけ
で あ る 。( 例 繰 方 : 江 戸 時 代 の 町 奉 行 所 で 判 決 の 整 理 保 存 や 先 例 の 調 査 に あ た っ た 係 )
1)文書管理と記録管理は異なる
こ こ で 言 う 文 書 と は 書 き 記 さ れ た も の で 、文 章 は 書 き 手 の 思 考 や 感 情 が 表 現 さ れ て い る 。
〔 文 書 ( も ん じ ょ ): 書 き 物 、 か き つ け 、 書 類 〕
文書管理は文書を作る時から処分までを考える。
一方、記録管理は処理された記録をどのように整理・整頓・廃棄をするかを考える。つ
まり、次のことが言える。
① 記録を残す必要性と意義を考える
② 残した記録を活用する
③ 記録を他の人が活用できるシクミを作る
④ 情報漏えい(個人情報保護、機密技術の流出)
⑤ 10、 20、 50 年 後 の 人 が わ か る か 。
最近は文書管理のニーズが高まる一方である
① トラブルが発生した時に情報の開示とリスク対策
② 残 し て い る 記 録 内 容 が 説 明 で き る よ う に 記 録 さ れ て い る か 、作 成 者 が 内 容 に 責 任 を 持
てるか
③ 国 際 標 準 ( ISO、 環 境 対 応 等 )
④ 知的財産(特許、企業ノウハウ等)
⑤ リ ス ト ラ ク チ ャ リ ン グ ( 改 革 、 団 塊 世 代 の 退 職 /2007~ 2010 年 問 題 )
⑥ 新しい権利の保証
・ マルチメディア(音声、映像、文字情報、立体画像)
・ コンピュータプログラム
・ デ ー タ ー ベ ー ス ( 科 学 技 術 文 献 ・ STN、 特 許 技 術 文 献 デ ー タ ベ ー ス ・ PATOLIS)
・ サ ー ビ ス マ ー ク ( 商 標 法 に 組 入 れ ・ 1992 年 )
・ 商品化権(キャラクター)
2)企業の知的資産を考える
知的資産を図にすると図-5 のように知的財産と財産的秘密情報(トレード・シークレ
ット)に分けられる。
特許については発明者本人に権利があるが会社は実施する権利を有する。一方、著作権
は会社の業務での著作物は会社に属する。
技術的ノウハウには製造技術・製法、素材選択、技術管理マニュアル、品質管理、設計
図等が上げられる。
例えば「フライドチェーン」での販売・顧客応対、商品加工マニュアル等が商品として
売られている。
知的財産は記録を残すことで、法的に守られる。一方、財産的秘密情報は内部の人間に
より流出する機会が多いので日頃の教育と注意力が大きく左右する。
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特 許( 実 用 新 案 )( 発 明 ・ パ テ ン ト ・ 考 案 ・ デ ザ イ ン )
知的財産
知
的
資
産
著作権(コピーライト)
商標(トレードマーク、サービスマーク)
技術的ノウハウ
財産的秘密情報
( トレード・ シークレット )
営業上の秘密情報
顧客リスト
販売マニュアル
事業計画、経理、販売データ
図-5企業の知的財産
3)労使協力
様々な企業歴史の中、経営者と従業員の仲には双務関係が成り立っている。従業員は経
営者の指示に従い奉仕するが、経営者は従業員を保護する。最近のリストラ、コスト引き
下げによる人員整理等は行なわない。
① 情 報 収 集 ( Collection)
② 仕 事 の 創 造 ( Creativity)
③ 組 織 共 同 体 ( Community)
情 報 交 換 す る こ と に よ り 、仲 間 意 識 が 起 こ り 、情 報 量 や 技 術 力 を 巡 っ て 競 争 意 識 が 働 き 、
レベルアップにつながればそのコミュニティの仕事は成功である。
中 世 の 領 主 と 領 民 の 間 に は 保 護 と 法 師 の 総 務 関 係 が あ っ た 。戦 争 に な る と 城 に 避 難 す る 。
また、お寺や神社に米俵や家財を預ける。銭甕(ぜにがめ)を埋めて隠す。
同様のことが昭和の戦争で都会から田舎に『疎開』ということが行なわれた。
他人の支援があって、自分たちが生かされる。
4)保有している文書を分類する
① Precious( rare 貴 重 文 書 を 含 む ): 企 業 に と っ て 紛 失 ・ 破 損 ・ 焼 却 す る と 取 り 返 し が つ
かない歴史的要素を含んだお金に換えることが出来ない文書。創業時からの伝承文書、
企業の理念文書、当時の様子を表現した写真・絵画文書等、
② Vital( 基 調 文 書 )
:法 務 の 観 点 、所 有 権 及 び 財 務 の 観 点 か ら 他 を 持 っ て 換 え る こ と が 出
来ない売り掛け、在庫に関わる文書、契約書、創作資料、研究文書等
③ Inportannt( 重 要 文 書 )
④ Useful( 有 用 文 書 )
⑤ Nonessential( 一 般 文 書 )
5)老舗企業に見る店則
老舗として永年に企業が継続する上での様々な取り決めをしている。特に法を守り、信
用を胸として、創意工夫を大切にしている。またバブルに踊ることなく、投機を戒めてい
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る。和合・協力の精神を説いている。
これらの店則は今の時代に様々な形で発生している不祥事を見ると、我々が参考にすべき
事柄が多くある。
遵法
公 儀 諸 法 度 を遵 守 すること
仲 間 規 約 を遵 守 すること
町 内 規 約 を遵 守 すること
家 訓 ・店 則 を遵 守 すること
信用
早 起 ・・・客 を待 つ体 制 をととのえること
清 掃 ・・・店 も商 品 も美 しく清 潔 にすること
商 品 の整 頓 に気 をつけること
商 品 は良 質 薄 利 で商 売 すること
正 直 ・正 路 の取 引 をすること
客 のもてなし方 は敬 愛 と親 切 で、不 快 を与 えないこと
商才
商 売 のコツの研 究 をすること
仕 入 の時 期 ・方 法 について誤 らぬこと
販 売 の時 期 ・方 法 について誤 らぬこと
取 引 を手 堅 くすること
店
則
倹約
(始 末 )
投 機 取 引 の禁 止
会 計 監 査 制 度 の設 置
会 計 ・金 銭 及 び物 品 の出 入 心 得
記帳心得
積 立 金 制 度 の確 立
店 員 の食 事 に関 する倹 約
店 員 の服 装 に関 する倹 約
店 員 の暮 らし方 に関 する倹 約
贈 答 規 定 ・客 接 待 の倹 約
職分
信 賞 必 罰 規 定 (昇 格 ・降 職 ・退 身 )
役職規定
勤 務 規 定 -起 床 から就 寝 までの心 得 について
別 家 制 度 の規 定
団結
主 家 中 心 ・・・奉 公 人 規 定 ・別 家 制 度
協 力 奉 公 の心 得
信 仰 ・貴 信 の生 活
和合第一主義
慈 悲 ・恩 愛 の心 得
名 称 について の 規 定
職 階 について の 規 定
任 務 について の 規 定
給 与 について の 規 定
⇒ 忠 誠 をはげむこと
『 老 舗 と 家 訓 』 昭 和 45 年 2 月 京 都 府 発 行 (京 都 府 100 年 記 念 )
図 -3
京都の店則
最近の自由主義は自己主義と同一に考えられ、他の人はどうなっても自分さえ良ければ
いいという考えである。
また、個人主義では社会の義務として同じ機会を与へ、個性を大切にし、その能力を伸
ばすといっているが、見た目には立派でも、中身の無いものとなっている。
同じように米国が言う民主主義にしても、西欧の民主主義とも違う。インドにはインド
の民主主義があり、日本には日本の民主主義がある。
宗教でも同じようにキリスト教的民主主義、イスラム的民主主義、仏教的民主主義があ
る。
同様に米国的資本主義的、共産的資本主義、日本的資本主義がある。基本的な思想が異
な っ て い る 。そ れ が 、日 本 で は 他 の 国 と 異 な り 、永 年 に 続 い た 企 業 が 多 い の で は と 考 え る 。
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5.老舗企業のつぶやき
1 ) 玉 初 堂 ( http://www.koh.co.jp/) 代 表 取 締 役
中造和夫氏
西 暦 1 8 0 4 年 (文 化 元 年 )に 創 業 し て 以 来 、 2 0 0 年 。 多 く の お 客 様 、 お 得 意 先 、 仕 入 先
の皆様に支えられてきた賜物です。200年の間には大きな苦難が幾度もあり、それを乗
り越えて今日存在します。例えば、徳川幕府の終焉と明治維新、どんな時代だったかは想
像も出来ません。また、大正デモクラシーから昭和初期の世界大恐慌、第二次大戦、戦後
の復興期なども乗り越えています。
私が知っているのは昭和30年代からの時代ですが、その40年ほどの間にも苦しい時
代がありました。特に、昭和30年代は販売価格の値上げが難しく、いくら線香を造って
も、殆ど利益の出ない時期でした。その後、列島改造論や高度経済成長の時代となり、よ
うやく企業として自立できる状況になったのです。昭和42年の「花すみれ」発売、そし
て 、4 8 年 の「 香 樹 林 」発 売 で 、専 門 店 分 野 の 線 香 メ ー カ ー と し て の 方 向 が 決 ま り ま し た 。
現在でも「香樹林」は玉初堂のトップセラーとして、多くの皆様に愛用されています。
2 0 0 周 年 は ゴ ー ル で あ り 、ス タ ー ト で も あ り ま す 。
「 品 質 の 向 上 」、
「 独 自 性 の 追 求 」を
旗印にこれからの100年を歩んで行こうと考えています。
今回、ホームページ上で、創業200周年記念展示会を開催する運びとなりました。使
っている当時は大事な道具、使わなくなるとただのガラクタです。しかし、100年以上
経過すると骨董品、ガラクタにも歴史という価値が付加されたのです。今後も家宝として
伝えて行く所存です。お目汚しですが、どうぞご覧下さい。
( http://www.koh.co.jp/dogu_setsumei_01.htm)
①家訓について
200年も営業を続けていると代々、様々な失敗を経験しています。その度に反省し、
次の代に役立つような言葉を残します。それが簡略化され、社訓や家訓となるのです。従
っ て 、戒 め に な る 言 葉 が 殆 ど で す が 、経 営 方 針 の よ う な 言 葉 は 訓 え と な っ て 伝 え ら れ ま す 。
お役に立つかどうか不明ですが、当社に伝わる訓戒を披露致します。
「細く長く」
商売は継続、永続を旨とします。拡大や多角化を拒み、本業に徹せよと言う意味です。
大阪では「商売は牛のよだれ」と言って、長く繋がるものだと表現しています。
「店は借り物」
企業の私物化を戒めています。金銭面でも公私の区別をしっかり付けて、社業に邁進す
るようにと言う意味です。前の代から借り受けた店を次の代に貸す、これを代々繰り返し
ます。借りたときより、きれいにして次の代に貸すのです。
「出ん得」
これは祖母から学びました。休みの日は無目的に外出しないほうが良いと言います。な
ぜ な ら 、無 駄 な お 金 を 使 っ て し ま う 危 険 が あ る か ら で す 。大 阪 弁 で「 出 ん 方 が 得 や で 。」こ
れを縮めた言葉です。
「金貸さず」
金銭の貸し借りは人間関係を壊すだけでなく、自分の生活もだめにします。貸す時は神
様のように崇められても、いざ返済を迫ろうものなら、今度は悪魔のように思われてしま
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うのです。
「浮利追わず」
ギャンブルや宝くじなど、労働以外で得る金銭には価値が無いと考えます。商売を志す
者は一攫千金を夢見てはならないのです。一度、そんな金銭を手にすると目が曇ってしま
います。株式への投資も禁じられています。
「判つかず」
絶対に保証人としての印鑑を押してならないと言われています。簡単な行為ですが、そ
れから発生する責任は巨大です。その保証を受けた人の一挙手一投足を監視できるのなら
構わないのですが、無理な話です。
「役就かず」
人のお役に立つ役目はたくさんあります。しかし、それが自分の仕事のようになってし
まってはいけません。社業に徹するのが基本です。しかも、役に就いて年月が経つと、次
第に上の役職になって行きます。ここで「自分は偉い」と錯覚する危険が出てきます。自
分の勉強になるかどうか、時間を取られ過ぎないか、これも役に就くかどうかの判断基準
でしょう。
入店時の環境
職人さんが言うことを聞かない。梅雨時には仕事が出来なかった。給与が入ると休む。
昭 和 56 年 に 線 香 の 乾 燥 工 程 を 合 理 化 し 、か つ 品 質 の 工 場 を 目 指 し て 、積 層 乾 燥 法 の 技 術
を確立する。このことにより、念誦仕事が出来る体制が確立できた。
商品について
今 の 売 り 上 げ の 90% は 30 年 前 か ら 出 し た 新 製 品 で あ る 。
(年賀状には新製品の案内を出
し て い る )『 香 樹 林 』 は 35 年 モ デ ル チ ェ ン ジ 無 く 、 一 番 売 れ て い る 。
*伝統的な新製品
*全く違う新製品
a.リ ビ ン グ に 置 け る 仏 壇 に 合 う
b.取 り 出 し や す い お 線 香
c.モ ダ ン な 仏 壇 に あ わ せ て 匂 い を か え る
グレープフルーツ、紅茶等
継承して
①守るところは守る。発展させる所は発展させる。変えなければいけない所は帰る。
②代々の失敗が家訓として残っている
親から子に引き継ぐのでなく、親から孫、祖父から子供へと引き継ぐ。
その為に3代同居が必要である。
③質でダブルチェンジ
量より質の時代である。同じ売り上げであと何年使えるかを考える(香木等)
④家業から企業に変わった
会 社 の 体 質 が 強 く な っ た 。( 巻 き 線 香 も 20 年 掛 け て 考 え た )
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山添・参考資料
2)桝一市村酒造場・取締役
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セーラ・マリ・カミングス
1994 年 06 月 派 遣 社 員 と し て (株 )小 布 施 堂 に 入 社 、 経 営 情 報 室 を 立 ち 上 げ る 。 利 酒 師 認
定 、 1997 年 07 月 (株 )桝 一 市 村 酒 造 場 の 再 構 築 に 取 り 組 む 。
入店時の環境
長 野 県 小 布 施 で 1575 年 の 創 業 の 記 録 が 残 っ て い る 老 舗 で 、 20 年 間 赤 字 で あ っ た
当 初 の 現 場 は 40 歳 台 の 人 し か 入 ら れ な か っ た 。
そこで、ノミュニケーションからスタートした。
① 20 人 ほ ど 、 若 い 人 を 入 れ た 。
②自動販売機を止め、顧客とのコミュニケーション売る
③事務所を廃止して、直接顧客に販売した。
継承に付いて
①会社は預かりもので、次の世代に任せる
儲けるためにどうすればよいか
経済だけでなく、文化の力で伸ばす
②外は皆のものであり、中は自分たちのもの
文化サロン、冷蔵庫の無い店
予算がない時は皆の力が一緒になった時である
③若い人を受け入れる体質
当 初 の 半 年 ぐ ら い は 外 国 人 を 見 る こ と が 無 か っ た が 、 今 は 毎 日 100 人 ぐ ら い の 外 国 人
が来ている
④トップはムードメーカである
⑤ピンチがわかった時がチャンスであった
⑥同じ釜の飯からお互いが知り、新しい事業を作ってきた
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