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(5) 瑕疵ある行政行為の職権取消・撤回 (a) 意義(塩野・Ⅰ169 頁~177

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(5)
瑕疵ある行政行為の職権取消・撤回
(a) 意義(塩野・Ⅰ169 頁~177 頁)
行政庁が当初から瑕疵のある行政行為を消滅させる行政行為を職権取消という。行政庁
が、事後的に行政行為の要件事実が充足されなくなったことを理由に、行政行為を消滅さ
せる行政行為を、撤回という。
-
職権取消は、私人からの不服申立てや取消訴訟に応じて行われる「争訟取消」(→
(4)(b))と対比される。
- 学問上の撤回も、実定法上は「取消」と表現されるのが通常である。
-
行政行為の名宛人の義務違反または負担(→(6))不履行を理由に撤回が行われること
があるが、趣旨は、公益に適合しない現状を将来に向けて是正することにあり、名宛人の
過去の行為に対する制裁にあるのではない(通説)。
-
職権取消と撤回は、瑕疵の発生時点が特定できない場合、実際上区別ができない。
また、知識・技術の水準が事後的に変化したために行政行為を消滅させる場合、撤回と解
するか、「客観的」な事実は変わっていないと見て、職権取消と解するか、必ずしも明確で
ない(判例集 144 判決、144R3 判決)。
-
撤回に代えて特別の法制度が定められている場合は、その法制度による(例、公務員
の任用後の免職、失職後の復職)。
(b) 法的根拠
行政行為の職権取消・撤回を行うのに、特別な法律の根拠を要するか。行政行為の根拠
規範と、法治国原理(つまり、違法状態除去義務(→Ⅰ2(3)(c)④)、撤回の場合は加えて行政
機関の公益実現義務(→Ⅰ2(2)(a)))とを根拠にして、行政行為の根拠規範が、行政行為によ
って利益を受ける側だけを保護しているのではなく、取消・撤回により利益を受ける側を
保護する反対の手段も授権するものと解釈できるのではないか。しかし、学説は分かれて
いる(塩野・Ⅰ170 頁・173~174 頁)。判例集 144 および同 R3 判決は、法律上の特別な根
拠がなくても撤回を認めている。
(c) 権限の所在(塩野・Ⅰ176 頁・Ⅲ37 頁)
通説によれば、職権取消は処分庁のみならず上級行政庁が指揮命令権(→Ⅱ1(3)(b))の行
使として行うことができる(上級行政庁は行い得ないとする反対説あり。芝池・行政法総論
講義 4 版 174 頁)。撤回は処分庁のみが行い得る。
(d) 授益的行政行為の職権取消・撤回の制限(塩野・Ⅰ170~171 頁、174~176 頁)
名宛人に利益になる行政行為(授益的行政行為)の職権取消、撤回は、次の法的根拠から
制限される。
①
信頼保護・法的安定性の要請
職権取消や撤回により実現される公益と衡量して、行政行為に対する信頼ないし法的安
定性の要保護性が高い場合、(ⅰ)職権取消・撤回を行うのに補償を要し(金銭給付を決定す
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る行政行為の場合は、職権取消の効果を遡及させない。判例集 145 判決)、(ⅱ)それでも信
頼保護の要請が満たされなければ、職権取消・撤回自体が許されない。名宛人の信頼保護
と別に、第三者の信頼保護が問題となる場合もある(判例集 146 判決)。
逆に公益上の理由が大きいために、信頼保護の要請を考慮することなく、その意味で「義
務的に」、行政行為を撤回すべき旨、法定される場合もある(例、薬事法 74 条の 2)。
判例集 145 判決・146 判決で、信頼保護の要請が認められた事情、判例集 149 判決
―
で、補償が不要とされた事情を、判決ごとに整理すること。
②
比例原則
職権取消や撤回により得られる公益と侵害される利益との衡量、すなわち比例原則によ
り、職権取消・撤回が制限される場合がある。
判例集 147 判決は比例原則に照らして妥当か、検討せよ。判例集 148 判決も参照の
―
こと。
(e) 効果(塩野・Ⅰ172~173 頁)
原則として、職権取消の効果は当初の行政行為の時点に遡及し、撤回の効果は撤回の時
点から将来に向かって生じる。ただし、信頼保護の要請から、職権取消の効果も遡及させ
るべきでない場合もある(→(d))。また政策的に、撤回の効果を遡及させることもある(補助
金交付適正化法 18 条 1 項・19 条)。
(6)
附款
(a) 意義・種別
行政行為の規律に、事情に応じて(※)付加される(※※)規律の内容を、附款という。期限
(判例集 136 判決)、条件、負担、撤回権の留保、事後的な負担付加の留保などである。法
令では、附款が全て「条件」と表現されるのが普通である。
―
以上の点について、塩野・Ⅰ181~184 頁の例を読み、理解すること。条件と負担
の違いは何か?
「安全施設を設置して事業を行うことの許可」を例に、考えよ。また、撤
回権の留保を附款として付す意味はどこにあるか?
(※)
法律が一律に課す期限等は、「法定附款」と言われることもあるが、厳密には附款
といえるか疑問がある(塩野・Ⅰ180 頁)。
(※※)
行政行為の内容的制限ないし「法律効果の一部除外」は、行政行為の規律から切
り離せないため、附款ではないとされる(塩野・Ⅰ184 頁)。しかし区別は微妙であり、こ
れも附款に含める見解がある(小早川・行政法上 284 頁。判例集も 134 判決を附款に関す
る判決として一応挙げておいた)。逆に「負担」は、行政行為の規律からの独立性が高いため、
附款に当たらないとする見解がある(小早川・同 285 頁)。
(b) 法的許容性と限界
(ⅰ)
附款は、行政行為の根拠規範の趣旨に適合するものでなければならない。他事考
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慮や権限の不当連結による附款の付加は違法である(→Ⅱ2(2)(c))。
―
期限について、判例集 136 判決および R1 判決を参照。公務員法上、期限付任用が
例外とされつつ許容されていること、および、期限付き任用公務員に、民間労働者に適用
される「雇止め」の制限に関する判例法理が適用されていないことに注意。
―
期限の更新について、判例集 135 判決および R2①②判決を参照。135 判決の事案
では、2004 年改正後の行訴法によれば、X は、執行停止ではなく仮の義務付けを申し立て
ることが可能であろう(37 条の 5 第 1 項)。
(ⅱ) 附款は、憲法(判例集 134 判決)、その他比例原則など法の一般原則(→Ⅰ2(3)(a))に
違反するものであってはならない。
(c) 附款に対する訴訟(現段階で理解する必要はない。訴訟法まで勉強した段階でも、か
なりの応用問題になる)
(ⅰ)
附款により不利益を受ける者が、附款のない行政行為を求める義務付け訴訟を提
起することは認められよう。では、附款だけを対象にして取消訴訟を提起することは可能
か。日本では定説がなく(塩野・Ⅰ185 頁は一つの見解)、ドイツでも判例自体に揺れが見
られる(読む必要は全くないが、よほどの興味があれば、自治研究 81 巻 5 号 96 頁~98 頁
を参照)。
(ⅱ)
逆に附款により利益を受ける者については、附款を付さずに行われた行政行為全
体の取消訴訟も、附款を付すことを求める義務付け訴訟も、原則として許容されると解さ
れる。
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