ジム・ロジャーズ氏対談レポート vol.1

ジム・ロジャーズ氏対談レポート vol.1
こんにちは。サチン・チョードリーです。今回、あなたにこの特別なレポートをお届けできること
を嬉しく思います。このレポートは 2014 年 9 月に行なったジム・ロジャーズさんへのインタビ
ューを元に作成しています。ぜひ楽しんで学んでください。
ロジャーズさんは元気でエネルギッシュな方で、彼と会うと、そのパワーに本当に驚かされます。
また、ロジャーズさんは日本の事をよく勉強されていて、ご自身の名刺を日本スタイルで渡してく
れました。また「もしもし」と日本語で挨拶もしていました。彼は日本語で書かれた本を数冊出版
しています。投資戦略に関するものや、人生に関するもの、A life gift to my children(愛娘への
贈り物)という子どもたちの為に書かれたもの、A Bull in China(中国の時代)という中国に関するも
のなど様々です。トップレベルの投資家が書かれた本を日本語で読めるのは、素晴らしいことだと
思います。
私は、そんな彼に「どうしていつもそんなに創造的になれるのですか?何があなたをそんなに創造
的にさせるのですか?」と質問してみました。すると、ロジャーズさんは『両親の遺伝子が影響し
ていると思います』と答えました。彼自身、子どもたちと毎日を楽しく過ごしていらっしゃいま
す。ご両親から受け継いだ遺伝子が、ポジティブなエネルギーやパワーに変化しているようでし
た。次に私は、「なぜハワイでもなく、シンガポールであなたにお会いすることができたのでしょ
うか?」と質問しました。
ロジャーズさんは、『実は、私は子供たちに中国語を話してほしいと思っています。しかし、中国
の都市はとても汚染されていて、綺麗ではないので、私は中国には住めませんでした。シンガポー
ルでは、英語と中国語の両方が話されていて、移住に最適だと思ったからです』と言っていまし
た。彼は 2007 年にシンガポールに移住したそうです。シンガポールに移住する前はニューヨーク
に住んでいました。
私は「ニューヨークが恋しくないのですか?」と質問すると、ロジャーズさんは、『恋しくないで
す。私も最初は恋しくなると思っていましたが、ほとんど恋しくならなかった。シンガポールに来
たことをとても嬉しく思っています』と仰っていました。その他の候補移住地として、香港、上
海、北京なども思い浮かんだそうですが、空気、水、食べ物全てが綺麗ではないと感じたようで
す。
ロジャーズさんのお子さんも、シンガポールが気に入っています。現在もインターナショナルスク
ールではなく、シンガポール政府の学校に通っているそうです。ロジャーズさんのお子さんは、2
人の内1人がシンガポールで生まれています。その子は、ニューヨークについては何も知りませ
ん。もう1人のお子さんは4歳のときにシンガポールへ移住したので、ニューヨークについてほと
んど忘れているそうです。ロジャーズさんのご自宅では、シンガポール英語で話す事を禁じられて
いるので、お子さんたちの英語のイントネーションがシンガポール英語になる心配はあまりされて
ないようでした。
ロジャーズさんはこうも言っていました。
『私は 30年間、子どもや孫に中国語を教えるべきだと、本に書いたり番組で放送したり、講演し
たりしてきました。なぜなら、21 世紀に最も重要な国は中国になるからです。ニューヨークにい
た頃、私には子どもが1人いました。私はその子どもに中国語を習得させなくてはいけないと思っ
ていました。ニューヨークでは中国語の家庭教師をつけていましたが、私は子どもが中国語を話す
環境にいない限り、中国語の学習は上手くいかないと思いました。ネイティブスピーカーのように
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中国語を話したいなら、「嫌でも話さなければならない場所」に移らなければなりません。ですか
ら、今普段から中国語を話す事ができるシンガポールに移住しています。』
子どもに中国語を学ばせるのが当初からの彼の戦略だったそうです。最初は、ロジャーズさんは中
国語ならニューヨークでも学習できると考えていました。しかし、まだ幼い子どもに「日本語を話
しなさい」「中国語を話しなさい」と言っても「嫌だ」と反抗されるのがオチです。なので、ロジ
ャーズさんはシンガポールへの移住を決意しました。奥様とはノースカロライナ州で出会いまし
た。ロジャーズさんがアメリカ、ノースカロライナ州の美術館で著書の1冊について講演をしてい
たとき、彼女と出会いました。奥様は当時からロジャーズさんの熱烈なファンだったそうです。
情熱の対象
次に私は金融関連と投資について、彼に踏み込んで質問していきました。まず、私はロジャーズさ
んが金融、投資業界を選んだ理由を質問しました。不動産や放送業界、エネルギー業界など、お金
を稼げる業界は数多くあります。それにも関わらず、なぜ金融や投資業界を選んだのか。ロジャー
ズさんは『まず自分が情熱を注げる対象を把握すべきです。その対象が鋼鉄、自転車、ファッショ
ンなど何であれ、情熱を捧げることならやるのです』と回答しました。
ロジャーズさんは大学生のとき、自分の情熱の対象が分かりませんでした。当時、彼は法科大学
院、経営学大学院、メディカルスクールなど、どこに行こうか迷っていました。当時は株と債券の
違いなどさえも知らなかったようです。そんなロジャーズさんですが、夏休みの間だけウォールス
トリートで仕事をしていました。そこで、将来を予測し世界で何が起きているかを知り、その結
果、報酬を得ることの素晴らしさを感じ取ったのです。
ロジャーズさんはその後、法科大学院、経営学大学院、医科大学などの学校にはどこにも行かず、
ウォールストリートで仕事をする事を決意しました。ウォールストリートこそ、私が情熱を捧げる
事ができる場所だ! と悟ったそうです。ロジャーズさんは一年目の夏、リサーチ部に所属してい
ました。そこでブローカーからの質問に答えるという仕事をしていたそうです。彼自身、本当にそ
の仕事を楽しんでいたそうです。
また、ロジャーズさんはこう言っていました。
『今問題なのは、多くの人が自分の情熱の対象が何であるかを把握できないことです。私もまさに
その一人でした。21 歳のとき、私には何の興味もありませんでした。ウォールストリートについ
てさえも知らなかったのです。しかし、偶然にも私はウォールストリートを見つけて、自分の情熱
を追求し始めました。なので、この対談をご覧の皆さんが自分自身の情熱を見つけて、その夢を追
求されるよう切実に願っています』と。
毎日、仕事を楽しめる人が成功する
次に私はロジャーズさんに「お金持ちになりたい!人生で成功し大物になりたい!などの夢はお持
ちでしたか?」と質問しました。ロジャーズさんは、『私も幼少時代は貧乏でしたから、たくさん
お金を稼ぎたかったです。貧乏が嫌いでした。しかし、良い仕事をすればお金は自然と付いてくる
ということをその頃から知っていました。なので、お金というより、楽しいことや仕事に興味があ
ったのです』と言っていました。
ロジャーズさんにとって、ウォールストリートはとても楽しい場所でした。仕事に行くという感覚
もなく、毎日職場に行って、楽しく過ごしていました。人生で成功する人は、毎朝起きて仕事を楽
しめる人だ と彼は仰っていました。
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ロジャーズさん:
『仕事が情熱の対象であれば、たとえ上手くいかなくても気になりません。成功しようが、しまい
が気にしない、幸せな人になれます。多くの人は主任投資銀行家や公認会計士、MBA を取得すれ
ば、銀行家または投資銀行家になれると考えています。しかし、ウォールストリートで最も成功し
ている人の中には、上級学位を持っていない人もいるのです。中には高校も卒業していないのに、
金持ちの人もいます。人はストリート・スマート(都会で生きていく術を心得て生きる)人になるべ
きです。もし仕事に情熱があれば、学位のことは自然と忘れます。学位がなくても経済的に大きく
成功している方は大勢います。私も、法科大学院や経営学大学院、医科大学には行きませんでし
た。ウォールストリートに心を奪われて、突き進んでいったのです。』
次に私はロジャーズさんに「若いころからの投資や金融ビジネスにおけるルールやポリシーは何で
すか?」と尋ねてみました。すると、ロジャーズさんは、自分自身のやり方を把握することだとお
っしゃいまいまいた。
ロジャーズさん:
『最初、私の周りのみんなは、自分よりずっと物知りだと思っていました。なぜなら、彼らは自分
より年上で、経験豊富だったからです。例えば、彼らが「空が青い」と言ったら、私は「空は青い
に違いない」と疑わなかったのです。空が本当に青いかどうか確かめるために、窓から外を見るこ
とさえしません。しかし、そのうち私は「ちょっと待てよ。彼らよりもっと分かっているぞ」と気
づき始めました。人は必ずミスを犯します。なので、もし誰かが「空は青い」と言ったら、窓際に
行って、本当に空が青いか確かめようと思ったのです。』
かつてオリンピックのメダルを獲った水泳選手がいます。彼女は「私はレースでいつも他の水泳選
手を見ていました。しかし、他の選手を見るのをやめたら、自分自身のレースで泳げたのです」と
言いました。そして、彼女は自分自身の泳ぎをし、金メダルを獲得したのです。ロジャーズさんに
も、同じようなことが起こったのだと思います。彼は他の人の言葉を聞くことをやめて、彼自身の
方法でやり始めたのです。
フォーカスをする
次に、私はロジャーズさんに「あなたが投資でアクションを起こすときのルールやポリシーはあり
ますか?」と質問しました。
ロジャーズさん:
『自分の勉強をやって、自分が知っている事にだけフォーカスすることです。誰か他の人から投資
についてヒントやアドバイスを与えられたとき、私はほとんどの場合、損をすることに気づきまし
た。なので、私は自分がよく知っているものにだけ投資することを学びました。もし、私がその投
資案件について十分に知らないのなら、勉強をします。勉強していないものに対しては何も投資し
ません。よく分からないものに投資せず、他人の言う事を聞かず、他人のやっている事をやらず、
自分のやることをやるのです。しかし、投資の勉強はやります。勉強を怠ると、私は損をするから
です。勉強をすればするほど、投資ではより多く けられるということを学びました。』
自分の心の声を聞く
ロジャーズさんは若い頃から、投資に関する多くの勉強をしてきました。その中で、他人の言うこ
とを聞いたせいで、失敗する経験もしてきましたそうです。なので、今では自分が分かっているこ
とにフォーカスする方が良いという考えにシフトしました。投資について様々な勉強をして、自分
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の心の声も聞くのです。そうする事によって、ロジャーズさんは幸運に恵まれるようになったと言
います。
ロジャーズさんが勉強をする一番の目的は、投資先の会社について知ることだそうです。投資では
その業界、その会社、その会社の経営状態や財務諸表について深く勉強しなければなりません。財
務の分析、顧客の分析、業界の分析、競合の分析をして、競合が何をしているかを知らなければ投
資はできないのです。ロジャーズさんご自身テレビはお持ちではないですが、インターネットに接
続し、BBC やニュース、フィナンシャルタイムズなど普段アクセスして調べられているそうで
す。
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BBC とは:イギリスの公共放送局、英国放送協会の略称
フィナンシャルタイムズとは:イギリスで発行されている日刊新聞
続いて、ロジャーズさんに「もし、元手になる資金が何もない状態から成功しようとしたら、まず
何をしますか?」と尋ねました。
ロジャーズさん:
『私がウォールストリートで投資を始めたとき、60,000 円の資金しかありませんでした。しか
し、投資への情熱があったので、投資するために必要な全ての資金や知識を蓄えていきました。そ
して、徐々に投資をスタートしました。最初の2年ほどは上手くいって、投資は簡単だと感じまし
た。しかしその後、投資で大きな失敗をして、全ての資産を失いました。投資では多くの知識を学
ばなければなりません。お金も蓄える必要もあります。その上で正しい投資案件を発見するまで待
って、発見できたら投資をするのが良いです。』
自分が熟知しているものに投資をすること
次に「最初に投資すべき1つの案件を見つけることが、とても大変に感じる人が多いと思います。
投資先が見つからず迷っている人は何をすべきだと思いますか?」と尋ねました。
ロジャーズさん:
『成功する投資家は、自分がよく知っているものに投資します。車、ファッション、スポーツな
ど、自分がよく知っているものから始めるべきです。情熱のある分野なら、どのような最新情報が
あり、どのような商品が出て、どのような会社が成功しているか、自然と把握できると思います。
自分の興味や情熱があるテーマについて十分な勉強をすれば、どの投資案件が正しいのか自然と理
解できます。理解できたら、その株を買うのです。株を買った後はほとんど何もせずに、ひたすら
待って下さい。買った株さえ正しければ、その株はどんどん高値がついていくからです。もし3年
後や 10 年後に「この会社の雲行きが怪しい」と感じたら、その株は売却しても構いません。しか
し、頭の中で「自分は何もせずに資産を増やしている。私は賢い」と感じたら、危険です。
「自分は賢い」と思った瞬間に窓を閉めて、テレビを観ることをやめ、ビーチに行き、気持ちを冷
静にさせて下さい。別の投資案件を探すときもひたすら待つのです。積極的に探すのではなく、正
しいと感じる投資案件を発見できるまで待ってから行動を起こします。投資家は忍耐強くなって、
何もしないことを学ばなければなりません。行動を起こした後は、何もしないのが一番良いので
す。』
日本株式市場の行方
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私はロジャーズさんに対し、「これから日本市場がどうなっていくか、どのような機会やチャンス
が現れるか、あなたの意見を聞かせてください」と質問しました。
ロジャーズさんは、『日本は世界中で私が最も好きな国の1つです。私は本当に日本が、東京が好
きです。日本人が好きです。市場に関しても、日本は私が最も好きな市場の一つです。おそらく世
界でもトップ3か4です』と答えました。そして、ロジャーズさんは、さらにこう続けました。
ロジャーズさん:
『安倍首相は今、間違いを犯しています。紙幣を増刷しており、多額のお金を使っています。それ
は長期的には日本にとって悪いことですが、短期的に見れば株式市場にとって良いことです。だか
ら、私は日本の株を所有しており、買い続けるつもりです。繰り返して言いたいですが、安倍首相
は日本の将来にとって良くない事をしています。人々は 10 年後または 20 年後に振り返って、「安
倍首相が日本を台無しにした」と言うでしょうが、その一方で、株式市場は非常に好況でしょう。
私 は日本の市況は良いと判断していますが、その考えが正しかったかどうかは2年後に分かると
思います。』
vol.2 へ続く
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