ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術の解説 愛媛大学では、2011 年 9 月から腹腔鏡下前立腺全摘除術を開始し、さらには立体画像を利用した腹腔鏡手 術で良好な手術成績を収め、学会などで報告をしてきました。2013 年 6 月には手術支援ロボット・ダヴィンチ Si によるロボット支援前立腺全摘除術を開始しました。当科では操作用機器を 2 台使用することによって、 上級医による術中指導を行うことにより、安全かつより質の高い手術を行うことができます。 前立腺全摘除術とは 前立腺がんを正常な前立腺組織、精嚢及び周囲の組織とともに体外へ取り出す方法です。転移しやすいリ ンパ節も一緒に摘出します。また、病変の拡がりによって前立腺の横を通る、勃起神経を温存する手術も可 能です。特にロボット手術では、良好な視野と繊細な操作により神経温存手術がよりやりやすくなっていま す。 手術方法について 腹部にポートと呼ばれる穴を 6 つあけます。そこからカメラやロボットのアーム(腕)、助手用の鉗子を挿入し ます。まず膀胱の周囲を剥離し、前立腺周囲の血管を処理します。次いで膀胱から前立腺と精嚢を離断し、 直腸と前立腺との間を処理し、尿道を切断して、膀胱の一部を前立腺につけて精嚢とともに摘出いたします。 その後、症例に応じて閉鎖リンパ節を左右ともに摘出いたします。明らかなリンパ節転移が疑われる場合は、 手術時に迅速病理検査を施行し、転移の有無を確認します。現在、画像診断の進歩によりほとんどの場合、 迅速病理検査は施行しておりません。最後に膀胱と尿道をつないで尿道カテーテルを挿入し手術を終了い たします。手術時間は約 3 時間で、入院期間は 10 日間程度です。 ロボットを用いて手術をすることで、出血量の減少、術後疼痛の減少、QOL の改善(尿禁制や勃起神経の温 存)などのメリットがあります。またモニターを複数の医師が見ることで安全、確実に手術を施行しておりま す。 患者さまの病状や今までの手術の既往などからロボット手術が難しい場合は、開腹での手術を行うこともあ ります。 手術療法(図) 【参考資料】 点線で囲まれた部位 前立腺、精嚢、膀胱の一部を摘出いたします。その後、右下の図のように膀胱と尿道 を吻合いたします。
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