植物の誘導防衛と 植物間コミュニケーション

植物の誘導防衛と
植物間コミュニケーション
北海道大学 環境科学院
生態遺伝学コース 博士課程1年
石崎智美
発表内容
1.植物の被食防衛反応
2.誘導防衛反応と植物間コミュニケーション
3.Sagebrushの植物間コミュニケーション
1.植物の被食防衛反応
植物は様々な被食を受ける
植食者
・昆虫(イモムシなど)
・大型哺乳類(シカなど)
などなど
オクエゾサイシンとヒメギフチョウ
1.植物の被食防衛反応
「食べられた分を補う」戦略
・補償成長
再成長した
oakの枝
「食べられないようにする」戦略
・物理的防御、化学的防御
・直接防御、間接防御
・誘導防衛
© FUKUHARA, T.
ホソバイラクサの茎の刺毛
1.植物の被食防衛反応
物理的防御
間接防御
・トゲ、毛などによる防御
・天敵(捕食者・寄生蜂)を
誘引し、植食者を排除する
メギの棘
© FUKUHARA, T.
化学的防御
・二次代謝産物による防御
カルデノライドを含む
トウワタの乳液
(Agrawal et al., 2008)
イタドリの蜜腺に誘引されるアリ
© FUKUHARA, T
1.誘導防衛反応
誘導防衛反応(induced defense)
被食後、防衛形質を強化する反応
Total alkaloids (% dry weight)
野生タバコ(Baldwin, 1989)
5
4
3
2
1
0
0
100
200
Hours
300
400
トウモロコシ(吉永ら)
2.誘導防衛反応と植物間コミュニケーション
誘導防衛は被害個体だけで起こるのか?
セイヨウヤマハンノキ
(Dolch and Tscharntke, 2000)
・摘葉個体に近い個体は、
食害が少ない
・植食者は、遠くの個体に
より多く産卵する
ハンノキハムシ
2.誘導防衛反応と植物間コミュニケーション
誘導防衛は被害個体だけで起こるのか?
セイヨウヤマハンノキ
ハンノキハムシ
(Dolch and Tscharntke, 2000)
・摘葉個体に近い個体は、
食害が少ない
・植食者は、遠くの個体に
より多く産卵する
近隣個体も、防衛反応を誘導できる
2.誘導防衛反応と植物間コミュニケーション
近隣個体も、防衛反応を誘導できる
・・・どうやって?
防衛反応の誘導が、「シグナル伝達」によるなら・・・
植物間コミュニケーション
(Plant communication)
実際に、多くの植物で、コミュニケーションが確認されている
2.植物間コミュニケーションとVOCs
コミュニケーションを引き起こすシグナルは何か?
野生タバコ-セージブラシ(Karban et al., 2000)
2.植物間コミュニケーションとVOCs
コミュニケーションを引き起こすシグナルは何か?
野生タバコ-セージブラシ(Karban et al., 2000)
空気中に放出される物質がシグナル
2.植物間コミュニケーションとVOCs
揮発性有機化合物
(Volatile organic compounds; VOCs)
・緑のかおり(Green leaf volatiles; GLVs)
葉をちぎったときの匂い(C6のアルデヒド、アルコール、その酢酸エステル)
ポプラ、リママメなどのコミュニケーション
・ジャスモン酸メチル(MeJA)
野生タバコ‐セージブラシなどのコミュニケーション
2.植物間コミュニケーションとVOCs
多くの場合、
VOCs暴露により誘導される、防衛反応は弱い
本当にVOCsが防衛反応を誘導?
2.プライミング
トウモロコシ(Ton et al., 2007)
Northern blot analysis
食害
食害誘導性遺伝子(10遺伝子)
・VOCs暴露のみ:
転写されない
・VOC暴露→食害:
すばやく大量に転写(6遺伝子)
VOCs暴露
のみ
2.プライミング
トウモロコシ(Ton et al., 2007)
Northern blot analysis
食害
食害誘導性遺伝子(10遺伝子)
・VOCs暴露のみ:
転写されない
・VOC暴露→食害:
すばやく大量に転写(6遺伝子)
VOCsの受容で、
VOCs暴露
防衛反応の準備(プライミング)をする
のみ
3.Sagebrushの植物間コミュニケーション
Sagebrush(Artemisia tridentata)
キク科 ヨモギ属
北米の乾燥地帯に生育
3.Sagebrushの植物間コミュニケーション
被食を受けると、葉から強い匂い(VOCs)を放出
植物間コミュニケーション
・異種間:野生タバコ‐セージブラシ(Karban et al., 2004)
・同種内(Karban et al., 2006)
3.Sagebrushの植物間コミュニケーション
特徴
・被害個体および60cm以内の他個体の防衛反応を誘導
ガの幼虫,バッタなど
食害
被害個体
被食の減少
60cm以内
近隣個体
被食の減少
・VOC組成が多様
・季節性がある(春のみ有効)
・若い個体のほうがコミュニケーション能力が高い
Ca
m
1,8 phe
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-C
ub ol,
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e
組成比(%)
3.Sagebrushの植物間コミュニケーション
SagebrushのVOCs:
個体によって含まれる成分、量(組成)が異なる
40
No.1
No.5
30
20
10
0
→ 組成の違いは、コミュニケーションに影響を与えるか?
3.Sagebrushの植物間コミュニケーション
組成の違いは、コミュニケーションに影響を与えるか?
野外実験
クローン株を作成 → VOCsを他個体に暴露→被食を計測
cut
clone1
clone2
株元
clone3
計測個体
VOC成分の分析
GC-MS、匂い組成の類似性を解析 (CNESS)
3.Sagebrushの植物間コミュニケーション
組成の違いは、コミュニケーションに影響を与えるか?
VOC組成が類似
4
→ 防衛反応が強い
2
lvsdamaged
6
8
被 8
食
を
受 6
け
た 4
葉
の
枚 2
数
(/
防衛
枝
強 )
0
0
0.2
0.2
0.4
0.4
0.6
0.6
0.8
0.8
VOCs 非類似度
Dissimilarity.m1
類似
1.0
1.0
GLM: family = poisson, link = log
model
Coefficient
y~x
y~1
(intercept)
x
-0.483
0.746
1.778
AIC
106.8
119.3
3.Sagebrushの植物間コミュニケーション
組成の違いをもたらす要因は? → 遺伝的近縁度に着目
1.2
遺伝解析 SSRマーカー
1.0
類似
0.8
0.6
→ VOC組成が類似
0.4
0.6
0.4
0.2
非
類
似
度
遺伝的に近縁
0.8
Dissimilarity.m1
VOCs
1.0
1.2
0.2
-0.5
-0.5
0.0
0.0
0.5
0.5
Relationship
遺伝的近縁度
(r)
近縁
GLM: family = Gamma, link = log
model
Coefficient
AIC
y~x
y~1
(intercept)
x
-0.386
-0.374
-0.318
-34.97
20.81
3.Sagebrushの植物間コミュニケーション
組成の違いをもたらす要因は? → 遺伝的近縁度に着目
1.2
遺伝解析 SSRマーカー
1.0
類似
0.8
0.6
→ VOC組成が類似
0.4
0.6
0.4
0.2
非
類
似
度
遺伝的に近縁
0.8
Dissimilarity.m1
VOCs
1.0
1.2
0.2
遺伝的近縁度が、コミュニケーション
遺伝的近縁度 (r)
の強さに影響を与える可能性がある
近縁
-0.5
-0.5
0.0
0.0
Relationship
0.5
0.5
GLM: family = Gamma, link = log
model
Coefficient
AIC
y~x
y~1
(intercept)
x
-0.386
-0.374
-0.318
-34.97
20.81
3.Sagebrushの植物間コミュニケーション
遺伝的近縁度が、コミュニケーション
の強さに影響を与える可能性がある
野外では・・・
近縁個体が近くに生育する
↓
コミュニケーションは、
近縁個体間で成立しやすい
ありがとうございました