A-1 京都市立病院における危険薬の誤投与防 止について 京都市立病院 薬剤科 A-2 中心静脈カテーテル留置認定医制度およ び手技実施申告制の導入 京都市立病院 外科1)、NST委員会2)、医療の質推進委 員会3) ○平田 敦宏、熊谷 恭子、小野 勝、今川 文典 ○山本 栄司1,2,3)、森本泰介1,2,3)、瀬川 裕佳2)、古川 【目的】危険薬とは「誤った投与の仕方をした場合に、患 啓三3)、向原 純雄1)3) 者の健康状態に対し死亡を含めた深刻な影響をもたらしう る薬剤」と定義されている。医療事故の約半数が医薬品に 京都市立病院中心静脈カテーテル留置(以下CVC)認 関連している中で、「実際の医療現場で特に注意を払うべ 定医制度は、2006年12月に開始した制度で、CVCを実 き薬剤」である危険薬の誤投与防止対策は非常に重要で 施する立場にあって認定を希望する医師について、NST ある。今回、当院で実施した、危険薬の誤投与に起因する 委員会が一定の条件に照らして評価し、適当である場合は 医療事故を防止するための取組を報告する。 病院長が実施を認可するものである。本制度により実施医 【方法】当院は、平成20年5月に電子カルテを導入したこ 師を限定するとともに、マニュアルに違反して実施しインシ とを契機に、危険薬の院内への周知を開始した。平成20 デントが発生した場合には病院として指導や認定取り消し 年11月から医療安全全国共同行動に参加し、「行動目標 などの措置を行うことで、CVC認定医の自覚を促し重大な 1.危険薬の誤投与防止」で推奨されている項目について アクシデント発生を未然に防ぐ効果を期待できる。 検討し、不十分な項目に対して対策を講じ実施した。 一方2008年5月に展開された「医療安全全国共同行動」 【考察・結果】様々な危険薬の誤投与防止対策を実施し に京都市立病院は同年11月全面的に参加したが、その中 たことで、院内への周知及び医薬品の整理・管理等、いわ の「CVC手技に関する安全指針の策定と順守」という行動 ゆる総合的な安全管理において一定の成果を挙げることが 目標では、推奨される対策のひとつとして「中心静脈栄養と できた。今後、医療事故等報告の分析を行い、更に踏み込 CVC適応の厳格化」があげられていた。 んだ対策を講じ、安心・安全な医療の提供に貢献したい。 我々は、無用なCVCをなくすにはCVC認定医に注意喚 起を呼びかけるだけでは不十分と考え、2009年4月よりC VC手技実施申告制を導入した。CVC手技を行った場合 は成否にかかわらず申告することをマニュアルに規定し、 申告義務を実施医師と立ち会った看護師に課した。申告 内容には、CVCの適応のほか、同意書の有無、マキシマ ムバリアプリコーションを行ったかどうか、エコーやX線透視 など補助手段を用いたかどうかといった項目も盛り込み、医 療の質の向上を促した。併せて、CVC専用のポータブル エコーを増設してエコーガイド下穿刺法を推進し、末梢挿 入型中心静脈カテーテル留置(PICC)を行えるよう診療材 料を採用してSPD化するなど、より安全なCVC実施をサポ ートした。 まだ制度導入から日が浅いが、これまでの申告状況を見 る限りでは、実施総数が減少傾向を示しインシデントの発 生もゼロに抑えられている。さらにエコーガイド下穿刺手技 の標準化が図られてきており、PICCが着実に増加してきて いる。 A-3 RCA を用いた歯科医療事故の分析 A-4 患者および調剤薬局のお薬手帳に対する 意識調査 京丹後市立久美浜病院 歯科 社会保険京都病院 薬剤部 ○真下 肇 ○伊勢 文孝、井上 敬之、村山 和子、北澤 文章、鎌 【緒言】 田智泉、安部 敏生、上田 久美、杉井 彦文 各医療機関において医療事故を防止するためには、医 療機関で発生した医療事故事例および事故にまで至らな 【目的】お薬手帳(以下、手帳)は患者という共通の媒体を いようなインシデント事例を的確に集約し分析を行うことに 介して病院、診療所、調剤薬局等間で薬物治療に関する よって今後の医療事故発生の防止対策を検討し実行する 情報の共有を可能にし、重複投与などのリスクを回避する ことが必要である。医療事故事例の定性的な分析方法とし ために有用である。一方で、患者、医療機関双方が手帳に て、医科ではRCA(根本原因分析)などの分析手法を用い 対して正確な理解を持たなければ、その効果、有用性は発 た分析が多く報告されているが歯科医療分野での報告は 揮されないことも明らかである。そこで今回我々は、患者、 ほとんどない。今回われわれは歯科医療事故事例に対して 調剤薬局双方の手帳に対する意識について調査・検討し RCAを用いて分析を行ったのでその概要について報告す たため、ここに報告する。 る。 【方法】患者に対する調査は平成21年2月3日から2月20 【RCAの実際】 日の17日間に入院した260名のうち、聞き取り調査が可能 われわれは次のような手順でRCAを実施した。 であった179名を対象とし、病棟担当薬剤師により、あらか 1 事例の整理:事例を時間経過の順に整理し各出来事 じめ用意した調査表をもとに直接インタビューをするという について「いつ」「だれが」「何をしたのか」を明確にする。 2 なぜ・なぜ分析:各出来事に対してなぜそうなったのか を考察する。疑問点が見つからなくなるまで何回も繰り返し 行う。 3 因果関係の分析:なぜ・なぜ分析の結果を整理し事例 の根本原因を明確にする。 4 対策の立案:事例の根本原因に対して今後の事故防 止のための方策を検討する。 形式で行った。調剤薬局に対する調査は近隣の41調剤薬 局に対して、アンケートを送付する形式で行った。 【結果】手帳持参者は調査した患者の32.9%、59名で あった。手帳の使用経験のない患者は64名(35.7%)で、 使用経験のある患者は115名(64.3%)であった。115名 の手帳使用経験がある患者で医療機関に手帳を持参しな いと回答した51名のうち、手帳利用の意義を知らないと回 答した患者は80.4%の41名であった。調剤薬局において 【歯科医療事故に対するRCA】 は回答のあった34調剤薬局(回答率:82.9%)のうち、患 歯科医療事故のなかで頻度が高いといわれている金属 者に手帳を必ず紹介・案内をすると回答したのは75.0% 修復物の誤飲事例について実際に生じた事例に対してR であった。一方で、手帳を必ず配布しているのは20.0% CAを用いた分析を行った。 に過ぎず、68.6%が希望者にのみ配布している状況であ その結果、以下の知見が得られた。 った。また、回答のあった調剤薬局のうち、67.7%は手帳 1.RCAの実施によってこれまで気づかなかった事故の について理解している患者が40%未満と考えていることが 原因が明らかになるとともに情報をスタッフが共有すること により事故予防に有用であると思われた。 2.RCAの実施によって日常の業務内容を見直すきっか けとなる。 3.RCAの実施には相当の時間を要するため日常的に 実施することは困難である。 4.RCAは組織の中に存在する事故要因を特定する分 析手法であるが組織として比較的小規模にまとまっている 歯科の場合は組織の中の要因は検出しにくいと感じられ た。 わかった。 【結論】①医療機関に手帳を持参しない患者の多くが手 帳について正しく理解していない。②手帳を配布する立場 の調剤薬局が手帳配布に必ずしも積極的ではない。今回 以上2点が明らかとなり、調剤薬局における手帳の啓蒙が 患者の手帳に対する理解度を高め、さらには有効利用に 繋がる可能性があると考えられる。 A-5 京都府防災フェアにおける公立南丹病院 および京都 DMAT(災害医療派遣チーム)のPR ブース出展の試み A-6 薬剤師による入院時持参薬チェック-当院 の現状と今後の課題- 長浜赤十字病院 薬剤部 1) 2) 公立南丹病院 、市立福知山市民病院 、京都府立与謝 の海病院 3) 、京都府健康福祉部医療課 4) 、京都第一赤十 字病院 ○西嶋 長、近藤 信行 5) 【はじめに】 1) ○計良 夏哉 、藤阪 みさ代 2) 志 、高見 祥代 3) 2) 4) 1) 1) 、村上 令 、竹谷 宏 2) 2) 、吉川 徹二 、深田 良一 、坪倉 洋子 、松村 弘毅 、高階 謙一郎 5) 当院では、以前より病棟からの依頼に応じて薬剤師が入 院患者の持参薬チェックを行ってきたが、DPC導入を機に この業務を充実させるために見直しを行なった。その後1年 が経過してリスクマネージメントや医療経済から見た効果、 【背景】平成21年度には京都府南丹二次医療圏におい あるいは問題点などが見えてきたので報告する。 て京都府総合防災訓練が開催された。屋外での機関連携 【活動内容】 訓練の翌日には「防災フェア」と銘打たれた災害に対する 当院ではDPC導入前から医師・看護師・薬剤師からなる 住民意識の高揚や地域・家庭における防災対策の推進を 「持参薬ワーキンググループ」を立ち上げて、持参薬の取り 図る「防災啓発・教育」のため屋内企画への参加が募られ 扱いについて検討を重ねた。当院の1日平均の新規入院 た。京都府では現在の9施設17チームのDMAT(災害医 患者数は25.6名で、入院予定リストに入っている「予定入 療派遣チーム)が研修を終えており、メーリングリストが立ち 院患者」と、それ以外の「緊急・臨時入院患者」に分類され 上がっているが、全体では実働防災訓練への招聘による ているが、すべての予定入院患者について、薬剤師が持 参加以外は行われていない実情があった。 参薬チェックを行うことに決定した。薬剤部ではこれを受け 【目的・方法】公立南丹病院と京都DMATの二つの団体 て、人員配置や持参薬を鑑別する場所の問題など実際の 名で参加登録し、前者のブースでは災害拠点病院としての 業務について検討を行った結果、患者さんが入院されたら 診療や備蓄の体制とその役割などを政策医療(京都府保 各病棟担当薬剤師が訪床・面談し、薬剤管理指導業務の 健医療計画)も含めて紹介し、後者ではDMATの資器材 一環として持参薬の鑑別作業を行い、報告書を作成するこ やユニフォームなどの展示、またパネルや広域医療搬送の とにした。 DVDを用いてDMATの概念やミッション、京都府内のチ 【まとめ】 ームの紹介、前日の実働訓練の様子やメーリングリストを用 いて集めた各施設での訓練の写真を展示した。 DPCを導入している医療施設にとっては、持参薬を使 用することはリスクがあっても医療経済及び医療資源の有 【結果】他の行政団体、自衛隊、電力会社、通信会社、薬 効利用の点からも必要である。またインシデントの発見及び 剤師会、災害救助犬養成のNPO法人などとともにブース リスク回避の事例もあることから、この業務を薬の専門家で 出展を行った。訪問者のアンケート結果では災害拠点病院 ある薬剤師が行なうことは医療安全から必要不可欠になっ やDMATに対する認識を持ってもらうことができたと考えら てきている。しかし煩雑な業務であるにもかかわらず診療報 れた。 酬は設定されておらず、薬剤師のモチベーション低下にも 【考察・結語】今回の京都府防災フェアでは所属病院と京 都DMATの二つのブースを開設することで、所属病院に は伺書(趣意書)を提出し病院の企画として決裁を受け、出 張の申請を行った。また、準備段階から自治体の防災や保 健福祉の担当者や、災害対策にかかわる他業種と顔の見 える関係を構築できたこともメリットであった。このような機会 を利用することは広義のリスクマネジメントの一つとしての災 害医療の社会的認知度を高める上でひとつの有用な手段 であると考えられるためその手法を中心に紹介する。 つながりかねない。今後の医療制度改訂における点数化 に期待したいところである。 A-7 薬剤の安全管理への取り組み A-8 ICU 病棟における薬品在庫管理の取り組 み 社会保険滋賀病院 薬剤部 近江八幡市立総合医療センター 薬剤部1)、ICU2) ○大林 巧志、中谷 靖子、鷹羽 頼勝 ○小川 暁生1)、西尾 諭美1)、山口 瑞彦1)、藤井 重治 【はじめに】 1) 、塚本 有子1)、辻井 靖子2)、鳰 淳子2)、国松 秀美2)、 現在当院では約1550種類の医薬品が採用されている。 吉永 典子2)、小野 敏明1) その中には、充填、調剤後の間違いを発見するのが困難 である散剤や、調剤時に煩雑な確認作業が必要である複 当院は平成18年の新築移転に伴い、旧病院にはなかっ 数規格医薬品、類似医薬品などがある。また、ワンショット たICUが6床の独立型病棟として新設された。一般にICU 禁忌の注射など投与方法の間違いが重大な事故を薬剤も に入室する患者は重症患者であるため、ヒヤリ・ハット事例 ある。人間である以上、人的ミスをなくす事は困難であるが、 や医療事故が発生しやすく、また事故が発生した際には生 未然に防ぐ仕組みを考えなければならない。これらの薬剤 命予後に影響が及ぶ可能性が高い環境であるといえる。I の安全管理について、当院薬剤部の取り組みを紹介する。 CUにおける安全な業務環境の整備は行政も求めるところ 【経過】 であり、薬剤師には「処方内容を含めた治療計画への関 ①散剤監査システムの導入 与」「薬剤投与の適切性の確認」「薬品在庫管理」等にその 薬剤の秤量・充填の際には、薬瓶のバーコードによる確 役割が期待されている。当院は平成19年に病院機能評価 認を行い、秤量が実測値の許容範囲になければ調剤が完 を受審したことをきっかけに、ICUの薬品在庫管理に薬剤 了できない。また、自動分包機と連動することで、分包数の 師がもっと関与する必要性を痛感し、以後、ICU病棟に薬 間違いも防ぐ仕組みになっている。 剤師が赴き、在庫管理を中心とした取り組みを始めた。 ②複数規格、類似医薬品等の管理 間違いやすい薬剤をリストアップ、またこれらを認識できる よう医薬品棚にシールを貼り、注意喚起を行なっている。 当院ICUにおいては、主に病棟配置薬から必要薬剤を 使用し、使用薬剤を翌日補充する形をとっている。しかしP Cを通しての使用薬の入力から薬のオーダー、払い出しま ③ワンショット禁忌の注射剤 での間には多くのシステムおよびスタッフが関わるため、シ 調剤者、監査者だけでなく、実際施行するスタッフにも注 ステム上・作業上のエラーが発生しやすく、取り組み前には 意喚起する目的で、あらかじめリマインダーを薬剤と同梱し 薬品在庫に大幅な余剰と不足が生じていた。当院薬剤部 ている。またワンショットできない製剤の採用を積極的に行 にはICUに常駐薬剤師を置くほどのマンパワーはないが、 っている。 現在は調剤業務のかたわら最低週2回、金曜・月曜を中心 【結果・考察】 に担当者が在庫管理および定数の補正を行なっている。ま ①散剤監査システム導入により、間違いなく散剤の調剤、 た電子カルテ上でその日の使用薬剤をチェックし、それに 充填が出来、安全確保に大きく貢献した。 見合った補充がなされているか紙面上で把握するようにし ②医薬品棚に注意喚起を示すシールを貼り、複数規格、 た。担当者が管理を始めてから病棟薬品在庫は1週間を通 類似医薬品に対する認識は向上した。しかし、間違いを完 してほぼ定数内に収まるようになり、特に余剰在庫が減少し 全に防ぐことはできておらず、今後さらなる対策が必要であ ている。また多種類・多品目の薬剤を病棟に置いておくの る。 は経済上・医療安全上リスクが大きいこともあり、看護師と ③リマインダーを同梱することで、病棟スタッフが施行時 に危険性を認識でき、誤投与の発生を未然に防ぐ一助に なっている。 このように当院では様々な視点より、薬剤の安全管理へ の取り組みを行なっており、安全性の向上に貢献してきた。 しかし、間違いがなくなったわけではない。今後、危険薬の 病棟配置の見直しや取り扱い指針の作成などさらなる安全 性向上へと取り組んで行きたいと考えている。 協議の上、病棟定数を減らす方向をとっている。 当院薬剤部のICU病棟における取り組みは、まだまだ始 まったばかりであるが、医療安全上の取り組みの一環として 状況を報告したい。 A-9 京都第二赤十字病院における医療安全活動 A-10 「指差し呼称確認」動作の周知に向けた取 り組み 京都第二赤十字病院 医療安全管理委員会 近江八幡市立総合医療センター 看護部 医療安全推 ○横野 諭、森本 和代、田淵 宏政、三上 正、 進委員会 竹中 温 ○岩崎 昌敏、木下 明美、鳰 淳子、石谷 邦子、寺村 当院では、2003年10月より医療安全委員会へのヒヤリ・ 真由美、市川 加奈子 ハット事例の報告を全職員対象に開始した(看護部は独自 に実施していた)。当初は、所定の用紙による報告であった 近江八幡市立総合医療センター、看護部医療安全推進 が、院内ネットワーク構築後の2006年からは情報端末から 委員会において、輸液の誤投与防止のため看護師全員を のオンラインによる報告(リスク管理システム)が開始された。 対象に「指差し呼称確認」の推進を実施している。 当初は、個別事案へ対応していたが、システムの欠陥など 全体的な安全対策への取り組みには不十分であった。 2008年には1、563件の報告があり、それらの情報を医 「指差し呼称確認」動作マニュアルを作成し、看護師全員 が日常的に「指差し呼称確認」動作を実施できることを目指 して指導、教育を含めた取り組みを行なっている。 療安全の推進のために活用するため、日本医療機能評価 【取り組みに至った問題点】 機構による医療事故情報収集等事業報告と比較し、全国 当委員会では、以前より「指差し呼称確認」の推進をして 的に共通する問題点や本院固有の問題点等を検討したの きたにも関わらず現場に十分浸透するには至らなかったと で報告する。 いう経緯がある。当委員会はその原因を、具体的なマニュ 発生日時として、5~7月、10~12月、水~金曜日、6~ アルがなく指導に統一性が得られていない。また、その推 11時、16~21時に多い。報告内容は、与薬関連(623 進活動もリスクマネージャーに一任され具体性に乏しかっ 件)、転倒・転落(410件)、チューブトラブル(275件)が大 たと分析した。これらの問題をふまえ、次のような取り組み 部分を占めていた。 立案している。 与薬関連では、輸液速度調節のミスなどの過剰投与、配 【具体的な取り組み内容】 薬忘れ等の無投薬、投与時間ミスが多く、その原因として 取り組みの時期:平成20年5月~現在に至る 他業務の割り込みなどが指摘されている。 取り組み方法: 転倒・転落では、整形外科や神経内科患者を多く収容し ①指差し呼称確認」について学習会の実施取り組み方法 ている病棟からの報告が多く、6~8時台と18~24時台の ②「指差し呼称確認」マニュアルの作成と、「指差し呼称 2峰性を示した。起床時間帯、夕食~就寝準備のための活 動に伴うものと考えられた。 チューブトラブルは、栄養チューブ、輸液路関連が過半 手順表」の作成 ③「指差し呼称確認」全体研修会の実施、各部署への周 知 数を占め、準夜帯から深夜帯に多発しており、救急病棟で ④「指差し呼称確認」自己評価および、他者評価実施 多かった。 ⑤「指差し呼称確認キャンペーン」実施 多くの報告事案では健康被害が認められなかったものの、 ⑥「指差し呼称確認キャンペーン」実施後の、評価・分析 重大事故にも繋がりかねない。これらの結果は、院内で報 【今回の取り組みから得られたこと】 告したが、当委員会としては積極的な介入はできなかった。 ①「指差し呼称確認」の再周知と必要性を改めて理解し 作業環境や業務内容等のシステムの改善、マンパワー充 足、IT利用など根本的な対策と同時に、報告の分析から効 率的な対応も可能と思われる。集会では、2009年のデー タも併せて報告する予定である。 てもらえた。 ②他者評価を受けることで、実際の行動レベルに気づけ た。 ③後も継続していくことの必要性を感じた。 【今後の課題】 ①各部署の取り組み状況の把握と、指導の実施 ②リスクマネージャーの継続した活動の推進 ③各部署の取り組み状況と、リスクの発生状況について 分析(指差し呼称確認実施前後の、リスク発生率について) A-11 他院からの持ち込み薬管理の検討 A-12「リスク改善報告会」を開催して 市立福知山市民病院 持ち込み薬検討チーム 医療安 市立福知山市民病院 リスクマネジメント部会 1) 2) 3) 全管理室 、消化器科 、薬剤部 、看護部 4) ○芦田 久美子、佐藤 真寿美、大槻 道彦、深田 良一、 1) 1) 2) 足立 秀明、山口 誠、近藤 あい、中根 葉月、岡野 ひ 4) ろみ、平山 純子、中村 晃己、香川 惠造 ○佐藤 真寿美 、芦田 久美子 、小牧 稔之 、近藤 3) 3) 4) あい 、小林 香奈 、中根 葉月 、河波 秀代 、平山 淳子4) 医療安全管理室では、年間約1500件提出されるヒヤリ・ 【はじめに】当院では入院患者の2~3割以上が、他院処 ハット報告から改善策及び提案を、リスク部会を中心にリス 方での持ち込み薬があり、「医師の指示が明確でない」「持 ク委員と検討を行っている。今回、リスク委員を中心に、部 ち込み薬把握に時間がかかる」「指示が遅れた」等のヒヤ 署内での問題解決強化と医療安全への意識の向上を目指 リ・ハットが報告された。そのため「持ち込み薬検討チーム」 し、リスク改善報告会を計画した。改善策の募集をしたとこ をたちあげ、現状把握・対策を実施した。今回、その成果及 ろ、診療部・看護部・薬剤部・放射線科・検査科・診療技術 び今後の課題について報告する。 科・リハビリ・事務関係から21演題の提出があり、その中か 【方法】①現状把握として平成21年6月の7日間の入院件 ら8演題を選出しリスク改善報告会を開催した。その結果、 数から、他院処方での持ち込み薬人数・お薬手帳等の持 アンケートでは、84%の参加者が「最も共有する意義」を感 参人数・医師の指示の明記の有無等を調査した。②その結 じ、83%が「最も今後も必要」ととらえていた。中には、「職 果を踏まえ、医師の指示を「他院処方の薬識別カード及び 員全員が知るべき内容であると実感した。危険を防止する 指示書」に記載、外来での「お薬手帳・お薬情報持参の啓 ことで医療の安全が向上されると思う。」、「各部署様々な工 発」等を検討し、その対策を9月より実施した。③成果把握 夫をされていることを知った。職場でも活用できそうな策も として、平成21年11月の7日間の入院件数から、院外の持 あったので、是非活用したい。」の声も聞かれ、リスクをオー ち込み薬人数・医師の指示の明記有無等を調査し、今回 プンにして、改善をはかるという職員の安全への意識が向 の対策の効果と課題を明確にした。 上していると思われた。また、その1ヶ月後には、今回のリス 【結果】医師指示の記載率は、6月では29%が11月に ク改善報告を誰にでも分かりやすい言葉に置き換えて、院 は59%と上昇していた。しかし、検討した「他院処方の薬識 内ふれあいギャラリーに展示した。患者・市民から、「この病 別カード及び指示書」での指示記載率は26%に留まり、後 院は安心感も信頼感も持てるので良かった。医療は早く変 は以前からの経過記録等での記載であった。「お薬手帳・ わっていくのでこれでよくわかった。」の声が聞かれ、当院 情報」に関しては、個々への説明が効果を得て、他院処方 の医療安全への関心を高める事ができたので報告する。 持ち込み患者の48.7%が持参となった。今後更に、医師 への周知と「他院処方の薬識別カード及び指示書」での指 示変更時の記載方法等が課題としてあがった。 A-13 当院における医療・苦情相談の実情―医療 A-14 転倒転落事故防止に関する院内の取り組 安全管理室対応から― み-医療安全全国共同行動参加に参加して- 市立長浜病院 医療安全管理室 洛和会丸太町病院 臨床検査部・医療安全管理室1)、 経営管理部2)、看護部3)、放射線部4)、薬剤部5)、リハビリ ○宮村 清孝、川崎 悦子、大塚 邦生、宮川 六三郎、 村中 幸二 健康でありたいという願いから、医療に対する関心の高ま テーション科6)、洛和会京都看護学校7)、洛和会丸太町病 院院長8) ○佐藤 晴久1)、片桐 円2)、花山 慎一2)、島田 直美3)、 りとあいまって、治療結果に対し、本人や家族が「不信」や 吉岡 妙子3)、塩見 滋子3)、相井 勝4)、黄前 尚樹5)、髙 「疑問」を持たれることが多くなってきている。 橋 祥紀6)、三森 佳奈7)、井上 博志2)、二宮 清8) 当院では、治療の経緯について説明を求められた場合、 まず基本的には主治医や婦長で現場対応を行う。しかし、 【はじめに】 患者や家族とのコミュニケーションが不足している状況や対 当院において、転倒転落事故防止策に取り組む病院内 応した職員の誤解を招くような態度や言動があって、「治療 のスタッフは、他職種で構成されている。これまで、転倒転 すべてに問題があったのではないか。」「適切な治療をして 落事故防止策として、入院時にアセスメントの実施、センサ もらえなかったのではないか。」との思いから、理解をいた ーマットの設置や訪床回数の増加など様々な対策を行なっ だけない事態に発展した場合は、医療安全管理室が窓口 てきた。今回、医療安全全国共同行動参加をきっかけに、 となり関係部署の責任者から申し出の内容について、現場 患者様や家族の理解と協力が不可欠であると考え、21年7 などで再確認した結果を本人や家族に説明しており、病院 月から患者様自身やその家族にも理解・協力を求めるパン として組織で対応できるように取り組んでいる。 フレットを作成し、入院時に配布及び説明を行なった。また ここ3ケ年における医療・苦情受付件数は、平成18年度8 8件、平成19年度67件、平成20年度52件であった。 内容別には次のような状況であった。 アセスメントシートの改訂も実施した。 【結果】 対象は70歳以上とした。20年度転倒転落事故発生件数 平成18年度・平成19年度・平成20年度 は86件。発生率0.27%。治療を要したレベル2以上の発 1.医療または診療内容に関する相談 生件数は30件、発生率は0.094%であった。21年度7月 30件・25件・29件 以降の転倒転落事故発生件数は71件、発生率0.447%。 2.職員の対応に関する相談 治療を要したレベル2以上の発生件数は14件、発生率は0. 49件・33件・17件 088%であった。 3.環境病院のシステムに関する相談 【まとめ】 9件・9件・6件 転倒転落の発生件数は軽減できなかった。しかしレベル 今回、当院における医療・苦情相談の実情を報告する。 2以上の発生件数はわずかながら減少した。今後は転倒転 落の予防DVDの放映やポスタ-による啓蒙活動を含め、 患者様自身やその家族と共に、転倒転落事故防止に取り 組み、少しでも転倒転落の発生を防ぎたい。 A-15 みんなの時間-院内標準時間を作る- A-16 各モダリティ装置の急変時マニュアル作 成の実施について 1) 野洲病院 看護管理室 、回復期リハビリテーション病棟 2) 、 臨床工学課3)、医療安全管理室(麻酔科)4)、薬剤課5) 市立福知山市民病院 放射線科 ○乾 悦子1)、大内 正千恵2)、市川 正人3)、今井 秀一 ○大槻 道彦、渡邊 哲也、山本 香織、橋岡 康志 4) 、桑原 こずえ 5) 【目的】 【概要】「全職員の時刻についての意識づけ」を目的に院 内共通の標準時間作りに取組んだ。 病院内各部署で、定期的にBLS/AEDコースが行われ ており、放射線科でもBLS/AEDコースを行っている。し 【取り組み】各部署の医療安全推進委員が中心となって かし、放射線科で検査中に急変した場合、すぐにBLS/A 標準時間について協議したものをマニュアルにまとめ、20 EDが行えない装置がある。その為、各モダリティ装置の特 09年3月から実施した。部署ごとの標準時計がわかるように 性を考慮した急変時のマニュアルが必要であり作成したの 目印の「ピンクのシール」を貼り、活動の見える化を行った。 で報告する。 医療安全推進委員の活動として、毎月の委員会で部署の 標準時計の時刻合わせを行うことと朝礼時に各自の時計を 【方法】 標準時計に合わせるように声かけを行っている。取り組み インストラクターに検査中の状況を確認してもらい、各モダ の様子を医療安全便り(すまいる)に掲載し広報活動を行 リティ装置の使用方法を説明しながら、どの様な対処方法 った。 が最適かを検討した。 【効果】取組みの評価は、6ケ月後に職員へのアンケート 調査を実施し、88%の回収率を得た。主な調査項目は① 【まとめ】 標準時計の認知度②各自の時計合わせの実践度③活動 各モダリティ装置で、そのモダリティ装置の急変時のマニ の理解度とした。調査結果は、部署間で比較できるグラフ ュアルを作成した。マニュアルは検査担当者のすぐ目に入 で表し、委員を通して、各部署へフィードバックした。これに る位置に貼り、いつでも確認できるようにした。BLS/AED より、<みんなの時間>院内の標準時間は、各部署の医療 コースの訓練時にはそのマニュアルを使用し、より実践的 安全推進委員や臨床工学技士(医療機器の時刻合わせ担 な訓練が行うことが出来た。 当)、情報管理室(パソコンの時刻合わせ担当)の地道な継 続した活動が支えていることを職員に周知する機会となり、 職員の時刻への意識づけにつながった。今後も「目印はピ ンクのシール」を合言葉に活動を継続し、取組みの定着を 図る定期的な啓蒙を行うことが課題である。 A-17 患者の手洗いに関する実態調査と意識づ A-18 一次洗浄廃止への取り組み け 国立病院機構 滋賀病院 看護課 公立南丹病院 看護部 ○植村 明美 ○林 夕希、駒田 圭衣子、西村 里香、横川 佳代子、 松岡 奈美子、今西 恵美子、藤阪 みさ代 現行の器材洗浄方法を評価し、適切な洗浄方法に改善、 消毒滅菌の品質を向上すること、また職員への湿性生体物 【目的】前回の研究で医療者の手指衛生を実施し意識を 質曝露の機会を減少し感染リスクを軽減する目的で、現場 高めることができた。しかし、VRE調査にて当病棟ではAD での再生滅菌器材の一次洗浄を廃止したので報告する。 Lの自立している患者にも保菌者がいたため、患者も感染 【現状の評価】当院ではフラッシャーディスインフェクターに 予防に対する意識を高める必要があると考えた。患者の手 よる洗浄と、蛋白分解酵素液による浸漬洗浄の二種類の洗 洗いに対する実態調査を行い、手洗いの意識づけを試み 浄方法があるが、後者は蛋白分解酵素液の浸漬温度と時 た。【方法】手洗い指導前後でアンケートの実施を行い、手 間が適正に管理できていなかった。また、煩雑な臨床現場 洗い前後でのATP値の測定とブラックライトによる洗い残し での洗浄作業は、必要な防護用具着用の徹底が困難であ の確認を実施し、洗面所にパネルの貼りつけやパンフレット った。そこで、新しく導入しようとする洗浄方法(血液凝固阻 の配布を行った。【結果】普段の手洗いでは洗い残しも多く 止剤使用後超音波洗浄)をATP(アデノシン三リン酸)測定 ATP値も高かったが、指導により改善はみられた。数日後 で評価したところ、洗浄効果は十分であった。【運用への具 再度実施したところ、指導時と同様の手洗いを実施できて 体策決定】①中央材料室へ提出される器材の量・サイズの いたが多少手洗いの質は落ちていた。アンケート結果では 調査結果を基に2種類の回収容器を選定し、切創防止目 手洗いに関する意識は高まっていた。【考察・結論】視覚的 的に使用する鋭利器材用の籠を準備した。②手順と注意 に自分自身の手洗いを振り返ることで「習慣」から「細菌や 点を写真入りで作成し、看護師長とリンクナースを通じて職 汚れをおとす」という動機づけになった。そして、正しい手 員に周知した。【実施・結果】①一部の部署において2週間 洗い方法を知ることで、意識づけと行動修正につながった の試行を実施後、全部署で開始した。洗浄過程におけるト と考える。今後はこの関わりを継続していくことが大切であ ラブルはなかった。②定期的にATP測定で洗浄の質を評 る。 価したが、問題はなかった。【考察】一時洗浄廃止により以 下のメリットがあった。1.洗浄効果の判定を定期的に実施 することで洗浄の質の保証に繋がった。2.診療時間に業 務が集中する外来部門では、患者ケアや診療介助に集中 できるようになった。3.浸漬容器の設置場所を有効利用で き、浸漬洗浄時の職員や周囲への汚染のリスクを低減でき た。4.導入に際して看護職員に器材処理に関する研修を 実施したことで、正しい洗浄方法と品質への影響など知識 獲得の機会となった。【今後の課題】洗浄に携わる職員へ の職業感染や洗浄技術等の継続的な職員教育と手順の 見直しおよび、定期的な洗浄効果の判定による洗浄の質 の維持・向上を行うことが重要であると考える。 A-19 手指衛生遵守率向上に向けたとりくみ- A-20 針刺し事故防止への取り組み 手指衛生に関する認識・行動の現状把握- 三菱京都病院 事務部 舞鶴赤十字病院 看護部 リンクナース ○森井 亨介、辻本 昌宏 ○稲田 亜希、川島 絵美、橋村 抄子 【はじめに】 【目的】 当院安全衛生委員会では、針刺し事故の発生件数を年 当院では、2008年よりリンクナース会が発足し、現場を中 間10件以下と目標を定め、活動を行っている。主な活動と 心とした感染対策を展開してきた。「医療現場における手指 しては年4回の巡視を行い、針廃棄ルールの遵守、針使用 衛生のためのCDCガイドライン2002」では、従来の「石鹸 時のマニュアルの徹底を行い、事故防止の注意喚起を行 と流水による手洗い」から「擦式消毒用アルコール製剤によ っている。 る手指消毒(以下:ジェルとする)」が推奨されるようになり、 今年度「ジェルによる手指衛生」に焦点をあて、キャンペー しかし、現状では毎年年間目標を上回る事故件数が発生 しており、活動に対しての成果が上がっていなかった。 ン活動を実践してきた。活動の一環として当院看護職員の 【新たな活動】 「手指衛生」に関する認識と行動について、現状を把握す 安全衛生委員会において巡視以外にも新たな啓蒙活動 る目的で行ったアンケート調査結果から、課題と遵守率向 が必要ではないかとの議論があがり、協議した結果、事故 上に関わるアプローチを見いだせたので報告する。 報告書を基に統計データをとり、そのデータと各部署での 【方法】 針使用量及び病棟ごとの看護必要度の割合を算出し、統 当院看護職員105名を対象に、CDCの推奨する「手指 計データと照らし合わせ、事故発生要因の検証を行った。 衛生が必要な場面」をもとに、看護処置場面24項目をあげ、 そして、その検証結果を針使用頻度の最も高い看護部へ 遵守状況に関するアンケート調査を行った。 発表するとともに、新入職員に対しても教育の一環として資 【結果】 料提供をし、事故防止の啓発を行った。 看護処置場面のジェルの使用は全体の12%。そのうち また、当院では患者様の使用済みインスリンの針の廃棄 「患者に直接接触する前」に該当する9項目の使用は全体 を、採血室事務職員が代行して行っていたが、廃棄袋より の16%であった。手指衛生が実施できない理由は、「業務 飛び出た針によって針刺し事故が発生してしまった。それ 多忙」が40%、ついで「手荒れする」が37%、「すぐ使える をうけ、廃棄のルールを見直し、患者様自身に廃棄してい 場所にない」が21%を占めた。ジェルが推奨されることを知 ただくよう廃棄箱を設置し、患者様へ協力を求めた。 っているか、という問いに対し全体の81%は認識があっ 【成果】 た。 新たな活動を行った結果、統計データの提供に関しては、 【考察】 今のところ大きな成果が上がっているとはいえない。採血室 キャンペーンで推進してきた「ジェルによる手指衛生」に の活動に対しては、患者様からも協力を得られ、大きな問 ついては多くの看護職員が認知していたが、実際の使用 題も無く運用できており、成果をあげてきた。 状況は少ない結果であり、処置場面別で見ても、清潔操作 【考察】 に関する処置前にジェルを使用する傾向は見られたものの、 今年度より新たな活動を始め、まだ目立った成果は出て 「流水による手洗い」の代用となる意識が浸透していない現 いないが、今後も活動を継続し、職員への注意喚起や防止 状が明らかとなった。 の取り組みを行っていくことが重要と考える。 「直接患者に接する前」の実施は全体の2割以下であり今 後はジェルに関する使用タイミングの具体的レベルでの指 導、ジェルの有効性、手荒れに関する正しい知識の普及、 さらにハード面での検討などを行い、ジェルによる手指衛 生を身近に、習慣化していけるようリンクナースとして遵守 率向上に向けたアプローチをしていく必要があると考える。 今後も事故防止への対策を検討し、針刺し事故0件を目 指して、活動を行って行きたい。 A-21 当院における新型インフルエンザ感染対 策 A-22 VRE 感染予防対策の構築と成果 -第一報- 公立南丹病院 ICT 京都第二赤十字病院 C3北病棟 ○上田 多加子、山下 彰良、山村 京介、小田部 修、 ○辻 陽子、前野 由美、新 カヨ 伊藤 陽里、岡本 昭夫、上田 祐二 【はじめに】 当院は二種感染症指定医療機関であり、地域の感染症 C病棟は整形外科を主とした55床の混合病棟である。今 医療を担っている。当院の発熱外来設置後5月16日より1 回、平成20年11月よりVRE保菌患者が継続して判明した。 1月20日までに当院を受診し、インフルエンザ簡易検査 半年にわたりICTの介入と部署で感染予防対策の改善と (以下簡易検査)を受けた患者数は2,696人にのぼり、そ 実践を重ね、感染制御につながる成果を得ることができた。 の内陽性と判定された患者は751人であった。京都府内の その経緯を報告する。 感染拡大状況を感染症センター定点報告より見ると、南丹 【目的】 管内は40週目に注意報レベルとなった。そのため感染の C病棟におけるVRE感染予防対策の実践状況を見直し、 ピークを10月の中旬と予測して発熱患者の受診状況を調 効果的な対策を明らかにする。 査し、集中する時間帯や曜日、増員が必要な部署や人員 【方法】 配置を検討して診療体制の強化を図った。南丹管内は、そ 1.アンケートによる病棟看護師の標準予防策・接触感染 の後42週には定点あたり48.89人と前週を20ポイントも増 加し、京都府内において最も早く警報レベルに達した。警 戒レベルに達した10月に当院が実施した簡易検査数は、 予防策の現状評価 2.ICT環境調査の結果に基づいた設備の改善および学 習会への参加 前月の476件から807件と増加、陽性者は81人からいっき 3.病棟看護師・患者に対する感染予防策の指導強化 に352人と約4倍の急激な増加であった。更にピークは予 【結果】 測より1週遅れて44週に定点52.33となった。このような状 1.病棟看護師を対象としたアンケートにより、一処置・一 況下で診療体制を強化し、地域との連携を図りながらどの 患者ごとの手指衛生、オムツ交換手順が守れていない現 ように対応を行ったかについて報告する。 状が明らかになった。また環境整備を行う高頻度接触部位 の認識にも看護師間で個人差があることが明らかとなった。 2.環境調査結果より汚物処理室・患者共同トイレ環境に VREが検出された。汚物処理室にはペダル式ゴミ箱を設 置、清掃については回数を増やし、業者に対して具体的な 方法の提示と実施確認を行った。併せて共同トイレのクリー ナージェル・ペーパーホルダー・ナースコールの設備を整 えた。また医師・病棟看護師がICT主催の学習会に参加し た。 3.結果1をふまえ、病棟看護師の標準予防策・接触予防 策遵守を呼びかけた。また保菌患者からの伝播リスクを検 討し、患者の手指衛生指導、使用ごとのトイレ環境の除菌 シート清拭及び便器尿器の管理方法の徹底を図った。 以上の取り組みから平成21年6月以降、新規保菌患者の 検出はゼロで経過している。 【考察】 VRE保菌患者判明後、ICTと協同し伝播防止対策の実 践と効果の評価を継続したことが効果的な対策の究明に繋 がったと考える。また、今回この経験を通して感染予防には 医療従事者・患者一人一人が基本的感染予防行動を実行 することが重要であることを再認識した。 A-23 医療廃棄物適正廃棄に向けての取り組み A-24 防護具(手袋・エプロン)の活用を目指し て-防護具プレゼンテーションの効果- 京都府立与謝の海病院 リンクスタッフ会 京都府立与謝の海病院 リンクスタッフ会 ○大橋 啓江、西原 美智子、沖野 由美、玉井 香 ○大下 美弥子、熱田 真弓、沼 しのぶ、玉井 香 【はじめに】医療廃棄物の多くは、感染性であり分別や運 搬時に職業感染の危険性がある。この危険性を回避する 【はじめに】 ためにも廃棄物の適正な分別は重要である。平成20年度 感染予防対策において標準予防策の徹底は重要である。 リンクスタッフ会は、活動の一つとして廃棄物の分別状態を しかし、徹底できていない現状である。そこで平成20年度リ 調査した。特に感染性の廃棄物に関して各部署でのばら ンクスタッフ会で、防護具の使用状況、防護具の着脱のタ つきがあり、看護師の分別意識の向上が必要と感じた。講 イミングの実際をラウンド調査した。ラウンド後、各部署に実 習会後、多くの看護師が分別の必要性を理解し、適正な分 態の報告、指導を行っていったが効果的な改善には至らな 別を行うことができたのでここに報告する。 かった。その結果、「防護具の必要性はわかっているが、 【目的】「廃棄物分別講習会」によりすべての看護師が統 一した知識を持ち、適正な分別を行うことができる。 個々で防護具の使用状況に差がみられ着脱のタイミングに 問題がある。」という事が明らかになった。そのため、平成2 【方法】①約1ヵ月間リンクスタッフの廃棄物チームメンバ 1年度は、「各防護具の必要性と着脱手順を理解し実施で ーが、各部署で1回ずつ昼休み等を利用し講習会を行った。 きる。」という目標をあげ、防護具の着脱手順の定着にむけ ②講習会に参加できなかったスタッフについては後日、各 取り組みを行った。 部署のリンクスタッフが伝達講習を行った。③講習会は、現 【方法】 物の提示と廃棄物の状況を設定、質問形式をとった。④講 1)防護具の必要性、タイミングについてのプレゼンテーシ 習会直後にアンケートを行った。⑤廃棄物分別状態の再ラ ウンドを行った。 【考察】部署別、小集団で講習を行う事により、リラックスし ョン 2)DVDによる正しい防護具の着脱方法の教育 3)汚染状況のデモストレーション実施 た雰囲気で勧めることができた。実際に添った廃棄物を提 4)小グループにわかれ防護具の着脱方法の確認 示したことで疑問や問題点が質問しやすく、その場で問題 【結果・考察】 解決もできた。講習会直後のアンケートは、以前の廃棄物 プレゼンテーションで防護具の必要性が理解でき、DVD 分別を再度振り返る機会となった。講習会不参加者には、 視聴により、正しい着脱方法を視覚的に教育した。また、デ 各部署のリンクスタッフが伝達講習を行った事で、一定期 モストレーションで実際に環境への汚染状況を示した。そ 間に看護師全員へ講習会を行うことができた。これは全員 の後、小グループに別れ個々に防護具の着脱演習を実施 で廃棄物の適正廃棄に取り組むという、意識向上につなが し、その状況をリンクスタッフが観察した。防護具着脱の仕 った。 方により、どれくらい環境を汚染するかということを視覚的に 【結論】一定期間、各部署で小集団の具体的な廃棄物を 表したことにより受講者は理解しやすかった。更に、小グル 提示した講習会により、看護師の知識向上と廃棄物の適正 ープで演習を行い正しい着脱技術を習得する事ができた 分別につながった。今後も継続して廃棄物の分別が適正 のではないかと考える。 に行えるように引き続きラウンドで監視をしていきたい。 実際にデモストレーションで、汚染状況を視覚的にみせ 個々に防護具の着脱を実施したことは、防護具の必要性 への意識の向上へとつながった。 【まとめ】 今後、防護具はいつ使用する必要があるのか、着脱のタ イミングはいつなのか状況設定し教育する必要がある。
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