大使の手紙～ボツワナでのビジネスの勧め

大使の手紙
ボツワナでのビジネスの勧め
駐ボツワナ大使兼 SAD C政府代表小林弘裕
昨年 10月、在ボツワナ日本大使館の二代目大使として着任してから約半年が過ぎました。アフ
リカ南部、南半球にあるボツワナでは夏も終わりに近づき、標高 1000mの高原にある首都ハボロー
ネでも朝晩はぐっと涼しくなってきました。
ボツワナは日本ではあまり知られてはいませんが、ヨーロッパでは有名です。ダイヤモンド生産額
世界一、良質なものが多いことで一目置かれています。ダイヤモンド収入により一人あたりG N Pは
7000ドル台に達し、中進国の仲間入りをしています。一方でボツワナは手付かずの自然が残つ
てぃて野生動物が多数生息しているため、ヨーロッパ人旅行者の垂涎の的となっています。特に
地球上最大の内陸デルタであるオカバンゴ・デルタには、人気の高いライオン、ヒョウ、サイ、ゾウ等
を見るためにョーロツパ人が多数来訪。更にボツワナは食用牛肉の大生産地で、ヨーロッパには
高級牛肉が大量に輸出されています (但し、現在は口蹄疫のため一時中断 )。
ボツワナはアフリカでビジネスを展開する場所として好条件を備えています。各種機関によれば、
「ビジネス環境ランキング」ではアフリカ3位、「鉱業投資環境ランキング」はアフリカでトップ、「世界
競争力ランキング」ではアフリカ6位といった具合です。ビジネスを行う上では政治的安定が重要で
すが、ボツワナの政治は民主的であり大変安定しています。 1966年英保護領からの独立後多数
政党制を導入し公正な選挙を実施しています。法による統治も確立しています。またこれまで戦
争、内乱等が起きておらず、治安も大変良好です。汚職も極めて低い水準で、
「腐敗認識指数」ではサブサハラ・アフリカでは1位、「アフリカ・ガバナンス指標」では3位です。要
するにボツワナのビジネス環境は高評価を得ており、アフリカでは有数のビジネス・フレンドリーな国と
いうことができます。
この他にもボツワナにはビジネスと関連する魅力があります。南部アフリカ開発共同体 (S A D C)
事務局がハボローネにあってメンバー国やドナー国等から頻繁に出張者が来訪し、開発ニーズ等
の議論が活発に行われています。日本の独立法人石油ガス金属鉱物資源機構 ( J 0 GME C)が
ハボローネ近郊にリモートセンシング・センターを設置してアフリカにおける探査とS A D C諸国への
技術移転を行っており、アフリカでの資源賦存状態に関する膨大な情報が蓄積されています。こ
れらはビジネスを展開する上で貴重な参考となると思います。
しかし、外国企業の進出を見ると、南アフリカのみが際立ちその他の国はそれほどでもありませ
ん。日本の企業はコマツが非邦人による現地法人を構えているだけで、邦人ビジネスマンとして
は青年海外協力隊 0 Bが中古車販売や自動車修理を堅実に手がけてぃる.のみです。
何故これほどまでに日本企業の進出が少ないのでしょうか。その理由は、まず南アのョハネスブル
グから飛行機で1時間弱、車でも約 5時間の近さであるので、南アからの出張でボツワナをカバー
できてしまうことです。またボツワナの人口が20 0万人と小さく、市場規模としては物足りないことも
あるでしょう。しかしこうした経済的な要因以上に、アフリカが日本から距離的に遠く、歴史的にも
疎遠であり、かつ戦争一貧困といった昔からのアフリカのイメージがいまだに強いことから、進出に
後ろ向きになってぃることもあるのではなぃでしょうか。
ボツワナは広大な国土と、良好な気候、穏やかな国民性を備えており、ビジネスを展開する拠
点としては好条件に恵まれています。特に治安が良いので駐在員が家族と安心して生活するに
はもってこいです。ゴルフ場もあります。是非ともボツワナに着目していただき、ボツワナからビジネス
を発信していただければ大変ありがたいと思います。大使館としても最大限協力します。ご来訪を
お待ちしています。
(こばやし・ひろやす 2012年 3月 )
日本外交協会報平成２４年４月１０日号より

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