1年6組 技術・家庭科(家庭)授業案 授業者 長尾 尚子 家族とともに住まう~南部ハウジングセンターにようこそ~ 1 題 材 2 題材目標 (1)安全で快適な住まい方について関心をもち, 間取り図と結び付けて住み心地のよい家を考えようとする。 (関心・意欲・態度) (2)ライフステージに応じて求められる住まいの役割や気持のよい室内環境について考え,快適に整 えるための工夫ができる。 (工夫・創造) (3)安全で快適な住空間についての情報を収集・整理して発表することができる。 (生活の技能) (4)住空間には自然から保護するはたらき, 心身の安らぎ, 健康を維持するはたらき, 子どもが育つ 基盤としてのはたらきがあることを理解することができる。 (知識・理解) 3 指導にあたって (1)生徒観 入学して最初の家庭科の授業では, 「ミシンで何を作るの」 「いつ調理実習をやるの」といった声 が多く聞かれ,衣・食生活への関心が高いことがうかがえた。しかし, 住生活は衣・食生活とは異 なり,家族にゆだねている部分が多く,快適で安全な暮らし方を自ら実践したり工夫したりしてい る生徒は少ない。 「住まいって何だろう」という問いかけには, 「雨や風から守ってくれるところ」 「寝るところ」 「食事するところ」など,心身の安らぎを得る場として欠かせないものであることを 次々に発表することができた。どの生徒にとっても住まいは存在するのが当然であり,自分自身で 安全な場所や快適な空間に変えていくことを考えたことがないのが現状である。 理想の家づくりをしていくと, 自分自身が快適に楽しく過ごせる場を求めようという気持ちに とらわれがちであるが,家族全員のことを考えられる生徒を育てていきたい。また,理想の住まい を考えることをとおして現在の住空間を見直し,より安全で快適な生活ができるよう自分の家でも できることを実践する態度を育成したい。 (2)題材観 生徒たちの住まいは戸建て,集合住宅,段差の多い家,最近建てられたバリアフリーの家,ユニ バーサルデザインを多く取り入れた家など,個々に条件は異なる。さまざまなライフスタイルに適 しており,生徒の中には「家の中は安全」と思い込みやすい。しかし,家庭における乳幼児や高齢 者の死亡事故は,交通事故死よりも多く,社会問題化している。また,社会の少子・高齢化が進み, 生徒が将来生活していくときに,家族の住要求を考え,工夫して生活することを学ぶことは,自分 や家族の安心で快適な住空間を構築するために重要であると考える。 本題材では,友達の住空間を知り,多様な価値観にふれることによって,自分の住空間を見直す 意欲が高まるだろう。また,理想の家を考えることによって,家族が安心で快適に住むことができ ているのか,客観的に考えることができる。理想の間取りから,安心で快適な空間にするための方 法を考え,現在できる工夫を実践していく技能を高めさせたい。さらに,身につまされる場面を設 定することで,真剣に考え,話し合いをより活発にすることができる。そして,多くの情報を集め, 自分にはない価値にふれることができ,家での生活をより安全に過ごす方法を導きやすくなる資料 である。 (3)指導観 導入では,両親と子2人(中学1年男子と年長女子)の家族構成で,和室・洋室・トイレ・玄関 などを, 四方を道路に囲まれた敷地の図に各部屋のパーツを自分なりに配置させ,配置した根拠を グループで話し合い,おすすめの間取りを考えるようにする。学級おすすめの間取りができたとこ ろで,高齢者との同居が必要となったと仮定し,改善策を考えていく。そうすることで,家族の住 要求がさまざまにあること,またそれらは,ライフステージとともに変化し,その時々に応じて住 環境を工夫することができることを実感させたい。さらに各自おすすめの家を発表し合う場を設け, 安全で快適に住まうには,間取りだけでなく,換気や耐震や防犯,エネルギー効率をよくする対策 など,さまざまな視点があることに気づかせていきたい。 題材の後半では,住宅事情がさまざまな生徒たちに,家族にはそれぞれの住要求があり,考えて - 26 - 工夫すれば,今住んでいる家も快適になることに気づかせたい。また,自然災害に対する工夫につ いては,自分たちにもできることを,身近なことから実践していこうとする姿が見られることを期 待する。 4 単元構想(10/11 本時) 予想される学習活動 ※支援 家族みんなが快適に暮らせる家を建てるとしたら, どんな間取りにするとよいだろうか ①② ※1 ※1間取りを考えやすいように, LDK12 帖,洋室6帖,和室6帖, ※3 モデル家族 父・母・中学1年生(男) ・年長女子 洗面所,浴室,トイレ,玄関のパ ーツを用意する。 トイレと浴室, 和室と洋室は離れたと 道路側に浴室 ※2通気や採光についても考え 脱衣所は近い ころに設置しよう。プラ は, やめた方 ることができるように,平面記号 方が便利かな。 イバシーが守れるよ。 がいいかな。 で描き方を紹介し,窓とドアを各 自で描きこむように指示する。 ・6組おすすめの住みやすい間取りができたよ。 ※3学級でおすすめの間取りを ・間取りの見方がわかったよ。 作り上げることができるように, グループで話し合い,その後全体 家のおばあちゃんといっしょに住めるかな。 で話し合う場を設定する。 高齢のおばあさんが,同居することになりました おすすめの間取りに住めるのだろうか③④ ※4事故の未然防止対策を考え ることの重要さに気づくように, モデル家族 父・母・中学1年生(男) ・年長女子・祖母 乳幼児・高齢者の家庭内事故死 ※4 は,交通事故死よりも多いことを おすすめの間取りは安 おばあちゃんの部屋は和 グラフで示す。 全かな。 室がいいね。 ※2 ・手すりをつけるといい よ。 ・段差をなくした方が安 全だよ。 ・ドアは引き戸にする と , 車椅子も通 れる ね。 ・住要求には,家族それぞれに違うんだね。 ・家族にとって住みやすい家を工夫していきたいね。 和室をおばあちゃん の部屋にすると, 両 親の部屋がなくなっ ちゃうよ。 和室とお 風呂は, 近い方が いいね。 この間取りで快適に暮らせるかな。 安全な住まいにするためには, どんなこと に気をつけたらよいのだろうか ⑤⑥⑦ あちこちで地震があるから地震に 強い家にしたいな。 ・食器棚やたんすは,倒れて 使えなくなるよね。 ・揺れると,火事になりやす いね。 ※5※6※7 ※8※9 防犯対策もしたいな。 揺れたと き安全な ところは あるかな。 空き巣に入ら れない家にし たいな。 安全な住まいになったから,おすすめの家をもっと 気もちのよい住まいにしていきたいな。 - 27 - ※5間取り以外にもできる工夫 について考えられるように,誰が どのような住要求でどの部屋を 使うのかを考えながら検討する ように示唆する。 ※6自分の意見を表現すること の苦手な生徒も,自信をもって話 し合いに参加できるように,クラ スおすすめの間取りにできる工 夫を考える時間を確保する。 ※7住まいに災害が発生しても 適切な行動がとれるように,備蓄 しておくもの,避難場所,連絡方 法を検討しておくように示唆す る。 ※8家庭にある危険要素を減ら すことの重要性に気づくように, 大地震が発生した際のけがの原 因を表すグラフを示す。 ※9減災のための備えの必要性 に気づくよう,阪神淡路大震災に おける死因のグラフを示す。 おすすめの家をより快適にするにはどうした らよいだろうか⑧⑨⑩本時 ※10 ※11 ※12 【騒音】 静かな環境が快適だな。 ・バイクや車の走る音がうるさいよ。 ・電車の音も気になるよ。 ・近所の犬が, よく吠えるよ。 ・夜遅くなっても, 家の外をしゃべりながら通る人の声 がやかましいときがあるよ。 ※10 身の周りの騒音に気づくよう, 騒音のレベルや騒音の影響の例を 表す表を示す。 ※11 健康に配慮した住まい方を工 夫できるように, 室内の空気汚染 の原因について話し合うように促 す。 ・窓やカーテンをしめると, 少し静かになるね。 ・窓を閉め切ると, 空気が汚れてしまうよ。 【室内気候】 どんな窓がいいのかな。 ・梅雨は, じめじめして, お風呂にカビが生えたりするよ。 ・押し入れや台所にもカビがはえるね。 ・きれいだと思っていたのに, ダニがいるんだって。 ・冬には, 窓に結露がついているよ。 ・窓を閉め切っていると, 一酸化炭素中毒になることが あるってきいたよ。 るってきいたよ ・学校では, よく窓を開けていて, 風が通るね。 ・換気をすると, カビも生えにくいそうだよ。 ・自分の家もおすすめの家に近づけたいな。 ※13 自分の家をおすすめの家に近づけよう ⑪ ・家具に L 字型金具をつけよう。 ・ガラスに飛散防止フィルムを貼 ってみよう。 ※12 室内での空気の流れを理解す ることができるように, 線香を使 って演示実験を行う。 ※13 身近なところから工夫するこ とができるように, ホームセンタ ーの広告を見せ, すぐに手に入れ られる材料があることを知らせる。 ・バリアフリーに近づくように,手すりをつけた らどうかな。 ・床にじゅうたんをしいたらどうだろう。 ・住まい方には,いろいろな工夫があるんだね。 ・自分の家でもできることを考えていこう。 5 本時の授業 (1)目 標 窓の取り付け方の工夫をとおして,安全で快適な住まい方を考えることができる (工夫・創造) (2)本時の授業構想 本時では,学級おすすめの間取りをもとに,空気の流れを確保しつつ,より快適な住まいにする ためには窓をどの位置に設置したらよいかを考える授業を展開していく。これまでは,両親と妹と 祖母と自分の5人が3LDKの住まいで,気持ちよく生活できる間取りを考えてきた。そこで,よ り安全に生活していくための耐震対策や住まいの内外で発生する騒音を減らす対策,室内の空気汚 染を減らす工夫について学習してきている。 空気汚染を防ぐ方法の一つとして換気を取り入れ, 学級で考えてきたおすすめの間取りに対し, 空気の流れに留意しながら,快適な住まいにするという観点から窓を付ける位置を工夫し,よりよ い住まい方とは何かを考えさせたい。 - 28 - (3)学び合いの活用 本時では,問題意識をもって話し合いに取り組めるように,学級おすすめの間取りを, 室内気 候という視点から, 改善していく。採光,安全,防音,デザインなど,こだわりをもつ部分はグル ープによって異なるだろう。多様な考えにふれることで快適さの感じ方には個人差があることに気 づかせたい。 (4)展 開 時間 0 学習活動 ※教師の支援 主な発問 おすすめの家をより快適にするには,窓の取り付け 方にどんな工夫をしたらよいのだろうか ○おすすめの間取りのどの位置にどんな窓をつけたらよいか 発表する。 【安全型】 【採光型】 【防音型】 図1 ・窓の数を少な くして,地震に 強くしたよ。 ・防犯ガラスに して割れにく くしたよ。 15 図2 図3 ・南側に窓を つけて,日当 たりが良くな ったよ。 ・大きな窓に して,光が多 く入るように したよ。 ・道路側には 窓を少なく したよ。 ・ペアガラス を付けて,音 を伝わりに くくしたよ。 ○それぞれの家をより快適にするためのアドバイスをする。 窓が少ないと光が入りにく く湿気もたまりやすいよ。 窓が多いと家具を置く位置 が限定されてしまうよ。 窓が多すぎると,防犯 上心配だな。 窓が多すぎると,災害 のときに危険だよ。 30 ○アドバイスをふまえ,より快適な家を班で考える。 40 ○班の意見を発表する。 ○今日のふりかえりを書く。 45 50 評価 快適な住まいになるよう, 窓の役割に着目して窓の取り付け 方を考えることができたか。 (行動・ワークシート) ※快適な住まいと窓の役割を関連付けることができない生徒 には,立体模型や実際の家の写真を見せてイメージをふくら ませるように促す。 - 29 - 【デザイン型】 図4 ・ガラス張り のおしゃれな 家にしたよ。 ・丸い窓も素 敵だよ ※班の意見を図でわか りやすく伝えるために, ホワイトボードを用い て発表するよう声をか ける。 ※窓の効果を考えられ るように,ほかの班の意 見と自分の意見を比較 して聴くよう指示する。 ※話し合いを円滑に進 めるために,磁石を操作 して窓の位置を表せる ようにする。
© Copyright 2024 Paperzz