第6学年A組 社会科学習指導案 授 業 者 研究協力者 1 単元名 佐藤 井門 文知 正美,外池 智 鎌倉幕府の興隆と衰退の謎をひもとく 2 子どもと単元 (1) 子どもについて 子どもたちはこれまでに,当時の人々が米づくりの技術を獲得したことによって,くらし や社会の仕組みがどのように変わったのかを調べ,日本の歴史における稲作の重要性につい て気付くことができた。また,古墳が何を目的としてどのように作られたのかを豪族と農民 それぞれの立場で考える活動を通して,過去の事実について当時の人々がどう考え,行動し ていたのかを意欲的に追究する姿が見られた。しかし,子ども一人一人の実態を見ると,調 べ学習でとらえた内容が不十分なため,自分の考えについて根拠となる資料を示せなかった り,考えの変容を明確にすることができなかったりする様子も見られる。 (2) 単元について 本単元は,平成22年度に本校で先行実践された単元計画をもとに進めていきたいと考え ている。この単元計画のよさとして,武士の登場から鎌倉時代に絞って単元を組むことによ り,その時代に起こった一つ一つの歴史的事象を点ではなく線でとらえられるということが 挙げられる。また,その当時,新学習指導要領を先取りした実践であるとともに本校社会科 部及び研究協力者の先生方で練り上げられた単元計画であり,子どもにとって学習の流れが 意識しやすく歴史学習への意欲や関心が高められることも考えられる。優れた先行実践を踏 襲し,そのよさを生かした学習を展開したい。 本単元は,武士の登場や,源平の戦い,鎌倉幕府の成立,承久の乱,元との戦いといった 歴史的事象を取り上げ,鎌倉幕府の成立から承久の乱を契機とした幕府の興隆と,元との戦 い以後,ご恩と奉公の関係が崩れたことによる幕府の衰退について調べ,理解することをね らいとしている。現在,子どもたちが抱く武士像は,「城に住み,戦をし,贅沢なくらしを している」といったものであるが,これは戦国時代から江戸時代にかけてのイメージであり, そもそもの武士の登場には,有力農民が他の豪族や有力農民から自分の土地を守るために武 装していったという背景がある。そこで「武士=戦う侍,将軍の家来」といったとらえだけ ではなく,「農民→武装した農民→武士団→武士団の棟梁→将軍」の流れで武家社会が形成 されていったことを子どもたちにつかませたい。 また,鎌倉時代の特徴として,幕府と朝廷の対立による権力の二重構造が挙げられる。源 氏が三代で途絶えた後,北条氏が台頭してきた流れに後鳥羽上皇が不満を募らせていったこ とをおさえ,承久の乱が幕府の勢力を伸ばす一つの節目になったことをとらえていくように したい。 (3) 指導について 本単元では,資料をもとにした「自分との対話」で得た考えを「仲間との対話」によって 深める活動を通して,社会的なものの見方や考え方を培っていきたい。そのために次の手立 てを実践していく。 1つ目は,各自が調べ学習でとらえた情報の共有化である。授業時間だけでなく,興味を もったときにすぐ手に取ることができるよう教室内に資料を準備し,「調べ学習の日常化」 を図る。また,調べたことが個人の中だけに留まることがないように,情報を交換させ,一 人一人が調べた情報を友達に広げ,深めていく場を設定する。 2つ目は,考えの変容を確かめるために付箋を活用することである。付箋は,1枚に1つ の事柄を短いセンテンスで書けるため,考えが出しやすいこと,また,貼る・はがすといっ た操作が簡便なため,多くの考えを比較・検討しやすいといった利点がある。このことから 「対話」を通して意見の集約を図る際に,自分の考えの変容を,付箋の移動という目に見え る形で残すことができると考える。 3つ目は,資料の吟味と提示の工夫である。年表や写真,地図,イラストの他,デジタル 教科書などのコンテンツも取り入れ,先人の活躍の様子や業績をていねいにつかませたい。 また,つかんだことをもとに,その後の歴史に与えた影響を考える活動を通して,歴史的事 象を点ではなく線でとらえ,通史としての認識を深めるように学習を展開したい。 3 単元の目標〈記号は本校の資質・能力表による〉 (1) 武士が力をもった経過や武士による政治やくらしの様子に関心をもち,進んで調べようと する。 〈アー 4・8・11〉 (2) 武士による政治が始まったことについて,源平の戦い,承久の乱,元との戦いなどの出来 事や当時の武士の考え方や社会の仕組みと関係付けて考え,付箋やシートなどを用いて適切 に表現することができる。 〈イー 3・5・7〉 (3) 年表や写真,地図,イラストなどの資料を手がかりに,武士の政治やくらしについて調べ, 適切な方法でまとめることができる。 〈ウー 6・7・10・11〉 (4) 武士の政治やくらしについて,その仕組みや特色が分かる。 〈エー 11・17〉 4 単元の構想(総時数8時間) 時間 学習活動 1 (1) 武士の登場や武士のく らしの様子を調べる。 2 3 4 5 本時 6 7 8 教師の主な支援 ・ 武士の登場やくらしについて 考えることができるように, 「貴 族を守る武士」の絵図,貴族の 屋敷と武士の館の様子の相違点 に着目し,気付いたことを紹介 し合う場を設ける。 (2) 平清盛の政治に武士た ・ 初めての武士政権がなぜ武士 ちが不満をもったわけを から受け入れられなかったのか 考える。 を考えることができるように, 道長と同じような方法で権力を 手に入れたことを武士たちはど う考えたのかという問いを投げ かける。 源頼朝は,どのようにして平氏をたおしたのだろう。 (3) 源頼朝の活躍を中心 ・ 源平の戦いがどのような経過 に,鎌倉に幕府が開かれ をたどったのかについて調べ, るまでの経緯を調べる。 頼朝や義経の活躍やエピソード などにもふれながら自作年表に まとめるよう助言する。 武士たちはなぜ頼朝に従って,命がけで戦ったのだろう。 (4) 源頼朝が幕府を開いた ・ 地形,地理的要因,源氏の勢 理由を調べ,幕府と御家 力分布など多面的な視点で考え 人の関係について考え ることができるように,資料を る。 活用しながら付箋を用いて小グ ループで話し合い,互いに深め 合う場を設ける。 ・ 頼朝が東国の武士たちを支配 する仕組みをどのように確立し ていったかをとらえることがで きるように,鎌倉街道図や御恩 と奉公の関係図をもとに考える よう助言する。 (5) 承久の乱の原因と結果 ・ 御家人たちがどのように考え について調べたり考えた 行動したかを表現し合えるよう りする。 に,グループに大判のシートを 配付し,幕府方,朝廷方それぞ れに味方しようとした御家人の 思いを付箋に書き,吹き出しに 貼る場を設ける。 なぜ,承久の乱は幕府方の圧勝で終わったのだろうか。 (6) 承久の乱が,その後の ・ 鎌倉幕府の支配権が西国まで 武士の世の中に与えた影 及んだことが分かるように,後 響について考える。 鳥羽上皇らの流罪や,朝廷に味 方した武士の所領が取り上げら れたことがつかめる資料を提示 し,鎌倉幕府の興隆の様子がつ かめるようにする。 (7) 元との戦いの様子を調 ・ 武器や戦術など,幕府との違 べ,元の襲来以降,鎌倉 いをとらえるために「蒙古襲来 幕府が衰退していった理 絵詞」の資料を提示する。 由を考え,話し合う。 ・ 「防塁」の資料を提示し,2 度目の元の襲来に備えたことが 武士にとって大きな負担になっ たことをつかめるようにする。 ・ 元との戦いを境にして,ご恩 と奉公の関係が崩れ始めたこと に気付くために,幕府側と武士 側双方の考えを付箋に書き,交 流する場を設ける。 (8) 武士の登場から鎌倉時 ・ 自分なりのテーマを決めるこ 代までの学習を生かし, とができるように,学習した人 まとめをする。 物や事柄を表した図やイラス ト,漫画資料などをプリント教 材として準備する。 評価〈本校の資質・能力との関連〉 ・ 武士の世の中に関心 をもち,その登場やく らしの様子を進んで調 べている。 〈ア-4,8,11〉 ・ 初めての武士政権が なぜ武士から受け入れ られなかったのかを資 料をもとに多面的に考 えている。 〈イ-3,5〉 ・ 資料をもとに,源平 の戦いについて調べ, その流れを自作年表に まとめている。 〈ウ-6,7,10,11〉 ・ 鎌倉幕府の支配体制 の確立の様子や幕府と 御家人はご恩と奉公の 関係で結ばれていたこ とが分かる。 〈エ-11,17〉 ・ 承久の乱をきっかけ にして幕府と朝廷との 力関係が逆転したこと をつかみ,表現してい る。 〈イ-3,5〉 ・ 承久の乱後に鎌倉幕 府が行ったことを調 べ,幕府の支配権が西 国まで及んだことをつ かんでいる。 〈エ-11,17〉 ・ 幕府と武士双方の考 えを表現し合い,元と の戦い以後の幕府の衰 退について,ご恩と奉 公に関連付けて考えて いる。 〈イ-3,5・エ-11,17〉 ・ 武士の登場から鎌倉 時代までの人物や事柄 を関連付けながら,新 聞にまとめている。 〈イ-7・エ-11,17〉
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