所属: 豊田工業高等専門学校 一般学科 研究タイトル: 代数多様体の Brauer 群とその数論的応用 氏名: 植松 哲也/UEMATSU 職名: 助教 Tetsuya E-mail: uematsu @toyota-ct.ac.jp 学位: 博士(数理科学) 所属学会・協会: 日本数学会 キーワード: 代数多様体,Brauer 群,有理点,代数的サイクル 技術相談 提供可能技術: ・数学一般,とくに代数学に関すること ・工学系数学(線形代数,微積分,微分方程式,複素関数論,ベクトル解析など) に関する質問・相談 代数多様体の Brauer 群とその数論的応用 1. 研究領域の概要 研究内容: 整数論における古典的な分野の一つとして、 Diophantos 問題、 すなわち、 与えられた不定方程式に整数解や有 理数解が存在するかどうかを研究する問題がある。例えば、 3 変数方程式 $x^2+y^2=z^2$ の解は、 「ピタゴラス 数」としてよく知られているものである。 他方、 こうした方程式は、 例えば、 「直線」ax+by=c や「円」x^2+y^2=1 のように、図形としてとらえることができる。 このように、 代数的な多項式からなる(連立)方程式の解集合(=グラフ)として表わされる図形は「代数多様体」と呼 ばれ、 その性質を調べる分野を代数幾何学とよぶ。この見方に立てば、元の方程式の「解」は、対応する代数多 様体の「点」に対応するものとなり、 方程式を幾何的な視点から捉えることができる。こういった視点で整数論的な 諸問題に取り組む「数論幾何学」と呼ばれる分野が私の専門領域である。 2. 研究内容 その中でも、私は、 代数多様体の「Brauer 群」と呼ばれる不変量に興味を持って研究を進めてきた。これは古く は、 体と呼ばれる代数的対象に対して定義され、 さまざまな応用を持つことが知られていたものであるが、 1960 年代に、 A. Grothendieck によって、 代数多様体に対しても、 Brauer 群というものが導入され、 これもまた、 代 数多様体の研究において、 さまざまな応用を持つことが、 その後の研究で明らかになってきている不変量であ る。Brauer 群の研究において、 基本的な問題意識となるのは、 「代数多様体の Brauer 群はどのような群であるのか」 ということであるが、 そのほかに、 「Brauer 群を通して、元の方程式に対してどのような整数論的知見が得られるのか」 といった応用にも関心を持っている。ここ数年は$ax^3+by^3+cz^3+dt^3=0$ という方程式で定まる「対角的 3 次曲 面」の Brauer 群の群構造の決定および具体的な生成元の構成・非存在の証明[1]を行い、その結果などを用い て、重要な不変量である p 進体上の対角的 3 次曲面のゼロサイクルに関する知見を得ることにも成功した[2]。 3. 今後の展望 今後は、有理性問題とよばれる領域への Brauer 群の応用や、関連する不変量である不分岐コホモロジーにも研 究を広げていきたいと考えている。 [1] T. Uematsu, On the Brauer group of diagonal cubic surfaces, Quart. J. of Math., first published online Apr 28, 2013 doi:10.1093/qmath/hat013 [2] T. Uematsu, Zero-cycles on diagonal cubic surfaces, submitted 提供可能な設備・機器: 名称・型番(メーカー) 特になし
© Copyright 2024 Paperzz