ユーザー事例紹介 C A S E S T U D Y ICタグによる医療廃棄物の個別追跡と 電子マニフェスト自動接続 財団法人 東京都環境整備公社 はじめに 産業廃棄物の適正処理を担保する為、法は産業廃棄物管理 票(マニフェスト)の交付と管理を義務づけています。紙マニ フェストは良く出来た制度ですが、然し、その運用に関して 幾つかの問題と限界があります。 ❶B票、D票、E票には一定の返却猶予期間がある為、排出者はマ ニフェストのリアルタイムでの管理ができません。 ❷マニフェストは排出者、収集運搬業者、中間処理業者などの当 事者間でのみ運用されており、運用の是非を監視するものがい ません。 それ故、当事者の一部に悪意があれば、内容の改ざんな どの不正が可能であり、 その結果が廃棄物の不適正処理に繋 がる懸念があります。 ❸マニフェストは記載された廃棄物数量の全体の流れを追跡して おり、個々の廃棄物を管理している訳ではありません。廃棄物の 一部が不注意や故意により紛失しても、マニフェストでは検証す る事ができません。 廃棄物の中でもとりわけ医療廃棄物は、その性質上、たと え一個でも不適正に処理されると社会や環境に与える影響は 非常に重大です。全ての医療廃棄物を安全に管理する為には、 これらマニフェスト制度の問題・限界を克服したより厳正な 個別追跡システムを構築する必要があります。 FDMメディカルicシステムの開発 24 参事 上田忠彦 個別追跡及び電子マニフェスト連動システム」として、平成 19年4月より運用を開始しました。新システムは、平成20年 4月より東京都医師会事業にも適用され、システム名もFDM メディカルicに改め現在に至っています。 個別追跡の基本的機能は以下の通りです。 ❶個々の廃棄物容器にICタグを貼付、収集・搬入・処分の各段階 で携帯端末又は固定端末で読取り、公社情報センターに送信 し、公正な第三者である公社がコンピュータ上で逐一照合する 事で個別追跡を行います。 ❷携帯端末に入力された情報は、ICタグ (パスワード) カードによっ て、排出者・処分業者の各々が承認しないと送信出来ないの で、データ改ざんなどの不正行為を完全に排除できます。 ❸個別追跡状況はリアルタイムで公社WEBサイト上で更新され、 希望者 (パソコンを利用しない排出者) にはFax自動送信により 通知されます。 JWNETへの自動接続 個別追跡機能と共に、FDMメディカルICが提供するもう一 つの重要な機能はJWNETへの自動接続です。 多忙な医療機関にとっては、紙マニフェスト管理業務は煩 雑な事務作業であり、平成20年より開始される産業廃棄物管 理票交付等状況報告書の報告義務への対策も含めて事態の改 善を希望される方々が多数おられました。これに応える為に ㈶東京都環境整備公社は、この様な紙マニフェストの問題・ 公社は、 「東京都重点事業」の課題として「FDMメディカルIC 限界に対する回答として、独自の個別追跡システムである のJWNETへの自動接続機能」を平成17年度のバージョンアッ FDMメディカルを開発しました。 プで実現し、平成18年4月より運用しています。 当初のシステムは、個人開業医を対象に平成15年から開始 JWNETではJWNET加入者が登録したマニフェスト情報を した㈳東京都医師会との共同事業の為に、バーコードを使用 保管・管理をしています。よって、今まで行っていた、紙マ して紙マニフェストに個別追跡機能を補完するものでした。 ニフェストの保存・管理の事務作業が不要になります。また、 平成17年度東京都重点事業の一貫として、システムの全面 JWNETは廃棄物の処理及び清掃に関する法律第12条の5第 的バージョンアップを行い、大病院を対象に「ICタグによる 8項の規定に基づき、JWNETに登録したマニフェスト情報を JW INFORMATION 2008.7 電子マニフェスト情報 J W N E T i n f o r m a t i o n FDMメディカルicシステム 概要 東京都環境整備公社 神田情報センター 電子マニフェスト・センター データ交信 JWNET 電子マニフェスト ASP データの流れ 廃棄物の流れ ICカードで中間処 理 施 設の承 認を 得て、PHSで着荷 データを送信 ICカードで病院の承 認を得て、PHSで集 荷データを送信 中間処理データ & 最終処理データ 〔焼却前読取り〕 〔搬入時読取り〕 V字アンテナ上を通 過させ、ICタグを読 取り工場PCに入力 平型スキャナアンテナ上 を通過させICタグを読取 り、携帯端末に入力 認証用ICタグカード 収集時 ICタグ 携帯端末 電子ハカリ 最終処分データ 中間処理施設 300ミリワット 平型スキャナ 焼却炉前読取 V字型スキャナ JWNETとの接続により、医療機関での事務作業の負担が 電子マニフェスト番号予約制度を利用して、公社サーバは、収集 現場からの排出データ送信に応じて、マニフェスト番号を受信確認 として携帯端末に送信しますので、排出者はマニフェスト番号を記 載した受領証を受取り、社内事務処理の帳票として活用すること が出来ます。 より一層軽減できます。 この様に、FDMメディカルICはユーザ・フレンドリーな電 1)簡便な接続 子マニフェスト接続ツールであり、医療機関に高く評価され FDMメディカルICは携帯端末を利用したモバイル・ソリューション であり、排出者はICタグ・カードで排出データを承認するだけで (運 搬会社の場合は、処分業者による搬入データ承認で) 、パソコンを 全く使用しないで電子マニフェスト登録を行えます。 ています。JWNET自動接続機能を稼動させて以来、FDMメ 集計し、その結果を毎年6月末日までに都道府県・政令市に 報告することが義務付けられていますので、JWNET加入者 は報告する必要がなくなります。 2)安全な接続 データ承認は 「偽造不可能」 なICタグ・カードで行われますので、代 理入力などの不正行為を防止できます。又、個別追跡システムに より自動照合されたデータのみが接続されるので、員数の過不足な どの事態は排除されます。 3)便利な接続 電子マニフェスト情報 事前配布 ︹焼却処分︺ ■使用する機材 到着確認 電子秤に平型スキャナを乗 せ携帯端末と接続する。廃 棄物容器の重量とICタグを 読取り、携帯端末に入力 廃棄物輸送 到着確認 〔搬出時計量・読取り〕 焼却残渣 管理型最終処分場 中間処理施設 病院 ディカルIC利用者数は急増しており、現在では1000を超える 個人開業医、22の病院の皆様に愛用されています。 何時でも、何処でも、誰でも FDMメディカルICは特定の排出者・処分業者・運搬業者だ けが利用できるシステムではありません。器材の貸与を受け て、公社が定める運用規則に従っていただければ何時でも、 何処でも、誰でも利用できるPublic Toolです。 2008.7 JW INFORMATION 25
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