「子どもまみれ」になる教師の育成

「子どもまみれ」になる教師の育成
教育実習主任
「子どものた めに全力を尽くそう とする。
青木
大祐
教 師 が全 力で 遊 ぶと 子ど もも全 力に なり
教師 とし ての そ んな 基本 的な 資質を どう か
ます 。 遊び を通 し て距 離を 縮める こと は,
育成してやってくださ い。」
子ど も との 信頼 関 係を 築い ていく ため の大
数 年前 ,あ る 小学 校で 授業 を行っ た際 ,
切な第一歩 です 。
教職 歴の 長い 先 生が 私に おっ しゃら れた 一
言で す。 強い 意 志が 感じ られ たこの 一言 を
2
今でも鮮明に覚えてい ます。
子どもの姿を想像して授業をつく る
教育実習中,実 習生はそれぞれ3本の授
業を 行 いま す。 最初 の 1本 は, 大学 で学ん
教師の仕事は,すべて子どものために行わ
だことを生かして授業を行います。しかし,
れるべきです。したがって,実習生には常に
大半 は 子ど もの 発言 や 反応 をう まく 取り上
子どものことを考え,子どもと一緒に成長す
げる こ とが でき ず, 教 師主 体の 授業 となっ
る,「子どもまみれ」の4週間を過ごすように
てしまいます。
と伝えています。具体的には,次の2点です。
そこで,2本目の授業づくりに向かう際,
私は 「 模擬 授業 を行 う とき ,発 言者 は子ど
1
本気になって遊 ぶ
もになりきって発言してください。」と話し
2
子どもの姿を想像して授業をつく る
ます 。 この よう な模 擬 授業 を行 うと ,子ど
もが ど こで 引っ かか る のか ,悩 みこ むのか
を予 測 でき るよ うに な りま す。 また ,子ど
1
本気になって遊ぶ
もの 反 応を 思い 浮か べ なが ら, 子ど もが興
子 ども たち は 遊び が大 好き です。 ドッ ジ
味を 示 す教 材を 作ろ う と考 える よう にもな
ボー ルや 鬼遊 び など ,汗 をい っぱい かき な
りま す 。こ のよ うに し て, 授業 の検 討を何
がら ,息 を切 ら せて 体を 動か します 。教 師
度も 行 いま す。 実習 生 は大 変苦 しい 思いを
にな った 当初 , 私は 子ど もと 遊ぶと き遠 慮
しま す 。し かし ,全 力 を尽 くし てそ の苦し
がち に遊 んで い まし た。 それ が子ど もへ の
みを 乗 り越 える から こ そ, 子ど もの 発言を
優し さだ と考 え てい たか らで す。ボ ール は
生かした授業を行おうとします。その結果,
弱く 投げ ,ス ピ ード を遅 くし て走っ てい ま
2,3本目の授業は,子どもが主体的に活動
した 。す ると 子 ども も遠 慮が ちにな り, 次
する授業に近付いていくのです。
第に 子ど もと の 距離 を感 じる ように なっ て
しまいました。
子どものために全力を尽くすと,子どもは
こ の経 験か ら ,私 は「 本気 で遊ぶ 」こ と
全力で返してくれます。その全力が,信頼関
の大 切さ を実 習 生に 伝え るよ うにし てい ま
係の構築や子ども主体の授業展開につながり
す。休み 時間,実習生がいざ本気 を出すと,
ます。そして,その全力を尽くすことこそが
子ど もは 様々 な 反応 を見 せま す。実 習生 が
教師 と して の必 要な 資 質で ある と思 ってい
投げ るボ ール の 速さ に驚 いた り,追 いか け
ます 。 した がっ て, 実 習生 が「 子ど もまみ
ても 足が 速く て 捕ま えら れず ,悔し がっ た
れ」 に なる こと のよ さ を実 感す れば ,教師
りし ます 。そ の 結果 ,子 ども は教室 では 見
にな っ ても 子ど もの た めに 全力 を尽 くすに
せな いよ うな 様 々な 表情 を, 表に出 すよ う
違いありません。そう信じて,これからも実
になります。
習生を指導していきます。
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