25 新しいパートナーシップを確立するために 様々な社会実験に取り組む

「アドプト・ア・ロード」をやりたいと申し出た。県では、清掃をしてもらう
のはかまわないし、民有地に「アドプト・ア・ロード」の標識を立てるのは問
題ないが、公有地である道路ぎわに標識を立てるのは困るという回答だった。
町民の自主的な活動としてスタートしたこの制度は、大きな成果を挙げ、今で
は県の土木部が「アドプト・ア・ロード制度」の普及に努めている。さらに、
国土交通省の土木事務所も積極的に関わりを持つようになった。数年前に神山
町で始まった「アドプト・ア・ロード制度」は、徳島県全域から全国に広がり
を見せつつある。
新しいパートナーシップを確立するために
様々な社会実験に取り組むべき
歩行者天国は、いまとなっては少しも珍しいものではないが、日本で最初に
歩行者天国を行ったのは、北海道の旭川市である。「日曜日に車を止めて、歩
行者だけが通行できるようにしたい」と警察に話したら、「とんでもない!」
と一蹴されたそうである。「アドプト・ア・ロード制度」でも「歩行者天国」
のケースでもそうだが、行政はなかなか許可を出さない。前例にしたがってい
さえすれば、誰にも文句は言われない。それが一番無難であるということなの
だろうが、これからはそうはいかない。これからの地域づくりに必要なのは
「社会実験」という考え方である。実験というぐらいだから、成功することも
あれば失敗することもある。工夫をしたり、変更しなければならないことも当
然ある。実験段階はそれでいい。最初から完璧を目指そうとすると無理がある。
特に、これから住民と一緒にものごとを進めていく場合、最初から完璧を求め
過ぎると、参加する側も嫌になってしまうに違いない。むしろ曖昧なほうがや
りやすい。
「アドプト制度」に関して言えば、徳島市や高知市でも国道にそういう標識
が立っている。国土交通省の出先機関である国道工事事務所が立てているのだ。
徳島県では、住民で組織した団体が契約をするというかたちをとっている。し
たがって、県は自治体、住民はNPOということになり、NPOと自治体との
パートナーシップという位置づけである。徳島県と言えば、吉野川の可動堰で
話題になったが、その吉野川についても「アドプト・ア・リバー」という制度
を導入している。堤防や河川敷の清掃などについて、道路と同じことを考えて
いるのだ。
その他にも、都市公団や地域公団は、まちづくりに関するかなりのノウハウ
を持っている。そうしたノウハウをまちづくりに活かしていこうと、公社や公
団が自治体と協力して再開発を行うケースも多々見られる。自治体と公社、公
団とのパートナーシップである。地域公団や都市公団、県の住宅供給公社が設
けた住宅団地などでは高齢者が増えてきており、福祉が必要になってくる。ケ
ア住宅などをつくる場合、建物は公団や公社、その他の公的な団体がつくると
しても、そのなかでの介護などはNPOにやってもらうというかたちが増えて
いるのだ。自治体とNPOの関係以外にも、NPOと公団・公社とのパートナ
ーシップである。
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