院外茶話 vol.44 平成 21 年 1 月 1 日 ドンドン、ヒャララ 朝から聞こえる笛太鼓は スピーカーだけど ともあれ楽しい祭りです いる。 聞けばへび女は親鸞上人が、丹波の山で拾っ て育てた野生の女で、全身が青く、背中には鱗 があった。本当だとすれば、へび女は多分 700 歳を超えた老婆である。 毎回見たいと思ったけれど、木戸銭が 30 円も したので、とうとう中には入らずじまいだった。 小さい方の見世物小屋は木戸銭が 10 円で、かわ 子供時代は広尾で過ごして、お祭りは一番の いい、かわいい大ザルと子ザルがいると言って 楽しみだった。 いたけれど、中に入れば竹で編んだ大きなザル 9 月の 14、15 日が氷川様の祭り。 と小さなザルが伏せてあるだけと聞いたので、 9 月の 15、16 日が八幡様の祭り。 こちらの方も入らなかった。 歩いても数分の距離にある神社なので、15 日 唯一、ただで見ることができたのはガマの油 には二つのお祭りを、掛け持ちで遊ぶのが大変 売りで、口上を言いながら、実際日本刀を抜い だった。 て腕のなかほどを切って見せる。皮一枚の傷と 綿あめ、金魚すくい、ヨーヨーすくいは定番 わかっていても、本当に血が流れてくるので、 だけど、ソースセンベイや飴細工は今でもある 迫力があった。 のかな。ハッカパイプは安くて甘くて、すっき 「兄さん、買うからもうやめとくれよ」 りしていたけれど、ものの 1 分でスカスカにな 横で年寄りが声を張り上げていた。 ってしまった。 昼からは山車を引いて、神酒所までたどりつ 毎回とってきた金魚は死んでしまったけれど、 くと真赤なジュースがもらえたが、いったい何 従兄が買ってきた 2 羽のひよこは、驚くべきこ のジュースだったのだろう。今だったらアセロ とに鶏に成長した。庭中を好き勝手に歩くよう ラと思うだろう。 になったので、従兄たちが総出で鳥小屋を作り、 「渡辺の、ジュースの素です、もう一杯」 この中で時々卵も取れた。 エノケンがコマーシャルでこう言い始めたの は、数年後のことだった。 氷川様の参道。両脇には出店がならぶ 氷川様の参道。両脇には出店がならぶ 氷川様には毎年見世物小屋が出て、神社で一 番いい場所に小屋をはるのがへび女だった。客 寄せのだみ声が名調子で、今でも記憶に残って 半世紀がたって、ちんどん屋も紙芝居もいな くなって、氷川様のお祭りがどうなったかわか らない。 自由が丘の祭りは毎年 9 月、熊野神社の例大 祭。相変わらず境内は人でいっぱいだけれど、 祭りの賑わいは街じゅうに広がって、ここでは 出店のことをワゴンセールと言う。 祭りでワゴンセールだと! それはどうでもいいけれど、広小路商店街で は、銀行の駐車場に神酒所を作って、ここで披 露されるのが、和太鼓の演奏です。 主力とするので、ちょっと見栄えが悪い。そこ で、例大祭では和華と大元組の抱き合わせ共演。 演奏の順は和華、大元組、和華・・・。それ はまさに高校野球、プロ野球、高校野球・・・ の順で、自虐的な気もするけれど、この二つを 比べると和華はもういいかな。 駅前広場の和華 アメリカハゲのマイクと日本ハゲの私です 今、演じるのは自由が丘で結成された、和太 鼓のグループ、我が和華(なぎはな)。今年か ら、私も中途半端に参加をするようになって、 総勢 10 名あまり。昨年まではドイツ人が 3 人、 アメリカ人にイギリス人もいて国際色が豊か なグループでした。 今ドイツの人は帰国をして、和太鼓の教室を 始めたというから、太鼓も世界に羽ばたいて、 嬉しい限りです。 和華の指導者は湯澤先生。日本に太鼓のグル ープは 2 万もあるけれど、湯澤先生が率いる大 元組は全国大会でも 3 位に入賞した実力派な のです。 そうは聞いていたけれど、初めて大元組を見 た時には、衝撃的だった。女の子は茶髪でピア ス。眉を剃ってどうなることかと思ったけれど、 これが衣装を変えて大変身。 どんぶりを着て、鉢巻を小さくしめて、バチ を天に突き上げた姿は実に「キャッホー」なの です。いなせとはこういうことか。私は一目で ファンになりました。 それは見ごたえ、聴きごたえのあるもので、 腹にはズンズン、心はうきうきなのです。 演奏をしながら太鼓をもって歩き始めると、 思わず後をついていく。まるで、ハーメルンの 笛吹きに操られるネズミのよう。 湯澤先生のご指導よろしく、素人集団の和華 も着々と腕をあげてきましたが、何せ 40 代を 自由が丘の秋は例大祭に終わりません。10 月になれば女神祭り。熊野神社が神様ならば、 今度は女神様に変わって、こちらの方は本当の 神様ではないけれど、自由が丘最大のイベント でお客様がいっぱいです。 駅前広場ではコンサート、各商店街では楽隊 やバトンガールのパレード、それに例によって ワゴンセール。毎年 10 月、自由が丘の連休は、 大晦日のアメ屋横丁のような賑わいになるの です。 我が和華が女神祭りで太鼓を披露するとこ ろは、南口にある遊歩道の広場で、毎年祭りの 前夜祭、土曜日です。 「ドンドン・カッカッカ」 私は鐘つき 「カンカン・カカン」 てな具合です。 でも、普段暗室で仕事をする私にとって、お 天道様に見られながら、華やかな舞台はやはり 恥ずかしかった。まあ、下手を覚悟で礼大祭と 女神祭り、来年はどうぞ太鼓を聞きにお越し下 さい。 追伸:2009 年の女神祭りから、我が和華は お暇を頂いてしまいました。やはり、お洒落な ワゴンセールに、和太鼓は合わなかったのかも 知れません。
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