被害をもたらす鳥獣を地域資源に(和歌山県日高川町)(PDF形式:522KB)

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和歌山県
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被害をもたらす鳥獣を地域資源に
~ジビエへの取組み(和歌山県日高川町)~
【和歌山財務事務所】
1.地域の概要
日高川町は和歌山県の中部に位置し、平成 17 年 5
月 1 日に旧川辺町、中津村、美山村が合併し誕生し
た人口約 1 万人(22 年国勢調査人口)の町です。
主要産業は農業・林業であり、備長炭の生産量は
日本一を誇ります。観光においては、安珍清姫伝説
の舞台となった「道成寺」があることでも知られて
います。
農業が盛んな日高川町は、山間部にイノシシ等の
野生動物が多数生息する地域であることから、これ
らによる農作物への被害に悩まされてきました。近
年、耕作放棄地の増加等とも相まって被害は増え、
21 年度には被害の総額が 2,900 万円を超える状況で、
深刻な問題となっています。
2.取組みの経緯
鳥獣被害は、金銭面に留まらず、農業従事者の生
産意欲を減退させ、農業の衰退の原因にもなります。
日高川町は、被害に対して農家への電気柵や捕獲
檻の設置支援を始め、多くの対策を講じてきました。
日高川町の鳥獣被害額
(万円)
3,500
3,000
2,500
その他
サル
シカ
イノシシ
2,000
21 年には、猟友会のメンバーで組織した「環境警備
1,500
隊」が、田畑を巡回し鳥獣の追払いや捕獲を行って
1,000
おり、これらの活動に対し町は報奨金を支払うなど
500
積極的に奨励してきました。これらの取組みは功を
0
H19
H20
H21
〔資料:日高川町〕
奏し、捕獲数が増加、町内からは「野生動物による
被害が減少した。」「野生動物が警戒して畑に来なくなった。」などの声が聞かれました。
しかし、一方で捕獲数の増加に伴い、報奨金予算のオーバーや、農作物に害を与える鳥獣と
はいえ無益な殺生に対する抵抗感による狩猟者のモチベーションの低下などの問題を抱え、対
策の行き詰まりが見られていました。
近 畿 財 務 局
3.取組みの内容
日高川町はこうした状況の打開策として着目したのが、捕獲した鳥獣を資源にすることでした。鳥獣を
食材として加工し、特産品として流通させる取組みに着手したのです。
これらの食材は、フランス料理の用語でジビエ(狩猟により食材として捕獲された野生の鳥獣)と呼ば
れています。近年、日本でもジビエを扱うレストランが増えつつあることから、今後、需要の増加が見込
まれています。
しかし、イノシシやシカなどの野生の鳥獣は牛や豚といった家畜とは違い、一般の食肉解体場に持ち
込んで解体することはできず、食品衛生法に基づき都道府県知事から許可を受けた有害鳥獣食肉処
理加工施設に持ち込まなければなりません。これまで、日高川町には有害鳥獣食肉処理加工施設が
無く、狩猟した鳥獣は、狩猟者で消費もしくは処分するほかありませんでした。
そこで、日高川町は和歌山県と連携し、22 年 5 月 29 日に県内初の公設有害鳥獣食肉処理加工施
設「ジビエ工房 紀州」を中津地区に開所、同年 10 月には美山地区にも同施設を開所し、解体経験の
ある技術者の指導を受けた狩猟者によるジビエ加工の場を提供することにしました。行政が主導し有害
鳥獣食肉処理加工施設を建設するケースは全国的に
珍しく、鳥獣被害に悩む地方公共団体等が県内外から
数多く視察に訪れる等、注目を浴びています。
「ジビエ工房 紀州」は、狩猟者が施設利用料を支払
い、鳥獣の解体・加工を行い、自らが販売し収入を得る
ものです。これは、狩猟者の収入を確保し、狩猟意欲の
向上を図ることで鳥獣被害対策を強化するとともに、ジ
ビエを町の特産品として県内外に流通させ、地域の活
「ジビエ工房 紀州」
性化に繋げる取組みでもあります。
4.今後の展望
「ジビエ工房 紀州」の取組みはまだ始まったばかりです。現在、当施設で処理されたジビエは、近隣
の「道の駅 SanPin中津」で精肉としての委託販売や近隣宿泊施設で提供されています。日高川町
は更なる販路拡大に向け、地元の保育所や学校の給食、県内ホテルやレストランへの出荷などを視野
に入れ、取組みを行っています。また、旅行会社と連携し
たジビエ料理ツアー等を企画しPR活動にも力を入れてい
ます。
しかし、一方で販売価格の設定や需要増加に伴う供給
量の確保等が課題であり、今後、更なる取組みが期待され
るところです。
日高川町HP
http://www.town.hidakagawa.lg.jp/
イノシシ肉のチャーシュー
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