那珂川町議会議員政治倫理条例(案) (目的) 第1条 この条例は、地方自治法(昭和22年法律第67号)に定めるもののほか、 那珂川町議会議員(以下「議員」という。)の政治倫理の基本となる事項を定める ことにより、議員の政治倫理の確立を図り、もって公正で町民に信頼される民主的 な町政の発展に寄与することを目的とする。 那珂川町議会議員政治倫理条例は、議員の政治倫理の規範について那珂川町議 会基本条例第12条第 2 項の規定に基づき別に制定するものである。 第 1 条は、条例の目的を規定したもので、 「政治倫理の基本となる事項を定め」 、 「公正で町民に信頼される民主的な町政の発展に寄与することを」目的としてい る。 (議員の責務) 第2条 議員は、町民全体の代表者としての権限と責任を深く自覚し、法令及び条例 を遵守するとともに、町民の信頼に値する倫理性を自覚し、自ら進んでその高潔性 の保持に努めなければならない。 2 議員は、政治倫理に反する事実があるとの疑惑を持たれたときは、疑惑の解明に 努めるとともに、その責任を明らかにしなければならない。 議員としての責務を規定したものである。 町政に対する監督機構である議会の構成員として、また公選職として、倫理性 と高潔性をもって職務に当たることを規定している。 (町民の責務) 第3条 町民は、自らが町政の主権者として公共の利益を実現する自覚を持ち、議員 に対し、その権限又は地位による影響力を不正に行使させるような働きかけを行っ てはならない。 町民においてもその責務を規定したものである。 第 2 条において町民の代表である議員についてその責務を規定した一方で、町 政の主権者である町民に対して、地位の不正行使の働きかけをしないよう注意喚 1 起するものである。 (政治倫理基準) 第4条 議員は、次の各号に掲げる政治倫理基準を遵守しなければならない。 ・⑴ 町民全体の代表者として、品位と名誉を損なうような一切の行為を慎み、その 職務に関し不正の疑惑を持たれるおそれのある行為をしないこと。 ・⑵ 地位を利用していかなる金品も授受しないこと。 ・⑶ 町及び町が関係する団体が行う工事の請負契約、下請工事、業務委託契約及び 物品納入契約に関して特定業者を推薦、紹介するなど有利な取り計らい、若しく は町が行う許認可に関して不当な関与をしないこと。 ・⑷ 町税等の納付を誠実に行うこと。 ・⑸ 町職員の公正な職務の執行を妨げ、又はその権限を不正行使するような嫌がら せ、恫喝、強要その他の働きかけをしないこと。 ・⑹ 町職員(臨時職員を含む。 )の採用、人事異動及び昇任昇格等人事に関して、推 薦又は紹介等その地位を利用した不当な影響力を行使しないこと。 ・⑺ 政治活動に関し、公職選挙法(昭和25年法律第100号)その他選挙につい て関する法令を遵守し、道義的批判を受けるおそれのある寄附を受けないこと。 その後援団体も同様とする。 ・⑻ 公人としての発言又は情報発信は、確たる事実に基づいて行うこととし、虚偽 の事実を摘示することによって他人の名誉を毀損する行為をしないこと。 ・⑼ その地位を利用して、嫌がらせをし、強制し、又は圧力をかける行為をしない こと。また、いかなる場合であってもセクシュアル・ハラスメント、パワーハラ スメント及びその他のハラスメント並びにその他人権侵害のおそれのある行為 をしないこと。 2 議員は、町から補助金等の交付を受ける法人その他の団体の代表になっている場 合、その代表を辞退するよう努めなければならない。 3 議員及びその配偶者、1親等の親族(以下「議員関係者」という。 )又は、議員が 実質的に経営に携わる企業(以下「議員関係企業」という。)は、地方自治法(昭 和22年法律第67号)第92条の2の規定の趣旨を尊重し、町及び町が関係する 団体が行う請負契約等に関し、町民に疑惑の念を生じさせないよう努めなければな 2 らない。 本条は、本条例の最も根幹を成すもので、議員の政治倫理を規定したものであ る。 第 1 項は、禁止行為を規定しており、 ⑴ 誤解を招く行為の禁止、 ⑵ 地位利用による金品授受の禁止、 ⑶ 行政執行等における特定業者の有利な取り計らいや不当な関与の禁止、 ⑷ 町税等の納付厳守、 ⑸ 町職員に対する職務執行の妨害や不当な働きかけの禁止、 ⑹ 職員人事権は任命権者である首長の職務権限であることから、職員人事に 対する不当関与の禁止、 ⑺ 政治活動に関して公職選挙法等の法令遵守、 ⑻ 公人としての事実に基づいた責任ある発言・情報発信、 ⑼ 地位利用による人権侵害の禁止、 を盛り込んでいる。 第 2 項は、議員が、町補助金等の交付団体等の代表になっている場合、議員の 身分であることから地位利用の不当要求に繋がり兼ねないこと、また、便宜供与 の疑いを持たれ兼ねないことなどから、その代表を辞退するよう注意喚起するも のである。 団体の種類及び範囲については、規程で定める。 第 3 項は、議員を含む議員関係者又は議員関係企業は、町との癒着疑念を持た れ易い事から、そのような疑惑の念を生じることのないよう努力義務を課してい るものである。 (審査の請求) 第5条 議員について前条に規定する政治倫理基準に反する疑いがあると認められる ときは、これを証する資料を添えて、町民にあっては本町の選挙人名簿に登録され ている町民の100分の1以上の者、議員にあっては議員定数の4分の1以上の者 の連署をもって、議長に審査を請求することができる。 2 前項に規定するほか、町職員は、議員の行為が前条に規定する政治倫理基準に反 する疑いがあると認められるときは、これを証する資料を添えて、議長に審査を請 求することができる。 前第 3 条に規定する政治倫理基準に反する疑いがあると認められる場合の、審 査請求について規定したものである。 3 ・審査は、町民からでも議員からでも請求ができる。 ・町民の場合にあっては、住民直接請求の例にならい、請求しようとする日の 直近の選挙人名簿に登録された者とし、その数は、同程度の人口規模を有す る地方公共団体の議会議員政治倫理条例を参考とした。 ・議員の場合にあっては、むやみな請求を避けるとともに、同程度の議員数で ある同条例を参考とし、現行議員数の1/4程度とした。 ・議員請求にあっては、議長も請求構成員として連署することは可能だが、こ の場合、請求先は副議長となる。同様に、正副議長の場合にあっては、請求 構成員でない年長議員となる。 第 2 項は、町職員からも審査請求ができる規定であり、第 3 条第 4 項及び第 5 項を補完するものとして明文化したものである。 ・町職員の場合、公務員としての立場と相手が公選職の議員であるという見地 から、同項に規定する行為がなされても暗黙しがちであり、また地方公務員 法に規定する公務員の保護の観点からも、役職や人数は制限しない。 (審査会の設置) 第6条 議長は、前条の規定による審査請求があったときは、那珂川町議会議員政治 倫理審査会(以下「審査会」という。)を設置し、当該審査請求に関する事項の審 査を審査会に付託しなければならない。この場合において、議長は、審査請求を受 け付けた日から速やかに審査会を招集するものとする。 2 審査会の委員(以下「委員」という。)は、次の委員をもって構成する。 ・⑴ 議長が指名する議員3名 ・⑵ 社会的信望があり、地方行政に関し識見の高い者のうちから議長が委嘱する者 4名 3 前項の委員において、審査の対象となった議員(以下「審査対象議員」という。 ) 及び審査請求を行った議員並びに当該議員の関係者は、委員となることができない。 4 審査会に委員長及び副委員長1人を置く。 5 審査会の委員長及び副委員長は、その委員が互選する。 6 審査会の委員の任期は、当該審査終了までとする。 審査会の組織及び委員について規定したものである。 ・第1項 審査会の設置及び招集 ・第2項 審査会委員の構成 委員構成については、開かれた議会と公平性公正性の観点から 外部有識者を加えるものとする。 4 ・第3項 ・第4項 ・第5項 ・第6項 構成議員は、 (協議により)議長が指名する。 外部委員は、各種団体等の代表者の中から議長が委嘱する。 委員の制限 正副委員長の設置 正副委員長の互選 委員の任期 (審査会の審査) 第7条 審査会は、議長から前条第1項に基づく審査を付託されたときは、審査請求 の適否及び政治倫理基準に違反する行為の存否について審査する。 2 審査会は、 審査対象議員に出席を求め、 弁明する機会を保障しなければならない。 3 審査会は、第1項の審査を行うため、審査請求者、町職員及び関係者に対し、参 考人として出席させ、事情聴取及び資料の提出等必要な調査を行うことができる。 4 審査会は、委員の3分の2以上が出席しなければ、会議を開くことができない。 5 審査請求の対象となっている議員の政治倫理基準違反の認定及び措置の審査会に おける決定は、出席委員の3分の2以上の同意を要する。 6 審査会の会議は、公開とする。ただし、出席委員の3分の2以上の同意を得たと きは非公開とすることができる。 7 委員は、職務上知り得た秘密を他に漏らしてはならない。その職を退いた後も、 また同様とする。 審査会の審査手続きについて規定したものである。 ・第1項 審査会の役割 ・第2項 審査対象議員の弁明機会の保障 ・第3項 参考人の出席 ・第4項 会議開催の基準 会議が成立するためには、5 名以上の出席が必要であり、4名 以下の場合には会議が成立しない。 ・第5項 審査会での決定基準 ・第6項 審査会の公開・非公開 非公開とする場合は、合理的な相応の理由が必要となる。 ・第5項及び第6項の『出席委員』 7 名の委員全員が出席した場合の2/3以上は 5 名、同様に5名 及び6名の場合は4名の同意が必要となる。 ・第7項 守秘義務 守秘義務違反は、地方自治法に抵触するものである他、本条例 5 にも抵触するものとなる。 (議員の協力義務) 第8条 審査対象議員は、審査に協力するとともに、審査会から要求があるときは、 審査に必要な資料を提出し、又は会議に出席して質疑に答えなければならない。 審査請求の対象となった審査対象議員に対して、審査への協力義務を課した規 定である。 (虚偽説明等) 第9条 審査会は、審査対象議員が前条の規定する調査に必要な協力をしなかったと き、又は審査会に虚偽の報告をしたときは、その旨を議長に報告するものとする。 2 前項において、審査会は、審査対象議員に対し、あらかじめ弁明の機会を与えな ければならない。 前第 8 条の議員の協力義務に反して、調査への協力拒否及び虚偽報告があった 場合に、その旨を議長に報告する規定である。 第1項の報告は、次条の審査結果報告書により行われる。その内容の公表是非 は、第11条第1号の公表の措置によって講じられる。 審査対象議員が、調査への協力拒否及び虚偽報告をしたときに、即時に議長へ 報告するのではなく、当該行為について弁明の機会を与え、その事情によって審 査会において議長への報告是非を協議することになる。 (審査結果の報告) 第10条 審査会の委員長は、審査が終了したときは、議長に対して審査結果を文書 で報告するものとする。 2 議長は、前項の報告を受けたときは、その審査結果を審査対象議員及び審査請求 者に文書で通知するものとする。 前第9条の審査会での審査結果の取扱いに関する規定である。 第 1 項は、審査会委員長は審査結果を議長に報告するものとするものである。 第 2 項は、審査結果及び内容に関わらず、公平公正の観点から、審査対象議員 及び審査請求者に文書をもって知らしめるものとするものである。 6 (議長の措置) 第11条 議長は、審査会からの報告を尊重し、政治倫理基準に違反すると認められ る議員に対して、議会の名誉及び品位を守り、町民の信頼を回復するために、次の 各号の一以上の措置を講ずるものとする。ただし、議長は、本会議において措置の 承認を得なければならない。 ・⑴ 議会広報紙による公表 ・⑵ 政治倫理基準等を遵守させるための警告 ・⑶ 議会役職の辞退 ・⑷ 議員辞職等の勧告 ・⑸ その他必要な措置 前第10条の審査結果報告を受けた議長の措置に関する規定である。 ・議長の措置は、代表権者である議長名により措置される行為である。 ・議長の独断による措置ではなく、全員協議会において審査会からの結果説明 を経て、審査会委員長提案により本議会に諮り、措置を承認する。 ・第1号の「公表」について、一般的には「公表」は不特定多数に広く周知さ せる手段として、町広告式条例に基づく掲示、紙媒体による広報紙への掲載、 ホームページ等電子媒体による掲載等があるが、本条例においては、広報紙 への掲載に限定している。 ・第4号の議員辞職について免職の権限は議会になく、あくまでも勧告に留め られ、辞職は当該議員の辞職願による。 講じられた措置に対して不服があっても、不服申立ての対象とはならない。本 条例は、内部紀律に関する自律作用であって、行政不服審査法第 4 条第 1 項第 1 号の規定により同法に基づく対象とはならず、また、地方自治法第 255 条の 4 の審決の申請は、懲戒処分による除名処分についてだけ対象となることとされて いることからも、本条例による措置に対する不服申立ての規定はないこととな る。 (職務関連犯罪による有罪確定後の措置) 第12条 議員が職務関連犯罪(刑法(明治40年法律第45号)第197条から第 197条の4まで及び第198条に定める贈収賄罪その他職務に関連する犯罪を いう。)により有罪判決を受け、その刑が確定したとき、議員は、町民全体の代表 者としての品位と名誉を守り、町政に対する町民の信頼を回復するため、辞職手続 きをとるものとする。 7 2 議員が、公職選挙法(昭和25年法律第100号)第11条第1項の規定により、 失職した場合及び辞職した場合は、起訴時から失職及び辞職する間に那珂川町より 支払われた金員全額を、ただちに町に対し返還するものとする。 第 1 項は、議員の地位を利用した事件のうち、特に贈収賄に係る犯罪について、 抑制し、戒め、律するものとして、特出しとして明文化するものである。 一般的な犯罪については、第 4 条政治倫理基準によって包含される事になる。 第 2 項は、公職選挙法により失職・辞職した場合、起訴された日からの報酬・ 手当等の金員を受け取らないとするもので、支給された金員は返還するものとし たものである。 ・金員返還の起算日は『起訴』された日とし、当該月報酬及び手当は日割り計 算を行う。この『返還』にあたっては、公職選挙法に規定する『寄付』に抵 触するおそれがあるため、現職中に返還するのではなく、失職・辞職後に一 括返還する事となる。 なお、第1項「職務関連犯罪」は、 ・刑法第197条 収賄、受託収賄及び事前収賄 ・同 第197条の2 第三者供賄 ・同 第197条の3 加重収賄及び事後収賄 ・同 第197条の4 あっせん収賄 ・同 第197条の5 (略) ・同 第198条 贈賄 ・その他職務に関連する犯罪 第2項「失職及び辞職」は、 ・公職選挙法第11条第1項 選挙権及び被選挙権を有しない者 「第 11 条 次に掲げる者は、選挙権及び被選挙権を有しない。 一 削除 二 禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者 三 禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者 (刑の執行猶予中の者を除く。) 四 公職にある間に犯した刑法第 197 条から第 197 条の 4 までの罪又は 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律第 1 条 の罪により刑に処せられ、その執行を終わり若しくはその執行の免除を 受けた者でその執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた日から 五年を経過しないもの又はその刑の執行猶予中の者 五 法律で定めるところにより行われる選挙、投票及び国民審査に関する 犯罪により禁錮以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者 」 (委任) 8 第13条 この条例の施行に関し必要な事項は、議長が別に定める。 別途、那珂川町議会議員政治倫理条例施行規程を制定し、報告書等の様式、そ の他必要事項を規定する。 附 則 この条例は、平成27年4月1日から施行する。 平成27年3月定例会に議員提案として上程し、新年度から発効する。 9
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