第77回日本皮膚科学会東京支部学術大会 モーニングセミナー 4 瘢痕を残さないための 痤瘡治療 座長 川島 眞 先生(東京女子医科大学) 岩月 啓氏 先生(岡山大学) 演者1 痤瘡の適切なスキンケア指導 林 伸和 先生(虎の門病院) 演者2 痤瘡治療 ∼なぜ、ケミカルピーリング治療を選択するか∼ 山本 有紀 先生(和歌山県立医科大学) 日 時 会 場 2 16 平成26年 月 日 (日)8 : 20 ~ 9 : 20 第 4 会場 (東京国際フォーラム ホールB5 (2)) 共催:第77回日本皮膚科学会東京支部学術大会 常盤薬品工業株式会社 ノブ事業部 痤瘡の適切なスキンケア指導 林 伸和 先生(虎の門病院) 尋常性痤瘡は、患者のquality of life(QOL)に大きな影響を与え、瘢痕を残しうる毛包 脂腺系の慢性炎症性疾患である。早期にQOLを改善し、瘢痕を回避するためには、症状 に応じた早期の積極的で適切な治療が必要であり、スキンケアだけで対処するのは好まし くない。一方で、治療を成功させるためには副作用軽減のためのスキンケアが必要であり、 また難治性の痤瘡では不適切なスキンケアが悪化因子となっていることがあるため、スキ ンケア指導は、痤瘡治療のなかで重要な位置を占める。 痤瘡のスキンケアの基本は、洗顔、適切な化粧品の選び方、適切な保湿剤、メイクアッ プ方法の指導である。洗顔については、1日2回洗顔料を用いての洗顔が推奨されている。 化粧品の選び方のポイントは、面皰形成性のないものを選択することが重要となる。保湿 は外用レチノイドの副作用を軽減するために有用なスキンケアではあるが、保湿で痤瘡が 改善したという臨床データはない。最近保湿をすると痤瘡が改善すると考えている患者が 少なくないため、保湿の目的を明確に説明しておく必要がある。メイクアップは、QOL改 善の良い手段であり、痤瘡の治療に影響しないような方法を指導する。具体的には、口紅 やアイメイクをしっかりと行い、痤瘡の皮疹を隠すためにファンデーションを重ね塗るの ではなく、補色を用いて目立たなくする。 痤瘡患者への適切なスキンケア指導について具体的に述べ、その重要性を強調したい。 痤瘡治療 ∼なぜ、ケミカルピーリング治療を選択するか∼ 山本 有紀 先生(和歌山県立医科大学) 俗称 にきび である尋常性痤瘡は、毛包脂腺系を場とする慢性炎症性疾患である。 日本皮膚科学会痤瘡治療ガイドラインでは、面皰から最重症の皮疹まで、アダパレンを 基本とした治療が推奨され、一方、ガイドライン作成以前には多くの施設で行われていた ケミカルピーリングは衰退することが予想された。当院では、難治性痤瘡治療においては、 2000年からグリコール酸やサリチル酸を用いたケミカルピーリング治療を行ってきたが、 ケミカルピーリングは保険外診療であることや特定の曜日への通院が必要になることより、 すべての患者さんに適応出来る治療方法ではなかった。また、論文のエビデンスレベルよ り分類されたガイドラインでの推奨度ではC1 (良質な根拠は少ないが、選択肢の一つとし て推奨する) とかなり低いものになってしまったことより、ケミカルピーリングの位置 づ けが 難しいものになった。しかし実際は、ガイドライン作成以降も患者のニーズは減るこ とはなく現在でも継続した治療を行っている患者が多く、アダパレンを併用することによ りケミカルピーリングの治療間隔も延ばすことが可能になった。 今回は、ケミカルピーリングに関しての最新の臨床研究結果を供覧しつつ、ケミカル ピーリングの痤瘡治療への有用性を考察したい。
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