第35回 広島県病院学会 優秀賞受賞 ユーモア(笑い)がもたらすリラクゼーション効果 ○中野 勇治(医療法人翠清会 梶川病院) 百田 武司 (日本赤十字広島看護大学) 【はじめに】 近年、「笑い」と健康の関係に、注目が集まっている。笑いが健康づくりに大きな役割を果たすことがテレビや新聞などの報道を通じ、 一般の人にも関心がもたれるようになってきた。 【目的】 当院は脳疾患専門病院であり、回復過程において不安を抱く患者も多くいることから、リラクゼーションが有効と考えた。畑野 (2007)は、笑いが前頭葉機能の活性化に及ぼす影響について報告している。この報告では、笑った後のほうが、かなひろいテスト、 言葉の想起数、7桁数字の正解者が多く、笑いが集中力、注意分配能力、知的柔軟度、短期記憶に関連することを明らかにしてい る。しかしながら,この報告は、笑いの前後の比較研究であり、笑い刺激を与える群と笑いの刺激を与えない群の比較が行なわれて いない。そこで、笑い刺激を与える群(以下、試験群)と、笑い刺激を与えない群(以下、対照群)との比較により、笑いがもたらすリラ クゼーション効果について検討した。 【方法】 調査対象者は病院職員40名である。20名ずつ無作為に試験群と対照群に分けた、試験群には、個室にて約15分間のコメディー 動画を鑑賞させ、前後で下記の①~③の測定を実施した。対照群には、コメディー動画を鑑賞させずに測定のみ約15分後に実施 した。 ① かなひろいテスト2分、②言葉の想起テスト1分(野菜を数多く答える)、③数唱テスト3~6桁数字記憶を用いる(順唱5、6桁数字 桁数字4点満点。逆唱2、3桁数字4点満点、合計8点)。調査対象者には、研究の目的、研究参加の自由、匿名性について説明 し同意を得て、ユーモアがもたらす効果を知っているかについても同様に質問した。 【結果】 ・試験群、対照群にテスト①~③を実施した結果、平均値と前後の変化の値が下記のように測定された。 ①かなひろいテスト 試験群:正解 笑う前36.9個、笑った後47.7個、+10.8個。誤認 笑う前5.6個、笑った後4.1個、-1.5個。 対照群:正解 1回目47.8個、2回目51.8個、+4.0個。誤認 1回目4.5個、2回目4.2個、-0.3個。 ②言葉の想起テスト 試験群:笑う前45.3秒、笑った後35.3秒、-10.0秒。対照群:1回目43.3秒、2回目35.2秒、-8.1秒。 ③数唱テスト 試験群:笑う前6.0個、笑った後6.5個、+0.5個。対照群:1回目5.6個、2回目6.1個、+0.5個。 ・リラックスの有無は、試験群:20人、対照群:0人であった。 ・ ユーモアがもたらす効果を知っていたスタッフは、40名中32.5%であった。 【考察】 動画によりユーモアを提供し比較測定したことで、コメディー動画を鑑賞したスタッフは、かなひろいテストでは、双方2回目、数値 が上昇し、対照群に比べ試験群の正解数は上昇し、誤認は減少していた。想起テストでは、対照群に比べ、試験群が正確に早く想 起出来た。記憶テストには、数唱テストを実施したが、双方、数値の上昇は、見られたが差は、無かった。試験群、対照群に大きく異 なるのは、コメディー動画を鑑賞した試験群全てにユーモアの内容(登場人物)に嫌いな人物がいても、コメディー動画で笑えたこと から、全体的に面白いと感じることが出来、リラクゼーション効果があったと考える。先行研究で前頭葉の活性化が示唆されたが本 研究では、部位の特定に留まらず脳の活性化が図れたと考える。 【結論】 ユーモア(笑い)は、リラクゼーション効果が得られ脳の機能が活性化する要素があり、短期記憶効果は無いが集中力、注意分配 能力に特に効果があった。
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