教育講演Ⅰ −微生物

教育講演Ⅰ −微生物−
9月21日(日) 10:50〜11:50 第2会場 3階 国際会議場
テーマ:感染症診療でのコミュニケーションの重要性
司会:吉田 弘之(国立大学法人神戸大学医学部附属病院 感染制御部)
医師から微生物検査室に求めること 〜プレリミナリーデータ、メタデータの重要性〜
高倉 俊二(京都大学医学部附属病院 感染制御部)
●ねらい
一般診療のみならず感染症診療においても、医療スタッフ間のコミュニケーションが重要視されてい
る。患者診療において医師と微生物検査室の緊密なやりとりや院内感染対策における関係業種間のコミュ
ニケーションの連携を医師の視点より解説して頂き、様々な問題の解決の手立てを考えて日頃の診療に生
かせていきたい。
− 57 −
教育講演Ⅰ 感染症診療でのコミュニケーションの重要性
医師から微生物検査室に求めること
医師から微生物検査室に求めること
医師から微生物検査室に求めること
〜プレリミナリーデータ、メタデータの重要性〜
プレリミナリーデータ、メタデータの重要性
プレリミナリーデータ、メタデータの重要性
1) 1)
◎高倉
俊二
◎高倉
俊二
1) 1)
京都大学医学部附属病院
感染制御部
京都大学医学部附属病院
感染制御部
○高倉 俊二 京都大学医学部附属病院 感染制御部
感染症診断はフォーカスと起因微生物を同定すると
できる」にするには微生物検査室に何が求められてい
感染症診断はフォーカスと起因微生物を同定すると
できる」にするには微生物検査室に何が求められてい
いう
2 つの柱からなる。起因微生物の同定・感受性検
るかを考え、そのように行動しているだろうか。喀痰
いう
2 つの柱からなる。起因微生物の同定・感受性検
るかを考え、そのように行動しているだろうか。喀痰
査結果を出すことが微生物検査の最大の役割であり、
培養を週に何回もオーダーしてくる医師は肺炎の診断
査結果を出すことが微生物検査の最大の役割であり、 培養を週に何回もオーダーしてくる医師は肺炎の診断
その正確さ、迅速さが報告に求められることは間違い
ができていないだろう。固形便の培養検査を提出する
その正確さ、迅速さが報告に求められることは間違い
ができていないだろう。固形便の培養検査を提出する
ない。しかし、微生物検査室が得る情報は、各検体の
医師は胃腸炎の原因菌を知ろうとしてないだろう。血
ない。しかし、微生物検査室が得る情報は、各検体の
医師は胃腸炎の原因菌を知ろうとしてないだろう。血
検出菌とその同定・感受性検査結果だけであろうか。
液培養が提出された患者で同じ日にそれ以外の検体が
検出菌とその同定・感受性検査結果だけであろうか。 液培養が提出された患者で同じ日にそれ以外の検体が
微生物検査における第一段階は検体の肉眼的所見、
何も提出されていなければその主治医は感染フォーカ
微生物検査における第一段階は検体の肉眼的所見、
何も提出されていなければその主治医は感染フォーカ
鏡検所見から始まる。適切な検体のグラム染色所見は、
スの見当をつけることができていないだろう。
鏡検所見から始まる。適切な検体のグラム染色所見は、
スの見当をつけることができていないだろう。
感染症診療において、それ以外のどの所見よりも大き
血液培養を採取せずに広域抗菌薬を使うのは不適正
感染症診療において、それ以外のどの所見よりも大き 血液培養を採取せずに広域抗菌薬を使うのは不適正
なインパクトをもつものである。抗菌薬の選択ひとつ
使用の典型である。薬剤情報は微生物検査室ではわか
なインパクトをもつものである。抗菌薬の選択ひとつ
使用の典型である。薬剤情報は微生物検査室ではわか
をとってみても、鏡検所見において、グラム陽性菌、
らないだろうが、薬剤部では血液培養の採取状況はわ
をとってみても、鏡検所見において、グラム陽性菌、
らないだろうが、薬剤部では血液培養の採取状況はわ
グラム陰性菌、それらの混在、いずれも認めない、の
からない(わかるとしてもひとつひとつ調べる余裕が
グラム陰性菌、それらの混在、いずれも認めない、の からない(わかるとしてもひとつひとつ調べる余裕が
この
4 通りの結果によって、推定する起因菌や病態が
ないので調べていない)。調べて主治医に連絡しても
この
4 通りの結果によって、推定する起因菌や病態が
ないので調べていない)。調べて主治医に連絡しても
大きく異なる。その形態によって、あるいは第二段階
抗菌薬の開始前に戻ることはできない。広域抗菌薬と
大きく異なる。その形態によって、あるいは第二段階
抗菌薬の開始前に戻ることはできない。広域抗菌薬と
としての翌朝の培地状のコロニー形状によって属・種
昇圧剤を開始した患者では、より早期の感染フォーカ
としての翌朝の培地状のコロニー形状によって属・種
昇圧剤を開始した患者では、より早期の感染フォーカ
が推定できれば、医師に必要な情報の
90%は得られ
スと起因微生物の推定が必要である。ショックに陥っ
が推定できれば、医師に必要な情報の 90%は得られ
スと起因微生物の推定が必要である。ショックに陥っ
たと同じであり、最後の段階である、同定・感受性試
ている患者から血液培養とともに提出された尿培養な
たと同じであり、最後の段階である、同定・感受性試
ている患者から血液培養とともに提出された尿培養な
験の結果によって得られる情報は、治療においては微
らば、その鏡検で認めるグラム陰性桿菌にどれくらい
験の結果によって得られる情報は、治療においては微
らば、その鏡検で認めるグラム陰性桿菌にどれくらい
調整のレベルである。
緑膿菌の疑いがあるのか、同じ病棟で過去
3 ヵ月に何
調整のレベルである。
緑膿菌の疑いがあるのか、同じ病棟で過去
3 ヵ月に何
ところが残念ながら、このように第一段階、第二段
名の患者から
ESBL
産生菌が検出されているのかは、
ところが残念ながら、このように第一段階、第二段
名の患者から
ESBL
産生菌が検出されているのかは、
階までの情報によって適切な診療のできる医師は少な
患者の救命に直接的影響の大きい情報である。
階までの情報によって適切な診療のできる医師は少な
患者の救命に直接的影響の大きい情報である。
いのも現実である。そもそも症状・所見からフォーカ
微生物検査室で得られる情報は、菌種と感受性、そ
いのも現実である。そもそも症状・所見からフォーカ 微生物検査室で得られる情報は、菌種と感受性、そ
スを推定しているか、検体を適切な部位から適切な方
の集計した分布や率だけではない。病院内でどのよう
スを推定しているか、検体を適切な部位から適切な方
の集計した分布や率だけではない。病院内でどのよう
法で採取しているか、フォーカスとフォーカスによっ
な情報をどこに発信すれば感染症診療が向上するかを
法で採取しているか、フォーカスとフォーカスによっ
な情報をどこに発信すれば感染症診療が向上するかを
て想定している原因菌を明確にしているか、といった
考え直してみれば、微生物検査が起点となる情報の中
て想定している原因菌を明確にしているか、といった 考え直してみれば、微生物検査が起点となる情報の中
要件を満たさなければ診療は適切なものにならない。
に可能性が大いに残されている。
要件を満たさなければ診療は適切なものにならない。
に可能性が大いに残されている。
さらに、検査室には、緊急性の高い検体からそれほど
さらに、検査室には、緊急性の高い検体からそれほど
でもない検体まで混在して到着する。脳脊髄液のよう
でもない検体まで混在して到着する。脳脊髄液のよう
に検体の種別によって緊急であることがわかりやすい
に検体の種別によって緊急であることがわかりやすい
ものもあるが、敗血症性ショックに陥った救急患者の
ものもあるが、敗血症性ショックに陥った救急患者の
尿と、敗血症症状のない長期入院患者のカテーテル尿
尿と、敗血症症状のない長期入院患者のカテーテル尿
とを微生物検査室で判別することはできない。
とを微生物検査室で判別することはできない。
つまり、検査技師にとって、鏡検所見というアナロ
つまり、検査技師にとって、鏡検所見というアナロ
グ情報を推定する起因微生物のレベルに高めて医師に
グ情報を推定する起因微生物のレベルに高めて医師に
フィードバックすることは可能なことではあるが、ど
フィードバックすることは可能なことではあるが、ど
の検体がそれに値するのか、相手の医師はそれを正し
の検体がそれに値するのか、相手の医師はそれを正し
く理解できるか、がわからないために「可能なのにで
く理解できるか、がわからないために「可能なのにで
きない」という状況にあるのだろう。
きない」という状況にあるのだろう。
では、これらの問題点を解決し「可能なことだから
では、これらの問題点を解決し「可能なことだから
− 58 −
教育講演Ⅱ −免疫血清−
9月21日(日) 9:50〜11:50 第7会場 5階 502号
テーマ:ウイルス感染防御に必要な知識を学ぼう 〜風疹・麻疹を中心に〜
司会:上田 一仁(市立芦屋病院 臨床検査科)
中尾 光孝(国保日高総合病院 中央検査科)
1.免疫応答の基礎知識 〜感染防御と抗体産生に関する免疫機構〜
柴田 宏(シスメックス株式会社 学術部学術二課)
2.ワクチン製造・開発の現在と未来
上田 重晴(大阪大学名誉教授)
3.風疹・麻疹検査のキーポイント
前側 恒男(デンカ生研株式会社 学術情報部)
4.院内感染対策における予防接種の実際
小川 拓(公立大学法人奈良県立医科大学附属病院 感染症センター)
●ねらい
我が国は欧米先進国と比較し、ワクチン認可が遅れておりワクチン後進国として知られているが、厚生
労働省は、2007年のHibワクチン(Haemophilus infuluenzae type B vaccine)の認可以来急速に認
可を進め、ワクチンギャップを埋めようとしている。そして2013年には、出産対象年齢の女性に対して
風疹ワクチン助成制度が立ち上げられ、国としてワクチンに対する考え方の大きな変革が成されてきてい
る。また、麻疹においては近年罹患届けが増加しており、2014年1~14週の人口百万人あたりの届出数
が11.0と和歌山県が1位、8.3と京都府が2位となり、近畿地方における罹患率が高い事が伺える。
そこで今回、これを考える上では欠かすことのできない感染と免疫応答という宿主側の側面、これに対
するワクチン製造過程とその歴史という創薬側の側面という両方向からの講演を聴講し、多角的にワクチ
ンというものを考えてみたい。そして、我々臨床検査技師が知るべき試薬特性に加え、増加する麻疹、風
疹に対する院内感染対策についての講演を聴講する事で、免疫血清検査に携わる技師がワクチンに対して
どうしていくべきかを考える機会として頂きたい。
− 59 −
教育講演Ⅱ ウイルス感染防御に必要な知識を学ぼう 〜風疹・麻疹を中心に〜
免疫応答の基礎知識
免疫応答の基礎知識
1.免疫応答の基礎知識
〜感染防御と抗体産生に関する免疫機構〜
感染防御と抗体産生に関連する免疫機構
感染防御と抗体産生に関連する免疫機構
◎柴田
宏 1)
◎柴田
宏 1)
1) 1)
シスメックス株式会社
学術部
学術二課
シスメックス株式会社
学術部
学術二課
○柴田 宏 シスメックス株式会社 学術部 学術二課
感染防御
も多くのワクチンを世に送り出した。ワクチン
感染防御
も多くのワクチンを世に送り出した。ワクチン
免疫反応について語られるとき、抗原(細菌やウイ
(vaccine)」という言葉はラテン語の「vacca(牝牛)
免疫反応について語られるとき、抗原(細菌やウイ
(vaccine)」という言葉はラテン語の「vacca(牝牛)
ルスなど)物質が生体内に入ってきてからの機序に付
」に由来しており、当時牛が罹患していた牛痘の事を
ルスなど)物質が生体内に入ってきてからの機序に付 」に由来しており、当時牛が罹患していた牛痘の事を
いて説明されることが多いと感じる。実際は呼吸器で
「vaccinia(ワクシニア)」と呼んでいた事から、パ
いて説明されることが多いと感じる。実際は呼吸器で
「vaccinia(ワクシニア)」と呼んでいた事から、パ
あれば鼻毛でゴミに付着する雑菌を除去し、気管支表
スツールがジェンナーに敬意をはらって命名したとい
あれば鼻毛でゴミに付着する雑菌を除去し、気管支表
スツールがジェンナーに敬意をはらって命名したとい
面細胞の繊毛運動で異物を外へ排出する。涙液にはリ
われている。
面細胞の繊毛運動で異物を外へ排出する。涙液にはリ われている。
ソチームが含まれており、菌を溶かしているし、消化
ソチームが含まれており、菌を溶かしているし、消化
器器官では粘液で保護すると同時に、粘液中のIgA
一次免疫応答と二次免疫応答
器器官では粘液で保護すると同時に、粘液中のIgA
一次免疫応答と二次免疫応答
ある抗原がはじめて生体に侵入すると、まずIgM
が初期粘膜免疫の働きをしている。
ある抗原がはじめて生体に侵入すると、まずIgM
が初期粘膜免疫の働きをしている。
が作られ、その後にIgGが産生される(下図の一次
胃に入った微生物もほとんどは胃酸によって死滅する。
胃に入った微生物もほとんどは胃酸によって死滅する。
が作られ、その後にIgGが産生される(下図の一次
免疫応答)。感染症発症時に強力なIgMが産生され
皮膚においてもバリア機能を有しており、皮膚の角質
皮膚においてもバリア機能を有しており、皮膚の角質
免疫応答)。感染症発症時に強力なIgMが産生され
て感染を終息させ、その後はIgGによって抵抗力を
層が皮脂膜や角層細胞間脂質、天然保湿因子などで強
層が皮脂膜や角層細胞間脂質、天然保湿因子などで強 て感染を終息させ、その後はIgGによって抵抗力を
保持していく。同じ抗原が再度生体に侵入すると、リ
固なバリアを保っているが、これらが崩れると角質が
固なバリアを保っているが、これらが崩れると角質が
保持していく。同じ抗原が再度生体に侵入すると、リ
ンパ球に既に設計図が記憶されているため早期から大
肥厚し、角質水分量の低下、水分の蒸散量更新などか
肥厚し、角質水分量の低下、水分の蒸散量更新などか
ンパ球に既に設計図が記憶されているため早期から大
量のIgGが速やかに産生され(ブースター効果)、
ら角質がはがれて抗原物質が侵入し、結果として免疫
ら角質がはがれて抗原物質が侵入し、結果として免疫
量のIgGが速やかに産生され(ブースター効果)、
IgMのピークは目立たない(下図の二次免疫応答)。
系が活性化されて皮膚炎症状を起こすようになる。こ
系が活性化されて皮膚炎症状を起こすようになる。こ IgMのピークは目立たない(下図の二次免疫応答)。
この機構により、一度抗原に曝露されると同じ病原体
れらの様に、ヒトは全身で感染防御をしていると考え
れらの様に、ヒトは全身で感染防御をしていると考え
この機構により、一度抗原に曝露されると同じ病原体
に曝されても二度目の発症を免れたり、発症しても軽
られる。
られる。
に曝されても二度目の発症を免れたり、発症しても軽
く済む。
く済む。
ワクチン
ワクチン
免疫の概念はエドワード・ジェンナーの行なった天
免疫の概念はエドワード・ジェンナーの行なった天
然痘ワクチンの開発といわれる。彼は牛の乳搾りをし
然痘ワクチンの開発といわれる。彼は牛の乳搾りをし
ている女性から、「牛痘(ウシのかかる天然痘)にか
ている女性から、「牛痘(ウシのかかる天然痘)にか
かったことのある人は天然痘にはかからない」、とい
かったことのある人は天然痘にはかからない」、とい
うことを聞き、牛痘にかかれば天然痘に対する抵抗力
うことを聞き、牛痘にかかれば天然痘に対する抵抗力
ができるのではないか、という仮説をたてた。当時天
ができるのではないか、という仮説をたてた。当時天
然痘は死亡率が高く、最も恐れられていた感染症であ
然痘は死亡率が高く、最も恐れられていた感染症であ
った。
ジェンナーはこの仮説を証明するため天然痘
った。
ジェンナーはこの仮説を証明するため天然痘
まとめ
の研究に没頭し、少年に牛痘の膿を接種(種痘)後し
の研究に没頭し、少年に牛痘の膿を接種(種痘)後し
まとめ
ヒトには様々な免疫機構が備わっている。時には悪
ばらくして天然痘の患者から採った膿を接種した。そ
ヒトには様々な免疫機構が備わっている。時には悪
ばらくして天然痘の患者から採った膿を接種した。そ
い影響を起こす(アレルギー反応や自己免疫疾患など)
の少年は牛痘による発疹ができたが天然痘を発症しな
い影響を起こす(アレルギー反応や自己免疫疾患など)
の少年は牛痘による発疹ができたが天然痘を発症しな
こともあるが、免疫反応をコントロールすることによ
かった。前もって牛痘にかかったおかげで、天然痘の
かった。前もって牛痘にかかったおかげで、天然痘の こともあるが、免疫反応をコントロールすることによ
り病気の発症を抑制したり、軽い症状で済ませること
膿の悪影響から守られたことは明らかなことからジェ
り病気の発症を抑制したり、軽い症状で済ませること
膿の悪影響から守られたことは明らかなことからジェ
ができるワクチンを有効に活用することは医療従事者
ンナーの仮説が正しい事が証明された。ジェンナーの
ができるワクチンを有効に活用することは医療従事者
ンナーの仮説が正しい事が証明された。ジェンナーの
にとって必要なツールである。
偉大な発見は
100
年後、フランスの学者ルイ・パスツ
偉大な発見は 100 年後、フランスの学者ルイ・パスツ にとって必要なツールである。
ールに受け継がれ、パスツールは病原性の弱くなった
ールに受け継がれ、パスツールは病原性の弱くなった
細菌を前もって接種しておくと、あとから病原性の強
細菌を前もって接種しておくと、あとから病原性の強
い菌が入ってきても発症しない、という大発見をした。
い菌が入ってきても発症しない、という大発見をした。
こうしてワクチンの効果を世に広く認めさせ、その後
こうしてワクチンの効果を世に広く認めさせ、その後
− 60 −
教育講演Ⅱ ウイルス感染防御に必要な知識を学ぼう 〜風疹・麻疹を中心に〜
ワクチン製造・開発の現在と未来
ワクチン製造・開発の現在と未来
2.ワクチン製造・開発の現在と未来
1) 1)
◎上田
◎上田
重晴
重晴
1) 1)
大阪大学名誉教授
大阪大学名誉教授
○上田 重晴 大阪大学名誉教授
ジェンナー、パスツールによって始められ、細菌学、
ジェンナー、パスツールによって始められ、細菌学、
れば、培地費用不要でコスト的にも有利であった。
れば、培地費用不要でコスト的にも有利であった。
ウイルス学、免疫学の進歩と共に、開発され、改良さ
ウイルス学、免疫学の進歩と共に、開発され、改良さ
インフルエンザワクチン以外のウイルスワクチンは、
インフルエンザワクチン以外のウイルスワクチンは、
れて来たワクチンが今日のワクチンである。多くの感
れて来たワクチンが今日のワクチンである。多くの感
現在では、子宮頸がんワクチンの1種を除いて、すべ
現在では、子宮頸がんワクチンの1種を除いて、すべ
染症に対して、その予防効果には目を見張る実績が証
染症に対して、その予防効果には目を見張る実績が証
て培養した細胞にウイルスを感染させて、増殖したウ
て培養した細胞にウイルスを感染させて、増殖したウ
明されている。殊に、化学療法剤が乏しいウイルス性
明されている。殊に、化学療法剤が乏しいウイルス性
イルス(子宮頸がんワクチンの1種はウイルス様粒子)
イルス(子宮頸がんワクチンの1種はウイルス様粒子)
疾患に対しては、ワクチン無くしてわれわれは安心で
疾患に対しては、ワクチン無くしてわれわれは安心で
を使用してワクチンとしている。細胞の培養は、過去
を使用してワクチンとしている。細胞の培養は、過去
きる生活を送ることは出来なかったであろう。本シン
きる生活を送ることは出来なかったであろう。本シン
には、ほとんどがルー瓶と呼ばれる底の平たいガラス
には、ほとんどがルー瓶と呼ばれる底の平たいガラス
ポジウムでは、ワクチン製造・開発の現状をお伝えし、
ポジウムでは、ワクチン製造・開発の現状をお伝えし、
製の瓶を用いて行われていたが、工業的な進歩とあい
製の瓶を用いて行われていたが、工業的な進歩とあい
今後どのような進展が期待できるかについても展望し
今後どのような進展が期待できるかについても展望し
まって、現在ではステンレス製の培養タンクが使用さ
まって、現在ではステンレス製の培養タンクが使用さ
てみたい。
てみたい。
れている。細胞を培養液中に浮遊させるとか、マイク
れている。細胞を培養液中に浮遊させるとか、マイク
現在、わが国で使用されているワクチンは、定期接
現在、わが国で使用されているワクチンは、定期接
ロキャリヤに付着させ、それをタンク内で浮遊させて
ロキャリヤに付着させ、それをタンク内で浮遊させて
種のワクチンが
13 種類(弱毒生ワクチン4種類、不
種のワクチンが
13 種類(弱毒生ワクチン4種類、不培養し、それにウイルスを感染させて、ウイルスを培
培養し、それにウイルスを感染させて、ウイルスを培
活化ワクチン9種類)、任意接種のワクチンが
11 種
活化ワクチン9種類)、任意接種のワクチンが
11 種養するのである。タンクの大きさを必要に応じて大き
養するのである。タンクの大きさを必要に応じて大き
類(弱毒生ワクチン5種類、不活化ワクチン6種類)、
類(弱毒生ワクチン5種類、不活化ワクチン6種類)、
くすることで、培養液量を1トン、あるいはそれ以上
くすることで、培養液量を1トン、あるいはそれ以上
合計
24 種類である。それらの内、細菌ワクチンは9
合計
24 種類である。それらの内、細菌ワクチンは9に増やし、一挙に大量のウイルス液を収穫できるよう
に増やし、一挙に大量のウイルス液を収穫できるよう
種類(弱毒生ワクチン1種類、不活化ワクチン8種類)
種類(弱毒生ワクチン1種類、不活化ワクチン8種類)
になった。しかも、ルー瓶を使用していた時はほとん
になった。しかも、ルー瓶を使用していた時はほとん
、ウイルスワクチンは
15 種類(弱毒生ワクチン8種
、ウイルスワクチンは
15 種類(弱毒生ワクチン8種どの作業が手作業であったが、タンク培養ではほとん
どの作業が手作業であったが、タンク培養ではほとん
類、不活化ワクチン7種類)である。
類、不活化ワクチン7種類)である。
どを自動化して作業できるようになった。
どを自動化して作業できるようになった。
基本的に、弱毒生ワクチンでも不活化ワクチンでも
基本的に、弱毒生ワクチンでも不活化ワクチンでも
ワクチンは多数の健康人に接種されるので、有効性
ワクチンは多数の健康人に接種されるので、有効性
ほとんどのワクチンでは、病原体が発見されると、培
ほとんどのワクチンでは、病原体が発見されると、培
は当然のことながら、極めて高い安全性が求められる。
は当然のことながら、極めて高い安全性が求められる。
養し、精製して、ワクチンの原液とした。病原体を弱
養し、精製して、ワクチンの原液とした。病原体を弱
そのため、薬事法の「医薬品および医薬部外品の製造
そのため、薬事法の「医薬品および医薬部外品の製造
毒にするには、培養を繰り返すことが行われた。不活
毒にするには、培養を繰り返すことが行われた。不活
管理および品質管理の基準(GMP,
管理および品質管理の基準(GMP,
Good
Good
化ワクチンでは、精製した病原体(あるいは毒素)を
化ワクチンでは、精製した病原体(あるいは毒素)を
Manufacturing
Manufacturing
Practice)」に則り、製造されなければ
Practice)」に則り、製造されなければ
ホルマリンで処理して、無毒化した。
ホルマリンで処理して、無毒化した。
ならないし、出来上がった製品は国家検定を受けて、
ならないし、出来上がった製品は国家検定を受けて、
細菌ワクチンは培地で菌を増殖させれば殖やすこと
細菌ワクチンは培地で菌を増殖させれば殖やすこと
合格しなければ市場に出せない。
合格しなければ市場に出せない。
は難しくないが、ウイルスは生きている細胞の中でし
は難しくないが、ウイルスは生きている細胞の中でし
ワクチンは、微生物学、免疫学、その他種々の科学
ワクチンは、微生物学、免疫学、その他種々の科学
か増殖しないため、ウイルスを殖やす細胞として、何
か増殖しないため、ウイルスを殖やす細胞として、何
の進歩、工業化の進歩に助けられて、開発・製造され
の進歩、工業化の進歩に助けられて、開発・製造され
を利用するかがワクチン開発・製造の鍵であった。そ
を利用するかがワクチン開発・製造の鍵であった。そ
て人々の健康に貢献してきた。先に、子宮頸がんワク
て人々の健康に貢献してきた。先に、子宮頸がんワク
のため、細胞培養技術が進歩する前には、ワクチンに
のため、細胞培養技術が進歩する前には、ワクチンに
チンの1種はウイルス様粒子(VLP)と書いたが、今
チンの1種はウイルス様粒子(VLP)と書いたが、今
するウイルスを殖やすために動物を利用せざるを得な
するウイルスを殖やすために動物を利用せざるを得な
後は
後は
VLPVLP
をワクチンの本体とするワクチンが増えて
をワクチンの本体とするワクチンが増えて
かった。この点、最も易しかったのはインフルエンザ
かった。この点、最も易しかったのはインフルエンザ
くるのではないだろうか。海外では
くるのではないだろうか。海外では
VLPVLP
ワクチンの
ワクチンの
ウイルスを発育鶏卵で培養することであった。最近で
ウイルスを発育鶏卵で培養することであった。最近で
治験成績が多数報告されるようになってきた。多くの
治験成績が多数報告されるようになってきた。多くの
は、世界的に徐々に細胞培養で製造する方法に変わり
は、世界的に徐々に細胞培養で製造する方法に変わり
VLPVLP
ワクチンは昆虫細胞を使用してつくられている
ワクチンは昆虫細胞を使用してつくられている
つつあるが、わが国の季節性インフルエンザワクチン
つつあるが、わが国の季節性インフルエンザワクチン
が、子宮頸がんワクチンの1種が酵母でつくられてい
が、子宮頸がんワクチンの1種が酵母でつくられてい
は未だ発育鶏卵を使用して製造されている。発育鶏卵
は未だ発育鶏卵を使用して製造されている。発育鶏卵
るので、他に別の方法がとられる可能性もある。現に、
るので、他に別の方法がとられる可能性もある。現に、
は温度と湿度を保てば、鶏胚は卵内で成長する。鶏胚
は温度と湿度を保てば、鶏胚は卵内で成長する。鶏胚
タバコの葉で
タバコの葉で
VLPVLP
ワクチンを作って、治験まで実施
ワクチンを作って、治験まで実施
を包む膜(漿尿膜)の細胞内で殖えたウイルスは鶏胚
を包む膜(漿尿膜)の細胞内で殖えたウイルスは鶏胚
している企業もある。培地・培養液が不要になる。新
している企業もある。培地・培養液が不要になる。新
が浮いている液(漿尿液)中に放出される。それを集
が浮いている液(漿尿液)中に放出される。それを集
しい発想と技術の合体がワクチンの新しい未来を開い
しい発想と技術の合体がワクチンの新しい未来を開い
めれば、ワクチン製造に使用出来る。細胞培養と比べ
めれば、ワクチン製造に使用出来る。細胞培養と比べ
てくれそうな兆しが見えてきた。
てくれそうな兆しが見えてきた。
− 61 −
教育講演Ⅱ ウイルス感染防御に必要な知識を学ぼう 〜風疹・麻疹を中心に〜
風疹・麻疹検査のキーポイント
風疹・麻疹検査のキーポイント
3.風疹・麻疹検査のキーポイント
1) 1)
◎前側
◎前側
恒男
恒男
1) 1)
デンカ生研株式会社
デンカ生研株式会社
学術情報部
学術情報部
○前側 恒男 デンカ生研株式会社 学術情報部
風疹は
風疹は
2013
2013
年に全国で
年に全国で
14,000
14,000
例以上の報告があり、
例以上の報告があり、
れている。
れている。
2008
年以降に全数報告となってから最多となった。
2008
年以降に全数報告となってから最多となった。 EIA
EIA
法は
法は
ELISA(Enzyme-Linked
ELISA(Enzyme-Linked
Immunosorbent
Immunosorbent
2014
年は
2012
年以前の水準に落ち着いているが、引
2014
年は
2012
年以前の水準に落ち着いているが、引
Assay)法とも呼ばれる方法で、マイクロプレート中
Assay)法とも呼ばれる方法で、マイクロプレート中
き続き注意が必要である。
き続き注意が必要である。
でウイルス抗原、血清検体由来の抗体、酵素標識され
でウイルス抗原、血清検体由来の抗体、酵素標識され
一方、麻疹は
2013
年 12
一方、麻疹は
2013
年月以降増加傾向が続いてい
12 月以降増加傾向が続いてい
た二次抗体(ヒト抗体に対する動物抗体)の免疫複合
た二次抗体(ヒト抗体に対する動物抗体)の免疫複合
る。2014
年 1年月までは輸入症例の割合が高かったが、
る。2014
1 月までは輸入症例の割合が高かったが、
体を形成させた後、酵素基質を加えて発色させ、その
体を形成させた後、酵素基質を加えて発色させ、その
その後は国内感染例の割合が高く、一旦輸入例として
その後は国内感染例の割合が高く、一旦輸入例として
吸光度を測定することにより検体中の抗体量を定量的
吸光度を測定することにより検体中の抗体量を定量的
入ってきた麻疹ウイルスが国内流行しつつあることを
入ってきた麻疹ウイルスが国内流行しつつあることを
に測定する。IgG、IgM
に測定する。IgG、IgM
等のグロブリンクラス別に検
等のグロブリンクラス別に検
示唆しており、医療機関内での感染例も報告されるな
示唆しており、医療機関内での感染例も報告されるな
査できること、自動化が可能なこと等から広く普及し
査できること、自動化が可能なこと等から広く普及し
ど憂慮される状況にある。
ど憂慮される状況にある。
ている。
ている。
風疹、麻疹は医療関係者(実習の学生含む)が発症
風疹、麻疹は医療関係者(実習の学生含む)が発症
各種抗体測定法にはそれぞれの特徴があるため目的
各種抗体測定法にはそれぞれの特徴があるため目的
すると、本人の重症化の可能性のみならず、周りの患
すると、本人の重症化の可能性のみならず、周りの患
によって選択する必要があるが、風疹では
によって選択する必要があるが、風疹では
HI 法、又
HI 法、又
者や医療関係者への感染源となり得ることから、免疫
者や医療関係者への感染源となり得ることから、免疫
は EIA/IgG
は EIA/IgG
法が、麻疹では
法が、麻疹では
PA PA
法、又は
法、又は
EIA/IgG
EIA/IgG
法が
法が
を獲得した上で勤務、実習を開始することが求められ
を獲得した上で勤務、実習を開始することが求められ
主に採用されている。
主に採用されている。
ている。
ている。
医療関係者として十分な感染防御に必要な抗体価は、
医療関係者として十分な感染防御に必要な抗体価は、
免疫の有無は血中抗体価によって評価される。抗ウ
免疫の有無は血中抗体価によって評価される。抗ウ
抗風疹抗体が
抗風疹抗体が
HI で
HI32
で倍以上、又は
32 倍以上、又は
EIA/IgG
EIA/IgG
で 8.0
で 8.0
イルス抗体価の検査法には
CF(Complement
イルス抗体価の検査法には
CF(Complement
EIAEIA
価以上とされ、抗麻疹抗体は
価以上とされ、抗麻疹抗体は
PA PA
で 256
で 256
倍以上、
倍以上、
Fixation:補体結合反応)法、NT(Neutralization:中
Fixation:補体結合反応)法、NT(Neutralization:中または
または
EIA/IgG
EIA/IgG
で 16.0
で 16.0
EIAEIA
価以上とされている(日
価以上とされている(日
和)法、PA(Particle
Agglutination:粒子凝集)法、
和)法、PA(Particle
Agglutination:粒子凝集)法、本環境感染学会)。ただし、これらの基準値は感染診
本環境感染学会)。ただし、これらの基準値は感染診
HI(Hemagglutination-Inhibition:赤血球凝集抑制)法、
HI(Hemagglutination-Inhibition:赤血球凝集抑制)法、
断におけるカットオフとは全く別のものであるので注
断におけるカットオフとは全く別のものであるので注
EIA(Enzyme
Immunoassay:酵素免疫測定)法
EIA(Enzyme
Immunoassay:酵素免疫測定)法
意を要する。
意を要する。
(IgG、IgM)等があるが、CF
法と
EIA/IgM
法の値が
(IgG、IgM)等があるが、CF
法と
EIA/IgM
法の値が
本教育講演では、特に
本教育講演では、特に
HI 法と
HI 法と
EIAEIA
法について検査
法について検査
上昇するのは感染初期のみであるので、免疫の有無を
上昇するのは感染初期のみであるので、免疫の有無を
の概要と試薬の性能、データ解釈等について解説する。
の概要と試薬の性能、データ解釈等について解説する。
評価する目的には適していない。
評価する目的には適していない。
十分な経験を有する聴講者も含めて、この機会に知識
十分な経験を有する聴講者も含めて、この機会に知識
NT
法はウイルスと抗体(血清検体)を混合してか
NT
法はウイルスと抗体(血清検体)を混合してかの整理をするとともに、さらに理解を深めていただけ
の整理をするとともに、さらに理解を深めていただけ
ら培養細胞等に接種した際にみられる感染力低下を観
ら培養細胞等に接種した際にみられる感染力低下を観
れば幸いである。
れば幸いである。
察する方法で、実際の感染防御能を反映すると考えら
察する方法で、実際の感染防御能を反映すると考えら
れているが、手技が煩雑で長時間を要するため避けら
れているが、手技が煩雑で長時間を要するため避けら
れる傾向がある。
れる傾向がある。
法はウイルス抗原をコーティング(感作という)
PA
PA
法はウイルス抗原をコーティング(感作という)
したゼラチン粒子が抗体により架橋されて凝集する現
したゼラチン粒子が抗体により架橋されて凝集する現
象を利用した検査法で、比較的感度が高く、NT
法や
象を利用した検査法で、比較的感度が高く、NT
法や
HI HI
法との相関が高いと報告されている。
法との相関が高いと報告されている。
HI
法はウイルスの
HA(Hemagglutination:赤血球
HI
法はウイルスの
HA(Hemagglutination:赤血球
凝集)反応が抗体の存在により阻害されることを利用
凝集)反応が抗体の存在により阻害されることを利用
している。対象となるウイルスにより使用する血球の
している。対象となるウイルスにより使用する血球の
動物種が異なり、麻疹では入手困難なアフリカミドリ
動物種が異なり、麻疹では入手困難なアフリカミドリ
ザルの血球が必要なため近年は実施されていない。風
ザルの血球が必要なため近年は実施されていない。風
疹ではガチョウ又はヒヨコの血球を用いて広く実施さ
疹ではガチョウ又はヒヨコの血球を用いて広く実施さ
− 62 −
教育講演Ⅱ ウイルス感染防御に必要な知識を学ぼう 〜風疹・麻疹を中心に〜
院内感染対策における予防接種の実際
院内感染対策における予防接種の実際
4.院内感染対策における予防接種の実際
◎小川
◎小川
拓 1)
拓 1)
○小川 拓 1) 1)
公立大学法人
公立大学法人
奈良県立医科大学附属病院
奈良県立医科大学附属病院
感染症センター
感染症センター
公立大学法人 奈良県立医科大学附属病院 感染症センター
戦後日本におけるワクチン制度は、当初社会防衛の
戦後日本におけるワクチン制度は、当初社会防衛の
院内感染対策上有ってはならないことである。
院内感染対策上有ってはならないことである。
目的で制定された予防接種法により規定され、百日咳
目的で制定された予防接種法により規定され、百日咳
水痘帯状疱疹ウイルスは二つの病型をとる。一つは
水痘帯状疱疹ウイルスは二つの病型をとる。一つは
や腸チフスなど
や腸チフスなど
12 疾患に対し罰則付きの接種義務が
12 疾患に対し罰則付きの接種義務が小児期によく見られる水痘の病態であり、空気感染に
小児期によく見られる水痘の病態であり、空気感染に
課されていた。国内の衛生環境が改善し、昭和
課されていた。国内の衛生環境が改善し、昭和
50 年
50 年より水平伝播していく。もう一つは高齢者や細胞性免
より水平伝播していく。もう一つは高齢者や細胞性免
代に入ると、ワクチンの副反応が社会問題化するよう
代に入ると、ワクチンの副反応が社会問題化するよう
疫低下者によく見られる帯状疱疹の病態であり、通常
疫低下者によく見られる帯状疱疹の病態であり、通常
になる。そして
になる。そして
1994
1994
年には予防接種に基づく健康被
年には予防接種に基づく健康被は水疱の内溶液を介した接触感染が認められる。しか
は水疱の内溶液を介した接触感染が認められる。しか
害に対する司法判断がくだり、以後日本における予防
害に対する司法判断がくだり、以後日本における予防
し、今日では免疫抑制剤投与下や抗癌化学療法施行中
し、今日では免疫抑制剤投与下や抗癌化学療法施行中
接種制度は硬直化した時代を迎えることとなった。そ
接種制度は硬直化した時代を迎えることとなった。そ
に汎発性帯状疱疹という病態が発生することがあり、
に汎発性帯状疱疹という病態が発生することがあり、
の後
の後
2009
2009
年に発生した新型インフルエンザ
年に発生した新型インフルエンザ
この病態では空気感染を起こすことが知られている。
この病態では空気感染を起こすことが知られている。
(A/H1N1)のパンデミック以降、国民の予防接種に対
(A/H1N1)のパンデミック以降、国民の予防接種に対また、小児期に水痘に罹患せず、成人になってから水
また、小児期に水痘に罹患せず、成人になってから水
する理解が進み、Hib
する理解が進み、Hib
ワクチン、小児用肺炎球菌ワク
ワクチン、小児用肺炎球菌ワク
痘に罹患した成人水痘の患者も少なからず存在する。
痘に罹患した成人水痘の患者も少なからず存在する。
チンといった新規のワクチンが導入され、日本と世界
チンといった新規のワクチンが導入され、日本と世界
従って、医療従事者は例え小児科勤務でなくても水痘
従って、医療従事者は例え小児科勤務でなくても水痘
の間に生じたワクチンギャップが解消しつつある。
の間に生じたワクチンギャップが解消しつつある。 帯状疱疹ウイルスに暴露する可能性は十分あると考え
帯状疱疹ウイルスに暴露する可能性は十分あると考え
院内感染対策で特に重要と考えられるワクチンは、
院内感染対策で特に重要と考えられるワクチンは、
られる。
られる。
生ワクチンから麻疹・風疹・水痘帯状疱疹・ムンプス
生ワクチンから麻疹・風疹・水痘帯状疱疹・ムンプス
ムンプスは小児期に感染すると耳下腺の腫脹が見ら
ムンプスは小児期に感染すると耳下腺の腫脹が見ら
ワクチンの
ワクチンの
4 種類、不活化ワクチンからは
4 種類、不活化ワクチンからは
B 型肝炎
B 型肝炎れることが多く、おたふくかぜと呼ばれるが、ウイル
れることが多く、おたふくかぜと呼ばれるが、ウイル
ワクチンの
ワクチンの
1 種類が挙げられる。
1 種類が挙げられる。
スの特性として腺組織に親和性が強く、膵炎や精巣
スの特性として腺組織に親和性が強く、膵炎や精巣
麻疹は、2000
麻疹は、2000
年代後半には日本では大流行を経験
年代後半には日本では大流行を経験炎・卵巣炎を引き起こすことがある。ムンプスワクチ
炎・卵巣炎を引き起こすことがある。ムンプスワクチ
し、麻疹を輸出していると国外から批判が集まった。
し、麻疹を輸出していると国外から批判が集まった。
ンは定期接種に入っておらず、また小児期に罹患せぬ
ンは定期接種に入っておらず、また小児期に罹患せぬ
その後中学生・高校生を対象とした第
その後中学生・高校生を対象とした第
3 期、第
3 期、第
4 期定
4 期定
まま成人になった者も多くいる。従って、診療科を問
まま成人になった者も多くいる。従って、診療科を問
期接種が行われ、昨年日本における土着の麻疹ウイル
期接種が行われ、昨年日本における土着の麻疹ウイル
わず医療従事者は暴露の危険性があると思われる。ま
わず医療従事者は暴露の危険性があると思われる。ま
スの伝播は消滅したと発表された。しかし
スの伝播は消滅したと発表された。しかし
2014
2014
年に
年にた、不顕性感染の頻度が比較的高く、症状が無いにも
た、不顕性感染の頻度が比較的高く、症状が無いにも
入り、東南アジアからの輸入症例が急増しており、問
入り、東南アジアからの輸入症例が急増しており、問
かかわらずウイルスを排出していることがあり、院内
かかわらずウイルスを排出していることがあり、院内
題になっている。麻疹は空気感染する疾患でありきわ
題になっている。麻疹は空気感染する疾患でありきわ
感染対策において問題となる可能性がある。
感染対策において問題となる可能性がある。
めて感染力が強いため、病院に麻疹患者が来院した場
めて感染力が強いため、病院に麻疹患者が来院した場
最後に、B
最後に、B
型肝炎ワクチンも医療従事者として必須
型肝炎ワクチンも医療従事者として必須
合医療従事者が麻疹に暴露される可能性は極めて高い。
合医療従事者が麻疹に暴露される可能性は極めて高い。
である。ワクチン未接種者においては、急性肝炎のみ
である。ワクチン未接種者においては、急性肝炎のみ
ひとたび医療従事者が麻疹に感染すると、そこからさ
ひとたび医療従事者が麻疹に感染すると、そこからさ
ならず劇症化して死亡に至る可能性も考えられるから
ならず劇症化して死亡に至る可能性も考えられるから
らに別の患者や病院関係者に感染を伝播させる可能性
らに別の患者や病院関係者に感染を伝播させる可能性
である。実際に針刺し事故から医療従事者が劇症肝炎
である。実際に針刺し事故から医療従事者が劇症肝炎
があり、院内感染対策上の脅威となる。
があり、院内感染対策上の脅威となる。
を発症し死亡したという事例も起きている。
を発症し死亡したという事例も起きている。
風疹は
2013
年に
30 歳~50
歳台の男性を中心に大
風疹は
2013
年に
30 歳~50
歳台の男性を中心に大 上記の
上記の
5 種類のワクチンを接種することは院内感染
5 種類のワクチンを接種することは院内感染
きな流行が国内で認められ、社会問題となった。風疹
きな流行が国内で認められ、社会問題となった。風疹
対策において重要であるが、接種者推奨者を選定し、
対策において重要であるが、接種者推奨者を選定し、
の感染経路は飛沫感染を主とするが、成人の風疹にお
の感染経路は飛沫感染を主とするが、成人の風疹にお
ワクチンの効果を確認するため抗体検査を行うことが
ワクチンの効果を確認するため抗体検査を行うことが
いて問題となるのは、風疹の症状そのものより、むし
いて問題となるのは、風疹の症状そのものより、むし
必要になる。麻疹・風疹・水痘帯状疱疹・ムンプスの
必要になる。麻疹・風疹・水痘帯状疱疹・ムンプスの
ろ風疹流行に呼応する形で先天性風疹症候群や自然流
ろ風疹流行に呼応する形で先天性風疹症候群や自然流
4 つについては平時から職員の抗体価が十分であるか
4 つについては平時から職員の抗体価が十分であるか
産の増加が認められる点である。病院には妊娠可能な
産の増加が認められる点である。病院には妊娠可能な
確認しておくべきである。B
確認しておくべきである。B
型肝炎に関してはワクチ
型肝炎に関してはワクチ
何例の女性も出入りしており、通院する妊産婦も多数
何例の女性も出入りしており、通院する妊産婦も多数
ン接種後の
ン接種後の
HBsHBs
抗体の値が十分上昇していることを
抗体の値が十分上昇していることを
いると予測される。その中にあって医療従事者が風疹
いると予測される。その中にあって医療従事者が風疹
確認し、必要に応じて抗体価の低下がないかの確認も
確認し、必要に応じて抗体価の低下がないかの確認も
に罹患することは院内感染によって先天性風疹症候群
に罹患することは院内感染によって先天性風疹症候群
行うべきであると考えられる。
行うべきであると考えられる。
や流産といった事象がおきる可能性をはらんでおり、
や流産といった事象がおきる可能性をはらんでおり、
− 63 −
教育講演Ⅲ −血液−
9月21日(日) 13:00〜14:00 第7会場 5階 502号
テーマ:凝固検査データの見方
司会:下村 大樹(天理よろづ相談所病院 臨床病理部)
凝固検査の基礎と検査データの見方
田中 秀磨(大阪医科大学附属病院 中央検査部)
●ねらい
血液検査部門は、血球計数検査、血液像などの形態学的検査、凝固検査と大まかに分かれるが、凝固検
査だけは苦手という検査技師が多い。今日では、当直項目に加えているのが一般的であるが、凝固反応の
理論は複雑で、日頃から検体検査に従事していない人や新人が理解するには、非常にハードルが高い分野
である。今回、凝固検査の基本を学び、苦手を克服し、病態を総合的に理解出来る検査技師をめざす。
− 64 −
教育講演Ⅲ 凝固検査データの見方
凝固検査の基礎と検査データの見方
凝固検査の基礎と検査データの見方
凝固検査の基礎と検査データの見方
1) 1)
◎田中
◎田中
秀磨
秀磨
1) 1)
大阪医科大学附属病院
大阪医科大学附属病院
中央検査部
中央検査部
○田中 秀磨 大阪医科大学附属病院 中央検査部
まず、初心者の方のために、採血の手順、検体の保
まず、初心者の方のために、採血の手順、検体の保
存から取扱い、凝固検査の基礎についてわかりやすく
存から取扱い、凝固検査の基礎についてわかりやすく
解説したい。そして主にプトトロンビン時間(PT)、
解説したい。そして主にプトトロンビン時間(PT)、
活性化部分プロトロンビン時間(APTT)、フィブリ
活性化部分プロトロンビン時間(APTT)、フィブリ
ノゲン定量(Fib)、FDP、D
ノゲン定量(Fib)、FDP、D
ダイマー(DD)検査を
ダイマー(DD)検査を
中心にデータの見方や注意点について解説したい。
中心にデータの見方や注意点について解説したい。
凝固検査における検体の保存は、室温で保存するよ
凝固検査における検体の保存は、室温で保存するよ
りも、冷蔵で保存する方が好ましい。冷蔵で保存した
りも、冷蔵で保存する方が好ましい。冷蔵で保存した
場合、cold
場合、cold
activation
activation
による第Ⅶ因子の活性化により
による第Ⅶ因子の活性化により
PT の短縮が懸念されるが、これはプラスチック採血
PT の短縮が懸念されるが、これはプラスチック採血
管を使用している場合は、遺伝性血管浮腫の患者を除
管を使用している場合は、遺伝性血管浮腫の患者を除
(症例)
(症例)
けば、影響はないと考えている。APTT
けば、影響はないと考えている。APTT
においては、
においては、
時間経過とともに第Ⅷ因子が失活し、次第に延長する。
37 歳女性。股関節関節軟骨障害の診断で手術予定の
37 歳女性。股関節関節軟骨障害の診断で手術予定の
時間経過とともに第Ⅷ因子が失活し、次第に延長する。
患者の術前検査結果。PT
患者の術前検査結果。PT
活性値
活性値
106%、PT-INR
106%、PT-INR
0.97、APTT196.8
0.97、APTT196.8
秒、Fib244mg/dL、以上の結果から、
秒、Fib244mg/dL、以上の結果から、
クロスミキシングテストを実施。混和直後、2
クロスミキシングテストを実施。混和直後、2
時間
時間
37℃加温後も下に凸の典型的なパターンを示した。凝
37℃加温後も下に凸の典型的なパターンを示した。凝
固抑制第Ⅷ因子は検出せず。ループス蛇毒法も陰性。
固抑制第Ⅷ因子は検出せず。ループス蛇毒法も陰性。
抗カルジオリピン
抗カルジオリピン
IgGIgG
抗体、抗
抗体、抗
CLβ2GP1
CLβ2GP1
抗体とも
抗体とも
に陰性。凝固第Ⅷ因子活性
に陰性。凝固第Ⅷ因子活性
70%、第Ⅸ因子活性
70%、第Ⅸ因子活性
72%、
72%、
第Ⅺ因子活性
第Ⅺ因子活性
73%、第Ⅻ因子活性
73%、第Ⅻ因子活性
50%。これまでに
50%。これまでに
出血傾向のエピソードもなく、出産時にも特に異常を
出血傾向のエピソードもなく、出産時にも特に異常を
指摘されたことはない。
指摘されたことはない。
200 200
クロスミキシングテスト
クロスミキシングテスト
APTT (sec)
APTT (sec)
175 175
150 150
125 125
100 100
75 75
50 50
患
患
者
10
0
者 %
10
患 0
者 %
8
患 0%
者
患 80
者 %
5
患 0%
者
患 50
者 %
2
患 0%
者
患 20
者 %
1
患 0%
者
N 10%
P1
0
N 0%
P1
00
%
25 25
連絡先
連絡先
大阪医科大学附属病院 中央検査部
大阪医科大学附属病院 中央検査部
− 65 −
混和直後
混和直後
2時間後
2時間後
教育カンファレンス −一般−
9月20日(土) 13:20〜15:20 第6会場 5階 501号
テーマ:尿沈渣スライドカンファレンス
司会:中村 彰宏(天理よろづ相談所病院 臨床病理部)
尿沈渣スライドカンファレンス
佐伯 仁志(国立病院機構東近江総合医療センター 臨床検査部)
大沼 健一郎(国立大学法人神戸大学医学部附属病院 検査部)
●ねらい
事前フォトアンケート調査結果と問題画像をみながら尿沈渣成分の鑑別法や注意すべきポイントについ
て参加者でディスカッションしながら学び、近畿地区における尿沈渣検査のレベルアップと標準化を計る
ことを目的とした。
− 66 −
教育カンファレンス 尿沈渣スライドカンファレンス
尿沈渣スライドカンファレンス
尿沈渣スライドカンファレンス
尿沈渣スライドカンファレンス
1)
◎佐伯
仁志
◎佐伯
仁志 1)
○佐伯 仁志 1)
独立行政法人国立病院機構
東近江総合医療センター
臨床検査部
独立行政法人国立病院機構 東近江総合医療センター
臨床検査部 1)
独立行政法人国立病院機構
東近江総合医療センター 臨床検査部
2011
年 3年月に「尿沈渣検査法
2010(JCCLS
GP1 2011
3 月に「尿沈渣検査法
2010(JCCLS
GP1P4)」が日臨技から刊行された.「尿沈渣検査法
P4)」が日臨技から刊行された.「尿沈渣検査法
2010」は,尿沈渣検査における標準的検査法や
2010」は,尿沈渣検査における標準的検査法や
種々の尿沈渣成分などについて掲載されている.特
種々の尿沈渣成分などについて掲載されている.特
に尿沈渣成分に関しては,数々の写真とともに,特
に尿沈渣成分に関しては,数々の写真とともに,特
徴や鑑別点などが詳細に記載されている.それをも
徴や鑑別点などが詳細に記載されている.それをも
とに,尿沈渣成分のフォトサーベイが日臨技および
とに,尿沈渣成分のフォトサーベイが日臨技および
各都道府県技師会で広く実施されており,尿沈渣検
各都道府県技師会で広く実施されており,尿沈渣検
査の標準化に大いに役立っていると考えられる。し
査の標準化に大いに役立っていると考えられる。し
かしフォトサーベイにおいて,正答率の低い問題や
かしフォトサーベイにおいて,正答率の低い問題や
解答の分かれる問題などが存在し、近畿地区各府県
解答の分かれる問題などが存在し、近畿地区各府県
における正答率に関してもまちまちである.
における正答率に関してもまちまちである.
そこで本セッションにおいて、近畿地区における
そこで本セッションにおいて、近畿地区における
尿沈渣検査の細胞判定における弱点を検出し,さら
尿沈渣検査の細胞判定における弱点を検出し,さら
なる標準化や知識の共有化を行うために,事前フォ
なる標準化や知識の共有化を行うために,事前フォ
トアンケート調査を実施した.その結果と問題画像
トアンケート調査を実施した.その結果と問題画像
を確認しながら,正答率の低い問題を中心に尿沈渣
を確認しながら,正答率の低い問題を中心に尿沈渣
成分の鑑別法や注意すべきポイントについて,参加
成分の鑑別法や注意すべきポイントについて,参加
者と一緒にディスカッション形式で学び,近畿地区
者と一緒にディスカッション形式で学び,近畿地区
における尿沈渣の細胞判定能力のレベルアップと標
における尿沈渣の細胞判定能力のレベルアップと標
準化を行うことを目的とする.
準化を行うことを目的とする.
<例題>
<例題>
上記
3 枚の画像の尿沈渣成分は何でしょうか?
上記
3 枚の画像の尿沈渣成分は何でしょうか?
(兵庫県臨床検査技師会フォトサーベイ資料より)
(兵庫県臨床検査技師会フォトサーベイ資料より)
− 67 −
シンポジウムⅠ −輸血−
9月20日(土) 10:00〜12:00 第2会場 3階 国際会議場
テーマ:院内における輸血教育を見直そう! ~安全で過誤のない輸血実施に向けて~
司会:大前 和人(公益社団法人地域医療振興協会市立奈良病院 臨床検査室)
坊池 義浩(兵庫県赤十字血液センター 事務部学術課)
1.インシデント報告から過誤防止に関する指導と教育について ~当院での事例を中心に~
中島 志保(公立大学法人和歌山県立医科大学附属病院 輸血部)
2.看護師に対する輸血教育について 〜看護師と一体となり安全な輸血医療に繋げよう〜
吉田 正明(独立行政法人地域医療機能推進機構 滋賀病院 統括診療部)
3.医師に対する輸血教育について 〜医師への的確な情報提供による安全な輸血への取り組み〜
阿部 操(関西医科大学附属枚方病院 輸血・細胞療法部)
4.臨床検査技師に対する輸血教育について 〜大学病院における輸血教育の取り組み
万木 紀美子(京都大学医学部附属病院 輸血細胞治療部)
●ねらい
輸血医療は、現在の高度先進医療を支える重要な柱の一つです。そして、医療従事者の大きな使命は、
安全かつ適正な輸血医療を行うことです。よって、薬事法や血液法の遵守、厚生労働省が推進する「輸血
療法の実施に関する指針」及び「血液製剤の使用指針」に基づいた血液製剤の使用に努めることが重要で
す。
そのためには、輸血に関わる職種がそれぞれ専門的なスキルを高めることは当然のことですが、医師、
臨床検査技師、看護師に対する教育体制を構築することが患者に精度の高い治療を施すことに繋がりま
す。
今回のシンポジウムを通して、専門性の高い輸血医療従事者が密接に連携して、安全かつ適正な輸血が
実施されることを期待したいと思います。
− 68 −
シンポジウムⅠ 院内における輸血教育を見直そう! ~安全で過誤のない輸血実施に向けて~
インシデント報告から過誤防止に関する指導と教育について
インシデント報告から過誤防止に関する指導と教育について
1.インシデント報告から過誤防止に関する指導と教育について
~当院での事例を中心に~
~当院での事例を中心に~
~当院での事例を中心に~
1) 1)
◎中島
◎中島
志保
志保
1) 1)
公立大学法人
公立大学法人
和歌山県立医科大学附属病院
和歌山県立医科大学附属病院
輸血部
輸血部
[はじめに]
[はじめに]
良質な医療を提供する体制の確立を図るために、医
良質な医療を提供する体制の確立を図るために、医
療安全の確保は医療法で義務付けられており、各医
療安全の確保は医療法で義務付けられており、各医
療機関で安全確保のための指針策定・委員会開催・
療機関で安全確保のための指針策定・委員会開催・
従業員に対する研修等を実施し、医療従事者は可能
従業員に対する研修等を実施し、医療従事者は可能
な限り医療事故の発生を回避するという努力を継続
な限り医療事故の発生を回避するという努力を継続
していかなければならない。
していかなければならない。
インシデント報告とは情報を収集することにより、
インシデント報告とは情報を収集することにより、
アクシデントの発生原因を洗い出し、分析評価を行
アクシデントの発生原因を洗い出し、分析評価を行
い医療事故防止に繋げることを目的とするものであ
い医療事故防止に繋げることを目的とするものであ
る。
る。
今回は医療安全を通じての輸血教育として、当院で
今回は医療安全を通じての輸血教育として、当院で
のインシデント報告より輸血過誤防止策が作成され、
のインシデント報告より輸血過誤防止策が作成され、
職員間で周知徹底している事例を報告したい。
職員間で周知徹底している事例を報告したい。
[当院の概要]
[当院の概要]
病床数:800
病床数:800
床、医師数:370
床、医師数:370
名(研修医含む)、看
名(研修医含む)、看
護師数:700
護師数:700
名、手術件数:年間
名、手術件数:年間
7800
7800
件、ドクター
件、ドクター
ヘリ出動件数:年間
ヘリ出動件数:年間
400400
回、救急患者数:年間
回、救急患者数:年間
15000
15000
人 人 [当院の医療安全活動]
[当院の医療安全活動]
医療安全推進部は、専従リスクマネージャーとして
医療安全推進部は、専従リスクマネージャーとして
看護師
看護師
1 名・薬剤師
1 名・薬剤師
1 名、専任の医師が
1 名、専任の医師が
1 名、事務
1 名、事務
職員が
職員が
1 名で構成されている。
1 名で構成されている。
各部署には合計
各部署には合計
63 63
名の部署リスクマネージャー(以
名の部署リスクマネージャー(以
下下
RM)が配置されており、毎月一回
RM)が配置されており、毎月一回
RMRM
会議が開催
会議が開催
されている。部署
されている。部署
RMRM
は院内ラウンドの実施や、会
は院内ラウンドの実施や、会
議を受け、各部署にアクシデント・インシデント事
議を受け、各部署にアクシデント・インシデント事
例報告・再発防止の改善事項の周知などを行う。ま
例報告・再発防止の改善事項の周知などを行う。ま
た、所属部署からインシデント報告があれば、必要
た、所属部署からインシデント報告があれば、必要
に応じて報告者からその内容を聴取するなどして、
に応じて報告者からその内容を聴取するなどして、
改善策等を追記し医療安全推進部と所属長へ報告を
改善策等を追記し医療安全推進部と所属長へ報告を
行う。
行う。
医療安全推進部では、インシデント報告の集積・
医療安全推進部では、インシデント報告の集積・
分析・他部門との調整を行い、必要であれば院内シ
分析・他部門との調整を行い、必要であれば院内シ
ステムの変更や、院内決定事項として、所属長を通
ステムの変更や、院内決定事項として、所属長を通
じて全職員に決定事項を周知徹底させる。
じて全職員に決定事項を周知徹底させる。
また、安全に関する基礎知識やトピックスなどの
また、安全に関する基礎知識やトピックスなどの
○中島 志保 公立大学法人 和歌山県立医科大学附属病院 輸血部
内容の医療安全推進研修会を昨年度は
内容の医療安全推進研修会を昨年度は
13 13
回開催して
回開催して
おり、全職員は年
おり、全職員は年
2 回以上の受講が義務付けられて
2 回以上の受講が義務付けられて
いる。[事例]
いる。[事例]
①新病院移転後
①新病院移転後
1999
1999
年に検体の搬送にはリニアを
年に検体の搬送にはリニアを
使用するようになったが、時間帯によっては、各部
使用するようになったが、時間帯によっては、各部
署の使用が集中するため渋滞し、搬送に
署の使用が集中するため渋滞し、搬送に
60 60
分近くか
分近くか
かることもあった。救急外来からなかなか検体が到
かることもあった。救急外来からなかなか検体が到
着しないため、血液型検査が実施できず、輸血施行
着しないため、血液型検査が実施できず、輸血施行
が遅れた。
が遅れた。
②2007
②2007
年年
7 月、血液型不明患者に、救急外来で
7 月、血液型不明患者に、救急外来で
O型
O型
RCC2
RCC2
単位輸血実施、さらにもう
単位輸血実施、さらにもう
2 単位を輸血し
2 単位を輸血し
ながら手術室へ搬送された。当時の運用で、手術室
ながら手術室へ搬送された。当時の運用で、手術室
には
には
FFP
FFP
が備蓄されており、コンピューターによる
が備蓄されており、コンピューターによる
照合を行わずに輸血がされていた。手術室看護師は
照合を行わずに輸血がされていた。手術室看護師は
血液型不明時に使用する血液製剤はすべて
血液型不明時に使用する血液製剤はすべて
O 型と思
O 型と思
い込んでいたため、O
い込んでいたため、O
型型
FFP
FFP
を準備し輸血を開始し
を準備し輸血を開始し
た。その後患者同型血の
た。その後患者同型血の
B型
B型
RCC、PC
RCC、PC
が輸血された。
が輸血された。
手術終了後
手術終了後
ICU
ICU
へ入室した時に、B
へ入室した時に、B
型型
RCC
RCC
とと
O型
O型
FFP
FFP
が輸血されていることに気づき、FFP
が輸血されていることに気づき、FFP
が中止され
が中止され
た。
た。
③医師がクロスなしでは
③医師がクロスなしでは
O型
O型
RCC
RCC
しか輸血できな
しか輸血できな
いと思い込み、AB
いと思い込み、AB
型確定患者に
型確定患者に
O型
O型
RCC
RCC
を輸血し
を輸血し
た。
た。
以上のようなインシデント報告があり、それらをふ
以上のようなインシデント報告があり、それらをふ
まえて、超緊急時使用の
まえて、超緊急時使用の
O型
O型
RCC
RCC
製剤への目印と、
製剤への目印と、
緊急輸血時のフローチャートが完成した。これを用
緊急輸血時のフローチャートが完成した。これを用
いて、医学部5年生の輸血実習、研修医一年目の医
いて、医学部5年生の輸血実習、研修医一年目の医
療安全セミナー、看護師の他部署研修の時に、血液
療安全セミナー、看護師の他部署研修の時に、血液
型確定・未確定の意味、緊急輸血時の流れを説明し
型確定・未確定の意味、緊急輸血時の流れを説明し
ている。フローチャートは、各部署に配置している
ている。フローチャートは、各部署に配置している
マニュアル、研修医に配布している輸血療法マニュ
マニュアル、研修医に配布している輸血療法マニュ
アルにも記載している。輸血担当技師にもスムーズ
アルにも記載している。輸血担当技師にもスムーズ
に緊急出庫ができるよう、わかりやすいシステムの
に緊急出庫ができるよう、わかりやすいシステムの
マニュアルを作り、繰り返し説明・トレーニングし
マニュアルを作り、繰り返し説明・トレーニングし
ている。 特に他職種の職員へ輸
ている。 特に他職種の職員へ輸
血に関する指導や教育をする機会は少ないため、さ
血に関する指導や教育をする機会は少ないため、さ
さいなインシデントでも報告し事例を共有すること
さいなインシデントでも報告し事例を共有すること
がとても大切だと考えている。
がとても大切だと考えている。
連絡先:073-447-2300(2372)
連絡先:073-447-2300(2372)
− 69 −
シンポジウムⅠ 院内における輸血教育を見直そう! ~安全で過誤のない輸血実施に向けて~
看護師に対する輸血教育について
看護師に対する輸血教育について
2.看護師に対する輸血教育について
〜看護師と一体となり安全な輸血医療に繋げよう〜
看護師と一体となり安全な輸血医療に繋げよう
看護師と一体となり安全な輸血医療に繋げよう
1) 1)
◎吉田
◎吉田
正明正明
○吉田 正明 1) 1)
独立行政法人
独立行政法人
地域医療機能推進機構
地域医療機能推進機構
滋賀病院
滋賀病院
統括診療部
統括診療部
独立行政法人 地域医療機能推進機構 滋賀病院 統括診療部
【はじめに】
【はじめに】
2)学会認定・自己血看護師:自己血といえども取り
2)学会認定・自己血看護師:自己血といえども取り
平成
平成
11 年の「輸血療法の実施に関する指針」によ
11 年の「輸血療法の実施に関する指針」によ
違え過誤や細菌汚染が起こりうる.また,採血時の副
違え過誤や細菌汚染が起こりうる.また,採血時の副
り輸血業務の一元管理が推奨され,近年では多くの施
り輸血業務の一元管理が推奨され,近年では多くの施
反応(血管迷走神経反射等)も問題となる.
反応(血管迷走神経反射等)も問題となる.
設において,検査技師が輸血全般を管理する部門とし
設において,検査技師が輸血全般を管理する部門とし
自己血の安全性を向上させることを目的として平成
自己血の安全性を向上させることを目的として平成
て輸血業務の一元管理業務に従事している.輸血管理
て輸血業務の一元管理業務に従事している.輸血管理
20 年に発足した.
20 年に発足した.
部門は,輸血検査のほか血液製剤を管理し,輸血療法
部門は,輸血検査のほか血液製剤を管理し,輸血療法
3)学会認定・アフェレーシスナース:末梢血造血幹
3)学会認定・アフェレーシスナース:末梢血造血幹
全般の管理体制を構築・検討するなど,輸血に関わる
全般の管理体制を構築・検討するなど,輸血に関わる
細胞採集時のドナーにはアフェレーシスに伴う副反応
細胞採集時のドナーにはアフェレーシスに伴う副反応
多くの業務を担っている.
多くの業務を担っている.
(クエン酸中毒等)や造血薬剤による副反応(造血障
(クエン酸中毒等)や造血薬剤による副反応(造血障
しかし,輸血開始前の患者の状態確認や同意書の確
しかし,輸血開始前の患者の状態確認や同意書の確
害等)が起こりうる.
害等)が起こりうる.
認や輸血実施中・終了後の患者の状態確認や副作用の
認や輸血実施中・終了後の患者の状態確認や副作用の
非血縁者ドナーからのアフェレーシスによる造血幹
非血縁者ドナーからのアフェレーシスによる造血幹
対応など,ベッドサイドで発生する諸問題を把握し,
対応など,ベッドサイドで発生する諸問題を把握し,
細胞採集開始に合わせ平成
細胞採集開始に合わせ平成
22 年に発足した.
22 年に発足した.
対応するのは困難である.
対応するのは困難である.
これらの輸血に関する認定資格については知らない
これらの輸血に関する認定資格については知らない
そのため,特に最も患者に近いところで輸血療法に
そのため,特に最も患者に近いところで輸血療法に
看護師も多いため,施設内において周知させ,取得を
看護師も多いため,施設内において周知させ,取得を
関与する看護師には,輸血に関する正しい知識が求め
関与する看護師には,輸血に関する正しい知識が求め
勧めることも必要と思われる.
勧めることも必要と思われる.
られる.輸血医療の安全性を向上させるためには,検
られる.輸血医療の安全性を向上させるためには,検
【技師会としての活動】
【技師会としての活動】
査技師と看護師は輸血に対して共通の意識を持ち,協
査技師と看護師は輸血に対して共通の意識を持ち,協
検査技師の輸血に関する研修活動は,新入職者や日
検査技師の輸血に関する研修活動は,新入職者や日
力する必要があると思われる.
力する必要があると思われる.
当直者を対象とした基礎的な内容から高度に専門的な
当直者を対象とした基礎的な内容から高度に専門的な
【当院の看護師教育の体制】
【当院の看護師教育の体制】
内容にわたり,様々な研修会が開催されている.
内容にわたり,様々な研修会が開催されている.
クリニカルラダー・レベルⅠの看護師に対して,入
クリニカルラダー・レベルⅠの看護師に対して,入
対して,看護師の輸血に関する研修活動は,自施設
対して,看護師の輸血に関する研修活動は,自施設
職半年~1
職半年~1
年未満の時期に研修会を実施している.認
年未満の時期に研修会を実施している.認
内での研修以外は未だ少数であり,初級な研修会とし
内での研修以外は未だ少数であり,初級な研修会とし
定検査技師と認定看護師が担当し,それぞれ検査用の
定検査技師と認定看護師が担当し,それぞれ検査用の
て一般的な薬剤点滴の教育と同列に扱われる場合が多
て一般的な薬剤点滴の教育と同列に扱われる場合が多
検体採血から血液製剤の払い出しまでの手順と輸血
検体採血から血液製剤の払い出しまでの手順と輸血く見受けられる.
く見受けられる.
前・中・後の手順を講習している.しかし,経験を積
前・中・後の手順を講習している.しかし,経験を積
滋賀県臨床検査技師会
滋賀県臨床検査技師会
輸血細胞治療部門では,輸
輸血細胞治療部門では,輸
んだ看護師や他院から転入職の看護師に対しての定期
んだ看護師や他院から転入職の看護師に対しての定期
血をチーム医療として考えることを目的として,他の
血をチーム医療として考えることを目的として,他の
的な研修活動が出来ていないことが問題であった.
的な研修活動が出来ていないことが問題であった.職種(特に看護師)と交流する研修会を平成
職種(特に看護師)と交流する研修会を平成
23 年度
23 年度
そのため,平成
そのため,平成
13 年より輸血を実施する看護師を
13 年より輸血を実施する看護師を
より開催している.
より開催している.
対象とした院内ラウンドを開始した.監査形式ではな
対象とした院内ラウンドを開始した.監査形式ではな
【おわりに】
【おわりに】
く,輸血実施時に手順を確認し,問題点や修正すべき
く,輸血実施時に手順を確認し,問題点や修正すべき
前述のように,近年の輸血事故に繋がる過誤は,血
前述のように,近年の輸血事故に繋がる過誤は,血
点はその場で指摘している.その後,輸血療法委員会
点はその場で指摘している.その後,輸血療法委員会
液製剤が検査技師から看護師に払い出された後で多く
液製剤が検査技師から看護師に払い出された後で多く
にて報告し情報の共有化を図っている.
にて報告し情報の共有化を図っている.
発生しているにも関わらず,看護師の輸血に対する意
発生しているにも関わらず,看護師の輸血に対する意
【認定看護師制度】
【認定看護師制度】
識は高いとは言えない.
識は高いとは言えない.
1)学会認定・臨床輸血看護師:ベッドサイドでの患
1)学会認定・臨床輸血看護師:ベッドサイドでの患
看護師に対する教育は必要であるが,輸血管理部門
看護師に対する教育は必要であるが,輸血管理部門
者取り違えの輸血過誤は,患者認証システム等の普及
者取り違えの輸血過誤は,患者認証システム等の普及
として指導や指示をするだけでは,思うように理解が
として指導や指示をするだけでは,思うように理解が
により減少しているが絶無は困難である.また,正し
により減少しているが絶無は困難である.また,正し
得られないことも多い.検査技師と看護師が共通の意
得られないことも多い.検査技師と看護師が共通の意
く検査され適合する血液でも重症アレルギーやショッ
く検査され適合する血液でも重症アレルギーやショッ
識を持つことが出来るような教育活動を実施し,チー
識を持つことが出来るような教育活動を実施し,チー
ク反応は発生し,予測は難しい.
ク反応は発生し,予測は難しい.
ム医療として活動することが,安全な輸血医療に繋が
ム医療として活動することが,安全な輸血医療に繋が
ベッドサイドでより的確で安全な輸血を普及させ,
ベッドサイドでより的確で安全な輸血を普及させ,
ると思われる.
ると思われる.
副作用が発生した場合には敏速に対応が可能となる看
副作用が発生した場合には敏速に対応が可能となる看
(連絡先:077-537-3101
(連絡先:077-537-3101
内線内線
8205)
8205)
護の普及を目的として平成
護の普及を目的として平成
22 年に発足した.
22 年に発足した.
− 70 −
シンポジウムⅠ 院内における輸血教育を見直そう! ~安全で過誤のない輸血実施に向けて~
医師に対する輸血教育について
医師に対する輸血教育について
3.医師に対する輸血教育について
〜医師への的確な情報提供による安全な輸血への取り組み〜
医師への的確な情報提供による安全な輸血への取り組み
医師への的確な情報提供による安全な輸血への取り組み
◎阿部
◎阿部
操 1)操 1)
1) 1)
関西医科大学附属枚方病院
関西医科大学附属枚方病院
輸血・細胞療法部
輸血・細胞療法部
○阿部 操 関西医科大学附属枚方病院 輸血・細胞療法部
【はじめに】
【はじめに】
2)医療安全講演会
2)医療安全講演会
当院は
当院は
20062006
年に開院した医学部附属の大学病院で
年に開院した医学部附属の大学病院で
院内で定期的に開催される全職員を対象とした医療安
院内で定期的に開催される全職員を対象とした医療安
ある。当輸血・細胞療法部は医師
ある。当輸血・細胞療法部は医師
2 名(部長・副部長)
2 名(部長・副部長)
全講演会の中で、輸血療法に関する講演や事例を提示
全講演会の中で、輸血療法に関する講演や事例を提示
、認定輸血検査技師
4 名と専従の臨床検査技師
3 名に
、認定輸血検査技師
4 名と専従の臨床検査技師
3 名に
し、輸血過誤を回避するためにはどうすべきかディス
し、輸血過誤を回避するためにはどうすべきかディス
より業務を行っている。輸血・細胞療法部の仕事とし
より業務を行っている。輸血・細胞療法部の仕事とし
カッションを交えた講演などを実施している。
カッションを交えた講演などを実施している。
ては、日常業務、院内外における教育的な活動、業務
ては、日常業務、院内外における教育的な活動、業務
3)コンサルテーション
3)コンサルテーション
に直結する研究活動(関連学会への積極的な参加など)
に直結する研究活動(関連学会への積極的な参加など)
輸血検査の結果や輸血用血液製剤の選択、依頼内容な
輸血検査の結果や輸血用血液製剤の選択、依頼内容な
がある。さらに医学部附属病院という立場から、
がある。さらに医学部附属病院という立場から、 ど、医師へのコンサルテーションが重要になる事があ
ど、医師へのコンサルテーションが重要になる事があ
我々技師も医学生に対する輸血教育の一部を医師と共
我々技師も医学生に対する輸血教育の一部を医師と共
る。但し、しっかりとした知識と経験を持ち、
る。但し、しっかりとした知識と経験を持ち、
に担当している。一方、医師に対しては、検査結果の
に担当している。一方、医師に対しては、検査結果の
EBM
を実践するという事から、その責任は重く、適
EBM
を実践するという事から、その責任は重く、適
解釈、輸血療法に関するコンサルテーション、安全な
解釈、輸血療法に関するコンサルテーション、安全な
切な文献や資料を準備し、必要な時は血液センターや
切な文献や資料を準備し、必要な時は血液センターや
輸血に必要な情報提供などの責務を果たすことが重要
輸血に必要な情報提供などの責務を果たすことが重要
他施設に協力を求めることもある。
他施設に協力を求めることもある。
である。輸血療法は最も頻繁に実施される移植であり、
である。輸血療法は最も頻繁に実施される移植であり、
4)輸血療法委員会
4)輸血療法委員会
他の細胞療法も含めて病院全体の医療安全と深く関わ
他の細胞療法も含めて病院全体の医療安全と深く関わ
輸血療法によって生じた問題は、症例毎に輸血療法委
輸血療法によって生じた問題は、症例毎に輸血療法委
っている。今回我々は、特に医師をターゲットとした
っている。今回我々は、特に医師をターゲットとした
員会で検討することが重要である。例えば輸血の適否
員会で検討することが重要である。例えば輸血の適否
輸血教育の在り方や方法について、当院の現状および
輸血教育の在り方や方法について、当院の現状および
が問われる症例、稀な症例、インシデント事例、緊急
が問われる症例、稀な症例、インシデント事例、緊急
今後の課題について報告する。
今後の課題について報告する。
対応や大量輸血時の問題点、アルブミン製剤の使用な
対応や大量輸血時の問題点、アルブミン製剤の使用な
【医学生(将来の医師)への教育】
【医学生(将来の医師)への教育】
ど委員会を通すことで、医師の理解を得ることが多い
ど委員会を通すことで、医師の理解を得ることが多い
医学生への教育は、6~8
名/班に分けて研修(実
医学生への教育は、6~8
名/班に分けて研修(実と考えている。 と考えている。 技と講義)を実施している。1
班 150
分で、ABO
血 血 5)HP
技と講義)を実施している。1
班 150
分で、ABO
5)HP
による啓蒙活動
による啓蒙活動
液型のオモテ検査、ウラ検査、Rh(D)血液型および交
液型のオモテ検査、ウラ検査、Rh(D)血液型および交
輸血・細胞療法部では
HP を開設しており、院内の輸
輸血・細胞療法部では
HP を開設しており、院内の輸
差適合試験の生理食塩液法を行い、ここでは
ABOABO
異 異
差適合試験の生理食塩液法を行い、ここでは
血療法に関する規程や輸血療法委員会の議事録だけで
血療法に関する規程や輸血療法委員会の議事録だけで
型輸血を防止する重要性を理解することを目的として
型輸血を防止する重要性を理解することを目的として
なく、臨床からのよくある問合せとそれに対する回答
なく、臨床からのよくある問合せとそれに対する回答
いる。また、最低限必要と思われる検査の原理を知り、
いる。また、最低限必要と思われる検査の原理を知り、
なども掲載している。また、厚生労働省や各種学会に
なども掲載している。また、厚生労働省や各種学会に
輸血療法の基礎的知識、および輸血過誤を回避するた
輸血療法の基礎的知識、および輸血過誤を回避するた
より定められた輸血に関するガイドラインやマニュア
より定められた輸血に関するガイドラインやマニュア
めに、マニュアルやガイドラインを周知徹底する重要
めに、マニュアルやガイドラインを周知徹底する重要
ルおよび血液センターから発行された資料なども掲載
ルおよび血液センターから発行された資料なども掲載
性についても講義している。
性についても講義している。
し、輸血全般に関する啓蒙活動を行っている。
し、輸血全般に関する啓蒙活動を行っている。
【医師への教育】
【医師への教育】
【まとめおよび今後の課題】
【まとめおよび今後の課題】
1)新入職オリエンテーション
1)新入職オリエンテーション
日々検査に携わる技師が医学生への教育の一部を担う
日々検査に携わる技師が医学生への教育の一部を担う
医師に対する教育は、毎年実施される新入職オリエン
医師に対する教育は、毎年実施される新入職オリエン
ことは有意義と思われる。その一方、新入職の医師に
ことは有意義と思われる。その一方、新入職の医師に
テーションから開始する。輸血に割り当てられた所要
テーションから開始する。輸血に割り当てられた所要
対するオリエンテーションで、我々が担当する時間は
対するオリエンテーションで、我々が担当する時間は
時間は各班
80 分である。内容は、当大学だけでなく
時間は各班
80 分である。内容は、当大学だけでなく
80 分と非常に短いのが現状である。また、途中入職
80 分と非常に短いのが現状である。また、途中入職
他大学から入職する医師もいるため、医学生と同様の
他大学から入職する医師もいるため、医学生と同様の
や関連病院から異動した医師に対するオリエンテーシ
や関連病院から異動した医師に対するオリエンテーシ
実技を行い、輸血療法の基礎的知識に重点をおいた講
実技を行い、輸血療法の基礎的知識に重点をおいた講
ョンが実施されていないため、今後、どのようなフォ
ョンが実施されていないため、今後、どのようなフォ
義を実施している。また、当院では電子カルテを導入
義を実施している。また、当院では電子カルテを導入
ローをしていくかが課題である。さらに、医師に対す
ローをしていくかが課題である。さらに、医師に対す
しているため、輸血に関する依頼方法についての簡単
しているため、輸血に関する依頼方法についての簡単
る的確なコンサルテーションや情報提供のためには、
る的確なコンサルテーションや情報提供のためには、
な操作説明も実施する。なお、医学生および新入職へ
な操作説明も実施する。なお、医学生および新入職へ
技師が輸血療法に対する最新の情報を収集し、スキル
技師が輸血療法に対する最新の情報を収集し、スキル
の研修に関しては、認定輸血検査技師が担当している。
の研修に関しては、認定輸血検査技師が担当している。
アップにつなげていくことも重要であると思われる。
アップにつなげていくことも重要であると思われる。
連絡先 072-804-0101 内線(3350)
連絡先 072-804-0101 内線(3350)
− 71 −
シンポジウムⅠ 院内における輸血教育を見直そう! ~安全で過誤のない輸血実施に向けて~
臨床検査技師に対する輸血教育について
臨床検査技師に対する輸血教育について
4.臨床検査技師に対する輸血教育について
〜大学病院における輸血教育の取り組み〜
大学病院における輸血教育の取り組み
大学病院における輸血教育の取り組み
1) 1)
◎万木
◎万木
紀美子
紀美子
1) 1)
京都大学医学部附属病院
京都大学医学部附属病院
輸血細胞治療部
輸血細胞治療部
○万木 紀美子 京都大学医学部附属病院 輸血細胞治療部
安全な輸血を行うためには、輸血検査と製剤管理を
安全な輸血を行うためには、輸血検査と製剤管理を
説明(90
説明(90
分)および
分)および
5 時間×2
5 時間×2
回の実習をおこなってい
回の実習をおこなってい
行う輸血担当部門の臨床検査技師のみならず、輸血の
行う輸血担当部門の臨床検査技師のみならず、輸血の
る。また、臨地実習として
る。また、臨地実習として
2~32~3
名を名を
16 組×2
16 組×2
日間受
日間受
現場にいる医師や看護師に対する教育・アナウンスが
現場にいる医師や看護師に対する教育・アナウンスが
け入れている。検査業務の
け入れている。検査業務の
24 時間体制は今や常識で
24 時間体制は今や常識で
重要である。
重要である。
あり、当直業務として輸血検査を行う可能性も非常に
あり、当直業務として輸血検査を行う可能性も非常に
当院では、平成
当院では、平成
14 年
144年
月より検査部、病理部、輸
4 月より検査部、病理部、輸
高いことを伝えている。将来病院勤務を希望する学生
高いことを伝えている。将来病院勤務を希望する学生
血細胞治療部の検査技師による
血細胞治療部の検査技師による
24 時間体制の輸血業
24 時間体制の輸血業
の実習に対する取り組みは非常に熱心であり、十分な
の実習に対する取り組みは非常に熱心であり、十分な
務を開始している。日中は輸血専任の検査技師により
務を開始している。日中は輸血専任の検査技師により
実習が行えるよう取り組んでいきたいと考えている。
実習が行えるよう取り組んでいきたいと考えている。
業務を行い、当直業務は、輸血専任検査技師
業務を行い、当直業務は、輸血専任検査技師
3 名を含
3 名を含
⑤医学部医学科の学生はポリクリの一部として輸血
⑤医学部医学科の学生はポリクリの一部として輸血
む 27
む名の検査技師が担当している。当直者の殆どが
27 名の検査技師が担当している。当直者の殆どが
検査を実施している。5~6
検査を実施している。5~6
名 20
名組×2
20 組×2
時間時間
30 分で、
30 分で、
輸血選任ではない検査技師で、当直回数も月
輸血選任ではない検査技師で、当直回数も月
1.5 回と
1.5 回と
血液型と交差適合試験を実施している。近い将来研修
血液型と交差適合試験を実施している。近い将来研修
いう状況にある。
いう状況にある。
医として現場に出るため、輸血に関するルールなど小
医として現場に出るため、輸血に関するルールなど小
当院における輸血教育の対象としては①輸血業務
当院における輸血教育の対象としては①輸血業務グループで直に話せるより機会であると考えている。
グループで直に話せるより機会であると考えている。
および輸血当直業務に携わる臨床検査技師、②看護
および輸血当直業務に携わる臨床検査技師、②看護 教育の方法として、多人数に対しての講義形式であ
教育の方法として、多人数に対しての講義形式であ
師の中でも業務経験のあるリーダー、③採用直後の
師の中でも業務経験のあるリーダー、③採用直後のったり、少人数での実技を中心とした講習会であった
ったり、少人数での実技を中心とした講習会であった
研修医、④医学部人間健康学科検査技術科学専攻の
研修医、④医学部人間健康学科検査技術科学専攻のりと対照者によって異なるが、講演や実習を担当して
りと対照者によって異なるが、講演や実習を担当して
将来病院検査部門で業務を行う可能性のある学生、
将来病院検査部門で業務を行う可能性のある学生、いてもっとも反応がよかったと感じたものが研修医を
いてもっとも反応がよかったと感じたものが研修医を
⑤医学科の学生などである。過去には、⑥研修を終
⑤医学科の学生などである。過去には、⑥研修を終終えて他病院に赴任する医師の実技講習会であった。
終えて他病院に赴任する医師の実技講習会であった。
えて他病院に赴任する医師の中で希望者に輸血講習会
えて他病院に赴任する医師の中で希望者に輸血講習会
血液型検査と交差適合試験の実技を中心に実施したが、
血液型検査と交差適合試験の実技を中心に実施したが、
を実施していた。その他、輸血の多い診療科や手術部
を実施していた。その他、輸血の多い診療科や手術部
常日頃からの輸血に対する疑問点に対して活発な質問
常日頃からの輸血に対する疑問点に対して活発な質問
等からの依頼に基づき随時実施している。産科につい
等からの依頼に基づき随時実施している。産科につい
があった。不規則抗体に対する質問も多く、また検査
があった。不規則抗体に対する質問も多く、また検査
ては、他院からの緊急搬送患者など血液型不明の緊急
ては、他院からの緊急搬送患者など血液型不明の緊急
技師にとっては臨床現場の情報を得やすく、双方に有
技師にとっては臨床現場の情報を得やすく、双方に有
輸血を必要とする患者が多いため、緊急輸血のシミュ
輸血を必要とする患者が多いため、緊急輸血のシミュ
意義であると感じられた。
意義であると感じられた。
レーションを中心に輸血教育を実施している。
レーションを中心に輸血教育を実施している。
それぞれの職種に対して、業務に入る前のオリエン
それぞれの職種に対して、業務に入る前のオリエン
各対象に対する輸血教育の内容は以下のとおりであ
各対象に対する輸血教育の内容は以下のとおりであ
テーション、実際に業務を行ってからの研修、リーダ
テーション、実際に業務を行ってからの研修、リーダ
る。る。
ーとしての研修というように、それぞれの段階を踏ん
ーとしての研修というように、それぞれの段階を踏ん
①新規に輸血当直となる検査技師は
①新規に輸血当直となる検査技師は
3 時間×3
3 時間×3
回、初
回、初
でのトレーニングが必要と考える。現在、輸血当直業
でのトレーニングが必要と考える。現在、輸血当直業
回の日勤業務を輸血部技師とともに実施し、可能な限
回の日勤業務を輸血部技師とともに実施し、可能な限
務を行う検査技師へ教育は当直開始前の研修のみで、
務を行う検査技師へ教育は当直開始前の研修のみで、
り 2り
回目の日勤時に輸血部スタッフが部内でスタンバ
2 回目の日勤時に輸血部スタッフが部内でスタンバ
その後は業務の変更点などのお知らせのみとなってい
その後は業務の変更点などのお知らせのみとなってい
イする体制を取っている。
イする体制を取っている。
る。統一した業務を行っていくために、「新着情報」
る。統一した業務を行っていくために、「新着情報」
②看護師では、リーダーに対しての
②看護師では、リーダーに対しての
2 時間程度の講
2 時間程度の講をファイルして確認のサイン欄をもうけたり、メーリ
をファイルして確認のサイン欄をもうけたり、メーリ
義を行っている。看護師の新人研修では、リーダーが
義を行っている。看護師の新人研修では、リーダーが
ングリストで担当者全員に配信したりと対応を取って
ングリストで担当者全員に配信したりと対応を取って
講義・実技による指導を行っている。
講義・実技による指導を行っている。
いるが、今後は、定期的に業務の問題点などの講義を
いるが、今後は、定期的に業務の問題点などの講義を
③研修医オリエンテーションは
③研修医オリエンテーションは
15 分間のスライド説
15 分間のスライド説
行っていきたいと考えている。
行っていきたいと考えている。
明と短い時間ではあるが、血液型のダブルチェック
明と短い時間ではあるが、血液型のダブルチェック
(別採血検体による)の必要性など検査オーダーの方
(別採血検体による)の必要性など検査オーダーの方
法や、適正な製剤オーダーにポイントを絞った内容を
法や、適正な製剤オーダーにポイントを絞った内容を
説明している。
説明している。
④医学部人間健康学科検査技術科学専攻の学生に対
④医学部人間健康学科検査技術科学専攻の学生に対
しては、精度管理の授業枠の中で輸血検査についての
しては、精度管理の授業枠の中で輸血検査についての
− 72 −
シンポジウムⅡ −チーム医療−
9月20日(土) 10:00~12:00 第3会場 4階 401号
テーマ:21世紀のチーム医療を担う臨床検査技師
司会:荻野 和大(三菱京都病院 臨床検査科)
中筋 幸司(宝塚市立病院 中央検査室)
1.チーム医療が行ってきた活動の歴史と未来への展望
〜感染対策(ICT)部門 実践セミナーの総括〜
小森 敏明(京都府立医科大学附属病院 臨床検査部)
2.21世紀を担う臨床検査技師実践セミナー(糖尿病療養指導部門)総括と課題
〜若い世代にも魅力ある糖尿病療養指導士にするために〜
小宮山 恭弘(JR大阪鉄道病院 臨床検査室)
3.チーム医療実践セミナー NST部門の歩みと今後
畑中 徳子(天理よろづ相談所病院 臨床検査部)
4.全体の総括及び未来への展望としてICT、DM、NST以外の分野での臨床検査技師の活動紹介
〜検査説明、内視鏡、POCTなどについて〜
竹浦 久司(きつこう会多根総合病院 中央検査部)
●ねらい
チーム医療における臨床検査技師の質の向上と検査業務の職域拡大を目指す管理者と実践するリーダー
技師の育成を目指しチーム医療実践セミナーを開催してきた。チーム医療へ参画することから始まり、実
践・応用などについては他職種からの講師と多くのファシリテーターと共にスモールグループディスカッ
ションを行った。この過去8年間のチーム医療実践セミナーが行ってきた活動の歴史について各企画運営
委員が総括を行い、活動の継続と未来への展望(臨床検査技師が関わる新しいチーム医療のかたち)につ
いて考えるシンポジウムにしたい。
− 73 −
シンポジウムⅡ 21世紀のチーム医療を担う臨床検査技師
チーム医療が行ってきた活動の歴史と未来への展望
チーム医療が行ってきた活動の歴史と未来への展望
1.チーム医療が行ってきた活動の歴史と未来への展望
〜感染対策(ICT)部門 実践セミナーの総括〜
感染対策(ICT)部門 実践セミナーの総括
感染対策(ICT)部門 実践セミナーの総括
1) 1)
◎小森
◎小森
敏明敏明
1) 1)
京都府立医科大学附属病院
京都府立医科大学附属病院
臨床検査部
臨床検査部
○小森 敏明 京都府立医科大学附属病院 臨床検査部
1.実践セミナー企画の背景
1.実践セミナー企画の背景
の方向修正である。シンポジウムでは実際の運営を紹
の方向修正である。シンポジウムでは実際の運営を紹
チーム医療実践セミナーは
チーム医療実践セミナーは
20052005
年の第
年の第
45 回医学検
45 回医学検
介する。
介する。
査学会近畿支部総会(滋賀県)から始まった。テキス
査学会近畿支部総会(滋賀県)から始まった。テキス
3)受講者の評価
3)受講者の評価
トの巻頭には、当時の近畿臨床検査技師会の立脇憲一
トの巻頭には、当時の近畿臨床検査技師会の立脇憲一
毎回、セミナー修了時に受講者に対してアンケート
毎回、セミナー修了時に受講者に対してアンケート
会長が、「これからの医療は、(中略)さまざまな医
会長が、「これからの医療は、(中略)さまざまな医
調査を実施している。実例を交えた受講者参加型のワ
調査を実施している。実例を交えた受講者参加型のワ
療専門職スタッフが協力して患者様を中心とした診療
療専門職スタッフが協力して患者様を中心とした診療
ークショップを企画しているので受講生の理解度は比
ークショップを企画しているので受講生の理解度は比
を実践していくことが不可欠であるとともにその必要
を実践していくことが不可欠であるとともにその必要
較的良好である。受講者からは、「セミナーを現場で
較的良好である。受講者からは、「セミナーを現場で
性が強く叫ばれています。私ども臨床検査技師におい
性が強く叫ばれています。私ども臨床検査技師におい
役立てたい。現在やっていなくてもすごく理解できた
役立てたい。現在やっていなくてもすごく理解できた
ても、(中略)従来の責務に加えて、今後はさらに患
ても、(中略)従来の責務に加えて、今後はさらに患
ように思う。いろいろ経験ができ大変勉強になった。
ように思う。いろいろ経験ができ大変勉強になった。
者様のいる臨床の現場に出向いて診断・治療・予防に
者様のいる臨床の現場に出向いて診断・治療・予防に
とてもよく企画を練っていただいて充実した内容であ
とてもよく企画を練っていただいて充実した内容であ
直接貢献できる“診療参画型臨床検査技師”への切望
直接貢献できる“診療参画型臨床検査技師”への切望
った。」などの意見が寄せられた。
った。」などの意見が寄せられた。
に答える必要があります。」と述べられている。
に答える必要があります。」と述べられている。
このような背景のもと、現在チーム医療を実践して
このような背景のもと、現在チーム医療を実践して
3.実践セミナーの効果
3.実践セミナーの効果
いる、あるいは実践しようと考えている技師を対象に、
いる、あるいは実践しようと考えている技師を対象に、
明日から現場で使える知識や対策を伝達できた。ワ
明日から現場で使える知識や対策を伝達できた。ワ
実践形式のセミナー
3 部門(感染対策(ICT)部門、糖
実践形式のセミナー
3 部門(感染対策(ICT)部門、糖ークショップでは、はじめの数年は討議が停滞して実
ークショップでは、はじめの数年は討議が停滞して実
尿病指導(DM)部門、栄養サポートチーム(NST)部門)
尿病指導(DM)部門、栄養サポートチーム(NST)部門)
務委員からの助言が必要な場合もあったが、年々グル
務委員からの助言が必要な場合もあったが、年々グル
が企画された。2013
年までの
9 年間、実践セミナー
が企画された。2013
年までの
9 年間、実践セミナーープ内討議が活発になり、指定した時間では不十分な
ープ内討議が活発になり、指定した時間では不十分な
が企画・運営され、ある程度の成果が認められた。
が企画・運営され、ある程度の成果が認められた。場合や、企画側の準備した解答以上の考察を発表する
場合や、企画側の準備した解答以上の考察を発表する
グループもあった。また、討議時間は短かったが、グ
グループもあった。また、討議時間は短かったが、グ
2.感染対策部門の活動
2.感染対策部門の活動
ループ内で情報交換や情報共有が図れた。
ループ内で情報交換や情報共有が図れた。
1)実践セミナーの企画・運営概要
1)実践セミナーの企画・運営概要
医師や看護師にも講師をお願いし、チーム医療の中
医師や看護師にも講師をお願いし、チーム医療の中
感染対策部門は技師が感染対策チーム(ICT)に参画
感染対策部門は技師が感染対策チーム(ICT)に参画での技師の役割や技師に対する要望も学ぶことができ
での技師の役割や技師に対する要望も学ぶことができ
するきっかけになるような、また、すでに参画してい
するきっかけになるような、また、すでに参画してい
た。さらに、受講者のみでなく、実務委員にも研修効
た。さらに、受講者のみでなく、実務委員にも研修効
る技師には今後の活動に示唆を与えるような研修会に
る技師には今後の活動に示唆を与えるような研修会に
果が大きかった。
果が大きかった。
することを目的とした。セミナー運営は、ICT
活動に
することを目的とした。セミナー運営は、ICT
活動に
役立つテーマを毎年話し合い、実務委員には支部総会
役立つテーマを毎年話し合い、実務委員には支部総会
4.チーム医療の未来への展望
4.チーム医療の未来への展望
開催府県の微生物研究班を中心にお手伝い頂いた。テ
開催府県の微生物研究班を中心にお手伝い頂いた。テ
チーム医療とは「多様な医療スタッフが、個々の高
チーム医療とは「多様な医療スタッフが、個々の高
ーマに即した講師の選定やテキスト作成を工夫し、感
ーマに即した講師の選定やテキスト作成を工夫し、感
い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担
い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担
染対策事例の症例提示や討議時間を考慮した設問を考
染対策事例の症例提示や討議時間を考慮した設問を考
しつつ互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に
しつつ互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に
えた。解説スライドや詳細な解説書作成にも時間をか
えた。解説スライドや詳細な解説書作成にも時間をか
対応した医療を提供すること」と定義されている(チ
対応した医療を提供すること」と定義されている(チ
け、セミナーを組み上げた。
け、セミナーを組み上げた。
ーム医療の推進に関する検討会報告書:厚生労働省医
ーム医療の推進に関する検討会報告書:厚生労働省医
2)受講者参加型のワークショップ
2)受講者参加型のワークショップ
政局医事課,H22.3.19)。診療の現場に出向いて診断・
政局医事課,H22.3.19)。診療の現場に出向いて診断・
セミナーの中心は受講者参加型のワークショップで
セミナーの中心は受講者参加型のワークショップで
治療・予防に直接貢献できる「診療参画型検査技師」
治療・予防に直接貢献できる「診療参画型検査技師」
ある。まず受講者を
6〜86〜8
名のグループに分け、グル
ある。まず受講者を
名のグループに分け、グル
を育成し、チーム医療を推進させることは臨床検査技
を育成し、チーム医療を推進させることは臨床検査技
ープ内で責任者、記録者、発表者を決める。次に提示
ープ内で責任者、記録者、発表者を決める。次に提示
師会の使命である。今後は技師以外の職種も加え、チ
師会の使命である。今後は技師以外の職種も加え、チ
された感染対策の事例と設問を各グループで討議する。
された感染対策の事例と設問を各グループで討議する。
ーム医療実践セミナーのような受講者参加型研修会が
ーム医療実践セミナーのような受講者参加型研修会が
最後に設問ごとに回答をまとめ、発表するという運営
最後に設問ごとに回答をまとめ、発表するという運営
継続されることが望まれる。
継続されることが望まれる。
方法である。実務委員の役割はグループ内のすべての
方法である。実務委員の役割はグループ内のすべての
(連絡先:075-251-5630)
(連絡先:075-251-5630)
受講者が発言できるように配慮することと、討議内容
受講者が発言できるように配慮することと、討議内容
− 74 −
シンポジウムⅡ 21世紀のチーム医療を担う臨床検査技師
21 世紀を担う臨床検査技師実践セミナー(糖尿病療養指導部門)総括と課題
21 世紀を担う臨床検査技師実践セミナー(糖尿病療養指導部門)総括と課題
2.21世紀を担う臨床検査技師実践セミナー(糖尿病療養指導部門)総括と課題
〜若い世代にも魅力ある糖尿病療養指導士にするために〜
若い世代にも魅力ある糖尿病療養指導士にするために
若い世代にも魅力ある糖尿病療養指導士にするために
1) 1)
◎小宮山
◎小宮山
恭弘恭弘
1) 1)
JR 大阪鉄道病院
JR 大阪鉄道病院
臨床検査室
臨床検査室
○小宮山 恭弘 JR大阪鉄道病院 臨床検査室
【はじめに】2008
【はじめに】2008
年までの糖尿病療養指導の運営を
年までの糖尿病療養指導の運営を20132013
年福井では、CGM
年福井では、CGM
に携わる臨床検査技師から、
に携わる臨床検査技師から、
されてきた、済生会和歌山病院の田中久晴先生から引
されてきた、済生会和歌山病院の田中久晴先生から引
CGM
CGM
での技師の関わり方の実際や、その効果につい
での技師の関わり方の実際や、その効果につい
き継ぎ、2009
き継ぎ、2009
年京都から
年京都から
20132013
年福井までの
年福井までの
5 年間、
5 年間、
てディスカッションを行った。
てディスカッションを行った。
近畿地区の糖尿病療養指導を行う臨床検査技師を育て、
近畿地区の糖尿病療養指導を行う臨床検査技師を育て、
本セミナーでは
本セミナーでは
5 年間を通じて、臨床検査技師の糖尿
5 年間を通じて、臨床検査技師の糖尿
各技師会での活性化を行う目的でセミナーを企画開催
各技師会での活性化を行う目的でセミナーを企画開催
病療養指導士をより魅力あるものにして、多くの施設
病療養指導士をより魅力あるものにして、多くの施設
してきた。
してきた。
で課題となっている後継者(若い技師が興味をもって
で課題となっている後継者(若い技師が興味をもって
この実践セミナーでは、各府県での糖尿病療養指導に
この実践セミナーでは、各府県での糖尿病療養指導に
くれるような魅力ある療養指導)を模索してきた。
くれるような魅力ある療養指導)を模索してきた。
携わる臨床検査技師を中心にセミナーを企画開催し、
携わる臨床検査技師を中心にセミナーを企画開催し、
【今後の課題】チームで取り組む必要のある糖尿病療
【今後の課題】チームで取り組む必要のある糖尿病療
ほぼ一巡して各府県での糖尿病療養指導部門のリーダ
ほぼ一巡して各府県での糖尿病療養指導部門のリーダ
養指導では、糖尿病専門医の理解もさることながら、
養指導では、糖尿病専門医の理解もさることながら、
ーを育成する目的は達し、節目を迎えたことからこれ
ーを育成する目的は達し、節目を迎えたことからこれ
看護師や管理栄養士、薬剤師をはじめとした、他職種
看護師や管理栄養士、薬剤師をはじめとした、他職種
までの総括と今後の課題について報告する。
までの総括と今後の課題について報告する。
からコンセンサスを得られ、互いに得意分野を持ち寄
からコンセンサスを得られ、互いに得意分野を持ち寄
【糖尿病療養指導部門 実践セミナーでの企画内容 【糖尿病療養指導部門 実践セミナーでの企画内容 っての療養指導が求められる。若い技師にとって、先
っての療養指導が求められる。若い技師にとって、先
総括】
総括】
輩技師の協力なしには、このような環境作りは困難で
輩技師の協力なしには、このような環境作りは困難で
糖尿病の分野では、臨床検査技師が指導を行っても保
糖尿病の分野では、臨床検査技師が指導を行っても保
あり、先輩技師が培った院内でのネットワークを若い
あり、先輩技師が培った院内でのネットワークを若い
険点数に結びつかないこともあり、療養指導を行う臨
険点数に結びつかないこともあり、療養指導を行う臨
世代の技師に受け継いでいかなくてはならない。また
世代の技師に受け継いでいかなくてはならない。また
床検査技師の大半は、糖尿病教室での集団指導が主で
床検査技師の大半は、糖尿病教室での集団指導が主で
他院で活躍する、臨床検査技師同士のネットワークも
他院で活躍する、臨床検査技師同士のネットワークも
あった。2008
年のセミナーでも、他施設での糖尿病
あった。2008
年のセミナーでも、他施設での糖尿病重要で、各府県の臨床検査技師会が主体となって、糖
重要で、各府県の臨床検査技師会が主体となって、糖
教室の実際や、患者さんに身を乗り出して講義を聞い
教室の実際や、患者さんに身を乗り出して講義を聞い
尿病療養指導士の勉強会や研修会を企画し、多くの臨
尿病療養指導士の勉強会や研修会を企画し、多くの臨
てもらうための創意工夫について広くディスカッショ
てもらうための創意工夫について広くディスカッショ
床検査技師に門戸を広げ、患者と触れ合える機会(チ
床検査技師に門戸を広げ、患者と触れ合える機会(チ
ンされた。そこで
20092009
年からは、看護師や管理栄養
ンされた。そこで
年からは、看護師や管理栄養
ャンス)を若い世代の技師に作ることが必要である。
ャンス)を若い世代の技師に作ることが必要である。
士同様に個人指導が行える臨床検査技師の育成を目指
士同様に個人指導が行える臨床検査技師の育成を目指
連絡先 電話 06-6628-2221
連絡先 電話 06-6628-2221
内線内線
51045104
して、あなたも糖尿病個別指導を始めませんかと題し
して、あなたも糖尿病個別指導を始めませんかと題し
て、実際に模擬患者と模擬臨床検査技師との療養指導
て、実際に模擬患者と模擬臨床検査技師との療養指導
場面を見てもらい、その中で問題点や改善点について
場面を見てもらい、その中で問題点や改善点について
参加者とともにディスカッションを行った。2010
年 年
参加者とともにディスカッションを行った。2010
奈良でのセミナーでは臨床検査技師の資格を持つ糖尿
奈良でのセミナーでは臨床検査技師の資格を持つ糖尿
病療養指導士が活躍するために、技師の独自の分野の
病療養指導士が活躍するために、技師の独自の分野の
開拓し、多施設での
EBM
の発信など療養指導の場面
開拓し、多施設での
EBM
の発信など療養指導の場面
で、臨床検査技師の指導領域を少しでも増やしていく
で、臨床検査技師の指導領域を少しでも増やしていく
にはどうすれば良いかについて、糖尿病専門医を交え
にはどうすれば良いかについて、糖尿病専門医を交え
てディスカッションを行った。2011
年の滋賀では、
てディスカッションを行った。2011
年の滋賀では、
病棟での血糖測定に焦点をあて、SMBG,POCT
機器の
病棟での血糖測定に焦点をあて、SMBG,POCT
機器の
どちらがベストかという内容で、病棟看護師や血糖測
どちらがベストかという内容で、病棟看護師や血糖測
定機器メーカーも含めたディスカッションを行った。
定機器メーカーも含めたディスカッションを行った。
20122012
年の和歌山では患者さんにやる気を起こさせる
年の和歌山では患者さんにやる気を起こさせる
魔法の言葉(療養指導)と題して、看護師など個人指
魔法の言葉(療養指導)と題して、看護師など個人指
導を行っている職種の指導士から、指導スキルを学ぶ
導を行っている職種の指導士から、指導スキルを学ぶ
ことをテーマに他職からの療養指導にあたっての技師
ことをテーマに他職からの療養指導にあたっての技師
への要望も含め、ディスカッションを行った。
への要望も含め、ディスカッションを行った。
− 75 −
シンポジウムⅡ 21世紀のチーム医療を担う臨床検査技師
チーム医療実践セミナー NST
チーム医療実践セミナー NST
部門の歩みと今後
部門の歩みと今後
3.チーム医療実践セミナー NST部門の歩みと今後
1) 1)
◎畑中
◎畑中
徳子徳子
1) 1)
公益財団法人天理よろづ相談所病院
公益財団法人天理よろづ相談所病院
臨床検査部
臨床検査部
○畑中 徳子 公益財団法人天理よろづ相談所病院 臨床検査部
21 世紀を担う臨床検査技師実践セミナーが始まっ
21 世紀を担う臨床検査技師実践セミナーが始まっ広い層の技師参加を期待したがセミナーへの参加者は
広い層の技師参加を期待したがセミナーへの参加者は
たのは、主に検体検査を担当する技師にもベットサイ
たのは、主に検体検査を担当する技師にもベットサイ
30 名に満たないこともあり、準備に掛ける労力に見
30 名に満たないこともあり、準備に掛ける労力に見
ドに出向くチャンスが増えつつあり、そのチャンスを
ドに出向くチャンスが増えつつあり、そのチャンスを
合う結果が得られ難かった。
合う結果が得られ難かった。
活かした臨床への貢献が期待される頃であった。しか
活かした臨床への貢献が期待される頃であった。しか
【実践セミナーへの参加を通して】
【実践セミナーへの参加を通して】
しその一方で、検査室の体制作りの遅れや管理職の意
しその一方で、検査室の体制作りの遅れや管理職の意当院の技師は
当院の技師は
9 年間、常に実務委員として参加して
9 年間、常に実務委員として参加して
識不足などにより、臨床へ出向くことの難しさもまた
識不足などにより、臨床へ出向くことの難しさもまた
きた。企画、症例選択、データ収集などセミナーの準
きた。企画、症例選択、データ収集などセミナーの準
取り上げられた頃であった。そのような背景の中、本
取り上げられた頃であった。そのような背景の中、本
備をする中で多くのことを学んだ。それが自信となり
備をする中で多くのことを学んだ。それが自信となり
セミナーをスタートし開催してきたが、当初から現在
セミナーをスタートし開催してきたが、当初から現在
さらに積極的な働きに繋がった。時には技師の視線が
さらに積極的な働きに繋がった。時には技師の視線が
までを振り返り、今後の課題を探った。
までを振り返り、今後の課題を探った。
活かされた喜びを味わうこともあるようだ。しかし深
活かされた喜びを味わうこともあるようだ。しかし深
【開催当初の目的】
【開催当初の目的】
く関われば関わるほど、“検査からみた正しさ”が、
く関われば関わるほど、“検査からみた正しさ”が、
目的は
目的は
3 つ、①実践的で明日から使える知識の提供、
3 つ、①実践的で明日から使える知識の提供、
equal
equal
“臨床での正しさ”とはならないことに、悩む
“臨床での正しさ”とはならないことに、悩む
②セミナーは参加型でチームの中での発言できる訓練
②セミナーは参加型でチームの中での発言できる訓練
機会も増えたようだ。他職種や患者の視点を理解し自
機会も増えたようだ。他職種や患者の視点を理解し自
をする、③相談し合えるネットワーク造りであった。
をする、③相談し合えるネットワーク造りであった。
身のなかで消化したうえで、改めて“検査からみた正
身のなかで消化したうえで、改めて“検査からみた正
【これまでの歩み】
【これまでの歩み】
しさ”を伝えていくには、また別のスキルが必要とな
しさ”を伝えていくには、また別のスキルが必要とな
2005
滋賀:「こうして作る栄養サポートチーム」
2005
滋賀:「こうして作る栄養サポートチーム」ってくると思われる。
ってくると思われる。
、2006
福井:「検査の枠を越えた
NST NST
専門臨床検査
、2006
福井:「検査の枠を越えた
専門臨床検査【今後、何が求められるのか】
【今後、何が求められるのか】
技師を目指して」、2007
大阪:「ベットサイドで物
技師を目指して」、2007
大阪:「ベットサイドで物 NST
NST
専門療法士を取得する技師は増えている。しか
専門療法士を取得する技師は増えている。しか
申す検査技師」。3
年目までは初心者に重点を置き、
申す検査技師」。3
年目までは初心者に重点を置き、
し“チームの中で発言できる”参画にまで至っていな
し“チームの中で発言できる”参画にまで至っていな
NST NST
の立ち上げ方と悩み相談や、栄養管理に不可欠な
の立ち上げ方と悩み相談や、栄養管理に不可欠な
い技師がまだまだ多い。栄養に関する専門知識は、療
い技師がまだまだ多い。栄養に関する専門知識は、療
輸液や静脈栄養についての講義を取り上げた。症例は
輸液や静脈栄養についての講義を取り上げた。症例は
法士資格取得や専門学会が行うセミナーで習得してい
法士資格取得や専門学会が行うセミナーで習得してい
グループワークで検討し、“実践”を意識した。 グループワークで検討し、“実践”を意識した。 くことが可能だ。技師の専門性を活かした
くことが可能だ。技師の専門性を活かした
NST NST
への参
への参
20082008
兵庫:「検査データをしっかりと読むことか
兵庫:「検査データをしっかりと読むことか画には、検査データを読み、そして活かすことが重要
画には、検査データを読み、そして活かすことが重要
ら始めよう」、2009
京都:「発言できる臨床検査技
ら始めよう」、2009
京都:「発言できる臨床検査技だ。“検査データを読む”については既に日臨技で取
だ。“検査データを読む”については既に日臨技で取
師であるために」、2010
奈良:「嚥下機能、評価か
師であるために」、2010
奈良:「嚥下機能、評価かり組まれている。これに加え“発言できる力”、さら
り組まれている。これに加え“発言できる力”、さら
ら栄養の実際まで」。4
年目以降は、“発言できる”
ら栄養の実際まで」。4
年目以降は、“発言できる”
に重要となる“他職種の理解を得、患者を納得させる
に重要となる“他職種の理解を得、患者を納得させる
、“診療参加できる”ことを意識した内容であった。
、“診療参加できる”ことを意識した内容であった。
力”をつけなければ“データを活かす”には辿り着け
力”をつけなければ“データを活かす”には辿り着け
NST NST
に参加はしているが、何も言えずデータを届ける
に参加はしているが、何も言えずデータを届ける
ない。いわゆるコミュニケーションスキルのアップや
ない。いわゆるコミュニケーションスキルのアップや
だけに留まっているとの悩みが多かった為であった。
だけに留まっているとの悩みが多かった為であった。
患者心理を学ぶためのセミナーが必要となるだろう。
患者心理を学ぶためのセミナーが必要となるだろう。
症例検討では、積極的な発言を促すことを意識した。
症例検討では、積極的な発言を促すことを意識した。
もう一つ重要となるのが、人や時間の捻出、各病院
もう一つ重要となるのが、人や時間の捻出、各病院
20112011
滋賀:「COPD
の検査データを読み取る」、
滋賀:「COPD
の検査データを読み取る」、 の検査室に合った運営戦略など管理職の理解とマネー
の検査室に合った運営戦略など管理職の理解とマネー
20122012
和歌山:「長期にわたる極度の低栄養に陥った
和歌山:「長期にわたる極度の低栄養に陥ったジメント力だ。管理職のためのセミナーも技師会で企
ジメント力だ。管理職のためのセミナーも技師会で企
患者」、2013
福井:「疾患別検査値の推移と栄養ア
患者」、2013
福井:「疾患別検査値の推移と栄養ア画して欲しい内容だ。これは
画して欲しい内容だ。これは
NST NST
に限らず他の分野に
に限らず他の分野に
セスメントへの活かし方」。後半の3年は、特に検査
セスメントへの活かし方」。後半の3年は、特に検査
も共通した管理運営・教育のセミナーが望ましい。
も共通した管理運営・教育のセミナーが望ましい。
データを読み取り栄養管理に活かすことを意識した。
データを読み取り栄養管理に活かすことを意識した。
【まとめ】
【まとめ】
20132013
福井では、過去8年間に取り上げた疾患(褥瘡、
福井では、過去8年間に取り上げた疾患(褥瘡、
9 9
年間にわたり実施してきた
年間にわたり実施してきた
NST NST
セミナーは、一定
セミナーは、一定
クローン病、終末期、肝硬変、慢性腎不全、嚥下障害、
クローン病、終末期、肝硬変、慢性腎不全、嚥下障害、
の役割を果たしたと思われた。今後は
の役割を果たしたと思われた。今後は
NST NST
の枠に捕ら
の枠に捕ら
COPD、食思不振症)の検査値の読み方と栄養管理への
COPD、食思不振症)の検査値の読み方と栄養管理への
われず、技師が臨床に出向くために必要な共通スキル
われず、技師が臨床に出向くために必要な共通スキル
活かし方をまとめた。検査データの読み方を学ぶとい
活かし方をまとめた。検査データの読み方を学ぶとい
をアップするセミナーの開催が、必要なのではないだ
をアップするセミナーの開催が、必要なのではないだ
う点からは、NST
に関わりのない技師も参加でき、幅
う点からは、NST
に関わりのない技師も参加でき、幅
ろうか
ろうか
− 76 −
シンポジウムⅡ 21世紀のチーム医療を担う臨床検査技師
全体の総括及び未来への展望として ICT、DM、NST 以外の分野での臨床検査技師の活動紹介
4.全体の総括及び未来への展望としてICT、DM、NST以外の分野での臨床検査技師の活動紹介
〜検査説明、内視鏡、POCTなどについて〜
(検査説明、内視鏡、POCT などについて)
◎竹浦 久司 1)
社会医療法人 きつこう会 多根総合病院 中央検査部 1)
はじめに
○竹浦 久司 社会医療法人 きつこう会 多根総合病院 中央検査部
ることで、他の検査技師には無いやりがいや楽しみ
チーム医療といえば ICT、NST、糖尿病療法指導な
を見出すことができる。チーム医療の一員であるこ
どを多くの方が思い浮べるであろう。これらのチー
とから、現場の意見を改善につなげる風通しの良い
ムはどれもが 10 年以上チーム医療を実践してきた
職場環境が感染や安全対策を充実させている。
からである。ここで紹介するのは1.チーム医療の
(3)検査相談
定義、2.上記以外のチーム医療3.チーム医療の
検査相談は、臨床検査の幅広い知識とコミュニケ
効果に関して私見を述べる。
ーションスキルが求められ、院内でのコンセンサス
1.チーム医療の定義
を持ち、責任の所在を明確にすることが大切である。
「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、
患者が納得できる相談と説明を行い、患者へ安心感
各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、
と信頼感を得るようにする。
業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者
検査相談の対象者をすべての患者にするか、外来
の状況に的確に対応した医療を提供すること」と一
患者あるいは入院患者のどちらかにするかを決める
般的に理解されている。
必要がある。検査相談を担当するスタッフにより専
チーム医療の構成は①各職種の強み(専門性志向)
任または兼任で異なり、手始めとしては、外来から
②良い意味にも悪い意味にもなる仕事の垣根(職域
曜日時間を決めスタートすることが望ましい。担当
構成志向)③.患者を中心(患者志向)④協力し合
者の人選においても予めどのような検査相談が多い
って仕事をする(協働志向)の4つに分類される。
かを確認し、その分野を熟知しているベテラン技師
この4つはほぼ同じウエイトでスタートしたとして
で人の話を聴く能力のある方を配属することが望ま
も最終的に連携・補完し合い、患者の状況に的確に
しい。
対応した医療を提供することから自ずと患者志向と
3.チーム医療の効果
チーム医療がもたらす具体的な効果としては、
協働志向の2つのウエイトが大きくなる。
2.その他のチーム医療
①疾病の早期発見・回復促進・重症化予防など医
(1)眼科病院手術室
療・生活の質の向上、②医療の効率性の向上による
2年前に眼科病院にて看護師不足が起こり臨床工
学士か臨床検査技師かの選択を求められ臨床検査技
医療従事者の負担の軽減、③医療の標準化・組織化
を通じた医療安全の向上、等が期待される。
師が従事することになった。後に述べる2つに比べ
ると医師中心のチーム医療ではあるがどのような業
務を行っているかをご紹介する。
(2)内視鏡検査
臨床検査技師が内視鏡室のメディカルスタッフの
中心的役割を担う病院が増えてきた。内視鏡室は、
コスト管理や新しい技術を積極的に勉強し、その知
識を現場に生かしている。また臨床検査技師は、看
護師とは異なる視点を持って内視鏡室の業務にあた
− 77 −
(連絡先:06-6581-1071)
シンポジウムⅢ −遺伝子−
9月20日(土) 10:00~12:00 第7会場 5階 502号
テーマ:造血器腫瘍診療を支える遺伝子検査
司会:丸岡 隼人(神戸市立医療センター中央市民病院 臨床検査技術部)
1.白血病における遺伝子検査
入野 保(滋賀県立成人病センター 臨床検査部)
庄司 月美(京都大学医学部附属病院 検査部)
2.免疫関連遺伝子再構成検査について
長尾 美穂(医療法人社団神鋼会神鋼病院総合医学研究センター 細胞治療室)
3.キメリズム解析
那須 浩二(公益財団法人先端医療振興財団先端医療センター 臨床検査技術科)
4.造血器腫瘍診療を支える遺伝子検査 〜臨床医の立場から〜
高橋 隆幸(医療法人社団神鋼会神鋼病院 血液病センター)
●ねらい
造血器腫瘍診療において、遺伝子検査は今や必須であるにも関わらず、院内実施施設が少ないゆえ、馴
染みの薄い検査である。白血病において、キメラ遺伝子などの変異遺伝子の検出は、診断および治療方針
の決定に重要な役割を果たし、微小残存病変(MRD)のモニタリングは治療効果の正確な判定や再発の
早期発見を可能とする。免疫関連遺伝子再構成の検出は、悪性リンパ腫などのリンパ系腫瘍の存在診断に
有用な検査である。また、キメリズム解析は、造血幹細胞移植後のドナー細胞の生着度合いや再発の早期
発見に有用な検査として実施されている。本シンポジウムでは、造血器腫瘍診療における遺伝子検査の重
要性について講義し、普及の一助としたい。
− 78 −
シンポジウムⅢ 造血器腫瘍診療を支える遺伝子検査
白血病における遺伝子検査
白血病における遺伝子検査
1.白血病における遺伝子検査
1) 1)
◎庄司
◎庄司
月美月美
1) 1)
京都大学医学部附属病院
京都大学医学部附属病院
検査部
検査部
○庄司 月美 京都大学医学部附属病院 検査部
造血器腫瘍の診断と治療において、遺伝子検査の需
造血器腫瘍の診断と治療において、遺伝子検査の需
である。ただし、WT1
である。ただし、WT1
発現量の増減が病勢に伴わな
発現量の増減が病勢に伴わな
要が広がりつつある。その理由は、核酸分子の増幅技
要が広がりつつある。その理由は、核酸分子の増幅技
い症例もあるため、患者個々に検査の適応を判断する
い症例もあるため、患者個々に検査の適応を判断する
術により、体内に存在する微量な標的分子の検出を可
術により、体内に存在する微量な標的分子の検出を可
必要がある。
必要がある。
能としていることにある。さらに、遺伝子変異や発現
能としていることにある。さらに、遺伝子変異や発現
【白血病遺伝子変異検査】
【白血病遺伝子変異検査】
白血病における遺伝子変異には、予後の予測や補助
異常と病型および治療法との関係が明らかになってき
異常と病型および治療法との関係が明らかになってき白血病における遺伝子変異には、予後の予測や補助
診断的に利用されているものがある。FLT3(FMS診断的に利用されているものがある。FLT3(FMSたことが挙げられる。実際、造血器腫瘍の分類におい
たことが挙げられる。実際、造血器腫瘍の分類におい
like like
tyrosine
tyrosine
kinase
kinase
3)遺伝子の
3)遺伝子の
ITD(Internal
ITD(Internal
Tandem
Tandem
ては、従来の形態学や細胞学的所見に加え、分子遺伝
ては、従来の形態学や細胞学的所見に加え、分子遺伝
Duplication)変異は、AML
Duplication)変異は、AML
患者の約
患者の約
30%にみられる。
30%にみられる。
学的所見が取り入れられるようになった。今回は、白
学的所見が取り入れられるようになった。今回は、白
血病における遺伝子検査の現状と問題点および動向に
血病における遺伝子検査の現状と問題点および動向に
FLT3-ITD
FLT3-ITD
変異を認める
変異を認める
AML
AML
症例は、難治性で予後
症例は、難治性で予後
不良とされている。FLT3
不良とされている。FLT3
阻害剤などの開発が進めら
阻害剤などの開発が進めら
ついて紹介する。
ついて紹介する。
れているが、現段階では早期の幹細胞移植に向けた治
れているが、現段階では早期の幹細胞移植に向けた治
【白血病遺伝子定量検査】
【白血病遺伝子定量検査】
急性前骨髄性白血病では、t(15;17)
急性前骨髄性白血病では、t(15;17)
染色体転座によ
染色体転座によ
療が行われる。また、骨髄増殖性疾患において、エリ
療が行われる。また、骨髄増殖性疾患において、エリ
る PML-RARα
る PML-RARα
キメラ遺伝子が検出される。
キメラ遺伝子が検出される。
スロポエチン受容体のシグナル伝達に関わる
スロポエチン受容体のシグナル伝達に関わる
Janus
Janus
ATRA
ATRA
による分化誘導療法により、現在では治癒率の
による分化誘導療法により、現在では治癒率の
kinase
kinase
2(JAK2)遺伝子変異が診断に利用されている。
2(JAK2)遺伝子変異が診断に利用されている。
高い病型となった。慢性骨髄性白血病では、t(9;22)染
高い病型となった。慢性骨髄性白血病では、t(9;22)染
JAK2
JAK2
変異は、真性多血症の
変異は、真性多血症の
95%、本態性血小板血症
95%、本態性血小板血症
色体転座に伴う
色体転座に伴う
BCR-ABL
BCR-ABL
キメラ遺伝子が検出され、
キメラ遺伝子が検出され、
および原発性骨髄線維症の
および原発性骨髄線維症の
50~60%で認められる。
50~60%で認められる。
チロシンキナーゼ阻害薬(Tyrosine
チロシンキナーゼ阻害薬(Tyrosine
Kinase
Kinase
Inhibitor:
Inhibitor:
特に、真性多血症においては
特に、真性多血症においては
JAK2
JAK2
V617F
V617F
変異が病型
変異が病型
TKI)による治療がおこなわれる。発症時には体内に
TKI)による治療がおこなわれる。発症時には体内に
診断基準のひとつになっている。
診断基準のひとつになっている。
10^12
10^12
個の白血病細胞が存在するとされ、治療前の
個の白血病細胞が存在するとされ、治療前の 【標準化の動向】
【標準化の動向】
10001000
分の1以下に減少すること(3
分の1以下に減少すること(3
log log
reduction)が
reduction)がBCR-ABL
BCR-ABL
キメラ遺伝子定量検査は、国内では
キメラ遺伝子定量検査は、国内では
TMA
TMA
法(Amp-CML)あるいは各施設の
法(Amp-CML)あるいは各施設の
in-house
in-house
法 法
治療効果判定の目安となっている。この段階では、染
治療効果判定の目安となっている。この段階では、染
で実施されている。in-house
で実施されている。in-house
法は、施設ごとに使用す
法は、施設ごとに使用す
色体検査や
色体検査や
FISH
FISH
法で白血病細胞が検出されず、分子
法で白血病細胞が検出されず、分子
遺伝学的大寛解と呼ばれる。European
遺伝学的大寛解と呼ばれる。European
LeukemiaNet
LeukemiaNet
で る試薬や内部標準遺伝子が異なるため、データの施設
で る試薬や内部標準遺伝子が異なるため、データの施設
間差を生じる。国際的には、National
間差を生じる。国際的には、National Institute
Institute of of
は、BCR-ABL
は、BCR-ABL
キメラ遺伝子量による
キメラ遺伝子量による
TKITKI
治療の評価
治療の評価
Health(NIH)のコンセンサス会議において標準化を
Health(NIH)のコンセンサス会議において標準化を
と推奨される治療法を提示している。したがって、キ
と推奨される治療法を提示している。したがって、キ
目的とした
目的とした
International
InternationalScale(IS)が提唱された。
Scale(IS)が提唱された。
メラ遺伝子の定量検査は、白血病の病型診断のみなら
メラ遺伝子の定量検査は、白血病の病型診断のみなら
IS は、内部標準遺伝子量に対する
IS は、内部標準遺伝子量に対する
BCR-ABL
BCR-ABL
キメラ
キメラ
ず治療法の選択および効果判定において必須となって
ず治療法の選択および効果判定において必須となって
遺伝子量の比(%)に、施設換算係数である
遺伝子量の比(%)に、施設換算係数である
Laboratory
Laboratory
いる。
いる。
Specific
Specific
Conversion
Conversion
Factor(CF)を乗じたものである。
Factor(CF)を乗じたものである。
キメラ遺伝子をもつ白血病では、キメラ遺伝子が白
キメラ遺伝子をもつ白血病では、キメラ遺伝子が白
IS を用いることにより、治療目標と治療効果判定の
IS を用いることにより、治療目標と治療効果判定の
血病細胞のバイオマーカーとなり、病型診断や治療効
血病細胞のバイオマーカーとなり、病型診断や治療効
標準化が進むことになった。しかし、CF
の取得およ
の取得およ
果の判定および微小残存病変(MRD)のモニタリング
果の判定および微小残存病変(MRD)のモニタリング標準化が進むことになった。しかし、CF
び恒常性においては問題が多く、標準物質を使用する
び恒常性においては問題が多く、標準物質を使用する
に有用である。しかし、既知のキメラ遺伝子を有する
に有用である。しかし、既知のキメラ遺伝子を有する
方法が検討されている。国内においても、凍結乾燥試
方法が検討されている。国内においても、凍結乾燥試
白血病は、全体の約
白血病は、全体の約
30%に満たないのが現状である。
30%に満たないのが現状である。
料を用いたサーベイランスが実施されるなど、標準化
料を用いたサーベイランスが実施されるなど、標準化
そのため、特定の遺伝子異常をもたない白血病のモニ
そのため、特定の遺伝子異常をもたない白血病のモニ
に向けた動きがあり、外部精度管理体制の構築が望ま
に向けた動きがあり、外部精度管理体制の構築が望ま
タリングには、WT1
タリングには、WT1
遺伝子定量が有効となる。
遺伝子定量が有効となる。
れている。(共同研究者:渡邉珠緒、橋本誠司、喜田
WT1WT1
遺伝子は、病型に関わらず多くの白血病で発現
遺伝子は、病型に関わらず多くの白血病で発現れている。(共同研究者:渡邉珠緒、橋本誠司、喜田
優人、中川莉彩、黒田奈々、大森勝之、菱澤方勝、河
優人、中川莉彩、黒田奈々、大森勝之、菱澤方勝、河
量が上昇し、発現量の推移をみることで治療効果の判
量が上昇し、発現量の推移をみることで治療効果の判
原真大、一山智) 原真大、一山智) 定が可能である。また、形態学的検査では捉えられな
定が可能である。また、形態学的検査では捉えられな
連絡先:075-751-3664
連絡先:075-751-3664
い末梢血中の
い末梢血中の
MRD
MRD
を反映し、再発の早期診断に有用
を反映し、再発の早期診断に有用
− 79 −
シンポジウムⅢ 造血器腫瘍診療を支える遺伝子検査
免疫関連遺伝子再構成検査について
免疫関連遺伝子再構成検査について
2.免疫関連遺伝子再構成検査について
1) 1)
◎長尾
◎長尾
美穂美穂
1) 1)
医療法人社団神鋼会
医療法人社団神鋼会
神鋼病院
神鋼病院
検査科
検査科
○長尾 美穂 医療法人社団神鋼会 神鋼病院 総合医学研究センター細胞治療室
【はじめに】
【はじめに】
ンパ腫では偽陰性がしばしばみられるので注意が必要
ンパ腫では偽陰性がしばしばみられるので注意が必要
悪性リンパ腫をはじめとするリンパ増殖性疾患の診
悪性リンパ腫をはじめとするリンパ増殖性疾患の診
である。
である。
断の場合、リンパ球の増殖が腫瘍性なのか、あるいは
断の場合、リンパ球の増殖が腫瘍性なのか、あるいは
【TCR
【TCR
遺伝子再構成検査について】
遺伝子再構成検査について】
反応性であるのかは、形態やフローサイトメトリーに
反応性であるのかは、形態やフローサイトメトリーにT 細胞でも
T 細胞でも
B 細胞と同様に分化過程において、抗原
B 細胞と同様に分化過程において、抗原
よる表面抗原分析のみでは判定が難しい症例も少なく
よる表面抗原分析のみでは判定が難しい症例も少なく
認識の多様性を生み出すため、TCR
認識の多様性を生み出すため、TCR
遺伝子の再構成を
遺伝子の再構成を
ない。免疫関連遺伝子再構成検査は、増殖しているリ
ない。免疫関連遺伝子再構成検査は、増殖しているリ
生じるので、multiplex
生じるので、multiplex
PCR PCR
でクローナリティの検索
でクローナリティの検索
ンパ球のクローナリティを検出する検査であり、腫瘍
ンパ球のクローナリティを検出する検査であり、腫瘍
を行うことができる。
を行うことができる。
性か否かの診断に非常に有用である。神鋼病院では
性か否かの診断に非常に有用である。神鋼病院では TCR
TCR
遺伝子は
遺伝子は
α,β,γ,δ
α,β,γ,δ
の 4の
鎖があり、TCRγ
4 鎖があり、TCRγ
鎖 鎖
PCR PCR
法による
法による
IgH(免疫グロブリン重鎖)遺伝子再構成
IgH(免疫グロブリン重鎖)遺伝子再構成
遺伝子では
遺伝子では
T 細胞の分化に伴って、特に胸腺内での分
T 細胞の分化に伴って、特に胸腺内での分
と TCR(T
と TCR(T
細胞受容体
細胞受容体
γ 鎖)遺伝子再構成検査を行って
γ 鎖)遺伝子再構成検査を行って
化の過程で遺伝子再構成が生じる。γ
化の過程で遺伝子再構成が生じる。γ
鎖と鎖と
δ 鎖遺伝
δ 鎖遺伝
いる。
いる。
子は子は
α 鎖と
α 鎖と
β 鎖遺伝子に先立って再構成され、それ
β 鎖遺伝子に先立って再構成され、それ
【IgH
【IgH
遺伝子再構成検査について】
遺伝子再構成検査について】
ぞれ複合体を形成し
ぞれ複合体を形成し
T 細胞レセプターとして発現され
T 細胞レセプターとして発現され
B 細胞では分化成熟段階で、多様な抗体レパートア
B 細胞では分化成熟段階で、多様な抗体レパートア
る。TCRγ
る。TCRγ
遺伝子は
遺伝子は
Vγ Vγ
遺伝子群、Jγ
遺伝子群、Jγ
遺伝子群のみ
遺伝子群のみ
を生み出すために免疫グロブリン遺伝子の再構成が生
を生み出すために免疫グロブリン遺伝子の再構成が生
で構成されており、その遺伝子群の数も限られている。
で構成されており、その遺伝子群の数も限られている。
じる。この再構成による遺伝子の多様性を用いて、
じる。この再構成による遺伝子の多様性を用いて、また、TCRγ
また、TCRγ
遺伝子は
遺伝子は
αβαβ
型 T型
細胞、γδ
T 細胞、γδ
型 T型
細胞
T 細胞
B 細胞のクローナリティの検索を行うことができる。
B 細胞のクローナリティの検索を行うことができる。
の両方で発現しているので、αβ
の両方で発現しているので、αβ
型 T型
細胞リンパ腫
T 細胞リンパ腫
多様な抗体レパートアを生み出す機構の1つとして、
多様な抗体レパートアを生み出す機構の1つとして、
でも検出可能であるが、TCRγ
でも検出可能であるが、TCRγ
遺伝子のモノクローナ
遺伝子のモノクローナ
未分化幹細胞からプレ
未分化幹細胞からプレ
B 細胞の分化の過程で、IgH
B 細胞の分化の過程で、IgH
遺 遺
ルな再構成が
ルな再構成が
γδγδ
型 T型
リンパ腫を意味するものでは
T リンパ腫を意味するものでは
伝子セグメントの組換え(gene
伝子セグメントの組換え(gene
rearrangement)が生じ
rearrangement)が生じ
ない。
ない。
る。IgH
る。IgH
遺伝子の可変領域は多数の
遺伝子の可変領域は多数の
VH 遺伝子群、
VH 遺伝子群、
T 細胞では、B
T 細胞では、B
細胞で見られるような体細胞突然変
細胞で見られるような体細胞突然変
DH 遺伝子群、JH
DH 遺伝子群、JH
遺伝子群から構成され、初めに
遺伝子群から構成され、初めに 異は見られない。これらの理由から、使用されるプラ
異は見られない。これらの理由から、使用されるプラ
DH,JH
DH,JH
遺伝子群からそれぞれ
遺伝子群からそれぞれ
1 個の断片が選択され再
1 個の断片が選択され再
イマーの種類も少なく、Vγ
イマーの種類も少なく、Vγ
側で側で
4 種類、Jγ
4 種類、Jγ
側で側で
構成を起こし、続いて
構成を起こし、続いて
VH 遺伝子群内の
VH 遺伝子群内の
1 断片と
1 断片と
DH- DH-2 種類のプライマーが使用される。しかし、EB
2 種類のプライマーが使用される。しかし、EB
ウイル
ウイル
JH 結合遺伝子が再構成される。また、組換えの際に
JH 結合遺伝子が再構成される。また、組換えの際にス・サイトメガロウイルス感染で少数のリンパ球レパ
ス・サイトメガロウイルス感染で少数のリンパ球レパ
鋳型遺伝子には存在しない塩基の挿入(junctional
鋳型遺伝子には存在しない塩基の挿入(junctional ートアが反応する場合や、リンパ球のレパートアが少
ートアが反応する場合や、リンパ球のレパートアが少
diversity)、抗原刺激により再構成された
diversity)、抗原刺激により再構成された
VH 遺伝子
VH 遺伝子
数になる同種移植後の患者などで偽陽性がみられるこ
数になる同種移植後の患者などで偽陽性がみられるこ
に生じる体細胞変異(somatic
に生じる体細胞変異(somatic
mutation)などの機構か
mutation)などの機構か
とがある。また、急性リンパ性白血病(B-ALL,Tとがある。また、急性リンパ性白血病(B-ALL,Tら無数の抗原に対応する
ら無数の抗原に対応する
B 細胞が生み出される。ある
B 細胞が生み出される。ある
ALL)の場合は
ALL)の場合は
IgH、TCRγ
IgH、TCRγ
再構成が両方陽性になるこ
再構成が両方陽性になるこ
B 細胞集団の
B 細胞集団の
IgH IgH
遺伝子の再構成が単一のパターン
遺伝子の再構成が単一のパターン とが多く、T、B
とが多く、T、B
どちらの腫瘍であるかを
どちらの腫瘍であるかを
PCR PCR
のみで
のみで
(モノクローナルな再構成)であれば腫瘍性、多様な
(モノクローナルな再構成)であれば腫瘍性、多様な
は決定できないことがある。
は決定できないことがある。
再構成パターン(ポリクローナルな再構成)であれば
再構成パターン(ポリクローナルな再構成)であれば
【まとめ】
【まとめ】
非腫瘍性と診断できる。
非腫瘍性と診断できる。
少量の検体でクローナリティの有無が決定できる
少量の検体でクローナリティの有無が決定できる
PCR PCR
法では再構成の途中にある
法では再構成の途中にある
DH-JH
DH-JH
遺伝子、再構
遺伝子、再構
PCR PCR
法による免疫関連遺伝子再構成検査はリンパ増殖
法による免疫関連遺伝子再構成検査はリンパ増殖
成が完了した
成が完了した
VH-JH
VH-JH
遺伝子、さらに
遺伝子、さらに
somatic
somatic
性疾患の診断に非常に有用である。さらに、院内で検
性疾患の診断に非常に有用である。さらに、院内で検
mutation
mutation
にも対応できるように、様々なプライマー
にも対応できるように、様々なプライマー査を施行することで、検体が提出された次の日には結
査を施行することで、検体が提出された次の日には結
を使用する
を使用する
multiplex
multiplex
PCR PCR
で行う。検出感度は約
で行う。検出感度は約
1% 1%
果を出せるので、診断、治療方針、寛解の判定、およ
果を出せるので、診断、治療方針、寛解の判定、およ
である。しかし、細胞が分化成熟する程
である。しかし、細胞が分化成熟する程
somatic
somatic び再発の有無等に役立つ検査結果を迅速に提供するこ
び再発の有無等に役立つ検査結果を迅速に提供するこ
mutation
mutation
の頻度は高くなるので、濾胞性リンパ腫や
の頻度は高くなるので、濾胞性リンパ腫やとができる。
とができる。
神鋼病院 TEL
神鋼病院 TEL
: (078)261-6711
: (078)261-6711
びまん性大細胞性
びまん性大細胞性
B 細胞リンパ腫などの成熟
B 細胞リンパ腫などの成熟
B 細胞リ
B 細胞リ
− 80 −
シンポジウムⅢ 造血器腫瘍診療を支える遺伝子検査
3.キメリズム解析
キメリズム解析
キメリズム解析
1) 1)
◎那須
◎那須
浩二浩二
○那須 浩二 1) 1)
財団法人
財団法人
先端医療振興財団
先端医療振興財団
先端医療センター
先端医療センター
臨床検査技術科
臨床検査技術科
公益財団法人 先端医療振興財団 先端医療センター 臨床検査技術科
同種造血器幹細胞移植は患者(レシピエント)の血液
同種造血器幹細胞移植は患者(レシピエント)の血液
T 細胞それぞれから採取した
T 細胞それぞれから採取した
DNA
DNA
を移植前に決めた
を移植前に決めた
細胞を供血者(ドナー)由来の血液細胞に置き換える
細胞を供血者(ドナー)由来の血液細胞に置き換える
レシピエント、ドナーそれぞれに特異の
レシピエント、ドナーそれぞれに特異の
STRSTR
ローカ
ローカ
ことにより血液腫瘍疾患の根治を目的とする治療法で
ことにより血液腫瘍疾患の根治を目的とする治療法で
ス(マーカー)を
ス(マーカー)を
PCRPCR
法で増幅し
法で増幅し
ABI310
ABI310
Genetic
Genetic
ある。移植後、患者の体のなかにはレシピエント由来
ある。移植後、患者の体のなかにはレシピエント由来
Analyzer(ライフテクノロジーズジャパン)にてフラグ
Analyzer(ライフテクノロジーズジャパン)にてフラグ
の細胞とドナー由来の細胞が混在する期間があり、こ
の細胞とドナー由来の細胞が混在する期間があり、こ
メント解析を行う。移植前に目印とした
メント解析を行う。移植前に目印とした
れを混合キメラ状態という。この状態を数値定量化す
れを混合キメラ状態という。この状態を数値定量化す
「D12S1064」という
「D12S1064」という
STRSTR
ローカスのドナーピーク
ローカスのドナーピーク
る検査法がキメリズム解析であり、移植片の拒絶や生
る検査法がキメリズム解析であり、移植片の拒絶や生
195bp
195bp
とレシピエントピーク
とレシピエントピーク
179bp
179bp
を解析し、両者の
を解析し、両者の
着の度合いを経過観察することが可能となる。現在、
着の度合いを経過観察することが可能となる。現在、
ピークの面積比を算出することにより、ドナー由来の
ピークの面積比を算出することにより、ドナー由来の
法、法、
主に用いられるキメリズム検査法は、異性間
主に用いられるキメリズム検査法は、異性間
FISH
FISH
血液細胞がレシピエントの体内に何%生着したのかを
血液細胞がレシピエントの体内に何%生着したのかを
STR(Short
Tandem
Repeat)-PCR
法などがある。今回の
STR(Short
Tandem
Repeat)-PCR
法などがある。今回の
確認することができる。生着するまでの日数は個人差
確認することができる。生着するまでの日数は個人差
シンポジウムでは我々の施設で行っている
STRシンポジウムでは我々の施設で行っている
STRがあるが、移植後の
があるが、移植後の
T 細胞・
T 細胞・
Non-T
Non-T
細胞において
細胞において
PCRPCR
法を紹介する。ヒトの
DNA
の中には数塩基~数
法を紹介する。ヒトの
DNA
の中には数塩基~数
179bp
179bp
のレシピエントのピークが消失し、195bp
のレシピエントのピークが消失し、195bp
のドのド
十塩基が繰り返された配列が多数存在し、その中でも
十塩基が繰り返された配列が多数存在し、その中でも
ナーのピークが
ナーのピークが
100%になれば、ドナーの血液細胞が
100%になれば、ドナーの血液細胞が
比較的短い塩基配列の繰り返しを
STRSTR
という。この
比較的短い塩基配列の繰り返しを
という。この完全に生着したと考えられる。逆に、移植後の経過中
完全に生着したと考えられる。逆に、移植後の経過中
繰り返し回数は個人によって異なり、即ち遺伝子の長
繰り返し回数は個人によって異なり、即ち遺伝子の長
T 細胞・
T 細胞・
Non-T
Non-T
細胞において
細胞において
179bp
179bp
のレシピエント
のレシピエント
さは個々で異なる。このことから複数の
STRSTR
ローカ
さは個々で異なる。このことから複数の
ローカのピークが消えず、195bp
のピークが消えず、195bp
のドナーのピークが消失傾
のドナーのピークが消失傾
ス(遺伝子座)を調べることで個人を識別することが可
ス(遺伝子座)を調べることで個人を識別することが可
向ならば、生着不全であると考えられる。即ち、移植
向ならば、生着不全であると考えられる。即ち、移植
能となる。STR
解析は、何十種類もの
STRSTR
ローカス
能となる。STR
解析は、何十種類もの
ローカス後早期からキメリズム検査を実施し、ドナーの血液細
後早期からキメリズム検査を実施し、ドナーの血液細
を用いることで、犯罪捜査における
DNA
鑑定や親子
を用いることで、犯罪捜査における
DNA
鑑定や親子
胞の生着確認を経時的にかつ定量的に判定することは、
胞の生着確認を経時的にかつ定量的に判定することは、
鑑定にも用いられている検査法である。複数の遺伝子
鑑定にも用いられている検査法である。複数の遺伝子
拒絶の傾向を示した症例には迅速な対応が可能となり、
拒絶の傾向を示した症例には迅速な対応が可能となり、
の STR
ローカスを用いることによりドナーとレシピ
の STR
ローカスを用いることによりドナーとレシピその後の治療方針に重要な役割を果たすと考えられる。
その後の治療方針に重要な役割を果たすと考えられる。
エントとを個人識別することが可能となる。この原理
エントとを個人識別することが可能となる。この原理
に基づき移植後のキメリズム解析を行うのである。は
に基づき移植後のキメリズム解析を行うのである。は
このシンポジウムでは演者の前職場である神戸市立医
このシンポジウムでは演者の前職場である神戸市立医
じめに、移植前にドナー、レシピエントの両者の血液
じめに、移植前にドナー、レシピエントの両者の血液
療センター中央市民病院で実施しているキメリズム検
療センター中央市民病院で実施しているキメリズム検
を採取し、複数の
STRSTR
ローカスをターゲットとした
を採取し、複数の
ローカスをターゲットとした査法について述べる。
査法について述べる。
Multiplex
STR-PCR
法を用いてドナーとレシピエント
Multiplex
STR-PCR
法を用いてドナーとレシピエント
を識別可能な
STRSTR
ローカスを決定する。例えば、
を識別可能な
ローカスを決定する。例えば、 先端医療センター 臨床検査技術科
先端医療センター 臨床検査技術科
078-304-5200
078-304-5200
Multiplex
STR-PCR
法を行った結果「D12S1064」とい
Multiplex
STR-PCR
法を行った結果「D12S1064」とい
抄録本文
抄録本文
う STR
ローカスにおいて、ドナー
195bp、レシピエ
う STR
ローカスにおいて、ドナー
195bp、レシピエ
ントント
179bp
と長さが異なればマカーとして使用するこ
179bp
と長さが異なればマカーとして使用するこ
とが可能となる。移植後はこのローカスのドナーピー
とが可能となる。移植後はこのローカスのドナーピー
ク 195bp
とレシピエントピーク
179bp
を検出し比較す
ク 195bp
とレシピエントピーク
179bp
を検出し比較す
ることとなる。次に、移植後のキメリズム解析につい
ることとなる。次に、移植後のキメリズム解析につい
て説明する。移植後は、完全キメラ状態を目指し、生
て説明する。移植後は、完全キメラ状態を目指し、生
着の度合いを確認する為にキメリズム検査を実施する。
着の度合いを確認する為にキメリズム検査を実施する。
検査は
T 細胞と
Non-T
細胞(T
細胞以外の細胞)に分け
検査は
T 細胞と
Non-T
細胞(T
細胞以外の細胞)に分け
てそれぞれ解析を行うことで、移植後早期の生着不全、
てそれぞれ解析を行うことで、移植後早期の生着不全、
GVHD(移植片対宿主病)、抗腫瘍効果、再発など有意
GVHD(移植片対宿主病)、抗腫瘍効果、再発など有意
義な情報を得ることが可能となる。T
細胞と
Non-Non義な情報を得ることが可能となる。T
細胞と
− 81 −
シンポジウムⅢ 造血器腫瘍診療を支える遺伝子検査
造血器腫瘍診療を支える遺伝子検査
造血器腫瘍診療を支える遺伝子検査
4.造血器腫瘍診療を支える遺伝子検査
〜臨床医の立場から〜
4.臨床医の立場から
4.臨床医の立場から
1) 1)
◎高橋
◎高橋
隆幸隆幸
1) 1)
医療法人社団神鋼会
医療法人社団神鋼会
神鋼病院
神鋼病院
血液病センター
血液病センター
○高橋 隆幸 医療法人社団神鋼会 神鋼病院 血液病センター
【造血器腫瘍診療と分子生物学】
【造血器腫瘍診療と分子生物学】
施設の増加が望まれる。
施設の増加が望まれる。
かつて白血病など造血器腫瘍は難治性で死亡率の高
かつて白血病など造血器腫瘍は難治性で死亡率の高
③ ③
研究的遺伝子検査:造血器腫瘍診療は分子生物学
研究的遺伝子検査:造血器腫瘍診療は分子生物学
い疾患であり、血液内科および小児血液科を専攻する
い疾患であり、血液内科および小児血液科を専攻する の発展と共に歩んでいるので、臨床研究や症例報
の発展と共に歩んでいるので、臨床研究や症例報
医師は少数であった。しかし、近年の分子生物学発展
医師は少数であった。しかし、近年の分子生物学発展 告の学会・誌上発表の機会も多い。こういった発
告の学会・誌上発表の機会も多い。こういった発
の恩恵を最も受けたのはこの造血器腫瘍の診療であり、
の恩恵を最も受けたのはこの造血器腫瘍の診療であり、表の場合、ルーチンの遺伝子検査で得られる情報
表の場合、ルーチンの遺伝子検査で得られる情報
診断と治療成績は飛躍的に向上した。この造血器の臨
診断と治療成績は飛躍的に向上した。この造血器の臨 以上のものが求められることも少なくない。例え
以上のものが求められることも少なくない。例え
床を支える2つの柱は分子標的療法と遺伝子検査であ
床を支える2つの柱は分子標的療法と遺伝子検査であ ば、PML-RARA
ば、PML-RARA
における
における
break
breakpoint(bcr1-3)、
point(bcr1-3)、
融合遺
融合遺
る。今や、遺伝子検査は造血器腫瘍の迅速診断、治療
る。今や、遺伝子検査は造血器腫瘍の迅速診断、治療 好酸球性白血病における
好酸球性白血病における
FIP1L1-PDGFR
FIP1L1-PDGFR
伝子の
PCR PCR
による同定、異時性に発症した組織型
による同定、異時性に発症した組織型
効果の判定、および再発の早期発見に必須であり、造
効果の判定、および再発の早期発見に必須であり、造 伝子の
が異なる
が異なる
B、あるいは
B、あるいは
T リンパ腫が同一起源か否
T リンパ腫が同一起源か否
血器腫瘍診療の精度向上に大きく貢献している。
血器腫瘍診療の精度向上に大きく貢献している。
なの確認、多発性骨髄腫における患者固有の
なの確認、多発性骨髄腫における患者固有の
【造血器腫瘍診療と遺伝子検査】
【造血器腫瘍診療と遺伝子検査】
再構成パターンを利用した
再構成パターンを利用した
MRD MRD
の検討、など
の検討、など
日常診療における遺伝子検査は大きく次の3つに分
日常診療における遺伝子検査は大きく次の3つに分 IgH IgH
である。現時点ではこういった遺伝子検査が可能
である。現時点ではこういった遺伝子検査が可能
類される。
類される。
な施設は限られるが、共同研究を適正に行うこと
な施設は限られるが、共同研究を適正に行うこと
① ①
保険適応のある遺伝子検査:急性骨髄性白血病
保険適応のある遺伝子検査:急性骨髄性白血病
により、目的は達せられる。
により、目的は達せられる。
(AML)における
PML-RARA
や AML1-ETO、慢
(AML)における
PML-RARA
や AML1-ETO、慢
【自施設で遺伝子検査を行うメリット】
性骨髄性白血病(CML)における
bcr-abl
などキ
性骨髄性白血病(CML)における
bcr-abl
などキ【自施設で遺伝子検査を行うメリット】
本発表者は現在も過去も、遺伝子検査が自施設で行
メラ遺伝子の
PCRPCR
検査、および悪性リンパ腫な
メラ遺伝子の
検査、および悪性リンパ腫な 本発表者は現在も過去も、遺伝子検査が自施設で行
える環境で診療を行って来た。そのメリットの第1は、
える環境で診療を行って来た。そのメリットの第1は、
どリンパ系腫瘍における免疫関連遺伝子(IgH
お お
どリンパ系腫瘍における免疫関連遺伝子(IgH
外注検査に比べて、診断が格段に早くできるので、的
よびよび
TCR)の
PCRPCR
検査などがこれに該当する。
TCR)の
検査などがこれに該当する。外注検査に比べて、診断が格段に早くできるので、的
確な治療が早期に開始できる点にある。寛解および再
確な治療が早期に開始できる点にある。寛解および再
FISH(fluorescence
in situ
hybridization)検査は通
FISH(fluorescence
in situ
hybridization)検査は通
発の有無の評価段階においても、遺伝子検査を適宜に
発の有無の評価段階においても、遺伝子検査を適宜に
常、染色体検査の一種として扱われているが、私
常、染色体検査の一種として扱われているが、私
実施することにより診療の質の向上が期待できる。遺
実施することにより診療の質の向上が期待できる。遺
見ではこれはむしろ遺伝子検査と考えるべきであ
見ではこれはむしろ遺伝子検査と考えるべきであ
伝子検査が可能な施設の増加が望まれる。また、保険
伝子検査が可能な施設の増加が望まれる。また、保険
ろう。これら保険適応のある遺伝子検査は代表的
ろう。これら保険適応のある遺伝子検査は代表的
適応のある遺伝子検査の実施は、施設の経営面にも貢
適応のある遺伝子検査の実施は、施設の経営面にも貢
で症例の多い造血器腫瘍を対象としているので、
で症例の多い造血器腫瘍を対象としているので、
献できる。
献できる。
日常診療に果たす役割は大きい。すなわち、初診
日常診療に果たす役割は大きい。すなわち、初診
【遺伝子検査と病理診断との問題】
【遺伝子検査と病理診断との問題】
時の診断、微小残存病変(MRD)による寛解の評
時の診断、微小残存病変(MRD)による寛解の評
悪性リンパ腫の場合、病理の最終診断が得られる前
悪性リンパ腫の場合、病理の最終診断が得られる前
価、再発の有無の確認などにこれら遺伝子検査は
価、再発の有無の確認などにこれら遺伝子検査は
に IgH、あるいは
に IgH、あるいは
TCRTCR
の PCR
の PCR
検査により腫瘍か否か
検査により腫瘍か否か
極めて有用である。
極めて有用である。
は判明していることが多い。患者さんの状態によって
② ②
保険適応のない遺伝子検査:AML
では染色体異
保険適応のない遺伝子検査:AML
では染色体異は判明していることが多い。患者さんの状態によって
は治療を急ぐ必要がある場合も少なくない。問題は病
は治療を急ぐ必要がある場合も少なくない。問題は病
常による予後の評価とは別に、多くの遺伝子変異
常による予後の評価とは別に、多くの遺伝子変異
理の診断以前に遺伝子検査の結果に基づき、治療を開
理の診断以前に遺伝子検査の結果に基づき、治療を開
が報告され、予後との関連が精力的に研究されて
が報告され、予後との関連が精力的に研究されて
始することが妥当であるかである。倫理面も含めた今
いる。予後不良因子であることが確立している
いる。予後不良因子であることが確立している 始することが妥当であるかである。倫理面も含めた今
、 、
後の課題であるが、遺伝子検査の信頼度のさらなる向
後の課題であるが、遺伝子検査の信頼度のさらなる向
FLT3/ITD
変異は保険適応となっているが、KIT
FLT3/ITD
変異は保険適応となっているが、KIT
NPM1、MLL/PDT
NPM1、MLL/PDT
など、ほとんどの遺伝子変異は
など、ほとんどの遺伝子変異は
上がこの問題の解決になると思われる
上がこの問題の解決になると思われる
保険適応ではない。これらの遺伝子変異は骨髄移
保険適応ではない。これらの遺伝子変異は骨髄移
【遺伝子検査の今後の展望・まとめ】
【遺伝子検査の今後の展望・まとめ】
植の適応を決定するのに重要であるので、全症例
植の適応を決定するのに重要であるので、全症例
造血器腫瘍研究に関しては全ゲノムシークエンスの
造血器腫瘍研究に関しては全ゲノムシークエンスの
での実施が望ましい。しかし、これら遺伝子変異
での実施が望ましい。しかし、これら遺伝子変異
時代となっており、今後、多くの新しい遺伝子検査が
時代となっており、今後、多くの新しい遺伝子検査が
の検査が可能であるのは大学病院、一部の基幹病
の検査が可能であるのは大学病院、一部の基幹病
臨床に場に導入されることが予想される。検査関係者
臨床に場に導入されることが予想される。検査関係者
院、および一部の検査会社のみである。実施可能
院、および一部の検査会社のみである。実施可能
の臨床へのさらなる貢献が期待される。
の臨床へのさらなる貢献が期待される。
− 82 −
シンポジウムⅣ −臨床化学−
9月20日(土) 13:20~15:20 第1会場 メインホール
テーマ:品質向上(QMS)への取り組み
司会:後藤 直樹(京都保健衛生専門学校 臨床検査学科)
芝原 裕和(関西労災病院 中央検査部)
1.QMS(Quality Management System)とは
須崎 有起子(シスメックス株式会社 学術本部学術情報部認証サポートセンター)
2.SOP(Standard Operating Procedure:標準作業手順書)作成方法
~まずは作ってみましょう~
藤本 一満(ファルコバイオシステムズ総合研究所 検査一課生化学検査係)
3.新人教育 ~施設で取り組む新人教育~
元中 秀行(近江八幡市立総合医療センター 臨床検査科)
4.ヒアリハットとその対策 〜自動分析装置編〜
東 正浩(市立敦賀病院 医療技術部検査室)
5.ヒアリハットとその対策 ~ヒューマンエラーを防ぐ~ 試薬編
堀端 伸行(和歌山県立医科大学附属病院 中央検査部)
6.ヒアリハット ~システム編~ 新棟移転・測定機器更新時に見落とされた事例
倉田 主税(公立大学法人奈良県立医科大学附属病院 中央臨床検査部)
●ねらい
本シンポジウムは、
“品質向上(QMS)への取り組み”を通じ、
“施設および個人として検査力をつけ
る”をキーワードに、検査力をつけるための様々な取り組みが紹介されます。検査技師として、誰しもが
願う“検査力”。これは、われわれにとって、永遠のテーマでもあります。このテーマ“検査力”をつけ
るための“Know-how”を成書から読み取るのではなく、実践を通じて獲得した“検査力”の一端を演
者とともに共有したいと思います。
まずは理論的な総論としてのQMS(Quality Management System)の解説から始まり、各施設での
具体例を通して、いかにして検査力をつけ、そこから生み出される検査データの品質向上(QMS)に結
びつけることができるのかを討論したいと思います
− 83 −
シンポジウムⅣ 品質向上(QMS)への取り組み
QMS(Quality
QMS(Quality
Management
Management
System)とは
System)とは
1.QMS(Quality Management
System)とは
1) 1)
◎須崎
◎須崎
有起子
有起子
○須崎 有起子 1) 1)
シスメックス株式会社
シスメックス株式会社
学術本部
学術本部
学術情報部
学術情報部
認証サポートセンター
認証サポートセンター
シスメックス株式会社 学術本部 学術情報部 認証サポートセンター
【はじめに】
【はじめに】
提供するために必要な能力や基準が記載されており、
提供するために必要な能力や基準が記載されており、
品質マネジメントシステム(QMS)とは、「品質
品質マネジメントシステム(QMS)とは、「品質これらの要求事項すべてを満たすことにより、検査結
これらの要求事項すべてを満たすことにより、検査結
に関して組織を指揮し、管理するためのマネジメント
に関して組織を指揮し、管理するためのマネジメント
果の質を保証することができます。
果の質を保証することができます。
システム」と定義されています(ISO
システム」と定義されています(ISO
9000:2005)。
9000:2005)。
言い換えれば、顧客に提供する製造物やサービスの品
言い換えれば、顧客に提供する製造物やサービスの品
【おわりに】
【おわりに】
質を維持し、さらに向上させ、顧客満足度を向上させ
質を維持し、さらに向上させ、顧客満足度を向上させ
ISO
ISO
15189
15189
は、技術面のみではなく、臨床検査室運
は、技術面のみではなく、臨床検査室運
ていくためのマネジメントシステムです。顧客満足度
ていくためのマネジメントシステムです。顧客満足度
営全体をマネジメントすることにより、臨床検査室の
営全体をマネジメントすることにより、臨床検査室の
を向上させるためには、顧客のニーズを明確にし、組
を向上させるためには、顧客のニーズを明確にし、組
信頼性向上のために有用です。
信頼性向上のために有用です。
織としての目標を設定し、目標が達成されているかど
織としての目標を設定し、目標が達成されているかど
うか判断するための指標を設定し、評価することが必
うか判断するための指標を設定し、評価することが必
要となります。さらに評価の結果、問題があった場合
要となります。さらに評価の結果、問題があった場合
には改善を行う必要もあります。これら一連の活動こ
には改善を行う必要もあります。これら一連の活動こ
そがそが
QMS
QMS
そのものです。
そのものです。
【臨床検査と
【臨床検査と
QMS】
QMS】
臨床検査における品質とは「検査結果の質」を、顧
臨床検査における品質とは「検査結果の質」を、顧
客とは「臨床医や患者」など検査結果を利用する
客とは「臨床医や患者」など検査結果を利用する
方々を指します。臨床医や患者の満足度を向上させる
方々を指します。臨床医や患者の満足度を向上させる
ためには、「信頼性の高い検査室」として、質の高い
ためには、「信頼性の高い検査室」として、質の高い
検査結果を提供することが求められ、これを実現する
検査結果を提供することが求められ、これを実現する
ための方法の
ための方法の
1 つとして、臨床検査室においても
1 つとして、臨床検査室においても
QMS
QMS
を構築することが推奨されます。
を構築することが推奨されます。
臨床検査における
臨床検査における
QMS
QMS
構築のためのツールとして
構築のためのツールとして
は、ISO
は、ISO
15189
15189
や CAP、JCI
や CAP、JCI
があります。
があります。
【ISO
【ISO
15189
15189
とは】
とは】
ISO
ISO
15189
15189
とは、臨床検査室の品質と能力に関する
とは、臨床検査室の品質と能力に関する
要求事項を提供するものとして国際標準化機構が作成
要求事項を提供するものとして国際標準化機構が作成
した、臨床検査室に特化した品質マネジメントシステ
した、臨床検査室に特化した品質マネジメントシステ
ムの国際規格であり、2003
ムの国際規格であり、2003
年に制定されました。
年に制定されました。
この国際規格は、1
この国際規格は、1
章から
章から
5 章と付属書
5 章と付属書
A、B
A、B
で構で構
成され、「1
成され、「1
章 適用範囲」、「2
章 適用範囲」、「2
章 引用規格」、
章 引用規格」、
「3 「3
章 用語及び定義」、4
章 用語及び定義」、4
章と章と
5 章には要求事項と
5 章には要求事項と
呼ばれる、「信頼性の高い検査室」を築いていくため
呼ばれる、「信頼性の高い検査室」を築いていくため
の条件が記載されています。
の条件が記載されています。
4 4
章の「管理上の要求事項」には、文書管理や苦情
章の「管理上の要求事項」には、文書管理や苦情
処理等、検査室や検査結果の質を管理するために必要
処理等、検査室や検査結果の質を管理するために必要
な仕組みや管理方法が、5
な仕組みや管理方法が、5
章の「技術的要求事項」に
章の「技術的要求事項」に
は、要員や検査機材、精度保証等、正しい検査結果を
は、要員や検査機材、精度保証等、正しい検査結果を
− 84 −
シンポジウムⅣ 品質向上(QMS)への取り組み
SOP(Standard
SOP(Standard
Operating
Operating
Procedure:標準作業手順書)
Procedure:標準作業手順書)
作成方法
作成方法
2.SOP(Standard
Operating
Procedure:標準作業手順書)
作成方法
~まずは作ってみましょう~
~まずは作ってみましょう~
~まずは作ってみましょう~
1) 1)
◎藤本
◎藤本
一満一満
○藤本 一満 1) 1)
ファルコバイオシステムズ総合研究所
ファルコバイオシステムズ総合研究所
検査一課
検査一課
生化学検査係
生化学検査係
ファルコバイオシステムズ総合研究所 検査一課 生化学検査係
臨床検査は患者診療にとって不可欠であり、すべて
臨床検査は患者診療にとって不可欠であり、すべて
③性能特性:測定の精密度(測定の真度、測定の精
③性能特性:測定の精密度(測定の真度、測定の精
の患者とその診療に責任をもつ臨床医のニーズを満た
の患者とその診療に責任をもつ臨床医のニーズを満た
確さ、測定の併行精度、測定の中間精度)、測定の不
確さ、測定の併行精度、測定の中間精度)、測定の不
すために利用できなければならない。質の高い臨床検
すために利用できなければならない。質の高い臨床検
確かさ、分析特異性、分析感度、検出限界、及び定量
確かさ、分析特異性、分析感度、検出限界、及び定量
査を提供するには、検査依頼のアレンジ、患者の準備、
査を提供するには、検査依頼のアレンジ、患者の準備、
限界、測定範囲、診断特異性、及び診断感度
限界、測定範囲、診断特異性、及び診断感度
患者の識別、一次サンプル(試料)採取、搬送、保存、
患者の識別、一次サンプル(試料)採取、搬送、保存、
④サンプル(試料)の種類(例:血漿、血清、尿)
④サンプル(試料)の種類(例:血漿、血清、尿)
一次サンプル(試料)処理と検査、その後に続く結果
一次サンプル(試料)処理と検査、その後に続く結果
⑤患者の準備
⑤患者の準備
の解釈、報告およびアドバイスサービスまでに至る検
の解釈、報告およびアドバイスサービスまでに至る検
⑥容器及び添加剤の種類
⑥容器及び添加剤の種類
査前・中・後の完全性を保持し、定期的な見直しによ
査前・中・後の完全性を保持し、定期的な見直しによ
⑦必要な機材及び試薬
⑦必要な機材及び試薬
って改善していく必要がある。そのために、標準作業
って改善していく必要がある。そのために、標準作業
⑧環境及び安全管理
⑧環境及び安全管理
手順書(SOP:Standard
Operating
Procedures)は必須
手順書(SOP:Standard
Operating
Procedures)は必須⑨校正手順(計測測定トレーサビリティ)
⑨校正手順(計測測定トレーサビリティ)
となり、さらに内部監査・人材育成・
PDCA
サイク
となり、さらに内部監査・人材育成・
PDCA
サイク⑩操作ステップ
⑩操作ステップ
ルを行うことによって個人および検査室の検査力向上
ルを行うことによって個人および検査室の検査力向上
⑪精度管理手順
⑪精度管理手順
が図れ、結果的に質の高い臨床検査が提供できる。
が図れ、結果的に質の高い臨床検査が提供できる。⑫干渉(例:乳び、溶血、ビリルビン、薬物)及び
⑫干渉(例:乳び、溶血、ビリルビン、薬物)及び
昨今の臨床検査は外部精度管理調査の結果が重視さ
昨今の臨床検査は外部精度管理調査の結果が重視さ
交差反応
交差反応
れるために、主催団体の提示する目標値にどれだけ近
れるために、主催団体の提示する目標値にどれだけ近
⑬結果計算法の原理、適切な場合には、測定された
⑬結果計算法の原理、適切な場合には、測定された
い値を報告できるかが焦点となり、その効果として、
い値を報告できるかが焦点となり、その効果として、
量の値の測定不確かさを含む
量の値の測定不確かさを含む
各施設の報告値が非常に幅の狭い範囲に分布する状態
各施設の報告値が非常に幅の狭い範囲に分布する状態
⑭生物学的基準範囲又は臨床判断値
⑭生物学的基準範囲又は臨床判断値
になっている。この状態が質の高い臨床検査を提供で
になっている。この状態が質の高い臨床検査を提供で
⑮検査結果の報告範囲
⑮検査結果の報告範囲
きる力を素直に反映しているか否かは不明である。
きる力を素直に反映しているか否かは不明である。⑯結果が測定範囲外であった場合の定量結果決定に
⑯結果が測定範囲外であった場合の定量結果決定に
今回、個人および検査室の検査力を向上させ、質の
今回、個人および検査室の検査力を向上させ、質の
関する指示
関する指示
高い臨床検査を提供するための基本となる
SOPSOP
の作の作⑰警戒値/緊急異常値、適切な場合
高い臨床検査を提供するための基本となる
⑰警戒値/緊急異常値、適切な場合
成手順を示す。
成手順を示す。
⑱検査室の臨床的解釈
⑱検査室の臨床的解釈
⑲可能性のある変動要因
⑲可能性のある変動要因
⑳参考資料
⑳参考資料
【SOP
の作成】
【SOP
の作成】
1.SOP
の準備:①検査方法の選択(薬事法で登録
1.SOP
の準備:①検査方法の選択(薬事法で登録4.SOP
4.SOP
の閲覧、改訂
の閲覧、改訂
された機材を使用し、学会が推奨した方法を採用す
された機材を使用し、学会が推奨した方法を採用す①関係者全員が閲覧し理解する。②定期的に見直し
①関係者全員が閲覧し理解する。②定期的に見直し
る)。②検査手順の妥当性確認(必要な実験を行い、
る)。②検査手順の妥当性確認(必要な実験を行い、
改訂する。③改訂した場合は改定記録を残す。
改訂する。③改訂した場合は改定記録を残す。
検討報告会にて承認後、SOP
を作製し関係者を教育
検討報告会にて承認後、SOP
を作製し関係者を教育
する)。③SOP
は関係者が作業場所で利用できるも
する)。③SOP
は関係者が作業場所で利用できるも【まとめ】臨床検査は、検査値を報告するだけでは臨
【まとめ】臨床検査は、検査値を報告するだけでは臨
のとする。
のとする。
床医のニーズに十分応えているとは言えない。質の高
床医のニーズに十分応えているとは言えない。質の高
2.SOP
の効果:①教育用マニュアルとして利用で
2.SOP
の効果:①教育用マニュアルとして利用でい臨床検査を提供するには、検査結果を報告するまで
い臨床検査を提供するには、検査結果を報告するまで
きる。②いつでも、だれでも同じ作業手順で検査が
きる。②いつでも、だれでも同じ作業手順で検査がの工程が保証でき、診療側からの検査結果あるいは問
の工程が保証でき、診療側からの検査結果あるいは問
できる。③理解して検査ができる。④医師および顧
できる。③理解して検査ができる。④医師および顧合せに対しアドバイスあるいはコンサルタントできる
合せに対しアドバイスあるいはコンサルタントできる
客からの問合せに同じ返答、説明ができる。⑤手順
客からの問合せに同じ返答、説明ができる。⑤手順力を身につける必要がある。これらの力(検査力)を
力を身につける必要がある。これらの力(検査力)を
見直しのたたき台となる。⑥内部監査、外部監査の
見直しのたたき台となる。⑥内部監査、外部監査のつけるには
つけるには
SOPSOP
の作成は必須である。
の作成は必須である。
対応資料となる。など。
対応資料となる。など。
3.SOP
の内容(例:ISO15189
の要求事項参照):
3.SOP
の内容(例:ISO15189
の要求事項参照):連絡先:0774-46-1010
連絡先:0774-46-1010
①検査の目的
①検査の目的
②検査に用いられる手順の原理及び測定法
②検査に用いられる手順の原理及び測定法
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シンポジウムⅣ 品質向上(QMS)への取り組み
新人教育
新人教育
3.新人教育
~施設で取り組む新人教育~
~施設で取り組む新人教育~
~施設で取り組む新人教育~
1) 1)
◎元中
◎元中
秀行秀行
1) 1)
近江八幡市立総合医療センター
近江八幡市立総合医療センター
臨床検査科
臨床検査科
○元中 秀行 近江八幡市立総合医療センター 臨床検査科
【はじめに】
【はじめに】
【施設での新人教育】
【施設での新人教育】
当検査科では、過去8年間にわたり正規職員の採用
当検査科では、過去8年間にわたり正規職員の採用
新年度が始まるとともに看護師、薬剤師また他の医
新年度が始まるとともに看護師、薬剤師また他の医
が見送られてきた期間があった。しかし、平成22年
が見送られてきた期間があった。しかし、平成22年
療技術職など多くの新規職員が各職に就く事となる。
療技術職など多くの新規職員が各職に就く事となる。
から平成25年の3年間で5名の新規採用があり、ま
から平成25年の3年間で5名の新規採用があり、ま
当院では、主に新人看護師を対象に「新規採用職員集
当院では、主に新人看護師を対象に「新規採用職員集
た今年度においても新たに1名の臨床検査技師を受け
た今年度においても新たに1名の臨床検査技師を受け
合研修」とし
合研修」とし
5 日間の研修を行っている。研修目的は
5 日間の研修を行っている。研修目的は
入れることができた。
入れることができた。
「基本理念方針を理解し、地域における役割と医療人
「基本理念方針を理解し、地域における役割と医療人
これまで新規検査導入時や臨時職員採用時において
これまで新規検査導入時や臨時職員採用時において
にふさわしい心得と態度を身につける」また、研修目
にふさわしい心得と態度を身につける」また、研修目
は、個々の担当者より検査法や手技また注意事項など、
は、個々の担当者より検査法や手技また注意事項など、
標として①「組織と設備を知り、円滑に職場適応で
標として①「組織と設備を知り、円滑に職場適応で
口頭で伝達されることが多く理解度や達成度を把握す
口頭で伝達されることが多く理解度や達成度を把握す
きる」②「看護部の理念・方針・教育を理解する」
きる」②「看護部の理念・方針・教育を理解する」
ることが困難であった。この様な事から検査科全体と
ることが困難であった。この様な事から検査科全体と
としている。
としている。
して新規採用時の新人教育体制を整える必要があると
して新規採用時の新人教育体制を整える必要があると
研修内容は、看護記録や看護技術また看護必要度な
研修内容は、看護記録や看護技術また看護必要度な
考え以下の取り組みを実施している。
考え以下の取り組みを実施している。
どの他に、新規採用職員全員を対象とした接遇・社会
どの他に、新規採用職員全員を対象とした接遇・社会
【検査科での新人教育】
【検査科での新人教育】
人研修、感染管理や電子カルテ管理規定などがあり、
人研修、感染管理や電子カルテ管理規定などがあり、
新人技師は、採用後最初の3カ月間は各部門(免疫
新人技師は、採用後最初の3カ月間は各部門(免疫
社会人・組織人としてのマナーや接遇の重要性、感染
社会人・組織人としてのマナーや接遇の重要性、感染
化学・血液・輸血・一般・細菌・病理・生理)を1~
化学・血液・輸血・一般・細菌・病理・生理)を1~
管理に関する基礎知識の習得、また情報管理に関して
管理に関する基礎知識の習得、また情報管理に関して
2 週間でローテーションを行い、日・当直業務に必要
2 週間でローテーションを行い、日・当直業務に必要
遵守すべき規定を学ぶ事となる。
遵守すべき規定を学ぶ事となる。
な検査、知識を習得した後担当部門へ配属される。こ
な検査、知識を習得した後担当部門へ配属される。こ
集合研修において検査技師の役割は、「正しく検体
集合研修において検査技師の役割は、「正しく検体
の3ヶ月間で各部門は統一の様式で必要項目・習得
の3ヶ月間で各部門は統一の様式で必要項目・習得を提出するために」として、採血管の種類や検体採取
を提出するために」として、採血管の種類や検体採取
日・注意事項・伝達事項を記入できるチェックリスト
日・注意事項・伝達事項を記入できるチェックリスト
時の注意点、保存方法などの講義を行っている。特に
時の注意点、保存方法などの講義を行っている。特に
を用い習得度の評価を行う。ローテーション終了後、
を用い習得度の評価を行う。ローテーション終了後、
4 月以降は新人職員も多く検体採取の不備が発生しが
4 月以降は新人職員も多く検体採取の不備が発生しが
達成できなかった項目や新人技師が不安を感じる箇所
達成できなかった項目や新人技師が不安を感じる箇所
ちであるため十分に理解してもらう必要がある。また、
ちであるため十分に理解してもらう必要がある。また、
においては1週間程度の予備日を設けており、再教育
においては1週間程度の予備日を設けており、再教育
薬剤部からは薬剤の使用について安全な投薬・注射を
薬剤部からは薬剤の使用について安全な投薬・注射を
を行う事となっている。なお、日・当直業務には採用
を行う事となっている。なお、日・当直業務には採用
するための基本知識について講義を行っている。
するための基本知識について講義を行っている。
後4カ月目から就く事となる。
後4カ月目から就く事となる。
【結語】
【結語】
チェックリストを用いる以前は、客観的評価基準が
チェックリストを用いる以前は、客観的評価基準が
新人教育の目的のひとつは、新規採用職員が一日で
新人教育の目的のひとつは、新規採用職員が一日で
無く、教育担当の技師により指導内容や評価基準に差
無く、教育担当の技師により指導内容や評価基準に差
も早く業務を覚え、日常業務の戦力となるよう教育を
も早く業務を覚え、日常業務の戦力となるよう教育を
があり双方に戸惑いが生じることがあった。しかし、
があり双方に戸惑いが生じることがあった。しかし、
行う事である。しかし、現在では臨床検査技師として
行う事である。しかし、現在では臨床検査技師として
共通のチェックリストを作成し、教育することにより
共通のチェックリストを作成し、教育することにより
医療チームの一員となり臨床へ貢献することが求めら
医療チームの一員となり臨床へ貢献することが求めら
指導担当技師が変わっても引継ぎ事項や新人技師の理
指導担当技師が変わっても引継ぎ事項や新人技師の理
れる。また、社会人として働くための基礎力を身につ
れる。また、社会人として働くための基礎力を身につ
解度が確認でき、効率のよい教育体制を構築できたの
解度が確認でき、効率のよい教育体制を構築できたの
けなければならないため、検査科内の業務のみを習得
けなければならないため、検査科内の業務のみを習得
ではないかと思われる。
ではないかと思われる。
すれば良いと言う訳ではない。この事から各専門職種
すれば良いと言う訳ではない。この事から各専門職種
新人技師からも「チェックシートを見る事で覚えな
新人技師からも「チェックシートを見る事で覚えな
より教育を行う事は大変有用な事である。
より教育を行う事は大変有用な事である。
ければならない業務内容が明確に示されている事で、
ければならない業務内容が明確に示されている事で、
教育過程終了後においても、臨床検査技師として働
教育過程終了後においても、臨床検査技師として働
自ら積極的に教わる事ができモチベーションの向上に
自ら積極的に教わる事ができモチベーションの向上に
くためには常に向上心を持ち、スキルアップする姿勢
くためには常に向上心を持ち、スキルアップする姿勢
つながった」との意見が得られた。また、指導者側に
つながった」との意見が得られた。また、指導者側に
を持ち続けなければならない。検査科全体としてこの
を持ち続けなければならない。検査科全体としてこの
おいても新規検査導入や検査システムの変更時等のタ
おいても新規検査導入や検査システムの変更時等のタ
ような環境を作ることも高品質な検査を提供するため
ような環境を作ることも高品質な検査を提供するため
イミングでチェックリストを見直す事により検査手技、
イミングでチェックリストを見直す事により検査手技、
に必要な事ではないかと考える。
に必要な事ではないかと考える。
手順、また非常時の対応法などを新人以外の技師にも
手順、また非常時の対応法などを新人以外の技師にも
伝達でき、マニュアルの再作成にも役立てている。
伝達でき、マニュアルの再作成にも役立てている。
− 86 −
シンポジウムⅣ 品質向上(QMS)への取り組み
ヒアリハットとその対策
4.ヒアリハットとその対策 ヒアリハットとその対策
〜自動分析装置編〜
「自動分析装置編」
「自動分析装置編」
1)1)
◎東
◎東正浩
正浩
1)1)
市立敦賀病院
市立敦賀病院医療技術部
医療技術部検査室
検査室
○東 正浩 市立敦賀病院 医療技術部 検査室
近年、医療の高度化や人口の高齢化により、臨床
近年、医療の高度化や人口の高齢化により、臨床 測定値の傾向と原因個所の調査内容をまとめた。
測定値の傾向と原因個所の調査内容をまとめた。
表1.試薬吸引・吐出不良の特徴
表1.試薬吸引・吐出不良の特徴
化学検査における検体数および検査項目数は増加し
化学検査における検体数および検査項目数は増加し
異常個所
異常個所
測定値
測定値
調査
調査
つつある。また、自動分析装置は飛躍的に進歩し、
つつある。また、自動分析装置は飛躍的に進歩し、
流路系異常
流路系異常
現在の臨床化学検査は多数の検体を「精密に」「迅
現在の臨床化学検査は多数の検体を「精密に」「迅
バラツキが大きくなる、完全に
バラツキが大きくなる、完全に
ライン上の液漏れ、気泡
ライン上の液漏れ、気泡
ポンプシール材劣化、電磁
ポンプシール材劣化、電磁 詰まると極端値が出る
詰まると極端値が出る
弁、逆止弁、ラインの詰まり
弁、逆止弁、ラインの詰まり
速に」「簡便に」報告することが可能となっている。
速に」「簡便に」報告することが可能となっている。
装置エラーとなることが多い、
装置エラーとなることが多い、
こうした中、ひとつ間違えれば診療に大きな影響
こうした中、ひとつ間違えれば診療に大きな影響 ポンプ駆動部異常
ポンプ駆動部異常
異音、動作不良
異音、動作不良
バラツキが大きくなる
バラツキが大きくなる
を与えかねない状況に出会い、ヒヤリとしたりハッ
を与えかねない状況に出会い、ヒヤリとしたりハッ 液面停止異常
液面停止異常
反応液量不足となると反
反応液量不足となると反
応過程でABS0辺りにノイ
応過程でABS0辺りにノイ
試薬ターンテーブルの回転、
試薬ターンテーブルの回転、
トしたが幸いにも回避できたことを「ヒヤリハット」
トしたが幸いにも回避できたことを「ヒヤリハット」
突発的な異常値
突発的な異常値
ズが見られる
ズが見られる
停止で試薬の液面揺らぎでピ
停止で試薬の液面揺らぎでピ
液面検知モニタ機能があ
液面検知モニタ機能があ
ペット停止位置より液面が下
ペット停止位置より液面が下
といい、臨床化学検査においても、多くの臨床検査
といい、臨床化学検査においても、多くの臨床検査
れば確認
れば確認
がるがる
技師が経験していると考えられる。
技師が経験していると考えられる。
サンプル系、試薬系ライン
サンプル系、試薬系ライン
脱気装置、真空ポンプ異常
脱気装置、真空ポンプ異常
バラツキが大きくなる
バラツキが大きくなる
に細かな気泡が発生
に細かな気泡が発生
今回、自動分析装置に起因すると考えられるトラ
今回、自動分析装置に起因すると考えられるトラ
ブルを未然に防ぎ、異常データを出さない『検査力』
ブルを未然に防ぎ、異常データを出さない『検査力』 3.撹拌不良 3.撹拌不良 を身につけるために、自動分析装置の管理について
を身につけるために、自動分析装置の管理について
撹拌不良が発生すると反応溶液が不均質になり反
撹拌不良が発生すると反応溶液が不均質になり反
考えてみたい。
考えてみたい。
応が遅れる場合がある。反応過程モニターを確認す
応が遅れる場合がある。反応過程モニターを確認す
ると、直線的な反応を示さず揺らぐ、END
ると、直線的な反応を示さず揺らぐ、END
反応で
反応で
臨床化学検査で多く用いられている全反応過程測
臨床化学検査で多く用いられている全反応過程測 は終点に達しない、Rate
は終点に達しない、Rate
反応では
反応では
Lag
Lag
タイムの延
タイムの延
光方式の自動分析装置の駆動系は①測光セルを兼ね
光方式の自動分析装置の駆動系は①測光セルを兼ね 長などが見られる。
長などが見られる。
る反応容器とその洗浄機構、②37
る反応容器とその洗浄機構、②37
度に加温する恒
度に加温する恒
4.ランプの劣化
4.ランプの劣化
温槽、③試料を正確・精密に一定量を分収して分注
温槽、③試料を正確・精密に一定量を分収して分注 ランプが劣化するとまず
ランプが劣化するとまず
UV
UV
測定系に異常が出や
測定系に異常が出や
するサンプリング機構、④試薬を正確・精密に分注
するサンプリング機構、④試薬を正確・精密に分注 すい。特に
すい。特に
UV
UV
測定の
測定の
AST、ALT、UN
AST、ALT、UN
など低濃度
など低濃度
する試薬分注機構、⑤試料と試薬を均一にする撹拌
する試薬分注機構、⑤試料と試薬を均一にする撹拌 検体に反応過程の異常として測定値にエラーマーク
検体に反応過程の異常として測定値にエラーマーク
機構、⑥ターンテーブルの回転ごとに反応容器の吸
機構、⑥ターンテーブルの回転ごとに反応容器の吸 (分散異常、リニアティー異常など:メーカーによ
(分散異常、リニアティー異常など:メーカーによ
光度を測る光源ランプと測光機構、に分けられる。
光度を測る光源ランプと測光機構、に分けられる。 り異なる)がつく場合はランプの劣化を疑う。この
り異なる)がつく場合はランプの劣化を疑う。この
これらの駆動系が正常に稼働していれば正しい測定
これらの駆動系が正常に稼働していれば正しい測定 時、セルブランク異常も発生しやすくなる。
時、セルブランク異常も発生しやすくなる。
結果の報告が可能となるが、いずれかの機構に不具
結果の報告が可能となるが、いずれかの機構に不具
合が発生するとたちまちばらつきの原因となり放置
合が発生するとたちまちばらつきの原因となり放置 最後に自動分析装置のトラブル防止策としては日
最後に自動分析装置のトラブル防止策としては日
すると誤った測定値の報告に繋がり、やがて測定を
すると誤った測定値の報告に繋がり、やがて測定を 常の点検作業が重要である。点検のポイントは「視
常の点検作業が重要である。点検のポイントは「視
ストップさせるような装置トラブルに発展する可能
ストップさせるような装置トラブルに発展する可能 覚」「触覚」「聴覚」「嗅覚」「記録」であり、異
覚」「触覚」「聴覚」「嗅覚」「記録」であり、異
性がある。
性がある。
常の発見や原因の究明に役立てることである。また、
常の発見や原因の究明に役立てることである。また、
自動分析装置に起因するものを以下に示す。
自動分析装置に起因するものを以下に示す。
測定値の安定性を管理する情報として、校正時の吸
測定値の安定性を管理する情報として、校正時の吸
1.セル洗浄機構
1.セル洗浄機構
光度データを確認することは、装置および試薬の評
光度データを確認することは、装置および試薬の評
洗浄機構の不良にはオーバーフロー(洗浄液がセ
洗浄機構の不良にはオーバーフロー(洗浄液がセ 価に有効でありぜひ活用いただきたい。
価に有効でありぜひ活用いただきたい。
ルから溢れ出す)や液だれ、洗浄不足がある。いず
ルから溢れ出す)や液だれ、洗浄不足がある。いず 自動化された臨床化学検査に携わる臨床検査技師
自動化された臨床化学検査に携わる臨床検査技師
れも装置の状態をよく目視観察し、原因を特定する
れも装置の状態をよく目視観察し、原因を特定する は、検査室の品質向上のために異常データを出さな
は、検査室の品質向上のために異常データを出さな
必要がある。
必要がある。
い工夫と発見する『検査力』を身につけ、質の高い
い工夫と発見する『検査力』を身につけ、質の高い
2.試薬吸引・吐出不良
2.試薬吸引・吐出不良
臨床検査データの提供が求められている。
臨床検査データの提供が求められている。
表
表
1 に試薬吸引・吐出不良の特徴を異常個所別に
1 に試薬吸引・吐出不良の特徴を異常個所別に (連絡先:市立敦賀病院 TEL
(連絡先:市立敦賀病院 TEL
0770-22-3611)
0770-22-3611)
− 87 −
シンポジウムⅣ 品質向上(QMS)への取り組み
ヒアリハットとその対策 ~ヒューマンエラーを防ぐ~
ヒアリハットとその対策 ~ヒューマンエラーを防ぐ~
5.ヒアリハットとその対策
ヒアリハットとその対策~ヒューマンエラーを防ぐ~
ヒアリハットとその対策~ヒューマンエラーを防ぐ~
~ヒューマンエラーを防ぐ~ 試薬編
『試薬編』
『試薬編』
1) 1)
◎堀端
◎堀端
伸行
伸行
1) ○堀端 伸行 1)
公立大学法人
公立大学法人
和歌山県立医科大学附属病院
和歌山県立医科大学附属病院
中央検査部
中央検査部
公立大学法人 和歌山県立医科大学附属病院 中央検査部
今回の題名である「ヒアリハットとその対策~ヒ
今回の題名である「ヒアリハットとその対策~ヒ 証していく必要がある。検証の結果よりヒューマン
証していく必要がある。検証の結果よりヒューマン
ューマンエラーを防ぐ~」は、品質向上において不
ューマンエラーを防ぐ~」は、品質向上において不 エラーの防止対策が必要不可欠となる。
エラーの防止対策が必要不可欠となる。
可欠な取り組みであると言える。
可欠な取り組みであると言える。
ヒューマンエラーとは、「意図しない結果を生じ
ヒューマンエラーとは、「意図しない結果を生じ   人が間違えないように人を訓練する
人が間違えないように人を訓練する
る人間の行為」と定義されている。人間の注意力に
る人間の行為」と定義されている。人間の注意力に
新人教育・勉強会/研修会
新人教育・勉強会/研修会
etcetc
は限界があり、疲労や環境要因によりヒューマンエ
は限界があり、疲労や環境要因によりヒューマンエ   人が間違えにくい仕組み・やり方にする。
人が間違えにくい仕組み・やり方にする。
あああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああ
ラーを起こす場合がある。
ラーを起こす場合がある。
二人で確認しながら試薬補充
二人で確認しながら試薬補充
ヒューマンエラーを防ぐためには「人間は必ずミ
ヒューマンエラーを防ぐためには「人間は必ずミ   人が間違えてもすぐに発見出来る様にする。
人が間違えてもすぐに発見出来る様にする。
スを犯すもの」との前提で作業工程を構築する必要
スを犯すもの」との前提で作業工程を構築する必要
機器でのタイムコースチェック
機器でのタイムコースチェック
があると考える。
があると考える。
精度管理試料の基準範囲の見直し
精度管理試料の基準範囲の見直し
ミスを犯した者に対して「注意力散漫だ」「何を
ミスを犯した者に対して「注意力散漫だ」「何を   人が間違えても影響を少なくなるようにする。
人が間違えても影響を少なくなるようにする。
考えているんだ!」など個人を責めるのではなく、
考えているんだ!」など個人を責めるのではなく、
検査システムでの警告設定
検査システムでの警告設定
なぜ?そのようなミスが起きてしまったのか、その
なぜ?そのようなミスが起きてしまったのか、その
ミスの原因がどこにあるのかを検証すること、対策
ミスの原因がどこにあるのかを検証すること、対策 まとめ
まとめ
を立てることが重要である。
を立てることが重要である。
ヒューマンエラーを回避することは、不可能である。
ヒューマンエラーを回避することは、不可能である。
今回は、当院で試薬に関するヒューマンエラーに
今回は、当院で試薬に関するヒューマンエラーに しかし、それをヒアリハットやアクシデント以前で
しかし、それをヒアリハットやアクシデント以前で
よって起こったヒアリハット事例とその対策法を紹
よって起こったヒアリハット事例とその対策法を紹 食い止めることは可能である。なぜなぜ解析などを
食い止めることは可能である。なぜなぜ解析などを
介する。
介する。
用いて原因の追及を行い、対策法を立てることによ
用いて原因の追及を行い、対策法を立てることによ
り検査室にとって、働く者にとって最良な方法で施
り検査室にとって、働く者にとって最良な方法で施
事例
事例
設及び個人の検査力を高めることが出来るのではな
設及び個人の検査力を高めることが出来るのではな
現象:総コレステロール(TCHO)精度管理異常
現象:総コレステロール(TCHO)精度管理異常
いだろうかと考える。
いだろうかと考える。
試薬の補充後、試薬ブランク測定を実施、管理血
試薬の補充後、試薬ブランク測定を実施、管理血
0734-447-2300(2389)
0734-447-2300(2389)
清を測定したところ、TCHO
清を測定したところ、TCHO
の高値管理血清のみ低
の高値管理血清のみ低
値となった。
値となった。
反応過程を確認すると特に問題がなかったものの、
反応過程を確認すると特に問題がなかったものの、
全体的に吸光度の上昇傾向がみられた為、試薬を確
全体的に吸光度の上昇傾向がみられた為、試薬を確
認したところ、無色透明のはずが若干の着色が目視
認したところ、無色透明のはずが若干の着色が目視
確認された。
確認された。
あああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああ
対策法:試薬補充間違い(ヒューマンエラー)発覚
対策法:試薬補充間違い(ヒューマンエラー)発覚
後、一人で行っていた試薬補充を二人で第一試薬/
後、一人で行っていた試薬補充を二人で第一試薬/
第二試薬に分けて、お互いに確認しながら作業を行
第二試薬に分けて、お互いに確認しながら作業を行
うこととした。
うこととした。
しかし、これだけでいいのだろうか?これだけで本
しかし、これだけでいいのだろうか?これだけで本
当にヒューマンエラーは防げるのであろうか?
当にヒューマンエラーは防げるのであろうか?
品質向上の為には、いろんな角度からその事象を検
品質向上の為には、いろんな角度からその事象を検
− 88 −
シンポジウムⅣ 品質向上(QMS)への取り組み
ヒアリハット ~システム編~
ヒアリハット ~システム編~
6.ヒアリハット
~システム編~ 新棟移転・測定機器更新時に見落とされた事例
新棟移転・測定機器更新時に見落とされた事例
新棟移転・測定機器更新時に見落とされた事例
◎倉田
◎倉田主税
主税1)1)
奈良県立医科大学附属病院
奈良県立医科大学附属病院中央臨床検査部
中央臨床検査部1)1)
○倉田 主税 奈良県立医科大学附属病院 中央臨床検査部
【はじめに】
【はじめに】
当院では検査部の新棟移設に伴い稼働後15年以
当院では検査部の新棟移設に伴い稼働後15年以
上経過した検体分注搬送システムを含めた生化学、
上経過した検体分注搬送システムを含めた生化学、
免疫、血液、夜間休日用検査機器の更新および追加
免疫、血液、夜間休日用検査機器の更新および追加
を行った。検体分注搬送システムをはじめ接続され
を行った。検体分注搬送システムをはじめ接続され
る機器が新しくなった為、臨床検査情報システム
る機器が新しくなった為、臨床検査情報システム
(以下LIS)や、病院電子カルテシステムとの接
(以下LIS)や、病院電子カルテシステムとの接
続試験を含め数々のチェックを十分に行ったにもか
続試験を含め数々のチェックを十分に行ったにもか
かわらず、ヒヤリハットを経験したので報告する。
かわらず、ヒヤリハットを経験したので報告する。
【背景】
【背景】
検体分注搬送システムはIDSを導入し、ラボス
検体分注搬送システムはIDSを導入し、ラボス
ペクト008-M1を1台(日立)、ラボスペクト
ペクト008-M1を1台(日立)、ラボスペクト
008-M2×2台(日立)、コバス8000<6
008-M2×2台(日立)、コバス8000<6
02>-M2(ロシュ)、アーキテクトi2000
02>-M2(ロシュ)、アーキテクトi2000
SR(アボット)×2台を接続した。ルーチン稼働
SR(アボット)×2台を接続した。ルーチン稼働
に向け、次に示す試験を実施した。
に向け、次に示す試験を実施した。
・異常検体を含むテスト検体を作成し、生化学項目
・異常検体を含むテスト検体を作成し、生化学項目
での分注、搬送、各機器での測定の確認
での分注、搬送、各機器での測定の確認
・生化学項目に免疫項目を含めた複数項目依頼での
・生化学項目に免疫項目を含めた複数項目依頼での
分注、搬送、各機器での測定確認
分注、搬送、各機器での測定確認
・1項目毎のテスト検体を作成し、分注、搬送、分
・1項目毎のテスト検体を作成し、分注、搬送、分
析、再検、結果送信の確認
析、再検、結果送信の確認
・コントロール血清は、バーコード運用とラック運
・コントロール血清は、バーコード運用とラック運
用のそれぞれについて通信確認
用のそれぞれについて通信確認
・分析機の測定値とLISのオンラインモニター上
・分析機の測定値とLISのオンラインモニター上
データの確認
データの確認
上記の試験を実施し、分注、搬送、各機器の測定
上記の試験を実施し、分注、搬送、各機器の測定
などのハード面、バーコードやラックを用いたオー
などのハード面、バーコードやラックを用いたオー
ダーのやり取りとLISへの結果出力などのソフト
ダーのやり取りとLISへの結果出力などのソフト
面で問題がない事を確認した。
面で問題がない事を確認した。
前述の試験後11月5日にルーチンを開始。
前述の試験後11月5日にルーチンを開始。
始業前点検として生化学自動分析機3台でプール血
始業前点検として生化学自動分析機3台でプール血
清を10重測定し、再現性及び互換性を確認した。
清を10重測定し、再現性及び互換性を確認した。
コントロール測定結果は担当者が測定機で確認し、
コントロール測定結果は担当者が測定機で確認し、
問題はなかった。
問題はなかった。
翌日も再現性および互換性は問題なかったが、患者
翌日も再現性および互換性は問題なかったが、患者
検体結果確認中に初回値と再検値に差がある検体が
検体結果確認中に初回値と再検値に差がある検体が
見受けられた。再々検の結果、3台の自動分析機の
見受けられた。再々検の結果、3台の自動分析機の
うち1台の測定値が一致しなかった為、その機器の
うち1台の測定値が一致しなかった為、その機器の
不具合を疑い、処置を行ったが機器や試薬に問題が
不具合を疑い、処置を行ったが機器や試薬に問題が
ない事が確認された。その時点で不具合を疑ってい
ない事が確認された。その時点で不具合を疑ってい
た機器以外のLISの結果確認画面の表示と分析機
た機器以外のLISの結果確認画面の表示と分析機
の出力結果が違う事が判明した。
の出力結果が違う事が判明した。
【考察】
【考察】
複数回に及んだチェックを経てこのような事態が
複数回に及んだチェックを経てこのような事態が
発生した原因は、3台ある生化学自動分析装置が同
発生した原因は、3台ある生化学自動分析装置が同
一機種であった為、通信確認試験は1台のみの実施
一機種であった為、通信確認試験は1台のみの実施
であった事。
であった事。
及び残り2台の分析機には、TGとGLU両方に同
及び残り2台の分析機には、TGとGLU両方に同
一のシステムコードが入力されていたが通信確認試
一のシステムコードが入力されていたが通信確認試
験を行わなかった為、入力間違いに気付けなかった
験を行わなかった為、入力間違いに気付けなかった
事に起因する。
事に起因する。
また、間違いに気付くのに時間がかかった原因は、
また、間違いに気付くのに時間がかかった原因は、
この2項目が生理的要因に左右される項目であり、
この2項目が生理的要因に左右される項目であり、
測定値が近似していた事。
測定値が近似していた事。
及びシステムコードが正しく入力されていた分析機
及びシステムコードが正しく入力されていた分析機
の機器もしくは試薬のトラブルと考えた事が大きな
の機器もしくは試薬のトラブルと考えた事が大きな
要因であった。
要因であった。
【結語】
【結語】
本件は極めて稀なヒヤリハットであると考えるが、
本件は極めて稀なヒヤリハットであると考えるが、
システムの構築やオンラインテストを行う上で注意
システムの構築やオンラインテストを行う上で注意
する必要性を感じた。度重なる確認試験を行ってい
する必要性を感じた。度重なる確認試験を行ってい
た事とシステムコードの入力は間違っていないとい
た事とシステムコードの入力は間違っていないとい
う先入観が根底にあり、同一機種であっても確認試
う先入観が根底にあり、同一機種であっても確認試
験を実施する重要性があると考える。
験を実施する重要性があると考える。
今回の機器更新は前回の機器更新から15年以上
今回の機器更新は前回の機器更新から15年以上
経過しており、資料もないまま手さぐりで行った。
経過しており、資料もないまま手さぐりで行った。
このような大規模な機器更新の頻度は決して高くは
このような大規模な機器更新の頻度は決して高くは
ないが、システムの変更や機種の変更時にも対応で
ないが、システムの変更や機種の変更時にも対応で
きるSOP(標準作業手順書)の作成とそれを用い
きるSOP(標準作業手順書)の作成とそれを用い
た確認体制が必要だと思われる。
た確認体制が必要だと思われる。
− 89 −
シンポジウムⅤ −生理−
9月20日(土) 13:20~15:20 第2会場 3階 国際会議場
テーマ:チーム医療における生理検査の導入法
司会:木下 綾(独立行政法人国立病院機構南和歌山医療センター 研究検査科)
畑 久勝(恩賜財団済生会滋賀県病院 臨床検査科)
1.神戸大学病院における臓器・組織提供に際しての医療連携の実際
〜移植コーディネーターとしての技師の役割について〜
福岡 恵子(国立大学法人神戸大学医学部附属病院 検査部)
2.当院手術室おけるチーム医療 〜術中神経機能モニタリングと技師の関わり〜
高谷 恒範(奈良県立医科大学附属病院 中央臨床検査部)
3.フットケアチームにおける生理検査室の役割
河野 裕樹(市立敦賀病院 医療技術部検査室)
4.エコー検査による他の診療部署との関わり方
川﨑 俊博(大阪掖済会病院 臨床検査科)
●ねらい
近年、医療の質や安全性の向上及び高度化・複雑化に伴う業務の増大に対応するため、多種多様なス
タッフが各々の高い専門性を前提とし、目的と情報を共有し、業務を分担するとともに互いに連携・補
完しあい、患者の状況に的確に対応した医療を提供する「チーム医療」が様々な医療現場で実践されてい
る。厚生労働省では平成22年3月に報告書「チーム医療の推進について」を取りまとめ、さらに、報告
書の内容を踏まえて「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」を発出している。こ
のような状況下、生理検査分野においては、もともと他職種と連携して行う業務が多く、また日常的に患
者とコミュニケーションを行う分野でもあり、新たにチーム医療としての業務が発展をもたらす可能性を
多く秘めており、各施設における様々な実践の試みも、すでに始まっている。
今回のシンポジウムでは、生理分野を専門とする臨床検査技師が実践する各種チーム医療の実際につい
て報告後、他職種、患者とのコミュニケーションスキル、組織運営法や各医療スタッフの知識・技術の高
度化への取組について討論を重ねたいと思う。
− 90 −
シンポジウムⅤ チーム医療における生理検査の導入法
神戸大学病院における臓器・組織提供に際しての医療連携の実際
神戸大学病院における臓器・組織提供に際しての医療連携の実際
1.神戸大学病院における臓器・組織提供に際しての医療連携の実際
〜移植コーディネーターとしての技師の役割について〜
移植コーディネーターとしての技師の役割について
移植コーディネーターとしての技師の役割について
1) 1)
◎福岡
◎福岡
恵子恵子
○福岡 恵子 1) 1) 国立大学法人
国立大学法人
神戸大学医学部附属病院
神戸大学医学部附属病院
検査部
検査部
生理検査部門
生理検査部門
国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 検査部 生理検査部門
当院では、臓器・組織提供の流れを理解したドナー
当院では、臓器・組織提供の流れを理解したドナー
ムはムは
20132013
年 3年
月には
3 月には
13 回目を迎え、また
13 回目を迎え、また
20122012
年 年
担当院内移植コーディネーター(以下、院内
担当院内移植コーディネーター(以下、院内
Co.)が
Co.)が
8 月にはスペインの
8 月にはスペインの
TPMTPM
受講者によるミニワークシ
受講者によるミニワークシ
連携し、提供の意思の確認及び提供情報があった際、
連携し、提供の意思の確認及び提供情報があった際、
ョップも開催している。検査部の院内
ョップも開催している。検査部の院内
Co.は、法に基
Co.は、法に基
円滑に臓器・組織提供をすすめる体制を構築してきた。
円滑に臓器・組織提供をすすめる体制を構築してきた。
づく脳波検査の実践手技のシミュレーションを担当、
づく脳波検査の実践手技のシミュレーションを担当、
また、検査に必要な知識や技術の提供を行った。
また、検査に必要な知識や技術の提供を行った。
《はじめに》
《はじめに》
病院における移植医療並びに、臓器・組織の提供が
病院における移植医療並びに、臓器・組織の提供が
《マニュアルの整備》
《マニュアルの整備》
適正かつ円滑に行われることを目的とし、平成
16 年
適正かつ円滑に行われることを目的とし、平成
16 年
臓器・組織提供マニュアルの作成、また法改正に伴う
臓器・組織提供マニュアルの作成、また法改正に伴う
に院内
Co.連絡会議(事務部総務課管轄)が設置され
に院内
Co.連絡会議(事務部総務課管轄)が設置され
そのマニュアル改訂を行ってきた。多職種の院内
そのマニュアル改訂を行ってきた。多職種の院内
た。本連絡会議の構成員である院内
Co.は医師、看護
た。本連絡会議の構成員である院内
Co.は医師、看護
Co.がマニュアル作成、改訂に携わることにより、各
Co.がマニュアル作成、改訂に携わることにより、各
師のみならず、放射線部、検査部、兵庫アイバンクか
師のみならず、放射線部、検査部、兵庫アイバンクか
部門の実情に即したものが作成でき、また電子カルテ
部門の実情に即したものが作成でき、また電子カルテ
らも選任され、多職種の集団として運営されているこ
らも選任され、多職種の集団として運営されているこ
から閲覧できるよう整備したことにより、広く院内で
から閲覧できるよう整備したことにより、広く院内で
とが当院での特徴である。毎月1回、移植医療委員会
とが当院での特徴である。毎月1回、移植医療委員会
活用されるようになっている。当院における過去の提
活用されるようになっている。当院における過去の提
委員長のもと、(社)日本臓器移植ネットワーク兵庫
委員長のもと、(社)日本臓器移植ネットワーク兵庫
供事例は、大半が救命救急科における提供に関する意
供事例は、大半が救命救急科における提供に関する意
県移植
Co.も参加して院内
Co.が定例の院内
Co.連絡会
県移植
Co.も参加して院内
Co.が定例の院内
Co.連絡会
思確認を端緒として提供に至っている。しかし他科に
思確認を端緒として提供に至っている。しかし他科に
議を行い、以下の業務に携わってきた。その中で、検
議を行い、以下の業務に携わってきた。その中で、検
おいてもリビングウィルの一環として当院マニュアル
おいてもリビングウィルの一環として当院マニュアル
査技師の役割について紹介したい。
査技師の役割について紹介したい。
に準拠し、院内
に準拠し、院内
Co.が介入することによって提供意思
Co.が介入することによって提供意思
を尊重できた事例も発生しており、マニュアル整備の
を尊重できた事例も発生しており、マニュアル整備の
《臓器提供シミュレーション参画》
《臓器提供シミュレーション参画》
重要性が再認識されている。
重要性が再認識されている。
移植業務は突然起こるため、組織としての体制を整
移植業務は突然起こるため、組織としての体制を整
えることに加えて、いざという時にスタッフ間の連携
えることに加えて、いざという時にスタッフ間の連携
《今後の課題》
《今後の課題》
が十分取れるようにしておく必要がある。院内
Co.が
が十分取れるようにしておく必要がある。院内
Co.が
臨床検査技師は、移植医療の中心業務を担う医師等
臨床検査技師は、移植医療の中心業務を担う医師等
普段から会議を重ね、お互い顔を熟知しており、移植
普段から会議を重ね、お互い顔を熟知しており、移植
を強くサポートすることで、臓器提供の過程を円滑に
を強くサポートすることで、臓器提供の過程を円滑に
医療知識の豊富な院内
Co.として、各部署のリーダー
医療知識の豊富な院内
Co.として、各部署のリーダー
進める立場にある。そのことにより移植医療の質を格
進める立場にある。そのことにより移植医療の質を格
役を務めることにより効率よく移植業務が進められる。
役を務めることにより効率よく移植業務が進められる。
段に上げる原動力の一環となるべき職種と考えている。
段に上げる原動力の一環となるべき職種と考えている。
検査部院内
Co.は、脳死判定における業務の部内教育
検査部院内
Co.は、脳死判定における業務の部内教育
今後行っていくべき事項として、院内において更に
今後行っていくべき事項として、院内において更に
と脳波検査や
ABRABR
検査の備品準備やマニュアル作成、
と脳波検査や
検査の備品準備やマニュアル作成、
臓器・組織提供マニュアルの周知徹底を図るとともに、
臓器・組織提供マニュアルの周知徹底を図るとともに、
機器整備を担当する。また、シミュレーション参画を
機器整備を担当する。また、シミュレーション参画を
リビングウィルを尊重する環境を構築するためにも、
リビングウィルを尊重する環境を構築するためにも、
通じて診療側の流れを体得しておくことが重要である。
通じて診療側の流れを体得しておくことが重要である。
患者の臓器提供意志確認が、より行いやすい環境の構
患者の臓器提供意志確認が、より行いやすい環境の構
当院ではそのことにより、検査部院内
Co.と脳死判定
当院ではそのことにより、検査部院内
Co.と脳死判定
築にも力を注ぎたい。そして、移植医療というものを、
築にも力を注ぎたい。そして、移植医療というものを、
委員とがコンタクトがとりやすくなり、臓器提供時脳
委員とがコンタクトがとりやすくなり、臓器提供時脳
急性期治療、慢性期治療に関わらず、また、診療科に
急性期治療、慢性期治療に関わらず、また、診療科に
死判定検査の導入がスムーズになった。
死判定検査の導入がスムーズになった。
捕らわれることなく病院全体でのチーム医療の延長上
捕らわれることなく病院全体でのチーム医療の延長上
で捉え、その質を高めていくことが求められている。
で捉え、その質を高めていくことが求められている。
《移植医療フォーラムの開催》
《移植医療フォーラムの開催》
その中で、検査技師の立場でできることは少なくない
その中で、検査技師の立場でできることは少なくない
移植業務には、院内医療従事者のみならず、一般市
移植業務には、院内医療従事者のみならず、一般市
と考えている。
と考えている。
民の理解が重要である。その啓発と普及を目的とし、
民の理解が重要である。その啓発と普及を目的とし、
また、従来からの大学病院の使命として、近隣医療施
また、従来からの大学病院の使命として、近隣医療施
連絡先:神戸大学医学部附属病院 検査部
連絡先:神戸大学医学部附属病院 検査部
設への知識伝達を目的として、当院主催の移植医療フ
設への知識伝達を目的として、当院主催の移植医療フ
078-382-6330
078-382-6330
(直通携帯:75012)
(直通携帯:75012)
ォーラムを年1〜2回企画、開催してきた。フォーラ
ォーラムを年1〜2回企画、開催してきた。フォーラ
− 91 −
シンポジウムⅤ チーム医療における生理検査の導入法
当院手術室おけるチーム医療 当院手術室おけるチーム医療 2.当院手術室おけるチーム医療
〜術中神経機能モニタリングと技師の関わり〜
――術中神経機能モニタリングと技師の関わり
術中神経機能モニタリングと技師の関わり――
1) 1)
◎高谷
◎高谷
恒範
恒範
1) 1)
奈良県立医科大学附属病院
奈良県立医科大学附属病院
中央臨床検査部
中央臨床検査部
○高谷 恒範 奈良県立医科大学附属病院 中央臨床検査部
術後神経機能障害は、患者予後に関わる重大な問題
術後神経機能障害は、患者予後に関わる重大な問題 奈良県立医科大学附属病院 奈良県立医科大学附属病院 である。術中の運動、感覚,視覚,聴覚などの神経機
である。術中の運動、感覚,視覚,聴覚などの神経機 中央臨床検査部 生理機能検査室
中央臨床検査部 生理機能検査室
能評価として誘発電位モニターが近年、普及してきた。
能評価として誘発電位モニターが近年、普及してきた。
連絡先
連絡先
0744-22-3051(内線
0744-22-3051(内線
4240)
4240)
信頼性の高い誘発電位モニタリングを行うためには十
信頼性の高い誘発電位モニタリングを行うためには十
分な知識と経験が必要である。当院では、臨床検査技
分な知識と経験が必要である。当院では、臨床検査技
師、脳神経外科医、整形外科医、心臓呼吸器外科医、
師、脳神経外科医、整形外科医、心臓呼吸器外科医、
麻酔科医からなるチームで術中神経モニタリングに取
麻酔科医からなるチームで術中神経モニタリングに取
り組んでいる。 り組んでいる。 今回、臨床検査技師の立場から信頼性の高い術中神
今回、臨床検査技師の立場から信頼性の高い術中神
経モニターを実施するために行っているチーム医療の
経モニターを実施するために行っているチーム医療の
現状と課題を遡及的に検討した。2013
年年
4月
1 日か
現状と課題を遡及的に検討した。2013
4月
1 日か
らら
2014
年年
3月
3131
日に当院で実施した術中神経機能モ
2014
3月
日に当院で実施した術中神経機能モ
件,
ニターは、205
件,内訳:MEP:180
件,ABR:24
ニターは、205
件,内訳:MEP:180
件,ABR:24
件,
VEP:31
件,SEP:80
件,EEG:32
件,その他:22
件件
VEP:31
件,SEP:80
件,EEG:32
件,その他:22
であった。臨床検査技師は、手術1週間前までに術中
であった。臨床検査技師は、手術1週間前までに術中
モニタリングの依頼を受け、手術当日は機器設定、患
モニタリングの依頼を受け、手術当日は機器設定、患
者への電極設置、波形記録などを行う。担当の臨床検
者への電極設置、波形記録などを行う。担当の臨床検
査技師は
4 名(新人
1 名)で、経験年齢は
0 年~8
年年
査技師は
4 名(新人
1 名)で、経験年齢は
0 年~8
である。1
日日
2 列までのモニタリングを実施、モニタ
である。1
2 列までのモニタリングを実施、モニタ
リングに準備には
1-2
名の臨床検査技師で対応して
リングに準備には
1-2
名の臨床検査技師で対応して
いる。
いる。
術中の波形変化時は、即座に生理学的要因、全身麻
術中の波形変化時は、即座に生理学的要因、全身麻
酔薬、術操作によるものかを判断する必要性がある。
酔薬、術操作によるものかを判断する必要性がある。
生理学的要因や全身麻酔薬が原因の場合は、麻酔科に
生理学的要因や全身麻酔薬が原因の場合は、麻酔科に
報告して対応してもらっている。また、術操作による
報告して対応してもらっている。また、術操作による
ものなら外科医に報告し対応してもらっている。当院
ものなら外科医に報告し対応してもらっている。当院
では、術中の麻酔科医や外科医との連携がスムーズに
では、術中の麻酔科医や外科医との連携がスムーズに
行うことができている。その背景には、月
1 回開催さ
行うことができている。その背景には、月
1 回開催さ
れる臨床検査技師、脳神経外科、整形外科、麻酔科医
れる臨床検査技師、脳神経外科、整形外科、麻酔科医
での術中神経モニター会議でモニタリング結果の検討
での術中神経モニター会議でモニタリング結果の検討
を行い、問題点の改善などに取り組んでいる。共同で
を行い、問題点の改善などに取り組んでいる。共同で
モニター講習会なども開催している。ただし、手術室
モニター講習会なども開催している。ただし、手術室
にて勤務歴のない臨床検査技師からは、その勤務を敬
にて勤務歴のない臨床検査技師からは、その勤務を敬
遠される傾向が認められる。信頼性の高い術中神経機
遠される傾向が認められる。信頼性の高い術中神経機
能モニターは、密接なコミュニケーションと信頼関係
能モニターは、密接なコミュニケーションと信頼関係
が重要で、チーム医療に更なる強化の為の対策が重要
が重要で、チーム医療に更なる強化の為の対策が重要
であると考えられる。
であると考えられる。
− 92 −
シンポジウムⅤ チーム医療における生理検査の導入法
3.フットケアチームにおける生理検査室の役割
フットケアチームにおける生理検査室の役割
フットケアチームにおける生理検査室の役割
1) 1)
◎河野
◎河野
裕樹
裕樹
1) 1)
市立敦賀病院
市立敦賀病院
医療技術部
医療技術部
検査室
検査室
○河野 裕樹 市立敦賀病院 医療技術部 検査室
【はじめに】
【はじめに】
て「下肢動脈エコー検査」が行われる。当検査は、狭
て「下肢動脈エコー検査」が行われる。当検査は、狭
本邦では、高齢化社会や生活習慣の欧米化を背景に、末
本邦では、高齢化社会や生活習慣の欧米化を背景に、末窄・閉塞の有無や程度、病変部位を血行動態の評価から
窄・閉塞の有無や程度、病変部位を血行動態の評価から
梢動脈疾患(PAD)が増加しつつある。特に、糖尿病患
梢動脈疾患(PAD)が増加しつつある。特に、糖尿病患 アプローチする。エコー検査の大きな利点は、無侵襲で
アプローチする。エコー検査の大きな利点は、無侵襲で
者、人工透析患者、ヘビースモーカーは
者、人工透析患者、ヘビースモーカーは
PADPAD
のリスクが
のリスクが血管を視認できる、繰り返し検査が行える、リアルタイ
血管を視認できる、繰り返し検査が行える、リアルタイ
高いと言われており、PAD
高いと言われており、PAD
が重症化して重症下肢虚血状
が重症化して重症下肢虚血状ムの評価ができることである。しかし患者によっては評
ムの評価ができることである。しかし患者によっては評
態になると、最終的に足切断を余儀なくされる。これを
態になると、最終的に足切断を余儀なくされる。これを価困難例もあり、検者の技量に大きく左右されることか
価困難例もあり、検者の技量に大きく左右されることか
回避するためには、原因となる疾患の発症予防が重要と
回避するためには、原因となる疾患の発症予防が重要とら、正確な知識と技術を身につけることが必須条件とな
ら、正確な知識と技術を身につけることが必須条件とな
なるが、中でも急速に増加している糖尿病は、緊急の課
なるが、中でも急速に増加している糖尿病は、緊急の課る。
る。
題となっている。現在、糖尿病に関する情報は、糖尿病
題となっている。現在、糖尿病に関する情報は、糖尿病【当院の生理検査業務】
【当院の生理検査業務】
認定看護師や糖尿病療養指導士の活動により広く知れ渡
認定看護師や糖尿病療養指導士の活動により広く知れ渡PADPAD
検査時に足の視診・触診・問診を行い、検査技師自
検査時に足の視診・触診・問診を行い、検査技師自
り、予防医学の観点で非常に効果を上げている。しかし、
り、予防医学の観点で非常に効果を上げている。しかし、
ら患者情報を得ることを心掛けている。また、データ管
ら患者情報を得ることを心掛けている。また、データ管
糖尿病患者は合併症である足潰瘍や壊疽に関して知識は
糖尿病患者は合併症である足潰瘍や壊疽に関して知識は理について、医師からの要求に対し即座に対応できる環
理について、医師からの要求に対し即座に対応できる環
あるものの、十分な足のケアを行えていないのが実状で
あるものの、十分な足のケアを行えていないのが実状で境(検査結果ファイリング)を整えており、PAD
境(検査結果ファイリング)を整えており、PAD
が示唆
が示唆
ある。そこで、PAD
ハイリスク患者の足病変防止及び早
ある。そこで、PAD
ハイリスク患者の足病変防止及び早される患者がいた場合には、検査室からデータを提示し
される患者がいた場合には、検査室からデータを提示し
期発見を目的としたフットケアが必要不可欠であると考
期発見を目的としたフットケアが必要不可欠であると考精査を提案している。当院では治療適応と判断される下
精査を提案している。当院では治療適応と判断される下
えられた。
えられた。
肢動脈閉塞性疾患に対し、循環器医師及び血管外科医師、
肢動脈閉塞性疾患に対し、循環器医師及び血管外科医師、
【フットケアチーム】
【フットケアチーム】
放射線科医師が合同で血管内治療(PTA)を施行している。
放射線科医師が合同で血管内治療(PTA)を施行している。
上記で述べたように、日本においてフットケアをチーム
上記で述べたように、日本においてフットケアをチームここでの臨床検査技師の業務は、血管内治療における
ここでの臨床検査技師の業務は、血管内治療における
医療として取り入れ、患者の
QOLQOL
と医療の質向上、医療
医療として取り入れ、患者の
と医療の質向上、医療IVUS(血管内超音波)操作や、ワイヤー挿入時のエコー
IVUS(血管内超音波)操作や、ワイヤー挿入時のエコー
の効率化という目的を追求する効果的な医療手段として
の効率化という目的を追求する効果的な医療手段としてガイドである。以上、生理検査室がフットケアチームに
ガイドである。以上、生理検査室がフットケアチームに
関心が高まっている。当院においても、2013
年年
1 月、循
関心が高まっている。当院においても、2013
1 月、循関与する業務は多岐に渡っており、今後も新たな検査の
関与する業務は多岐に渡っており、今後も新たな検査の
環器医師をはじめ、血管外科医師、内分泌内科医師、糖
環器医師をはじめ、血管外科医師、内分泌内科医師、糖導入や検査増加で更なる業務拡大が期待される。
導入や検査増加で更なる業務拡大が期待される。
尿病認定看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師、臨床検査
尿病認定看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師、臨床検査【まとめ】
【まとめ】
技師で構成された多職種フットケアチームを立ち上げる
技師で構成された多職種フットケアチームを立ち上げる検査法一つ一つは新しいものではないが、これらはチー
検査法一つ一つは新しいものではないが、これらはチー
運びとなった。当チームの役割の一つに
PADPAD
の診断が挙
運びとなった。当チームの役割の一つに
の診断が挙ムにおいて大きな意味を持っている。フットケアにおけ
ムにおいて大きな意味を持っている。フットケアにおけ
げられるが、その過程において生理検査は大きな役割を
げられるが、その過程において生理検査は大きな役割をる検査を行うだけではなく、チームで取り組むメンバー
る検査を行うだけではなく、チームで取り組むメンバー
果たす。そこで今回
PADPAD
の診断における生理検査に焦点
果たす。そこで今回
の診断における生理検査に焦点と同じ視点で治療にあたることが最も重要なことであり、
と同じ視点で治療にあたることが最も重要なことであり、
を置き、それら検査がチーム医療であるフットケアにど
を置き、それら検査がチーム医療であるフットケアにどその中で検査の専門家としての役割を果たすことが
その中で検査の専門家としての役割を果たすことが
のような役割を持っているのか考えていきたい。
のような役割を持っているのか考えていきたい。
我々検査技師の使命であると考える。
我々検査技師の使命であると考える。
【PAD
に関わる生理検査】
【PAD
に関わる生理検査】
参考文献:Vascular
参考文献:Vascular
LabLab
2012.vol9
2012.vol9
PADPAD
診断の進め方としてまず血流評価があり、無侵襲性
診断の進め方としてまず血流評価があり、無侵襲性
スクリーニングとして優れる「足関節/上腕血圧比
スクリーニングとして優れる「足関節/上腕血圧比
(連絡先 市立敦賀病院 TEL0770-22-3611)
(ABI)」が用いられる。ABI
は下肢動脈疾患の症状であ
(ABI)」が用いられる。ABI
は下肢動脈疾患の症状であ(連絡先 市立敦賀病院 TEL0770-22-3611)
る間歇性跛行が神経性か血管性の初期鑑別に有用な検査
る間歇性跛行が神経性か血管性の初期鑑別に有用な検査
であり、特に血管性単独疾患である場合の鑑別に大きな
であり、特に血管性単独疾患である場合の鑑別に大きな
効果を発揮する。しかし、高度の狭窄や閉塞、末梢病変
効果を発揮する。しかし、高度の狭窄や閉塞、末梢病変
などは正確な
ABIABI
値を算出することができないという欠
などは正確な
値を算出することができないという欠
点もある。ABI
値が
0.90.9
以下の場合は閉塞性動脈硬化症
点もある。ABI
値が
以下の場合は閉塞性動脈硬化症
(ASO)の可能性が高くなる。ここで次の血流評価とし
(ASO)の可能性が高くなる。ここで次の血流評価とし
− 93 −
シンポジウムⅤ チーム医療における生理検査の導入法
エコー検査による他の診療部署との関わり方
エコー検査による他の診療部署との関わり方
4.エコー検査による他の診療部署との関わり方
1) 1)
◎川﨑
◎川﨑
俊博俊博
1) 1)
大阪掖済会病院
大阪掖済会病院
臨床検査科
臨床検査科
○川﨑 俊博 大阪掖済会病院 臨床検査科
【はじめに】
【はじめに】
ドワイヤーの先端を描出するためのテクニックが必要
ドワイヤーの先端を描出するためのテクニックが必要
近年、医療技術の高度化に伴い日常臨床で分業化が進
近年、医療技術の高度化に伴い日常臨床で分業化が進
であり、また解離腔にワイヤーが入らないように注意
であり、また解離腔にワイヤーが入らないように注意
んでいる。各種専門性を持ったスペシャリストがチー
んでいる。各種専門性を持ったスペシャリストがチー
し、術者に的確なアドバイスを行えるような血管形成
し、術者に的確なアドバイスを行えるような血管形成
ムを組み、患者ひとりひとりにあった治療やサポート
ムを組み、患者ひとりひとりにあった治療やサポート
術の知識も必要となる。
術の知識も必要となる。
を進めて行くチーム医療が広がっている。
を進めて行くチーム医療が広がっている。
ソノグラファーはエコーの知識のみならず、治療方
ソノグラファーはエコーの知識のみならず、治療方
チーム医療では、各スペシャリストたちが医師と平面
チーム医療では、各スペシャリストたちが医師と平面
法や合併症についての知識も高めていき、日常より広
法や合併症についての知識も高めていき、日常より広
的な立場に立ち、おのおのの専門分野において意見を
的な立場に立ち、おのおのの専門分野において意見を
い知識習得のため精進しなくてはいけない。
い知識習得のため精進しなくてはいけない。
述べながら連携していき、より質の高い医療・患者中
述べながら連携していき、より質の高い医療・患者中
心の満足度の高い医療を提供することができる。
心の満足度の高い医療を提供することができる。 【エコー検査と関連する院内委員会】
【エコー検査と関連する院内委員会】
そのためには、日常より各診療部署との良質なコミュ
そのためには、日常より各診療部署との良質なコミュ
医療の現場では、安全で質の高い医療を実現するため
医療の現場では、安全で質の高い医療を実現するため
ニケーションと的確な患者情報の共有が重要となる。
ニケーションと的確な患者情報の共有が重要となる。
に各種委員会やサポートチームが設置されている。そ
に各種委員会やサポートチームが設置されている。そ
ここでは、チーム医療におけるエコー検査による他の
ここでは、チーム医療におけるエコー検査による他の
の中でエコー検査の所見やソノグラファーの知識が重
の中でエコー検査の所見やソノグラファーの知識が重
診療部署との関わり方および情報の共有について実例
診療部署との関わり方および情報の共有について実例
要な役割をもつ委員会やサポートチームもある。
要な役割をもつ委員会やサポートチームもある。
を供覧しながら説明する。
を供覧しながら説明する。
下記に当院でエコー検査が関わる委員会を挙げる。
下記に当院でエコー検査が関わる委員会を挙げる。
【検査室でのエコー検査】
【検査室でのエコー検査】
エコー検査の大半はエコー室で実施されている。エ
エコー検査の大半はエコー室で実施されている。エ
・ NST
・ NST
委員会
委員会
・糖尿病委員会
・糖尿病委員会
コー後に診察するケースや、エコー後帰宅し後日診察
コー後に診察するケースや、エコー後帰宅し後日診察
・救急委員会
・救急委員会
となるケースなどその形態は様々である。ソノグラフ
となるケースなどその形態は様々である。ソノグラフ
・褥瘡委員会
・褥瘡委員会
ァーは検査所見や他の検査所見などから患者の病態を
ァーは検査所見や他の検査所見などから患者の病態を
・手術運営委員会
・手術運営委員会
推測し、診察から治療となる流れを把握する必要があ
推測し、診察から治療となる流れを把握する必要があ
る。時には検査後帰宅の患者であっても、早急に治療
る。時には検査後帰宅の患者であっても、早急に治療
・化学療法委員会
・化学療法委員会
・透析運営委員会
・透析運営委員会
が必要なケースや他のモダリティでの追加検査が必要
が必要なケースや他のモダリティでの追加検査が必要
なケースも発生する。そういった場合に迅速かつ的確
なケースも発生する。そういった場合に迅速かつ的確
・地域医療委員会
・地域医療委員会
な対応が出来るような手順を明確にしておかなければ
な対応が出来るような手順を明確にしておかなければ
・レセプト委員会
・レセプト委員会
いけない。また判断ミスがないように病態の進み方、
いけない。また判断ミスがないように病態の進み方、
【まとめ】
【まとめ】
治療方法や適応、他のモダリティの特徴などを知らな
治療方法や適応、他のモダリティの特徴などを知らな
近年の医療においてチーム医療は欠かすことのできな
近年の医療においてチーム医療は欠かすことのできな
ければいけない。
ければいけない。
いものである。我々ソノグラファーも患者ひとりひと
いものである。我々ソノグラファーも患者ひとりひと
【検査室以外でのエコー検査】
【検査室以外でのエコー検査】
りに合ったベストの治療に貢献できるよう、専門知識
りに合ったベストの治療に貢献できるよう、専門知識
を生かしてチーム医療に貢献して行かなければならな
を生かしてチーム医療に貢献して行かなければならな
エコー検査は検査室以外でも実施されている。救急
エコー検査は検査室以外でも実施されている。救急
い。そのためには、他の職種とうまく連携できるよう、
い。そのためには、他の職種とうまく連携できるよう、
外来や病棟はもとより、手術室や血管造影室、透析室
外来や病棟はもとより、手術室や血管造影室、透析室
コミュニケーション能力を高め、専門知識の向上およ
など患者のいる現場全てで行われる可能性がある。
など患者のいる現場全てで行われる可能性がある。コミュニケーション能力を高め、専門知識の向上およ
また、実施される目的もそれぞれ異なるため、検査を
また、実施される目的もそれぞれ異なるため、検査を
び、専門知識に関連した幅広い知識習得に努める必要
び、専門知識に関連した幅広い知識習得に努める必要
行う目的を明確に理解しておかないといけない。
行う目的を明確に理解しておかないといけない。 がある。
がある。
例えば、病棟で心膜液ドレナージを行うために施行す
例えば、病棟で心膜液ドレナージを行うために施行す
るエコーでは、穿刺部位の決定および、穿刺時のガイ
るエコーでは、穿刺部位の決定および、穿刺時のガイ
ドとなるような知識と工夫が必要である。また、血管
ドとなるような知識と工夫が必要である。また、血管
造影室で、エコーガイド下
造影室で、エコーガイド下
PTAPTA
を行う際には、ガイ
を行う際には、ガイ
− 94 −
シンポジウムⅥ −血液−
9月20日(土) 13:20~15:50 第7会場 5階 502号
テーマ:骨髄像の見方、データの読み方
司会:田邊 正喜(彦根市立病院 臨床検査科)
三村 喜彦(兵庫県立がんセンター 検査部)
1.骨髄像の見方 〜鏡検のポイント〜
吉川 慎一(地方独立行政法人市立吹田市民病院 中央検査部)
2.フローサイトメトリーによるイムノフェノタイピング
丸岡 隼人(独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院
臨床検査技術部)
3.骨髄生検の病理-MDS/MPNなど- 〜骨髄病異変の系統的な理解にむけて〜
鶴山 竜昭(京都大学医学部附属病院 病理診断科)
4.日常臨床で遭遇する血小板減少症の診断と病態
田村 志宣(紀南病院 血液腫瘍内科部長)
●ねらい
近年は、検体検査部門は非正規職員が増えつつあり、骨髄像鏡検技術の伝承が難しい現状であるが、他
方で、血液専門医が不在の施設にも骨髄検査の要望がある。血液疾患の診断には、形態学的検査だけでは
診断がつかず、表面マーカー(フローサイトメトリー)検査、遺伝子・染色体検査、骨髄生検が診断基準
に必須のものもあり、これらの検査は今日では骨髄検査とともに実施され、診断に利用するのが一般的で
ある。今回、骨髄像初級者や中級者を対象に、鏡検のポイントやフローサイトメトリー、骨髄生検などの
基本的な見方を学び、骨髄検査全体の理解を深め、総合的に判断できる検査技師を目指したく当シンポジ
ウムを企画した。
− 95 −
シンポジウムⅥ 骨髄像の見方、データの読み方
1.骨髄像の見方
〜鏡検のポイント〜
骨髄像の見方
骨髄像の見方
鏡検のポイント
鏡検のポイント
1) 1)
◎吉川
◎吉川
慎一慎一
1) 1)
地方独立行政法人
地方独立行政法人
市立吹田市民病院
市立吹田市民病院
中央検査部
中央検査部
○吉川 慎一 地方独立行政法人 市立吹田市民病院 中央検査部
【はじめに】
【はじめに】
ておく。
ておく。
骨髄検査は骨髄不全症候群や造血器腫瘍の診断およ
骨髄検査は骨髄不全症候群や造血器腫瘍の診断およ
4)造血障害の有無
4)造血障害の有無
び鑑別、更にはそれらの治療効果判定に必須の検査で
び鑑別、更にはそれらの治療効果判定に必須の検査で
成熟障害、病的な造血亢進や低下などを細胞分布、形
成熟障害、病的な造血亢進や低下などを細胞分布、形
ある。通常、骨髄検査では骨髄像、表面マーカー、染
ある。通常、骨髄検査では骨髄像、表面マーカー、染
態所見より評価する。代表的なものは薬剤投与などに
態所見より評価する。代表的なものは薬剤投与などに
色体・遺伝子検査、クロットセクションなどが同時に
色体・遺伝子検査、クロットセクションなどが同時に
よる無顆粒球症が挙げられる。無効造血パータンを示
よる無顆粒球症が挙げられる。無効造血パータンを示
依頼される。これらの内、簡単な染色を施し、顕微鏡
依頼される。これらの内、簡単な染色を施し、顕微鏡
す MDS
す MDS
や巨赤芽球性貧血では種々の特徴的な形態異
や巨赤芽球性貧血では種々の特徴的な形態異
で細胞分類および形態学的評価を行う骨髄像は費用対
で細胞分類および形態学的評価を行う骨髄像は費用対
常を認めるため、形態学的評価が診断に直結する。注
常を認めるため、形態学的評価が診断に直結する。注
や G-CSF
などが投
などが投
効果に優れた診断的価値の高い検査である。骨髄中に
効果に優れた診断的価値の高い検査である。骨髄中に
意すべき点は検査前に葉酸、VB
意すべき点は検査前に葉酸、VB
12 や12G-CSF
与された場合、細胞像は劇的に変化することより、臨
与された場合、細胞像は劇的に変化することより、臨
は末梢血とは異なり、各成熟段階の細胞がある一定の
は末梢血とは異なり、各成熟段階の細胞がある一定の
床診断と合致しない場合は確認が必要である。造血亢
床診断と合致しない場合は確認が必要である。造血亢
比率で連続的に存在する。通常、これらの比率は各種
比率で連続的に存在する。通常、これらの比率は各種
進がある場合は反応性と腫瘍性の鑑別を要するが、こ
進がある場合は反応性と腫瘍性の鑑別を要するが、こ
病態により変動し、末梢血のデータ(CBC
病態により変動し、末梢血のデータ(CBC
や血液像)
や血液像)
れらは生化学所見、染色体・遺伝子所見、臓器所見
れらは生化学所見、染色体・遺伝子所見、臓器所見
に反映される。骨髄像の基本は細胞分類することから
に反映される。骨髄像の基本は細胞分類することから
(肝脾腫)などを確認する。
(肝脾腫)などを確認する。
始まるが、個々の細胞同定の詳細は多くのすばらしい
始まるが、個々の細胞同定の詳細は多くのすばらしい
5)異常細胞の有無
5)異常細胞の有無
成書(アトラス)があるので、それを参考にして頂き
成書(アトラス)があるので、それを参考にして頂き
通常、異常細胞とは腫瘍細胞を指す。白血病細胞やリ
通常、異常細胞とは腫瘍細胞を指す。白血病細胞やリ
たい。本シンポジウムでは骨髄像の鏡検のポイントを
たい。本シンポジウムでは骨髄像の鏡検のポイントを
ンパ腫細胞の存在は診断および病期決定に直結する。
ンパ腫細胞の存在は診断および病期決定に直結する。
中心に症例を交えたより実践的で包括的な見方につい
中心に症例を交えたより実践的で包括的な見方につい
急性白血病では腫瘍細胞の系統決定に
急性白血病では腫瘍細胞の系統決定に
MPO
MPO
染色をは
染色をは
て述べる。
て述べる。
じめとする細胞化学染色(特殊染色)が実施される。
じめとする細胞化学染色(特殊染色)が実施される。
1)患者情報の入手
1)患者情報の入手
表面マーカーの抗体選択にも有用である。
表面マーカーの抗体選択にも有用である。
電子カルテが普及した現在では、昔に比べて患者情報
電子カルテが普及した現在では、昔に比べて患者情報
の入手にストレスは無くなっている。骨髄検査の目的、
6)報告書の作成
6)報告書の作成
の入手にストレスは無くなっている。骨髄検査の目的、
臨床所見、薬剤の服用歴など骨髄像を見るにあたり重
施設によって報告書のフォーマットは異なるが、概ね
施設によって報告書のフォーマットは異なるが、概ね
臨床所見、薬剤の服用歴など骨髄像を見るにあたり重
要な情報を入手しておきたい。検査データに関しては
上記上記
2)~5)について記載し、1)を参考に考察する。
2)~5)について記載し、1)を参考に考察する。
要な情報を入手しておきたい。検査データに関しては
検査室で管理しているため、アクセスは容易である。
更に、報告書の作成にあたっては詳細に記載するのは
更に、報告書の作成にあたっては詳細に記載するのは
検査室で管理しているため、アクセスは容易である。
2)骨髄試料の適正評価
いいが、「臨床医が求めている情報は何か?」をくみ
いいが、「臨床医が求めている情報は何か?」をくみ
2)骨髄試料の適正評価
骨髄塗抹標本は患者のベッドサイドで抗凝固剤の入っ
取ることを忘れてはならない。診断にはこぎつけなく
取ることを忘れてはならない。診断にはこぎつけなく
骨髄塗抹標本は患者のベッドサイドで抗凝固剤の入っ
ていない骨髄穿刺液を用いて作製することが原則であ
ても、否定できる疾患や鑑別疾患などの記載も重要な
ても、否定できる疾患や鑑別疾患などの記載も重要な
ていない骨髄穿刺液を用いて作製することが原則であ
るが、施設事情によっては抗凝固剤入り(EDTA
塩)塩)
所見となる。
所見となる。
るが、施設事情によっては抗凝固剤入り(EDTA
試料の場合もあるであろう。いずれにせよ速やかな標
【さいごに】
【さいごに】
試料の場合もあるであろう。いずれにせよ速やかな標
本作製が細胞修飾を最低限に抑える。採取された骨髄
骨髄像は迅速な診断に大きく寄与するが、形態学的
本作製が細胞修飾を最低限に抑える。採取された骨髄 骨髄像は迅速な診断に大きく寄与するが、形態学的
試料の適正(品質)評価は極めて重要で、不適切な試
評価ゆえに術者の経験と主観的要素が少なからず影響
評価ゆえに術者の経験と主観的要素が少なからず影響
試料の適正(品質)評価は極めて重要で、不適切な試
料による検査は誤った診断を導くことになる。特に、
する。したがって、表面マーカーや染色体・遺伝子検
する。したがって、表面マーカーや染色体・遺伝子検
料による検査は誤った診断を導くことになる。特に、
低形成の場合には注意する必要がある。
査などの結果と骨髄像所見との整合性を必ず確認しな
査などの結果と骨髄像所見との整合性を必ず確認しな
低形成の場合には注意する必要がある。
3)細胞密度
ければならない。また、検索する骨髄は全体では無く
ければならない。また、検索する骨髄は全体では無く
3)細胞密度
細胞密度(
Cellularity
)とは骨髄中の有核細胞数(量)を
一部の骨髄をスポット的に見ているに過ぎず、必ずし
一部の骨髄をスポット的に見ているに過ぎず、必ずし
細胞密度(
Cellularity
)とは骨髄中の有核細胞数(量)を
指し、その量より「低形成」、「正形成」、「過形成」と表
も診断に直結するとは限らない。骨髄像の限界も認識
も診断に直結するとは限らない。骨髄像の限界も認識
指し、その量より「低形成」、「正形成」、「過形成」と表
現する。年齢により細胞密度の基準値が異なることに
しておく必要がある。本シンポジウムでは、上述した
しておく必要がある。本シンポジウムでは、上述した
現する。年齢により細胞密度の基準値が異なることに
留意する必要がある。本邦では有核細胞数(
ANC
)を )を
内容について述べ、これから骨髄像を見始める方の一
内容について述べ、これから骨髄像を見始める方の一
留意する必要がある。本邦では有核細胞数(
ANC
count
することが多いので、ANC
と骨髄塗抹標本上の
助になれば幸いである。
助になれば幸いである。
count
することが多いので、ANC
と骨髄塗抹標本上の
細胞分布とを対比し、細胞密度を判定できるようにし
連絡先(06)6387-3311(内線
連絡先(06)6387-3311(内線
3201)
3201)
細胞分布とを対比し、細胞密度を判定できるようにし
− 96 −
シンポジウムⅥ 骨髄像の見方、データの読み方
フローサイトメトリーによるイムノフェノタイピング
フローサイトメトリーによるイムノフェノタイピング
2.フローサイトメトリーによるイムノフェノタイピング
1) 1)
◎丸岡
◎丸岡
隼人隼人
1) 1) ○丸岡 隼人 神戸市立医療センター
神戸市立医療センター
中央市民病院
中央市民病院
臨床検査技術部
臨床検査技術部
神戸市立医療センター 中央市民病院 臨床検査技術部
【はじめに】
【はじめに】
CD33,
CD33,
CD117,
CD117,
cyMPO,
cyMPO,
単球系マーカー
単球系マーカー
CD14,
CD14,
CD36,
CD36,
造血器腫瘍の診断において, フローサイトメトリ
造血器腫瘍の診断において, フローサイトメトリCD64,
CD64,
CD86,
CD86,
幹細胞マーカー
幹細胞マーカー
CD34
CD34
の発現パターンに
の発現パターンに
ー(FCM)によるイムノフェノタイピングは今や必須の
ー(FCM)によるイムノフェノタイピングは今や必須の
加え,
加え,
aberrant
aberrant
antigen
antigen
expression
expression
である
である
CD2,
CD2,
CD7,
CD7,
検査となっている。また,
検査となっている。また,
寛解導入後や骨髄移植前に
寛解導入後や骨髄移植前に
CD19,
CD19,
CD56
CD56
などの発現の有無を評価する。
などの発現の有無を評価する。
おける微小残存病変(minimal
おける微小残存病変(minimal
residual
residual
disease:MRD)は
disease:MRD)は急性リンパ性白血病(ALL):T/NK
急性リンパ性白血病(ALL):T/NK
細胞系マーカー
細胞系マーカー
CD2,
CD2,
CD3,
CD3,
CD4,
CD4,
CD5,
CD5,
CD7,
CD7,
CD8,
CD8,
CD10,
CD10,
CD56,
CD56,
cyCD3,
cyCD3,
独立した予後不良因子であり,
独立した予後不良因子であり,
臨床的再発との関連に
臨床的再発との関連に
B 細胞系マーカー
B 細胞系マーカー
CD10,
CD10,
CD19,
CD19,
CD20,
CD20,
CD21,
CD21,
CD22,
CD22,
ついては多くの研究がなされている。つまり,
ついては多くの研究がなされている。つまり,
微小な
微小な
cyCD79a,
cyCD79a,
幹細胞マーカー
幹細胞マーカー
CD34
CD34
に加え,
に加え,
aberrant
aberrant
腫瘍細胞を高感度かつ正確に検出することは,
腫瘍細胞を高感度かつ正確に検出することは,
治療効
治療効
antigen
antigen
expression
expression
である
である
CD13,
CD13,
CD24,
CD24,
CD33,
CD33,
CD38,
CD38,
果の判定および治療戦略を立てる上で極めて重要であ
果の判定および治療戦略を立てる上で極めて重要であ
CD44,
CD66c,
CD66c,
などの発現パターンを評価する。
などの発現パターンを評価する。
る。FCM
る。FCM
によるイムノフェノタイピングには,
によるイムノフェノタイピングには,
①細
①細CD44,
成熟リンパ系腫瘍(NHL
/ CLL):T/NK
/ CLL):T/NK
細胞系マーカー
細胞系マーカー
胞起源,
胞起源,
分化レベルおよび病型分類の確定,
分化レベルおよび病型分類の確定,
②予後予
②予後予成熟リンパ系腫瘍(NHL
CD2,
CD2,
CD3,
CD3,
CD4,
CD4,
CD5,
CD5,
CD7,
CD7,
CD8,
CD8,
CD10,
CD10,
CD25,
CD25,
CD26,
CD26,
測や遺伝子変異との関連の評価,
測や遺伝子変異との関連の評価,
③MRD
③MRD
の検出,
の検出,
④迅
④迅
CD56,
CD56,
B 細胞系マーカー
B 細胞系マーカー
CD5,
CD5,
CD10,
CD10,
CD19,
CD19,
CD20,
CD20,
速性,
速性,
などのメリットがある。
などのメリットがある。
CD21,
CD21,
CD22,
CD22,
CD23,
CD23,
CD43,
CD43,
CD200
CD200
および
および
Kappa
Kappa
/ /
近年,
近年,
6~10
6~10
カラー
カラー
FCMFCM
の実施が可能な次世代型フロ
の実施が可能な次世代型フロ
Lambda
Lambda
の発現率を評価する。
の発現率を評価する。
ーサイトメーターが登場し,
ーサイトメーターが登場し,
また,
また,
EuroEuro
FlowFlow
や や
多発性骨髄腫(MM):形質細胞系マーカー
多発性骨髄腫(MM):形質細胞系マーカー
CD38,
CD38,
Leukemia
Leukemia
Net Net
などの多施設共同研究グループからマル
などの多施設共同研究グループからマル
CD138
に加え,
に加え,
aberrant
aberrant
antigen
antigen
expression
expression
である
である
CD19,
CD19,
チパラメトリック
チパラメトリック
FCMFCM
に対応した解析法,
に対応した解析法,
抗体の種
抗体の種CD138
CD20,
CD20,
CD56
CD56
の発現パターンおよび
の発現パターンおよび
cyKappa
cyKappa
/ /
類や抗体パネルの提唱がなされており,
類や抗体パネルの提唱がなされており,
今後今後
cyLambda
cyLambda
の発現率を評価する。
の発現率を評価する。
MPFCM
MPFCM
の普及が一気に加速するものと考えられる。
の普及が一気に加速するものと考えられる。
骨髄異形成症候群(MDS):芽球の比率が高い場合は
骨髄異形成症候群(MDS):芽球の比率が高い場合は
当院では,
当院では,
6 カラー
6 カラー
FCMFCM
によるイムノフェノタイピ
によるイムノフェノタイピ
AML
AML
と同様の抗体パネルを使用する。一方,
と同様の抗体パネルを使用する。一方,
芽球の
芽球の
ングを実施しており,
ングを実施しており,
診断時及び
診断時及び
MRD
MRD
評価時におけ
評価時におけ
比率が低い場合,
比率が低い場合,
主に顆粒球の脱顆粒を反映する
主に顆粒球の脱顆粒を反映する
sideside
る解析精度の向上のポイントを紹介する。
る解析精度の向上のポイントを紹介する。
scater(SSC)の低下や
scater(SSC)の低下や
CD11b,
CD11b,
CD13,
CD13,
CD16
CD16
などの
などの
【解析精度向上のポイント】
【解析精度向上のポイント】
aberrant
aberrant
antigen
antigen
expression
expression
などを評価する。
などを評価する。
解析精度を向上させるファクターとしては,
解析精度を向上させるファクターとしては,
①フロ
①フロ
(2)MRD
解析時
解析時
ーサイトメーターの性能,
ーサイトメーターの性能,
②MPFCM
②MPFCM
の実施,
の実施,
③最適
③最適(2)MRD
な抗体の選択と抗体パネルの作成、などが挙げられる。
診断時と大きく異なるのは,
診断時と大きく異なるのは,
腫瘍細胞の比率であり,
腫瘍細胞の比率であり,
な抗体の選択と抗体パネルの作成、などが挙げられる。
特に③は多種類かつ多様な分化レベルの正常細胞群
定型の抗体パネルでは検出不可能なケースに遭遇する。
特に③は多種類かつ多様な分化レベルの正常細胞群定型の抗体パネルでは検出不可能なケースに遭遇する。
と腫瘍細胞群の鑑別に有用な異常抗原発現(aberrant
当院では診断時に得られた細胞系統マーカーと
と腫瘍細胞群の鑑別に有用な異常抗原発現(aberrant 当院では診断時に得られた細胞系統マーカーと
antigen
expression)を検出することができるよう考慮す
aberrant
aberrant
antigen
antigen
expression
expression
を基に,
を基に,
症例特異的抗体パネ
症例特異的抗体パネ
antigen
expression)を検出することができるよう考慮す
る必要がある。
ルを作成し,
ルを作成し,
MRD
MRD
解析を実施している。aberrant
解析を実施している。aberrant
る必要がある。
(1)診断時
antigen
antigen
expression
expression
が顕著であるほど検出感度は上がり,
が顕著であるほど検出感度は上がり,
(1)診断時
各疾患群の診断に不可欠な抗体と蛍光色素の選択お
0.01%程度の微小な腫瘍細胞の検出が可能となる。た
0.01%程度の微小な腫瘍細胞の検出が可能となる。た
各疾患群の診断に不可欠な抗体と蛍光色素の選択お
よび抗体パネルを作成することが重要である。細胞系
だし,
だし,
治療経過中に診断時のフェノタイプが変化する
治療経過中に診断時のフェノタイプが変化する
よび抗体パネルを作成することが重要である。細胞系
統及び分化レベルの把握に必須の抗体に加え,
aberrant
ケースがあり,
ケースがあり,
AML
AML
においては
においては
CD7,
CD7,
CD13,
CD13,
CD19,
CD19,
統及び分化レベルの把握に必須の抗体に加え,
aberrant
antigen
expression
である
lineage
infidelity(系統不全),
CD33,
CD34,
CD34,
ALLALL
においては
においては
CD10,
CD10,
CD13,
CD13,
CD33,
CD33,
antigen
expression
である
lineage
infidelity(系統不全), CD33,
antigenic
absence/underexpression(抗原欠失/発現低下)
CD34,
B-NHL
B-NHL
においてはリツキシマブ使用後の
においてはリツキシマブ使用後の
antigenic
absence/underexpression(抗原欠失/発現低下) CD34,
overexpression(過剰発現),
asynchronous
expression(非同
CD20
CD20
の発現変化が見られることがあり,
の発現変化が見られることがあり,
解析結果の
解析結果の
overexpression(過剰発現),
asynchronous
expression(非同
期性発現)を検出する為の抗体を追加する。
判定には細心の注意を払う必要がある。
判定には細心の注意を払う必要がある。
期性発現)を検出する為の抗体を追加する。
急性骨髄性白血病(AML):骨髄系マーカー
CD13,
連絡先:078-302-4321(内線
3540)
3540)
急性骨髄性白血病(AML):骨髄系マーカー
CD13, 連絡先:078-302-4321(内線
− 97 −
シンポジウムⅥ 骨髄像の見方、データの読み方
骨髄生検の病理-MDS/MPN など-
3.骨髄生検の病理-MDS/MPNなど-
〜骨髄病異変の系統的な理解にむけて〜
骨髄病異変の系統的な理解にむけて
◎鶴山 竜昭 1)
京都大学医学部附属病院 病理診断科 1)
○鶴山 竜昭 京都大学医学部附属病院 病理診断科
骨髄の H&E 染色による顕微鏡標本の観察について、
系統的な記載をした文献は少ない。今回は、ギムザ染
色との照合により骨髄細胞の観察のポイントの理解を
すすめていきたい。それと同時に、疾患の診断に重要
な疾患概念の理解をすすめる。
H&E 染色による骨髄の観察における課題として、
①ギムザ染色が、核網の構築が明瞭にわかり、細胞
質の色調などから分化度がわかりやすいのに比べ、
H&E 染色では同様の骨髄の染色性は得られず、また
細胞質の顆粒を確認することが難しいため、観察によ
って得られる情報が限られている、②骨髄疾患の分
類が難しく、観察のポイントを決めることが難しい、
③骨髄や造血器腫瘍の観察においてほかの病理学領
域との用語が異なる、などの課題がある。
①H&E 染色において、巨核球の所見がとりやすい、
分化度についても特徴的な所見をとることで判断でき
る、ギムザ染色にはない細胞質の色調の変化によって
異常な細胞を同定できる、など長所もある。骨髄細胞
について H&E 染色、ギムザ染色を同時に供覧し、そ
の所見のちがいについて紹介する。
②疾患の分類は、芽球化、骨髄密度の異常、異形
成の所見の組み合わせで考えると理解しやすい。特に
これらの所見の組み合わせにより今回さまざまな急性
骨髄性白血病、 (急性骨髄単球性白血病、赤白血病な
ど)、異形成/骨髄増殖性腫瘍(慢性骨髄単球性白血病、
非定型慢性骨髄性白血病など)の所見を京都大学病院
の症例をもとに紹介し、骨髄疾患の分類を理解し、観
察のポイントをきめることをすすめる。
③「異型性」と「異形成」のちがい、「異型リン
パ球」とはどのような形態でどのような病態をさすか
を正確に理解する。
以上により骨髄検体標本の観察のポイントの理解を深
めることをめざす。
1. Proc Natl Acad Sci U S A. 2002;99(12):8253-8.
2. Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 30;104(5):1616-20.
3. Cancer Sci. 2010;101(3):800-5.(DNA 多型学会賞)
4. J Leukoc Biol. 2010;88(1):107-16.
− 98 −
シンポジウムⅥ 骨髄像の見方、データの読み方
日常臨床で遭遇する血小板減少症の診断と病態
日常臨床で遭遇する血小板減少症の診断と病態
4.日常臨床で遭遇する血小板減少症の診断と病態
1) 1)
◎田村
◎田村
志宣
志宣
1) 1)
紀南病院
紀南病院
血液腫瘍内科
血液腫瘍内科
○田村 志宣 紀南病院 血液腫瘍内科
血小板減少症は、日常臨床の中で高頻度に遭遇する
血小板減少症は、日常臨床の中で高頻度に遭遇する
今回、当院の臨床検査技師と血液内科医が連携し、
今回、当院の臨床検査技師と血液内科医が連携し、
病態である。血小板減少に伴う症状は、皮膚の出血
病態である。血小板減少に伴う症状は、皮膚の出血 速やかに診断・治療が介入できた血小板減少症を来し
速やかに診断・治療が介入できた血小板減少症を来し
(点状出血又は紫斑)、歯肉出血、鼻出血、月経過多な
(点状出血又は紫斑)、歯肉出血、鼻出血、月経過多な
た自験例を提示し、その疾患の診断・治療・経過につ
た自験例を提示し、その疾患の診断・治療・経過につ
ど比較的軽微なものから、脳出血・肺胞出血・消化管
ど比較的軽微なものから、脳出血・肺胞出血・消化管
いて紹介する。以下は、今回、症例提示する現病歴で
いて紹介する。以下は、今回、症例提示する現病歴で
出血など重篤なものまで多岐に渡る。特に脳出血・肺
出血など重篤なものまで多岐に渡る。特に脳出血・肺
ある。
ある。
胞出血・消化管出血などは生命を脅かすものであり、
胞出血・消化管出血などは生命を脅かすものであり、
重篤化する前段階での早期治療介入が必要となる。
重篤化する前段階での早期治療介入が必要となる。 症例
症例
1:42
1:42
歳女性。1
歳女性。1
ヶ月前から不正出血が続いてい
ヶ月前から不正出血が続いてい
血小板数
血小板数
5 万/μl
5 万/μl
以下では抜歯や手術を行うと止血
以下では抜歯や手術を行うと止血た。ある晩、紫斑と頻脈を自覚し、当院救急受診。受
た。ある晩、紫斑と頻脈を自覚し、当院救急受診。受
困難となり、血小板数
困難となり、血小板数
1~2
1~2
万/μl
万/μl
以下では軽微な症状
以下では軽微な症状
診時の血液検査で小球性貧血(ヘモグロビン
診時の血液検査で小球性貧血(ヘモグロビン
4.2g/dl,
4.2g/dl,
を自覚することも多い。そして、血小板数
を自覚することも多い。そして、血小板数
1 万/μl
1 万/μl
以 以MCV61.6fl)と血小板減少(0.8
MCV61.6fl)と血小板減少(0.8
万/μl)を指摘。緊急
万/μl)を指摘。緊急
下であれば、脳出血のリスクが高くなる。一方で、血
下であれば、脳出血のリスクが高くなる。一方で、血
入院となった。
入院となった。
小板減少症の病因によっては、血小板数の如何に関わ
小板減少症の病因によっては、血小板数の如何に関わ
らず出血のリスクが高い疾患も存在する。かつ、血小
らず出血のリスクが高い疾患も存在する。かつ、血小
症例
症例
2:59
2:59
歳女性。数日前から皮膚黄染を自覚。発熱
歳女性。数日前から皮膚黄染を自覚。発熱
板輸血が無効もしくは禁忌の症例も少なからず存在し、
板輸血が無効もしくは禁忌の症例も少なからず存在し、
と上腹部痛認め、近医受診。血液検査で血小板減少
と上腹部痛認め、近医受診。血液検査で血小板減少
“血小板減少
= =
輸血”ではなく、初診時からの原因検
“血小板減少
輸血”ではなく、初診時からの原因検
(0.8
(0.8
万/μl)と肝機能障害認め、当院紹介転院となっ
万/μl)と肝機能障害認め、当院紹介転院となっ
索がとても重要である。
索がとても重要である。
た。来院時、意識障害あり。
た。来院時、意識障害あり。
血小板数は、EDTA
入りの抗凝固剤の入った採血管
血小板数は、EDTA
入りの抗凝固剤の入った採血管
で採った血液を自動血球計数数器で測定する方法が一
で採った血液を自動血球計数数器で測定する方法が一
症例
症例
3:67
3:67
歳男性。2
歳男性。2
週間前から継続する食欲低下あ
週間前から継続する食欲低下あ
般的。しかしながら、自動血球計数装置は、凝集した
般的。しかしながら、自動血球計数装置は、凝集した
り。徐々に紫斑・点状出血を認めたため、近医受診。
り。徐々に紫斑・点状出血を認めたため、近医受診。
血小板を血小板とは認識せず、実際の血小板数よりも
血小板を血小板とは認識せず、実際の血小板数よりも
血液検査で白血球高値(4.1
血液検査で白血球高値(4.1
万/μl)と血小板減少
万/μl)と血小板減少
少なく算定される。この見かけ上の低値を偽性血小板
(0.9
(0.9
万/μl)を指摘。当院へ緊急紹介となった。
万/μl)を指摘。当院へ緊急紹介となった。
少なく算定される。この見かけ上の低値を偽性血小板
減少といい、EDTA
試験管採血での
0.1〜0.2%の確率
減少といい、EDTA
試験管採血での
0.1〜0.2%の確率
で経験する。過度の検査・治療を回避するためにも、
上記症例は、それぞれ異なる疾患であるが、速やか
上記症例は、それぞれ異なる疾患であるが、速やか
で経験する。過度の検査・治療を回避するためにも、
日常臨床の中で最も念頭に入れる血小板減少の原因で
日常臨床の中で最も念頭に入れる血小板減少の原因で
な診断・治療が介入できたおかげで、救命でき、かつ
な診断・治療が介入できたおかげで、救命でき、かつ
ある(今でも時折血液内科への紹介あり)。
ある(今でも時折血液内科への紹介あり)。
現在、障害なく日常生活に戻っている。
現在、障害なく日常生活に戻っている。
血小板減少症の病因として、白血病・骨髄異形成症
もちろん、今回提示する
もちろん、今回提示する
3 疾患だけでなく、その他
3 疾患だけでなく、その他
血小板減少症の病因として、白血病・骨髄異形成症
候群・再生不良性貧血など他の血球(白血球・赤血球)
の様々な病因で血小板減少症を来すことが知られるが、
の様々な病因で血小板減少症を来すことが知られるが、
候群・再生不良性貧血など他の血球(白血球・赤血球)
も異常を認める疾患群と血小板減少のみ異常を認める
日常臨床では受診当日の一般的な血液検査所見から
日常臨床では受診当日の一般的な血液検査所見から
も異常を認める疾患群と血小板減少のみ異常を認める
疾患群と大きく二つに分けられる。いずれにしても、
疾患群と大きく二つに分けられる。いずれにしても、
emergency
emergency
か non-emergency
か non-emergency
かの鑑別が要求される。
かの鑑別が要求される。
血小板減少症の診断において血液塗抹標本を顕微鏡下
血小板減少症の診断において血液塗抹標本を顕微鏡下
その鑑別を少しでも理解できるために、本シンポジ
その鑑別を少しでも理解できるために、本シンポジ
で直接確認することは最も簡便かつ有用な検査であり、
ウムでは、血小板減少症の診断(かつ治療)の流れだ
ウムでは、血小板減少症の診断(かつ治療)の流れだ
で直接確認することは最も簡便かつ有用な検査であり、
芽球・異型細胞・破砕赤血球・巨大血小板・血小板凝
けでなく、個々の疾患の病態についても簡単であるが、
けでなく、個々の疾患の病態についても簡単であるが、
芽球・異型細胞・破砕赤血球・巨大血小板・血小板凝
集など塗抹標本から得られる情報は非常に数多く、次
述べてみたい。
述べてみたい。
集など塗抹標本から得られる情報は非常に数多く、次
への検査オーダーをスムーズにさせる(臨床検査室か
への検査オーダーをスムーズにさせる(臨床検査室か
ら医師への最も有益な情報である)。末梢血塗抹標本
ら医師への最も有益な情報である)。末梢血塗抹標本
の検鏡は、血小板減少症の診断においてまずは優先さ
の検鏡は、血小板減少症の診断においてまずは優先さ
れる検査項目である。
れる検査項目である。
− 99 −
シンポジウムⅦ −病理−
9月20日(土) 13:20~15:20 第8会場 5階 504・505号
テーマ:免疫染色の精度保証について
司会:西川 武(奈良県立医科大学附属病院 検査科)
林 裕司(独立行政法人地域医療機能推進機構滋賀病院 検査部)
1.免疫組織化学の精度管理 〜当院での取り組みについて〜
柳田 絵美衣(国立大学法人神戸大学医学部附属病院 病理部)
2.免疫組織化学染色の外部精度管理 〜中部支部の取り組みを中心に〜
滝野 寿(名古屋市立大学大学院 医学研究科臨床病態病理学)
3.福井県内の胃癌・乳癌診療施設におけるHER2検査の現状 〜県内8施設のアンケート結果より〜
水野 幸惠(福井県立病院 検査室)
4.病理標本における免疫組織化学の精度保証 〜標本作成過程における影響を中心に〜
築山 あゆみ(大阪警察病院 病理技術科)
●ねらい
現在、病理分野において免疫染色は正確な診断を行うための必須項目となっている。
実際免疫染色により診断が左右されることは多く、染色性の良否においてその後の患者QOLが決まる
と言っても過言ではない。しかしながらこれほど診断および患者QOLと密接に関係している免疫染色の
精度管理がきちんと為されている施設は少なく、依然として免疫染色の良否判定が個人の経験値に依存し
ている現状が多くみられる。
今回、診断にとって重要な免疫染色の精度管理(抗体管理、染色技術、染色性の品質管理など)につい
て、現状の確認と精度管理の重要性を交え討論していきたい。
− 100 −
シンポジウムⅦ 免疫染色の精度保証について
免疫組織化学の精度管理
1.免疫組織化学の精度管理 免疫組織化学の精度管理
〜当院での取り組みについて〜
当院での取り組みについて
当院での取り組みについて
1) 1)
◎柳田
◎柳田
絵美衣
絵美衣
1) 1)
国立大学法人
国立大学法人
神戸大学医学部附属病院
神戸大学医学部附属病院
病理部
病理部
○柳田 絵美衣 国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 病理部
One
One
cannot
cannot
practice
practice
good
good
pathology
pathology
without
without
access
access
to to に努めている。
に努めている。
high-quality
high-quality
immunohistochemistry
immunohistochemistry
service. service. 高品質の免疫染色なしに、病理を十分に診断するこ
高品質の免疫染色なしに、病理を十分に診断するこ
【物理的精度管理】
【物理的精度管理】
とは出来ない
とは出来ない
一流の技師でも、不良な試薬・抗体では正確な染色
一流の技師でも、不良な試薬・抗体では正確な染色
標本は作製出来ない。正しい染色標本を作製するため
標本は作製出来ない。正しい染色標本を作製するため
病理診断学の基本は
病理診断学の基本は
HE HE
染色であることは大前提だ
染色であることは大前提だ
には、試薬や抗体の管理、正しい使用方法は知ってお
には、試薬や抗体の管理、正しい使用方法は知ってお
が、近年、免疫組織化学は病理診断学の補助的手段と
が、近年、免疫組織化学は病理診断学の補助的手段と
かねばならない。また、自動染色装置を導入している
かねばならない。また、自動染色装置を導入している
して非常に重要な役割を果たしており、染色技術、解
して非常に重要な役割を果たしており、染色技術、解
施設が増え、機械での染色に頼り切ってしまい、用手
施設が増え、機械での染色に頼り切ってしまい、用手
釈などは患者の生命に直結する極めて重要な手法とな
釈などは患者の生命に直結する極めて重要な手法とな
での染色法や原理そのものを理解出来ていない場合も
での染色法や原理そのものを理解出来ていない場合も
っている。免疫組織化学を用いることにより形態単独
っている。免疫組織化学を用いることにより形態単独
多い。その結果、自動染色装置での染色結果が不良の
多い。その結果、自動染色装置での染色結果が不良の
よりも1枚の標本から得られる情報量が格段に増える。
よりも1枚の標本から得られる情報量が格段に増える。
場合に、原因を追求することも出来ず、改善方法が見
場合に、原因を追求することも出来ず、改善方法が見
その重要さゆえに精度管理は徹底的に行う必要がある。
その重要さゆえに精度管理は徹底的に行う必要がある。
つけられない状態になる。機器によって癖があり、そ
つけられない状態になる。機器によって癖があり、そ
不良な染色は、本来ありえない診断へとご誘導しかね
不良な染色は、本来ありえない診断へとご誘導しかね
れぞれに得手・不得手があることも知っておきたい。
れぞれに得手・不得手があることも知っておきたい。
ない。不良染色の原因は多岐に渡り、日常業務で染色
ない。不良染色の原因は多岐に渡り、日常業務で染色
に携わる技師は心得ておくべき点が非常に多い。
に携わる技師は心得ておくべき点が非常に多い。 【知識・技術による精度管理】
【知識・技術による精度管理】
不良な染色標本を「不良染色である」と判断でき、
不良な染色標本を「不良染色である」と判断でき、
【染色における精度管理】
【染色における精度管理】
不良原因を解明し、改善するための知識や技術は持っ
不良原因を解明し、改善するための知識や技術は持っ
我々は品質管理の手段として用いられる「PDCA
サイ
我々は品質管理の手段として用いられる「PDCA
サイ
ているだろうか。例えば内因性ビオチンなどの非特異
ているだろうか。例えば内因性ビオチンなどの非特異
クル」を施行している。Plan-Do-Check-Act
を「プロ
クル」を施行している。Plan-Do-Check-Act
を「プロ的な反応や、内因性ペルオキシダーゼのブロッキング
的な反応や、内因性ペルオキシダーゼのブロッキング
トコール決定」→「染色実施」→「全スライド染色チ
トコール決定」→「染色実施」→「全スライド染色チ
が影響を及ぼす抗原名、外部コントロール・内部コン
が影響を及ぼす抗原名、外部コントロール・内部コン
ェック」→「プロトコール見直し・改善」とし、この
ェック」→「プロトコール見直し・改善」とし、この
トロールの意義など知っているだろうか。外部コント
トロールの意義など知っているだろうか。外部コント
サイクルを日々繰り返している。この操作に重要とな
サイクルを日々繰り返している。この操作に重要とな
ロール無しで精度管理は不可能であり、本来はありえ
ロール無しで精度管理は不可能であり、本来はありえ
るのは「医師と技師のコミュニケーション」「日々の
るのは「医師と技師のコミュニケーション」「日々の
ない事である。これは「日本の常識、世界の非常識」
ない事である。これは「日本の常識、世界の非常識」
チェック」「プロトコールの設計」それに伴う「知識」
チェック」「プロトコールの設計」それに伴う「知識」
とも言え、本邦が遅れを取っている点の一つでもある。
とも言え、本邦が遅れを取っている点の一つでもある。
と「技術」である。
と「技術」である。
当院では染色標本全てを、まず技師が正しい細胞が
当院では染色標本全てを、まず技師が正しい細胞が
染色されているか、正しい部位(核、細胞膜、細胞質、
ここでは、免疫組織化学の精度管理について当院の
ここでは、免疫組織化学の精度管理について当院の
染色されているか、正しい部位(核、細胞膜、細胞質、
ゴルジ)に陽性像が見られるか、染色されるべきでな
取り組みを紹介する。
取り組みを紹介する。
ゴルジ)に陽性像が見られるか、染色されるべきでな
い細胞に陽性となっていないかといった染色性や、剥
い細胞に陽性となっていないかといった染色性や、剥
離やメス傷や気泡といった標本の切片状態を確認し、
神戸大学医学部附属病院 病理部
神戸大学医学部附属病院 病理部
離やメス傷や気泡といった標本の切片状態を確認し、
全ての条件に置いて良好であれば、診断する病理医や
先端組織染色センター(KATS)
先端組織染色センター(KATS)
全ての条件に置いて良好であれば、診断する病理医や
外部の施設に提出・返却する。不良と思われるものは、
078-382-6474
078-382-6474
外部の施設に提出・返却する。不良と思われるものは、
即時再染色を行う。技師のチェック時に染色性に疑問
即時再染色を行う。技師のチェック時に染色性に疑問
を感じた場合は病理医と共に鏡検し、正しい陽性所見
を感じた場合は病理医と共に鏡検し、正しい陽性所見
なのか、またどのような改善をなすべきか意見を交わ
なのか、またどのような改善をなすべきか意見を交わ
す。その意見を基にプロトコールの改善・再構成を行
す。その意見を基にプロトコールの改善・再構成を行
う。その新しいプロトコール通りに染色を行ない、再
う。その新しいプロトコール通りに染色を行ない、再
びチェックをする。
びチェックをする。
このようにして
PDCA
サイクルを繰り返し精度管理
このようにして
PDCA
サイクルを繰り返し精度管理
− 101 −
シンポジウムⅦ 免疫染色の精度保証について
免疫組織化学染色の外部精度管理
免疫組織化学染色の外部精度管理
2.免疫組織化学染色の外部精度管理
〜中部支部の取り組みを中心に〜
-中部支部の取り組みを中心に-中部支部の取り組みを中心に◎滝野
◎滝野
寿 1)
寿 1)
1) 1)
名古屋市立大学大学院
名古屋市立大学大学院
医学研究科
医学研究科
臨床病態病理学
臨床病態病理学
○滝野 寿 名古屋市立大学大学院 医学研究科 臨床病態病理学
乳がんの分子標的治療に代表されるコンパニオン診
乳がんの分子標的治療に代表されるコンパニオン診
施設の染色標本をバーチャルスライド化し、全標本の
施設の染色標本をバーチャルスライド化し、全標本の
断の重要性が言われる中、病理組織標本作成と診断の
断の重要性が言われる中、病理組織標本作成と診断の
閲覧を可能にしている。参加施設には染色標本の写真
閲覧を可能にしている。参加施設には染色標本の写真
精度管理および標準化の必要性が強く求められている。
精度管理および標準化の必要性が強く求められている。
と、自施設の染色標本を返送し、染色不良の原因が明
と、自施設の染色標本を返送し、染色不良の原因が明
日本病理学会内では、病理診断の信頼性と再現性を保
日本病理学会内では、病理診断の信頼性と再現性を保
らかなものについてはコメントにて対応している。第
らかなものについてはコメントにて対応している。第
証するための「外部精度管理システム構築」の必要性
証するための「外部精度管理システム構築」の必要性
8 回では自動連続薄切装置を使用して、薄切切片厚を
8 回では自動連続薄切装置を使用して、薄切切片厚を
に関する論議が高まり、NPO
法人日本病理精度保証
に関する論議が高まり、NPO
法人日本病理精度保証統一し、各施設が算定した
統一し、各施設が算定した
Ki-67
Ki-67
Index
Index
解析値と、自
解析値と、自
機構(JPQAS)が設立された。当会においても平成
機構(JPQAS)が設立された。当会においても平成 動 Index
動 Index
解析アプリケーションによる値を比較し、そ
解析アプリケーションによる値を比較し、そ
20 年に全国実態調査(1,045
施設参加)、平成
22 年
20 年に全国実態調査(1,045
施設参加)、平成
22 年の解離状況を検討した。これまでの事業を通じての問
の解離状況を検討した。これまでの事業を通じての問
には全国精度管理調査(オプション項目、731
施設参
には全国精度管理調査(オプション項目、731
施設参
題点を挙げる。
題点を挙げる。
加、対照:平滑筋アクチン)を行っていた。しかし、
加、対照:平滑筋アクチン)を行っていた。しかし、
1.サーベイの方法論
1.サーベイの方法論
当時の当会上層部の認識では、免疫組織化学染色はマ
当時の当会上層部の認識では、免疫組織化学染色はマ
1)目標値(対照切片)の設定:評価の整合性を得るため
1)目標値(対照切片)の設定:評価の整合性を得るため
ニアックな手法であり、精度管理調査項目としては不
ニアックな手法であり、精度管理調査項目としては不
に試料に正常組織を含める。プレアナリシスの状態を
に試料に正常組織を含める。プレアナリシスの状態を
適当であるとして、次年度以降調査項目として認めら
適当であるとして、次年度以降調査項目として認めら
把握するために、各施設で使用している陽性対照切片
把握するために、各施設で使用している陽性対照切片
れる事はなかった。北海道、愛知県、神奈川県などの
れる事はなかった。北海道、愛知県、神奈川県などの
を、標本に張付け、同時に染色してもらう。同一臓器
を、標本に張付け、同時に染色してもらう。同一臓器
体力のある地臨技では免疫組織化学染色の精度管理調
体力のある地臨技では免疫組織化学染色の精度管理調
でも固定等の影響で染色強度に差がみられることから、
でも固定等の影響で染色強度に差がみられることから、
査を実施しているが、参加施設総数は多くても
100100
は は
査を実施しているが、参加施設総数は多くても
多数の検体を混ぜた
多数の検体を混ぜた
TMA
TMA
ブロックを使うことが望ま
ブロックを使うことが望ま
超えない。統計上、母集団の数が少なすぎては全体の
超えない。統計上、母集団の数が少なすぎては全体の
しい。試料の検証は、複数の施設と、抗体メーカー間
しい。試料の検証は、複数の施設と、抗体メーカー間
傾向を掴む事は困難である。
傾向を掴む事は困難である。
で行うべきである。2)試料配布から回収までの日数設
で行うべきである。2)試料配布から回収までの日数設
中部支部(愛知・静岡・岐阜・三重・石川・富山)
中部支部(愛知・静岡・岐阜・三重・石川・富山)
定:抗体の種類によっては、配布から回収までを概ね
定:抗体の種類によっては、配布から回収までを概ね
では、県の垣根を越えて
6 県で免疫組織化学染色の精
では、県の垣根を越えて
6 県で免疫組織化学染色の精
一週間以内とする。また、試料の配布は週末とする。
一週間以内とする。また、試料の配布は週末とする。
度管理調査を事業化している。単県では参加施設数が
度管理調査を事業化している。単県では参加施設数が
3)薄切:切片の厚みもコントラストに与える影響が大
3)薄切:切片の厚みもコントラストに与える影響が大
一桁の県もあるが、支部として集まれば
100100
施設に届
一桁の県もあるが、支部として集まれば
施設に届
きい。薄切切片の質を担保する意味からも自動薄切装
きい。薄切切片の質を担保する意味からも自動薄切装
くからである。また地域的には患者が県境をまたいで
くからである。また地域的には患者が県境をまたいで
置の使用を推奨する。
置の使用を推奨する。
通院している場合もあり、このような取り組みは精度
通院している場合もあり、このような取り組みは精度
2.結果の評価
2.結果の評価
管理上、非常に有効であると思われる。すでに
8 回を
管理上、非常に有効であると思われる。すでに
8 回を
事前に各県班長が集まって評価基準を確認(目合わせ)
事前に各県班長が集まって評価基準を確認(目合わせ)
数え、年々参加施設数も増加し、中部圏外の参加も得
数え、年々参加施設数も増加し、中部圏外の参加も得
し、評価・判定を中央化し、少人数で行う方がばらつ
し、評価・判定を中央化し、少人数で行う方がばらつ
ている。
ている。
きは少ない。判定基準は標本上の数ヶ所で設定し、染
きは少ない。判定基準は標本上の数ヶ所で設定し、染
第1回は乳癌組織に対する
ER,ER,
PRA,
HER2、第2回
第1回は乳癌組織に対する
PRA,
HER2、第2回
色強度、コントラスト、非特異反応についてできるだ
色強度、コントラスト、非特異反応についてできるだ
は GIST
に対する
c-kit,
CD34、第3回はリンパ腫に対
は GIST
に対する
c-kit,
CD34、第3回はリンパ腫に対
け客観的に評価できるようにした。染色強度は評価者
け客観的に評価できるようにした。染色強度は評価者
する
CD20,
CD3,
bcl2、第4回は各種上皮組織に対す
する
CD20,
CD3,
bcl2、第4回は各種上皮組織に対すの好みが強い。
の好みが強い。
る汎ケラチン、第5回は腎癌、リンパ腫に対する
る汎ケラチン、第5回は腎癌、リンパ腫に対する 3.施設間差、評価者間差、メーカー間差、機器間差
3.施設間差、評価者間差、メーカー間差、機器間差
vimentin,
vimentin,podoplanin、第6回は内分泌腫瘍の
podoplanin、第6回は内分泌腫瘍の
について今回までの結果だけでは、実態を把握しきれ
について今回までの結果だけでは、実態を把握しきれ
TMA
ブロックに対する
CD56,
synaptophysin,
TMA
ブロックに対する
CD56,
synaptophysin,
ていない。
ていない。
ChromograninA、第7回は前立腺の
TMA
ブロックに
ChromograninA、第7回は前立腺の
TMA
ブロックに4.成績不良施設への指導
4.成績不良施設への指導
対する
p63p63
の染色性、第
8 回は乳がん症例(TMA:
対する
の染色性、第
8 回は乳がん症例(TMA: 各県班長から対象施設へ直接指導。施設の意向や状
各県班長から対象施設へ直接指導。施設の意向や状
Index
60%前後、10%未満、20%前後)に対する
Ki- Ki- 況を確認し、改善のための情報提供や実習などを企画
Index
60%前後、10%未満、20%前後)に対する
況を確認し、改善のための情報提供や実習などを企画
67 の染色性をそれぞれ検討した。染色標本の判定は
67 の染色性をそれぞれ検討した。染色標本の判定はする。二次サーベイの実施は今後の検討課題である。
する。二次サーベイの実施は今後の検討課題である。
染色強度、コントラスト、非特異反応について評価し
染色強度、コントラスト、非特異反応について評価し
た。評価の共有化を図る目的で、第
6 回からは参加全
た。評価の共有化を図る目的で、第
6 回からは参加全
連絡先:滝野 052-853-8161
連絡先:滝野 052-853-8161
− 102 −
シンポジウムⅦ 免疫染色の精度保証について
福井県内の胃癌・乳癌診療施設における
福井県内の胃癌・乳癌診療施設における
HER2
HER2
検査の現状
検査の現状
3.福井県内の胃癌・乳癌診療施設におけるHER2検査の現状
〜県内8施設のアンケート結果より〜
-県内
-県内
8 施設のアンケート結果より-
8 施設のアンケート結果より-
1) 1)
◎水野
◎水野
幸惠
幸惠
1) 1)
福井県立病院
福井県立病院
検査室
検査室
○水野 幸惠 福井県立病院 検査室
【はじめに】2001
【はじめに】2001
年、トラスツズマブ(ハーセプチ
年、トラスツズマブ(ハーセプチあった。乳癌では
あった。乳癌では
IHCIHC
法 2+,24.1%、3+,16.5%、
法 2+,24.1%、3+,16.5%、
ン)が転移性乳癌の治療薬として保険適応となり、
ン)が転移性乳癌の治療薬として保険適応となり、 FISH(DISH)法陽性率は
FISH(DISH)法陽性率は
17.8%であった。アンケー
17.8%であった。アンケー
2008
2008
年には乳癌術後補助療法に適応拡大された。さ
年には乳癌術後補助療法に適応拡大された。さト 3:8
ト 3:8
施設平均陽性率は、胃癌で
施設平均陽性率は、胃癌で
IHCIHC
法 2+,5.9%、
法 2+,5.9%、
らに
らに
2011
2011
年 3年月、切除不能進行・再発胃癌に対して
3 月、切除不能進行・再発胃癌に対して3+,17.8%、FISH
3+,17.8%、FISH
法陽性率は
法陽性率は
35%であった。乳癌では
35%であった。乳癌では
もハーセプチンの適応が承認され、病理検査では
もハーセプチンの適応が承認され、病理検査では
IHCIHC
IHCIHC
法 2+,27.3%、3+,19.5%、FISH(DISH)法陽性率
法 2+,27.3%、3+,19.5%、FISH(DISH)法陽性率
法、FISH
法、FISH
法等の
法等の
HER2
HER2
検査が恒常的に行われるよう
検査が恒常的に行われるようは 23.8%であった。
は 23.8%であった。
になった。しかし、HER2
になった。しかし、HER2
検査結果はハーセプチンの
検査結果はハーセプチンの
ロシュの自動免疫装置を使用し、ロシュ・ベンタナI ロシュの自動免疫装置を使用し、ロシュ・ベンタナI投与条件を決定するため、検体の精度管理が重要であ
投与条件を決定するため、検体の精度管理が重要であ
VIEWパスウェ-HER2
VIEWパスウェ-HER2
で染色している
で染色している
3 施設で比較検討
3 施設で比較検討
る。
る。
したところ、AB
したところ、AB
施設での固定液は生検で
施設での固定液は生検で
10%緩衝ホ
10%緩衝ホ
【目的および方法】福井県内の診療施設における
【目的および方法】福井県内の診療施設における ルマリン、手術材料では
ルマリン、手術材料では
20%ホルマリン、A
20%ホルマリン、A
施設は
施設は
HER2
HER2
検査の現状を知るため、HER2
検査の現状を知るため、HER2
の検査結果およ
の検査結果およほとんどが、6~48
ほとんどが、6~48
時間以内に処理できていた。C
時間以内に処理できていた。C
施 施
び検体採取から標本作製までの過程について、1.乳癌
び検体採取から標本作製までの過程について、1.乳癌
設では、生検、手術材料ともに 20%緩衝ホルマリン、
設では、生検、手術材料ともに 20%緩衝ホルマリン、
診療
診療
8 施設における
8 施設における
2009
2009
年 1年年間の
1 年間の
HER2
HER2
検査症例 検査症例 BC BC
施設においては切り出しに臨床医が関わっている
施設においては切り出しに臨床医が関わっている
2.胃癌・乳癌診療
2.胃癌・乳癌診療
8 施設における
8 施設における
2012
2012
年 4年月~9
4 月~9
月の
月の
ため、48
ため、48
時間以上かかる場合がある。3
時間以上かかる場合がある。3
施設とも切片
施設とも切片
半年間の検査症例 3.胃癌・乳癌診療
半年間の検査症例 3.胃癌・乳癌診療
8 施設における
8 施設における
の厚さは他の
の厚さは他の
HE HE
染色や免疫標本と同様に
染色や免疫標本と同様に
3~4μ
3~4μ
で特
で特
2013
2013
年 1年月~12
1 月~12
月の検査症例について
月の検査症例について
3 回のアンケ
3 回のアンケに意識はしていなかった。3
に意識はしていなかった。3
施設ともアンケート
施設ともアンケート
ートを行った。アンケート内容は、①HER2
ートを行った。アンケート内容は、①HER2
陽性数、
陽性数、
1,2,3
1,2,3
において、条件に変更はなかった。陽性率は胃
において、条件に変更はなかった。陽性率は胃
陽性率②実施場所③検査プロセスの取扱者④固定液
陽性率②実施場所③検査プロセスの取扱者④固定液癌では A
癌では A
施設の
施設の
IHCIHC
法 2+(アンケート2
法 2+(アンケート2
での結果
での結果
3.1%,
3.1%,
⑤固定時間⑥薄切の厚さ⑦使用している検出キット
⑤固定時間⑥薄切の厚さ⑦使用している検出キットアンケート3
アンケート3
での結果
での結果
0%)、3+(21.0%,21.0%)、B
0%)、3+(21.0%,21.0%)、B
施設
施設
⑧HER2
⑧HER2
検査の報告までの日数の
検査の報告までの日数の
8 項目である。
8 項目である。 IHCIHC
法 2+(12.5%,13.2%)、3+ (6.3%,10.5%)、
法 2+(12.5%,13.2%)、3+ (6.3%,10.5%)、
C 施設
IHCIHC
法 法
2+(30.4%,0%)、3+(28.6%,0%)、
2+(30.4%,0%)、3+(28.6%,0%)、
【結果】アンケート
【結果】アンケート
1 で、実施場所は
1 で、実施場所は
IHCIHC
法で院
法で院 C 施設
乳癌では
A 施設
A 施設
IHCIHC
法 2+(アンケート1
法 2+(アンケート1
での結果
での結果
内・院外
内・院外
4 施設づつ、FISH
4 施設づつ、FISH
法は
法は
1 施設が未実施で、
1 施設が未実施で、乳癌では
他は外注であった。取扱者はほとんどの過程で検査技
他は外注であった。取扱者はほとんどの過程で検査技
19.2%,アンケート2
19.2%,アンケート2
での結果
での結果
10%,アンケート3
10%,アンケート3
での結果
での結果
5.1%)、
5.1%)、
師が携わっていた。アンケート
師が携わっていた。アンケート
3 では、IHC
3 では、IHC
法で院内
法で院内
3+(12.8%,15.0%,13.6%)、B
3+(12.8%,15.0%,13.6%)、B
施設
施設
IHCIHC
法 法
実施が
実施が
5 施設、DISH
5 施設、DISH
法の院内実施が
法の院内実施が
1 施設であった。
1 施設であった。
2+(4.5%,29.9%,26.4%)、3+ (25.4%,14.9%,27.1%)
2+(4.5%,29.9%,26.4%)、3+ (25.4%,14.9%,27.1%)
アンケート
アンケート
1 で、HER2
1 で、HER2
検査ガイド推奨の
検査ガイド推奨の
10%緩衝ホ
10%緩衝ホ
、C、C
施設
施設
IHCIHC
法 2+ (15.9%,6.7%,12.2%)、
法 2+ (15.9%,6.7%,12.2%)、
ルマリン使用の施設は
ルマリン使用の施設は
3 施設、推奨固定時間
3 施設、推奨固定時間
6 時間以
6 時間以
3+(21.1%,17.2%,11.1%)であった。
3+(21.1%,17.2%,11.1%)であった。
上 48
上時間以内は
48 時間以内は
6 施設、切片の厚さ
6 施設、切片の厚さ
IHCIHC
法 4μ
法は
4μ は 【まとめ】HER2
【まとめ】HER2
検査はハーセプチン治療の可否に直
検査はハーセプチン治療の可否に直
1 施設のみだった。アンケート
1 施設のみだった。アンケート
2,3 2,3
で生検と手術材料
で生検と手術材料結するため、不正確な結果は患者に大きな不利益をも
結するため、不正確な結果は患者に大きな不利益をも
別に聞いたところ、推奨ガイドライン
別に聞いたところ、推奨ガイドライン
10%緩衝ホル
10%緩衝ホルたらす。今回の結果は、施設間、期間によってバラツ
たらす。今回の結果は、施設間、期間によってバラツ
マリン使用の施設は4施設、生検には使用が
マリン使用の施設は4施設、生検には使用が
2 施設、
2 施設、
キが多いものであった。HER2
キが多いものであった。HER2
検査に関して、染色法
検査に関して、染色法
固定時間は生検では全施設
固定時間は生検では全施設
48 時間以内であったが、
48 時間以内であったが、や判定法については日本病理学会が主体となって精度
や判定法については日本病理学会が主体となって精度
手術材料では
手術材料では
72 時間を超すところも見られた。切片
72 時間を超すところも見られた。切片管理が行われつつある。HER2
管理が行われつつある。HER2
の判定以外の点では検
の判定以外の点では検
の厚さ
の厚さ
IHCIHC
法 4μ
法は
4μ4は施設、報告までの日数は生検で
4 施設、報告までの日数は生検で
査技師が携わる過程も多く、今後もフィードバックを
査技師が携わる過程も多く、今後もフィードバックを
2~3
2~3
日、手術材料で
日、手術材料で
7~14
7~14
日だった。
日だった。
続けていく必要がある。
続けていく必要がある。
アンケート
アンケート
1:8
1:8
施設の平均陽性率は、IHC
施設の平均陽性率は、IHC
法 法
2+,18.4%、3+,19.6%、FISH
2+,18.4%、3+,19.6%、FISH
法陽性率は
法陽性率は
9.3%であった。
9.3%であった。
福井県立病院検査室 0776-54-5151(内
福井県立病院検査室 0776-54-5151(内
2631)
2631)
アンケート
2:8
施設平均陽性率は、胃癌生検で
アンケート
2:8
施設平均陽性率は、胃癌生検で
IHCIHC
法 2+,11.1%、3+,19.4%、FISH
法陽性率は
25%で
法 2+,11.1%、3+,19.4%、FISH
法陽性率は
25%で
− 103 −
シンポジウムⅦ 免疫染色の精度保証について
病理標本における免疫組織化学の精度保証
病理標本における免疫組織化学の精度保証
4.病理標本における免疫組織化学の精度保証
〜標本作成過程における影響を中心に〜
- 標本作成過程における影響を中心に -
- 標本作成過程における影響を中心に -
1) 1)
◎築山
◎築山あゆみ
あゆみ
1) 1)
大阪警察病院
大阪警察病院病理技術科
病理技術科
○築山 あゆみ 大阪警察病院 病理技術科
【はじめに】近年、免疫組織化学:IHC
【はじめに】近年、免疫組織化学:IHC
法は、病理診
法は、病理診 ⑤clone
⑤clone
間差:2014
間差:2014
年年
3 月から
3 月から
4 月に乳癌の診断にて
4 月に乳癌の診断にて
外科的切除された症例
8 例を用いて、Ki67
8 例を用いて、Ki67
抗体の
抗体の
断において必要不可欠な手法となっている。分子標的
断において必要不可欠な手法となっている。分子標的外科的切除された症例
Clone
Clone
MIB-1
MIB-1
とと
30-9
30-9
による陽性率について、比較検討
による陽性率について、比較検討
薬の治療対象患者の選別のために行われる
薬の治療対象患者の選別のために行われる
companion companion diagnosis:CDx
としても活用され、更なる需要が期待
した。算出法は、強拡
5 視野各
5 視野各
100
100
個を数え平均値を
個を数え平均値を
diagnosis:CDx
としても活用され、更なる需要が期待した。算出法は、強拡
されている。染色の精度管理の観点から見ると、染色
Ki-Index
とした。
とした。
されている。染色の精度管理の観点から見ると、染色Ki-Index
法そのものに関しては、自動免疫装置の導入や
kitkit
化化 【結果】
【結果】
法そのものに関しては、自動免疫装置の導入や
により、精度保証が補完されつつあると考える。しか
①固定液の種類による影響
により、精度保証が補完されつつあると考える。しか①固定液の種類による影響
し病理検査においては、ホルマリン固定パラフィン
し病理検査においては、ホルマリン固定パラフィン
HEHE Vim
Vim Cy Cy Ck7Ck7 Ck20
Ck20 Ki67
Ki67 CEA
CEA Ecad
Ecad P40P40
包埋ブロック標本:FFPE
が主な検体である事から、
包埋ブロック標本:FFPE
が主な検体である事から、 Al Al △ △ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ △ △
○○ △△
標本作製過程の影響を避けることは出来ない。今回
標本作製過程の影響を避けることは出来ない。今回 Tp Tp ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎
○○ ○○
我々は、IHC
における
FFPE
標本作製過程での
我々は、IHC
における
FFPE
標本作製過程での FAFA ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○
◎◎ ◎◎
様々な処理並びに検出系の違いによる影響を検討し
様々な処理並びに検出系の違いによる影響を検討し
◎:良好 ○:可 △:不満足 ×:不可
◎:良好 ○:可 △:不満足 ×:不可
たので報告する。
たので報告する。
②脱灰の影響
②脱灰の影響
【方法】基本自動免疫染色装置
Roche
社社
【方法】基本自動免疫染色装置
Roche
Vim
Vim
CyCy
CK7
CK7 Ki67
Ki67 Ecad
Ecad LCA
LCA
BenchMarkUltra
を用いて
iVEWkit(LsAB
法)にて免
BenchMarkUltra
を用いて
iVEWkit(LsAB
法)にて免
OKOK
OKOK
OKOK 30m↓
疫染色を実施した。検討項目は、
疫染色を実施した。検討項目は、
30m↓ 3h↓
3h↓ OKOK
①固定液の種類による影響:肺癌症例(腺癌、扁平上
①固定液の種類による影響:肺癌症例(腺癌、扁平上
HM-CK
HM-CK P40
P40 TTF-1
TTF-1 HER2
HER2 MPO
MPO
皮癌)、卵巣癌、正常胃を用いて、95%Alchol:AL、
皮癌)、卵巣癌、正常胃を用いて、95%Alchol:AL、
OKOK 1h↓
一晩↓ OKOK
1h↓ 30m↓
30m↓ 一晩↓
Thinprep
固定液:Tp、15%ホルマリン:FA
のの
3 種類の固
Thinprep
固定液:Tp、15%ホルマリン:FA
3 種類の固
定液にて
4848
時間固定後パラフィン包埋ブロッ
定液にて
時間固定後パラフィン包埋ブロッ
ク:PE
を作製し
HEHE
標本並びに
8 種類の抗体を用いて、
ク:PE
を作製し
標本並びに
8 種類の抗体を用いて、
③処理における賦活液の違い
③処理における賦活液の違い
染色性を比較した。
染色性を比較した。
PH6.0
PH6.0 PH8.5
PH8.5 PH9.0
PH9.0 DW
DW
②。脱灰の影響(ブロック脱灰):通常の薄切切片を
②。脱灰の影響(ブロック脱灰):通常の薄切切片を
KI67 KI67 ○○
得た後、脱灰液である
KCX
を含ませたキムワイプの
得た後、脱灰液である
KCX
を含ませたキムワイプの
◎◎
○○
××
ER ER 上に薄切面を下にブロックを置き表面脱灰をし、時間
上に薄切面を下にブロックを置き表面脱灰をし、時間
○○
◎◎
◎◎
××
経過を経て薄切をし、脱灰標本とした。経過時間は、
経過を経て薄切をし、脱灰標本とした。経過時間は、
P504s ××
P504s
○○
◎◎
××
室温
1515
分、30
分、1
時間、3
時間と
4℃1
晩とし、
室温
分、30
分、1
時間、3
時間と
4℃1
晩とし、
P40 P40 ○○
◎◎
◎◎
××
種類の抗体を用いて、染色性への影響を検討した。
1111
種類の抗体を用いて、染色性への影響を検討した。
CDX2
CDX2
○○
◎◎
◎◎
××
③熱処理:HR
における賦活液の違いの影響:
③熱処理:HR
における賦活液の違いの影響:
④検出系による違いでは、抗体により差を認めた。
④検出系による違いでは、抗体により差を認めた。
Buffer
にに
PH6.0
Buffer
PH6.0 Retreval
Retreval solution(DAKO)、PH9.0
solution(DAKO)、PH9.0⑤Ki67-Index
⑤Ki67-Index
は、30-9
は、30-9
とと
MIB-1
MIB-1
間で有意な差は認め
間で有意な差は認め
Retreval
Retreval
solution(DAKO)、PH8.1
solution(DAKO)、PH8.1
CC1Buffer(Roche)、
CC1Buffer(Roche)、
なかった。
なかった。
蒸留水を用いて、5
種類の抗体について、染色性を比
蒸留水を用いて、5
種類の抗体について、染色性を比【まとめ】病理標本における免疫染色では、FFPE
【まとめ】病理標本における免疫染色では、FFPE
標標
較した。熱処理条件は標本を容液に浸漬後、圧力鍋に
較した。熱処理条件は標本を容液に浸漬後、圧力鍋に本作製過程にも気を配るべき点が多くある事と再認識
本作製過程にも気を配るべき点が多くある事と再認識
てて
1010
分加熱後室放置
2020
分とした。
分加熱後室放置
分とした。
しました。
しました。
④検出系の違いによる影響:polymer
試薬(ENVision+
④検出系の違いによる影響:polymer
試薬(ENVision+
DAKO)と
LsAB
法(iVEW
kit Roche)を用いて、
DAKO)と
LsAB
法(iVEW
kit Roche)を用いて、時間が許せばホルマリン固定における固定時間の影響,薄
時間が許せばホルマリン固定における固定時間の影響,薄
CD4(扁桃)、CK13(子宮頚部)、CK17(肺扁平上皮
CD4(扁桃)、CK13(子宮頚部)、CK17(肺扁平上皮 切後の保存の影響等も報告する予定です。
切後の保存の影響等も報告する予定です。
癌)、CDX2(大腸癌)、について比較検討した。
癌)、CDX2(大腸癌)、について比較検討した。 連絡先:06(6771)6051#2263
連絡先:06(6771)6051#2263
− 104 −
シンポジウムⅧ −細胞−
9月21日(日) 9:50~11:50 第8会場 5階 504・505号
テーマ:細胞検査士の教育について
司会:奥村 寿崇(日本赤十字社和歌山医療センター 病理診断科部)
安達 博成(奈良市総合医療検査センター 検査課病理・細胞診)
1.細胞検査士の教育についてのアンケート
川村 道広(公立学校共済組合近畿中央病院 臨床検査科)
2.ビギナー細胞検査士の教育を目的とした細胞診カンファレンス
塚本 龍子(国立大学法人神戸大学医学部附属病院 病理部)
3.細胞検査士の卒後教育 大阪府での取り組み 〜自己採点方式スライドカンファレンスを中心に〜
宇津野 美弥子(社会医療法人景岳会南大阪病院 臨床検査科)
4.京都での細胞検査士養成 ~当院細胞診教育セミナーの現状~
林 孝俊(公益社団法人京都保健会京都民医連中央病院 病理技術課)
●ねらい
細胞検査士は「日本臨床細胞学会」主催の認定試験を合格することによって得ることが出きる資格であ
る。多くの医療機関では、この資格を得たのちに「細胞検査士」として病理業務における細胞診スクリー
ニングに携わることができ、無資格者は細胞診業務に携われないというのが多くの実情であろう。
細胞検査士認定試験の合格率は50%以下と難関な試験であるため、全国および地方支部において試験
対策の講習会や研修会が多く行われている。しかしながら合格後の初心者に対する「教育」としての講習
やセミナーは少ないのが現状である。
そこで今回、各支部や個々の施設における資格取得後の「教育」として取り組みを紹介して、検査士全
体のレベルアップに役立てて頂きたい。
− 105 −
シンポジウムⅧ 細胞検査士の教育について
細胞検査士の教育についてのアンケート
1.細胞検査士の教育についてのアンケート
◎川村 道広 1)
近畿中央病院 検査科 1)
○川村 道広 近畿中央病院 検査科
細胞検査士の資格取得後、独り立ちするまで各施設で
どのような教育を行っているかアンケートを実施する。
アンケートにより各施設で行っている教育プログラム
や問題点を抽出し今後の研究班活動に反映させる。
連絡先ー 080-2530-3913
− 106 −
シンポジウムⅧ 細胞検査士の教育について
ビギナー細胞検査士の教育を目的とした細胞診カンファレンス
2.ビギナー細胞検査士の教育を目的とした細胞診カンファレンス
◎塚本龍子1),東 誠二2),上岡英樹3),岡本秀雄4),川村道広5),鳥居良貴6),山下展弘7)(共同演者 50 音順)
1)
2)
3)
6)
神戸大学医学部附属病院
,宝塚市立病院
神戸中央病院5)、鳥居 良貴
,住友病院 ,公立学校共済組
○塚本 龍子
、東 誠二
、上岡 英樹,地域医療推進機構
、岡本 秀雄4)、川村 道広
、山下 展弘7)
1)
2)
3)
4)
合1)神戸大学医学部附属病院、2)宝塚市立病院、3)地域医療推進機構 神戸中央病院、4)住友病院、
近畿中央病院5),兵庫医科大学病院6),神戸市立医療センター西市民病院7)
5)公立学校共済組合 近畿中央病院、6)兵庫医科大学病院、7)神戸市立医療センター西市民病院 細胞検査士の育成については、養成所をはじめ大学
におけるカリキュラムや各地方技師会、細胞学会主催
の講習会などで盛んに行われており、豊富な材料、症
例からトレーニングを受けることができる。しかしな
がら、細胞検査士資格取得後は、即、正確な診断が要
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
求されるにもかかわらず、一人細胞検査士で、しかも
その上、ビギナー細胞検査士(以下ビギナー)だけで
日常の細胞診断に苦慮したり、症例数に乏しく経験を
積むことが難しい施設も少なくない。
そこで、スキルアップのための機会である細胞学会
その他様々な団体によるワークショップ、セミナー等
の研修会以外に、より気軽に身近で参加でき、細胞に
ついて語り、相談し合える場を創る取り組みとして、
本年より近隣病院の有志による細胞診カンファレスを
開催している。
カンファレンスの内容は、各施設から、組織診断が
なされている過去の診断困難例や稀少例の他、現在進
行中の判定に苦慮しているコンサルテーション対象な
どの標本を供覧し、判定・推定病変を導くまでの細胞
の見方をディスカッションする形式で、まずビギナー
の自由な発言を重視している。本細胞診カンファレン
スが、ビギナーの成長のみならず、ビギナーならでは
の細胞に対する思考や疑問が、ベテラン細胞検査士の
ブラッシュアップにも繋がり、その相乗効果によって
参加者全体の細胞診断力の向上が得られるものと考え
る。
そのためにも今後、更にビギナーにとって発言しや
すい雰囲気づくりを第一とし、内容、進行など運用を
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
検討するとともに、会場のキャパシティーによる人数
制限の問題を解決し、より多くのビギナー参加できる
ような細胞診カンファレンスの新たな展開の可能性を
考察したい。
− 107 −
シンポジウムⅧ 細胞検査士の教育について
細胞検査士の卒後教育 大阪府での取り組み
細胞検査士の卒後教育 大阪府での取り組み
3.細胞検査士の卒後教育 大阪府での取り組み
〜自己採点方式スライドカンファレンスを中心に〜
自己採点方式スライドカンファレンスを中心に
自己採点方式スライドカンファレンスを中心に
1) 1)
◎宇津野
◎宇津野
美弥子
美弥子
1) 1)
社会医療法人
社会医療法人
景岳会
景岳会
南大阪病院
南大阪病院
臨床検査科
臨床検査科
○宇津野 美弥子 社会医療法人 景岳会 南大阪病院 臨床検査科
【はじめに】
【はじめに】
SAQC
SAQC
の内容は、画像提供者が作成した問題と解説を
の内容は、画像提供者が作成した問題と解説を
大阪府では、資格取得に向けた教育として、大阪府臨
大阪府では、資格取得に向けた教育として、大阪府臨
役員間で試写会を行い検討した後、専門医の意見や評
役員間で試写会を行い検討した後、専門医の意見や評
床検査技師会が細胞診に必要な基礎的講義や1次試験
床検査技師会が細胞診に必要な基礎的講義や1次試験
価をもらい最終調整を行っている。
価をもらい最終調整を行っている。
対策としてフォト模擬試験を行っている。資格取得後
対策としてフォト模擬試験を行っている。資格取得後
スライドは1問1分間投影し、複写式回答用紙に記入
スライドは1問1分間投影し、複写式回答用紙に記入
は、大阪府支部細胞検査士会が日常業務における細胞
は、大阪府支部細胞検査士会が日常業務における細胞
してもらい、全問投影終了後、回答用紙を回収する。
してもらい、全問投影終了後、回答用紙を回収する。
検査士の知識と技術の向上を目的として学術研修会、
検査士の知識と技術の向上を目的として学術研修会、
解答用のスライドを投影後、正解率が低いと予想され
解答用のスライドを投影後、正解率が低いと予想され
自己採点方式スライドカンファレンス(以下
自己採点方式スライドカンファレンス(以下
SAQC)、
SAQC)、
た症例6問程度を詳細に解説している。参加者は各自
た症例6問程度を詳細に解説している。参加者は各自
ワークショップ(以下
WSQC)、学術集会などを開
ワークショップ(以下
WSQC)、学術集会などを開で採点、自己評価を行う。
で採点、自己評価を行う。
催している。そこで今回は、卒後教育として、大阪府
催している。そこで今回は、卒後教育として、大阪府
回答用紙には、経験年数、勤務施設、業務内容、経験
回答用紙には、経験年数、勤務施設、業務内容、経験
支部細胞検査士会の取り組みと
SAQC
を紹介する。
支部細胞検査士会の取り組みと
SAQC
を紹介する。値などのアンケート項目が付記してあり、正解率と共
値などのアンケート項目が付記してあり、正解率と共
に集計を行う。この解析結果を学術研修会で会員に報
に集計を行う。この解析結果を学術研修会で会員に報
【細胞検査士会の取り組み】
【細胞検査士会の取り組み】
告している。
告している。
1.学術研修会の開催
1.学術研修会の開催
SAQC
SAQC
で低正解率であった4~5症例およびそれらと
で低正解率であった4~5症例およびそれらと
標本作製や染色、臓器別の細胞像や組織像の見方や考
標本作製や染色、臓器別の細胞像や組織像の見方や考
の鑑別が必要な対比症例を
の鑑別が必要な対比症例を
WSQC
WSQC
で取り上げ、さら
で取り上げ、さら
え方など、日常業務を行う上で必要な技術や知識の習
え方など、日常業務を行う上で必要な技術や知識の習
に理解を深められるよう企画している。また、低正解
に理解を深められるよう企画している。また、低正解
得を図るため年
2 回開催している。また、WSQC
を を率の原因を解析し、画像が不明瞭、画像が典型例でな
得を図るため年
2 回開催している。また、WSQC
率の原因を解析し、画像が不明瞭、画像が典型例でな
開催し実技講習を行っている。
開催し実技講習を行っている。
い、選択肢が良くないなど主催者側に問題があった点
い、選択肢が良くないなど主催者側に問題があった点
2.精度管理事業
2.精度管理事業
は、次回の
は、次回の
SAQC
SAQC
において改善するよう努めている。
において改善するよう努めている。
検体処理や染色などの施設間差の検討、リスクマネジ
検体処理や染色などの施設間差の検討、リスクマネジ
メント報告、SAQC
を行っている。WSQC
開催時に、
メント報告、SAQC
を行っている。WSQC
開催時に、
低正解率の主な原因は、細胞の異型が弱く診断が難し
低正解率の主な原因は、細胞の異型が弱く診断が難し
SAQC
で低正解率であった症例および対比症例の検鏡
い症例や早期の病変のため実際に経験した人が少ない
い症例や早期の病変のため実際に経験した人が少ない
SAQC
で低正解率であった症例および対比症例の検鏡
実習を行っている。
症例などであった。このような症例は、繰り返し出題
症例などであった。このような症例は、繰り返し出題
実習を行っている。
3.Web
での講習
3.Web
での講習
し、詳細な解説、WSQC
し、詳細な解説、WSQC
での症例呈示が必要と考え
での症例呈示が必要と考え
過去に開催した学術研修会で使用した
PowerPoint
資 資る。
過去に開催した学術研修会で使用した
PowerPoint
る。
料、SAQC
の問題と解説、細胞診アトラスなどをホー
料、SAQC
の問題と解説、細胞診アトラスなどをホー
ムページ上で公開し、講習会に参加できなかった人で
ムページ上で公開し、講習会に参加できなかった人で
【問題点】
【問題点】
も学習できるようになっている。
も学習できるようになっている。
1.大阪府支部の会員数は約400名であるが、例年
1.大阪府支部の会員数は約400名であるが、例年
4.広報活動
4.広報活動
参加者数は80名程度と参加者が少ない。
参加者数は80名程度と参加者が少ない。
病理・細胞診研修会カレンダーのホームページ上への
病理・細胞診研修会カレンダーのホームページ上への
2.画像提供施設数が多く、染色性、画質が一定しな
2.画像提供施設数が多く、染色性、画質が一定しな
掲載、メールジャーナルの発送、はがきでの講習会の
掲載、メールジャーナルの発送、はがきでの講習会の
い。
い。
案内など、参加者数を増やすようにしている。
案内など、参加者数を増やすようにしている。
3.無記名回答なので、低正解率者が
3.無記名回答なので、低正解率者が
WSQC
WSQC
に参加
に参加
しているかどうかわからない。
しているかどうかわからない。
【自己採点方式スライドカンファレンス】
【自己採点方式スライドカンファレンス】
平成16年から外部精度管理として
SAQC
を行って
平成16年から外部精度管理として
SAQC
を行って【まとめ】
【まとめ】
いる。SAQC
の問題は全領域から30問出題され、回
いる。SAQC
の問題は全領域から30問出題され、回
自施設のみの症例では偏りがあり、全ての分野の症例
自施設のみの症例では偏りがあり、全ての分野の症例
答は「わからない」を含めた五者択一式形式である。
答は「わからない」を含めた五者択一式形式である。
を経験できない。SAQC
を経験できない。SAQC
や WSQC
や WSQC
に参加することに
に参加することに
出題内容は、一般的な問題やふだん経験することは少
出題内容は、一般的な問題やふだん経験することは少
より、参加者自身の苦手分野を認識する良い機会とな
より、参加者自身の苦手分野を認識する良い機会とな
ないが細胞検査士として知っておくべき問題から構成
ないが細胞検査士として知っておくべき問題から構成
る。また、参加者を増やすための広報活動も必要であ
る。また、参加者を増やすための広報活動も必要であ
され、平均正解率が80%を目標に作成している。
され、平均正解率が80%を目標に作成している。 る。 南大阪病院:06-6685-0221
る。 南大阪病院:06-6685-0221
− 108 −
シンポジウムⅧ 細胞検査士の教育について
京都での細胞検査士養成
4.京都での細胞検査士養成 京都での細胞検査士養成
~当院細胞診教育セミナーの現状~
~当院細胞診教育セミナーの現状~
~当院細胞診教育セミナーの現状~
1) 1)
◎林
◎林
孝俊
孝俊
○林 孝俊 1) 1) 公益社団法人
公益社団法人
京都保健会
京都保健会
京都民医連中央病院
京都民医連中央病院
病理技術課
病理技術課
公益社団法人 京都保健会 京都民医連中央病院 病理技術課
はじめに
はじめに
る一方、新米講師にとっても自分が勉強していたとき
る一方、新米講師にとっても自分が勉強していたとき
細胞検査士の学会認定試験を目指す場合、実務経験を
細胞検査士の学会認定試験を目指す場合、実務経験を
とは違った「教えることの難しさ」を経験でき、非常
とは違った「教えることの難しさ」を経験でき、非常
積みながら、先輩からの指導や施設内勉強会、技師
積みながら、先輩からの指導や施設内勉強会、技師 に貴重な学習の機会になっていると考える。
に貴重な学習の機会になっていると考える。
会・細胞学会の研修会に参加して学習し受験するとい
会・細胞学会の研修会に参加して学習し受験するとい
今回、当院細胞診教育セミナー
今回、当院細胞診教育セミナー
30 年の実績と開催
30 年の実績と開催
う形と学会認定の「養成所」に入所するという形だっ
う形と学会認定の「養成所」に入所するという形だっ
している現況について紹介する。
している現況について紹介する。
たが、近年それに加えて、大学や大学院において細胞
たが、近年それに加えて、大学や大学院において細胞
診教育を行い、卒業時に資格取得させる体制もできて
診教育を行い、卒業時に資格取得させる体制もできて
連絡先
連絡先
いる。
いる。
公益社団法人 京都保健会
公益社団法人 京都保健会
一方で細胞検査士の働く現状を見ると、病理部門の
一方で細胞検査士の働く現状を見ると、病理部門の
京都民医連中央病院 病理技術課 林 孝俊
京都民医連中央病院 病理技術課 林 孝俊
みの施設や独立している医療機関ばかりではなく、臨
みの施設や独立している医療機関ばかりではなく、臨
075-822-1373
075-822-1373
床検査技師として就職した後、ローテーションによっ
床検査技師として就職した後、ローテーションによっ
て病理部門に配属になり細胞検査士を目指すことは珍
て病理部門に配属になり細胞検査士を目指すことは珍
しくない。そのような場合、当セミナーのように平日
しくない。そのような場合、当セミナーのように平日
夕方、仕事が終わってから学習できる環境は、依然と
夕方、仕事が終わってから学習できる環境は、依然と
して必要であると考えている。
して必要であると考えている。
現に受講生のほとんどが、すでに検査部門に就職し
現に受講生のほとんどが、すでに検査部門に就職し
ている中で、ローテートで病理部門に配属され資格取
ている中で、ローテートで病理部門に配属され資格取
得を目指す。または、将来病理部門への配属を希望し
得を目指す。または、将来病理部門への配属を希望し
て、先に資格取得を目指す方々で構成されている。
て、先に資格取得を目指す方々で構成されている。
当院が実施している「京都民医連中央病院細胞診教
当院が実施している「京都民医連中央病院細胞診教
育セミナー」は今年
育セミナー」は今年
31 回目を迎える。
31 回目を迎える。
30 年前、細胞検査士は全国的にも少なく、現在では
30 年前、細胞検査士は全国的にも少なく、現在では
200200
人を超える京都でも細胞検査士は少数だった。当
人を超える京都でも細胞検査士は少数だった。当
時何とか細胞検査士を育成しようと勉強会「木曜会」
時何とか細胞検査士を育成しようと勉強会「木曜会」
が始まり、その後京都民医連病理センター(現京都民
が始まり、その後京都民医連病理センター(現京都民
医連中央病院 病理技術課)が運営することになり、
医連中央病院 病理技術課)が運営することになり、
現在に至っている。
現在に至っている。
カリキュラムは、4
カリキュラムは、4
月~12
月~12
月の平日(月、木)18:
月の平日(月、木)18:
30~22:00 年間約
30~22:00 年間約
60 回(約
60 回(約
200200
時間)2~3
時間)2~3
月に募
月に募
集し選考の上定員
集し選考の上定員
15 名で運営し、定員に余裕があれ
15 名で運営し、定員に余裕があれ
ば一次試験発表後に二次募集することもある。
ば一次試験発表後に二次募集することもある。
講師は当院スタッフ以外に、京都市内ほぼすべての
講師は当院スタッフ以外に、京都市内ほぼすべての
病理部門を持つ医療機関と、滋賀県、大阪府から依頼
病理部門を持つ医療機関と、滋賀県、大阪府から依頼
しており、受講生は多数の施設の標本を鏡検し、多数
しており、受講生は多数の施設の標本を鏡検し、多数
の講師の指導を受ける。これは幅広い知識を得るとと
の講師の指導を受ける。これは幅広い知識を得るとと
もに「妥当な判定」を学習できる機会となっている。
もに「妥当な判定」を学習できる機会となっている。
また、ベテランとは別に合格後年数の浅い方にもお
また、ベテランとは別に合格後年数の浅い方にもお
願いしている。これは受講生には新鮮な試験対策とな
願いしている。これは受講生には新鮮な試験対策とな
− 109 −
シンポジウムⅨ −微生物−
9月21日(日) 13:00~15:30 第2会場 3階 国際会議場
テーマ:臨床検査技師から伝えたいこと、医師から伝えたいこと
司会:林 三千雄(住友病院 感染制御部)
直本 拓己(国立大学法人神戸大学医学部附属病院 検査部)
1.悪寒、発熱のため緊急入院となった64歳男性
中西 雅樹(京都府立医科大学 感染制御検査医学教室)
山田 幸司(京都府立医科大学附属病院 臨床検査部)
2.肺に空洞性病変を認めた生来健康な25歳女性
山本 剛(西神戸医療センター 臨床検査技術部)
コメンテーター:高倉 俊二(京都大学医学部附属病院 感染制御部)
市村 佳彦(大阪赤十字病院 検査部)
久田 恭子(福井大学医学部附属病院 検査部)
小泉 章(奈良県立医科大学附属病院 中央検査部)
山崎 勝利(和歌山労災病院 中央検査部)
茂籠 邦彦(彦根市立病院 臨床検査科)
●ねらい
感染症診療において医師より微生物検査等の依頼があり、検査室から検査結果の報告を行う過程で、重
要なことが依頼オーダーや報告書を見ただけでは十分に伝わらないこともあります。患者(検体)の検査
依頼から始まり、グラム染色結果等の中間報告、同定・感受性結果等の最終報告の各ステップでどのよう
に解釈され、治療に反映されていくのか? 実際にどのような情報が求められているのか?
症例プレゼンテーション形式で医師とともに討議しながら、今後の診療、検査業務に役立てられる、よ
り最適なコミュニケーションの方法を探りたい。
− 110 −
シンポジウムⅨ 臨床検査技師から伝えたいこと、医師から伝えたいこと
悪寒、発熱のため緊急入院となった
悪寒、発熱のため緊急入院となった
6464
歳男性
歳男性
1.悪寒、発熱のため緊急入院となった64歳男性
1) 1)
2) 2)
◎中西
◎中西雅紀
雅紀
、山田
、山田幸司
幸司
1) 1)
2) 2)
1)
2)
京都府立医科大学
京都府立医科大学感染制御・検査医学
感染制御・検査医学
、京都府立医科大学附属病院
、京都府立医科大学附属病院
臨床検査部
臨床検査部
○中西 雅紀
、山田 幸司
1)京都府立医科大学 感染制御検査医学教室、2)京都府立医科大学附属病院 臨床検査部
【症例】64
【症例】64
歳、男性
歳、男性
【主訴】悪寒、全身関節痛
【主訴】悪寒、全身関節痛
【検査所見】
【検査所見】
血液
血液
:WBC
:WBC
10,300
10,300
/μL、
/μL、
RBC
RBC
458458
万万
/μL、
/μL、
HbHb
13.0
13.0
g/dl、
g/dl、
MVC
86.2
%、Plt
30.5
万万
/μL、LDH
286286
U/L、AST
50 50
MVC
86.2
%、Plt
30.5
/μL、LDH
U/L、AST
25 25
U/L、TP
7.77.7
g/dl、ALB
3.93.9
g/dl、T-Bil
0.99
歳時)
。 。U/L、ALT
U/L、ALT
U/L、TP
g/dl、ALB
g/dl、T-Bil
0.99
【既往歴】
【既往歴】
脊椎カリエスで頸胸椎後方固定術
脊椎カリエスで頸胸椎後方固定術
(60
(60
歳時)
BUN
16.4
mg/dl、
CRE
0.84
mg/dl、
NaNa
141141
mmol/L、
術後も外来にて
follow
中。下肢麻痺、下肢痙縮、不
mg/dl、
BUN
16.4
mg/dl、
CRE
0.84
mg/dl、
mmol/L、
術後も外来にて
follow
中。下肢麻痺、下肢痙縮、不 mg/dl、
K 4.3
mmol/L、Cl
101101
mmol/L、CRP
10.89
mmol/L
随意運動あり。膀胱直腸障害あり。自己導尿中。
K 4.3
mmol/L、Cl
mmol/L、CRP
10.89
mmol/L
随意運動あり。膀胱直腸障害あり。自己導尿中。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
【社会歴】職業;無職。既婚。妻と二人暮らし。
【社会歴】職業;無職。既婚。妻と二人暮らし。
【生活歴】喫煙;30
本本
/日(60
【生活歴】喫煙;30
/日(60
歳まで)
。アルコール; 【メモ】
歳まで)
。アルコール;
【メモ】
350mL
/日。
350mL
/日。
【内服薬】入院前日よりセフカペン・ピボキシル、ロ
【内服薬】入院前日よりセフカペン・ピボキシル、ロ
キソプロフェン、レバミピド内服
キソプロフェン、レバミピド内服
【アレルギー歴】特になし。
【アレルギー歴】特になし。
【家族歴】特記すべきこと無し。
【家族歴】特記すべきこと無し。
【現病歴】
2006
年頸胸椎後方固定術
(C3-T11)
を実施。
【現病歴】
2006
年頸胸椎後方固定術
(C3-T11)
を実施。
2007
年より脊髄麻痺による神経因性膀胱のため自己
2007
年より脊髄麻痺による神経因性膀胱のため自己
導尿を開始した。以後、頻回に尿路感染が生じ、適宜
導尿を開始した。以後、頻回に尿路感染が生じ、適宜
泌尿器科を受診した上でセフカペン・ピボキシルを内
泌尿器科を受診した上でセフカペン・ピボキシルを内
服していた。20××年
3月
日整形外科外来再診時
服していた。20××年
3月
28 28
日整形外科外来再診時
39.4
度の発熱を認め、熱源精査・加療目的で同日緊
にに
39.4
度の発熱を認め、熱源精査・加療目的で同日緊
急入院となった。
急入院となった。
【身体所見】身長
157.0cm、体重
55.0kg、BMI
22.3、
【身体所見】身長
157.0cm、体重
55.0kg、BMI
22.3、
血圧
/ 76mgHg、脈拍
113bpm、体温
35.6
度、SpO2
血圧
106106
/ 76mgHg、脈拍
113bpm、体温
35.6
度、SpO2
97%(room
air)。
97%(room
air)。
意識:清明
意識:清明
結膜:貧血・黄疸なし
結膜:貧血・黄疸なし
胸部:呼吸音異常なし、ラ音聴取せず、心雑音聴取せ
胸部:呼吸音異常なし、ラ音聴取せず、心雑音聴取せ
ずず
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
腹部:平坦・軟、圧痛なし、右肋骨脊椎角叩打痛軽度
腹部:平坦・軟、圧痛なし、右肋骨脊椎角叩打痛軽度
あり
あり
臀部:左臀部に硬化した褥瘡痕あり
臀部:左臀部に硬化した褥瘡痕あり
関節:腫脹なし
関節:腫脹なし
四肢:浮腫なし
四肢:浮腫なし
− 111 −
シンポジウムⅨ 臨床検査技師から伝えたいこと、医師から伝えたいこと
肺に空洞性病変を認めた生来健康な
肺に空洞性病変を認めた生来健康な
25 歳女性
25 歳女性
2.肺に空洞性病変を認めた生来健康な25歳女性
◎山本
◎山本
剛 1)剛 1)
1) 1)
西神戸医療センター
西神戸医療センター
臨床検査技術部
臨床検査技術部
○山本 剛 西神戸医療センター 臨床検査技術部
【症例】25
【症例】25
歳,女性
歳,女性
【主訴】発熱、咽頭痛。
【主訴】発熱、咽頭痛。
【既往歴】特記事項なし。
【既往歴】特記事項なし。
【社会歴】職業;無職(1
【社会歴】職業;無職(1
カ月前まで会社員)。
カ月前まで会社員)。
独身。
独身。
【生活歴】喫煙;never
【生活歴】喫煙;never
smoker。飲酒;機会飲酒。
smoker。飲酒;機会飲酒。
【内服薬】CCL、GRNX、ロキソプロフェン、
【内服薬】CCL、GRNX、ロキソプロフェン、
ファモジチン、プレドニゾロン、アズ
ファモジチン、プレドニゾロン、アズ
ノール
ノール
【アレルギー歴】特になし。
【アレルギー歴】特になし。
【家族歴】両親と弟の
【家族歴】両親と弟の
4 人暮らし。
4 人暮らし。
【検査所見】
【検査所見】
血液:WBC
血液:WBC
32,000
32,000
/μl,(Neu
/μl,(Neu
93.5%,Lym
93.5%,Lym
2.2%,Mono
2.2%,Mono
4.2%),RBC
4.2%),RBC
384 384
万/μl,
万/μl,
Hb 10.7
Hb 10.7
g/dl,Plt
g/dl,Plt
36.136.1
万/μl,
万/μl,
TP 6.2
TP 6.2
g/dl,g/dl,
Alb Alb
2.2 g/dl,
2.2 g/dl,
T-BilT-Bil
0.8 mg/dl,
0.8 mg/dl,
ASTAST
42 IU/l,
42 IU/l,
ALTALT
48 48
IU/l,IU/l,
γ-GTγ-GT
78 IU/l,ALP
78 IU/l,ALP
294 294
IU/l,IU/l,
LDHLDH
336 336
IU/l,IU/l,
CK 197
CK 197
IU/l,BUN
IU/l,BUN
7 mg/dl,
7 mg/dl,
Cre Cre
0.650.65
mg/dl,
mg/dl,
eGFR
eGFR
91.0,91.0,
Na 133
Na 133
mEq/l,
mEq/l,
K 3.2
K mEq/l,
3.2 mEq/l,
Cl 90
Clmeq/l,
90 meq/l,
CRPCRP
26.726.7
mg/dl
mg/dl
尿:混濁あり,pH
尿:混濁あり,pH
5.5,糖
5.5,糖
(-),蛋白(+),潜血
(-),蛋白(+),潜血
(+),ウロビリノーゲン(±),ビリルビン(-),ケトン(-),亜硝酸塩(-),白血球
(+),ウロビリノーゲン(±),ビリルビン(-),ケトン(-),亜硝酸塩(-),白血球
(+),沈渣;赤血球
(+),沈渣;赤血球
0-1/HPF,白血球
0-1/HPF,白血球
5-9/HPF
5-9/HPF
【現病歴】20××年
【現病歴】20××年
3 月34月
日に
4 日に
40℃の発熱と咽頭痛を
40℃の発熱と咽頭痛を
【メモ】
自覚し当院救急外来受診。急性扁桃腺炎と診断され
自覚し当院救急外来受診。急性扁桃腺炎と診断され【メモ】
CCL、ロキソプロフェン、ファモジチンを処方し帰宅。
CCL、ロキソプロフェン、ファモジチンを処方し帰宅。
3/7 に近医耳鼻科を受診し、急性扁桃腺炎でロキソプ
3/7 に近医耳鼻科を受診し、急性扁桃腺炎でロキソプ
ロフェンおよび
GRNX
を処方さるも症状改善を認め
ロフェンおよび
GRNX
を処方さるも症状改善を認め
なかった。3/9
に左季肋部痛が出現したため、当院救
なかった。3/9
に左季肋部痛が出現したため、当院救
急外来へ再受診となった。身体所見および臨床症状か
急外来へ再受診となった。身体所見および臨床症状か
ら急性扁桃腺炎やそれ以外の病気の可能性もあるが、
ら急性扁桃腺炎やそれ以外の病気の可能性もあるが、
全身状態の悪化は認めないため経過観察とした。
全身状態の悪化は認めないため経過観察とした。
3/113/11
に発熱や季肋部の痛みは改善を認めず、当院呼
に発熱や季肋部の痛みは改善を認めず、当院呼
吸器内科を再度受診となった。胸部単純撮影および胸
吸器内科を再度受診となった。胸部単純撮影および胸
部単純
CT で左肺舌区に浸潤影を認め、同時に少量の
部単純
CT で左肺舌区に浸潤影を認め、同時に少量の
右胸水の貯留を認めたため胸膜炎を疑い
LVFX
を処を処
右胸水の貯留を認めたため胸膜炎を疑い
LVFX
方し経過観察となった。3/18
の再診時も症状の著明
方し経過観察となった。3/18
の再診時も症状の著明
な改善は認めず、更に緑黄色の喀痰も認めるようにな
な改善は認めず、更に緑黄色の喀痰も認めるようにな
ったため、胸部単純
CT を再度撮影したところ右上下
ったため、胸部単純
CT を再度撮影したところ右上下
葉および左舌区に空洞形成を伴う浸潤影を認め精査加
葉および左舌区に空洞形成を伴う浸潤影を認め精査加
療目的で入院となった。
療目的で入院となった。
【身体所見】身長
168cm、体重
70.6kg、BMI
25.1、
【身体所見】身長
168cm、体重
70.6kg、BMI
25.1、
血圧血圧
118/75mmHg、脈拍
127 127
回/分、SpO2
95%95%
(room
118/75mmHg、脈拍
回/分、SpO2
(room
air)。
air)。
意識清明、眼瞼貧血なし、眼瞼黄変なし、咽頭発赤あ
意識清明、眼瞼貧血なし、眼瞼黄変なし、咽頭発赤あ
り、扁桃腫大あり、扁桃潰瘍あり、呼吸音清、喘鳴な
り、扁桃腫大あり、扁桃潰瘍あり、呼吸音清、喘鳴な
し、crackle
なし、心雑音なし、腹部平坦軟、圧痛な
し、crackle
なし、心雑音なし、腹部平坦軟、圧痛な
し、四肢浮腫なし、皮疹なし。
し、四肢浮腫なし、皮疹なし。
− 112 −
シンポジウムⅩ −管理運営−
9月21日(日) 13:00~15:00 第3会場 4階 401号
テーマ:臨床検査システムを取り巻く現状と今後の展望
司会:真鍋 史朗(大阪大学大学院医学系研究科 情報統合医学講座医療情報学)
増田 健太(京都大学医学部附属病院 検査部)
1.臨床検査システムにおける知っておきたいセキュリティ知識
松山 征嗣(トレンドマイクロ株式会社)
2.なんでこの心電計、生理検査システムとオンライン接続できないの?!
〜生理検査システムの謎〜
井口 健(大阪医科大学 購買・物流部)
3.検体検査システムでの時間管理
~複数システムを連携した採血~結果報告迄の時間短縮の取り組み~
曽根 伸治(東京大学医学部附属病院 検査部)
4.臨床検査システムに関る標準規格、マスターとガイドラインIHE
山田 修(岡崎市民病院 臨床検査室)
5.厚生労働省として今後の医療情報システムへの期待 〜2025年問題を見据えて〜
中安 一幸(厚生労働省・政策統括官付情報政策担当参事官室)
●ねらい
臨床検査技師として日常業務に各種臨床検査システムの使用は必須です。システムを使い熟すために
も、システムの現状・問題点を把握し、必要な知識を習得して、業務に活用することが質の高い検査を実
現させることに繋がります。このシンポジウムでは、臨床検査システムの現状・問題点、そして今後の方
向性について考えたいと思います。
− 113 −
シンポジウムⅩ 臨床検査システムを取り巻く現状と今後の展望
臨床検査システムにおける知っておきたいセキュリティ知識
臨床検査システムにおける知っておきたいセキュリティ知識
1.臨床検査システムにおける知っておきたいセキュリティ知識
1) 1)
◎松山
◎松山
征嗣
征嗣
1) 1)
トレンドマイクロ株式会社
トレンドマイクロ株式会社
○松山 征嗣 トレンドマイクロ株式会社
近年、医療機関における
近年、医療機関における
IT 化はめざましく、電子
IT 化はめざましく、電子うな対策を取り入れることで改善することも可能とな
うな対策を取り入れることで改善することも可能とな
カルテを中心とした病院情報システムの普及に伴い、
カルテを中心とした病院情報システムの普及に伴い、
ってきている。
ってきている。
医療機器もネットワーク接続、管理されることが当た
医療機器もネットワーク接続、管理されることが当た
り前の状況となっている。
り前の状況となっている。
I)セキュリティ機能付き
I)セキュリティ機能付き
USBUSB
メモリ
メモリ
しかし、病院システムの
しかし、病院システムの
IT 化をセキュリティ観点か
IT 化をセキュリティ観点か USB
USB
メモリにウイルス対策エンジンを搭載し、コ
メモリにウイルス対策エンジンを搭載し、コ
ら見た場合、いくつかの問題を抱えている。
ら見た場合、いくつかの問題を抱えている。
ピーされるファイルを検索しウイルスから守る。シン
ピーされるファイルを検索しウイルスから守る。シン
プルな
プルな
USBUSB
メモリより高価ではあるが暗号化や認証
メモリより高価ではあるが暗号化や認証
1)インターネット接続されないネットワーク環境
1)インターネット接続されないネットワーク環境 機能も備えており情報漏洩対策としても活用されてい
機能も備えており情報漏洩対策としても活用されてい
多くの医療機関ではセキュリティの観点から病院情
多くの医療機関ではセキュリティの観点から病院情
る る
報システム系のネットワークはインターネット接続が
報システム系のネットワークはインターネット接続が
II)インストールレス型検索ツール
II)インストールレス型検索ツール
無い環境で運用している。セキュリティ対策ソフトは
無い環境で運用している。セキュリティ対策ソフトは
USB
USB
メモリからウイルス対策プログラムを起動し、
メモリからウイルス対策プログラムを起動し、
通常、インターネット経由で配信された定義ファイル
通常、インターネット経由で配信された定義ファイル
接続したシステムのウイルス検索、駆除を行うもの。
接続したシステムのウイルス検索、駆除を行うもの。
を取り込んで動作する仕組みのため、人手を介してこ
を取り込んで動作する仕組みのため、人手を介してこ
診療業務で機器を操作しているタイミングでの実行は
診療業務で機器を操作しているタイミングでの実行は
の更新作業を行うことになる。日々新しいウイルスが
の更新作業を行うことになる。日々新しいウイルスが
非推奨だが、それ以外のタイミングであればプログラ
非推奨だが、それ以外のタイミングであればプログラ
出回る状況のため古い定義ファイルでは監視していな
出回る状況のため古い定義ファイルでは監視していな
ムをインストールするものではないため管理医療機器
ムをインストールするものではないため管理医療機器
いのも同然の状態となるためこの更新作業が必須とな
いのも同然の状態となるためこの更新作業が必須とな
であっても問題なく実行できる。
であっても問題なく実行できる。
る。
る。
III)ロックダウン型(ホワイトリスト型)セキュリ
III)ロックダウン型(ホワイトリスト型)セキュリ
2)セキュリティ対策を実施できないシステム
2)セキュリティ対策を実施できないシステム
ティ対策ソフト
ティ対策ソフト
薬事法の管理医療機器とされるシステムは
薬事法の管理医療機器とされるシステムは
この対策では予め登録されたプログラムファイルし
この対策では予め登録されたプログラムファイルし
Windows
Windows
などの汎用
などの汎用
OS OS
をベースとしたものを使って
をベースとしたものを使って
か実行できないよう制限したり、ファイル出力や改変、
か実行できないよう制限したり、ファイル出力や改変、
いたとしてもセキュリティパッチの適用やウイルス対
いたとしてもセキュリティパッチの適用やウイルス対
レジストリ編集などを制御するものである。ウイルス
レジストリ編集などを制御するものである。ウイルス
策ソフトの導入を行うことが出来ないとされている。
策ソフトの導入を行うことが出来ないとされている。
などの不正プログラムが混入したとしても不活化され
などの不正プログラムが混入したとしても不活化され
また、薬事法に該当しないシステムでもベンダの保守
また、薬事法に該当しないシステムでもベンダの保守
た状態となるため、セキュリティ侵害は防がれるとい
た状態となるため、セキュリティ侵害は防がれるとい
を受けることが出来なくなるという理由で対策が行え
を受けることが出来なくなるという理由で対策が行え
う仕組みである。どちらかというとシステムベンダ側
う仕組みである。どちらかというとシステムベンダ側
ないシステムも存在する。
ないシステムも存在する。
で予め組み込むものとして普及しつつある。利用者側
で予め組み込むものとして普及しつつある。利用者側
3)USB
3)USB
メモリや持ち込み
メモリや持ち込み
PC によるセキュリティリ
PC によるセキュリティリはこういった仕組みを調達の際の仕様として要求事項
はこういった仕組みを調達の際の仕様として要求事項
スク
スク
に加えることも一案である。
に加えることも一案である。
セキュリティの脆弱なシステムが多数接続されてい
セキュリティの脆弱なシステムが多数接続されてい
る環境にあって、研究などの業務用途でのデータを取
る環境にあって、研究などの業務用途でのデータを取
特に制限された環境下において単体での防御を中心
特に制限された環境下において単体での防御を中心
り出す、或いは、データを持ち込む際に汚染された
り出す、或いは、データを持ち込む際に汚染された としたセキュリティには限界がある。そのためセキュ
としたセキュリティには限界がある。そのためセキュ
USBUSB
メモリや作業
メモリや作業
PC を接続することで医療機器とさ
PC を接続することで医療機器とさ
リティ対策ソフトだけでなく運用ルール、ネットワー
リティ対策ソフトだけでなく運用ルール、ネットワー
れるシステム、その実は
れるシステム、その実は
Windows
Windows
PC に感染すること
PC に感染すること
クアクセスポリシーやシステム監視なども含め、複数
クアクセスポリシーやシステム監視なども含め、複数
がある。感染したウイルスはネットワーク経由で蔓延
がある。感染したウイルスはネットワーク経由で蔓延
のバリヤが効くよう、病院システム全体の中でバラン
のバリヤが効くよう、病院システム全体の中でバラン
するものもあるため、USB
するものもあるため、USB
ポートを物理的に塞いだ
ポートを物理的に塞いだスを取っていく必要がある。セキュリティは全体で守
スを取っていく必要がある。セキュリティは全体で守
装置でも感染したという事例もある。
装置でも感染したという事例もある。
ることが重要なので当然、臨床検査部門だけでは完結
ることが重要なので当然、臨床検査部門だけでは完結
せず、医療情報部門とも適切に連携し、最適化を図っ
せず、医療情報部門とも適切に連携し、最適化を図っ
臨床検査部門には前述のように対策が取りにくいシ
臨床検査部門には前述のように対策が取りにくいシ
ていく必要がある。
ていく必要がある。
ステムが多数存在している。過去にはこれらのシステ
ステムが多数存在している。過去にはこれらのシステ
ムの対策は困難な状況であったが、現在では以下のよ
ムの対策は困難な状況であったが、現在では以下のよ
− 114 −
シンポジウムⅩ 臨床検査システムを取り巻く現状と今後の展望
なんでこの心電計、生理検査システムとオンライン接続できないの?!
なんでこの心電計、生理検査システムとオンライン接続できないの?!
2.なんでこの心電計、生理検査システムとオンライン接続できないの?!
----生理検査システムの謎-------生理検査システムの謎--- ~生理検査システムの謎~
1)
2)2)
◎井口
◎井口健1)
健、岡田
、岡田裕善
裕善
、山田
、山田修3)
修3)
1) 1)1)
2)
2)2)
3)3)
、岡田 裕善
、山田 修3) 大阪医科大学
大阪医科大学○井口 健
購買・物流部
購買・物流部
、アイテック阪急阪神(株)
、アイテック阪急阪神(株)
、岡崎市民病院
、岡崎市民病院臨床検査室
臨床検査室
1)大阪医科大学 購買・物流部、2)アイテック阪急阪神株式会社、3)岡崎市民病院 臨床検査室
皆様の中にも、演題名のような経験をなされた方々
皆様の中にも、演題名のような経験をなされた方々
超音波、サーモグラフィ、眼底カメラ
超音波、サーモグラフィ、眼底カメラ
が多いのではないでしょうか?検体検査では、どこの
が多いのではないでしょうか?検体検査では、どこの ・波形情報
・波形情報
メーカーの機器でも、検体検査システムにオンライン
メーカーの機器でも、検体検査システムにオンライン
心電図、脳波、筋電図、呼吸機能、ホルター
心電図、脳波、筋電図、呼吸機能、ホルター
接続できるのは当たり前なのに、生理検査では、心電
接続できるのは当たり前なのに、生理検査では、心電
図、脳波計、筋電図装置など思うように生理検査シス ☆検体検査と生理検査でのシステム構成で比較
図、脳波計、筋電図装置など思うように生理検査シス
☆検体検査と生理検査でのシステム構成で比較
テムとオンライン接続ができないことが多いのが現状
テムとオンライン接続ができないことが多いのが現状
検体検査のシステムが、一つのパッケージシステム
検体検査のシステムが、一つのパッケージシステム
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
です。
です。
になっている場合が多いのに比較して、生理検査のシ
になっている場合が多いのに比較して、生理検査のシ
いったいなぜなのか?また、検体検査システムと生 ステムでは、受付、進捗管理、実施、などをつかさど
ステムでは、受付、進捗管理、実施、などをつかさど
いったいなぜなのか?また、検体検査システムと生
理検査システムとの違いは何なのか?皆様と一緒に検 る、RIS
る、RIS
のような生理検査情報管理システム、画像系
のような生理検査情報管理システム、画像系
理検査システムとの違いは何なのか?皆様と一緒に検
討し、現状の問題点の打開策を考えていきたいと思い データを管理する画像管理システム、波形データを管
データを管理する画像管理システム、波形データを管
討し、現状の問題点の打開策を考えていきたいと思い
ます。
理する波形管理システム、レポート作成を支援するシ
理する波形管理システム、レポート作成を支援するシ
ます。
ステム、このほか、ビューワーなどがあります。これ
ステム、このほか、ビューワーなどがあります。これ
☆検体検査システム・検査内容の特徴
らシステムがオールインのパッケージになっているシ
らシステムがオールインのパッケージになっているシ
☆検体検査システム・検査内容の特徴
1、ほとんどの部門で、
“患者の一部”である血液など ステムも有りますが、多くの場合単独、もしくは数個
ステムも有りますが、多くの場合単独、もしくは数個
1、ほとんどの部門で、
“患者の一部”である血液など
が検査対象。
が一つになって、それが組み合わさり、生理検査シス
が一つになって、それが組み合わさり、生理検査シス
が検査対象。
扱うデータは“数字”や“文字”が大部分。一部 テムを構成されている場合が多いのが特徴です。超音
テムを構成されている場合が多いのが特徴です。超音
2. 2.扱うデータは“数字”や“文字”が大部分。一部
簡単な
画像などのデータはありますが。
基本的は 波機器に関しては、画像の標準規格である
波機器に関しては、画像の標準規格である
DICOM
DICOM
をを
簡単な
JPGJPG
画像などのデータはありますが。
基本的は
文字や数字データです。
使用しているので、生理検査の中でも比較的どこのメ
使用しているので、生理検査の中でも比較的どこのメ
文字や数字データです。
基本的にどこのシステムでもどこの分析機器とも ーカーの機器でもシステムと接続が可能となっている
ーカーの機器でもシステムと接続が可能となっている
3. 3.基本的にどこのシステムでもどこの分析機器とも
接続(通信)可能・・・インターフェースが開示され 場合が多い状況です。波形データでは、標準規格
場合が多い状況です。波形データでは、標準規格
接続(通信)可能・・・インターフェースが開示され
ている。
(MFER)があるのですが、普及しているとは言い難
(MFER)があるのですが、普及しているとは言い難
ている。
近年では、HL7,IHE
などのシステムにおける標準規 い状況です。
い状況です。
近年では、HL7,IHE
などのシステムにおける標準規
格やガイドラインも徐々に採用されてきています。
格やガイドラインも徐々に採用されてきています。
☆まとめ
☆まとめ
☆生理検査のシステム・検査内容の特徴
医療システムの標準化は、医療安全や地域連携の観
医療システムの標準化は、医療安全や地域連携の観
☆生理検査のシステム・検査内容の特徴
検体検査系と異なり
“患者さま自身”
が検査対象。 点から、厚生労働省を中心として国策としても推進さ
点から、厚生労働省を中心として国策としても推進さ
1. 1.検体検査系と異なり
“患者さま自身”
が検査対象。
扱うデータは“数字”や“文字”もあるが主とな れています。機器メーカーも標準化には興味を持って
れています。機器メーカーも標準化には興味を持って
2. 2.扱うデータは“数字”や“文字”もあるが主とな
るのは“画像”や“波形”である。
対応しているが、競合メーカーが少ないため、経営的
対応しているが、競合メーカーが少ないため、経営的
るのは“画像”や“波形”である。
・・・種類が多く、複雑である。
観点からシェア獲得(囲い込み)に邁進しているよう
観点からシェア獲得(囲い込み)に邁進しているよう
・・・種類が多く、複雑である。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
データフォーマット、インターフェースが開示さ に私には思えます(自社の機器が入れば、自然とシス
に私には思えます(自社の機器が入れば、自然とシス
3. 3.データフォーマット、インターフェースが開示さ
れていないものが多い、各社独自フォーマット
テムは自社システム採用となり、その後の機器も自社
テムは自社システム採用となり、その後の機器も自社
れていないものが多い、各社独自フォーマット
・・・自由にシステムと接続できない。
の機器が採用される。他社製品ではシステム接続でき
の機器が採用される。他社製品ではシステム接続でき
・・・自由にシステムと接続できない。
機器により採用・接続できるシステムが決まってしま ない)
ない)
。。
機器により採用・接続できるシステムが決まってしま
う場合が多い現状です。結果データの種類としても、 この状況を打開する為には、臨床現場のユーザーであ
この状況を打開する為には、臨床現場のユーザーであ
う場合が多い現状です。結果データの種類としても、
検体検査系のテキスト情報だけでなく大きく
3 種類は る臨床検査技師が、
る臨床検査技師が、
情報システムに関する知識を学び、
情報システムに関する知識を学び、
検体検査系のテキスト情報だけでなく大きく
3 種類は
あります。
現状を理解し、システム構築時に、ユーザーの立場で
現状を理解し、システム構築時に、ユーザーの立場で
あります。
・テキスト情報(数字、文字)
現場のニーズを機器メーカーやシステムベンダーへ的
現場のニーズを機器メーカーやシステムベンダーへ的
・テキスト情報(数字、文字)
予約情報、依頼情報、患者情報、実施情報
確に要望していく“ユーザーの声”が重要であると考
確に要望していく“ユーザーの声”が重要であると考
予約情報、依頼情報、患者情報、実施情報
・画像情報(静止画、動画)
えます。
えます。
・画像情報(静止画、動画)
− 115 −
シンポジウムⅩ 臨床検査システムを取り巻く現状と今後の展望
検体検査システムでの時間管理
検体検査システムでの時間管理
~複数システムを連携した採血~結果報告迄の時間短縮の取り組み~
~複数システムを連携した採血~結果報告迄の時間短縮の取り組み~
3.検体検査システムでの時間管理
~複数システムを連携した採血~結果報告迄の時間短縮の取り組み~
1) 1)
1) 1)
◎曽根
◎曽根伸治
伸治
、大久保
、大久保滋夫
滋夫
、矢冨
、矢冨裕1)
裕1)
○曽根 伸治、大久保 滋夫、矢冨 裕
1) 1)
東京大学医学部附属病院
東京大学医学部附属病院検査部
検査部
東京大学医学部附属病院 検査部 当院は,
当院は,
1 日平均約
1 日平均約
1000
1000
名の採血を専任技師
名の採血を専任技師
5 名と
5 名と することで,精確な採血が実施できた.外来採血患者
することで,精確な採血が実施できた.外来採血患者
専任看護師
専任看護師
2 名,
2 名,
さらに交替,
さらに交替,
支援体制で約
支援体制で約
90 名の技
90 名の技 は,曜日や時間帯などで集中の仕方が異なり,採血状
は,曜日や時間帯などで集中の仕方が異なり,採血状
師が実施している.検体検査は搬送システムと大型自 況を各検査室に表示することで,通常,採血担当者が
況を各検査室に表示することで,通常,採血担当者が
師が実施している.検体検査は搬送システムと大型自
動分析装置で,迅速な結果報告を行っている.我々は 各検査室での検査を行い,混雑時のみ効率的に採血の
各検査室での検査を行い,混雑時のみ効率的に採血の
動分析装置で,迅速な結果報告を行っている.我々は
採血や検体検査の複数システムを連携し,採血待ち時 支援をして,採血待ち時間が短い採血体制が構築でき
支援をして,採血待ち時間が短い採血体制が構築でき
採血や検体検査の複数システムを連携し,採血待ち時
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
間を短くして迅速な採血体制を構築し,外来迅速検体 た.新規採用者の採血開始時の
た.新規採用者の採血開始時の
1 患者の採血所要時間
間を短くして迅速な採血体制を構築し,外来迅速検体
1 患者の採血所要時間
検査加算を取得している.さらに,採血や検体検査の は平均
は平均
秒で,3
ヶ月の研修経過後は約
秒の平
検査加算を取得している.さらに,採血や検体検査の
307307
秒で,3
ヶ月の研修経過後は約
240240
秒の平
業務改善の効果を採血待ち時間や
1 患者の採血所要時 均的採血担当者の所要時間に近づき研修効果の確認が
均的採血担当者の所要時間に近づき研修効果の確認が
業務改善の効果を採血待ち時間や
1 患者の採血所要時
間および検体搬送や分析時間などを含む
TAT(turn 可能であった.患者毎の手袋交換は,採血所要時間お
可能であった.患者毎の手袋交換は,採血所要時間お
間および検体搬送や分析時間などを含む
TAT(turn
around
time)を算出して検証をしている.
よび採血待ち時間の延長に繋がり,針刺し防止の安全
よび採血待ち時間の延長に繋がり,針刺し防止の安全
around
time)を算出して検証をしている.
【システム概要】
装置付き翼状針ホルダーの使用は,採血所要時間を短
装置付き翼状針ホルダーの使用は,採血所要時間を短
【システム概要】
病院情報ホストシステムは富士通が構築して,これ 縮して採血待ち時間の改善になることや手袋交換時の
縮して採血待ち時間の改善になることや手袋交換時の
病院情報ホストシステムは富士通が構築して,これ
に各中央診療部門の専門性の高い独自システムを接続 手指消毒法の変更では,採血所要時間の延長に繋がら
手指消毒法の変更では,採血所要時間の延長に繋がら
に各中央診療部門の専門性の高い独自システムを接続
している.
検査部検体検査部門は
LAINS
システムをイ ないことが検証できた.さらに,各検査項目の
ないことが検証できた.さらに,各検査項目の
TATTAT
のの
している.
検査部検体検査部門は
LAINS
システムをイ
ンターフェイスとして,搬送システム,採血システム 推移の調査では,
推移の調査では,
2013
5 月の検査機器および採血シ
2013
年 5年月の検査機器および採血シ
ンターフェイスとして,搬送システム,採血システム
および検体検査統合システムを接続している.
ステムの更新前後で入院,外来ともに結果報告迄の時
ステムの更新前後で入院,外来ともに結果報告迄の時
および検体検査統合システムを接続している.
【方法】
間が
5~10
分短縮しており,
更新の成果が確認できた.
間が
5~10
分短縮しており,
更新の成果が確認できた.
【方法】
当院では効率的な検査実施および検査時間の短縮を 【考察】
【考察】
当院では効率的な検査実施および検査時間の短縮を
目的として,2008
年と
2013
5 月にリース方式によ
各システムを利用した採血所要時間や
の算出
各システムを利用した採血所要時間や
TATTAT
の算出
目的として,2008
年と
2013
年 5年月にリース方式によ
る機器更新を実施した.
2008
5 月より検体検査統合 は,採血時の感染対策による影響の把握や機器更新の
は,採血時の感染対策による影響の把握や機器更新の
る機器更新を実施した.
2008
年 5年月より検体検査統合
システム,搬送システムさらに採血システムは相互に 成果の判定に有効な手段と考えられた.さらに採血研
成果の判定に有効な手段と考えられた.さらに採血研
システム,搬送システムさらに採血システムは相互に
連携して,検査関連情報を検査システムから採血シス 修期間中の採血所要時間の推移データーより新規採血
修期間中の採血所要時間の推移データーより新規採血
連携して,検査関連情報を検査システムから採血シス
テムの各採血台端末に表示する.また,採血状況(採 担当者が採血に加わった場合の患者採血待ち時間への
担当者が採血に加わった場合の患者採血待ち時間への
テムの各採血台端末に表示する.また,採血状況(採
血待ち患者数と採血台の稼働状況)を採血システムか 影響をシミュレーションすることができ,研修生を投
影響をシミュレーションすることができ,研修生を投
血待ち患者数と採血台の稼働状況)を採血システムか
ら検査システムに
2 分毎に送信,各検査端末に表示す 入するタイミングを決めるのに有用と考えられた.さ
入するタイミングを決めるのに有用と考えられた.さ
ら検査システムに
2 分毎に送信,各検査端末に表示す
る.さらに,採血システムでは,採血受付,採血開始 らにシステムで算出したデーターは,
らにシステムで算出したデーターは,
e-learning
を利
e-learning
を利
る.さらに,採血システムでは,採血受付,採血開始
および終了時間を記録して,採血待ち時間や採血所要 用したアンケート調査で把握した技師の業務手順と併
用したアンケート調査で把握した技師の業務手順と併
および終了時間を記録して,採血待ち時間や採血所要
時間などを算出している.検査システムは搬送ライン せて解析することで,業務改善に有用な手順を決める
せて解析することで,業務改善に有用な手順を決める
時間などを算出している.検査システムは搬送ライン
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
への検体搬入時間や各検査の測定開始および結果報告 方法として活用していきたい.近年,検査やシステム
方法として活用していきたい.近年,検査やシステム
への検体搬入時間や各検査の測定開始および結果報告
時間を記録して,各検査の
を算出している.これ の専門分化が進み,診療,採血,検査,および搬送ま
の専門分化が進み,診療,採血,検査,および搬送ま
時間を記録して,各検査の
TATTAT
を算出している.これ
らのデーターを利用して①新規採血担当者の研修効果 での業務管理を網羅的に
での業務管理を網羅的に
1 つのシステムで実施するこ
1 つのシステムで実施するこ
らのデーターを利用して①新規採血担当者の研修効果
の判定,②採血業務での感染対策(患者毎の手袋交換 とは不可能となっている.そこで専門性の高いシステ
とは不可能となっている.そこで専門性の高いシステ
の判定,②採血業務での感染対策(患者毎の手袋交換
や手指消毒)の影響,③翼状針付採血ホルダー採血の ムを効率的に結合した検査統合システムの確立するた
ムを効率的に結合した検査統合システムの確立するた
や手指消毒)の影響,③翼状針付採血ホルダー採血の
有用性,
④機器更新の成果や有用性の検証をしている. めにも,通信プロトコールの設定が容易で効率的にデ
めにも,通信プロトコールの設定が容易で効率的にデ
有用性,
④機器更新の成果や有用性の検証をしている.
【結果】
ーターの送受信ができるシステムの構築が必要と考え
ーターの送受信ができるシステムの構築が必要と考え
【結果】
ヘマトクリット高値や寒冷凝集素保有あるいは る.
る.
ヘマトクリット高値や寒冷凝集素保有あるいは
EDTA
依存性血小板凝集などの患者は,全採血患者の 【参考文献】
【参考文献】
EDTA
依存性血小板凝集などの患者は,全採血患者の
0.8%で,採血台端末に
の採血針でゆっくり採 曽根伸治,他.感染対策に配慮した外来採血の効率的運
曽根伸治,他.感染対策に配慮した外来採血の効率的運
約約
0.8%で,採血台端末に
21G21G
の採血針でゆっくり採
血する指示や特殊な採血管への採血などの情報を表示 用に関する検討,臨床病理
用に関する検討,臨床病理
60(9):853-859,2012
60(9):853-859,2012
血する指示や特殊な採血管への採血などの情報を表示
− 116 −
シンポジウムⅩ 臨床検査システムを取り巻く現状と今後の展望
臨床検査システムに関わる標準規格、マスターとガイドライン
臨床検査システムに関わる標準規格、マスターとガイドライン
IHEIHE
4.臨床検査システムに関わる標準規格、マスターとガイドラインIHE
1) 1)
2) 2)
◎山田
◎山田修 修
、井口
、井口健 健
1)
2)
1) 1)
2) 2)
○山田 修
、井口 健
岡崎市民病院
岡崎市民病院臨床検査室
臨床検査室
、大阪医科大学
、大阪医科大学
購買・物流部
購買・物流部
1)岡崎市民病院 臨床検査室、2)大阪医科大学 購買・物流部
【はじめに】
【はじめに】
活用を求めている。現在、この中に含まれる臨床検査
活用を求めている。現在、この中に含まれる臨床検査
電気通信の世界に限らず、世の中には様々な標準規 関連の規格として、
関連の規格として、
「医療波形フォーマット」
「JAHIS
電気通信の世界に限らず、世の中には様々な標準規
「医療波形フォーマット」
「JAHIS
格が存在している。例えば用紙サイズのように日常生 臨床検査データ交換規約」
格が存在している。例えば用紙サイズのように日常生
「臨床検査マスター」
がある。
臨床検査データ交換規約」
「臨床検査マスター」
がある。
活のなかでごく自然に使っていたり、食肉ランクのよ それぞれ「医療波形フォーマット」は
活のなかでごく自然に使っていたり、食肉ランクのよ
MFER
を、
それぞれ「医療波形フォーマット」は
MFER
を、
うに多くの人が規格を上手に日々の活動の中へ活用し 「JAHIS
うに多くの人が規格を上手に日々の活動の中へ活用し
臨床検査データ交換規約」
はは
HL7
の運用ガイ
「JAHIS
臨床検査データ交換規約」
HL7
の運用ガイ
ていたりすることがある。医療の中にも多くの規格が ドラインを、
ていたりすることがある。医療の中にも多くの規格が
「臨床検査マスター」
は JLAC10
を示して
ドラインを、
「臨床検査マスター」
は JLAC10
を示して
存在し、医療情報システムにおいても例外ではない。 いる。
存在し、医療情報システムにおいても例外ではない。
いる。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
しかし、臨床検査で「標準」と言えば、まず基準値や 【JLAC10
しかし、臨床検査で「標準」と言えば、まず基準値や
コード】
【JLAC10
コード】
測定方法における標準化が思い浮かばれる。しかし近
測定方法における標準化が思い浮かばれる。しかし近
JLAC10
コードは日本臨床検査医学会検査項目コー
JLAC10
コードは日本臨床検査医学会検査項目コー
年の医療環境では、多くの診療データを集積し、速や ド委員会が制定する検査項目のための分類コードであ
年の医療環境では、多くの診療データを集積し、速や
ド委員会が制定する検査項目のための分類コードであ
かに伝えることが求められるようになり、医療情報シ る。このコードを元にマスターとして整備したものが
かに伝えることが求められるようになり、医療情報シ
る。このコードを元にマスターとして整備したものが
ステムにおける「標準」が注目されるようになってき 前述の臨床検査マスターであり、財団法人医療情報開
前述の臨床検査マスターであり、財団法人医療情報開
ステムにおける「標準」が注目されるようになってき
た。臨床検査システムについてもその例外でなく、施 発センター
(MEDIS-DC)
より提供されている。
JLAC10
発センター
(MEDIS-DC)
より提供されている。
JLAC10
た。臨床検査システムについてもその例外でなく、施
設間、システム間での臨床検査に関わる情報交換を円 コードが公開されて久しいが、臨床検査業界ではなか
コードが公開されて久しいが、臨床検査業界ではなか
設間、システム間での臨床検査に関わる情報交換を円
滑に実現するための標準規格が重要となってきている。なか普及していない。
様々な理由があると思われるが、
なか普及していない。
様々な理由があると思われるが、
滑に実現するための標準規格が重要となってきている。
【標準規格の一例】
現在は
JLAC10
の問題点を解消しつつ普及を図るべく
現在は
JLAC10
の問題点を解消しつつ普及を図るべく
【標準規格の一例】
医療情報に関係する標準規格に関連するものの一部 協 議
設立
され
検討が
行 われ
てい
る。
現状の
協会が
議 会が
設立
され
検討が
行 われ
てい
る。
現状の
医療情報に関係する標準規格に関連するものの一部
を下記に示す。
JLAC10
より進んだ次期バージョンも視野に入れて議
JLAC10
より進んだ次期バージョンも視野に入れて議
を下記に示す。
SS-MIX(厚生労働省電子的診療情報交換推進事業) 論がなされている。
論がなされている。
SS-MIX(厚生労働省電子的診療情報交換推進事業)
DICOM
(Digital
Imaging
Communication
in Medicine) 【まとめ】
DICOM
(Digital
Imaging
andand
Communication
in Medicine)
【まとめ】
HL7
(Health
Level
HL7
(Health
Level
7) 7)
臨床検査における標準規格も他の分野と大差なく、
臨床検査における標準規格も他の分野と大差なく、
ASTM
(American
Society
Testing
Materials)
ASTM
(American
Society
for for
Testing
andand
Materials)
データの定義方法、伝達手段、利用手順から成り立っ
データの定義方法、伝達手段、利用手順から成り立っ
MFER
(Medical
waveform
Format
Encoding
Rules)
MFER
(Medical
waveform
Format
Encoding
Rules)
ている。
JLAC10
や MFER
がデータの定義方法であり、
ている。
JLAC10
や MFER
がデータの定義方法であり、
JLAC10
(Japan
Laboratory
Analysis
Code
version10)
JLAC10
(Japan
Laboratory
Analysis
Code
version10)
伝達手段が
ASTM
やや
HL7
であり、利用手順が
IHEIHE
でで
伝達手段が
ASTM
HL7
であり、利用手順が
(Integrating
Healthcare
Enterprise)
IHEIHE
(Integrating
the the
Healthcare
Enterprise)
ある。
こうした規格やガイドラインが普及することは、
ある。
こうした規格やガイドラインが普及することは、
開発者が個々の労力を軽減できるとともに、利用者が
これらの規格あるいは仕組みは、主にデータ交換のた 開発者が個々の労力を軽減できるとともに、利用者が
これらの規格あるいは仕組みは、主にデータ交換のた
システムやデータの利用に際し制限されることがなく
めの基本的な枠組みや手法を定義したり、データの表 システムやデータの利用に際し制限されることがなく
めの基本的な枠組みや手法を定義したり、データの表
なり、利便性と安全性の向上が図られるものと期待し
現方法、コード体系などを示したりするもの(ガイド なり、利便性と安全性の向上が図られるものと期待し
現方法、コード体系などを示したりするもの(ガイド
ている。臨床検査分野の将来において、標準規格の活
ている。臨床検査分野の将来において、標準規格の活
ライン)である。
ライン)である。
用は重要なキーワードとなると考える
用は重要なキーワードとなると考える
【臨床検査分野について】
【臨床検査分野について】
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
臨床検査システムに特有な標準規格としては、
臨床検査システムに特有な標準規格としては、
ASTM、MFER、JLAC10
などがある。ASTM
は通信の
ASTM、MFER、JLAC10
などがある。ASTM
は通信の
ための規格であり、通信技術の変革に伴い近年は
ための規格であり、通信技術の変革に伴い近年は
HLHL
7へと移行しつつある。MFER
は心電図で代表される
7へと移行しつつある。MFER
は心電図で代表される
ような波形データ記述のための規格であり、JLAC10
ような波形データ記述のための規格であり、JLAC10
は検査項目のためのコード規則を定めている。
は検査項目のためのコード規則を定めている。
【厚生労働省標準規格】
【厚生労働省標準規格】
平成
22 3年月に、
3 月に、
厚生労働省は
「保健医療情報分野
平成
22 年
厚生労働省は
「保健医療情報分野
の標準規格
(厚生労働省標準規格)
」を定め、
積極的な
の標準規格
(厚生労働省標準規格)
」を定め、
積極的な
− 117 −
シンポジウムⅩ 臨床検査システムを取り巻く現状と今後の展望
厚生労働省として今後の医療情報システムへの期待
厚生労働省として今後の医療情報システムへの期待
5.厚生労働省として今後の医療情報システムへの期待
〜2025年問題を見据えて〜
2025
2025
年問題を見据えて
年問題を見据えて
1) 1)
◎中安
◎中安
一幸
一幸
1) 1)
厚生労働省・政策統括官付情報政策担当参事官室
厚生労働省・政策統括官付情報政策担当参事官室
○中安 一幸 厚生労働省・政策統括官付情報政策担当参事官室
昨今ささやかれている「2025
昨今ささやかれている「2025
年問題」。また、ま
年問題」。また、まシステムにおいては、他システムとの間の場合も含め、
システムにおいては、他システムとの間の場合も含め、
ずは、10
ずは、10
年前の「2015
年前の「2015
年問題」とも言われている問
年問題」とも言われている問情報交換する際の規格として、厚生労働省標準規格お
情報交換する際の規格として、厚生労働省標準規格お
題。つまり急速に進んでいる高齢化問題である。社会
題。つまり急速に進んでいる高齢化問題である。社会
よび厚生労働省委託事業における用語/コード標準化
よび厚生労働省委託事業における用語/コード標準化
保障と税の一体改革の推計では、医療費、介護費は増
保障と税の一体改革の推計では、医療費、介護費は増
委員会の開発方針に基づいた標準マスターのうち該当
委員会の開発方針に基づいた標準マスターのうち該当
加、年金は下落し、社会保障のバランスが崩れると指
加、年金は下落し、社会保障のバランスが崩れると指
するものを使用すること”と記載されており、国の方
するものを使用すること”と記載されており、国の方
摘があり、大きな問題となってくる。社会保障はどう
摘があり、大きな問題となってくる。社会保障はどう
向性として医療情報分野において標準化を推進させる
向性として医療情報分野において標準化を推進させる
なるのか?
なるのか?
ことが明示されている。
ことが明示されている。
最近の動向として、社会保障・税番号制度マイナン
最近の動向として、社会保障・税番号制度マイナン
バーやマイナンバーとは異なる医療等の分野で使える
バーやマイナンバーとは異なる医療等の分野で使える
医療情報システムの中でも臨床検査領域においては、
医療情報システムの中でも臨床検査領域においては、
可視化された番号(医療
可視化された番号(医療
ID 等(仮称))の近況、そ
ID 等(仮称))の近況、そ医事電算システムと共に早い時期より情報システム化
医事電算システムと共に早い時期より情報システム化
して今年度施行予定である「医療機器等法(旧薬事法)
して今年度施行予定である「医療機器等法(旧薬事法)
されてきた。しかしながら臨床検査分野における情報
されてきた。しかしながら臨床検査分野における情報
」の動向を踏まえ、厚生労働省として今後の医療情報
」の動向を踏まえ、厚生労働省として今後の医療情報
システムの標準化に関してはなかなか進展しなかった
システムの標準化に関してはなかなか進展しなかった
システムへの期待として、医療情報システムの標準化
システムへの期待として、医療情報システムの標準化
が、近年、標準規格やガイドラインの整備により、
が、近年、標準規格やガイドラインの整備により、
について述べる。
について述べる。
徐々に採用する施設が増加している。
徐々に採用する施設が増加している。
厚生労働省は、保健医療分野の適切な情報化を進め
厚生労働省は、保健医療分野の適切な情報化を進め
【厚生労働省標準規格:臨床検査関連】
【厚生労働省標準規格:臨床検査関連】
ることを目的に、厚生労働省標準規格を制定し、その
ることを目的に、厚生労働省標準規格を制定し、その
・ HS010
・ HS010
保健医療情報-医療波形フォーマット
保健医療情報-医療波形フォーマット
採用を促している。この施策は厚生労働省の保健医療
採用を促している。この施策は厚生労働省の保健医療
-第
-第
92001
92001
部:符号化規則
部:符号化規則
情報標準化会議で、標準規格のあり方について議論し
情報標準化会議で、標準規格のあり方について議論し
・ HS011
・ HS011
医療におけるデジタル画像と通信
医療におけるデジタル画像と通信
ていく過程において、地域医療連携(地域医療情報連
ていく過程において、地域医療連携(地域医療情報連
(DICOM)
(DICOM)
携)の円滑な推進や、膨大な人的・経済的負担を低減
携)の円滑な推進や、膨大な人的・経済的負担を低減
・ HS012
・ HS012
JAHIS
JAHIS
臨床検査データ交換規約
臨床検査データ交換規約
するのみでなく、保健医療分野の適切な情報化に資す
するのみでなく、保健医療分野の適切な情報化に資す
・ HS014
・ HS014
臨床検査マスター
臨床検査マスター
ることを目的に、医療機関等に対して、厚生労働省標
ることを目的に、医療機関等に対して、厚生労働省標
準規格の採用を促していくとの方針が確認されたこと
準規格の採用を促していくとの方針が確認されたこと
臨床検査システムに係る標準規格としては、テキス
臨床検査システムに係る標準規格としては、テキス
に基づき制定されている。
に基づき制定されている。
トデータの通信標準である“HL7”、画像の通信標準
トデータの通信標準である“HL7”、画像の通信標準
である“DICOM”、波形情報の通信標準である“M
である“DICOM”、波形情報の通信標準である“M
厚生労働省は平成
23 年
厚生労働省は平成
232年月に“厚生労働省において
2 月に“厚生労働省において
FER”があり、またマスターとしては“JLAC
FER”があり、またマスターとしては“JLAC
保健医療情報分野の標準規格として
認めるべき規格
保健医療情報分野の標準規格として
認めるべき規格10”が存在する。標準規格は冗長に作られている為、
10”が存在する。標準規格は冗長に作られている為、
について”を公表し、その後も随時追加され、平成
について”を公表し、その後も随時追加され、平成 そのままでは臨床現場で使用し難い場合が多い。その
そのままでは臨床現場で使用し難い場合が多い。その
24 年
12 規格が採択されている。厚生労
243年月の時点で
3 月の時点で
12 規格が採択されている。厚生労
解決策の一つである標準規格を実装・活用する為のガ
解決策の一つである標準規格を実装・活用する為のガ
働省からの通知では、“今後厚生労働省においては、
働省からの通知では、“今後厚生労働省においては、イドラインとして“IHE(Integrating
イドラインとして“IHE(Integrating
the Healthcare
the Healthcare
地域診療情報連携推進事業や地域医療再生基金等に代
地域診療情報連携推進事業や地域医療再生基金等に代
Enterprise)”が存在する。IHEの活動目的は「簡単、
Enterprise)”が存在する。IHEの活動目的は「簡単、
表される各種補助事業等や諸施策において、厚生労働
表される各種補助事業等や諸施策において、厚生労働
安全、確実、迅速に医療情報を電子的にやりとりする」
安全、確実、迅速に医療情報を電子的にやりとりする」
省標準規格の実装を前提とし、関係省庁、関係団体と
省標準規格の実装を前提とし、関係省庁、関係団体と
ということである。臨床検査システムにおいても、医
ということである。臨床検査システムにおいても、医
も連携の上で、厚生労働省標準規格の一層の普及啓発
も連携の上で、厚生労働省標準規格の一層の普及啓発
療安全の確保やコスト削減の観点から標準化は必須で
療安全の確保やコスト削減の観点から標準化は必須で
を図るべきである。”と記載している。また、平成
を図るべきである。”と記載している。また、平成 あり、厚生労働省標準規格や標準規格のガイドライン
あり、厚生労働省標準規格や標準規格のガイドライン
25 年
255年月516
月日に厚生労働省から公表された“医政発
16 日に厚生労働省から公表された“医政発である“IHE”の更なる普及が望まれる。
である“IHE”の更なる普及が望まれる。
0516
第 6第号:ICTを活用した地域医療ネットワー
0516
6 号:ICTを活用した地域医療ネットワー
ク事業実施要綱”においても“当事業により整備される
ク事業実施要綱”においても“当事業により整備される
− 118 −
シンポジウムⅪ −一般−
9月21日(日) 13:00~15:00 第6会場 5階 501号
テーマ:血尿を診る
司会:堀田 真希(国立大学法人大阪大学医学部附属病院 臨床検査部)
大沼 健一郎(国立大学法人神戸大学医学部附属病院 検査部)
1.血尿診断ガイドライン2013について 〜臨床検査技師の立場から
油野 友二(金沢赤十字病院 検査部)
2.血尿症例へのアプローチ
①腎臓内科医師の視点から
後藤 俊介(国立大学法人神戸大学医学部附属病院 腎臓内科)
②泌尿器科医師の視点から
重村 克巳(神戸大学大学院医学研究科 腎泌尿器科学分野)
●ねらい
2013年新たに策定された血尿診断ガイドラインでは、血尿症例においては、尿沈渣検査での赤血球形
態の情報が糸球体性の血尿か非糸球体性の血尿であるかの判断に重要であると明記され、赤血球形態の観
察と報告がより重要視されるようになった。しかし、赤血球形態は種々の要因で影響を受けうることもあ
り、その判定は容易ではないうえ施設ごとで報告方法が統一されていないなどの問題点がある。
本シンポジウムでは、血尿診断ガイドライン2013策定の背景や目的、さらに血尿症例へのアプローチ
について学び、尿沈渣検査における赤血球形態の観察と報告の重要性について考えることを目的とした。
− 119 −
シンポジウムⅪ 血尿を診る
血尿診断ガイドライン
血尿診断ガイドライン
2013
2013
について
について
1.血尿診断ガイドライン2013について
〜臨床検査技師の立場から〜
臨床検査技師の立場から
臨床検査技師の立場から
1) 1)
◎油野
◎油野
友二
友二
1) 1)
金沢赤十字病院
金沢赤十字病院
検査部
検査部
○油野 友二 金沢赤十字病院 検査部
【はじめに】昨年、初版から6年を経たことから血尿
【はじめに】昨年、初版から6年を経たことから血尿
CQ9CQ9
で推奨している。超音波検査と尿細胞診は非侵
で推奨している。超音波検査と尿細胞診は非侵
患者のより適切なマネージメントを主な目的として血
患者のより適切なマネージメントを主な目的として血
襲的検査だが、膀胱癌の確定診断に必須とされる膀胱
襲的検査だが、膀胱癌の確定診断に必須とされる膀胱
尿診断ガイドライン編集委員会(堀江重郎委員長)に
尿診断ガイドライン編集委員会(堀江重郎委員長)に
鏡検査は侵襲性の高い検査で、血尿,尿路感染や尿道
鏡検査は侵襲性の高い検査で、血尿,尿路感染や尿道
よる改訂作業が行われ、2013
よる改訂作業が行われ、2013
年 5年月
5 29
月 29
日「血尿診
日「血尿診狭窄などの合併症も少なくない。このため、可能なか
狭窄などの合併症も少なくない。このため、可能なか
断ガイドライン
断ガイドライン
2013」として発表された。この「血
2013」として発表された。この「血ぎり不必要な膀胱鏡検査を減らすことが重要である。
ぎり不必要な膀胱鏡検査を減らすことが重要である。
尿診断ガイドライン
尿診断ガイドライン
2013」では新たにクリニカルク
2013」では新たにクリニカルク【肉眼的血尿への対応】
【肉眼的血尿への対応】
エスチョン(CQ)方式を採用し、CQ
エスチョン(CQ)方式を採用し、CQ
に対する推奨
に対する推奨 肉眼的血尿においては尿路上皮癌診断のため尿細胞
肉眼的血尿においては尿路上皮癌診断のため尿細胞
グレードが決定されている。臨床検査領域では馴染み
グレードが決定されている。臨床検査領域では馴染み
診を推奨するとしている。尿細胞診の特異度は高く、
診を推奨するとしている。尿細胞診の特異度は高く、
の少ない方式であるが、これは診断や治療における特
の少ない方式であるが、これは診断や治療における特
癌の精査に有用性があり、尿細胞診を繰り返すことに
癌の精査に有用性があり、尿細胞診を繰り返すことに
に重要な事項を選び出し、その事項について「・・・を
に重要な事項を選び出し、その事項について「・・・をより癌の検出度が高まる。しかし、尿細胞診の感度は
より癌の検出度が高まる。しかし、尿細胞診の感度は
推奨しますか?」といったクエスチョンで提示し
推奨しますか?」といったクエスチョンで提示し 低く、尿細胞診陰性でも癌を否定できないが、侵襲が
低く、尿細胞診陰性でも癌を否定できないが、侵襲が
CQ CQ
に対するステートメントとその推奨グレードを示
に対するステートメントとその推奨グレードを示
ほとんどない検査であり、尿路上皮内癌などの扁平病
ほとんどない検査であり、尿路上皮内癌などの扁平病
すことでより臨床で活用しやすい形式となっている。
すことでより臨床で活用しやすい形式となっている。
変の診断や尿路上皮癌の経過観察に組織学的診断の補
変の診断や尿路上皮癌の経過観察に組織学的診断の補
【無症候性顕微鏡的血尿への対応】
【無症候性顕微鏡的血尿への対応】
助的側面をもつとしている。今回、尿沈渣検査におけ
助的側面をもつとしている。今回、尿沈渣検査におけ
これまで健診などで尿潜血陽性を指摘され無症候性
これまで健診などで尿潜血陽性を指摘され無症候性
る異型細胞の検出について言及していない点が課題で
る異型細胞の検出について言及していない点が課題で
顕微鏡的血尿と考えられている例に対して、定期的に
顕微鏡的血尿と考えられている例に対して、定期的に
あるが、血尿診断ガイドライン編集委員会は改訂の影
あるが、血尿診断ガイドライン編集委員会は改訂の影
再検尿を行う場合やそれ以降の受診を特に求めない場
再検尿を行う場合やそれ以降の受診を特に求めない場
響については、数年後に検証する予定であるとしてい
響については、数年後に検証する予定であるとしてい
合など診療機関により、その対応が一律でないという
合など診療機関により、その対応が一律でないという
るので多くの検査部からのエビデンスに基づいた報告
るので多くの検査部からのエビデンスに基づいた報告
現状があった。
現状があった。
を期待したい。
を期待したい。
血尿診断ガイドライン
血尿診断ガイドライン
2013
2013
では無症候性顕微鏡的
では無症候性顕微鏡的【まとめ】
【まとめ】
血尿と診断された場合には、尿蛋白陽性か尿沈渣に変
血尿と診断された場合には、尿蛋白陽性か尿沈渣に変
血尿診断ガイドラインは診療のためのガイドライン
血尿診断ガイドラインは診療のためのガイドライン
形赤血球(糸球体型赤血球)を認める場合に腎臓専門
形赤血球(糸球体型赤血球)を認める場合に腎臓専門
であるが、血尿の診断とその原因精査には臨床検査が
であるが、血尿の診断とその原因精査には臨床検査が
医への紹介を推奨している。この場合の検尿検査での
医への紹介を推奨している。この場合の検尿検査での
深く関与していることから、検査部・技師においては
深く関与していることから、検査部・技師においては
注意点として早朝尿と随時尿で検尿検査を繰り返し実
注意点として早朝尿と随時尿で検尿検査を繰り返し実
このガイドラインの意味することの周知が必要である。
このガイドラインの意味することの周知が必要である。
施し、顕微鏡的血尿が持続的であるか間欠的かの判断
施し、顕微鏡的血尿が持続的であるか間欠的かの判断
をする。さらに、蛋白尿を随伴するか、蛋白尿陰性の
をする。さらに、蛋白尿を随伴するか、蛋白尿陰性の
場合でも尿沈渣所見にて変形赤血球や赤血球円柱を認
場合でも尿沈渣所見にて変形赤血球や赤血球円柱を認
めた場合は糸球体からの出血と考えられ腎炎性の可能
めた場合は糸球体からの出血と考えられ腎炎性の可能
性が高いとしている。しかし、このような場合も含め、
性が高いとしている。しかし、このような場合も含め、
無症候性顕微鏡的血尿の全例に尿路上皮癌などを除外
無症候性顕微鏡的血尿の全例に尿路上皮癌などを除外
するための泌尿器科的なスクリーニング検査も奨めて
するための泌尿器科的なスクリーニング検査も奨めて
いる。
いる。
尿路上皮癌のスクリーニング検査としては、腎膀胱
尿路上皮癌のスクリーニング検査としては、腎膀胱
超音波検査と尿細胞診を推奨し、リスクファクター
超音波検査と尿細胞診を推奨し、リスクファクター
(40
歳以上の男性、喫煙歴、化学薬品曝露、肉眼的
(40
歳以上の男性、喫煙歴、化学薬品曝露、肉眼的
血尿、泌尿器科系疾患、排尿刺激症状、尿路感染の既
血尿、泌尿器科系疾患、排尿刺激症状、尿路感染の既
往、鎮痛剤(フェナセチン)多用、骨盤放射線照射既
往、鎮痛剤(フェナセチン)多用、骨盤放射線照射既
歴、シクロホスファミド治療歴)のある高リスク例に
歴、シクロホスファミド治療歴)のある高リスク例に
は、加えて膀胱鏡によるスクリーニングも行うよう
は、加えて膀胱鏡によるスクリーニングも行うよう
− 120 −
シンポジウムⅪ 血尿を診る
2.血尿症例へのアプローチ 血尿症例へのアプローチ
①腎臓内科医師の視点から
①腎臓内科医師の視点から
◎後藤 俊介 1)
国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 腎臓内科 1)
○後藤 俊介 国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 腎臓内科
血尿は腎臓病を示唆する重要な症候の一つである。
そのため肉眼的血尿やスクリーニングにて顕微鏡的血
尿があるとわかった場合、腎臓病かどうか判断する必
要がある。ただ血尿がある人すべてに精密な検査を行
うことは、検査の中には侵襲的なものもあり、また医
療経済性にも問題があるため現実的ではない。
2006 年に 6 つの学会・団体の共同で血尿に対する診
療ガイドラインが作成され、血尿に対しどのように診
療を進めていったらよいかフローチャートが示された。
2013 年にはその改訂版が発表され、Clinical
Question 形式にてその対応法が示されている。これら
により血尿症例へのアプローチは標準化されるように
なってきているが、これのみで血尿症例への対応を完
結させることは不可能である。腎臓内科の場合、血尿
症例に対し特に腎生検を行うかどうかの判断が非常に
重要となってくる。腎生検は腎臓病を診断するにあた
り重要であるが、侵襲的で 1%未満ではあるものの出
血のため輸血や手術が必要となる場合や死亡例も報告
されている。腎生検の適応について先ほどの血尿診断
ガイドラインを含め、いくつかのガイドラインにて示
されているが、最終的には様々な患者背景を考慮して
腎生検を行うかどうか判断している。また腎臓病の中
で自己免疫的な機序によるものも比較的よく認めてお
り、この場合免疫を抑えるような薬が使われる。この
ような薬は効果があるものの、副作用もあり場合によ
っては重篤なものになることもある。腎生検を行うこ
とができれば診断も可能であるが、腎生検ができない
場合治療を行うかどうかの判断は難しいものとなる。
この判断の際血尿も重要な判断材料の一つとなるが、
どのように判断するか決まったものはないと思われる。
本講演では、一腎臓内科医として血尿症例に対しど
のようにアプローチしているか、また診療において血
尿をどのように活用しているのかについて、その判断
の根拠としているデータやガイドラインとともに述べ
る。
− 121 −
シンポジウムⅪ 血尿を診る
血尿症例へのアプローチ
2.血尿症例へのアプローチ 血尿症例へのアプローチ
②泌尿器科医師の視点から
②泌尿器科医師の視点から
②泌尿器科医師の視点から
1) 1)
◎重村
◎重村
克巳
克巳
1) 1)
神戸大学大学院医学研究科
神戸大学大学院医学研究科
腎泌尿器科学分野
腎泌尿器科学分野
○重村 克巳 神戸大学大学院医学研究科 腎泌尿器科学分野
日常診療において主訴を血尿もしくは血尿の疑いに
日常診療において主訴を血尿もしくは血尿の疑いに
管造影(Inravenous
管造影(Inravenous
pyelography:
pyelography:
IVP)検査、さらには
IVP)検査、さらには
て泌尿器科を受診する患者は多い。肉眼的血尿を認め
て泌尿器科を受診する患者は多い。肉眼的血尿を認め
膀胱内視鏡検査を行うことには問題があるかもしれな
膀胱内視鏡検査を行うことには問題があるかもしれな
る患者ももちろん多いものの、やはり顕微鏡的血尿も
る患者ももちろん多いものの、やはり顕微鏡的血尿も
いが、近年は特に軟性膀胱鏡も多くの病院でも採用し
いが、近年は特に軟性膀胱鏡も多くの病院でも採用し
しくは尿潜血を指摘された患者の方が多い事は言うま
しくは尿潜血を指摘された患者の方が多い事は言うま
ているので以前よりは膀胱内視鏡検査施行のハードル
ているので以前よりは膀胱内視鏡検査施行のハードル
でもない。ここから年齢なども考慮して診断のための
でもない。ここから年齢なども考慮して診断のための
も下がっているのが現状である。またこれらを代替す
も下がっているのが現状である。またこれらを代替す
様々な検査計画を立てるのであるが、実際のところ必
様々な検査計画を立てるのであるが、実際のところ必
る検査としては悪性疾患除外のために尿細胞診検査が
る検査としては悪性疾患除外のために尿細胞診検査が
ずしもガイドラインに則った形で行われているのかは
ずしもガイドラインに則った形で行われているのかは
あるが、これも上述の同ガイドラインによると尿細胞
あるが、これも上述の同ガイドラインによると尿細胞
明らかではない。実際の外来診療の現場においてはま
明らかではない。実際の外来診療の現場においてはま
診は低悪性度の尿路上皮癌に対しては感度が低く,複
診は低悪性度の尿路上皮癌に対しては感度が低く,複
ずは紹介先の病院もしくは検診において尿潜血のみの
ずは紹介先の病院もしくは検診において尿潜血のみの
数回の検査を行う必要がある、と言われており、また
数回の検査を行う必要がある、と言われており、また
施行であるか、もしくは尿沈渣検査も行われているか
施行であるか、もしくは尿沈渣検査も行われているか
その膀胱癌での感度も
その膀胱癌での感度も
1176%(Lokeshwar
1176%(Lokeshwar
ら、
ら、
が、まずは重要になる。そして原則的には必ず尿沈渣
が、まずは重要になる。そして原則的には必ず尿沈渣
2005)であり、完全に代替できるものでは無いのが現
2005)であり、完全に代替できるものでは無いのが現
検査を施行して、尿中赤血球が
検査を施行して、尿中赤血球が
5/high
5/highpower
powerfieldfield
状ではないだろうか。また上述した一通りの泌尿器科
状ではないだろうか。また上述した一通りの泌尿器科
(HPF)以上あれば血尿あり、としてその原因精査のた
(HPF)以上あれば血尿あり、としてその原因精査のた検査で特に診断の付かなかった患者においての定期的
検査で特に診断の付かなかった患者においての定期的
めにさらなる検査を必要とする。またそれも
めにさらなる検査を必要とする。またそれも
1 度きり
1 度きり
なフォローについても日常の診療現場においてはなか
なフォローについても日常の診療現場においてはなか
の検尿結果で判断するのではなく、定期的なフォロー
の検尿結果で判断するのではなく、定期的なフォロー
なかコンセンサスの得られた方法は明確には無いのが
なかコンセンサスの得られた方法は明確には無いのが
も必要と思われる。同時に以前は泌尿器科医自身が実
も必要と思われる。同時に以前は泌尿器科医自身が実
現状であり、これも経験的な方法に頼っていることが
現状であり、これも経験的な方法に頼っていることが
際に尿沈渣を視ていたが(現在も病院によってはなさ
際に尿沈渣を視ていたが(現在も病院によってはなさ
多い。
多い。
れているが)、最近は検査の簡略化、役割分担化のた
れているが)、最近は検査の簡略化、役割分担化のた
本シンポジウムでは我々泌尿器科医が日常臨床にて
本シンポジウムでは我々泌尿器科医が日常臨床にて
めかそのような機会は減ってきており、実際のところ
めかそのような機会は減ってきており、実際のところ
行っている血尿診断と同ガイドラインをともに紹介し
行っている血尿診断と同ガイドラインをともに紹介し
は赤血球個数のみを見て血尿を診断をしていることが
は赤血球個数のみを見て血尿を診断をしていることが
ながらその差異などについても言及していきたい。
ながらその差異などについても言及していきたい。
少なくないと思われる。しかしながら血尿診断ガイド
少なくないと思われる。しかしながら血尿診断ガイド
ライン
ライン
2013
2013
によると、血尿の診断においては赤血球
によると、血尿の診断においては赤血球
形態がより重要な部分を示していることが言われてい
形態がより重要な部分を示していることが言われてい
る。すなわちその形態の差異により糸球体性、非糸球
る。すなわちその形態の差異により糸球体性、非糸球
体性を鑑別することができる。また同時にその赤血球
体性を鑑別することができる。また同時にその赤血球
形態としては均一赤血球、さらには変形赤血球との名
形態としては均一赤血球、さらには変形赤血球との名
称が付く。我々泌尿器科医は経験的に諸先輩からそれ
称が付く。我々泌尿器科医は経験的に諸先輩からそれ
らがすべてではない、と指導を受けたといえ糸球体性
らがすべてではない、と指導を受けたといえ糸球体性
の疾患がその赤血球形態から疑われたとしても直ぐに
の疾患がその赤血球形態から疑われたとしても直ぐに
腎炎などの腎糸球体疾患と決め付けるのではなく、一
腎炎などの腎糸球体疾患と決め付けるのではなく、一
通りの泌尿器科的検査にての診断を進めていくことが
通りの泌尿器科的検査にての診断を進めていくことが
多いのが現状である。一方では上述したガイドライン
多いのが現状である。一方では上述したガイドライン
での記述から,20
での記述から,20
から
から
79 79
歳の成人
歳の成人
21,372
21,372
人中尿潜
人中尿潜
血陽性であった
血陽性であった
907907人を対象とし,均一赤血球型
人を対象とし,均一赤血球型
38 38
人中膀胱癌は
人中膀胱癌は
1 人であったが,変形赤血球型
1 人であったが,変形赤血球型
869869
人 人
に検査
に検査
3 3年後に確認したところ尿路上皮癌を認めな
年後に確認したところ尿路上皮癌を認めな
かった(Wakui
かった(Wakui
ら、2000)と報告されており、医療経
ら、2000)と報告されており、医療経
済的にも尿中赤血球が
済的にも尿中赤血球が
5/high
5/high
power
power
fieldfield
(HPF)以上の
(HPF)以上の
患者全てに腎臓超音波検査、CT
患者全てに腎臓超音波検査、CT
検査、静脈性腎盂尿
検査、静脈性腎盂尿
− 122 −
シンポジウム 日本臨床検査医学会
第1日目(9月20日) 第4会場 14:50~16:50
テーマ:自己免疫疾患への多角的検査アプローチ
司会:小柴 賢洋(兵庫医科大学 臨床検査医学)
1.関節リウマチのGWASと創薬への展開にむけて
大村 浩一郎(京都大学 免疫・膠原病内科)
2.新たな自己抗体病の発見「抗PIT-1抗体症候群」
〜転写因子に対する自己免疫によって引き起こされた新規疾患概念〜
高橋 裕(神戸大学大学院医学研究科 糖尿病内分泌内科学)
3.自己免疫疾患のメタボローム解析の未来
〜新規バイオマーカーの同定と病態解明を目指して〜
三枝 淳(神戸大学大学院医学研究科 臨床検査医学講座)
4.生物学的製剤に対する中和抗体の臨床的意義
〜リウマチ性疾患における中和抗体と生物学的製剤の効果減弱や副作用発現の関係〜
辻 剛(神鋼病院 膠原病リウマチセンター)
− 123 −
シンポジウム①
シンポジウム①
シンポジウム 日本臨床検査医学会 自己免疫疾患への多角的検査アプローチ
関節リウマチの
関節リウマチの
GWAS
GWAS
と創薬への展開にむけて
と創薬への展開にむけて
1.関節リウマチのGWASと創薬への展開にむけて
あああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああ
◎大村
◎大村浩一郎
浩一郎
あああああああああああ
あああああああああああ
京都大学免疫・膠原病内科
京都大学免疫・膠原病内科
○大村 浩一郎 京都大学 免疫・膠原病内科
全ゲノム関連解析(GWAS)による疾患感受性遺伝
全ゲノム関連解析(GWAS)による疾患感受性遺伝
年間で急速に拡大し、
様々な疾患の関
子検索はここ
子検索はここ
10 10
年間で急速に拡大し、
様々な疾患の関
連遺伝子が多数見つかっている。我々はかつて関節リ
連遺伝子が多数見つかっている。我々はかつて関節リ
ウマチ
(RA)
の感受性遺伝子検索を
GWAS
にて行い、
ウマチ
(RA)
の感受性遺伝子検索を
GWAS
にて行い、
myelin
basic
protein(MBP)が感受性遺伝子であること
myelin
basic
protein(MBP)が感受性遺伝子であること
を報告した(Terao
C et
PLoS
One
2011;
6: e20457)
。。
を報告した(Terao
C al.,
et al.,
PLoS
One
2011;
6: e20457)
は神経鞘の構成蛋白であるが、
リンパ球にも発現
MBP
MBP
は神経鞘の構成蛋白であるが、
リンパ球にも発現
しており
T 細胞の活性化抑制にも関与することが示さ
しており
T 細胞の活性化抑制にも関与することが示さ
れている。また、MBP
は関節滑膜に発現しており、シ
れている。また、MBP
は関節滑膜に発現しており、シ
トルリン化されると
RARA
の自己抗原にもなることを示
トルリン化されると
の自己抗原にもなることを示
した。
このように
GWAS
の醍醐味は思いもよらない遺
した。
このように
GWAS
の醍醐味は思いもよらない遺
伝子の病態への関与が発見されることである。
伝子の病態への関与が発見されることである。
我々はその後、
理研、
東京女子医科大学と共同し
RARA
我々はその後、
理研、
東京女子医科大学と共同し
患者
9,351
名とコントロール
38,575
名を用いた
GWAS
患者
9,351
名とコントロール
38,575
名を用いた
GWAS
メタ解析および追認解析を行い、9
つの新規
RARA
感受
メタ解析および追認解析を行い、9
つの新規
感受
Y et
NatNat
Genet.
2012;
44:44:
性遺伝子を発見した
(Okada
性遺伝子を発見した
(Okada
Y al.,
et al.,
Genet.
2012;
511)
。この研究で意義深い点は、
欧米の
GWAS
結果と
511)
。この研究で意義深い点は、
欧米の
GWAS
結果と
照合し、多くの
RARA
感受性遺伝子は日本人と欧米人で
照合し、多くの
感受性遺伝子は日本人と欧米人で
共通していることを示した点である。PTPN22
のよう
共通していることを示した点である。PTPN22
のよう
に感受性遺伝子多型における人種間の差が強調される
に感受性遺伝子多型における人種間の差が強調される
なかで、多くの感受性遺伝子は欧米人、アジア人で共
なかで、多くの感受性遺伝子は欧米人、アジア人で共
通しているのである。
通しているのである。
そこで、
全世界の
RARA
感受性遺伝子の
GWAS
を統合
そこで、
全世界の
感受性遺伝子の
GWAS
を統合
して解析しようというプロジェクトが立ち上がり、欧
して解析しようというプロジェクトが立ち上がり、欧
米諸国、日本、韓国、中国、オーストラリアから
22 22
米諸国、日本、韓国、中国、オーストラリアから
個の
GWAS
を統合し、合計
10 10
万人以上におよぶサン
個の
GWAS
を統合し、合計
万人以上におよぶサン
プルと約
1000
万個の
1 塩基多型
(SNP)
を用いたメタ
プルと約
1000
万個の
1 塩基多型
(SNP)
を用いたメタ
解析を行った結果、既報と合わせて計
101101
個の
RARA
感感
解析を行った結果、既報と合わせて計
個の
受性遺伝子領域が同定された(Okada
YY
et et
al.,al.,
Nature
受性遺伝子領域が同定された(Okada
Nature
2014;
506:
376)
。この中から創薬の対象になる遺伝子
2014;
506:
376)
。この中から創薬の対象になる遺伝子
を絞り込む作業を効率よく行うことが重要である。
を絞り込む作業を効率よく行うことが重要である。
HLA
領域を除く
100100
遺伝子領域というのは、100
個個
HLA
領域を除く
遺伝子領域というのは、100
の遺伝子ではなく、
各遺伝子領域
(top
SNP
とと
LDLD
関係
の遺伝子ではなく、
各遺伝子領域
(top
SNP
関係
にある領域)に数個の遺伝子が存在するため、正確に
にある領域)に数個の遺伝子が存在するため、正確に
はは
377377
個の遺伝子が含まれており、そこから創薬対象
個の遺伝子が含まれており、そこから創薬対象
を絞り込むわけである。その方法論をご紹介する。基
を絞り込むわけである。その方法論をご紹介する。基
本的には多数の公にされている生物学的データベース
本的には多数の公にされている生物学的データベース
を用いて本物の関連遺伝子を探し当てるという作業で
を用いて本物の関連遺伝子を探し当てるという作業で
ある。今回用いたデータベースは
ある。今回用いたデータベースは
1.
1.
ミスセンス/ナンセンス変異
ミスセンス/ナンセンス変異
2.
2.
Cis-eQTL(mRNA
Cis-eQTL(mRNA
発現量変化)
発現量変化)
3.
3.
PubMed
PubMed
テキスト検索
テキスト検索
4.
4.
蛋白質相互作用ネットワーク
蛋白質相互作用ネットワーク
5.
5.
メンデル型遺伝病(免疫・炎症系)
メンデル型遺伝病(免疫・炎症系)
6.
6.
悪性腫瘍体細胞変異(血液系)
悪性腫瘍体細胞変異(血液系)
7.
7.
ノックアウトモデル生物形質(免疫・血液系)
ノックアウトモデル生物形質(免疫・血液系)
8.
8.
パスウェイ解析
パスウェイ解析
であり、これら
であり、これら
8 つカテゴリーのうち
8 つカテゴリーのうち
2 つ以上に当て
2 つ以上に当て
はまる遺伝子を生物学的
はまる遺伝子を生物学的
RARA
リスク遺伝子候補とした。
リスク遺伝子候補とした。
その結果、98
その結果、98
遺伝子が候補遺伝子となり、1つも候補
遺伝子が候補遺伝子となり、1つも候補
遺伝子がなかった領域が
遺伝子がなかった領域が
100100
のうち
のうち
40 40
にのぼった。
にのぼった。
また、ヒストンメチル化データベースを用いた解析
また、ヒストンメチル化データベースを用いた解析
では
ではRARA感受性遺伝子領域は制御性
感受性遺伝子領域は制御性T T細胞での
細胞での
H3K4me3
H3K4me3
peak
peak
がみられる領域に強く関連がみられ、
がみられる領域に強く関連がみられ、
RARA
における制御性
における制御性
T 細胞の病態への関わりが示唆さ
T 細胞の病態への関わりが示唆さ
れ興味深い。
れ興味深い。
さらに蛋白質間相互作用ネットワークおよび創薬デ
さらに蛋白質間相互作用ネットワークおよび創薬デ
ータベースを用いた解析では、既存の
ータベースを用いた解析では、既存の
RARA
治療薬のタ
治療薬のタ
ーゲット分子が
ーゲット分子が
RARA
感受性遺伝子とつながっているこ
感受性遺伝子とつながっているこ
とも明らかとなった。また
とも明らかとなった。また
RARA
以外の疾患で用いられ
以外の疾患で用いられ
ている既存の治療薬の中で
ている既存の治療薬の中で
RARA
感受性遺伝子をターゲ
感受性遺伝子をターゲ
ットにしているものもあり、他の疾患への適用拡大
ットにしているものもあり、他の疾患への適用拡大
(Drug
(Drug
repurposing)という観点でも本方法が非常に有
repurposing)という観点でも本方法が非常に有
用なツールとなることが明らかとなった。
用なツールとなることが明らかとなった。
GWAS
GWAS
でみつかる遺伝子多型の疾患発症に関わる寄
でみつかる遺伝子多型の疾患発症に関わる寄
与度は決して大きくはないが、GWAS
与度は決して大きくはないが、GWAS
は病態理解をす
は病態理解をす
るための遺伝子検索のツールとして、また創薬候補を
るための遺伝子検索のツールとして、また創薬候補を
検索するツールとして非常に有用であり、様々な生物
検索するツールとして非常に有用であり、様々な生物
学的データベースを駆使することでゲノム創薬に貢献
学的データベースを駆使することでゲノム創薬に貢献
できると考えられる。
できると考えられる。
− 124 −
シンポジウム②
シンポジウム②
シンポジウム 日本臨床検査医学会 自己免疫疾患への多角的検査アプローチ
新たな自己抗体病の発見「抗
PIT-1
抗体症候群」
新たな自己抗体病の発見「抗
PIT-1
抗体症候群」
転写因子に対する自己免疫によって引き起こされた新規疾患概念
転写因子に対する自己免疫によって引き起こされた新規疾患概念
2.新たな自己抗体病の発見「抗PIT-1抗体症候群」
〜転写因子に対する自己免疫によって引き起こされた新規疾患概念〜
◎高橋 裕
◎高橋 裕
神戸大学大学院医学研究科糖尿病内分泌内科学
糖尿病内分泌内科学
神戸大学大学院医学研究科
○高橋 裕 神戸大学大学院医学研究科 糖尿病内分泌内科学
最近私たちは新規疾患概念「抗
PIT-1
抗体症候群」
最近私たちは新規疾患概念「抗
PIT-1
抗体症候群」
を提唱、報告した(J
Clin
Invest,
121,
113,
2011)。
を提唱、報告した(J
Clin
Invest,
121,
113,
2011)。
転写因子
PIT-1
は下垂体の
GH,
PRL,
TSH
産生細胞に特
転写因子 PIT-1 は下垂体の GH, PRL, TSH 産生細胞に特
異的に発現し、その遺伝子異常によって先天性特異的
異的に発現し、その遺伝子異常によって先天性特異的
PRL,
欠損症を生じることから、これらのホル
GH,GH,
PRL,
TSHTSH
欠損症を生じることから、これらのホル
モン産生細胞に必須の転写因子であることが明らかに
モン産生細胞に必須の転写因子であることが明らかに
なっている。私たちは後天的に特異的
PRL,
なっている。私たちは後天的に特異的
GH,GH,
PRL,
TSHTSH
欠損症をきたし、複数の自己抗体と自己免疫性内分泌
欠損症をきたし、複数の自己抗体と自己免疫性内分泌
臓器障害を呈した
3 症例において血清中に抗
PIT-1
臓器障害を呈した
3 症例において血清中に抗
PIT-1
抗抗
体の存在を証明し、
多腺性自己免疫症候群(APS)に関連
体の存在を証明し、
多腺性自己免疫症候群(APS)に関連
した新規疾患概念として報告した。症例はいずれも
した新規疾患概念として報告した。症例はいずれも
40-80
歳に続発性甲状腺機能低下症で発症し、慢性甲
歳に続発性甲状腺機能低下症で発症し、慢性甲
40-80
状腺炎、自己免疫性胃炎、1型糖尿病、自己免疫性肝
状腺炎、自己免疫性胃炎、1型糖尿病、自己免疫性肝
炎、副腎炎などを伴い、血清中に抗
Tg、TPO、胃壁細
炎、副腎炎などを伴い、血清中に抗
Tg、TPO、胃壁細
胞、GAD
抗体を認めた。下垂体前葉機能は、GH、PRL
胞、GAD
抗体を認めた。下垂体前葉機能は、GH、PRL
が完全欠損、TSH
は著明低下、それ以外の前葉ホルモ
が完全欠損、TSH
は著明低下、それ以外の前葉ホルモ
ンは正常で
PIT-1
遺伝子異常による先天性
PIT-1
異常
ンは正常で
PIT-1
遺伝子異常による先天性
PIT-1
異常
症と酷似していた
。。
症と酷似していた
本症候群においては、PIT-1
に対する免疫寛容の破
本症候群においては、PIT-1
に対する免疫寛容の破
れている。抗
PIT-1
抗体症候群の病態の解明は、特定
れている。抗
PIT-1
抗体症候群の病態の解明は、特定
の内分泌疾患のみならず、自己免疫疾患の病態の理解
の内分泌疾患のみならず、自己免疫疾患の病態の理解
を深め、共通の原因や発症機序を明らかにする一助に
を深め、共通の原因や発症機序を明らかにする一助に
なるのではないかと考えさらに検討を行っている。本
なるのではないかと考えさらに検討を行っている。本
シンポジウムでは、新規疾患概念の提唱に至った経緯
シンポジウムでは、新規疾患概念の提唱に至った経緯
と病態解明のための私たちのアプローチの最新の結果
と病態解明のための私たちのアプローチの最新の結果
をご紹介したい
。。
をご紹介したい
綻が原因と考えられるが、その発症機序や免疫寛容破
綻が原因と考えられるが、その発症機序や免疫寛容破
綻の原因などまだまだ不明な点が多い。私たちはこれ
綻の原因などまだまだ不明な点が多い。私たちはこれ
らを明らかにするために、患者リンパ球を用いた
らを明らかにするために、患者リンパ球を用いた
ELISPOT
ASSAY、
自己免疫疾患感受性遺伝子多型の解析
ELISPOT
ASSAY、
自己免疫疾患感受性遺伝子多型の解析
など多角的なアプローチを行ってきた。興味深いこと
など多角的なアプローチを行ってきた。興味深いこと
に患者血中には
PIT-1
蛋白に特異的に反応する細胞障
に患者血中には
PIT-1
蛋白に特異的に反応する細胞障
害性
T 細胞(CTL)が存在した。また障害組織に
害性
T 細胞(CTL)が存在した。また障害組織に
CD8CD8
陽性の
の浸潤を認めたことから、抗
PIT-1
抗体は
陽性の
CTLCTL
の浸潤を認めたことから、抗
PIT-1
抗体は
免疫寛容の破綻の結果として産生されたマーカーであ
免疫寛容の破綻の結果として産生されたマーカーであ
り、特異的細胞障害の原因は
PIT-1
反応性
である
り、特異的細胞障害の原因は
PIT-1
反応性
CTLCTL
である
と考えられた。また
3 症例において、自己免疫疾患感
と考えられた。また
3 症例において、自己免疫疾患感
受性遺伝子であるシアル酸アセチルエステラーゼ
受性遺伝子であるシアル酸アセチルエステラーゼ
(SIAE)の共通の遺伝子多型を認めた。この遺伝子の
(SIAE)の共通の遺伝子多型を認めた。この遺伝子の
機能喪失変異は、1
型糖尿病、クローン病、慢性関節
機能喪失変異は、1
型糖尿病、クローン病、慢性関節
リウマチの疾患感受性の上昇と関連することが報告さ
リウマチの疾患感受性の上昇と関連することが報告さ
− 125 −
シンポジウム③
シンポジウム③
シンポジウム 日本臨床検査医学会 自己免疫疾患への多角的検査アプローチ
んん
自己免疫疾患のメタボローム解析の未来
自己免疫疾患のメタボローム解析の未来
新規バイオマーカーの同定と病態解明を目指して
新規バイオマーカーの同定と病態解明を目指して
3.自己免疫疾患のメタボローム解析の未来
〜新規バイオマーカーの同定と病態解明を目指して〜
◎三枝
◎三枝淳淳
○三枝 淳 神戸大学大学院医学研究科
神戸大学大学院医学研究科臨床検査医学講座、神戸大学医学部附属病院
臨床検査医学講座、神戸大学医学部附属病院
検査部、
検査部、
神戸大学大学院医学研究科 臨床検査医学講座、神戸大学医学部附属病院 検査部、
神戸大学医学部附属病院
神戸大学医学部附属病院膠原病リウマチ内科
膠原病リウマチ内科
神戸大学医学部附属病院 膠原病リウマチ内科 細胞の活動は種々の酵素反応の連鎖、すなわち代謝
細胞の活動は種々の酵素反応の連鎖、すなわち代謝
によって営まれており、代謝によって産生された産物
によって営まれており、代謝によって産生された産物
の総体をメタボロームと呼ぶ。
の総体をメタボロームと呼ぶ。
メタボローム解析あるいはメタボロミクスとは、対
メタボローム解析あるいはメタボロミクスとは、対
象とするサンプル中に存在する低分子代謝産物(メタ
象とするサンプル中に存在する低分子代謝産物(メタ
ボライト)を網羅的に解析することによって細胞の動
ボライト)を網羅的に解析することによって細胞の動
的な振る舞いを理解しようとする方法論であり、ポス
的な振る舞いを理解しようとする方法論であり、ポス
トゲノム研究の新しい手法として近年注目を浴びてい
トゲノム研究の新しい手法として近年注目を浴びてい
る。
メタボライトは生命活動における最終産物であり、
る。
メタボライトは生命活動における最終産物であり、
その変動は生物の環境応答や適応変化などを最も鋭敏
その変動は生物の環境応答や適応変化などを最も鋭敏
に反映していると考えられる。そして、疾病などによ
に反映していると考えられる。そして、疾病などによ
って細胞内や組織内において代謝の変動が起こった場
って細胞内や組織内において代謝の変動が起こった場
合、血液、尿などの体液中の代謝物質の組成や濃度に
合、血液、尿などの体液中の代謝物質の組成や濃度に
も変化が起こることは容易に想像できる。
したがって、
も変化が起こることは容易に想像できる。
したがって、
血液や尿のメタボロミクスはバイオマーカー候補の探
血液や尿のメタボロミクスはバイオマーカー候補の探
索に有用であると考えられている。
索に有用であると考えられている。
がん細胞がグルコースを活発に取り込み解糖系を亢
がん細胞がグルコースを活発に取り込み解糖系を亢
進する、
いわゆる”Warburg
効果”はがん細胞の根源的
進する、
いわゆる”Warburg
効果”はがん細胞の根源的
性質の一つとして古くから知られている。がん細胞が
性質の一つとして古くから知られている。がん細胞が
なぜこの一見非効率的な代謝的特徴を有しているのか
なぜこの一見非効率的な代謝的特徴を有しているのか
は未だに解明されてはいないが、メタボローム解析技
は未だに解明されてはいないが、メタボローム解析技
術の進化などにより、近年がん細胞の代謝的特徴に関
術の進化などにより、近年がん細胞の代謝的特徴に関
する興味深い報告が相次いでいる。さらに最近、T
する興味深い報告が相次いでいる。さらに最近、T
細細
胞やマクロファージといった免疫担当細胞の機能も、
胞やマクロファージといった免疫担当細胞の機能も、
細胞内の代謝と密接な関連があることが明らかとなっ
細胞内の代謝と密接な関連があることが明らかとなっ
ている。例えば、Th17
細胞、M1
マクロファージとい
ている。例えば、Th17
細胞、M1
マクロファージとい
った炎症促進性の細胞は解糖系やペントースリン酸経
った炎症促進性の細胞は解糖系やペントースリン酸経
路の亢進といったがん細胞の代謝に類似した代謝的特
路の亢進といったがん細胞の代謝に類似した代謝的特
徴を示し、対照的に、制御性
T(Treg)細胞や
徴を示し、対照的に、制御性
T(Treg)細胞や
M2M2
ママ
クロファージといった炎症抑制性の細胞は、酸化的リ
クロファージといった炎症抑制性の細胞は、酸化的リ
ン酸化経路の相対的な亢進を認めることが知られてい
ン酸化経路の相対的な亢進を認めることが知られてい
る。
る。
このような背景から我々は、代表的な全身性自己免
このような背景から我々は、代表的な全身性自己免
疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)患者の
疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)患者の
新規バイオマーカーとなり得る低分子代謝産物を同定
新規バイオマーカーとなり得る低分子代謝産物を同定
することを目的として、
SLE
患者の血清メタボロミク
することを目的として、
SLE
患者の血清メタボロミク
スを行って検討した。
スを行って検討した。
SLE
患者(n=26)のメタボロームプロファイルを
SLE
患者(n=26)のメタボロームプロファイルを
健常人群(n=26)と比較したところ、25
種類の代謝
健常人群(n=26)と比較したところ、25 種類の代謝
産物の濃度が有意に上昇、あるいは低下していた。得
産物の濃度が有意に上昇、あるいは低下していた。得
られたデータを多変量解析にて分析したところ、主成
られたデータを多変量解析にて分析したところ、主成
分分析(PCA)により、SLE
分分析(PCA)により、SLE
患者群と健常人群を区別
患者群と健常人群を区別
してグループ分けすることができた。
してグループ分けすることができた。
そして、
そして、
PCA
PCA
おお
よび
よび
PLS
PLS
判別分析(PLS-DA)により、両群の区別に
判別分析(PLS-DA)により、両群の区別に
大きく寄与している代謝物は、グルタミン酸、尿素、
大きく寄与している代謝物は、グルタミン酸、尿素、
チロシン、リン酸、グリセロールの
チロシン、リン酸、グリセロールの
5 つであることが
5 つであることが
判明した。また、SLE
判明した。また、SLE
患者のメタボロームデータを、
患者のメタボロームデータを、
もう一つの代表的な全身性自己免疫疾患である関節リ
もう一つの代表的な全身性自己免疫疾患である関節リ
ウマチ(RA)患者(n=32)と比較解析したところ、
ウマチ(RA)患者(n=32)と比較解析したところ、
SLE
SLE
と同様の変動を示す代謝物が多くある一方で、
と同様の変動を示す代謝物が多くある一方で、
SLE
SLE
では低下しているものが
では低下しているものが
RARA
では上昇するなど、
では上昇するなど、
逆の変動を示す代謝物も数多く存在した。さらに、
逆の変動を示す代謝物も数多く存在した。さらに、
SLE
SLE
患者の血清中で有意に上昇していたグルタミン
患者の血清中で有意に上昇していたグルタミン
酸の濃度は、SLE
酸の濃度は、SLE
疾患活動性指数(SLEDAI)と有意
疾患活動性指数(SLEDAI)と有意
な正の相関を示し、また
な正の相関を示し、また
SLE
SLE
の活動期に低下する血
の活動期に低下する血
清中
清中
C4C4
濃度とは有意な負の相関を示した。この結果
濃度とは有意な負の相関を示した。この結果
より、自己免疫疾患の血清メタボロミクスは、新規診
より、自己免疫疾患の血清メタボロミクスは、新規診
断法や疾患活動性モニタリング法の開発に有用である
断法や疾患活動性モニタリング法の開発に有用である
と考えられた。
と考えられた。
さらに我々は、血清メタボロミクスのみではなく、
さらに我々は、血清メタボロミクスのみではなく、
涙腺や唾液腺を主な標的とする自己免疫疾患であるシ
涙腺や唾液腺を主な標的とする自己免疫疾患であるシ
ェーグレン症候群の唾液のメタボロミクスも行ってい
ェーグレン症候群の唾液のメタボロミクスも行ってい
る。また、体液のみではなく、RA
る。また、体液のみではなく、RA
患者由来の関節滑
患者由来の関節滑
膜細胞から代謝産物を抽出してメタボロミクスを行い、
膜細胞から代謝産物を抽出してメタボロミクスを行い、
対照滑膜細胞との比較検討もっている。本シンポジウ
対照滑膜細胞との比較検討もっている。本シンポジウ
ムではこれらの結果も併せて紹介する。
ムではこれらの結果も併せて紹介する。
− 126 −
シンポジウム④
シンポジウム④
シンポジウム 日本臨床検査医学会 自己免疫疾患への多角的検査アプローチ
生物学的製剤に対する中和抗体の臨床的意義
生物学的製剤に対する中和抗体の臨床的意義
リウマチ性症患における中和抗体と生物学的製剤の効果減弱や副作用発現の関係
リウマチ性症患における中和抗体と生物学的製剤の効果減弱や副作用発現の関係
4.生物学的製剤に対する中和抗体の臨床的意義
〜リウマチ性疾患における中和抗体と生物学的製剤の効果減弱や副作用発現の関係〜
◎辻
◎辻剛剛
医療法人社団神鋼会
医療法人社団神鋼会神鋼病院
神鋼病院膠原病リウマチセンター
膠原病リウマチセンター
○辻 剛 医療法人社団神鋼会 神鋼病院 膠原病リウマチセンター
関節リウマチ
関節リウマチ
(RA)
(RA)
の治療はここ十数年で飛躍的な
の治療はここ十数年で飛躍的な
進歩をとげ、歴史的な「痛みをとる」治療から、寛解
進歩をとげ、歴史的な「痛みをとる」治療から、寛解
を目指した
を目指した
‘treat
‘treat
to to
target’
target’
が世界的に推奨されている。
が世界的に推奨されている。
寛解あるいは治癒を達成するのに画期的な役割を果た
寛解あるいは治癒を達成するのに画期的な役割を果た
すのが生物学的製剤である。欧米ではエタネルセプト
すのが生物学的製剤である。欧米ではエタネルセプト
(ETN)が
1998
年から使用されたのが最初であるが、
(ETN)が
1998
年から使用されたのが最初であるが、
本邦ではインフリキシマブ(IFX)が
2002
年(RA
にに
本邦ではインフリキシマブ(IFX)が
2002
年(RA
はは
2003
年)
から用いられるようになったのが最初であ
2003
年)
から用いられるようになったのが最初であ
る。
る。
現在、関節リウマチに使用可能な生物学的製剤は
7 7
現在、関節リウマチに使用可能な生物学的製剤は
剤になっており、
治療選択の幅が大きくなったことは、
剤になっており、
治療選択の幅が大きくなったことは、
リウマチ性疾患の診療において、相当な有益をもたら
リウマチ性疾患の診療において、相当な有益をもたら
していることは言うまでもない。生物学的製剤の中で
していることは言うまでもない。生物学的製剤の中で
も、
特に腫瘍壊死因子アルファ
(TNF-α;
tumor
necrosis
も、
特に腫瘍壊死因子アルファ
(TNF-α;
tumor
necrosis
factor
factoralpha)阻害剤は乾癬、若年性特発性関節炎、強
alpha)阻害剤は乾癬、若年性特発性関節炎、強
直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、ベーチェッ
直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、ベーチェッ
ト病(難治性網膜ぶどう膜炎、腸管型)などの疾患に
ト病(難治性網膜ぶどう膜炎、腸管型)などの疾患に
適応が拡大されている。
適応が拡大されている。
最も歴史のある
最も歴史のあるTNFα阻害剤である、インフリキマ
TNFα阻害剤である、インフリキマ
ブは
1 分子あたりマウス蛋白質を約
25%含むキメラ抗
ブは
1 分子あたりマウス蛋白質を約
25%含むキメラ抗
体製剤であるため,
中和抗体ができやすいことが指摘
体製剤であるため,
中和抗体ができやすいことが指摘
されている。
この抗体は抗キメラ抗体
(HACA;
human
されている。
この抗体は抗キメラ抗体
(HACA;
human
Anti-chimeric
antibody)と呼ばれ、特に
RARA
で使用され
Anti-chimeric
antibody)と呼ばれ、特に
で使用され
るる
3mg/kg
の用量では数
10%に出現するとされており,
3mg/kg
の用量では数
10%に出現するとされており,
アレルギーや効果減弱の原因となる可能性が示唆され
アレルギーや効果減弱の原因となる可能性が示唆され
ている。
関節リウマチのアンカードラッグである
MTX
ている。
関節リウマチのアンカードラッグである
MTX
使用量が欧米に比して少ない本邦の
RARA
患者に関して
使用量が欧米に比して少ない本邦の
患者に関して
は、特に
HACA
が産生されやすいと考えられている。
は、特に
HACA
が産生されやすいと考えられている。
2009
年から
IFX
の使用量が、
2011
年から
MTX
の使用
2009
年から
IFX
の使用量が、
2011
年から
MTX
の使用
量がそれぞれ増量可能になり、HACA
の影響は少なく
量がそれぞれ増量可能になり、HACA
の影響は少なく
なるのかもしれない。
HACA
や血中
IFX
の濃度測定は
なるのかもしれない。
HACA
や血中
IFX
の濃度測定は
実臨床では行われておらず、論文的な報告と、HACA
実臨床では行われておらず、論文的な報告と、HACA
を測定した
RARA
患者の自験例を紹介し
HACA
の臨床的
を測定した
患者の自験例を紹介し
HACA
の臨床的
意義について議論をしたいと思う。
意義について議論をしたいと思う。
完全ヒト型の抗
完全ヒト型の抗TNF-α抗体製剤であるアダリムマ
TNF-α抗体製剤であるアダリムマ
ブは
2012
年現在、
世界で最も売り上げの高い薬剤であ
ブは
2012
年現在、
世界で最も売り上げの高い薬剤であ
る。RA
治療の中心的薬剤であるのみならず、上述の
る。RA
治療の中心的薬剤であるのみならず、上述の
ような幅広い疾患に使用されている。完全ヒト型であ
ような幅広い疾患に使用されている。完全ヒト型であ
る本薬剤にも抗体が産生されることが知られており、
る本薬剤にも抗体が産生されることが知られており、
ADA
抗体(AAA;
anti-adalimumab
antibody)と呼ば
抗抗
ADA
抗体(AAA;
anti-adalimumab
antibody)と呼ば
れる。ADA
発売前の
国内臨床試験での
AAA
産生
れる。ADA
発売前の
RARA
国内臨床試験での
AAA
産生
率は欧米での報告に比べ高頻度であった。
我々は
ADA
率は欧米での報告に比べ高頻度であった。
我々は
ADA
投与患者における
AAA
産生と血中
ADA
濃度および
投与患者における
AAA
産生と血中
ADA
濃度および
ADAの
RAに対する臨床効果と副作用の関係を明らか
ADAの
RAに対する臨床効果と副作用の関係を明らか
にするため多施設共同で前向き研究を行った。
AAA
にするため多施設共同で前向き研究を行った。
AAA
陽陽
性率は約
30%で、半数以上が
ADA
投与後
4 週目で
性率は約
30%で、半数以上が
ADA
投与後
4 週目で
AAA
を産生していた。AAA
陽性例は血中
ADA
濃度
AAA
を産生していた。AAA
陽性例は血中
ADA
濃度
も低下しており、ADA
無効例が多数であった。また、
も低下しており、ADA
無効例が多数であった。また、
MTX
未併用例にAAA
AAA
陽性例が多かった。以上から
MTX
未併用例に
陽性例が多かった。以上から
AAA
は血中
ADA
濃度を低下させ、
ADA
に対す
AAA
は血中
ADA
濃度を低下させ、
ADA
のの
RARA
に対す
る治療効果を減弱させる可能性があり、4
週という比
る治療効果を減弱させる可能性があり、4
週という比
較的早期に、無効症例を検出し得る可能性が示唆され
較的早期に、無効症例を検出し得る可能性が示唆され
た。また
MTX
AAA
産生を抑制するということは、
た。また
MTX
がが
AAA
産生を抑制するということは、
RA治療において、
より有効に
ADAを使用する際には、
RA治療において、
より有効に
ADAを使用する際には、
MTX
併用を強く推奨する根拠になるかもしれない。
MTX
併用を強く推奨する根拠になるかもしれない。
TNF-α阻害剤は現在
IFX、ADA
以外に
3 剤販売さ
TNF-α阻害剤は現在
IFX、ADA
以外に
3 剤販売さ
れており、それらに対する中和抗体の報告と、抗
IL-6
れており、それらに対する中和抗体の報告と、抗
IL-6
抗体であるトシリズマブや
T 細胞を抑制するアバタセ
抗体であるトシリズマブや
T 細胞を抑制するアバタセ
プトに対する中和抗体の報告についても紹介し、リウ
プトに対する中和抗体の報告についても紹介し、リウ
マチ性疾患における中和抗体の臨床的意義について総
マチ性疾患における中和抗体の臨床的意義について総
説したい。
説したい。
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MEMO
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ミニシンポジウム 日本衛生検査所協会
第1日目(9月20日) 第5会場 13:30~15:30
テーマ:各種アンケートから見た臨床検査と検査室の現状
座長:佐守 友博(日本臨床検査専門医会 会長)
広山 晶一(ラボ検査研究会 代表幹事)
1.関西の検査センターから見たJCCLS共用基準範囲について
麻植 芳郎(ラボ検査研究会)
2.検査技師の意識調査
〜登録衛生検査所と病院検査室との業務に関する意識に違いはあるのか?〜
1)登録衛生検査所に勤務している技師のアンケート結果
松村 正樹(ラボ検査研究会)
2)病院検査室に勤務している技師のアンケート結果
山口 宏茂(日本衛生検査所協会近畿支部 学術委員長)
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ミニシンポジウム 日本衛生検査所協会 各種アンケートから見た臨床検査と検査室の現状
ミニシンポジウム①
関西の検査センターから見た JCCLS 共用基準範囲について
1.関西の検査センターから見たJCCLS共用基準範囲について
◎麻植 芳郎、山村 満、島田 一彦、平井 和美
ラボ検査研究会ワーキンググループⅡ
○麻植 芳郎、山村 満、島田 一彦、平井 和美 (ラボ検査研究会ワーキンググループⅡ)
設定方法、用語に亘る多くの意見を反映させて、共用基準
【はじめに】
ラボ検査研究会は、日本衛生検査所協会近畿支部に所属
範囲一覧、共用基準範囲の詳細階層化版とその利用法解説
する登録衛生検査所(以下:検査センター)に勤務する職
文と合わせて 2014 年 3 月 31 日に「日本における主要な臨
員が業務で携わっている問題点や検査センターが行うべき
床検査項目共用基準範囲案」が公表された。ラボ研 WG は共
検査本来のあり方を研究し、発表と討論を通じて臨床検査
用基準範囲 40 項目について、衛生検査所(検査センター)
の確立と臨床検査分野の発展に寄与することを目的に活動
で採用に向け問題点および各種学会より公表されている臨
している。2001 年に創設され、13 年が経過している。
床判断値等を検査センターの視点から基準範囲の統一は可
【目的】
析中につき学会当日に公表し、議論を行いたいと思う。
能か検討を行った。結果に関しては抄録締切段階では、解
ラボ検査研究会ワーキンググループ(ラボ研 WG)では
2007 年より「基準値の統一」をテーマに、各施設の基準値
比較、プール血清による近畿地区基幹病院とのクロスチェ
ックによる精度確認等の検討を行った。2012 年 6 月に日本
臨床検査標準化協議会基準範囲共用化委員会は、
「共用基範
囲案に対するパブリックコメントの募集」で設定された 40
検査項目の共用基準範囲案を公表し、その利用に係る各種
学術団体、業界団体に広く意見(パブリックコメント)が求
まられた。そこに寄せられた基準範囲の検査数値からその
ミニシンポジウム②
検査技師の意識調査
2.検査技師の意識調査 〜登録衛生検査所と病院検査室との業務に関する意識に違いはあるのか?〜
~登録衛生検査所と病院検査室との業務に関する意識に違いはあるのか?~
◎松村 正樹 1)、山口 宏茂 2)
1)ラボ検査研究所、2)日本衛生検査所協会 学術委員長
○松村 正樹 (ラボ検査研究会) ○山口 宏茂 (日本衛生検査所協会 学術委員長)
を対象。検査センターは日衛協近畿支部の会員会社のうち
【はじめに】日本衛生検査所協会近畿支部(以下、日衛協
近畿支部)では学術委員会とは別に会員会社の検査室責任
10 社 470 名。病院検査室は現在集計中であるが、2 府5県
者を中心に構成されているラボ検査研究会がある。平成2
の任意の病院検査室にて実施。
5年8月の第 10 回ラボ検査研究会夏期講習会において、
職
【調査項目(主な内容)
】
員の意識向上や職場環境の改善を目的として、登録衛生検
1.基本項目(年齢、性別、免許取得からの年数など)
査所(以下:検査センター)の検査室に勤務する臨床検査
2.勤務先として今の職場を選んだ理由
医技師・衛生検査技師(以下:検査技師)に就職先として
3.業務でやりがいがあると思う時
検査センターを選んだ理由、現在の勤務状況、また病院勤
4.業務でやりがいがないと思う時
務経験の有無などについてアンケートで調査を実施し、発
5.教育・学術関係
表を行った。今回、この内容を元に日本臨床衛生検査技師
6.転籍した理由
会近畿支部(以下:日臨技近畿支部)で同様のアンケート
7.今後、臨床とどのように関わりたいか
を行いたい旨、依頼したところ、快く承諾していただき実
施に至った。
当日はこれらアンケート結果に対して、議論を交わしたい
【目的】臨床検査の基準値統一化が臨床検査を行う検査技
と考えている。
師が、勤務する形態、職場背景などで考え方に違いがある
のか?それとも大きな違いはないのかを把握することを目
的とした。
【対象】検査センターの検査技師、病院検査室の検査技師
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