寄稿論文 スーパールイス酸,スーパーブレンステッド酸触媒の設計 名古屋大学大学院 工学研究科 生物機能工学専攻 科学技術振興事業団,SORST 助教授 石原一彰 教授 山本 尚 1. はじめに 真に実用的で環境と調和した理想的な化学合成の実現は,21世紀の化学者に課せられた最 も重大な使命である。炭素と炭素をつなぐ有機反応の大半はルイス酸触媒によって進行する。 筆者らは触媒どうしの会合を押さえることにより高活性を獲得すると同時に,固有の反応場を 設計することにより高立体選択性を獲得することを目的として,これまでに様々なルイス酸触 媒,ブレンステッド酸触媒,それらの複合酸触媒等を開発してきた。その結果,従来の技術で は実現困難であったエステル脱水縮合,アミド脱水縮合,不斉プロトン化反応,不斉アルドー ル反応,不斉ディールス・アルダー反応等の触媒プロセスが可能となった。このように高度な 機能を獲得するまでに進化した「スーパー酸触媒」の化学について,筆者らの最新の研究成果 を中心に紹介する。 2. スーパールイス酸触媒 2.1. 高活性ルイス酸触媒 ペンタフルオロフェニルホウ素 ( I I I ) :1 ) フッ素等を含む電子求引性アリール基とホウ素原 子が共有結合したアリールホウ素化合物 Ar n B ( O H ) 3 - n は,そのアリール基の数と電子求引性に よって,ホウ素のルイス酸性とその近傍の嵩高さを制御することができる。特に,アリールホ ウ素 (III)(Ar 3B)は古典的ルイス酸であるハロゲン化ホウ素 (III)(BX3)と比較しても遥 かに安定であり,また,その立体的嵩高さもルイス酸触媒として魅力的である。 ペンタフルオロフェニルホウ素( I I I ) (B ( C 6 F 5 ) 3 )はフッ化ホウ素( I I I ) ・エーテル錯体 (BF 3•Et 2O)と塩化ホウ素(III)(BCl 3)の中間に位置するルイス酸性にも関わらず,酸素との 反応性も低く,熱的にも(2 7 0 ℃まで加熱しても)安定な結晶性白色固体である(現在市販 されてい る)。また, 有機溶媒に対す る溶解性に優 れヘキサンにも 溶解する。こ れまで, B ( C 6 F 5 ) 3 は主にメタロセン触媒によるポリマー合成における助触媒,即ち,メタロセンカチ オン錯体の生成に用いられ,通常の有機反応にはほとんど用いられることはなかった。筆者等 は,いちはやく B ( C 6 F 5 ) 3 が湿気等で分解しやすい古典的ルイス酸に代わる次世代のスーパー ルイス酸触媒となることを見出した。1 ) 古典的ルイス酸を用いるシリルエノールエーテル類とアルデヒドとの向山アルドール反応 は,一般に,化学量論量のルイス酸を必要とし,厳密な無水条件下で行わなくてはならない。し かし,1 - 2 m o l %の B ( C 6 F 5 ) 3 を用いれば,途中で失活することなく反応は円滑に進行する。 特筆すべきは,市販のホルマリン水溶液をそのまま反応に用いて,カルボニルの α 位をヒドロ キシメチル化できることである。このことは反応系に水が混在しても,B ( C 6 F 5 ) 3 はなお十分 な触媒活性を維持することを示す。親電子剤としては,アルデヒドのみならず,クロロメトキ シメタン,ジメチルアセタール,オルトエステル等も使用できる(スキーム 1 ) 。2 a , c ) OH O 1. B(C6F5)3 (2–10 mol%) CH2Cl2 OSiMe3 R1CHO, R1CH(OMe)X, or R1C(OMe)3 R2 + R1 R4 R2 R3 or R4 2. aq. HCl R3 OMe O R4 R1 R2 R3 Products (yield) OH O Ph OH O OMe O OMe Ph 94% OMe O Ph 65% MeO 72% Ph 65% Scheme 1. ルイス酸触媒としての B ( C 6 F 5 ) 3 の特徴は,特にイミンとケテンシリルアセタールのマン ニッヒ反応において遺憾なく発揮される。この反応に用いられる古典的ルイス酸は塩化チタン ( I V ) が代表的であるが,反応は触媒的に進行しない。これはイミンの強力な配位能や生成 物の塩基性によってすぐに触媒が失活してしまうためであり,一般に,酸触媒による含窒素化 合物の縮合反応は非常に困難である。一方,B ( C 6 F 5 ) 3 の求核攻撃に対する耐久性と熱安定性, 含窒素化合物との速い配位−解離平衡を考えれば,B ( C 6 F 5 ) 3 がマンニッヒ反応の優れた触媒に なることが理解できる。大抵の場合,反応は円滑に進行し,特に,エナミン経由の副反応が起 こりやすい脂肪族イミンに対しても適用できることは注目に値する(スキーム 2 ) 。2 b , c ) 1. B(C F ) (0.2–5 mol%) + R2 R1 Bn 6 5 3 OSiMe3 NBn toluene OR4 2. aq. NaHCO3 R3 NH O R1 OR4 R2 R3 Products (yield) Bn NH Bn O Ph Ot-Bu NH Bn O Ph NH O Ot-Bu 99% Ot-Bu 99% >99% Scheme 2. エポキシドからカルボニル化合物への転位反応はルイス酸によって促進される典型的な例 である。促進剤としては BF3•Et2O がよく用いられるが,化学量論量必要である。一方,B(C6F5)3 も BF 3 •Et 2O に近いルイス酸性を有するため,言わば嵩高い安定なフッ化ホウ素( II I) 触媒と見 なせる。B ( C 6 F 5 ) 3 をこの転位反応に適用すれば,触媒的かつ立体選択的に進行させることがで きる。3) 例えば,三置換エポキシドの転位反応は 1 mol%の B(C6F5)3 存在下,定量的に生成物 が得られ,アルキル及びヒドリドシフト体の比は 9 8 :2 と通常のルイス酸と逆の選択性で ある。この高い選択性は嵩高いアルミニウム錯体,メチルアルミニウムビス (4-ブロモ-2,6-ジtert-ブチルフェノキシド)(MABR)と同様であり,4) B(C6F5)3 の嵩高さが選択性に関与してい ることが示唆される(表 1 ) 。 Table 1. O Bu O Lewis acid OHC Bu + alkyl shift Lewis acid B(C6F5)3 (1 mol%) BF3•Et2O (200 mol%) MABR (200 mol%) Bu hydride shift yield (%) alkyl shift:hydride shift >99 55 73 98: 2 33:67 100: 0 他にも,B(C6F 5) 3 はエノンとシリルエノールエーテルのマイケル付加反応,α , β- 不飽和アル デヒドとジエンのディールス・アルダー反応,桜井−細見アリル化反応にも優れた触媒能を発 揮する。2 c ) 筆者ら以外にも,最近,Piers らは,1-4 mol%の B(C6F 5) 3 と 1 当量のトリフェニルシランを 用いた芳香族カルボニル化合物のヒドロシリル化 5 a ) 及びアルコールのシリルエーテル化 5 b ) を報告している(スキーム 3 )。前者の反応ではエステルの反応性が最も高く,B(C 6 F 5 ) 3 はカル ボニル基ではなくシランのヒドリドを活性化する。また,山本(嘉)らは,同反応条件下,過 剰量のヒドロシランを使うことにより,アルコール及びエーテルをアルカンに還元できること を報告している。5 c , d ) その際,切断される炭素−酸素結合の反応性は1級,2級,3級アル キル基の順に低下し,カルボカチオンの安定性とは逆になる(スキーム 3 )。山本(嘉)らは, 20 mol%の B(C6F5) 3 存在下トリブチルスズヒドリドを用いたアレンのヒドロスタニル化につい この反応によって重要な合成中間体であるビニルスズが高い位置選択 ても報告している。6 ) 性で得られる。反応は B ( C 6 F 5 ) 3 がアレンの内部オレフィンに配位し,ジッターイオン中間体 を経て進行する(スキーム 3 ) 。 OSiPh3 O R + B(C6F5)3 (1–4 mol%) HSiPh3 R toluene X reactivity: R=OEt > Me > H X R1OR2 R2=H, alkyl B(C6F5)3 (5 mol%) R1OSiEt3 Et3SiH hexane or CH2Cl2 B(C6F5)3 (5 mol%) R1H Et3SiH hexane or CH2Cl2 reactivity: R1=primary alkyl > secondary alkyl > tertiary alkyl R R + B(C6F5)3 toluene (C6F5)3B R Bu3SnH –B(C6F5)3 Bu3Sn Scheme 3. スカンジウム (III) トリフラート及びスカンジウム (III) トリフリルイミド:7) エステル 縮合反応に有効なカルボン酸の活性化法にはいろいろあるが,活性化体としてカルボン酸無水 物を用いる方法がその取扱いやすさから特に便利である(スキーム 4) 。8) カルボン酸無水物と 9) アルコールの反応は 4- ジメチルアミノピリジン(DMAP) やトリブチルホスフィン 10) 等の ビスマス(III)トリフラート 12a) 等の酸触 求核触媒やスカンジウム(III)トリフラート 11a,b) , 媒によって促進される。前者,特に DMA P を用いる場合,1 当量以上のアミンを必要とするこ とを考慮すれば,後者のルイス酸を用いる方がより効率的と言える。また,触媒活性を比較す ると,スカンジウム(III)トリフリルイミドが現在最も高活性である(スキーム 4) 。11c) また, ごく最近,Chen らはオキソバナジウム( IV ) トリフラート(VO(Tf) 2 )が優れた触媒となること を報告した。13) バナジウム(III)トリフラート(V(OTf)3)には触媒活性がないことから V=O の 両性酸化物としての性質が触媒活性の重要な因子となっていることが予想される。 catalyst (R1CO)2O + R2OH > 1equiv – 1equiv R1CO2R2 CH3CN, rt catalytic activity : Sc(NTf2)3 > Sc(OTf)3 > Bu3P > DMAP/Et3N Scheme 4. 向山らはカルボン酸を基質に用い,等モル量の電子求引性芳香族カルボン酸無水物を反応系 に加え,チタン( I V ) 触媒存在下,反応系中で活性な混合酸無水物を発生させ,アルコールと 反応させることに成功している(スキーム5の(a)) 。14) 筆者らも,同様の反応をスカンジウム (III) 触媒を用いて成功している(スキーム5の(b)) 。11) 後者の場合,溶媒としてジクロロメ タンの代わりに毒性の低いニトロメタンを使用出来る利点がある。しかし,これらの反応では 生成するエステルに対し等モル量のカルボン酸が生成する。その後,向山らは 0 . 1 m o l %のチ タン触媒と過剰量のオクタメチルシクロテトラシロキサンを用いてエステル縮合に成功して いる(スキーム5の(c)) 。15) conditions (a)~(c) R1CO2H + R2OH 1equiv 1equiv R1CO2R2 (a) TiCl4+2AgClO4 (1~10 mol%), (4-CF3C6H4CO)2O (1.1 mol%), Me3SiCl (0.5 mol%), CH2Cl2, rt (b) Sc(OTf)3 (1 mol%), (4-NO2C6H4CO)2O (1.5 mol%), MeNO2, rt (c) TiCl(OTf)3 (0.1 mol%), (Me2SiO)4 (2 mol%), toluene, 50~70 °C Scheme 5. スカンジウム( I I I ) トリフリルメチド:7 ) ベンジル基はアルコールやカルボン酸の保護基と して広く使用されており,その脱保護は P d / C 等の不均一触媒存在下,水素化分解によって 行われる。しかし,コンビナトリアル合成のように基質を固体に担持する場合は,均一触媒に よる脱保護が必要となる。筆者らはトリフリルイミドよりも強酸性を示すトリス(トリフリル) メタンやそのスカンジウム( I I I ) 塩がアニソールを溶媒に用いた脱ベンジル化反応(フリーデ ル・クラフツ反応)の高活性均一触媒になることを見出した。一般にベンジルアミドの水素化 分解は非常に困難であることが知られているが,この酸触媒反応を使えば,高収率で脱保護で きる(スキーム 6 ) 。1 6 ) O Ph Ph O catalyst (0.1 mol%) OH Ph O anisole, 100 °C catalyst HCTf3 Sc(CTf3)2 Sc(NTf2)3 Sc(OTf)3 time (h) yield (%) 1.5 0.5 0.5 23 >99 >99 10 6 Other examples Ph t-Bu Sc(CTf3)3 (1 mol%) O t-Bu OH anisole, 100 °C 97% OMe H N [ ]7 O HCTf3, Sc(CTf3)3, or Cu(CTf3)3 (5 mol%) anisole, 154 °C NH2 [ ]7 O >99% Scheme 6. トリメチルシリルトリフリルイミド:7 ) トリメチルシリルトリフリルイミド (M e 3 S i N T f 2 ) は トリメチルシリルトリフラート (M e 3 S i O T f )よりも強いルイス酸である。しかし,ルイス酸性 が強すぎ,有機反応の酸触媒としての利用が困難とされてきた。筆者らは種々の反応条件を検 討したところ,M e 3 S i N T f 2 がトリメチルシリル求核剤とカルボニル化合物との炭素−炭素結 . 5 m o l %) とアリルトリ 合生成反応の触媒として非常に有効であることを見出した。HNTf(0 2 メチルシランをジエチルエーテル中,室温で 3 0 分間撹拌した系中で M e 3 S i N T f 2 を調製し, その混合溶液にベンズアルデヒドを2時間かけてゆっくり加えたところ,ホモアリルアルコー ルが 98%収率で得られた(スキーム 7) 。17) これまではルイス酸触媒の活性を維持するために 大抵ジクロロメタンのようなハロゲン系溶媒が用いられてきたが,触媒の著しい酸性度の向上 により毒性の低いエーテル系溶媒の使用が可能になった。 1. HNTf2 (0.5 mol%), Et2O, rt, 0.5 h 2. Slow addition of R1R2CO at –78 °C SiMe3 OH R1 3. 1 M aq. HCl•THF R2 Products (yield) OH OH OH OH Ph 98% 92% 89% 91% Scheme 7. 18) 塩化ハフニム(IV)・ (THF) 2錯体: ごく最近,田辺ら と筆者らは 19) 別々にカルボン酸と アルコールの 1 :1 混合物からの触媒的脱水縮合反応に成功した。田辺らはジフェニルアンモニ ウムトリフラート(1 ∼1 0 m o l %)を用いて,一方,筆者らは市販の塩化ハフニウム( I V ) ・ テトラヒドロフラン(0. 1∼1.0 mol%)を用いて,カルボン酸とアルコールの 1 :1 混合物を トルエン溶媒中で加熱還流して脱水し,目的のエステルをほぼ 1 0 0 %の収率で合成した(ス キーム 8 )。これらの方法は高い触媒回転数と水のみを副生成物とする点で画期的である。特に 後者は3級アルコールを除く殆どすべての脂肪族及び芳香族のアルコールと脂肪族及び芳香 族のカルボン酸に適用できる。注目すべきは,ハフニウム( I V ) 塩を用いて 4 万∼6 万を越える 数平均分子量を持つポリエステルが極めて簡便に合成できることであり,工業的プロセスとし ても大きな期待が持たれる。 HfCl4•(THF)2 (0.1~1.0 mol%) R1CO2H 1 equiv + R2OH toluene azeotropic reflux (–H2O) 1 equiv R1CO2R2 Products (yield) HO[CO(CH2)10O]nH 97%, Mn >39600 (n >200) HO[OC HO[CO(CH2)8CO2(CH2)10O]nH 97%, Mn >65200 (n >200) COO(CH2)10]nH 96%, Mn >60900 (n >200) Scheme 8. H f ( I V ) の触媒機構については明らかではないが,H f ( I V ) がエステルとアルコール間の交換 反応を促進しない点は興味深い。一方,Ti(IV)はこの交換反応の触媒となる(スキーム 9 ) 。 i-Bu OEt O catalyst (1 mol%) + BnOH toluene azeotropic reflux (–EtOH), 4 h i-Bu OBn O TiCl4: 98% yield; HfCl4•(THF)2: 0% yield Scheme 9. 2級アルコール共存下における1級アルコール選択的エステル縮合反応の触媒としても Ti ( I V) による低い選択性はエステル交換反応が原因 Hf ( IV) が特に優れている(表 2 ) 。1 9 b ) であることが容易に推測される。 Table 2. catalyst OH 1.1 mmol 1.1 mmol O + R2CO2H C8H17OH + toluene azeotropic reflux (–H2O) 1.0 mmol O + R2 C8H17O O R2 Yield (%) catalyst (mmol) R2 time (h) (octyl ester:cyclohexyl ester) 10 >99 (66:34) TiCl4 (0.02) Ph(CH2)3 HfCl4•(THF)2 (0.01) Ph(CH2)3 HfCl4•(THF)2 (0.02) 1-adamantyl 5.5 99 (89:11) 11 >99 (>99:1) また,H f C l 4 • ( T H F ) 2 はヒドロキシエナールやヒドロキシエノンの脱水触媒としても有効で あることが当研究室によって明らかとなった(スキーム 1 0 )。興味深いことに,エステル化 同様,Hf(IV) は Ti(IV) や Zr(IV) よりも高活性な触媒であった。20) OH HfCl4•(THF)2 (10 mol%) O 2 1 R n R MeCN or EtNO2, reflux O 1 R n R2 Products (yield) O CHO CHO t-Bu 99% 99% 42% Scheme 10. 2.2. 分子認識能をもつルイス酸 酵素の触媒する生体内反応では,基質に対して巧みに配置されたプロトンの水素結合が,反 応の選択性や特異性を支配する重要な役割を担っている。しかし,同じ反応をフラスコの中で 適切な反応場のない状況で方向性のない比較的低分子のプロトン酸をそのまま使ってはこう した高い選択性は期待できない。ルイス酸触媒もプロトンと同じように基質の官能基に配位す ることができるが,その結合エネルギーは遙かに強い。そのため,ルイス酸触媒の構造を少し ぐらい嵩高くして,立体障害のあるルイス酸をデザインしても基質に十分に配位してくれる。 酵素反応でのプロトンに近い働きも期待できることになる。 このような考えに基づき,当研究室では既にアルミニウムフェノキシド M A D や A T P H を 開発している。これらは中心金属近傍の立体的嵩高さや芳香環で囲まれた空洞のため,従来の ルイス酸ではまねできない高度な立体選択性や分子認識が可能である(スキーム 1 1 ) 。2 1 ) t-Bu O t-Bu Al Ph O t-Bu Me t-Bu Ph O O Al Ph O Ph Ph ATPH MAD Scheme 11. Ph 例えば,α , β - 不飽和アルデヒドと AT P H との複合体に外部から求核剤を作用させると,カ ルボニル基近傍が配位子に覆われ保護されるので,求核剤は β 位を攻撃し,いわゆる 1 , 4 付加反応が進行する(スキーム 12) 。22) α,β- 不飽和カルボニルへの 1,4- 付加は遷移金属触媒 でも達成できるが,その反応機構は全く異なるので,それぞれの適用範囲も異なる。 1. Nu– H C C C O Nu C C CH OH + 2. H ATPH 1. Nu– H C C C O ATPH Nu H H C C C O 2. H+ Example Bu 1. ATPH Ph O Bu + 2. BuBaI Ph Ph O 97% OH 97 : 3 Scheme 12. また,A T P H を芳香族アルデヒドや芳香族ケトンに配位させることにより,有機リチウム反 応剤を選択的にベンゼン環上に付加させることができる。また,芳香族酸塩化物を用いて反応 を行うと,他の芳香族カルボニル化合物ではほとんど進行しなかったメチルリチウム,リチウ ム酢酸エステルエノラート,有機グリニャール反応剤でさえも,効果的に脱芳香族化を伴う共 役付加が円滑に進行する(スキーム 1 3 ) 。AT P H −安息香酸塩化物錯体の単結晶X線構造解析 から,安息香酸塩化物に対し3つのフェニル基が互いに向かい合うサンドイッチ構造をとるこ とにより,より反応性の高いカルボニル基を安定化していることが明らかとなった(スキーム 14) 。23) CO2H CO2H t-Bu Ph CO2H i-Pr t-BuMgCl CO2Me PhLi i-PrMgBr Li OLi Ot-Bu CO2Me Cl Li Ot-Bu ATPH CO2Me O O LiO OMe t-Bu OLi i-Pr CO2H OMe OLi t-Bu OLi O O i-Pr O CO2H O Scheme 13. CO2H CO2H PhCOCl + Al Al ATPH–PhCOCl ATPH Scheme 14. Schematic Depiction of the Induced Conformational Changes of ATPH as 'Molecular Tweezer' for Effective Inclusion of PhCOCl (The three benzene rings correspond to the darkened phenyls.) α , β - 不飽和カルボニル化合物と ATPH の複合体に強塩基を作用させると,γ 位のプロトンが 位置選択的に引き抜かれ,その位置に発生したアニオンがアルデヒドと反応し,アルドールが 生成する(スキーム 1 5 )。この例は引き抜くプロトンや反応する炭素をあらかじめ設計した 初めての合成反応である。2 4 ) O + PhCHO 1. ATPH (3.3 equiv) ATPH + PhCHO H ATPH O 2. LDA LiNi-Pr2 OH OH + Ph Ph O O 99% >99 : 1 Scheme 15. 2.3. キラルルイス酸触媒 キラル金属ビナフトラート錯体: 分子認識能をもつルイス酸の設計概念はキラルルイス酸触 媒の設計にも繋がる。問題は,どのような配位子を選び得るか?,どの反応にどの金属が有効 か?,ということである。配位子は十分有効なキラルな空間を提供するばかりでなく,ルイス 酸触媒として高い活性を提供しなければならない。ビナフトールはその点で優れている。即ち, フェノールのもつ酸性とビナフトールのもつ独自の軸性不斉はどの金属とも結合し,その結 果,基質に有効な反応場を与えてくれる。1 9 8 5 年にビナフトールとジエチル亜鉛から調製 非常に多くの金属ビ した不斉触媒が分子内エン反応に有効であることを発表して以来,2 5 ) ナフトラート触媒が内外から発表されており,このタイプの触媒が幅広い反応に有効であるこ とがわかってきた(スキーム 1 6 ) 。2 6 ) O Zn O CHO OH CH2Cl2, –78~0 °C 91% 90% ee Li O O O B BOAr O O B 3 26a) Kaufmann (1990) O O Yamamoto (1992)26b) O O Al Shibasaki (1996)26c) O Ti O TiL2 O O Mukaiyama (1990)26i) Reetz (1986);26d) Seebach (1987);26e) Nakai, Mikami (1989);26f) Umani-Ronchi, Tagliavini (1993);26g) Keck (1993)26h) M O O O La O M O M O O O Zr O O Kobayashi (1997)26j) Shibasaki (1992)26k) Scheme 16. M A D や AT P H 等のアルミニウム反応剤のもつ卓越した分子認識能を,不斉合成に直接適用 することはできない。また,ビナフトールとトリアルキルアルミニウムから調製した反応剤で は複雑な分子会合が起こってしまい,不斉合成には少し不都合である。そこで,ビナフトール の 3 , 3 ' 位に嵩高いシリル基を導入することによって,活性部位である金属アルミニウム近傍 の空間サイズを調整すると同時に反応剤の会合を抑えた。その結果,幾つかの反応で非常に 高いエナンチオ選択性を観測した(スキーム 1 7 ) 。2 7 ) SiAr3 O design AlMe MAD O SiAr3 OMe O 1. (10 mol%) + PhCHO Me3SiO 2. CF3CO2H O O Ph + O Ph Ar=3,5-xylyl: 93%, 97% ee (syn), syn:anti=97:3 Scheme 17. 一方,ビナフトールの 3 , 3 ' 位にフェノール基を導入したテトラフェノールを用い,中心 金属に4価のチタンを用いて新しい螺旋状の触媒を作り,ディールス・アルダー反応に極めて 有効なことを示した(スキーム 1 8 )。2 8 ) この2例以外にも,非常に多くの軸不斉配位子をもつ触媒が開発されている(スキーム 19) 。29) Sio-tolyl3 OH OH OH OH Ti(Oi-Pr)4 azeotropic removal of i-PrOH Sio-tolyl3 1. (10 mol%) + 2. CF3CO2H CHO CHO 53%, 95% ee (70% endo) Scheme 18. Ar R Ar Ph Ph BCl2 O AlCl O O)3Al O AlMe 2 Ar R 29a) 29c) Wulff (1993)29b) Yamamoto (1998) Yamamoto (1997)29d) Yamamoto (1995) i-Pr i-Pr t-Bu O O i-Pr AlMe2 ClAl O Br O AlMe O O AlCl O N O Ti O O O O Me2Al i-Pr O t-Bu t-Bu i-Pr Pu (1996)29e) i-Pr Yamamoto (2001)29f) Carreira (1994)29g) X O O M1 O O M2 O Ti(BF4)2 O X: CH2, M1=Ga, M2=Li: Shibasaki (1998)29i) X: CH2, M1=Zr, M2=none: Kobayashi (1999)29j) X: (CH2)2, M1=Ga, M2=Li: Shibasaki (1998)29i) X: CH2OCH2, M1=Ga, M2=Li: Shibasaki (2000)29k) Enev (1998)29h) i-Pr i-Pr R i-Pr t-Bu N O i-Pr Mo R O O i-Pr Ph i-Pr Mo O t-Bu i-Pr O N O Ph O O Pb(OTf)2 O O O i-Pr Hoveyda, Schrock (1999)29l) Hoveyda, Schrock (2001)29m) Scheme 19. Kobayashi (2000)29n) キラルアシロキシホウ素触媒: ビナフトールのキラル配位子としての有効性は明らかである が,さらにルイス酸触媒の活性を高めるためにはフェノールよりも強い電子求引性配位子の設 計が必要である。そこで,筆者らは入手容易な光学活性ヒドロキシカルボン酸やアミノ酸に含 まれるカルボキシル基に注目し,世界に先駆けて酒石酸モノエステルあるいはアミノ酸のスル ホンアミドとホウ素反応剤より調製した2つのタイプのキラルアシロキシホウ素触媒 (CAB)を開発した(スキーム 20)。前者のタイプの CAB は α,β- 不飽和カルボン酸 30a) や α,βとジエンのディールス・アルダー反応,アルデヒドとダニシェフ 不飽和アルデヒド 3 0 b , c ) スキー・ジエンとのヘテロ・ディールス・アルダー反応,30d) 向山アルドール反応,30e) 櫻井・ のキラル触媒として有効であり,単独の触媒でこれらの反応の不斉誘 細見アリル化反応 3 0 f ) 導を可能にした唯一の例として注目に値する。30g) 後者のタイプの CAB については筆者ら 30h) と Helmchen ら 30i) の発表後,内外の多くの研究グループによっても研究された。30i-m) 特に, 電子求引性アリール基をホウ素置換基にもつトリプトファン型 C A B はアルデヒドとシリルエ ノールエーテルの向山アルドール反応に対してこれまでの C A B 触媒のなかで最も高いエナン チオ選択性と触媒活性を発現した(スキーム 20) 。30n) CAB 触媒の有効性は伊津野らによって不 3 0 o ) 斉重合反応においても確かめられている。 CO2H Oi-Pr O O O Oi-Pr O O O O R N O2S BR BR 30a,g) Ar 30h) Yamamoto (1990); Helmchen (1990);30i) Kiyooka (1991);30j) Masamune (1991);30k) Corey (1991);30l) Harada (1996)30m) Yamamoto (1988) Diels-Alder reaction30a–c) Hetero Diels-Alder reaction30d) Mukaiyama aldol reaction30e) Sakurai–Hosomi allylation reaction30f) H N CF3 O O B N O2 S CHO + Ar Yamamoto (1999)30n) CF3 OH O OSiMe3 (10 mol%) Ph EtCN, –78 °C Ph >99%, >99% syn, >99% ee Scheme 20. キラルジホスフィン・銀錯体: 当研究室では新規キラル触媒として,共に市販品である BINAP と銀塩から簡単に調製できる BINAP・銀錯体の開発に初めて成功した。3 1 ) このキラル 銀触媒は,櫻井・細見アリル化反応や向山アルドール反応において優れた触媒活性を示し,従 来のキラル触媒では実現困難であった立体異性体の選択的合成を可能にした。例えば,( R ) B I N A P • A g F の存在下,クロチルトリメトキシシランとベンズアルデヒドとの反応を行った ところ,γ 付加体のみが,クロチルシランの二重結合の E / Z 比にかかわらず高いアンチ選択性 また,本触媒をトリメトキシシリルエノールエーテル とエナンチオ選択性で得られた。3 1 a ) 更に最近, に適用することにより,シン選択的不斉アルドール反応が実現した。3 1 b , c ) BINAP•AgOTf 錯体に KF と 18 - クラウン -6 を加えた触媒が,THF 中で,アリル化反応,アル ドール反応に対し良好な化学収率と高いエナンチオ選択性を与えることがわかった。3 1 d ) 注 目すべきは BINAP•AgOTf 錯体による不斉アルドール反応が BINAP¥AgF 錯体とは逆にアンチ選 択的であることである(スキーム 2 1 ) 。 Si(OMe)3 + PhCHO OH (R)-BINAP (6 mol%), AgF (10 mol%) Ph MeOH, –20 °C to rt 94% anti, 94% ee OSi(OMe)3 O OH (R)-p-Tol-BINAP•AgF (10 mol%) + PhCHO Ph MeOH, –78 °C, 4 h 84% syn, 87% ee Si(OMe)3 + PhCHO (R)-BINAP (3 mol%), AgOTf (5 mol%) KF (5 mol%), 18-crown-6 (5 mol%) THF, –20 °C, 4 h OSi(OMe)3 + PhCHO OH Ph 96% ee (R)-BINAP (3 mol%), AgOTf (5 mol%) KF (5 mol%), 18-crown-6 (5 mol%) O OH Ph THF, –20 °C, 4 h 92% anti, 93% ee Scheme 21. キラルヒドロキサム酸配位子を用いるバナジウム (V) 触媒: 当研究室ではビナフトールやカ ルボン酸に代わる新たな配位子としてヒドロキサム酸に注目し,これを用いてキラルバナジウ ム( V ) 触媒を開発した。3 2 ) まず,ビナフチル骨格をもつヒドロキサム酸を設計し,このもの と V O ( O i - P r ) 3 より調製される錯体を合成したところ,アリルアルコールの不斉エポキシ化反 応の触媒に有効であることがわかった。3 2 a , b ) 更に最近,コンビナトリアル手法を応用して アミノ酸から2段階で容易に合成可能なヒドロキサム酸を設計した。このヒドロキサム酸は酸 無水物,アミノ酸,そしてヒドロキシルアミンの3成分からなり,その組み合わせを変えるこ とにより様々な誘導体の合成が可能である。この特徴を生かし,それぞれの部分を段階的に最 適化することにより,高収率かつ良好なエナンチオ選択性で目的のエポキシアルコールを与え るキラル配位子を得ることに成功した(スキーム 2 2 ) 。3 2 c ) Ph HO N O Ph ROOH, toluene Ph O OH Ph cat. VO(Oi-Pr)3 cat. chiral hydroxamic acid OH Ph Ph (15 mol%) + VO(Oi-Pr) (5 mol%): 3 + Ph3COOH 86% ee OMe O O N O t-Bu (1.5 mol%) + VO(Oi-Pr)3 (1 mol%): 95% ee + t-BuOOH N OH Scheme 22. 3.スーパーブレンステッド酸触媒 最近,トリフルオロメタンスルホン酸(T f O H )よりも強酸性を示す酸として, (トリフル オロメタンスルホニル)イミド (H N T f 2 )1 6 ) やトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン (HCTf3)17) が注目されている。例えば,1 mol%の HNTf 2 存在下,トリメチルヒドロキノンと イソフィトールの脱水縮合環化反応を行うと,9 0 %の化学収率で 9 7 %純度の α - トコフェ ロールが得られる。TfOH よりも収率,純度共に優れている(スキーム 2 3 ) 。3 3 ) HO + OH HO HO catalyst hexane, reflux O HNTf2 (1 mol%): 90% yield, 97% purity HNTf2 (10 mol%): 95% yield, 96% purity TfOH (10 mol%): 92% yield, 89% purity Scheme 23. 上記の超強酸(濃硫酸よりも強酸)は何れもそれ自身化学修飾が困難であり,ブレンステッ ド酸としてあるいはそのカウンターアニオンを配位子としたルイス酸触媒の設計に不都合で ある。そこで,筆者らは T f O H に近い酸性度を示すペンタフルオロフェニルビス (トリフリル) メタン(C 6 F 5 C H T f 2 )に注目し,そのアリール基の化学修飾により,デザイン型ブレンステッ ド超強酸の設計を試みた。3 4 ) まず,様々なアリール基を有するアリールビス(トリフリル)メタン(A r C H T f 2 )を合成可能 にするため,入手容易なベンジルハライドを出発原料に用いてそのベンジル位にトリフリル基 (Tf)を段階的に導入する合成法を開発した。即ち,ベンジルハライドとトリフルオロメタンス ルフィン酸ナトリウム塩の求核置換反応で得られるベンジルトリフルオロメタンスルホンに, t - B u L i を加えてベンジルアニオンを発生させ,トリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応さ せることにより ArCHTf 2 を収率よく合成した。この方法により,嵩高いものから電子求引性の 強いものまで様々なアリール基をもつ A r C H T f 2 の合成が可能になった。特に,ペンタフルオ ロフェニルビス(トリフリル)メタン(C 6 F 5 C H T f 2 )はアルキルリチウムとパラ位特異的に求核 置換反応を起こすことがわかっており,更なるデザインが可能である(スキーム 2 4 ) 。3 4 ) TfOH Tf2NH Tf3CH ArCHTf2 Brønsted superacid Designer Brønsted superacid CF3SO2Na 10 mol% Bu4NI ArCH2X ArCH2Tf F F F CHTf2 F F 86% from C6F5CH2Br F F F CHTf2 F ArCHTf2 2. Tf2O, -78 °C~ rt 3. 4 M HCl EtCN, reflux Example 1. t-BuLi, Et2O, -78 °C RLi F F F F R CHTf2 Et2O F Scheme 24. ゼオライトやペルフルオロスルホン酸樹脂(ナフィオン ®)に代表される固体酸は回収・再利 用が容易であることから酸触媒としての有用性が注目されている。しかし,有機反応を有機 溶媒中で行う場合,無機の固体酸やフッ素樹脂では膨潤率が低く,十分な触媒活性を引き出す ことが出来ない。一方,ポリスチレンスルホン酸(アンバーリスト ¨ イオン交換樹脂等)は膨潤 率が高いものの,触媒としての酸性度は十分とは言えない。超強酸を様々な樹脂に担持する ことができれば,固体酸触媒化学のブレークスルーとなるはずである。筆者らはパラ位特異 的求核置換反応を利用して C 6 F 5 CHTf 2 をポリスチレン樹脂に担持することに成功した(スキー ム25)。34) F n-BuLi F Tf H Tf 1. [C6F5CTf2]Li Br benzene, 60 °C 2.71 mmol of Br/g resin benzene:THF=1:1 0~70 °C 2. 4 M HCl F F 1.01 mmol Tf2CHC6F4-unit/g resin Scheme 25. ポリスチレン樹脂担持型超強酸とナフィオン ® S A C - 1 3 の触媒活性をエステル化反応を始め 様々な有機反応で比較すると,前者の触媒活性が極めて高いことがわかる。p フェニル 2,3,5,6- テトラフルオロフェニルビス (トリフリル) メタンと TfOH の酸性度の比較では前者の 方が弱い酸性を示すが,膨潤率の高さが触媒活性に大きく寄与しているものと考えられる(ス キーム 26) 。 OSiMe3 CO2H Ph OH O PhCHO MeOH CO2Me Ph Ph Ph Ph 3 mol%: >99% vs. >99% 1 mol%: 94% vs. 39% SiMe3 PhCHO OH Bz2O Ph PS-C6F4CHTf2 vs. Nafion® SAC-13 Comparison of yield (%) under the same conditions OBz OH i-Pr i-Pr 3 mol%: 71% vs. 0% 3 mol%: 89% vs. 2% O HC(OMe)3 Ph MeO Ac2O MeO MeO OMe Ph 0.5 mol%: >99% vs. 16% O 1 mol%: 54% vs. 25% O O OSiMe3 CO2Me OMe 3 mol%: 77% vs. <1% Scheme 26. 4.スーパーブレンステッド−ルイス複合酸触媒の設計 4.1. ブレンステッド−ルイス複合酸 はルイス酸でありながら,分子 (Ar 2 BOH) アリールホウ酸 (ArB(OH) 2 )やジアリールボリン酸 内に水酸基を持つため,言わば,ブレンステッド−ルイス複合酸と見なせる。この水酸基をヒ ドロキシカルボン酸やアミノ酸のスルホンアミドと配位子交換させることにより,前述の C A B 触媒を設計した。3 0 ) ここでは,このホウ素のルイス酸性とホウ素上の水酸基の特徴を利用 した触媒的有機反応を紹介する。1 ) フッ素置換型アリールホウ酸: 電子求引性アリール基を1つ備える A r B ( O H ) 2 は相当する A r 3 B や A r 2 B O H に比べルイス酸性は弱いものの,ホウ素近傍の立体障害は最も緩和されてお り,酸,塩基,水,熱にかなり安定であることから,選ぶ反応によっては高い触媒活性を発現 する。その代表例として,筆者らのカルボン酸とアミンからの脱水によるアミド縮合反応があ る。触媒量の ArB(OH) 2 存在下,トルエンやキシレン等の非極性芳香族溶媒に 1 : 1 のモル比で カルボン酸とアミンを溶かし,加熱環流によって共沸脱水し,アミドを合成する。触媒として (トリフルオロ は電子求引基をパラとメタ位に有する ArB(OH) 2 がよく,中でも市販の3,5-ビス メチル)フェニルホウ酸や 3,4,5- トリフルオロフェニルホウ酸が優れており,1 mol%の触媒量 で,反応は円滑に進行する。一方,オルト位の置換基は触媒活性を著しく低下させる。また,大 抵のルイス酸触媒(例えば Sc (OTf ) 3 )はアミンによって中和あるいは分解して失活する。本反 応は,アリールホウ酸とカルボン酸の脱水縮合によるモノアシロキシホウ素の生成から始ま る。続いて,この活性中間体に対しアミンが求核攻撃し,アミドが生成すると同時にアリール ホウ酸が再生する。つまり,ArB(OH) 2 は単なるルイス酸触媒としてではなく,その水酸基を巧 みに活かすことによって,カルボン酸の水酸基を活性化する(スキーム 2 7 ) 。3 5 ) 1 3,4,5-C6H2B(OH)2 or 3,5-(CF3)2C6H3B(OH)2 (1 mol%) 2 3 R1CONR2R3 R CO2H + R R NH 1 equiv toluene, azeotropic removal of water 1 equiv Products (yield) O O N NHBn NHPh Ph 92% NHBn OH 96% (no epimerization) O Ph 99% 99% O 1 active intermediate R H O O i-Pr O B F F F Scheme 27. ナイロンは触媒を加えなくても熱重縮合により合成できるが,アラミドはその低い溶解性と 芳香族ジアミンの低い求核性から,熱重縮合は不可能であると長い間考えられてきた。しかし, 最近,柿本らは原料に A B 2 芳香族モノマーを用いる場合に限り,熱重縮合が起こることを報告 これは生成するアラミドがデンドリマーとなり,アミド末端が常にポリマー している。3 6 ) 表面に存在するためと考えられる。ごく最近,筆者らは先のホウ酸触媒を用いて m- ターフェニ ルと N- ブチルピロリジノン(NBP)の10: 1(w/ w)混合溶媒中 20 0∼30 0 ℃に加熱することに 本手法を用いれば,A A よりナイロン,アラミド,ポリイミド樹脂の合成に成功した。3 7 ) モノマー+ BB モノマー,AB モノマーからでもアラミドを合成できる(スキーム 2 8 ) 。 1 2 3,4,5-F3C6H2B(OH)2 (10 mol%) HO2CR CO2H + H2NR NH2 Products HO[OC HO[OCR1CONHR2NH]nH m-terphenyl-NBP=10:1 –H2O O H C N Kevlar®(98%, ηinh=1.19 dl/g) conditions : 300 °C (2 days) NH]nH HO[OC O C NH(CH2)9NH]nH Nylon 9,T(Mw=230,000) conditions: 200 °C (1 day), 250 °C (1 day), 300 °C (1 day) Scheme 28. グリ ーン・ ケミス トリーの 観点か らも触 媒の回 収・再 利用が 望ましい 。そこ で,新 たに このホウ酸はアミド縮合に 3 , 5 - ビス (ペルフルオロデシル) フェニルホウ酸を合成した。3 8 ) 対し高い触媒活性を示すだけでなく,フッ素系溶媒に対する親和性に優れ,反応後,フッ素系 溶媒で抽出するだけでほぼ 100%回収でき,再利用も可能である。また,アミド縮合反応を二相 系(有機層/フッ素系溶媒層)で行えば,生成するアミドと触媒は各々有機層,フッ素系溶媒 層にほぼ完全に分離されるため,触媒を含むフッ素系溶媒層を再利用できる。さらに注目すべ きは,このホウ酸は室温でトルエンやキシレンには溶けないが,これらの溶媒を用いて加熱環 流すると溶けることである。この溶解性を利用すると,フッ素系溶媒を用いなくても,反応 溶液を室温まで冷やして析出する触媒を,濾過するだけでほぼ 1 0 0 %の収率で純度よく回収 することができる(スキーム 2 9 ) 。 C10F21 CO2H B(OH)2 C10F21 + PhCH2NH2 O (3 mol%) NHBn o-xylene–toluene–perfluorodecalin (1:1:1) or o-xylene azeotropic removal of water, 12 h >99% recovery of catalyst: >99% 1. Organic/fluorous bilayer system (temperature-dependent catalyst miscibility) R1CO2H HNR2R3 cool to rt heat R1CONR2R3 organic layer ArB(OH)2 flask fluorous layer bilayer, rt ArB(OH)2 bilayer, rt homogeneous, azeotropic reflux reuse of a fluorous solution of ArB(OH)2 2. Liquid/solid separation system (temperature-dependent catalyst miscibility) R1CO2H HNR2R3 cool to rt heat R1CONR2R3 organic layer flask ArB(OH)2 ArB(OH)2 bilayer, rt homogeneous, azeotropic reflux bilayer, rt reuse of ArB(OH)2 (solid) Scheme 29. 我々の発表後,3 8 ) フッ素アルキル鎖のついたホスフィンの熱特性を利用した固/液二相系 彼らは による触媒回収・再利用システムが G l a d y s z らによって報告された。3 9 ) P[(CH2)2(CF2)7CF3]3(融点 47 ℃)を触媒に用いてメチルプロピオラートとアルコールの 1,4- 付 加反応を 6 5 ℃の均一条件下で行い,反応後は溶液を - 30 ℃に冷やし,析出する触媒を回収・ 再利用している(スキーム 3 0 ) 。 Liquid/solid separation system (temperature-dependent catalyst miscibility) O cool heat O OMe OMe organic layer ROH in octane flask bilayer, rt OR in octane bilayer, –30 °C homogeneous, 65 °C reuse of P[(CH2)2(CF2)7CF3]3 (10 mol%, solid) Scheme 30. フッ素置換型アリールボリン酸: 一般に,ジアリールボリン酸は不安定であり,徐々にアリー ルホウ酸へと分解していく。しかし,電子求引性アリール基を有するジアリールボリン酸は比 較的安定な化合物である。その酸性については,トリアリールホウ素とアリールホウ酸の中間 に位置する。ここでは,ジアリールボリン酸の特徴,すなわち,アリール基がホウ酸より1つ 増えることにより向上したホウ素のルイス酸性とその近傍の嵩高さ,そしてホウ素上に残った 1つの水酸基をうまく利用した触媒反応について述べる。1 ) B(C 6 F 5 ) n (OH) 3-n の向山アルドール反応における触媒活性を調べると,B(C 6 F 5 ) 3 が最も高く, (C6F5)2BOH もそれに近い活性を示す。一方,C6F5B(OH)2 には全く活性がないことから,アリー ル基が1つ増えるとかなり酸性が向上することがわかる。ここで注目すべきは,(C 6F 5) 2BOH を 用いたときにだけ,アルドールの脱水体が得られたことである。そこで反応条件を検討したと ころ,THF 中 (C6F5)2BOH を触媒に用いたときに,最も脱水反応が促進した。40) 興味深いこと に,本手法をアルドールのシン,アンチ混合物に適用すると,アンチ体が優先して脱水され,シ ン体が回収される。脱水反応のアンチ選択性についてはボリン酸とアルドールから生じる環状 ボリン酸エステル中間体から説明できる。脱水は α 位の脱プロトン化を経て進行する。その時, α 位の水素はそのカルボニル面と垂直,即ち擬アキシアル位にあるとき脱プロトン化が起こり やすいと考えられる。シン体から生成する環状中間体は 1 , 3 - ジアキシアル反発により水素は 擬アキシアル位を取りづらいため,平衡がアルドールとボリン酸側に偏り,その結果,アンチ 体が優先して脱水される(スキーム 3 1 ) 。 OSiMe3 + PhCHO Ph 1. (C6F5)nB(OH)3-n (2 mol%) CH2Cl2, –78 °C, 1 h OH O Ph 2. H+ (C6F5)2BOH (5–10 mol%) R2 R1 R3 R2 R1 O Ar O B Ar R3 O Ar O B Ar THF, rt R3 R2 Ph 98% 89% 0% (C6F5)3B: (C6F5)2BOH: C6F5B(OH)2: OH O O + Ph Ph 0% 7% 0% O R1 R2 R3 dehydration OH O R2 1 R R3 recovery R1 Examples O O Ph Ph >99% Ph O Ph >99% Scheme 31. Ph Ph >99% オッペンナウアー酸化反応は二級アルコールをケトンに酸化する良い方法である。その有用 性は,二重結合や三重結合,アルデヒド,アミン,硫黄元素を含む官能基等を酸化しないとい う高い官能基選択性にある。しかし,通常,一級アルコールの酸化は反応剤が塩基性のため,酸 化に続くアルドール反応などの副反応が主となってしまう。ジアリールボリン酸はその水酸基 を効果的に利用することができるため,本酸化反応の優れた触媒となる。4 1 ) スキーム 32 に,(S) - ペリリルアルコールの酸化反応における B(C6F5) n(OH) 3-n の触媒活性を 示す 。ヒド リド受 容体とし てピバ ルアル デヒド を使用 した。 ジアリー ルボリ ン酸, 特に (C6F5)2BOH が最も高い活性を示す。これに対し,C6F5B(OH)2 には全く活性がない。興味深いこ とに B(C6F5) 3 は触媒活性を示す。これは本反応条件下で B(C6F5) 3 は徐々に分解して (C6F5) 2BOH とトリフルオロベンゼンに,最終的には C6F5B(OH)2 になるためである。つまり,真の触媒活性 種は B(C6F5)3 ではなく (C6F5) 2BOH である。従って,本反応での触媒活性の向上にはボリン酸の 分解を防ぐ工夫が必要である。ボリン酸は一般に中性あるいは塩基性で分解されやすく,酸性 条件下では比較的安定である。本反応におけるボリン酸の分解は,生成する水やアルデヒド又 は原料のアルコールのホウ素上への求核付加が原因と推察でき,実際,反応系への硫酸マグネ シウムの付加が有効である。本反応はベンジルアルコールやアリルアルコールの選択的酸化に 非常に有効である。 (C6F5)nB(OH)3-n (1 mol%) t-BuCHO (6 equiv) OH O toluene, 40 °C, 3 h (C6F5)3B: 48% (C6F5)2BOH: 92% C6F5B(OH)2: 0% Other examples (yield) O O O 95% >99% 90% Scheme 32. 4.2. キラルブレンステッドールイス複合酸 Olah 一般にブレンステッド酸とルイス酸を混合すると酸の強度が飛躍的に増大する。4 2 ) の魔法の酸 F S O 3 H - S b F 5 はその典型的な例である。この複合超強酸の概念とは別に,筆者ら は複合酸にキラリティーを導入する新しい触媒設計の概念を築いた。有機反応の立体化学, 特にエナンチオ選択性の制御に大きな威力を発揮するキラルブレンステッド−ルイス複合酸 触媒の誕生である。以下にその例を示す。 ブレンステッド酸複合型キラルルイス酸: 先に (スキーム1 8 ) 述べた光学活性ビナフトー ルから誘導した4つのフェノール性水酸基をもつ配位子と3価のホウ酸メチルより調製され た 1 は分子内にルイス酸とブレンステッド酸の両方を兼ね備え,言わば,ブレンステッド酸複 合型キラルルイス酸 (B L A ) と見なすことができる。これを触媒量用いて α - 置換型不飽和ア ルデヒドとジエンのディールス・アルダー反応を行うことにより,高エナンチオ選択性で目的 更に,反応性の低 とする付加体を得た。この反応ではほぼ完全なエキソ選択性を得た。4 3 a ) い β - 置換型不飽和アルデヒドや非環状ジエンにも適用可能な高活性触媒 2 を開発した。2 は それ自身強いルイス酸性を示すホウ酸と光学活性トリオールから調製した。注目すべきは, 分子 内ブレ ンステ ッド酸が エナン チオ選 択性と 触媒活 性の著 しい向上 に寄与 したこ とで ある。43b,c) また,これら BLA は親ジエンに α,β- アルキニルアルデヒドを用いても有効であっ た。特に,ヨードプロピオニルアルデヒドは光学活性ノルボナジエン類を合成する際の出発原 料として非常に有用である。本反応は ab initio 計算等により,アンチ−エキソ遷移状態を経由 するものと考えられる。4 3 d ) また,光学活性ビナフトールとホウ酸メチルから調製した B L A 3 は,イミンの求核付加 反応に対し高い不斉認識能を示した。例えば,ベンズヒドリドイミンとケテンシリルアセター ルとの反応で高エナンチオ選択的に β - アミノエステルを与えた。ベンズヒドリル基は反応後, 。4 3 e ) 水素化分解により容易に除去でき,β - ラクタム等への変換が可能である(スキーム 3 3 ) CF3 O O B O OH O B O OH (R)-BLA 1 O CF3 O B O (R)-BLA 2 HO (R)-BLA 3 Diels–Alder adducts CHO CHO CHO Br cat. 1 >99% exo >99% ee cat. 2 99% ee CO2Et CHO cat. 2 90% endo 95% ee (S) cat. 1 95% ee O MLn anti-exo-TS Ph Ph (R)-3 OTMS N + Ph HN Ot-Bu Ph H CH2Cl2-toluene -78 °C Ph Ph CO2t-Bu 96% ee CF3 O O H O B CF3 Diene O O B OO H O O H H Ph R3 R R4 Ph O O Nu- B N Ph O Ph H O H Scheme 33. キラルBLAの内外の例としては,向山ら44) と小林ら45) の不斉ディールス・アルダー触媒を 挙げることができる (スキーム3 4 )。両触媒ともB L A の概念とは関係なく発表されたもので あるが,触媒内のプロトンが重要な役割を果たすことからB L A の例として位置づけるのが妥 当であろう。4 4b ) N Ph Ph N+ Me H OBBr2 H O Sc(OTf)3 O H Br - Kobayashi, Mukaiyama (1991)44) N Kobayashi (1994)45) Scheme 34. ルイス酸複合型キラルブレンステッド酸: B L A の概念を更に一歩進めることにより,ルイス 酸の配位によって活性化されたキラルブレンステッド酸,即ちルイス酸複合型キラルブレンス テッド酸(LBA)の概念が生まれた。例えば,塩化スズ( I V ) と ( R) - ビナフトールの1対1 位に芳香族置換基を有するケトンやカルボン酸から調製されるシリルエ 配位錯体 4 は,α ノールエーテル類の不斉プロトン化剤として極めて有効であり,ほぼ完全なエナンチオ選択性 で S 体のカルボニル化合物に変換することができた。この際,ビナフトールは化学量論量必要 となる。46a,b,e) 更に,塩化スズ (IV) と光学活性ビナフトールのモノメチルエーテルからなる LBA 5 を用いて,2 , 6 - ジメチルフェノールをプロトン源とすることによって,触媒的に不斉 誘導を行うことに成功した。46c,e) トルエン溶液中,4 を用いて反応を行った場合,ビナフトー ルの大部分はモノシリルエーテルに変換されたが,5 を用いた場合,モノメチルエーテルはそ のまま回収された。この反応様式の違いが触媒サイクル実現の鍵となった(スキーム 3 5 ) 。 これら L B A はプロキラルアリルスズのエナンチオ選択的プロトン化反応にも有効であった。 ( R ) - L B A を用いた本反応では E 体からは S 体,Z 体からは R 体のオレフィンが選択的に生成 (トリメチルシリル) エー した(スキーム 35) 。46d) また,小笠原らは 1,2- エンジオールのビス テルの不斉プロトン化反応に ( S ) - L B A を使用し,光学活性アシロインの合成に成功して 興味深いことに,ビナフトールの片方の水酸基を嵩高いアルキルエーテルにする いる。4 5 f ) ことにより,高いエナンチオ選択性を獲得している(スキーム 3 5 ) 。 i-Bu OSiMe3 1. (R)-LBA 4 (8 mol%) 2,6-dimethylphenol (110 mol%) i-Bu toluene, –80 °C O OH OSiMe3 2. H2O 93% ee (S) OSiMe3 Ph O Ph R1 R2 OSiR3 overlap each other Me O SnCl3 O (R)-LBA 5 H HO Cl + Me3SiCl O Sn Cl OSiMe3 Cl OH Cl The proposed transition state assembly Ph SnMe3 R O SnCl4 O H (R)-LBA: 4 (R=H) 5 (R=Me) 6 (R=i-Pr) (R)-LBA 4 or 5 H Ph toluene, -90 °C 89% ee (S) (S)-LBA (1.2 equiv) OSiMe3 OH toluene, –78 °C OSiMe3 O 86~87% yield 4: 9% ee; 5: 72% ee; 6 90% ee Scheme 35. 通常,トリメチルシリルエノールエーテルとブレンステッド酸を反応させると,前述のよう にプロトデシリレーションが起こりケトンが得られる。しかし,シリル基を嵩高くし,トルエ ン等の非極性溶媒中でブレンステッド酸と反応を行うと,シリルエノールエーテルの速度論的 異性体から熱力学的異性体への異性化が優先して起こる。筆者らは,触媒量のビフェノールの モノイソプロピルエーテルと塩化スズ( I V ) の配位錯体存在下,t e r t - ブチルジメチルシリルエ ノールエーテルの異性化反応が位置及び立体選択的に進行することを見出した。更に,( R ) LBA 5 を用いて異性化反応を行うと,ラセミ体のシリルエノールエーテルの速度論的分割が可 能であることがわかった(スキーム 3 6 ) 。4 7 ) H O SnCl4 O i-Pr R1 R2 Examples OSit-BuMe2 R4 R3 OSit-BuMe2 (5 mol%) toluene, -78 °C, 1 h OSit-BuMe2 OSiMe3 R4 R1 OSit-BuMe2 R2 R3 OSit-BuMe2 i-Pr 99% isomeric purity 99% isomeric purity OSit-BuMe2 Ph (R)-LBA 5 (5 mol%) toluene –78 °C, 2 min OSit-BuMe2 Ph + 42%, 97% ee OSit-BuMe2 Ph 53% Scheme 36. 酵素触媒によるポリプレノイド類の連続的環化反応は一挙に多環状テルペノイド類の炭素 骨格を構築すると同時にすべての絶対立体化学を制御する極めて理想的かつ効率的合成法で ある。しかし,この種の反応を人工的に行った例はない。筆者らは塩化スズ( I V ) −光学活性 ビナフトール誘導体を酵素の代わりに用いることによって世界で初めてエナンチオ選択的バ イオミメティックポリエン環化反応に成功した(スキーム 3 7 ) 。4 8 ) 複雑な炭素骨格を有する有用化学物質を数キログラムから数トン供給するためには,これま での多段階合成に頼っていては困難である。ここに紹介したようなカスケード型の短段階合成 は合成効率が高く,結局のところ環境負荷も少ない。今世紀に合成化学者が目指すべき一つの 方向が,この保護基の脱着を必要としない極めて官能基選択性の高い有機合成法の開拓で あろう。 L B A からルイス酸複合型キラルカルボカチオン反応剤への展開: L B A のプロトンをカル ボカチオンに置き換えれば,プロキラルオレフィンへのエナンチオ選択的カルボカチオン付加 反応が起こるものと考え検討したところ,光学活性ビナフトールの2 - (トリメチルシリルエ トキシ) メチルエーテル (S E M エーテル)−塩化スズ( I V ) が,シリルエノールエーテルや単純 オレフィンの不斉 S E M 化反応に有効であることを見出した。S E M 基はヒドロキシメチル基 更に, に容易に変換できるため,生成付加体は合成上有用なキラルシントンになる。4 9 ) キラ ル脱離 基を利 用した分 子内環 化反応 に本手 法を利 用し, リモネン 及びセ ンブレ ンを 93% ee 及び 32% ee で合成した(スキーム 38) 。50) H O SnCl4 O Br O H O Ph 20 mol% O CH2Cl2, –78 °C O Br Br H 94% yield, 95% trans, 90% ee OH OH O H H H H O (–)-chromazonarol, 44% ee (R=i-Pr) 81% ee (R=o-FBn) SnCl4 O R O H H H (–)-ambrox®, 75% ee (R=o-FBn) tetracyclic terpene from Eocene Messel Shale, 77% ee (R=o-FBn) Scheme 37. SEM OSiMe3 Ph + O O SnCl4 Ph SEM PrCl –125 °C O SEM O HF Ph pyridine, rt OH 94% ee SEM Ph O + SnCl4 Ph O SEM SEM + CH2Cl2 Cl –97 °C SEM: CH2OCH2CH2SiMe3 collidine reflux Ph Ph SEM 84% ee SEM O SnCl4 O CH2Cl2 –97 °C OBz OBz SnCl4 limonene 93% ee CH2Cl2 –78 °C cembrene 32% ee Scheme 38. キラルアミンーブレンステッド酸触媒: 最近,L i s t らはプロリンのような光学活性アミノ 当研究室 酸が直接的アルドール反応の不斉触媒として有効であることを報告している。5 1 ) では光学活性ジアミンとブレンステッド酸より調製されるアンモニウム塩が,不斉直接的アル ドール反応の触媒として有効であることを見出した。ブレンステッド酸の酸性が強くなるに従 い,反応速度の著しい加速がみられた。本研究はまだ始まったばかりであり,今後の展開が期 待される(スキーム 3 9 ) 。5 2 ) NO2 O2N CHO + O2N chiral diamine: Product: N H O SO3H (3 mol%) (27 equiv) chiral diamine (3 mol%) O2 N 23 °C, 10 h N 61%, 83% ee N H N 41%, 84% ee OH O N H N 72%, 93% ee Scheme 39. 5.おわりに 本稿では,炭素骨格を立体選択的かつ効率的に構築することを目的に設計された様々なスー パールイス酸触媒やスーパーブレンステッド酸触媒について,筆者らの研究成果を中心に紹介 した。我が国発信のデザイン型酸触媒の研究がようやく世界的な広がりを持ってきたことを 実感する。合成効率とグリーン・ケミストリーをキーワードに,今後,この分野の展開が期待 される。 本稿で紹介した筆者らの研究成果は,研究室のスタッフ及び学生諸君の献身的な努力の賜物 であり,ここに心より感謝する。 引用文献 1) a) 栗原秀樹 , 石原一彰 , 山本 尚 . 有機合成化学協会誌 1998, 56, 61. b) Ishihara, K.; Yamamoto, H. 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Corey教授)博士研究員(1991∼1992),名古 屋大学工学部物質化学科助手 (1 9 9 2 ∼1 9 9 4 ),名古屋大学工学部生物機能工学科助手 (1 9 9 4 ∼1 9 9 7 ) を 経て,名古屋大学難処理人工物研究センター助教授 (1997∼2001) ,2001年より現職。1994年井上科学奨励 賞,及び1996年日本化学会進歩賞受賞。 [ご専門] 有機合成化学,特に複合酸触媒の創製。 山本 尚(やまもと ひさし) 名古屋大学 大学院工学研究科 教授 [ご略歴] 1 9 6 7 年京都大学工学部工業化学科卒業,1 9 7 1 年ハーバード大学大学院化学科博士課程修了, Ph.D.取得。東レ株式会社 (1971∼1972),京都大学工学部工業化学科助手 (1972∼1976),京都大学工学部工 業化学科講師 (1976∼1977),ハワイ大学化学科准教授 (1977∼1980),名古屋大学工学部助教授 (1980∼1983) を経て,1983年から現職。IBM科学賞 (1988),服部報公賞 (1991),中日文化賞 (1992),スイス・プレログ メダル (1993),ドイツ・メルクシューハルト賞 (1994),日本化学会賞 (1995),東レ科学技術賞 (1997),米国 マックスティシュラー賞受賞 (1998),フランス化学会グランプリ受賞 (2002) 。 [ご専門] 有機合成化学,有機金属化学,生物有機化学。
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