平成10年度第1回CRDセミナー 平成10年度第1回

No.43 July 1998
平成10年度第1回CRDセミナー
日時:7月28日(火)13:00−14:30
日時:
場所:室蘭工業大学
本部 大会議室
場所:
総合テーマ:光と現代技術
総合テーマ:光と現代技術 *現代技術を支えるレーザ利用計測技術
テーマⅠ:光計測で何ができるか −光計測技術の基礎と現状−
機械システム工学科教授 三品 博達
光を使う計測技術ではレーザが欠かせなくなっている。レーザによる計測技術ではレーザ光のど
んな特色が使われるのであろうか。また、レーザによる究極の測定とはどんなものであろうか。レ
ーザの能力を引き出す計測の基礎と実際例を紹介します。
テーマⅡ:限界計測に挑む
テーマⅡ:限界計測に挑む −光ディスクの高精度レーザ位置検出−
CRDセンター客員教授 入江
(三菱電機株式会社
映像情報ストレ−ジ統括部
満
主事)
光ディスクはオーディオからPCメモリまで広く実用化された現代の基幹技術。微少なレーザス
ポットを用いた情報の記録・再生には、サブミクロンの位置検出が要求されています。身近な製品
に組み込まれた最先端の高精度位置検出技術の原理と構成を紹介します。
企業技術者、本学教職員の皆様のご来聴をお願いいたします。
【研究紹介】
鉄鋼材料へのダイヤモンド薄膜被覆技術の開発
材料物性工学科助教授
斎藤英之
最近、気相合成法によりダイヤモンドを被覆し
た WC 超硬工具や Si3N4 マイクロドリルなどが作成
されている。しかしながら、グラファイトの優先
的な析出によりダイヤモンドが合成されないため、
実用材料として多用されている鉄鋼材料へのダイ
ヤモンド被覆は不可能であった。我々は、クロム
基板に不働態酸化皮膜を形成させてプラズマと基
板との接触を防止することにより、クロム基板上
にダイヤモンドを薄膜状に合成できることを見出
している。この結果を用い、鉄鋼メッキしたクロ
ム層上に不働態皮膜を形成させてプラズマと鉄鋼
との接触を防止することによるダイヤモンド薄膜
被覆の可能性について検討した。
図1は S10C 鋼基板上に合成されたダイヤモンド
の走査型電子顕微鏡写真である。基板は微細な多
結晶からなるダイヤモンド膜で覆われており、ダ
イヤモンド膜には亀裂や剥離が見られないことが
わかる。図2は合成されたダイヤモンドのラマン
スペクトルであり、波数 1333cm-1 にダイヤモン
ドに帰属されるピークが観察される。また、不純
物として膜中に含まれることが考えられる無定形
炭素のピーク強度は極めて弱く、良質なダイヤモ
ンド膜が合成
されたことがわ
かる。
このように、
クロムメッキ後
硝酸に漬浸して
不働態皮膜を形
成させることに
より、鉄鋼基板
に密着性が高く 図1 鋼基板上に合成されたダ
良質なダイヤモ
イヤモンド
ンドを被覆する
ことが可能とな
った。この方法
をさらに進展さ
せることにより、
切削・研磨用ダ
イヤモンド被覆
鉄鋼工具の作成
が可能であると
図2 合成されたダイヤモンド
思われる。
のラマンスペクトル
創設 10 周年記念式典終わる
6 月 19 日午後 2 時より記念式典、記念講演会、
祝賀会が室蘭市内の蓬 殿で行われた。出席者は
各々150 名、180 名、144 名の参加があった。
頂いた。
一方、祝賀会では歴代センターの関係者、研究協力
会、記念事業会、地方自治体、関係団体らによる、
親睦と意見交換を活発に行い、盛大な記念事業が
行われた。また、この事業会で、10 年間の CRD セン
ターの活動についての記念誌が発行され、関係各位
に配布された。ここで、あらためて、10年間に
CRD センターに係わられた方々及びこの事業に尽力頂
きました方々に御礼申し上げます。
走査型電子顕微鏡講習会終わる
日本電子(株)の講師を迎え本センター内に設置され
た走査型電子顕微鏡の使用法等の講習会が 6月26日
(金)企業の方を対象に行われた。参加者 10 名
記念式典では、学長からの挨拶の他、来賓とし
て文部省、北海道、室蘭市から、センターの発足以来
の活動を振り返り、今後の活動の展望に関する要
望等のスピーチを頂いた。また、記念講演会では、
NHK 解説委員の伊藤 和明氏から「地球環境の危
機」と題して講演があり、地球温暖化による環境
の激変期に対する警鐘と科学、社会の取組むべき
姿への提案を分かり易く解説された。その後本学
の近藤 俶郎教授により、「北海道浮上への条件」
と題して、混迷する北海道経済の打開のために、
北海道の現状の産業分析及び施策に対する提言を
◇◇◇ えんまちょう ◇◇◇
カラスとの「共生」
この季節はカラスに御用心。共通講座研究棟の
玄関前にある大木で親ガラスが警戒にあたってい
て、近づく人間を標的にしている。巣にいる子ガ
ラスを守るためらしい。とくに頭部が光っている
人間をねらっている節があり、私も用心を怠って
いない。
何事につけ評判のわるいカラスで、黒一色に染
めた造物主の意図は奈辺にあったのかと思ってし
まう。それでも童唄にカラスはよく登場している。
たとえばこの唄。
夕焼け小焼けで日が暮れて
山のお寺の鐘が鳴る
お手々つないで、みな帰ろ
カラスと一緒に帰りましょう
嫌われもののカラスと一緒に帰ろうというのだ。
仏教の神髄がすべて込められているといわれるこ
の唄は、確かに、「共生」あるいは「共死」の思
想を表現していると思われる。西の空に沈む太陽
に向かって合掌したい気持ちを誰れしもが抱いて
いる。特定の宗派の信仰とは関係なく、素朴な宗
教心の発露である。木下順二の『夕鶴』の最後は
「赤い赤い夕焼け空に向かってつうは帰って行っ
た」となっている。夕焼け空の向こうに西方浄土
があるという古来からの民間信仰を示すものだろ
う。路傍の石にも、山川草木にも魂の存在を認め
「共生」してゆくというのは日本の永い文化伝統
の根幹の一つをなすものだと思う。
良寛は夏分、蚊帳の下で寝たが、それは蚊に刺
されるのを防ぐためではなく、眠っている間にう
っかり蚊を叩いてしまわないようにということで
あったという。寡聞にしてこんなエピソードは知
らなかった。日本の環境政策を批判した『タイム』
誌の記事の中で紹介されていた。良寛伝説に心打
たれない人はいまい。できることなら良寛のよう
に生きたいというのが多くの人の願望であるだろ
う。私たちは自然との「共生」ということでは優
れた伝統を持っている。自然を征服すべき対象と
する西欧流の思想ではない。庭園ひとつとっても、
借景という考え方があり、家屋の造りにしても、
自然を遮断するというよりも自然界の明かりや風
を中に取り入れる工夫が生かされてきた。石やコ
ンクリートで遮るのではなく、木材や紙を使って
自然との一体感を保持しようとした。無論、ある
がままの自然をすべて受動的に受け入れているわ
けでもない。私の趣味ではないが、生け花や盆栽
を想起すればよく分かることだ。盆栽であれば、
永い年月をかけて手を入れて生きた彫刻とする。
自然は人間の介在があってこそより良いものにな
るという考え方でもある。
物質主義と効率優先の諸システム、テクノロジ
ー至上主義の行き着く先には、カラスも蚊もいな
い『沈黙の春』が待っているにちがいない。先の
『タイム』誌でアメリカの「海洋生物保護センタ
ー」の会長、ロジャー・マクマナスは日本人を「環
境テロリスト」とまで言い切っている。悪名高い
流し網漁法を批判しての発言である。カラスや蚊
との「共生」は一つの比喩としても、「共生」の
思想は私たちにとって馴染みの薄いものではない
と思うのだが。(Alf)
< お詫びと訂正>
お詫びと訂正> 6月19日に発行しました「CRDセンター創設10周年記念誌」の広告中の、日本石油精製(株)室
蘭製油所の取締役所長名を乙川 宏氏に変更願います。広告原稿の修正を行なわず記載したことをお詫び
申し上げます。