2008 観光 PR 事業報告書 はじめに (財)自治体国際化協会(CLAIR)シンガポール事務所では、2005 年より、東南アジア地域で開 催される国際旅行見本市等に出展し、日本の各自治体から提供された観光パンフレット(英語版) やポスター等を用いて日本各地の観光 PR を実施するとともに、来場者に対し訪日旅行に関する意 識調査(アンケート調査)を行っている。 2008 年は、9 月にマレーシアの首都クアラルンプールで開催された MATTA 国際旅行フェアに 出展し、日本各地の観光 PR を実施するとともに、来場者に対し訪日旅行に関する意識調査(アン ケート調査)を行った。本報告書は、当該調査結果を取りまとめたものである。 MATTA フェアの概要 [時 期]2008 年 9 月 5 日(金)~7 日(日) [場 所]マレーシア・クアラルンプール 10:00~21:00 プトラ・ワールド・トレード・センター(PWTC) [主 催]マレーシア旅行業者協会(MATTA) [出展状況]総出展者数 211 団体、来場者数約 73,000 人 *当事務所は VJC(ビジット・ジャパン・キャンペーン)ブースと日光江戸村、及び JTB クアラルンプール支店のブースと隣接 する形で出展。パンフレット 40 団体 64 種類 10.002 部、ポスター19 団体 25 種類 35 枚の展示・配布、アンケート調査の実施を 行った。 会場の様子 クレアブースの様子 アンケート調査の概要 訪日旅行の特徴、訪日旅行に期待すること及び情報入手先などを探る。 (1)調査の概要 [調査対象] CLAIR 出展ブースに来場した人(主にマレーシア人) [調査方法] 調査票を回答者に手交し、その場で記入 [有効回答数] 503 票 1 (2)回答者の属性 [性 別] 男性:42.9% 女性:54.2% [年齢層] 若年層:55.6%(39 歳以下)、中高年層:33.5%(40 歳以上) [所得層] 低中所得者層:53.9%(月収 4500 リンギット*未満) 高所得者層:38.7%(月収 4500 リンギット以上) *2008 年 9 月 5 日現在1リンギット=31.48 円 アンケート集計結果 各調査項目について、訪日旅行経験の有無や性別、年代、所得層別に比較し、特徴のある結果に ついて述べる。 1 日本への旅行予定の有無 (1)全体 ~ 9 割超が日本への旅行を希望 91.2%が「予定がある」、5.3%が「関心はあるが予定はない」としている。今回の会場は大き な国際会議等が行われるコンベンションセンターであり、また、MATTA フェア当日には様々な 国の観光紹介ブースが設置され、来場者が必ずしも日本への旅行希望者とは限らない点を踏まえ ると、日本への観光に対するマレーシア人の興味は大きいものと思われる。 (2)訪日旅行予定者の目的・期間・訪問地 ~北海道が東京・大阪・京都の三大都市を抜いてトップ 訪日旅行予定者について分析したところ、観光目的の旅行者が 84.5%、平均旅行予定日数は約 14 日であった。長期休暇の期間に、ゆっくり観光を楽しみたい人が多いものと思われる。訪問 予定地は、北海道が最も人気があり、東京・大阪・京都の代表的な三大都市がそれに続く。この 4都市で集計数の大半を占めており、人気が集中していた。次いで、沖縄、福岡、神戸、札幌と いった都市が続く。 項目 北海道 東京 大阪 京都 本州 九州 沖縄 福岡 神戸 札幌 東北 奈良 集計 78 75 33 12 6 5 5 4 4 4 4 3 項目 富士山 長崎 名古屋 新潟 仙台 横浜 全日本 地方 福島 群馬 箱根 広島 集計 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 2 項目 鹿児島 神奈川 釧路 日光 岡山 堺 四国 神社 白川郷 静岡 高山 USJ 総計 集計 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 263 2 日本への旅行経験の有無 (1)全体 ~ 訪日旅行経験者は3分の1以上 全体の 36.9%が訪日旅行経験有りとしている。また、訪日旅行予定者の中に占める訪日旅行経 験者の割合は 36.3%となっている。 (2)年代・所得層別 年代別には、中高年層のうち 55.3%が訪日旅行経験有りとしており、若年層の 25.7%を大きく 上回る。また、所得層別には、高所得者層の 49.2%が訪日旅行経験有りとしている。 3 日本への旅行経験者の訪問地及び日本で困ったこと (1)訪問地 複数選択可として回答してもらった結果、東京・大阪・京都の三大都市の合計で半数を超えた。 次いで、北海道、神戸、名古屋、横浜、奈良、福岡、広島などの都市が続く。一方で、回答では 「本州」や「九州」といったブロック単位の回答も目立った。また、箱根や日光といった、典型 的な観光名所の名前も多く挙がっていた。 項目 東京 大阪 北海道 京都 本州 富士山 神戸 九州 名古屋 横浜 奈良 福岡 東京ディズニーランド 広島 日本中 箱根 関西 日光 集計 123 57 34 29 18 15 12 11 11 9 8 6 5 5 5 4 4 3 項目 岡山 姫路 関東 成田 新潟 仙台 四国 秋田 青森 千葉 銀座 祇園 函館 浜松 石川 香川 鎌倉 神奈川 集計 3 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 項目 河口湖 川崎 宮崎 阿蘇山 長野 長崎 お台場 大分 沖縄 大津 札幌 滋賀 島根 豊川 中部 USJ 山口 山梨 総計 集計 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 403 (2)日本旅行中に困ると思われること(または実際に困ったこと) 日本旅行中に困ると思われること(または実際に困ったこと)を、 「言葉が通じない」 「外国語 案内が少ない」 「ツアー料金が高い」 「滞在費(交通費・食費等)が高い」 「両替所が少ない」 「ビ ザ取得が難しい」「ハラルフード*がない」の中から複数選択可として回答してもらった。 全体で「言葉が通じない」が最も多く、次いで「滞在費が高い」 「外国語案内が少ない」 「ツア ー料金が高い」の順となっている。属性別の順位にほぼ変動はなかったが、訪日経験ありの約半 数が「言葉が通じない」ことを挙げていた。中高年層及び高所得者層に訪日経験者が多いため、 それぞれ若年層、低中所得者層に比べて「言葉が通じない」を選択した割合が倍近い結果となっ 3 ている。 *ハラルフードとは、イスラム教徒が食べてもよいとされる食事。イスラム教では,アルコール・豚肉・イスラ ム法に従わずに屠殺された肉を食べることなどが禁忌とされる。 図 1:日本旅行中に困ると思われること(または実際に困ったこと) (訪日経験別) 60 % 50 % 40 % 全体 30 % 経験あり 20 % 経験なし 10 % 両替所 ハラ ル フ ー ド ビ ザ取 得 ツアー料 金 外国語案内 滞在費 言葉 0% また、ビザ取得とハラルフードについては、訪日経験別では、訪日経験者の方が高い割合を示 している。 4 日本への旅行を決定する際に重視するもの 旅行先として日本を選択する際に重視する要因を、「訪問地」「宿泊施設」「食事」「価格」「時 期」の中から、複数選択可として回答してもらった。 (1)全体 ~「訪問地」と「価格」を重視 「訪問地」が 52.4%、 「価格」が 51.8%と二大要因となっている。次いで「食事」32.2%、 「宿泊 施設」31.4%の順となっており、 「時期」については 17.8%と比較的低い。 (2)性別・年代別 ~女性は「価格」を、若年層は「訪問地」を重視 性別・年代別とも「訪問地」 「価格」を重視する傾向は変わらない。ただし、 「価格」に関して は、男性より女性が、 「訪問地」に関しては、中高年層より若年層が高い割合を示している。 図 2-1:日本旅行決定の際に重視するもの(性別) 60 % 50 % 40 % 全体 30 % 男 女 20 % 10 % 時期 4 宿泊施設 食事 価格 訪問地 0% 図 2-2:日本旅行決定の際に重視するもの(年代別) 60 % 50 % 40 % 全体 30 % 若年層 20 % 中高年層 10 % 時期 宿泊施設 食事 価格 5 訪問地 0% 日本への旅行における関心事 訪日旅行における関心事を、「食事」「歴史」「自然」「テーマパーク」「温泉」 「ショッピング」 「スポーツ」 「イベント・祭り」の中から複数選択可として回答してもらった。 (1)全体 ~自然へのニーズが高い 「自然」70.3%を筆頭に、「食事」 「温泉」「イベント・祭り」 「歴史」の5項目が 40%を超え、 次に「ショッピング」が続く。 (2)性別 ~男性は「歴史」 、女性は「自然」 「食事」 関心の高い5項目の中で、男性が女性より関心を寄せるものは「歴史」、女性が男性より関心 を寄せるものは「自然」「食事」 「温泉」 「イベント・祭り」となっている。 図 3-1:日本旅行における関心事(性別) 80 % 70 % 60 % 全体 50 % 男 40 % 女 30 % 20 % 10 % スポ ー ツ テー マパー ク 5 シ ョ ッピ ン グ イ ベ ン ト ・祭 り 歴史 温泉 食事 自然 0% (3)年代・所得層別 ~「テーマパーク」 「温泉」 「イベント・祭り」に対する関心の度合いに差 年代別、所得層別では「テーマパーク」 「温泉」 「イベント・祭り」に対する関心の度合いに差 があり、年代別では若年層の方が中高年層より高く、所得層別では低中所得者層の方が高所得者 層より高い。 図 3-2:日本旅行における関心事(年代別) 80 % 70 % 60 % 50 % 全体 40 % 若年層 30 % 中高年層 20 % 10 % スポ ー ツ テー マパー ク シ ョ ッピ ン グ イ ベ ン ト ・祭 り 歴史 温泉 食事 自然 0% 図 3-3:日本旅行における関心事(所得層別) 80 % 70 % 60 % 全体 50 % 40 % 高所得 30 % 低中所得 20 % 10 % スポ ー ツ テー マパー ク シ ョ ッピ ン グ イ ベ ン ト ・祭 り 歴史 温泉 食事 自然 0% (4)訪日旅行経験の有無別 ~訪日経験者は「食事」 「ショッピング」への関心が高い 訪日経験者は未経験者に比べ「食事」 「ショッピング」に対する関心が高く、逆に、未経験者 は「テーマパーク」「イベント・祭り」に対する関心が高い。 6 図 3-4:日本旅行における関心事(訪日経験別) 80 % 70 % 60 % 全体 50 % 経験あり 40 % 経験なし 30 % 20 % 10 % スポ ー ツ テ ー マ パー ク シ ョ ッピ ング イ ベ ン ト ・祭 り 歴史 温泉 食事 6 自然 0% 観光情報の入手先 訪日旅行に関する情報入手先を、「ガイドブック・雑誌」「新聞」「TV・ラジオ」「インターネ ット」 「旅行代理店」 「口コミ」 「パンフレット・チラシ」 「旅行フェア・博覧会」の中から複数選 択可として回答してもらった。 (1)全体 ~「ガイドブック・雑誌」 「インターネット」が半数以上 「ガイドブック・雑誌」 「インターネット」が半数以上であり、 「旅行フェア・博覧会」が次に 続く。 図 4-1:観光情報の入手先(性別) 70 % 60 % 50 % 全体 40 % 男 30 % 女 20 % 10 % 口 コミ 新聞 7 T V ・ラ ジ オ 旅行代理店 パ ン フ レ ット ・チ ラ シ 旅 行 フ ェア ・博 覧 会 イ ンタ ー ネ ット ガ イ ド ブ ック ・雑 誌 0% (2)年代・所得層別 ~「ガイドブック・雑誌」がトップ、若年層は「インターネット」を活用 年代・所得を問わず、「ガイドブック・雑誌」がトップとなっている。また、年代別に大きな 差があるのは「インターネット」で、若年層で 61.0%、中高年層では 38.2%となっている。 図 4-2:観光情報の入手先(年代別) 80 % 70 % 60 % 全体 50 % 若年層 40 % 中高年層 30 % 20 % 10 % ・ラ ジ オ T V 口 コミ 新聞 旅行代理店 パ ン フ レ ット ・チ ラ シ 旅 行 フ ェア ・博 覧 会 イ ン タ ー ネ ット ガ イ ド ブ ック ・雑 誌 0% 図 4-3:観光情報の入手先(所得層別) 80 % 70 % 60 % 全体 50 % 高所得 40 % 低中所得 30 % 20 % 10 % 8 口 コミ ・ラ ジ オ T V 新聞 旅行代理店 パ ン フ レ ット ・チ ラ シ 旅 行 フ ェア ・博 覧 会 イ ンタ ー ネ ット ガ イ ド ブ ック ・雑 誌 0% 7 今後パンフレットやホームページ上で充実を望む情報 旅行者がパンフレットやホームページ上で充実を望んでいる情報について、「観光地に関する 詳細情報」 「観光地や食事等のビジュアル情報」「交通手段」「観光マップ」「モデルルート」「宿 泊施設」「イベント情報」「関係機関のリンク集」の中から複数選択可として回答してもらった。 (1)全体 ~詳細情報の充実が望まれている 「観光地に関する詳細情報」が全ての属性でトップとなっている。 図 5-1:充実を望む情報(性別) 80 % 70 % 60 % 全体 50 % 男 40 % 女 30 % 20 % 10 % イ ベン ト 交通手段 リ ンク 集 宿泊施設 モ デ ル ルー ト マ ップ ビ ジ ュア ル 詳細情報 0% 図 5-2:充実を望む情報(訪日経験別) 80 % 70 % 60 % 全体 50 % 経験あり 40 % 経験なし 30 % 20 % 10 % イ ベン ト 交通手段 9 リ ンク 集 宿泊施設 モ デ ル ルー ト マ ップ ビ ジ ュア ル 詳細情報 0% 来場者からの具体的な質問例 やはり、ゴールデンルートである東京、大阪、そして北海道に関する質問が多かった。また、 これらの地域は既に訪問しているので、他の場所でどこかお勧めはないか、というリピーター からの質問も目立った。宿泊ホテル、レストランに関する質問などの他、ビザ取得とハラルフ ードに関する質問も多かった。その他具外的な質問例を挙げると、以下のとおりである。 ・東京から目的地までの移動手段、値段、所要時間 ・桜や紅葉、ラベンダー、雪等の見頃の時期 ・各地の月毎の気温 ・英語の普及度合い ・JR パス、電車・バスの 1 日パスや割引について ・東京からの日帰り旅行先 ・温泉旅館の値段、お勧めの場所 おわりに 日本政府観光局(JNTO)の統計では、2007 年の訪日外客数は、年間で過去最高、史上初 の 800 万人を記録した。このうち、観光客は約 600 万人であるが、国籍別に見ると、マレー シアからの訪日観光客は 6 万 2,551 人で第 12 位、 アセアン内ではタイ (11 万 9,718 人・9 位)、 シンガポール(11 万 9,239 人・10 位)に次ぐ人数となっており、近年における伸び率等から、 タイ、シンガポールと並んで、マレーシアは訪日観光の有望市場となってきている。 当事務所においては、2007 年はタイ・バンコクで、2008 年はマレーシア・クアラルンプー ルで、観光 PR 活動及び意識調査を行ったが、どちらも大変な賑いで、当該地域の人々の日本 への関心の高さを実感する場となった。今後も、これらの地域から日本各地への観光客誘致の ため、引き続き効果的な PR 活動を随時行っていきたいと考えている。 10
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