第4章 福知山市の観光振興の課題 1. 新市観光ツアーの調査から 観光ビジョン策定事業では、新市の観光資源に関する調査、および市内外の人々への観 光資源の周知を図ることを目的として、「新市観光ツアー」を開催した。2006 年、夏、秋、 冬編と 3 回、旧1市3町の方面別にそれぞれ4コースのガイド付きバスツアーであった。 ツアー内容の詳細は、本誌巻末に添付したツアー案内ちらしのとおりである。全3回の延 べ参加者数は関係者を含めて 410 名、一般の参加者は 278 名であり、平均年齢は 60 歳前後、 女性が 68%を占めた。アンケートの回答者は、一般の参加者と一部の関係者である。有効 回答数は、コース別に旧市内、大江方面、夜久野方面、三和方面で夏編ではそれぞれ、26、 34、39、40 の計 139、秋編ではそれぞれ、23、37、19、32 の計 111、冬編ではそれぞれ、 37、20、30、30 の計 117 である。一般参加者の回答率は子どもを除いて 100%である。 1.1 観光ガイドの重要性 まず夏編の調査結果である。夏編の調査では、訪問地の評価に併せて、ツアー参加以前 に訪問経験かあるか否か、またそこがお気に入りの場所であるか否か、を尋ねている。福 知山市では、通常はガイド付きツアーが実施されていないため、今回のツアー参加以前の 訪問経験では、ガイドの解説なしで訪れていることが多い。そのため、お気に入りの指標 と今回のツアーでの訪問地評価を比較することで、ガイド付きによって評価が高まるかど うかが実証できる。 夏編の訪問地評価の結果をコース別に図 4-1、図 4-2、図 4-3、図 4-4 に示した。評価は 5 段階評価の平均値であり、5が「とても良い」、4が「良い」、3が「ふつう」、2が「あま り良くない」 、1が「良くない」である。各コースでの評価の平均は、3.6 から 3.8 の間で あり、コース別で大きな偏りはみられず、また評価の高かった訪問地の種類は様々である。 アンケートでは、各訪問地の感想を自由記述で記入してもらっているため、評価の理由や 評価基準が把握できる。この自由記述から、大まかに同様の内容をまとめ、評価が平均の 3.7 以上である観光資源を表に示した(表 4-1、表 4-2、表 4-3、表 4-4)。 以上の図と表を参照しながら、ツアー参加以前と参加後の観光資源に対する評価を比較 し、高い評価を得た観光資源がガイドつきであることが要因であったか否かを確認する。 まず、図 4-1 から評価の高い観光資源をみると、天寧寺、福知山城、治水記念館、動物園 が 4.0 以上である。天寧寺は、「訪問経験」は多くはないが、そのうちの「お気に入り」は 少ないといえる。しかし、その割には評価が 4.3 と、かなり高い。これは、表 4-1 に見る とおり、「住職の説明がよかった」ためである。また、治水記念館は、「お気に入り」は少 ないが、訪問経験者も少ないことから、評価の基準としては不足であるが、4.0 高い評価を 得え、この要因として表から、解説によって理解できたことが挙げられる。 32 図 4-1 図 4-2 夏編・旧市内コースの観光資源の評価および訪問経験とお気に入りの人数 夏編・大江方面コースの観光資源の評価および訪問経験とお気に入りの人数 33 図 4-3 図 4-4 夏編・夜久野方面コースの観光資源の評価および訪問経験とお気に入りの人数 夏編・三和方面コースの観光資源の評価および訪問経験とお気に入りの人数 34 表 4-1 夏編・旧市内コースの評価と感想 訪問地 評価 感想 丹波生活衣館 3.7 体験が出来るのが良い(5) 福知山城 4.0 資料の展示が良い(2) 治水記念館 4.0 理解できた(4)参考になった、勉強になった(3) ポッポランド 3.7 懐かしい(2)、片付けて欲しい(2) 昼食 3.9 充分、美味しい(7) 天寧寺 4.3 住職の説明が良い(5)、知らなかった(2) 動物園(三段池公園) 4.0 ふれあいが良い(3) 注:評価は 5 段階評価の平均値。感想の( )の数字は回答者の人数を表す。表 3-5 も同様 表 4-2 訪問地 大江町和紙伝承館 日本の鬼の交流博物館 毛原棚田 あしぎぬ大雲の里 室尾谷観音寺 評価 4.3 4.4 3.8 4.2 4.3 表 4-3 訪問地 小町神社 玄武岩公園 木と漆の館(農匠の郷) 三岳山の家 雲原砂防 長尾の薬師堂 評価 3.7 4.0 3.9 3.7 4.1 3.7 表 4-4 訪問地 芦田均記念館 三和荘 大身ぶどう園 大原神社 観音寺 評価 4.0 4.2 3.7 3.9 4.2 夏編・大江方面コースの評価と感想 感想 理解できた(4)、価値ある伝統(3) 館長の話が良かった(4) 、アップルパイが美味しかった(4) 雨で残念(7) 貴重な文化財(3) 収蔵品が見られた(4)、管理が良い(3)、住職の話で理解(3) 夏編・夜久野方面コースの評価と感想 感想 整備が必要(3) 草刈りなどの管理不足(5)、自然の素晴らしさ(4) 作品がよい(6) 建物がよい(4) 説明に感動・驚いた(9) 説明がよい、感動(5)、薬師が見られた(3) 夏編・三和方面コースの評価と感想 感想 ビデオで学んだ(4)、説明で理解した(3) 食事がよい(8) 美味しかった(6). 産屋がよい(3)、説明がよい(3) 住職の話がよい(11) 、本堂が良い・驚いた(9) 35 旧市内コースと同様に、4 コース、41 ヵ所のすべての観光資源についてみていくと、ガ イドの解説付きによって評価がかなり高まったといえるのが、旧市内コースの天寧寺の他、 夜久野方面コースの雲原砂防と三和方面コースの観音寺である。またガイドの解説による 効果がある程度認められるのは、治水記念館の他、大江町和紙伝承館、室尾谷山観音寺、 長尾の薬師堂、芦田均記念館、大原神社である。したがって、とくに社寺に関しては、ガ イドの効果が高いことが明らかとなった。 福知山市では、とくに際立った観光資源がないと思われるが、資源の数は少なくない。 その中で、評価が高かった観光資源は、今後も改善を図りながら観光客の誘致に努めるこ とが必要となる。まら、それら一つ一つの価値を高めるため、ボランティア・ガイドなど、 観光案内人の養成は最重要課題のひとつとなる。 1.2 体験型観光の重要性 先に表示した夏編では、出来るだけ多くの観光資源に対する評価を収集することを目的 としていたが、秋編と冬編では、体験を導入して評価をみることにした。その結果は表 4-5、 表 4-6 に示した。 秋編、冬編ともに、全体の平均評価が夏編よりも高くなった。その要因として、夏編は 季節柄暑かったことと、訪問地が多かったことで疲れたと感じる参加者もいたことが挙げ られるが、秋編から取り入れた体験に対する評価がとくに高いことが大きな要因となって いることも明らかである。 したがって、体験は、福知山の観光価値を高めることに繋がる。秋編のアンケートでは、 今後希望する体験メニューも尋ねており、それらを組み込んだツアーの催行が望まれる。 しかし、新市観光ツアーの参加者は市民が大半をしめたことと、年齢層が 60 歳代が多かっ たことなどから、今後の課題は、市外客の誘致を前提とした体験ツアーの内容や、主催の 主体、集客の方法などとなる。 36 表 4-5 旧市内コ ース 評価平均 大江方面 コース 評価平均 夜久野方 面コース 評価平均 三和方面 コース 評価平均 長安寺 天寧寺 昼食 三岳山の家 4.3 元伊勢内 宮 4.3 4.6 天の岩戸 神社 4.3 4.1 昼食 4.2 大江山グリー 4.6 4.2 宝山 昼食 つくりも ん 和菓子 3.9 3.8 5.0 興雲寺 ペタンク 4.1 4.6 秋編の訪問地評価 里の駅み たけ 3.3 お土産品 面白動物 講座 養泉寺座 禅 全体 4.2 二瀬川渓 谷 4.6 4.5 4.2 鬼瓦公園 お土産品 全体 3.6 3.2 4.2 紙漉き 鬼瓦 4.9 お土産品 全体 4.5 4.7 三国まつ り 3.8 4.8 鬼ヶ茶屋 襖絵 4.2 4.1 昼食 三和荘 お土産品 4.3 4.4 3.3 3.8 芦田均記 念館 3.9 ンロッジ 表 4-6 3.3 リース作 り 全体 4.1 冬編の訪問地評価 旧市内コース 坐禅 天寧寺 昼食 雲原砂防 そば打ち 全体 評価平均 4.5 4.5 3.8 3.6 4.3 4.1 元伊勢・和泉式部歌塚 昼食 大江山グリーンロッジ 表札づくり 百人一首 鬼瓦公園 お土産品 全体 4.3 4.9 4.4 4.2 4.9 4.5 3.8 4.4 玄武岩公園 化石資料館 昼食 農匠の郷 漆の絵付け お茶会 雪火祭 お土産品 全体 3.9 4.4 4.0 4.1 4.6 3.9 3.9 3.5 4.0 観音寺 昼食 三和荘 陶芸 七宝焼 お土産品 長田野工業団地 全体 4.4 4.3 4.4 4.5 4.6 3.6 4.3 4.3 大江方面コース 評価平均 夜久野方面コース 評価平均 三和方面コース 評価平均 注:評価は 5 段階評価の平均値。5が「とても良い」、4が「良い」、3が「ふつう」、2が「あまり良くない」、1が「良くない」。 斜字は体験。 37 38 2. 高齢者観光ツアーの調査から 「高齢者観光ツアー」は、前年の「新市観光ツアー」を応用し、同様に福知山市観光振 興ビジョンの事業として 2007 年 11 月 29 日に催行した。このツアーは、京都創成大学と京 都短期大学が中心となって学生への教育を兼ねながら地域貢献型を試みたものである。参 加募集は、高齢者を対象にし、学生がツアー中の添乗やガイドの役割を担い、また介護福 祉士をめざす学生が参加者の補助やお世話をした。ツアー実施の背景には、主に以下の4 点がある。 1.「福知山市観光振興ビジョン策定」事業では、昨年実施した「新市観光ツアー」が好評 を博し、再開を望む声が多い。 2.通常の観光ツアーに参加することが困難で、自ら出掛けることが容易でない高齢者を 対象にツアー参加の機会を提供し、予防医学に繋げたい。 3.京都創成大学では、今年度より観光の授業が開設されたことで、今後、観光学を習得し た学生が育成される。 4.京都短期大学には、介護福祉専攻があり、介護福祉士をめざす学生が実習を重ねてい るが、学生が在学中に、一般の高齢者と交流する体験は重要な意味をもつ。 ツアーの企画は、福知山市観光振興課と京都創成大学と京都短期大学が共同で行い、行 程には、高齢者の嗜好、最小限の歩く距離、バリアフリーのトイレが設置された施設、な どを考慮した。訪問先にも趣旨を説明し、受け入れ態勢の協力を得た。訪問先にも趣旨を 説明し、受け入れ態勢の協力を得た。参加者は、自ら歩ける、介護認定1から2までであ る、ことを条件とし、介護者同伴も参加可能とした。参加費は昼食代と保険代のみとした。 参加者の募集は、社会福祉協議会の支援により、高齢者が集う定期的な会合で呼びかける ことにした。ツアーの訪問地が福知山市の北部方面であることから、福知山市南部の三和 町地区にある「いきいきふれあいサロン」で募集をしたところ、参加者数が定員(当初は 20 名)を超えた。ツアーに同行する学生は、京都創成大学では、観光の専門授業がまだ開 始されていないため、学生の専門分野に関係なく、授業に支障のない 4 回生 4 名とし、京 都短期大学では介護福祉士養成過程の最終段階にある 2 回生 4 名とした。京都創成大学の 学生は、事前に行程の内容を学習し、しおり作り、集金、バスの中での説明などの準備を した。 39 2.1 若者と高齢者が交流をはかる観光形態 当日のツアーの参加者は 31 名、ほとんどが女性で男性は 6 名であった。ツアー行程は、 以下のとおりである。 三和いきいきふれあいサロン(10:00 発)―芦田均記念館(10:20-11:00)―鬼瓦 公園・真下飛泉資料館(11:20-12:00)―大江山グリーンロッジ(昼食)、日本の鬼の交 流博物館(希望者のみ) (12:15-13:35)―二瀬川渓流(経由)―観音寺(講話) (14:15 -15:15)―三和いきいきふれあいサロン(15:30 着) ツアーは 10:00 から 15:30 までの 5 時間半の間、三和町から大江町への全行程約 100km の距離であった。市が運営する施設、芦田均記念館、鬼瓦公園・真下飛泉資料館、日本の 鬼の交流博物館は、職員が案内・解説した。途中経由した山間地では車中から最盛期の紅 葉を観賞することができた。 学生は、バスの中では補助席に座った。これは、参加者との交流を図るためであり、ま た聞き取り調査も兼ねていたためである。聞き取りの質問項目は、予めアンケート票に示 してあり、学生が各参加者から聞き取った内容を記入するようにした。有効回答数は参加 者数と同数の 31 である。 参加者の年齢は 71 歳から 87 歳、平均年齢は 77 歳であった。旅行や出かけることが好 きな参加者が 87%で、実際日ごろから出かける機会が多い者も 81%にのぼる。しかし、ツ アー参加の理由は 55%が「誘われたから」を挙げており、自主的な参加ではなく、仲間が 一緒であることが参加の動機となっている。また、集合場所を駅に設定した場合に、参加 が可能とした者は 26%でしかなく、駅までのアクセスが個人では難しいことも分かった。 それぞれの訪問地の評価は、おおよそ「とても良かった」 、「良かった」、「ふつう」 、「良 くなかった」に分類し、訪問経験と併せて、図 1 に示した。また、訪問地評価の理由とな るコメントの内容を、同様のものを合わせて表1に示した。 それぞれの訪問地におけるツアー参加以前の訪問経験は、観音寺が参加者の半数ほどを 占め、その他の訪問地も 1 割から 4 割程度ある。したがって、訪問経験がある場合、既に 知っているところを訪れるため、評価はそれほど高くならない可能性もあったが、実際は、 非常に評価が高かった。とくに評価が高かった昼食は、高齢者向けのメニューが好評だっ たためであり、観音寺においても講話の内容が高齢者向けであったことで、参加者が感銘 を受けた感想が多かった。その他の訪問地に関しても案内人の説明があったことが評価を 高めた要因となったといえる。その一方で、わずかにみられた苦情が、時間的な余裕のな 40 さと寒さに関するものであった。しかし、ツアーの全体的な満足度はかなり高かったとい える。 その他のツアー全体に関する意見として、12 名の参加者の声が記録されている。その多 くが「楽しかった」、 「また参加したい」などの意見であり、 「説明が聞けてよかった」など、 身近でも知らないところが分かってよかったとする感想も複数ある。さらに、学生に対す る感想であるが、18 名の参加者が感想を述べている中で、15 名が「学生と一緒で楽しかっ た」、「話が出来てよかった」、「親切だった」、「心強い」など、学生が一緒であったことが 好評であったことが分かる。その他の 3 名は学生に対する励ましの言葉であった。 「また学 生と行きたい」という感想も 2 名いた。 このように、ツアー全体の評価も、学生に対する評価もかなり高かったことが明らかに なり、本ツアーが今後も継続されることを願う参加者が多かった。 図 4-5 高齢者観光ツアーの訪問経験の割合と訪問地評価 表 4-7 訪問地(コメント数) ツアーの訪問地に対するコメント 主なコメント(同様のコメント数) 芦田均記念館(10) もっと時間が欲しかった(3) 鬼瓦公園(6) 大きい(2) 、寒い(2) 真下飛泉資料館(8) 見学できてよかった(3) グリーンロッジ(昼食)(10) おいしかった(5)、野菜が主でよい(3) 、量が適当(3) 日本の鬼の交流博物館(9) 話が良(面白)かった(5) 二瀬川渓流(通過)(5) 紅葉がきれい(4) 観音寺(講話)(9) 良い話だった(7) 41 次に、ツアーに対する学生の意見である。ツアーに同行した 8 名の学生には、終了後に 意見を書いてもらったが、感想を含めた反省や今後の改善点などが出された。反省点は自 分の仕事に関してであり、改善点はツアーの時間的余裕や寒さを指摘したものが多かった。 各学生の感想を要約したものが以下である。 京都創成大学の学生 4 名 A.今日は寒かったが、全体的に良かった。喜んでくれる人が多かった。 B.バスの中では楽しく話しをすることができた。参加者の方々も学生と話ができて、今までにないツアーで楽しかっ たとういう声を聞いた。観光場所も身近だけど良い機会でツアーとして楽しめた。 C.準備不足だったが、一日ガイドの経験ができてよかった。もっとしっかり資料を読み、準備をすればよかったと反 省している。お年寄りの方はとても楽しんでいただいたようで、良かった。ガイドをほめてくれたり、孫に似ている と言ってもらったり、会話をするのも楽しく、参加してよかった。福知山にいながら、初めて行く場所ばかりだった ので勉強にもなった。 D.日頃は自分の家族としか高齢者と関わる機会がないが、たくさんの方とふれ合うことが出来て良い経験になった。 また、地元や近くであるのに行ったことのない場所ばかりで、思ったより勉強になって良かった。 京都短期大学の学生 4 名 A.いろんな方と話ができていい勉強になった。いつも実習などでは重度の方やコミュニケーションがとれない方など と接する機会が多く、コミュニケーションがとれたことがよかった。 B.実習で行く施設の利用者とは異なり、違った視点で高齢者を捉えることができ、一緒に楽しめた。寒さがあったと も感じた。介護予防のことから考えてもこういった高齢者とのふれあいが高齢者の生きがいになるきっかけとなった り、認知症予防にもなると考えさせられた。 C.参加者全員と話ができなかったのが残念だった。バスの両どなりの方から嬉しい言葉が聴けたのでとてもうれしか った。今回のツアーに参加することができ、また一つ自分の力になった。皆さんの笑顔を見る事ができた。高齢者の 観光ツアーはこれかれも続けて欲しい。お金の管理からガイドまで学生がおこなっていたのがすごいと思った。 D.はじめはアンケートのことなどで不安もあったが、時間が経つにつれ参加者の皆さんとうちとけ、楽しむ余裕がで きた。皆さん本当に元気で、実習で弱っている方を見ている分、元気をもらった。たくさん話もできて、とても楽し い一日だった。 全学生が、高齢者との交流が良い経験となったことが理解できる。とくに京都短期大学 の学生にとっては、実習で会う高齢者が、体が不自由であったり認知症であったりする方 が多く、健康的な高齢者と交流できたことが非常に良い体験となっている。京都創成大学 42 の学生には、福知山市での学生生活4年目にして初めて地元の観光地を訪問したことも良 い経験となっている。 以上のようなツアーの結果から、このツアーの目的であった、1. 「新市観光ツアー」の 継続、2.出掛けることが容易でない高齢者にその機会を提供、3.観光学を学ぶ学生への 教育、4.介護福祉士を目指す学生への教育と高齢者との交流、の 4 点をほぼ満たし、ツ アーは概ね成功であったといえる。 今回実施された「高齢者観光ツアー」は、高齢者と学生の交流をとおして双方にとって 有意義なものとなり、また、教育機関が支援する新しい地域貢献型の観光形態を提示した。 今後もこのようなツアーの継続的な催行が望まれる。調査結果からいくつかの改善点も挙 げられたが、今後のツアー催行に向けて観光振興ビジョン策定事業での実証実験を生かす 実施主体の確立が第一の課題である。 43 3. 福知山城・郷土資料館を中心とした観光振興 3.1 福知山城アンケート調査 郷土資料館として利用されている福知山城は、1986 年に市民の寄付によって再建された 市のシンボルであり、市内でもっとも重要な観光施設の一つである。福知山城は、福知山 市の観光振興に大きな役割を担っているにもかかわらず、これまで城の観光に関する実態 調査を基にした課題の提示がなされてこなかった。また、福知山市の観光全体においても、 観光者の特性や観光行動に関する実態調査の必要性が指摘されてきた。そこで、今回は福 知山城および市全体の観光の具体的な改善策に繋げるため、城の入館者に対してアンケー ト調査を実施し、客層や福知山観光の評価などを明らかにすることとした。調査方法は、 城内の見学を終了した入館者に、館内の職員がアンケート票を手渡し、その場で記入・回 収した。配布部数は 2 名以上のグループの場合も各一部である。配布したアンケート票は 200 部、回収は 196 部である。調査期間は、2007 年 11 月 14 日から 25 日の 12 日間であ り、福知山マラソンの開催日が含まれた。回答者の構成は、調査員の調べによると夫婦な ど 2 人が多くを占めたが、10 名以上のグループが少なくても 4 組は含まれている。 主な調査結果は、本節末にまとめて示した。このデータおよびアンケート票の記載内容 を元に、主に明らかになった点は以下のとおりであり、加えて福知山市の観光振興への課 題をまとめた。 福知山城への来訪者の年齢層は、10 歳代から 70 歳代以上まで幅広く、大きな偏りがみ られない。来訪者(回答数)は、「都道府県別居住地」では大阪府がもっとも多く、続く京 都府、兵庫県を合わせた 3 府県が 117 件と、全体の 59%を占めている。アンケートでは、 市町村名も聞いており、これによると京阪神が多いことが分かる。「利用交通機関」は、車 がほとんどである。 「福知山城の訪問理由」は、 「もともと城が好きである」、もしくは、 「一 度来てみたかった」が多いが、これまで通過して目にしていた城を、福知山に来たり、経 由地の「ついで」に訪問している者がもっとも多いとみられる。そのため、「市内の他の訪 問地」にみるとおり、福知山市内では、城のみの見学が多い。また、 「美術館」は城に隣接 し、城との共通券があるために立ち寄り者が多くなっている。「市外の他の訪問地」「今回 の旅行の期間」「宿泊の場合、その場所」を併せてみると、旅行者は日帰りと宿泊が半々で あり、多くが北近畿旅行の経由地として福知山城を訪れていることが分かる。 44 アンケートの回答から北近畿方面への旅行者を分析したところ、城崎温泉の訪問者は、 17 件のうち 12 件が宿泊を伴い、天橋立への訪問では 49 件のうち 26 件が宿泊をともなっ ている。その一方で、日帰りでの訪問は 98 件あり、そのうち 52 件(うち福知山市在住が 4 件)が福知山市のみを訪れ、それ以外は、篠山が 16 件、天橋立が 13 件、城崎、舞鶴は共 に 6 件などとなっている。福知山市のみの訪問者の多くは、城以外の観光もしているが、 食事や温泉を目的としながら「ついでに」城を訪問する者も少なくない。 このことから、城崎温泉や天橋立への宿泊旅行、もしくは日帰りで福知山や周辺の地域 を観光しながら福知山城を見学箇所に加えている者が多いことが明らかになった。したが って、北近畿やその周辺の観光地における福知山観光の PR は有効な手段となり、また、福 知山城を目当てに来た観光者の回遊行動を促し、市内での滞在時間を延ばすことが福知山 市の観光振興の課題の一つといえる。 次に、福知山城に関する評価である。「城の外観の感想」から、「素晴らしい」と感じる 者が過半数を占めている一方で、「興味深かったところ」にみるように、城内および敷地内 の見学箇所にはそれほど興味を示さない者が多いことが分かる。とくに、常設の郷土資料 と特別展(調査期間は「写真で見る福知山市70年のあゆみ」展)への関心が低い。とこ ろが、 「展示物の感想」では、40%が「興味深かった」としていることから、展示物が常設 の郷土資料と特別展であることを認識していないとみられる。いずれにしても、内部の展 示物には、工夫の余地があると思われる。アンケート票には「その他コメント」として自 由記述欄があるが、これによると、特別展による福知山の歴史的な写真、および明智光秀 関連の資料に興味が示されているようであり、内部が現代的すぎ、畳部屋の良さを活かし て欲しいなどの意見がある。したがって、見て楽しめる展示物、明智光秀関連の資料を増 やすなどによって、城観光の評価が高まることになり、さらに時代を感じさせる内装が施 されれば理想的である。しかし、 「また訪問したいか」に関しては、90%がまた来たいと回 答している。これは、福知山城が有力な観光資源であることの表れであり、城の PR を強化 することで、観光者の誘致が期待できる。 「購入したい福知山土産」と「福知山観光への意見」に関しては、アンケートでは自由 記述の回答にしてある。土産に関する回答数は 29 件と少なく、そのうち共通するものをま とめると、「黒豆」が 8 件、「せんべい」が 6 件であったが、21%が「分からない」とする など、福知山土産の認知度が如何に低いかが明らかとなった。また、福知山観光に関する 意見は、様々あるが、パンフレットや標識、食事の場所や観光スポットなどへの不満が多 45 く、つまり「情報」が不足であることが指摘されている。したがって、観光情報となる既 存の「福祉山観光ガイドマップ」などを福知山城はじめ市内各所に配布し、また交通機関、 観光スポット、食事場所、土産品の案内などを盛り込んだ案内書の作成や、要所に案内板 や標識の設置、インターネットでの観光案内の充実など、情報提供を充実させることが観 光振興に不可欠である。 調査結果 利用交通機関 車 ····························· 74% 駅から徒歩 ····················· 17% バス ···························· 2% レンタサイクル ·················· 1% その他(自転車、徒歩、など) ···· 6% 来訪者の年齢層 10 代··························· 4% 20 代··························· 10% 30 代··························· 18% 40 代··························· 21% 50 代··························· 22% 60 代··························· 16% 70 代以上······················· 8% 今回の旅行の期間 日帰り ························· 52% 1泊 ··························· 34% 2泊 ··························· 11% 3泊以上 ························ 4% 都道府県別居住地(回答数の多い順) 大阪府 ························· 53 件 京都府 ························· 33 件 兵庫県 ························· 32 件 愛知県 ························· 9 件 東京都 ························· 7 件 滋賀県・神奈川県 ··············· 各 6 件 和歌山県 ······················· 5 件 福井県 ························· 4 件 岐阜県 ························· 3 件 北海道・新潟県・長野県・富山県・ 奈良県・岡山県・広島県 ········· 各 2 件 栃木県・群馬県・静岡県・ 島根県・高知県・沖縄県 ········· 各 1 件 宿泊の場合、その場所 丹後半島 ······················· 30% 福知山市 ······················· 26% 城崎温泉 ······················· 15% 京都市 ·························· 6% その他 ························· 24% 市外の他の訪問地(複数回答) 天橋立 ························· 26% 舞鶴市 ························· 17% 出石 ··························· 13% 篠山市 ························· 11% 伊根町 ························· 10% 城崎温泉 ························ 9% 京都市 ·························· 8% 若狭湾 ·························· 6% その他 ·························· 9% 福知山城訪問の理由(複数回答) お城めぐりが好き ··············· 29% 一度来て見たかった ············· 22% 福知山に来たので ··············· 21% 他の場所に行くついでに ········· 11% 明智光秀に興味があった ········· 11% 福知山の郷土資料が見たかった ···· 4% 人に勧められたので ·············· 2% 特別展が見たかった ·············· 1% その他(マラソンに来た、など) ·· 6% 46 購入したい福知山土産(回答数 29) 黒豆 ··························· 28% せんべい ······················· 21% 分からない、教えて欲しいなど ··· 21% 市内の他の訪問地(複数回答) 城のみ ························· 38% 美術館 ························· 13% 三段池 ························· 11% ポッポランド ···················· 7% 丹波生活衣館 ···················· 6% 動物園 ·························· 4% 大江町 ·························· 3% 御霊神社 ························ 3% 三和町 ·························· 2% 児童科学館 ······················ 2% 治水記念館 ······················ 2% 植物園 ·························· 2% 芦田均記念館 ···················· 1% 夜久野町 ························ 1% その他 ·························· 6% 福知山観光への意見(抜粋) ・ インターネット検索では旅館ホテルが少 ない。 ・ 活気がないけど歴史はある。 ・ もう少し見やすい標識が欲しい。 ・ 初めて来たけど静かで良かった。 ・ 駅に地図を置いて欲しい。 ・ 渋滞するので 9 号線がもっと広くなると良 い。 ・ 思ったより街だったけど山々がきれいで 空気も澄んでいた。 ・ 福知山振興のため『ひこにゃん』(彦根城 指定キャラ)『やまぴょん(高知城指定キ ャラ)』を生み、利用すれば面白い。 ・ 食事する場所が近くにありません。 ・ 駅の案内を充実させたほうが良い。綾部、 舞鶴、宮津との連携をした方がいい。 ・ 観光案内の人が良かった。 ・ これだけ大きなマラソン大会を観光資源 化したのは立派。 ・ マラソン大会参加、駅前案内が見難い。 ・ 食事をする場所が近くにないのであれば よい。 ・ 福知山について歴史も観光もあまりよく 知らなかったのでもっと情報があったら 楽しめた。 ・ 市街へのアピール不足。 ・ 福知山城はとてももみじがきれい。また来 て見たい。 ・ 観光スポットが少なすぎると思います。 ・ 目玉となる観光スポットがあれば来福者 も増えると思う。 ・ 駐車場までの看板がわかりにくい。 ・ 他県でもいえますが、道の案内がもう少し 多いほうがいい。 ・ 福知山城を全国的にPRして、観光都市に なるよう頑張ってほしい。 ・ 駅周辺や道路にもう少しわかりやすい案 内があると嬉しい。 ・ 駅にマップがあればよい。 ・ パンフレット等が少ない。 城の外観の感想 素晴らしい ····················· 56% ふつう ························· 30% よく見えなかった ················ 3% よくない ························ 0% その他(紅葉が良かった、など) · 11% 興味深かったところ(複数回答) 天守閣からの眺め ··············· 24% 石垣 ··························· 22% 井戸 ··························· 18% 城の建築 ······················· 16% 常設の郷土資料 ·················· 8% 特別展 ·························· 5% 銅門番所 ························ 3% その他 ·························· 3% 展示物の感想 ふつう ························· 46% 興味深かった ··················· 40% つまらなかった ·················· 1% その他(歴史が分かった、など) · 12% また訪問したいか 機会があれば来たい ············· 76% 是非来たい ····················· 12% 今回で十分 ····················· 11% 特別展による ···················· 2% 47 3.2 来館者の声 福知山城には、来館者が自由に書き込める「お城ノート」が置かれている。先のアンケ ート調査に加え、このノートに記載された内容を分析し、来館者の特性と観光行動および 福知山城観光の魅力や課題を明らかにする。さらに、城の観光振興に向けた課題を考察す る。「お城ノート」は、2004 年 7 月 2 日から 2007 年 11 月 9 日の約 3 年間に 313 名の来館 者によって記載された。これらの記載者の居住地、来館目的、城に対する感想、および意 見・要望を記述内容から抽出し、まとめてみた。 まず、居住地(「○○から来た」など)が明記されているものが 49 件ある。内訳は京都 市(「京都」と明記したもの)からが 6 名、福知山市内が 3 名、舞鶴市が 2 名である。京都 府外からは、大阪府が 7 名、兵庫県が 6 名(姫路4名、神戸 2 名)、北海道が3名、神奈川 県が 2 名、の複数名が確認された都道府県である。これによって、京都府近郊の府県から が多い中で、北海道から舞鶴港を経由する来訪者や、関東や東海地方など多方面からの来 訪者があることが確認された。なお、海外からは、カナダ、台湾、タイからが各 1 名確認 された。 次に、福知山城訪問の目的や動機に関しては、134 件の記述が確認された。城めぐりや 城が好きで訪問したとする者は 46 名、他の訪問地を目的として「ついで」に城に寄った者 が 46 名であり、そのなかでも温泉または温泉地を目的とした旅行の経由が 28 名と、過半 数を占める。また、城訪問の動機として多いのは、「明智光秀に興味があるため」が 21 名 いる。このうち「光秀」と明記しているのは 13 名、「NHK のドラマを見て」などが 5 名、 「ゲーム」で光秀に興味をもった者が 3 名となっている(1)。 城の感想に関する記載は、185 件あった。そのうち、城に対して否定的なコメントを記 述した者は 2 名しかなく、ノートの記載者は、感動したり、好印象を受けた者にほぼ限ら れることが分かる。まず、明智光秀に関する記述(「感動した」、 「光秀にふれられた」など) がもっとも多く、38 名が確認された。そのうち「光秀の城とは知らなかった」が 6 名いる。 ノートにはもともと明智光秀に興味がある者が多く記述した可能性もあるが、ついでに寄 った者でも、光秀に関心を寄せる者も多いとみられる。また、城そのものを「美しい・き れい」などと評価している者が 12 名、 「立派・すばらしい」などが 9 名、 「静かで落ち着く」 などが 6 名、 「歴史を感じる」などが 6 名、などとなっている。また、石垣に関心を寄せた (1) NHK 大河ドラマ「功名が辻」で明智光秀が演じられた。放映は 2006 年 1 月から 12 月。 48 者が 6 名、井戸が 4 名、和室が 4 名となっている。これらの人数は重複してはいるが、計 33 名となり、建築物としての福知山城が高い評価を得ていること、またその理由が確認で きた。また、城からの眺めや、城周辺の自然に関して「景色がいい」などと記述した者が 23 名あった。尚、他の城と比較して福知山城が優れているとする記述があり、比較に挙げ られた城は小田原城が 2 名、田辺城、大阪城、清洲城、岸和田城が各 1 名、また姫路城と 比較して福知山城の良さを認めているのが 4 名ある。これにより、城好きの者にとっても、 福知山城は評価が高いことが分かる。そして、 「また来たい」と記した者が 5 名いる。 城に対する意見や要望は 14 件あり、そのうちの 5 件が光秀に関する記述である。つまり、 「光秀をもっと前面に」、「光秀関連の資料を増やして欲しい」、「みつひで君グッズが欲し い」、などの要望である。 以上、「お城ノート」の自由記述の内容をまとめた結果、福知山城の観光資源として魅 力は、主に以下の 4 点が挙げられる。 1. 明智光秀を偲ばせること 2. 建築物の美しさ 3. 城内の歴史的な趣と落ち着いた雰囲気 4. 城周辺の景色や城からの眺め このような魅力を備える福知山城は、全国に数多くある城の中でも高い評価を得られる 可能性がある。今後、福知山城への観光者誘致には以下の事項が戦略となろう。 9 北近畿の温泉施設などに福知山城のパンフレットを配布 9 明智光秀関連の資料の展示を増やすなど、「明智光秀の城」のイメージ強化を図る 9 福知山城の独自性と希少性を生かして全国にアピールする 福知山城 49 4. ボランティア・ガイドの育成 2007 年 11 月 13 日、「福知山市観光ボランティア・ガイド育成に向けたシンポジウム」 を開催した。また、シンポジウムの一環として、開催前日の 11 月 12 日に市内のウォーキ ングツアー「福知山を学ぶ散策会」を開催した。24 名の参加者があり、パネリストの一人 である塩見豊氏の案内による約 4 時間の市内散策を体験した。 シンポジウム開催の背景には、福知山市に観光ガイドの組織がないこと、かねてから観 光者によるガイドの需要が指摘されていたこと、2006 年に実施した「新市観光ツアー」の 調査結果より、ガイドの案内により評価が高まる観光資源が多く確認されたこと、そして、 大江山が国定公園に指定されたことを機にネイチャーガイドの育成が検討されることにな ったことが挙げられる。このため、福知山市におけるボランティア・ガイドの育成や組織 の確立に向けた意見交換をすることを目的としてシンポジウムを開催した。 パネリストに、滋賀県高島市からグリーンウォーカークラブ・ネイチャーガイド研究所 代表取締役の青木繁氏、舞鶴からけやきの会副会長の伊賀原政子氏、福知山在住で京都 SKY 観光ガイド協会中丹支部長の塩見豊氏を迎え、3氏の経験談からガイドや組織の実態、福 知山市が導入する際の課題などの意見交換がなされた。その内容は以下のとおりである。 • ガイドとは 一口にガイドといっても色々な活動がある。スポットガイド、待ち受けガイド、ツアー の企画、バスの中のガイド、また、エコツアーのネイチャーガイド、もしくはインタープ リターなどである。 • 福知山のガイド組織 福知山在住のガイドは、市内に組織がなく、京都 SKY 観光ガイド協会に属している。こ の協会は、京都府内で地域別に9支部に分かれ、福知山は舞鶴、綾部と共に中丹支部にあ る。現在、協会には公的補助が交付されておらず、各支部が独立して運営しており、支部 によってはガイドが有料であるが、福知山班ではボランティアが基本である。福知山班の ガイドは、男性4名、女性6名が所属しているが、全員が 50 歳代から 60 歳代である。ガ イドの活動場所は、福知山城が多いが、市や観光協会の主催による行事やまつりの案内、 ウォーキングガイドなどである。ガイドの養成は、平成 18 年と平成 19 年では、各年 2 名 ずつ行った。養成研修は、22 時間にレポート提出による審査である。 50 今後の課題として、ガイドの高齢化により組織の維持が問題である、運営費の確保のた め行政や観光協会からの支援を受けたい、外国人対応のガイドの養成、などがある。 • 舞鶴のガイド組織 自主的に立ち上げたボランティアガイドの組織「けやきの会」である。平成 19 年 10 月 現在の会員は、男性 6 名、女性 25 名の計 31 名であり、年齢層は 20 歳代から 70 歳代であ る。案内場所や方法が多岐にわたり、引揚記念館やネイチャーガイドが独自の組織を形成 したり、バスの添乗やウォーキング、コース案内やスポットガイド、企画ツアーの実施、 市や観光協会主催の観光キャンペーンへの協力、などがある。養成講座は 8 日間、見習い 制度も導入した。 • グリーンウォーカークラブ・ネイチャーガイド研究所 研究所は有限会社であり、青木繁氏が代表取締役である。会社の業務内容は、自然環境 調査、エコツアーガイド・ネイチャーガイド養成講座の企画・指導、エコツアーの企画・ 指導、自然体験教室の企画・運営、などであり、自然資源を観光資源として生かしながら 観光ガイドの養成もする。青木氏がこの会社を設立した理由の一つに、ガイドのリスクに 注目したことが挙げられる。ガイドは、ボランティアであっても、事故の際に賠償責任が 生じることがある。このため青木氏は、旅行保険が適応できる組織にすることが望ましい とする。また、福知山でガイドの組織を立ち上げる際には、組織に関する基本的な知識や リスクマネージメントの方法などを十分に学び、検討すべきであるとのアドバイスである。 シンポジウムで意見交換がなされた結果、今後の福知山市のボランティア・ガイドの養 成における課題は、 9 幅広い年齢層でのガイドの育成をする 9 外国語対応のガイドを育成する 9 観光案内に十分な知識や「おもてなし」の方法を教授する 9 ガイド養成講座では、リスクマネージメントの知識や方法も教授する 9 ガイドの活動内容を検討する 9 ガイドの組織の立ち上げに向けた検討、および運営支援を検討する などが挙げられる。 51
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