( 3 ) 校内研修モデル ① 校内研修は各学校の状況に合わせた内容や方法 定期教育相談 表2は,定期教育相談の進め方について基礎 で行う必要がある。その参考にするために,いく 編と応用編に分けて示したものである。 つかの研修例を示す。 表2 定期教育相談の進め方 題 定期教育相談の進め方(基礎編) 材 目 的 定期教育相談の進め方(応用編) ・定期教育相談の意味を知る。 ・定期教育相談の応答を体験する。 ・定期教育相談の応答の仕方を身に付ける。 1 1 研修の目的を説明する。 (説明) 2 定期教育相談の模擬面接をする。 定期教育相談の目的を説明する。(説明) ・児童生徒との人間関係を育てる。 ・児童生徒を理解しようとする教員の姿勢を伝える。 2 内 容 実 施 上 の 留 意 点 定期教育相談の場面を見る。(10 分) ・ビデオテープで模擬面接を見る。可能であれば,教 育相談係でデモンストレーションをする。 (5分) 3 シナリオロールプレイングをする。 (1) ウォーミングアップをする。(10 分) ・じゃんけん席替え 次々と相手を変えながらじゃんけんをして,3 回勝った人から順番に席に座る。 (2) シナリオロールプレイングの進め方を聞く。 (5分) ①3人組を作る。 ②生徒役,教師役,観察者を決め,役割を交代して 順番にする。 ③シナリオを読んで,相談場面を体験し,感想を話 し合う。 (3) シナリオロールプレイングをする。(10 分) 図5,図6 (4) 振り返りをする。 (10 分) ①グループで振り返りをする。観察者,教師役,生 徒役の順番でする。 ②全体で振り返る。 (5) まとめをする。(5分) ・生徒の悩みを聞き出そうとすると,あせりやすいので 生徒が悩みを持ったときに「先生に相談してみよう」 と思えるような人間関係をつくることが定期教育相談 の目標であることを共通理解しておく。 ・シナリオはできるだけ,その学校の児童生徒に合わせ たものを作り,現実味を出すようにする。 - 10- (1) ロールプレイングの進め方を説明する。 (10 分) ①3人組を作る。 ②生徒役,教師役,観察者を決め,役割を交代して 順番にする。 ③ロールプレイング゙の後で振り返りをする。 (2) ウォーミングアップをする。 フルーツバスケット (3) ロールプレイングをする。 (10 分) (20 分) (4) 振り返りをする。 (15 分) (5) まとめをする。 (5分) ・ ロールプレイングをするときに,強い抵抗を感じる場 合がある。グループが評価的な場合は,演じた教員を 批判的に見ることがあるので,「良い,悪いというよう なのではなく,見ていて自分はどう感じたとか,私な らこうするかなというように見てください」のように 観察の仕方を説明しておく。 T:担任 S:中学校2年生 場面構成の逐語例 男子生徒 解 T 1「お待ちどうさま。これから 10 分間,話を聞かせてくれるかな。話すこと 時期:6月 説 ・T 1 のように,面接の始めに時間や は友達のこと,勉強のこと,部活動のことなどあなたが話したいことでい 話す内容について,生徒に話してお いですよ。進め方で質問はありませんか」 くのは,生徒の不安を少なくし面接 S 1「特にありません」 が進めやすくなります。このような T 2「はい。さあ,何から話していこうか」 面接についての説明を,事前に帰り S 2「別にありません」 の会等で生徒全員に説明しておけば T 3「そうですか。この前の定期教育相談の事前アンケートに,進路のことが気 面接はじめの説明は省略できます。 になると書いてありましたが,詳しく教えてくれませんか」 S 3「あれは,何か書かないといけないと思って書いたけで,別に大したことで はありません」 T 4「そう,では,残りの時間をどうやって過ごそうかな。趣味の話をしようか」 ・ 生徒の悩みを聞こうとしています S 4「はい,いいですよ」 が,生徒には差し迫った問題はあり T 5「あなたは,釣りが趣味だったよな。最近釣りに行ったの」 ません。このようなときには,T 4 S 5「はあ,先週の日曜日にバス釣りに行きました」 のように教員から質問をして,趣味 T 6「そう,どうだったの」 や休日の過ごし方などを聞いてみる S 6「それが,ぜんぜん釣れなくて」 のもよい。ただ,詰問調にならない T 7「それは残念だったな。だれかと一緒にいくの」 ように気を付ける。 S 7「はい,友達と二人で行きました」 ( 後 略 ) 図5 定期教育相談シナリオロールプレイング例(場面構成) T:担任 S:中学校1年生 開かれた質問の逐語例 女子生徒 解 T 1「何か話したいことはありませんか」 時期:11 月 説 ・生徒から話が出ない場合は,教員か S 1「ありません」 ら質問をすることが多くなります。 T 2「そう,では先生から尋ねてみましょうか。最近勉強はどうですか」 その時にT 2 のように,「はい」「い S 2「少し分かりにくい教科があります」 いえ」で答えられないような開かれ T 3「というと」 た質問をすると,生徒が勉強に関し S 3「数学が苦手なんです。勉強方法が分からなくて不安なんです」 て話したいことを話しやすくなりま T 4「そうか,不安なんだな。どうするかな」 す。 S 4「勉強方法を数学の先生に聞きたいんですが,職員室には入りにくくて」 T 5「なるほど,入りにくいか。数学の先生に声を掛けやすいときはないかな」 ・今回は学習方法に関する相談ですか S 5「ううん」 ら,T 5 のように具体的な対策を共 T 6「授業が終わって,教室を出るときに声を掛けてみたらどうかな」 に考えていくという面接が必要でし S 6「できるかどうか分からないけど」 ょう。このように,生徒のニーズを T 7「うまくいかなかったら,また一緒に考えましょう」 把握して,又は把握しようとして相 S 7「そうしてみます」 談を進めることが大切です。 ( 後 略 ) 図6 定期教育相談シナリオロールプレイング例(開かれた質問) - 11- ② 人間関係づくり 表3は人間関係づくりについて,基礎編と 表3 応用編に分けて示したものである。 人間関係づくり 題 材 人間関係づくり(基礎編) 目 ・構成的グループ・エンカウンターの進め方を知る。 的 ・構成的グループ・エンカウンターを体験する。 1 研修の目的を説明する。(説明) 人間関係づくり(応用編) 構成的グループ・エンカウンターの進め方を身に付ける。 (5分) 1 研修の目的を説明する。(説明) (5分) 2 構成的グループ・エンカウンターについて説明する。 2 (講義)(30 分) 内 3 構成的グループ・エンカウンターを体験する。 (1)「ドリームズ (50 分) ①今の自分の気分を5段階で表す。 ③1番の人が将来したいことを3分間話す。 ②自分の気分を相手に話す。 ④向かいで聞いていた人が,感想を簡単に伝える。 ⑤2,3,4番の人が同じように話し,向かいの人が ①自分で自分をどう見ているか,表の中から三つ選ん 感想を伝える。 でワークシートに書く。 ・聞く人は,話す人が話しやすいように相づちを打っ ②グループの他の人をどう見るか表の中から三つ選ん たり,簡単な質問をしながら聞く。 でワークシートに書く。 ⑥感想を話し合う。 ③他の人が自分に書いてくれたことをワークシートに 書き写す。 3 構成的グループ・エンカウンターの内容や進め方について協議 (3) 振り返りをする。 (10 分) 4 (5分) まとめをする。 をする。(15 分) ・「今日の私の気分は5段階の4なんです。それは,今日 上 の (2) 「色紙でうふふ」(図8) (3) 振り返りをする。 ④感想を話し合う。 施 トゥルー」(4人組) ②話す順番を決める。 (2)「私はどんな人」(図7)(4人組) 実 カム ①自分が将来したいことを思い浮かべる。 (1)「今日の気分はいかが」(2人組) 容 構成的グループ・エンカウンターを体験する。(70 分) ・秘密の保持を確認する。 の校内研修のために,準備をして張り切ってやってい 「これからこの部屋で話された内容は,部屋の外で話 るからです」のように,リーダーは,自分のことを例 題にしないでください」と説明して、安心して話せる に出して説明する。そうすることで,参加者が自分の ようにする。 ことを語りやすくなる。 ・話さない自由を保障する。 ・振り返りで「何か温かい気分です」というような感想 「話すことに対して,強い抵抗が起こったら無理をし が出たら「それは,グループのメンバーとの交流が深 すぎないでください。その時は,見学という形で参加 まったからでしょう」などとコメントをし,体験した してください」と説明して,無理に話して傷付かない ことの意味付けをする。 ようにする。 ・リーダーが自己を開く。 留 「私が将来したいことは,本を書くことです」のよう 意 やすくする。 に,リーダーが自分のことを例示して,参加者が話し ・参加者の様子を丁寧に見る。 点 話しているときの表情や態度から,参加者が不快な思 いをしていないかどうか観察する。不快な思いをして いる参加者がいた場合は,振り返りの中で対応するか, 演習後個別に対応する。 - 12- 私はどんな人 1冷静 2楽しい 3やさしい 4知的 5親切 6 まじめ 7個性的 8正直 9素朴 11 積極的 12 頼れる 13 温かい 14 活動的 15 落ち着いている 16 明るい 17 誠実 私が選んだメンバーの特徴 メンバーの名前 図7 10 純粋 メンバーが選んだ私の特徴 「私はどんな人」ワークシート 1 目的 3 対象者 自己表現を促進する。自己肯定感を高める。 小学生高学年,中学生,高校生 大学生,教職員 2 概要 4 実施時間 ① グループ分けに必要なだけの色紙を用意する。 (例:4人グループを三つ作る場合は,3色を各4枚ずつ用意する) 全体で50分程度 ② グループ分けをする。 セールスポイント 好きな色紙を取り,同じ色で集まる。 ③ その色を選んだ理由を話す。(3分) 1 ④ 色紙を4等分に折り自分のことを書く。( , 5 分) 2 改善点 1 3 ・中央に自分の名前 前 メンバーからの感想 ・左上に自分のセールスポイントを三つ 筆記用具,色紙セット 6 手続きや教示のポイント 名 ・右上に自分の改善したいところを一つ 5 準備物 ① リーダーが例示をする。 ② テンポよく進行する。 ③ 色紙に書いたことを基に,自分を語る。 7 振り返りの方法 (3分×4= 12 分) ④ グループの他のメンバーに肯定的な感想を書く。(5分) ・アンケートをする。 ⑤ メンバーが書いてくれた感想を見て,この演習の感想を言う。 (5分) ・グループの代表が発表する。 図8 「色紙でうふふ」展開例 - 13- ③ 不登校 表4は不登校について,基礎編と応用編に分け 表4 て示したものである。 不登校 題 材 不登校(基礎編) 不登校(応用編) 目 ・不登校のタイプについて知る。 ・不登校の理解を深める。 的 ・基礎的な対応の仕方を知る。 ・対応の検討する。 1 研修の目的を説明する。(説明) 2 不登校について説明する 。(講義) 内 (5分) 1 研修の目的を説明する。(説明) (55 分) 2 事例研究をする。 (1) 不登校のタイプや対応について ( 1) 事例研究の意義や進め方について説明する。 岡山県教育センター「教育相談の手引き」不登校 (5分) 小学校編を利用する。 (2 ) 事例提供者が事例の説明をする。 (2) 質疑応答をする 3 不登校の対応を考える。(協議) 容 (5分) (3 ) 事例について質疑応答をする。 (30 分) ( 20 分) (10 分) (4 ) 各自の考えを事例研究用記録カード(図 10 )に ・事例(図9)を基に対策を考える。 記入する。 (10 分) (5 ) 4∼5人グループで話し合いをする。(10 分) ・タイプ分けの効用と限界を説明する。 実 施 の 意 点 (7 ) まとめをする。 (10 分) タイプ分けは,不登校の理解や対応の目安を得るた ってかかわっている教員が元気が出るように配慮す めに,何らかの特徴を基に共通性を集めたものである 。 ることが大切である。そのためには,その事例から 「このタイプの児童生徒には,この対応方法に限る」 参加者が何を学ぶことができるか,今後他の教員が と一方的に決めてしまうのではなく,タイプ別の対応 どのように連携することができるかなどについて話 を参考にして、目の前の児童生徒に適した指導・援助 し合うとよい。 方法を考えていく必要がある。 ・事例研究の時間が十分取れないときには,資料を事 前に配布するなどの工夫をする。 事例の対応を考えるときに,4,5人のグループで ・事例研究では,進行役が大切なので,事前に教育相 話し合うようにして,発言の機会を増やし,受け身の 談係などでミニ事例研究会をしておくと,ゆとりを 研修にならないようにする。 持って進行できる。 ・登校刺激について丁寧に説明する。 留 (20 分) ・進行中の事例を検討するときには,事例に中心にな ・グループでの話し合いを取り入れる。 上 (6 ) 全体で話し合いをする。 ・学校が事例研究に不慣れな場合は,適切な外部講師 登校刺激は不登校の初期や回復期には有効な場合が を招いて,進め方も含めて研修をするとよい。 あるが,刺激を与える時期が適切でなかったり,強す ・全員が事例研究会に参加することが難しい場合には , ぎたりした場合は,すくみ反応が出る場合がある。登 その事例に関係している学年主任,担任,教育相談 校刺激を与える場合は,児童生徒の反応を見ながら慎 係,生徒指導主事,養護教諭などの教員だけで,適 重に行うことが大切である。 宜,事例検討会をするとよい。その時には,会のま とめ役を決めておくことが大切である。また図 11 に 示した援助チームシートを利用すると,より具体的 な対応を考えることができる。 - 14- 小学校6年生 A子 参 考 に な る 指 導 ・ 援 助 方 法 A子は,両親と祖父母に甘やかされて育ち,嫌いなことに我慢して 取り組むことはほとんどなかった。理解力はあるが学習意欲がなく, 小学校1年生から4年生1学期までたびたび登校をしぶり,母親が引 っ張って行ったり,担任や友人が朝迎えに行ったりして登校した。し かし,4年生の2学期から全く登校しなくなった。家には不登校の中 学生の兄もいて,祖母は登校したがらないA子や兄に「学校なんて無 理に行かなくてもいい」と言った。A子も兄も起きたいときに起き, 食べたいときに食べて,テレビやビデオや漫画を見ていた。A子は祖 母とトランプをすることもあった。母親は兄が不登校になった時に, 学校の強い勧めで母親だけ教育センターへ何回か通ったが,兄の状況 が一向に改善しないし,家の仕事も忙しいので教育センターへ通うの をやめてしまった。その後は両親とも「そのうち,なんとかなる」と いう気持ちになり,子どもたちに登校を促すことはなかった。A子は 時々家庭訪問をした担任にも友人にも会おうとはしなかった。5年生 の学年末に,母親は3日間ほどA子を無理やり車に乗せて学校に連れ て行ったが,A子は車から降りようとしなかった。A子は6年生にな っても家で気ままに過ごし,休日には母親に車を運転させて自分の行 きたい場所へ出かけるという状況であった。 (生徒指導資料第 22 集 「登校拒否への取組について−小学校・中学 校編」 平成9年3月 文部省) 図9 1 2 3 改善が考られる指導・援助方法 方 法 だれが いつ どこで 具体的な支援内容 1 2 3 図10 不登校の事例 事例研究用記録カード 石隈・田村式【援助チームシート】 実施日 : 年 月 日( ) 時 次回予定: 年 月 日( ) 時 出席者名( 児 童 生 徒 名 学習面 心理・社会面 年 組 (学習状況)(学習意(情操面)(人間関係) 氏名 欲)(学習スキルや学 (ストレス対処法)な 習スタイル)など ど 心 A 理 児童生徒の自助資源,環 教 境(学校,家庭,地域な 育 ど)の援助資源 的 B ア 援助が必要なところ セ ス メ C ン 今まで行った,今行って ト いる援助とその結果 これからの援助で何を行 うか 援 だれが行うか 助 いつからいつまで行うか 緊急連絡先 図11 援助チームシート - 15- 分∼ 分∼ 時分 時分 第 第 回 回 ) 進路面 (得意なことや趣味) ( 将 来 の 夢 や 計 画 ) (進路希望)など
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