わがまちの生涯学習

わがまちの生涯学習
わがまちの生涯学習
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富良野市における青年活動の再生に向けた取り組み
~
1.はじめに
いつの時代であっても、大人にとって、青年たちはどこか物足りない、そしてもどかしさを覚え
る存在である。「何を考えているかわからない」「もっとしっかりして欲しい」などという大人の叱
咤や嘆きに反抗して、青年たちは新しい価値観を切り開こうとしてきた。
しかし、近年「青年問題」が話題になるとき、これまでとは違う、いわゆる社会の焦りがあるよ
うに思う。「少子高齢化」「フリーター」「ニート」「若者の引きこもり」などの青年を取り巻く問題
が社会問題として急浮上しており、あらためて青年に対する公的支援の必要性が増大してきている。
また、社会教育の現場においては、青年団活動が地域社会の崩壊とともに大きく停滞している現状
や青年学級振興法が平成11年に廃止されたことなどにも起因して、青年の活動する姿がほとんど
見られなくなってきているのが現状である。
しかし、市民参加によるまちづくりへの関心が高まっている中、これからのまちづくりを担って
いく青年層の人材育成は必要不可欠であり、社会教育の現場においても、不登校、引きこもり、ニ
ートなど青年たちが自立できない昨今の状況を考えれば、青年教育活動はますます必要となってく
るのではないかと思われる。
ここでは、富良野市の社会教育現場における青年活動の再生に向けた取り組みと、これからの青
年教育のあり方について考えてみたい。
2.富良野市における
富良野市における青年活動
における青年活動の
青年活動の現状
人口2万5千人ほどの富良野市では、かつて青年団活動が盛んであった。富良野市青年団体協議
会(以下、富青協)が昭和41年に発足以降、「青年の生活を高める」ことを目的に、様々な活動を
通して「地域づくり、仲間づくり、人づくり」への運動を展開しながら、自分たちの現状や社会情
勢に即応した諸問題の解決に向けて運動を積み上げてきた。そして、その青年団活動の中心的メン
バーやOBの多くが、まちづくりの担い手になってきた。
しかし、青年団員の激減、構成団体の中心であった単位団の活動休止、基幹産業が農業というこ
ともあって青年団が農業従事者主体の組織であったことや、個々人の意識の変化、さらに、青年の
組織活動に対する意欲・意識が非常に希薄になってきたことから、その活動も徐々に停滞し、現在
では青年団活動は壊滅状況である。
その一方では職業別の青年組織での活動や、趣味やスポーツなどのグループ活動は活発に継続さ
れているのが、現在の富良野市における青年活動の現状である。
ただ、趣味嗜好別の青年活動が主体となってきていることから、地域での青年自体のつながりが
薄れ、青年の活動範囲も学校や職場が中心となり、青年同士が交流できる場が限定され、いろんな
世代や立場の人との交流の場が次第に失われてきているように感じている。
このような現状において、これからは、市内の青年団体はそれぞれの活動の活性化や拡大をめざ
したネットワークの構築、行政の支援としては青年の生活実情やニーズに応える学習機会を提供し
ながらその充実に努め、彼らが自発的に企画・運営ができるよう、その体制づくりをサポートする
ことが必要であると考える。
さらに、ボランティア活動を始め多面的な社会的活動への積極的な参加も促し、街づくりの担い
手としての意識を高めていくことにつなげていきたい。
3.高校生ボランティア
高校生ボランティアから
ボランティアから青年
から青年ボランティア
青年ボランティアへ
ボランティアへ
現在、富良野市では子ども会育成連絡協議会と連携しながら、地域社会の教育力の1つとしての
高校生ボランティアの育成に力をいれている。平成2年3月に高校生4名で「富良野市青少年サー
クルね~びる」を結成。以来、公民館や子ども会でのボランティアを中心に、地域のさまざまな年
齢層とかかわり合いながら、自発的な活動を実践してきた。現在、メンバーは20名。子ども会で
のシニアリーダーとしての活動や、清掃活動、一人暮らしの老人世帯を対象にした冬期間の窓のビ
ニール張りのボランティア、さらには、各町内会や子ども会への遊びの出前などの活動に取り組ん
でいる。高校生が地域の子どもたちにとって頼れるお兄さん、お姉さんとしての役割を果たし、地
域の人から必要とされるサークルを目指している。まさに若者自身の手による地域貢献活動の芽生
えが感じられる。
そして、サークル結成して16年が経過し、サークルも160名ほどになり、地元に就職したり、
Uターンで地元に戻ってくる青年も徐々に増え始めてきた。
今回の試みでは、高校時代にボランティア活動の経験があるサークルOBたちへ声かけて、青年
ボランティアサークルの立ち上げを計画し、行政としては環境づくりから始めていこうと考えた。
青年活動、公民館のイメージとくれば、堅苦しい・暗い・面倒だ、そういって敬遠されてしまいそ
うではあるが、まずは、高校生ボランティアでの活動の下地がある青年たちへのアプローチが有効
な手段だと考えた。
そして、平成18年6月、8名の青年が集まり青年ボランティア「一寸奉仕(いっすんぼうし)」
が設立された。ただ、あくまでも活動主体は青年自身であり、そのきっかけづくり、環境づくりは
行政が行わないといけない、担当者は黒子に徹して援助していくことを心がけている。
4.具体的な
具体的な取り組み ~サークル発足
サークル発足までの
発足までの経過
までの経過~
経過~
①担当職員の研修
・社会教育課、公民館職員の意識改革(地域活動への参加がいかに大切かなどの理解)
・やはり青年活動の再生化のカギを握るのは公民館職員。
②アンケート調査などによる現状把握(既存の青年組織、サークルなど)
③公民館事業やボランティアへの参画をねらいとして青年への働きかけ
・活動の場の提供(青少年向けの体験講座などへボランティアスタッフ、青年自らが参加できる
講座・イベントの企画・運営、イベントの託児や子どもたちへのあそびの指導・補助)
■青年ボランティアサークル「一寸奉仕(
一寸奉仕(いっすんぼうし)
いっすんぼうし)」設立趣旨
空いた時間を使って簡単なボランティア活動をしてみたい、何かボランティア活動をやってみたいけ
どきっかけが無い!また、サークルに入って皆でわいわい行事をやってみたい、と考えている若者でサ
ークルを立ち上げました。みんなでワイワイボランティアし、
「知識」
「技術」
「仲間」を得るのが目的
です。ようは楽しみながら、さらに成長しようということです。
青年ボランティアなので、もちろん若い人たちが中心になって活動していきます。ボランティア活動
を行っていくためにも、まず、参加するメンバーが元気で明るくなければと思います。それが一番大切
なのではないかと、メンバーは考えています。ボランティアに参加すると、変に力んだりしないで、自
然に活動できたら・・・・。それにはまず、メンバー1人1人が楽しい気持ちで参加することが大切で
はないかと思います。
若い青年層ならではの、機敏なフットワークと柔軟な発想を活かし、既存のものにとらわれず、新た
な活動ジャンルまでも開拓する、こんな活動になっていけばと思います。
『明るく』
・
『元気に』
・
『楽し
く』これを一寸奉仕のモットーに、自分たちの地域に根ざした活動を目指し、
「自分たちの暮らす街を
よくしていきたい!」と考えています。
5.青年への
青年への働
への働きかけの課題及
きかけの課題及び
課題及びステップ
○青年への働きかけは、地域の公民館に出入りしている青年や、高校生ボランティア経験者を中心に取
り組む。
○青年教育担当職員の配置とその職員が青年との信頼関係をつくる。
○その中で、いかに青年の目を活動に向けさせるか。
○目の向いた青年をいかにして地域活動につなげ、青年活動を組織化していくか。
○その中で、地域課題や青年の生活課題に気づかせ、解決に向けての取り組みにつなげていくか。
○そのような青年たちをいかにして地域に根ざした青年自身の主体的活動につなげ、青年自身の生活向
上につなげていくか。
○そうしてできあがった青年組織をどう他の青年団体とネットワークしていくか。
○市全体の組織の再構築。
6.目指す
目指す効果
今の若者(青年)たちは、複雑になる現代社会の影響をもろに受け、多くの課題を抱えながら生
活しているのではないだろうか。そのような状況であるからこそ、青年がいろいろな人達との交流
を図り、そこから刺激を受け、仲間とともに地域に根ざした活動をしていくことは、青年自身の生
活を充実させ、青年に夢と希望を与えることにつながっていくのではないかと考えている。そして、
地域に根ざした活動を通じ、青年自身が「自分たちの暮らす地域をよくしていきたい。」という考え
のもと、自発性や主体性を培うことができ、青年が地域づくりの原動力になることを目指していき
たい。
7.青年活動の
青年活動の現況と
現況と考えられる推進方策
えられる推進方策
平成18年6月に青年ボランティアの活動を開始してからまだ7ヶ月。これまでの活動は公民館
での活動を中心に、公民館フェスティバルへの協力、託児ボランティア、子ども会リーダー養成事
業への協力、成人式などにおいてボランティア活動を行ってきた。活動の内容としていえば、まだ
まだ行政へのお手伝い的な雰囲気はあるものの、活動自体が市民に広く認知されるためにはまだ相
当の時間がかかると思われることから、地道な活動ではあるが、住民認知を早めるためのあらゆる
努力を粘り強く続ける必要がある。また、活動している青年には、活動をとおしての達成感や自身
をつけさせること、継続して活動することで発生するメリットづくり、主体性・自主性を発揮でき
るように環境を整えることなどを行政としてフォローしていく必要があろう。
ただ、ここで注意しなければならないのは、活動の場所を提供することは良いのだが、それが当
たり前の状態にならないことである。あくまでも行政はお手伝い(黒子)である。
青年活動の再生に必要なのは、活動における明確なコンセプトを持つことだと思う。青年活動を
考えるときに「青年団」の問題のみに目を奪われがちであった。今回の取り組みの中では「地域活
動への参画」「青少年活動に対する支援」などをキーワードにボランティアを通して青年たちのやる
気を喚起させたいと考えている。
特に、今回の取り組みにあたり考えたのは、青年活動の活性化には、その該当となる年齢層のみ
にスポットを当て活動を促すのではなく、小中学校・高校から下地を作り青年の活動につなげてい
く必要があるということである。青年活動の活性化ということで、今までは青年層のみしか見てい
なかった行政担当者の反省点をふまえ、今後は、富良野市の青年活動の再生に向けて、小学・中学
校での子ども会活動そして高校時代におけるボランティア活動の経験を、地域に根ざした青年活動
へと発展させる仕組みづくりをどう進めるかということに着目し、社会教育における青年教育を考
えていきたい。
■青年組織再生に向けた活動計画(イメージ図)
勧誘・発掘
ノウハウの構築・達成感
地域での活動を推進
イベント参画
目的別サークル
青年ボランティア登録
青年個人
○
研修
○
○
○
○
○
○
地域活動
○
○
○
○
情報提供
○
声かけ
場の提供
○
○
ネットワーク
の支援
○
○
ひとつの
集団へ
集団へ
※事業への参画を通して、組織化を検討したい。
8.おわりに
これからは、地域に根ざした活動が一層求められる時代。地域力、地域コミュニティーの構築が
必要とされていくであろう。その担い手となる青年層の人づくりは、これからのまちづくりにとっ
ては避けて通れない問題である。そのような時代の中で、不登校、ひきこもり、ニートなど青年た
ちが自立できない昨今の状況を考えれば、社会教育での青年教育活動はますます必要となってくる。
青年たちに対して、自己変容のきっかけを作り出していくこと、はじめの一歩を踏み出させるこ
となど、青年たちが何かを学習することに対して行政として仕掛けをつくりだすこと、フォローし
ていくこと、自信をつけさせることといった、一連の流れを社会教育担当者が考えていく必要があ
るのではないだろうか。
その中から青年自らが、何かに対してプロデユースする力、コーディネートする力などを身につ
けつつ、地域活動に参画していくことができればよいのではないかと思うのである。
今回の取り組みから学んだことは、社会教育担当者が計画的かつ系統的に青年教育の意義や援助
方策について研修・取り組みを進めて、あくまでも、青年主体に事業を展開していかなければ活動
は継続していかないということである。