クラウドでのシミュレーション: シミュレーション普及へ の道

クラウドでのシミュレーション: シミュレーション普及へ
の道
CIMdata Commentary
要点:

Autodesk Simulation 360 は、クラウドベースのシミュレーションを効果的に実現する、他に
類のないソリューションです。

革新的なデリバリーと低い導入コストは、より広範なユーザおよび企業へのシミュレーションの
普及を後押しします。

クラウドは、シミュレーション リソースを提供するための簡単かつコスト効率の高い方法です。

一部のシミュレーションにおいては、非常に使用頻度の高い、社内のコンピューティング リ
ソースが引き続き必要とされるでしょう。
企業が製品開発を完全なデジタルへと移行する動きに伴い、シミュレーションの重要性が高まってき
ています。開発時間、コスト、品質において、デジタル プロトタイプを使用した性能評価には非常に大
きな見返りがあります。このため、企業は設計プロセスの初期にシミュレーションを使用して設計プロ
セスを開発、検討、評価する「シミュレーション主導の設計」に移行しています。これらの企業の多くが
シミュレーションの普及を望んでおり、シミュレーションを広め、製品開発プロセスに統合させて、より
幅広いユーザが利用できるようになってほしいと考えています。そのためには、複雑性(使いやすさ、
IT の統合、カスタム コンピューティング リソースなど)、アクセスしやすさ、コストなどの障害を乗り越え
る必要があります。CIMdata は、小規模な企業において、これらの障害がシミュレーション導入の妨
げになっていると考えています。通常、規模の小さい企業には、シミュレーション用の HPC (高性能コ
ンピューティング)クラスタなどの IT インフラストラクチャを入手、管理するためのリソースおよび専門
知識がありません。加えて、十分な量の作業がない場合があり、ソフトウェア ライセンスおよびコン
ピュータ リソースの利用度が低くなって、全体的な IT のコストが高くつくことになります。
リモート リソースをシミュレーションに使用するのが本当に適切なことかどうか、懐疑的な企業もありま
す。そのため、数十年にわたり、シミュレーションへのリモート ソリューションの導入は普及しませんでし
た。1980 年代は、顧客は自前のリソースを用意したため、サービス業のビジネスは成立しませんでした。
1990 年代には、国立のスーパーコンピューティング施設の容量を購入した企業もありましたが、それも
減少しました。グリッド コンピューティング、SaaS (サース、Software as a Service)といった、(一時的な
流行を見せた)その他のテクノロジー トレンドは、日常的に使えるシミュレーション リソースの提供という
観点では見るべき成果がありませんでした。リモート シミレーションの実現に向けた初期の試みが失敗
に終わったのは、シミュレーションに必要な大量の情報やデータ セットをパーッケージ化するのことの困
難さ、シミュレーションの入出力データをネットワーク上で移動するコストと性能、専用のリモート コン
ピューティング リソースのコスト、リモートで情報やシミュレーション プロセスをコントロールすることをシ
ミュレーション アナリストに求めるのには無理がある、といった障害があったのです。しかし今、私たちに
はクラウドがあります。「今までと何が違うのだ?」と疑問に思う人もいるでしょう。
インターネットとクラウド テクノロジー、およびその関連コストは、ここ数年で劇的に変化しました。ホス
トされている HPC はグリッド、並列、リンクされたマイクロプロセッサ システムを使用しており、従来の
ソリューションと比較すると、わずかなコストで非常に高い演算能力を提供します。ネットワークは飛躍
的に高速になり、ユーザの作業ツール(デスクトップまたはノートブック コンピュータ)と HPC との間で、
シミュレーション関連の大規模なファイルやその他のデータを迅速かつ非常にセキュアに転送できます。
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オートデスクは、クラウドを介したシミュレーションを提供するために設計された Autodesk Simulation
360 を発売しました。Autodesk Simulation 360 は、シミュレーションのためのリモート リソースを入
手および使用する複雑さと、導入コストを軽減します。簡単にまとめると、シミュレーション アナリストお
よびシミュレーションに不慣れな人のどちらにも、コスト効率が高く、利用しやすい、「使った分だけ支
払う従量制」のリソースです。使用量は、ソリューションを実行する時に消費される「クラウド ユニット」
によって管理されます。使用量はジョブ単位でカウントされ、ジョブのサイズやシミュレーション時間
(CPU 時間)には関係ありません。Autodesk Simulation 360 のメリットは、クラウドベースだという点
ではなく、シミュレーションをより広範に使用する際の導入障壁を大幅に低くできることです。企業は簡
単にシミュレーション リソースにアクセスでき、リソース(コンピュータ クラスタなど)のローカル インフラ
ストラクチャに追加投資する必要がありません。
オートデスクのビジョンは、「常時稼働」のシミュレーションを可能して、それを設計の開発中に指針とし
て使用できるようにすることです。 1 幅広いユーザ向けに、シミュレーション機能の普及への意欲を示
す革新的なツールを提供しています。たとえば、Autodesk ForceEffect Motion 2 は、構造の静的解
析および機構の運動学的解析のための iPad アプリケーションです。Project Falcon3 は、ほとんどの
モデリング システムで生成されるオープン フォーマット(STL)のジオメトリを利用できる風洞シミュレー
タです。
Autodesk Simulation 360 には、静的応力および線形動的解析のための FEA ツール、メカニカル イ
ベント シミュレーション、流体流れおよび熱シミュレーションのための CFD (数値流体力学)ツールなど、
オートデスクのメカニカル シミュレーション ポートフォリオの大半の機能が含まれます。Simulation
360 バンドルには、デスクトップ ライセンスとクラウド アクセスが含まれており、どちらからでも実行可
能です。
オートデスクは、「Autodesk Simulation 360 は設計アプリケーションを補完して、シミュレーションを
早期かつ頻繁に行い、設計性能の予測、最適化を可能にする」としています。そのため、Autodesk
Simulation 360 は Moldflow、CFD、Mechanical といった、オートデスクのデスクトップ シミュレー
ション アプリケーションとの統合性にも優れています。前処理および後処理は、ユーザのローカル
ワークステーションで行われます。実際のシミュレーションが実行されるのがローカルとクラウドのどち
らであっても、ワークフローには実質的な違いは何もありません。重要なのは、クラウドでシミュレー
ションを実行すると、ローカル リソースを消費せず、設計者は引き続き別の作業を自由に行えるという
点です。またオートデスクは、拡張性の向上についても言及しています。ローカル ワークステーション
ではシミュレーションを順次実行する必要があるのに対して、クラウドでは複数のシミュレーション(た
とえば最適化のためのシミュレーション)を並行して実行できます。注目すべきは、ロード バランスや
ジョブ送信用のアプリケーションが必要ないことです。オートデスクのクラウドの実装は、ほとんどの企
業の社内コンピュータ クラスタのインタフェースよりも、ユーザにとって非常にシンプルで分かりやすい
ものとなっています。デスクトップ用シンクライアントのインストールも非常に簡単で、設定のセットアッ
プは不要です。
データ セキュリティを重要視し、企業のファイアウォール外でのデータのやり取りを許可していない企
業もあります。オートデスクは、ISO 27001 に準拠した方法で、セキュリティの問題に対処しています。
ユーザ データはクラウドに保存されず、データ転送の際は CAE データを暗号化して転送します。これ
により、データおよび IP のセキュリティを強化でき、エンド ユーザの手間は最低限に抑えることができ
ます。さらに、ライセンスの付与と使用のコンプライアンスはシステム側で管理され、ユーザの側に配
慮の必要はありません。CIMdata は、Autodesk Simulation 360 が提供するセキュリティ レベルに、
多くの企業が満足すると考えています。e コマースと同様、データ セキュリティに関する懸念は、時間
や経験とともに緩和されていくでしょう。
1
CIMdata ホワイト ペーパー。『Breaking Down the Barriers to Simulation: Autodesk Broadens Simulation
Offerings』(2012 年 3 月)は、
https://plmforesight.cimdata.com/download/index.cfm?download=BreakingDownBarriers&company= からダ
ウンロードできます。
2
詳細は、http://itunes.apple.com/us/app/autodesk-forceeffect-motion/id512045820?mt=8 をご覧ください。
3
詳細は、http://labs.autodesk.com/utilities/falcon をご覧ください。
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その他の導入障壁としては、総コスト、データ転送時間、特別なコンピューティング リソースの必要性
の問題があります。コストは今後、ユーザによって評価される必要があるでしょう。確実に、Autodesk
Simulation 360 は導入コストの障壁を低くします。ビジネス ケース(投資対効果検討書)は、企業が独
自のリソースを準備するのにかかるコストだけでなく、ハードウェアおよびソフトウェア両方の稼働率に
も左右されます。シミュレーションへの先行投資を削減することで、オートデスクは顧客の財務リスクを
減らし、シミュレーションの使用による見返りを迅速に得られるようにしています。
クラウドでのシミュレーションの導入を妨げている別の要因は、ファイル サイズと、専用のコンピュー
ティング リソースの必要性です。シミュレーションの出力ファイルは非常に大きい場合が多く、通常は
10 GB を超えるサイズになるでしょう。このサイズのファイルを(パブリックネットワークを介して)常時
転送するのは不可能です。また、テクニカル コンピューティングに使用される HPC マシンやコン
ピュータ クラスタのほとんどは、特定の用途に専用化されたもので、一般用途のリソースではありませ
ん。これら 2 つの要因が、クラウドで実行できるシミュレーションのサイズを実際的に制限しています。
Autodesk Simulation 360 は引き続き、あらゆる規模の企業にとってシミュレーションをもっと利用し
やすいものにするという、オートデスクの取り組みを推し進めており、 顧客にとっては興味深く、革新
的なオプションとなっています。オートデスクは、エンジニアリング ソフトウェアのデリバリー モデルは
クラウドによって変革されると確信しています。その変化はソーシャル ビジネス コラボレーションやモ
バイル性のトレンドおよびユーザの要件によって加速されるでしょう。一方で、大企業は社内リソース
(コンピュータ クラスタや HPC クラウドなど)を持ち、それを高い使用率で活用する傾向にあります。
CIMdata は、Autodesk Simulation 360 をそのようなリソースの代替とは考えていません。
Autodesk Simulation 360 は、クラウドでのシミュレーション機能が適度に網羅されたスイートを提供
します。オートデスクはそれを十分に統合された形で実現し、リモート リソースを使用してシミュレー
ションを行う際の複雑さを解消します。価格やセットアップの複雑さという面での導入障壁は、大幅に
低減されます。幅広い企業およびエンド ユーザがシミュレーション リソースを容易に利用することを可
能にし、経済的にも魅力的なバリュー プロポジションを提供する Autodesk Simulation 360 は、シ
ミュレーションを普及させる可能性を秘めています。
Autodesk Simulation 360 は、シミュレーションを幅広く活用し、製品設計および開発の早い段階でよ
り多くのシミュレーションを行う必要のある企業に適したソリューションです。シミュレーションおよび解
析のニーズへの投資やサポート リソースが限られている企業にとっては、特に魅力的な製品です。
CIMdata について
CIMdata は、企業の能力を最大限に引き出し、製品ライフサイクル管理(PLM)を利用して革新的な製
品やサービスを設計、提供するための戦略的管理コンサルティングを提供する世界的な独立企業です。
CIMdata は、PLM に関する世界最高レベルの知識、専門技術、ベストプラクティス手法を提供します。
また、リサーチ、購読サービスの提供、出版物の製作、国際会議を利用した教育なども行っています。
CIMdata のサービスについての詳細は、Web サイト(http://www.CIMdata.com)をご覧いただくか、
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495.533.666)にお問い合わせください。
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