プラント・エンジニアリング業界における 3次元計測の活用状況

プラントエンジニアリング業界における
3次元計測の活用状況
2016年6月1日
SPAR2016J 第12回
3次元計測フォーラム
ENN編集長
丸田
敬
ENN(エンジニアリング・ネットワーク)誌
エンジニアリングITオンライン
www.enn-net.com/
Today’s Agendas
 プラントエンジニアリング業界における3次元計測・クラウド環境の利用実態
 進化するCADベンダー各社の3次元計測関連ソリューション
プラントエンジニアリング業界における
3次元計測・クラウド環境の利用実態
2016年2月25日号 掲載
エンジニアリングITアンケート
 59社61事業部から回答
 回答企業
IHI/旭化成エンジニアリング/出光エンジニアリング/荏原環境プラント/エム・エ
ム ブリッジ/オーインテル/鹿島建設/川崎重工業(プラント・環境カンパニー)/木村
化工機/クラレエンジニアリング/神戸製鋼所/コスモエンジニアリング/ササクラ/山
九/サンユテクノスプラントエンジニアズ/JXエンジニアリング/JNCエンジニアリ
ング/JFEエンジニアリング/清水建設/新興プランテック/新日鉄住金エンジニアリ
ング/水ing/スチールプランテック/住友ケミカルエンジニアリング/住友重機械エン
バイロメント/住友重機械工業/住友重機械プロセス機器/第一高周波工業/大成建設/
太平洋エンジニアリング/高田工業所/タクマ/竹中工務店/千代田化工建設/千代田工
商/千代田テクノエース/月島機械/テックプロジェクトサービス/東芝(火力・水力事
業本部、京浜事業所、原子力事業部)/東芝プラントシステム/東洋エンジニアリング/
東レエンジニアリング/巴鉄工/日揮/日揮プラントイノベーション/日鉄住金パイプラ
イン&エンジニアリング/日本製鋼所/日立造船/富士電機/富士古河E&C/プライメ
タルズテクノロジーズ/三井造船/三井造船環境エンジニアリング/三井造船プラントエ
ンジニアリング/三菱化学エンジニアリング/三菱重工環境・化学プラントエンジニアリ
ング/三菱重工業/三菱電機/ワシノ機器(50音順)
Q1.3次元レーザースキャナーでは、どの
メーカーの機種を使っていますか?
その他
FARO
38%
24%
TOPCON
5%
NIKON TRIMBLE
14%
Z+F
19%
FARO
Z+F
NIKON TRIMBLE
TOPCON
その他
注)総回答数65のうち、44が「使用していない」と回答。グラフは「使用していない」の数を省いている。
Q2.クラウド環境で使用できるエンジニアリングIT
ソリューションについて、どのようにお考えですか?
すでに使用している
16%
その他
2%
使用を禁止している/検
討していない
使用を検討している
34%
注)総回答数:63
48%
Q2-1.Q2で「使用を禁止している/検討していない」
と回答した方にお尋ねします。その理由は何ですか?
その他
必要がない
17%
3%
情報漏えいの危険性がある
30%
セキュリティの確保が困
難
20%
時期尚早
30%
注)総回答数:30
どのような企業が3次元レーザースキャ
ナーを導入しているか
 プラント・エンジニアリングの業態別では、「大手工事」のほぼ全社、「ユー
ザー系エンジニアリング」の一部での導入が目立つ。
 メンテナンス分野における利用が効果的であるという判断から導入されている。
 活用の問題点としては、「大手工事」が基幹の3次元CADとして使用している
のは「EyeCAD」(インターグラフ社製)が中心。「EyeCAD」は、スキャナー
により取得されたデータの処理機能が無いため、サードパーティーが開発したソ
リューションを購入する必要がある。
 サードパーティが開発したソリューションには、「Galaxy- Eye」(富士テクニ
カルリサーチ社製)、「Infipoints」(エリジオン社製)などがある。
進化するCADベンダー各社の
3次元計測関連ソリューション
レーザースキャニングデータ処理に力を入
れるCADベンダー(1)アヴィバ
 「AVEVA Everything 3D(E3D)」によ
り、レーザースキャニングデータと3
次元モデルの融合が可能になった。
 「E3D」では、別エンジンで点群
データを表示するため、表示が軽く
なった。
 このため、追加モジュールが不要で、
大量の点群データが3次元モデリング
ツールに表示できる。
 また、点群を変換して360°キャプチャ
データのバブルビューの表示が可能に
なった。
写真:バブルビューと3Dモデル表示
 バブルビューにより、クラッシュ
チェックも可能。
レーザースキャニングデータ処理に力を入れ
るCADベンダー(2)インターグラフ
 2010年にスウェーデンのヘキサゴンに
買収され、同社傘下にありレーザース
キャナーを製造するライカジオシステ
ムズとの協業の機会が増加した。
 フィールド情報を3次元レーザース
キャニングや高解像度の写真として取
り込み、そのデータは「Leica
Cyclone」や「Lica TruView」で処理
され、そのビューイングデータを
「SmartPlant Fusion」や
「SmartPlant Enterprise」などの統合
ソフトに取り込みが可能。
 フィールドデータを「SmartPlant
Isometrics」に取り込めば、アイソメ
図を素早く作成できる。
レーザースキャニングデータ処理に力を入れ
るCADベンダー(3)オートデスク
 「Autodesk Recap」により、3次元
レーザースキャナから点群ファイルを
読み込み、スキャンデータの可視化・
計測・編集を行うことができ、パノラ
マスキャンビューの表示にも対応して
いる。
 「Autodesk Recap」で処理された
データは「Autodesk AutoCAD」や
「Autodesk Revit」などにより、モデ
ル化できる。
 米イリノイ大学と共同でUAVで撮影
した工事現況の写真から高精度のBI
M/CIMモデルを作成し、現況の把
握と施工の進捗管理を簡単な作業で効
率的に行えるようにした。大成建設が
この技術を和食(わじき)ダムの建設
で活用した。
写真:和食ダムのプロジェクトで作成された3次元モデル
Autodesk ReCap 360 ワークフロー例
点群で距離を計測/注記記入
Navisworks等で活用
スキャンデータをインポート
Real Viewでマークアップ
Real Viewをクラウドで共有
© 2016 Autodesk
15
レーザースキャニングデータ処理に力を入れるCA
Dベンダー(4)ベントレーシステムズ
 写真から詳細な3Dモデルを自動生成
する「Context Capture」と点群を高
速処理する「Bentley Pointools」の2
種類のソリューションをラインナップ
している。
 「Context Capture」は、様々なイン
フラストラクチャプロジェクトの既存
の状態をモデル化できる。高価な専用
機材が無くても、高精細な3次元リア
リティモデルを簡単に作成し、既存の
状態に関する詳細なコンテキストを得
ることができる。
「Context Capture」によりモデル化されたプラント
 「Bentley Pointools V8i」は、3次元
レーザースキャニングにより得られる
点群を直感的に消去やグループ化など
の前処理が可能など。
3次元計測を取り巻く、技術的な進歩
 かつて、点群をワークステーションに取り込めば、パフォーマンスが一気に悪く
なり、点群の処理には、大きな問題があった。
 この点は、取り込むデータを限定できるようにするなど、CAD側でくふうがな
されてきた。
 インターグラフはビューイングデータをCADデータとして活用するなど、軽快
なデータ処理を可能にした。
 アヴィバは、「E3D」において、別エンジンで点群を表示するようにして、表
示を軽くした。また必要な部分だけをモデル化できるようにした。
 ベントレーは、ポイントクラウドエンジンに「Bentley Vortex」を採用し、大量
のポイントクラウドの処理を実現した。
3次元計測を取り巻く、技術的な進歩
 3次元レーザースキャナーで安価な機種が市場に投入されるようになった。
 スキャナー自体が小型・軽量化された。
 デジタルカメラの解像度が向上するとともに、GPS機能を内蔵する機種も出始
めており、座標データが取得しやすくなった。
 UAVの普及により、容易に空中からのデータ取得が可能になった。
 ただ、UAVは防爆仕様にはしにくく、防爆エリアを持つ石油&ガス、石油化学
のプラントでの使用は現時点では困難。
 UAVの防爆化が困難なため、高い上空からのデータ取得などが検討されてい
る。ただ、墜落の危険性への懸念が残る。
3次元計測を使用する技術者たちの進歩
 かつては、計測精度への強い拘りがあった。
 5~6年前からは、精度は問わず、「高精度を求めずに、使用できるケースに使
用する」という考え方に変わってきた。SPARJにおいても、以前は、プラン
トセッションで精度に関する問題が普及の阻害要因という発言があったが、最近
ではこの種の発言は聞かなくなった。
 「使用できる箇所に使用すれば、低コストでの計測が可能」、高精度の計測デー
タが必要とされるのであれば、実測すればいい。この技術を使おうとする技術者
の頭脳も柔軟になった。
プラント分野における3次元計測技術の
いっそうの普及について
 既存のプラントのモデル化には有効で、メンテナンスでは活用できる。
 既設の改造など、ブラウンフィールド案件には、適している。
 プラントの施工確認にも使用できる。
 UAVに搭載する場合には、防爆への配慮が必要。この問題は、普及の阻害要因
になる可能性がある。
 わが国のプラントは「高経年化している」と言われてきたが、重要なユニットに
ついては更新が進み、この問題はかなり解決されている。メンテナンスだけで
は、本格的な普及にはつながらない。
 オフショア・プラットフォームなど、過酷な条件で使用されるプラントのメンテ
ナンスには有効。
御清聴、ありがとうございました。