助産師ってなにするの? 自然なお産にこだわっています 「ふたつの命

いのちのそばに寄り添い
ともによろこび、ともに育つ
尼崎医療生協病院
産婦人科 助産師
笹部
恭子
看護学生の皆さんに、私たちが日々看護を実践し
にナニワ病院での産婦人科開設以来、64 年目を迎
ている現場での悪戦苦闘ぶりや、看護に対する熱い
えています。現在尼崎医療生協病院の産婦人科病
思いを感じていただきたく、シリーズで紹介してい
棟は病床数 22 床、
分娩件数は年間約 600 件です。
ます。今号は助産師の「看護の現場」です。
わたしたちスタッフは「お母さんと赤ちゃんに
寄り添える、あたたかい看護」をめざしており、
助産師ってなにするの?
助産師は、生命を産み出す女性や、生命を育む
自然な出産を心がけ、親子の姿もできるだけ自然
であるよう、母乳育児などに日々取り組んでいま
す。
家族への援助をテーマに様々な分野で働いていま
す。
(小中学校の子ども達への性教育などに取り組
んだりもします)
主には病院や助産院などで妊娠中のお母さんが
無事出産できるよう母体や胎児の健康状態をチェ
ックしたり、より健康なマタニティーライフが送
れるようなアドバイスをします。また出産時には
“赤ちゃんをとりあげる”という分娩介助業務を
します。この分娩介助業務は看護師・保健師・助
「ふたつの命」守る助産師は責任
重大
分娩は、
「安全な分娩」であることが大前提ですが、
正常な妊娠の経過をとっている妊婦さんの分娩に
は医師ではなく、まず助産師が中心となって関わ
っています。責任重大ですが、赤ちゃんとお母さ
んの「産むちから」を大切にし、ふたつの命を守
ることに、とてもやりがいを感じます。
産師という看護系の資格の中で、助産師だけが許
可されている業務です。出産後は、お母さんの産
後の回復をサポートしながら赤ちゃんがすくすく
育っていけるよう母乳指導や育児指導をしていま
す。
「カンガルーケア」ってご存じで
すか?
生まれたばかりの赤ちゃんをそのままママの素
肌の胸に抱きしめてもらう事を「カンガルーケア」
自然なお産にこだわっています
尼崎医療生協の産婦人科は歴史があり、1949 年
といいます。元気に産まれてきた安心感と、
「がん
ばって産んだんだなあ」という思いで、喜びもひ
としおとなるようです。そして、一時間以内には
授乳をスタートします。
生まれたばかりの赤ちゃんは、
「新生児室」で看
喜びいっぱいで退院された患者様。
悲しみを抱えて退院された患者様。
る病院もありますが、当院ではママの体調をみな
がら「母児同室」をおすすめしています。
長く勤めていると
「授乳がうまくいかず大変だったとき、すぐに相
不安だらけの育児・出産
出産、育児は本当に大変です。特に初めての場
談にのってもらいお世話になりました。」
「一人目を取り上げてもらったんですよ、こんな
合は「何をどうやったらいいの?」と時には涙が
に大きくなりました。
」
こぼれるほど不安でいっぱいになることもありま
「知っている人(スタッフ)がいるとほっとしま
す。出産は重労働ですので、疲労と寝不足でクタ
すね。」
クタということも。そこで、わからないことだら
こんなうれしい声が聞こえてきます。当時の話に
けの出産や育児、おうちでの生活の相談など私た
花が咲き、懐かしくもあり、新鮮な気持ちにさせ
ち助産師、看護師がいつの時間帯でもサポートで
られます。そして、何もおっしゃらなくても、つ
きるようにスタンバイしています。
らい思いをされた患者様も再度訪れてくださるこ
新しいいのちが、パパやおじいちゃんおばあち
とがあります。こうしていろんな患者様との出会
ゃん、御家族の輪の中で、健やかに大きく育って
いと再会があり、私は「ここにいて良かった」と
いけるよう、その第一歩のお手伝いをさせていた
心から思うのです。その時だけではない患者様や
だいています。
御家族とのつながりを感じることができ、こんな
にありがたい職業はない、この仕事について本当
おめでたい場面だけではない産婦人
科、何ができるのか考え寄り添う
私はこの医療生協の産婦人科に来て、16 年。
たくさんの喜び、そしてつらいこともありました。
産婦人科には、おめでたい場所という印象が強い
かもしれません。しかし、流産や死産などの悲し
みの場面にも立ち会います。その患者様、御家族
のお気持ちが少しでもやわらぐよう私たちに何が
できるのかを考え、寄り添い、ケア出来るよう努
めています。
に良かった。そう感じるのです。