形状記憶合金を用いたロボット制御 愛知県立愛知工業高等学校 電気科 1 永坂 勝弘 はじめに バイオメタルを用いて、温度とひずみ特性の実験、特徴と性質とその応用、安定化電源を用いた バイオメタル・ファイバーの応答性実験等を行い、その結果をまとめる。更には、ほぼ無音で動作 を行うことが可能で、軽量かつ柔軟な動きを実現することが可能なものを検討・試作することにし た。その対象とは、人間の指や昆虫の足の動きを再現することを目標とした無音作業用ハンドや昆 虫の足の構造の可能性を探る。 2 設計と製作 (1)小型義手ロボットの製作 人間型二足歩行ロボットの製作と制御を行ってきたが、更に 軽量小型化、信頼性の向上、安全性の確保の改善などはもとよ り、多様な歩行モードに対応する制御方法も考慮しながら、写 写真1 バイオハンドの設計 真1のように小型義手を設計した。 ア 設計・製図 多自由度、多関節ハンドのハードウェア開発は義手の分野 でかなり進展している。義手の設計では、重量形状といった 面で制限条件が課せられた上で、人間の手の機能が追求され 図1 バイオハンドの設計図 る。このことから用途を拡大して図1のような小型義手を設 計した。 イ 図1を参考にして、写真2のように試作する。多自由度ハ ンドでは、人間の手の持つ多様なつかみ機能のみならず、つ かんだ物体を操作する機能まで追求して5指のハンドを製作 写真2 完成したバイオハンド した。 (2)制御回路の製作 間欠的に電流をON−OFFしてバイオメタル・ファイバーを動かすために通電回路を製作 した。長さや電源が違ってもパワーコントロールのボリュームで調整が出来る回路にした。 写真3 押しボタン式回路(部品面) 写真4 接触センサ搭載回路(部品面) 3 バイオメタルの通電加熱駆動 製作した制御回路を用いて、バイオメタルの特性実験を行った。バイオメタルは、材料が金属で 比較的大きな電気抵抗を持ち、通電で容易に加熱できる。バイオメタルに電流を流すだけで運動を 取り出せる機構が作られている。 図2 4 バイオメタル・ヘリックスの動作と特徴 図3 バイオメタル・ファイバー通電加熱動作 結果と考察 メカニカルハンド(義手)の設計で最も苦労する部分のひとつは、各自由度を駆動するデジタル サーボの配置と、そこで発生した機械動力を可動部に導く駆動メカニズムの設計であった。 しかし、バイオメタル(人工筋肉)を使用すればコストも安く、構造が簡略化できるのでモータ やギヤボックスなどが組み込みのできない、小さなロボットの動力源として機構的にも考慮に入れ 製作することができた。これらの結果を踏まえて更に進歩させていけば、実生活にも利用できるほ ど優れたものとなると考えられる。 バイオハンドは非常に繊細な物であって、僅かな衝撃を加えただけでも壊れてしまう危険性があ る。また、バイオメタルは熱を加えるごとにほんの少しずつだが劣化してしまうので、使用と保管 する場所にも注意を払わなければならないという難点がある。 今後は、それらの難点も踏まえた上で実用化に向け研究を進めていきたいと考えている。 5 おわりに 今後は、軽量小型化はもとより、多様な歩行モードに対応す る制御方法も考慮しながら小型義手(人工筋肉)を用いた完全 自立型二足歩行ロボットを製作し、より発展させていきたい。 更には、小学生に人気の超小型昆虫歩行ロボットを試作し、 図4のように応用して、足の角度を変え、歩行やはばたき翼を 有する飛行などに関する研究も精力的に進めていく。 図4 ○参考文献 形状記憶合金のはなし 日本規格協会 人間型ロボットのはなし 日刊工業新聞社 トキ・コンポレーション株式会社 昆虫模型の足
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