1.代理処罰の成り立ち 2.代理処罰の規定

日本模擬国連神戸研究会
平成 24 年 9 月 15 日(土)
第2回後期勉強会
文責・プレゼンテーター:折口 京平
プレゼンの目的
・代理処罰の概要の共有
・代理処罰の持つ問題点と代理処罰に対して持つ各国の印象を知る
目次
1.代理処罰の成り立ち
2.代理処罰の規定
3.代理処罰の問題点
4.代理処罰が各国に与える影響
1.代理処罰の成り立ち
・代理処罰の目的
代理処罰が登場した当初の目的
オランダの政治思想家グロチウス「(1.
引渡すか罰するかせよ
)」
この言葉の意味…「自国民を引き渡さないならば自国で責任を持って罰せよ」
⇓
近年に登場した目的
①世界の共通利益を阻害する罪1を確実に処罰する
②(2. 死刑
)に代表される不引渡しの原因への対処法
⇒代理処罰の目的は時代とともに変容した !!
2.代理処罰の規定
代理処罰の概説…代理処罰は大きく2つに分けられる
①(3.
自国民不引渡し
)に代わる処罰の原則
自国民を引き渡さない代わりにその国の刑法を適用する。このとき、その国は外国
に代わって犯人を訴追し、処罰する。
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麻薬取引や人身売買など。このような犯罪には犯罪人引渡し条約が存在する場合が多い。
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日本模擬国連神戸研究会
平成 24 年 9 月 15 日(土)
第2回後期勉強会
具体例
日本国内
ブラジル国内
Ⓐ←Ⓑ
Ⓑ
①:ブラジル人
②:Ⓐを殺害後、Ⓑは国籍を持つブラジルに移動
③:Ⓑは日本の法
Ⓑが日本人Ⓐを
律では裁けない!!
殺害
④:日本はⒷの引渡しをブラジルに要請(下の矢印)
しかし、ブラジルは自国民不引渡しの観点から引渡しを拒否する。
⑤:ブラジルはⒷを逃げ得にしないためにも日本の代わりになってブラジルの法律でⒷを
裁くことになる
②純代理処罰規定
国外で罪を犯した外国人2が不処罰のまま終わるのを避けるため、その犯人のいる
国が外国に代わってその国の法律で処罰するというものである
具体例(実際に起きた例)
日本国内
スウェーデン国内
Ⓐ←Ⓑ
Ⓑ
①:イラン人Ⓑが
②:Ⓐを殺害後、Ⓑはスウェーデンに移動
スウェーデンは純代
日本人Ⓐを殺害
理処罰の規定を置
いている
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③:日本はⒷの引渡しをスウェーデンに要請(しない場合もある )
しかし、その要請が拒否されることがある(死刑問題の認識の差異が原因)
④:逃亡人を不処罰にしないため、Ⓑは(4. スウェーデン
)の法律で裁かれる
●法律から見る具体例の考察 ドイツ法
ドイツ刑法第 7 条2項 2 号(その他の場合における国外犯に対する適用)
② 国外で犯されたその他の行為については、犯罪地においてその行為に刑が科せ
られている場合又は犯罪地がいかなる刑罰権にも服していない場合において
次のいずれかに該当するときは、ドイツ刑法が科せられる。
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犯人が拘束された場所の国民から見て外国人という意味。
犯罪人引渡し要請が拒否されるとわかっている場合は要請を行わないこともあり得る。
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平成 24 年 9 月 15 日(土)
第2回後期勉強会
2 行為の時に外国人であった行為者が、内国に現在し、かつ、犯罪人引渡し法
によりその引渡しが行為の性質上許されるものにもかかわらず、引渡しの請求
がなされず、もしくは拒絶され、又は引渡しが実施可能でないため引き渡され
ないとき。
つ ま り
外国で犯罪を起こした犯人が
a.ドイツ国内にいる
かつ
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b.犯罪人引き渡しが許される場合なのに一定の事由 により引渡しが発生しない
この二つが成立するときにドイツ刑法が適用される。
以上のドイツ法の例は代理処罰の中でも(5.
純代理処罰規定
)のこと!
3.代理処罰の問題点
代理処罰は一見万能そうに見えるが、問題点も含んでいる。
①純代理処罰規定を置いている国の少なさ
純代理処罰の規定を置いている国
イタリア、ドイツ、オーストリア、スウェーデン、
アルゼンチン、トルコ、ポーランド、ルーマニア、他
②罪の重さに対しての各国の価値観の相違
例:麻薬犯罪
●中国やシンガポール→麻薬犯罪は充分死刑になりうる
※過去にアヘン戦争によって国民が麻薬漬けになったことから。
●ヨーロッパ諸国→麻薬犯罪への刑罰はあまり厳しくない
⇓
犯罪やその判決に対しての国民感情が異なってくる !!
③(6. 証拠
)の集めにくさ
外国での訴追のため、犯罪地国から証拠を集めないといけない。そのために中途半
端な裁判が行われてしまう可能性がある。
→司法共助の強化も同時に重要となる。
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死刑存置国への犯罪人引渡しに代表される事由
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平成 24 年 9 月 15 日(土)
第2回後期勉強会
4.代理処罰が各国に与える影響
ⅰ 死刑廃止国への影響→引き渡すか訴追するかの規定のない犯罪(殺人等)についても
訴追する必要がある
ⅱ 死刑存置国への影響→死刑廃止国からの犯罪人引渡しが行われない
表にしてまとめてみると以下のようになる
死刑廃止国
死刑存置国
代理処罰のメリット
代理処罰のデメリット
国民感情として犯罪人が野放しとな
全世界から死刑廃止を目指す国家5に
らないことに理解が得られることも
とって代理処罰が邪魔な存在になる
あるだろう
と思われる→※参照
死刑を理由に不処罰になることを避
判決に対して不服に感じることもあ
けることができる
り得る
※死刑を廃止したい国家(EU 加盟国など)が代理処罰を置くことで死刑制度の存在を半ば
認めることになってしまう。
おわりに
・現在の代理処罰の主な目的は死刑問題によって被疑者が引き渡されない場合への対処法
である
・代理処罰の問題点と各国に与える影響を考える必要がある
参考文献
・森下 忠『国際刑法の潮流』成文堂 1985 年
・森下 忠『新しい国際刑法』信山社 2002 年
・尾﨑 久仁子『国際人権・刑事法概論』信山社 2004 年
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たとえば、EU が死刑撤廃を死刑存置国に求めているのは人権的観点が大きい。
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