秋 学 期 2 単 位 2(既1)年次 初 川 満 科目名 国際人権法各論

科目名
国際人権法各論
開 講 学 期
単
位
数
秋 学 期
2 単 位
対 象 年 次
2(既1)年次
担
初
当
川
者
名
満
1.授業の概要
我が国が締約国となった国際人権条約は、法律と同等かそれ以上の裁判規範と解されているにもかかわら
ず、裁判所において未だ正当な扱いを受けているとは言い難い。とはいえ、人権条約に言及した裁判判例が
下級審では増えているのみならず、最高裁判例においても言及されたものが見られ出した。そこで、本講義
では、国際人権条約による保障のメカニズムや条約が樹立しようとしている国際基準について、具体的に見
て行くこととする。
2.到達目標
人権は、国内法及び国際法の両方において重要であり、国内の人権を無視して国際人権を論ずることは虚
しい。また、今日のような国際化の時代において、国際人権法を無視した国内人権法は、もはやその正統性
すら危くなりつつある。
そこで本講義では、人権の法的権利としての人権につき、国際社会においてはいかなる保護が行われ、い
かなる保障基準が追及されているかの理解を目的とする。
3.授業の形態
原則として、講義形式で行うが、質問・討議を随所に交えることにより、受講生自身に考える機会を与え
る。
4.教科書
講義テーマ毎に参考とする本は異なり得るため、通読書としては、
『ブリッジブック国際人権法』(芹田・薬師寺・坂元著、信山社、2008)を挙げておく。
5.参考文献
芹田健太郎『国際人権法Ⅰ』(信山社、2011)
〃 『地球社会に人権論』(信山社、2003)
畑、水上編『国際人権法概論』(信山社、1999)
初川 満『国際人権法の展開』(信山社、2004)
6.評価方法
平常の講義への出席および学期末レポート(5000字程度)を総合して評価する。なお、欠席の取り扱いにつ
いては、採点評価方法(統一評価基準)による。
レポートは、選択されたテーマの分析のために、いかなる順序で論証しているかについて、内容に加え目
次や文献リストから、総合的に判断する。
定期試験を実施しないので、再試験は行わない。
7.予習・復習 予習に際しては、条約集を常に引くようにして欲しい。講義終了後は、理解を深めるため、関連部分の再
その他 読が望ましい。
授 業 計 画
項 目
内 容
1 国際人権保障概説
人権の国際的保護の概観を行い、国際社会による人権保護の監視について考える。特に、国際基準
とはいかなるものかを考え、個人の国際法主体性について論じる。
2 国際人権条約とは
国際人権条約の概論として、いかなる条約があるかについて学ぶ。具体的には、各条約の内容、作
成史、メカニズム等について見て行く。
3 国際人権規約①
自由権規約及び社会権規約の作成史および構造について見て行く。又、日本の批准の歴史について
も学ぶ。
4 国際人権規約②
主に自由権規約における実施措置(国家報告制度、国家間通報制度、個人通報制度)について見て行
く。又、日本の国家報告についても学ぶ。
5 国際人権規約③
自由権規約おける権利について、規定されている権利・自由の性質一般について見て行く。しかる
後に、条約による規定の難しさの例として、非差別と財産権を取り上げる。
6 国際人権規約④
自由権規約における個人通報制度について、詳しく見て行く。具体的には、自由権規約選択議定書
の要件、仕組み、フォローアップ等につき、日本の議定書、批准問題を含め学ぶ。
7 国際人権条約と日
主要な人権条約について、日本の批准を廻る問題、国内判例との関係などを見て行く。具体的に
は、社会権規約、人種差別撤廃条約、女子差別撤廃条約、子供の権利条約、奴隷禁止条約を見て行
く。
本
8 地域人権条約①
地域人権条約の一般論として、仕組み、特徴、実態などを見て行く。しかる後に、地域人権条約と
して最も歴史が古く、かつ最も発達しているヨーロッパ人権条約について学ぶ。
9 地域人権条約②
まず、米州人権条約及び人及び人民の権利に関するアフリカ憲章について、その特徴や実態、仕組
みなどについて、詳しく見て行く。しかる後に、その他の地域における地域人権保障システムにつ
いても見て行く。
10 ヨーロッパ人権裁
ヨーロッパ人権裁判所判例を具体的に見ることにより、ヨーロッパ社会のリーガル・マインドを理
解し、ひいては、人権保障の国際基準を考える基礎を学ぶ。具体的には、The Sunday Times Case
、The Soering Caseなどを扱う。
判所の判例を見る
11 人権条約と日本国
憲法①
12 人権条約と日本国
憲法②
13 人権条約と日本国
憲法③
人権条約の日本国憲法秩序における位置づけについて、見て行く。特に、自由権規約委員などの条
約機関の報告や見解が、我が国の法秩序においていかなる働きをしているかについて、具体的に見
て行く。
国際人権条約の国内への適用について、自動執行性の問題や個人通報制度への参加の場合などを、
具体的に考える。ここでは、関連する国内判例に言及しつつ、国内裁判所による国際人権法の実現
とその限界について考える。
国際人権規約の国内における実施について見て行く。まず、国際人権規約の国内的効力について復
習し、次いで、社会権規約については、社会保障と憲法及び社会権規約の関係について見て行く。
そして、自由権規約に関しては、我が国の憲法上欠けている権利との関係について、公正な裁判と
いわゆる出廷の権利を例に見て行く。
14 国内判例を読む①
国内裁判における国際人権法の活用の例として、ニ風谷ダム事件と嫡出子と非嫡出子の相続分差別
に関する判例を、詳しく見て行く。ここでは、受講生による判例分析の報告を基に講義を進める。
15 国内判例を読む②
外国人の人権について、国際人権法上の権利と国内法上の権利について、比較しながら見て行く。
特に、出入国の権利について、マクリーン事件を例に見て行く。ここでは、国際人権条約の下にお
ける入国・在留及び退去強制についても、考えていく。