1999年 世界人口白書 1999年9月22日 グリニッジ標準時正午 世界同時発表 (日本時間同日午後9時) 世界人口60億 選 択 の 時 世界人口60億:選択の時〔要 約〕 人の女性が産む子どもの数はかつて ないほど少なくなってきており、人 口増加率は30年間で2.04%から 1.33%に低下した。しかし、最近まで家族の 規模が大きかったことから、出産年齢にあ る女性の数は多い。世界人口はいまだに年 間ほぼ7800万人の割合で増加している。世 界人口の半数は25歳未満であり、また10億 人以上が次の世代の親となる15歳から24歳 の若者である。 人口増加のほとんどは、世界で最も貧し く、それに対する備えのできていない国々 で起こっている。人口増加の鈍化が今後も 続いていくか、それと共に人々のウェル・ビ ーイング(福利)が向上するのか、それと もストレスがさらに増すのかは、今後10年 間の決断と行動−特に、教育の機会を拡大 し、ジェンダーの平等を推進し、リプロダ クティブ・ヘルスを含む健康を享受する権 利を誰でも行使できるようにするための行 動−にかかっている。 世界で最も急速に人口増加が進んでいるの は、サハラ以南のアフリカ、南アジアと西ア ジアの一部である。その一方で、ヨーロッパ、 北アメリカ、日本では人口増加のペースが鈍 化し、あるいはとまっている。アメリカ合衆 国は先進工業国の中で唯一、大幅な人口増加 が見込まれているが、その多くは移民による 結果である。 まもなく21世紀になろうとしているが、10 億人以上の人々がいまだに基本的ニーズを満 たす権利を奪われたままである。開発途上国 の48億人のうち、5分の3近くは基本的衛生環 境が整っていないところで生活しており、ほ ぼ3分の1は清潔な水を手にしていない。4分 の1には適切な住居がなく、5分の1は近代的 な保健サービスへのアクセスがない。途上国 の子どもたちの5分の1は、小学校5年まで行 かずに中退してしまう。 無駄の多い不均等な消費パターンと人口増 1 加があいまって、食糧や水の需要が増大し、 地球全体への圧力が増している。それに加え て、地球温暖化の影響も依然としてみられる。 海面の上昇、嵐や洪水の増加といった気候変 動により、何十億もの人々が影響を受ける可 能性がある。 貧困の継続、ジェンダーによる差別、 HIV/エイズ(ヒト免疫不全ウイルス/後天 性免疫不全症候群)、環境の変化、開発援助 資金の減少などが積み重なった結果、出生率 の低下による成果が相殺されてしまう恐れが ある。 ICPDの合意 幸いにも、何をする必要があるかという 点については世界的な合意がある。1994年 に行われた国際人口開発会議(ICPD)にお いて、参加179カ国は、人口と開発が切り離 せないほど深く関連しており、女性のエン パワーメントと、教育およびリプロダクテ ィブ・ヘルスを含む保健のニーズを満たす ことが、個人の向上とバランスのとれた開 発に必要であるという点で合意した。また、 ジェンダーの平等を推進し、女性に対する 暴力をなくし、女性が子どもを産むかどう かを自分で決められるようにすることが、 人口・開発政策の基礎であると認識された。 具体的な目標としては、教育と家族計画を 含むリプロダクティブ・ヘルス・ケアを誰 でも受けられるようにすること、および乳 児死亡率、子どもの死亡率、妊産婦死亡率 を低下させることが中心である。 ICPD以降の進展を検討した結果、ICPDの アジェンダ(課題)は実践的かつ現実に則し たものであり、あらゆる障害にもかかわらず、 実際に実行に移されていることを示す証拠が 増えていることがわかった。この検討には、 各国の実行努力に関する報告、世界規模での 専門家会議、国連人口基金(UNFPA)主催 PRESS SUMMARY 世界人口は1960年以降倍増し、1999年に60億に達する。その「世界人口60億の日」 は1999年10月12日とみられる。 のハーグ国際フォーラムが含まれる。この流れは、 1999年6月30日から7月2日にかけて行われた国連人口 開発特別総会(ICPD+5)で頂点に達した。特別総会 では、さらなる進展のために必要とされる主要な行 動を確認した。 若者の数がかつてないほど多いこと、高齢化、都 市化、国際移住といった人口学的要因は、貧困の軽 減、基本的社会サービスの提供、食糧安全保障、資 源保全、環境保護などの計画にとって重要な要素で ある。ICPDから5年の間に、多くの国が人口問題を 組み込んだ新しい開発政策を採用した。また、約半 数の国が人口と開発に関する政策の見直しを行い、 3分の1以上の国が政策内容を更新して、ICPDの目標 に一致させるようにした。 世界全体の3分の2にあたる国で、政策または立法 手段を導入し、ジェンダーの平等と女性のエンパワ ーメントの推進を目指している。ラテンアメリカで は、ほぼすべての国が女性の権利の保護を目指して、 政策手段を導入したり、法律改正を行ったり、制度 を改革したりした。アジア諸国の半数以上とアフリ カ諸国の多くが、相続、財産、雇用の分野で女性の 権利を保護するための措置をとった。男性の性や生 殖に関わる行動、社会的役割、家族の役割への責任 を高める方向に踏み出した国も多い。 ジェンダーに基づく暴力や有害な伝統的慣習を撤 廃しようとする試みも増えてきている。多くの国が 法律や家族法を改正して、女性性器切除、レイプ、 強制結婚、家庭内暴力、「ダウリー」殺人や「名誉」 殺人に対する対策を強化した。アフリカの15カ国が、 女性性器切除を非合法化している。 人口動向 要 約 2 今日では、高出生率・高死亡率から低出生率・ 低死亡率への人口転換が、世界のほとんどの国で すでに完了しているか、あるいは過渡期の状態で ある。予防保健と医療の進歩によって、死亡率が 急速に低下し、なかでも乳児死亡率は3分の2も減 少した。その結果、過去半世紀の間に世界全体の 平均寿命は46歳から66歳に延びている。しかし、 その進展状況は国によって大きく異なる。 出生率も低下しているが、一様に低下している わけではない。世界人口の約44%を占める61の 国々では、カップルが人口を「置き換える」のに 必要な2人より少ない数の子どもしかもたなくな っている。しかし、出生率が今すぐ「人口置き換 え水準」にまで低下したとしても、現在出産時期 のピークに入りつつある人の数が多いため、世界 人口は今後数十年間にわたって増加し続ける。こ の人口モメンタムは、世界人口増加の推計の3分 の2を占めており、出生率が最も急速に低下した 国では、その占める割合が一層大きくなる。女性 の第一子出産年齢を18歳から23歳に上げること で、人口モメンタムを40%以上減らすことができ る。 1950年代前半、先進国のカップル1組当たりの 子ども数は平均2.8人だったが、現在では、これが 1.6人になっている。開発途上地域の出生率は、 1950年の女性1人当たりの子ども数6.2人から現在 の3人弱になり、2045年には2.1人を下回ると推計 される。ここ50年間に出生率が最も急速に低下し たのは、ラテンアメリカ(5.9から2.7)とアジア (5.9から2.6)であり、北アフリカと中東はこれよ り若干遅く(6.6から3.5)、サハラ以南のアフリカ はさらに遅い(6.5から5.5)。 出生率が低下することで、経済的な利益を得る 可能性が生まれる。生まれてくる子どもの数が少 なくなる一方で、人口構成の中でその数の多さか ら「膨張」している若者人口が、成長して労働力 の一部となるからである。東アジアはすでにこの 「人口ボーナス」の利益を享受しており、世帯と 国の貯蓄および投資額、なかでも社会支出を増や すことにつながった。南アジアとアフリカは、今 後20-30年の間に同様の機会に恵まれると見込ま れている。その利益を得るためには、各国が教育 とリプロダクティブ・ヘルスを含むヘルスケアを 強化し、他にも支援政策を採用しなければならな い。 しかしながら、社会部門への投資の増額によっ て得られた成果が、世界規模の金融の混乱によっ て打撃を受けることもある。国連人口基金 (UNFPA)の調査は、1997年に東南アジアで始ま った金融危機が、何百万人もの人々を貧困と深い 困窮の淵に追いやり、また、この金融危機の結果 として社会事業費が削減されたことで、重大な社 会的影響があったこと、特に女性の権利とリプロ ダクティブ・ヘルスにその影響が大きかったこと を示した。例えば、HIV/エイズと性感染症 (STD)の予防・治療プログラムを含め、健康増 進や医療サービス関連の活動予算が削減されたの である。 ヘルスケアが向上し、選択の幅が広がったこと で、世界全体の出生率は予想以上の速度で低下し た。国連経済社会開発局人口部は、2050年の世界 人口予測を、1996年推計の94億から89億に下方修 正した。しかし、この知らせは必ずしもよいこと ばかりではない。長期推計における人口減少の約 3分の1は、サハラ以南のアフリカとインド亜大陸 の一部でかつての予想より急速に蔓延したHIV/ エイズが原因で死亡率が上昇したことによるもの だからである。 アフリカの29カ国では、平均寿命がエイズがな かったと仮定した場合よりも7年短くなっている。 しかし、これらの国では高い出生率が依然として 続くので人口が減少する見込みはない。ボツワナ では、成人の4人に1人がHIVに感染しており、平 均寿命も1980年代後半の61歳から現在では47歳ま で短くなった。さらに2005-2010年の期間には、 38歳まで低下すると予想される。それにもかかわ らず、人口そのものは2050年までにほぼ倍増する と見込まれている。 感染の速度を遅らせ、また蔓延をくい止めるた めには、総合的なリプロダクティブ・ヘルス・ケ アの改善とHIV感染のリスクとその結果に関する 一般の人を対象にした教育の向上が必要である。 新たな感染者の半数以上が24歳以下の若者であ り、彼らのニーズを満たすサービスを提供するこ とが緊急に必要である。 人口パターンの移行 世界人口の分布は変化している。人口増加が地域 間で異なり、都市化が進行し、国際移住がより目に つくようになり、重要性も増しているためである。 1960年には、世界人口の70%が開発途上国に住んで いたが、現在ではその割合が80%に増加している。 世界の人口増加の95%は開発途上国が占めている。 アフリカの人口は、1960年以降3倍に増加し、こ の地域の人口増加の速度は依然として世界で最も速 い。1960年にはヨーロッパの人口がアフリカの2倍 だったが、2050年には、アフリカの人口がヨーロッ パの3倍になっていると見込まれる。現在のところ 世界最大の人口を抱えるアジアは、1960年以降人口 が2倍に増えた。ラテンアメリカ・カリブ海地域も 同様である。対照的に、北アメリカの人口増加は 50%、ヨーロッパは20%であり、現在はほぼ一定し ている。 都市は社会変動の機動力となる。開発途上地域全 域で都市成長が続いている。1960年には、都市人口 の割合は3人に1人であった。現在では、ほぼ半数が 都市に住んでおり、2030年までには60%以上が都市 地域に住んでいることになると予測されている。ま すます多くの都市が人口1000万以上のメガシティに なると見込まれている。1960年に2つしかなかった メガシティは、現在では17都市を数え、2015年まで には26都市に達するとみられる。そのうちの22都市 は開発途上地域にあり、18都市はアジアにある。 世界のどの地域でも、国際移民の問題が政策議題 の最優先事項になってきている。移民数が増加し、 それに関する問題の重要度が増しているためであ る。1965年から1990年の間に、移民は7500万人から 1億2000万人に増加した。移民が母国に送金する額 は、毎年、700億ドル以上にも達する。受け入れ国 の産業によっては移民の労働力と技能に依存してい るところもある。移民に占める女性の割合は増加し ており、1990年にはほぼ50%になった。その多くは、 搾取や嫌がらせに対して弱い立場にある。 増加する人口に対して食糧供給と水供給をどのよ うに行うかは、依然として生死に関わる問題である。 世界全体の1人当たりの穀物生産量は過去10年以上 にわたって横ばい状態であり、耕作地は縮小しつつ ある。水の利用も深刻なものになる。最近の調査に よると、2050年までに世界人口の4分の1が、水不足 が慢性化しているか頻発している国に住むことにな る。 リプロダクティブ・ヘルスとリプロダクテ ィブ・ライツ ICPDで承認されたリプロダクティブ・ライツの中 には、男女平等の原則に基づいて、結婚、子どもの 数、出産の時期、出産間隔を自由に決めることがで きる権利、できる限り高い水準のセクシュアルおよ びリプロダクティブ・ヘルスを享受する権利、性暴 力と性的強要を受けないことが含まれる。 誰もが良質のリプロダクティブ・ヘルス・ケアを 受けられるようにする必要性は、かつてと同じく急 を要するものである。それと同様に重要なのが、男 女が十分な情報を得た上で自由に自分の人生を選択 できるような社会的・文化的・経済的条件を創り出 すことである。 開発途上国では毎年58万5000人以上の女性が妊娠 の結果死亡しており、少なくとも700万人の女性が 感染症や傷害で苦しんでいる。また、安全でない人 工妊娠中絶によって7万人の女性の命が奪われてい る。治療可能な性感染症の症例が毎年3億3000万件 以上もあり、毎分11人がHIVに感染している。年間1 億7500万件の妊娠のうち、半分近くが望まない妊娠 または望んだ時期ではない妊娠である。年間1億 3000万件ある出産の半分近くは、出産介助の訓練を 受けた人の立会いがない状況で行われている。女性 の半数以上が、生涯のある時点で何らかの形のジェ ンダーに基づく暴力を経験している。毎年200万人 の女児・女性が女性性器切除(FGM)の危険にさら されている。世界中で読み書きのできない人は9億 6000万人いるが、そのうちの3分の2は女性である。 カイロのICPDで合意されたように、多くの国がリ プロダクティブ・ヘルス・サービスの質を向上さ せ、範囲を広げ、利用しやすくすることに取り組ん でいる。また、よりよい情報、より幅広い選択肢、 利用者中心のケアが提供できるようにスタッフをト レーニングしている。 開発途上国の避妊実行率は、1990年から1995年の 間に年間1.2%の割合で増加したが、20-25%のカッ プルのニーズがいまだに満たされていない。この満 たされないニーズの割合が最も高いのがサハラ以南 のアフリカ(29%)で、最も低いのがラテンアメリ カ地域(18%)とカリブ海地域(20%)である。同 時に、性感染症と妊娠の両方を防ぐために、女性が 制御できるバリア法と新しい男性用の避妊法の研 究・開発にさらなる投資が必要である。 最も取り組みが難しい分野のひとつに妊産婦死亡 率の低減がある。諸々の研究ならびに実際の経験か ら、妊産婦の健康を改善するには、保健施設の改善、 緊急産科ケアの提供、適正かつ効果的なケアを確保 するためのトレーニングを受けたヘルスケアの提供 者が必要であり、そのためには、優先政策をとり、 必要な財源を確保する必要があるということがわか っている。 多くの国では、未婚の思春期の若者(10-19歳)や ヤングアダルト(20代まで/既婚・未婚を問わず) に適切な情報とサービスを提供することが難しい。 1999年のICPD5年目の評価では、各国政府に対し て具体的な行動をとるよう要請した。専門技能者の 立会いによる出産を増やすこと、リプロダクティ ブ・ヘルスに影響を与える法律を見直すこと、リプ ロダクティブ・ヘルスの支出を増やすこと、地域社 会、非政府組織(NGO)ならびに民間セクターをプ ログラムに参加させること、男性の責任を高めるこ と、誰でもサービスを利用できるようにすること、 HIV/エイズを含む性感染症の検査とカウンセリン PRESS SUMMARY 1999年 世界人口白書 要 約 3 1999年 世界人口白書 グをプライマリー・ヘルス・ケアの一環として提供 することなどである。 さらにICPD+5では、政府に対して次のことも要請 した。すなわち、①相互尊重とジェンダーの公正に 基づいた責任ある性行動を推進する。②子どもの性 的搾取を防止する。③難民がセクシュアルおよびリ プロダクティブ・ヘルスに関するケアと情報を確実 に受けられるようにする。④女性性器切除などの有 害な伝統的慣習を撤廃する。⑤思春期の若者が健康 で責任のある人生を送ることにつながるような情報 とサービスを提供する。 パートナーシップとエンパワーメント NGO、国会議員、宗教指導者、民間セクター、コ ミュニティー・グループは、ICPDの課題を実行する 上で重要な役割を担っている。多くの政府が、プロ グラムの企画とサービスの提供、特にサービスが届 きにくい層に対するサービス提供において、市民社 会組織とより密接に協力して活動している。 ICPD以降、市民社会組織(CSO)と政府の間の関 係が進展してきている。リプロダクティブ・ヘル ス/ライツの活動をするNGOの数が増え、それにつ れてNGOのネットワークの数も増えて、全体として の影響力も強くなっている。多くの国で、NGOが (とりわけ保健・家族計画分野の提唱者や女性グル ープが中心となって)、リプロダクティブ・ヘル ス/ライツやジェンダーの公正を擁護するだけでな く、女性の地位向上を目指したサービスも実施して いる。NGOも、政府のICPD行動計画の実行状況を 監視する上で重要な役割を果たしている。 しかし成功するかどうかは、相互に支援する提携 関係を築けるか、既存の提携関係を効果的に生かせ るか、政府官僚に協力関係を支援させることができ るかにかかっている。1998年の調査では、回答を寄 せた114の開発途上国のうち、政策やプログラム実 施のさまざまな段階にNGOの参画を推進する効果的 な措置をとった国は49カ国にすぎないことがわかっ た。 資金の調達 ICPDの目標は、人権と個人のウエル・ビーイン グを推進し、貧困と闘い、国ならびに世界全体の安 全保障を向上させるのに必要であると世界的に認め られている。しかし、そのための資金は不足してお り、各国政府は自国の将来像を現実のものにするた めに資金拠出の公約をするかどうかの重大な決断を 迫られている。 要 約 4 ICPDでは、人口とリプロダクティブ・ヘルスの活 動のために、2000年まで毎年170億ドルが必要にな ると推定された。そのうち3分の2(113億ドル)は 途上国が、3分の1(57億ドル)は国際援助国が負担 することになっている。 1997年の時点で、開発途上国は年間約77億ドルを 拠出したが、その総額の大半は、中国、インド、イ ンドネシア、イラン、メキシコの5カ国が占めてい る。その他の開発途上国、特に51の後発開発途上国 は、国内のニーズを満たすだけの公的資金も民間財 源もなかった。 1997年の国際援助は20億ドルに満たず、目標金額 をはるかに下回った。オランダ、ノルウェー、デン マークなど1990年代の主要援助国は、国民総生産 (GNP)に占める開発援助(人口分野も含む)の割 合が比較的大きい。また、この他にも、とりわけオ ーストラリア、フィンランド、イギリスが人口分野 への援助の配分を増加させている。一方、アメリカ は現在も人口関連の活動に関して援助国をリードし ているとはいえ、最近はかなり支援の水準を落とし てきている。 資金拠出が現実に増加しない限り、資金不足によ って、望まない妊娠、人工妊娠中絶、妊産婦死亡率、 乳幼児死亡率は高い率のまま続き、HIV/エイズが 今よりさらに急速に蔓延することもありうる。資金 不足はまた、人権とヘルスケアの平等を確立するこ とに向けた進歩が以前よりさらに遅くなることを意 味する。 NGOと財団を含む民間セクターがこの援助の穴埋 めをする役目を果たしており、またサービスに料金 を課すことで開発途上国でいくらかの財源が生み出 されている。 公約した資金の規模や拠出源を拡大すること、な らびにそれらの使用に関する運営・管理を改善する ことが緊急の優先課題である。断固として行動し必 要な資金を提供することで、機会をとらえることが できるかどうかによって、21世紀の生活に大きな影 響が現れる。現在の世界人口にさらなる10億、そし てその後の10億が加わるのにどれだけの時間がかか るのか、新しい10億が貧困や人権を奪われた生活環 境に生まれてくるのか、男女の平等が確立していく のか、また人口増加が天然資源と環境にどのような 影響を及ぼすのかは、今後10年間の決断によって決 まってくる。 より詳しい情報をお求めの方は、下記までお問い合わせ下さい。 United Nations Population Fund, Information and External Relations Division, 220 E. 42nd Street, New York, NY 10017, U.S.A. Tel. 212-297-5020; fax: 212-557-6416. E-mail: [email protected]. Website: www.unfpa.org.
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