地元NOSAI組合の通信員が取材した話題性の濃い地方ニュースが満載 2006/09/29更新 独自の交配技術で3品種を種苗登録 永遠に追求 トルコキギョウ新品種開発/花き産地育成 庄内町/小林金市さん トルコギキョウの品種開発に取り組む、庄内町(旧余目町)連枝の小林金市さん(80)。トルコギキョウとリンドウとい う種の異なる交配によって新品種を開発。「鳥海の紅」、「鳥海の輝」、「鳥海の夢」を種苗登録するなど、多くのオリジナ ル品種・系統を作り出し、市場から注目を集めている。昭和40年代には、水稲地帯の複合経営を目指して、切り花生 産にいち早く取り組むなど、庄内地域の花き産地育成の中心として活躍してきた。 小林さんは、1951年に地区の友人5人と、水田の裏作としてチューリップ の球根栽培に取り組み始めた。水稲主体の庄内地方でも、米一辺倒の時 代から、ほかの品目を導入しなければならない時代が来るとの考えからだ。 当時、球根は主に海外に輸出され、10㌃当たりの収益がコメの5、6倍にな るなど、生産者にとって魅力的な作物だった。しかし、円高ドル安で種球の 価格が下落、米価の上昇で畑地から水田へ移行する農家が増え、球根生 産は衰退していった。 小林さんたちは69年、球根生産からハウスでの切り花栽培へと移行。チ ューリップやグラジオラス、ユリなど、市場での販売価格や需要動向を常に 把握し、栽培する品種を変更するなど有利販売に努めた。 「人と同じことをしては、同じものしかできない。思 いつかないことや変わったことを行ってこそ、新しい ものが生まれる」と話す小林さん その中で、種苗会社の社員からストックの栽培を勧められ、花の色がピン クの品種「初桜」を「庄内ピンク」として販売したところ、仙台などの生花市場 で、高値で取引きされたという。このことがきっかけとなり、栽培農家も増加、面積も拡大し、花き産地として市場での評 価を得ることになった。 しかし、産地間競争が激化する中で、オリジナル品種の必要性を痛感した小林さんは、1984年から新品種育成を 開始。 トルコギキョウに属の異なるリンドウを交配したほか、リンドウにトルコギキョウを交配するなど、試行錯誤を繰り返し た。その結果、1997年、トルコギキョウにキキョウ科の「やつしろ草」の花粉を授粉したものから、採種することに成 功。翌年、その種子を播種し、従来のトルコギキョウとは形態の異なる系統の新品種を開発した。 小林さんが行った種の異なる交配は、日本で初めての技術として、学術的にも高い評価を得るとともに、特許を取 得。2000年には、新品種開発によって育成された、赤紫色の覆輪で花形は鐘状の「鳥海の紅」、白地に濃青紫色で 覆輪種の「鳥海の輝」、クリーム黄色地に弁が赤色の覆色種の「鳥海の夢」の3品種を種苗登録した。 小林さんは「品種育成は私の一生の仕事。今は、ユリの花に似た大輪種の育成に取り組んでいます」と意欲的に話し ている。 【 トップへ|バックナンバーへ|農業共済新聞山形版へ】
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