sa mp le Ecomaterials Forum 2005 Annual Report エコマテリアル・フォーラム 2005 年度アニュアルレポート (簡易版) 目 次 sa mp le 1.巻頭言. .........................................................1 2.年間展望 ........................................................2 3.ワーキンググループ成果報告書 (概要) ...........................27 産業廃棄物、とくに建築廃材の循環型処理技術の調査 ................28 先端環境界面科学による環境修復/環境調和プロセス技術の開発と普及 ....32 多元的なエネルギーシステムとデバイス材料の検討 ..................36 Nature Inspired Materials .......................................43 環境問題のための自治体ラウンドテーブル ..........................46 個別の学協会における環境教育を共同討議するためのラウンドテーブル ......50 エコマテリアルの社会経済学 ......................................52 社会蓄積量から見た資源有効利用の評価 ............................53 4.フォーラム活動カレンダー (2005 年 4 月∼2006 年 3 月) ........... 57 5.トピックス紹介 (エコマテリアル・フォーラムメールマガジン再掲) .................. 60 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 1.巻頭言 エコマテリアル・フォーラム 会 長 独立行政法人理化学研究所 理事 土 肥 義 治 1993 年に未踏科学技術協会内で発足したエコマテリアル研究会 は、2005 年 4 月から第2期に移行し、エコマテリアルフォーラムと 改名し新たな活動を開始いたしました。エコマテリアル研究会発足 当時の1990年代前半は、物質とエネルギーを多消費する20世紀型の 経済社会の歪みが顕著となり、さまざまな場面で地球環境問題が強く意識されるようになっ てきました。このような背景から、持続可能な循環型社会の形成が世界各国で急がれ始めま sa mp le した。 研究会では、 「エコマテリアルとは、資源から廃棄までのライフサイクル全体を通じて、人 にやさしく、環境負荷を最小にし、特性・機能を最大とする材料である」と定め、エコマテ リアルの開発、評価、普及に努めてきました。研究会の 10 年余の活動を通じて、多くの大学 でエコマテリアル関連の講義が開講され、研究機関においてはエコマテリアル研究プロジェ クトが強力に推進されるようになりました。また、エコマテリアルの概念は学会だけではな く産業界においても定着し、多様なエコマテリアルが実用化されつつあります。このように、 材料開発の方向に環境配慮技術という新しい視点を定着させた研究会活動は、社会的にも極 めて大きな貢献をしたと言えると思います。 新たに発足したエコマテリアルフォーラムの目標は、持続可能な循環型社会における物 質・材料の主役としてエコマテリアルを登場させることにあります。循環型社会におけるエ コマテリアルは、20 世紀型社会で使用されてきた物質・材料の延長上にはなく、独自の発想 で創り出される新たな物質・材料であろうと考えています。第一に、会員の皆様が独創的な 新規エコマテリアルの開発に挑戦されることをお願いしたいと思います。第二は、循環型社 会における物質・材料生産技術の本質的見直しです。すなわち、地球の限界を前提とした生 産技術であり、この生産技術も現行技術・プロセスの延長上にはないように思います。第三 に、エコマテリアルが主役となるための技術基盤と社会基盤の構築です。エコマテリアルの 成長基盤づくりとして、VAMASにおける環境材料の国際標準化、個別エコマテリアルのISOや JISにおける試験法の標準化、エコマテリアルの認定ガイドライン作成、政府助成による多様 な実用化試験などが挙げられます。フォーラムの役割は、新しいエコマテリアルを登場させ、 社会で主役として活躍できる基盤づくりを着実に進めることです。 フォーラムには、学問・研究分野を超えて産学官の個性豊かな研究者や技術者が参加され ています。シニアの会員の皆様には、この研究会活動を通じて、個性あるエコマテリアル研 究プロジェクトを組織していただきたいと思っています。一方、若い会員の方々には、研究 者、 技術者としての夢を実現させるためにフォーラムを最大限に利用していただきたいと願っ ています。 1 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 2.年間展望 エコマテリアル・フォーラム 幹事長 独立行政法人物質・材料研究機構 原 田 幸 明 2005 年は、地球環境問題にとって画期的な年のひとつとなった。それは、懸案の京都議 定書が前年のロシアの批准をうけ、2 月 16 日に発効したことである。知ってのとおり、京 都議定書は温暖化ガスの人為的の増加による気候変動に対して、1997年12月に京都 市で開かれた気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)で合意された国際協定であ sa mp le り、そこでは温室効果ガスの排出削減義務を2012年までの削減目標はEUが8%、日 本が6%などとを定めた。2004 年11月のロシアの批准で条件が整い、2月16日の発効 が決まったものである。なお、百四十カ国と欧州連合(EU)が批准してているが、世界最大 の排出国の米国は離脱した。 この京都議定書の発効にともなって、各国で新たな動きが起こっている。EU では年度当 初から排出権取引制度がスタートし、6 月には EU で排出量取引スキームの第一期国家割り 当ての審査も終了した。それにあわせて、イギリス・中国、ドイツ・ロシア、イギリス・ インド、EU・中国などのヨーロッパ諸国とアジアを中心とする他の大国との間での環境関 係の協議が頻繁に持たれるようになり、京都議定書に同意していないアメリカも EPA と中 国の大気環境改善協議がもたれるなど、地球環境問題に対する取り組みは、いよいよグロ ーバライズしてきた。さらに、EU ではポスト 2012 の気候変動政策の柱が作成されるなど、 ヨーロッパでは「Kyoto Protocol は稼動した、次はどうするか」という段階に入ってきてお り、それがアジア圏を巻き込んだグローバルな展開となることは疑いない。 なお世界の 1/4 の CO2 を発生していながらも京都議定書から離脱したアメリカにおいて も、進歩的なロサンゼルス市から保守的なテキサス州ハースト市まで 35 州 2,900 万人の 市民を代表した市長が米国が議定書を批准していれば義務付けられていた基準(温室効果 ガスを 1990 年比で7%削減)の実現に取り組むと宣言し、その後共和党員であるニューヨ ーク市長までその宣言に参加するなどの動きが起こっている。 わが国でも、京都議定書の発効を受けて「京都議定書目標達成計画」を立て、実行の段 階に似入った。クールビズはその象徴的な取り組みとなったが、1980 年代の産業界での徹 底した省エネルギー化を経ての 1990 年基準を突破するにはさまざまな側面で課題が大きい ことも事実であり、技術的な画期的なイノベーションとその普及と政策的なブレークスル ーが求められていることも事実である。 なお、2004 年の温室効果ガス総排出の速報値は 1990 年比で 7.4%増であり、2005 年の 2 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 6 月、9 月、10 月の世界平均地上気温は 1880 年以来過去最高、一時期減少した南極上空の オゾンホールも再び最高水準に戻った。 化学物質管理では、EU における REACH(新化学物質規制)の議論が 2005 年を通じて行 われ、12 月に閣僚理事会で合意されるに至った。REACH は Registration, Evaluation, and Authorization of CHemicals(化学物質の登録、評価、認可)の略称であり、年間生産 1 トン以上の化学物質が対照となり、企業は扱う化学物質物質の固有の特性と危険性に関 する情報、用途、及び初期リスク評価(製造量 10 トン以上の場合)をまとめ、登録書類 一式を提出する登録(Registration)が求められる。提出された登録情報は加盟各国当局の 持ち回りで評価(Evaluation)される。書類審査と対象物質の 2 種類の評価があり、書類 審査は動物テストの提案をチェックし、物質評価は人間の健康と環境に高いリスクがある sa mp le と疑われる物質に関し必要ならば登録者にリスクを明確にするための追加情報の提出が求 められる。 その中で発がん性物質、変異原性物質、生殖毒性物質、及び難分解性で環境中 に蓄積する化学物質で非常に高い懸念がある全ての物質は認可 (Authorization) の対 象となる。認可は、当該物質の使用が適切に管理される、あるいは社会経済的な便益がリ スクよりも重要であると企業が証明できた場合にだけ与えられ、後者の場合には代替物質 (substitution)の可能性の検討が推奨されることになる。さらに、社会経済的要素を十分 考慮したうえで、許容できないリスクを及ぼす物質は制限 (Restriction) される。制限 には、特定製品の使用禁止、消費者の使用禁止、あるいは完全な禁止などがある。 この REACH は、2020 年までに化学物質の影響を最小にすることを目指した、いわば ①「一世代目標」である。REACH の考え方は基本的に②「予防原則」に基づいており、 ③「立証責任」も政府等から企業側に移行している。また、新規化学物質だけでなくすで に市場に出ている④「既 存化学物質」もその対象 となる、さらに、⑤総て の情報が公開される、な どの特徴があり、スウェ ーデン政府等は、予防原 則、代替原則、ライフ・ サイクル・アプローチ、 及び、”一世代目標 (one-generation target)” を REACH の根幹として 高く評価している。他方 で日本政府は、中国等に 平成18年1月13日 製造物の安全性確保・品質向上のための 川上から川下を通 じた対応に関する検討会 「製品含有化学物質情報伝達に係る基本的指針」より おいても類似のシステム 3 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) が検討されていることも合わせて、産業面での影響に強い懸念を示し、①適切な化学物質 管理のためには、化学物質の存在形態(液状か、粉末状か、単一物質か、複数の物質の混 合物か、成型品になっているか等)や暴露形態を十分に踏まえた対応が必要、②部素材・ 部品の製造プロセス上混入する可能性がない化学物質についても、含有物質情報が求めら れるなど部素材・部品製造プロセスへの理解の不足に起因する問題や無駄が生じる、③労 働安全衛生、リサイクル推進、資源制約克服、環境保護等の目的毎に要求される化学物質 情報の水準等は異なるはずであるにもかかわらず目的が理解されないまま過剰な情報が求 められる、などで特に中小の企業等に過剰な負担となる恐れを指摘し、さらに④含有物質 情報が知的財産としての側面を持つことにも注意を促している。 もちろん、日本政府にしてもアジェンダ 21 の「ライフサイクルを考慮に入れた化学物質 管理」の考え方を再確認し、「人の健康保護や環境保全」という目的の重要性については理 sa mp le 解を示しており、懸念点を克服しつつ、製造物の安全性確保・品質向上のための 川上から 川下を通じた対応として、図 1 のような管理基準適合材料・部品データベースの必要性を 2006 年 1 月の委員会で打ち出している。このような議論を進めていくためには、リサイク ル・資源確保や環境・健康影響など含有物質情報の目的に合致した科学的な管理下限のデ ータが必要となってくる。図 2 に示すのは、JST の循環型社会の中の「マテリアル・リー ス」の取り組みで提示されたリサイクル・資源確保の面からの資源指標の一例であるが、 環境・健康影響などの側面からもこのような議論がこれから必要となってくるものとおも われる。 金組(0.01mg/kg) 銀組(1mg/kg) 錫組(10mg/kg) 銅組(0.1g/kg) 鉄組(1g/kg) Os 1000000 Te 300000 Rh 1000000 Re 200000 Ir 1000000 Pt 200000 Au 1000000 Ru 200000 Pd 500000 In 50000 Ag 25000 Lu 10000 Ge 10000 Tm 10000 Hg 10000 Tb 10000 U 10000 Ho 8000 Ta 8000 Eu 8000 資源指標からみた元素の分類 (○○g/kg)は製品中の管理下限の目安 4 Er 3000 Yb 3000 Br2 3000 Hf 3000 Se 3000 Be 2000 Dy 2000 Gd 2000 Bi 2000 Sm 2000 Th 2000 Pr 2000 Ga 2000 Mo 1000 Sb 1000 W 1000 Y 600 Nd 600 Li 600 Cd 400 Mn La 400 Cr 13 12 Nb 400 Ti 7.4 B 400 Mg 3.6 Co 300 Al 1.5 Ce 300 Fe 1 V 200 Si 0.6 As 200 Zr 200 Ni 200 Sr 200 Cu 120 Pb 100 Zn 70 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 化学物質管理のもうひとつの重要な展開は、ナノ物質に対する生体・健康・環境影響の 議論が進んだことである。このナノ物質の生体・健康・環境影響は数年前からアメリカで はナノテクノロジーの社会的影響のひとつとして意識され取り組まれてきており、2004 年 には英国の王立協会が政府に対して提言を行うなど取り組みが進んでいたが、わが国でも 2005 年には、2 月に産総研、物材機構、環境研、衛生研が協力した「ナノテクノロジーの 社会的影響」のシンポジウムが開催され、その各機関協力の枠組みで、科学技術振興調整 費研究として「ナノテクノロジーの社会受容促進に関する調査研究」が実施された。エコ マテリアル・フォーラムも、上記調査研究の「ナノテクノロジーの社会・倫理影響」のグ ループと密接に連絡をとりこの調査に協力した。さらに、国際的にも、学術会議が英国王 立協会と二回のワークショップを開くなど取り組みは確実に広がっており、ナノテクノロ sa mp le ジーの国際標準化検討の中にもナノ物質の影響が取り上げられており、今後の展開が注目 される。 循環型社会の構築の面では、わが国の自動車リサイクル法の本格施行が世界的にも大き な出来事である。わが国のリサイクル法は、この自動車リサイクル法で大枠として当初予 定していた包括的なリサイクル体制を準備したことになり、これからは、それらの見直し と、個別リサイクル法の強化に力が注がれることとなる。2005 年度は最初にスタートした 容器包装リサイクル法の見直しが着手され、自治体の負担の問題、サーマルリサイクルの 位置づけの見直しなどが議論されている。同様のリサイクル法の見直しはドイツでも行わ れ、デポジット制度の簡素化がなされている。 また、2005 年はリサイクル問題の国際化が意識されだした年でもある。産業構造審議会 はアジア域での資源循環促進のための課題検討を報告し、中央環境審議会にも国際循環型 社会形成と環境保全に関する専門委員会が設置された。現実でも動き出した自動車リサイ クルにおいて国内でリサイクルされる使用済み車が予想を下回る、アルミニウムのリサイ クルにおいてホイールなどの高級品が国内リサイクル市場から姿を消しつつある、銅スク ラップの海外輸出量が急増し、国内のナゲット業者が激減するなどの現象が現れだしてお り、これからわが国のリサイクル基盤自体が問われようとしている。 月日 事項 1月1日 EU 域内の排出権取引(EU GHG Emission Trading Scheme, EU-ETS)開始 2 月 16 日 京都議定書発効 3 月 11 日 中環審「地球温暖化対策推進大綱」第二次答申 3 月 15 日 企業のCO2排出量算定・報告・公表制度創設 3 月 16 日 産業構造審議会地球環境小委員会「京都議定書目標達成計画」の策定 5 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 3 月15,16 英国・ロンドンで初のエネルギー・環境閣僚円卓会合 3 月 22 日 欧州委員会 3 月 22 日 05年2月北半球高緯度地域で広範囲にオゾン全量減少と発表(気象庁) 3 月 29 日 地球温暖化対策推進本部「京都議定書目標達成計画」了承 ポスト 2012 年の気候変動政策の柱を作成 小泉首相夏の軽装を促す 新首相官邸に家庭用コジェネ燃料電池の世界商用一号機 4 月 11 日 IPCC、CFCs 代替物質による地球温暖化防止に向けた報告書発表 4 月 12 日 欧州委員会、イギリスの排出割当総量増大の申請を正式に拒否 4 月 19 日 気候変動問題、EU 代表団とアメリカ代表との協議(ワシントン) 4 月 27 日 夏の軽装広げる名称「COOL BIZ」に決定 4 月 27 日 EPA と中国当局、大気質改善に向けた協力を協議 4 月 28 日 「京都議定書目標達成計画」閣議決定 5 月 14 日 アメリカ 132 市長が京都議定書指示、ブッシュ政権批判 5 月 19 日 日本付近の年平均気温、約100年後には約2∼3℃上昇と気象庁予測 5 月 20 日 中環審専門委員会温暖化長期目標案「気温上昇、1850年比+2℃以下に」 5 月 26 日 03 年度の日本の温室効果ガス総排出量、90年比8.3%増と発表 6月7日 G8 諸国の学術団体、気候変動対策を求める共同声明を発表 6月8日 ドイツ・ロシア環境会談を開催、地球温暖化対策での協力関係 6 月 16 日 04 年の HFC・PFC・とはお排出量 2,340 万トンに減少と発表(産構審) 6 月 19 日 EU 排出量取引スキーム第 1 期の国家割当計画の審査がすべて完了 6 月 21 日 ドイツ環境省、産業界による六フッ化硫黄(SF6)の自主規制発表 6 月 28 日 16年度フロン類破壊量、計2,976トンと発表(経産省・環境省) 7月1日 海面水位、依然過去 100 年で最高の高さと気象庁が浸水被害へ注意喚起 7月1日 モントリオール議定書締約国特別会合 2006 年の臭化メチル使用削減合意 7月8日 G8 サミット、気候変動等に関する宣言を採択 7 月 21 日 環境省「京都議定書目標達成計画実施・環境税検討推進本部」を設置 7 月 21 日 英国、気候変動協定で目標値の 2 倍以上に上る 1440 万トン CO2 削減と発表 7 月 22 日 地域でのエネルギー起源CO2排出抑制プロジェクト16件が採択 7 月 22 日 世界の05年6月平均地上気温、6月としては観測史上最高と気象庁発表 8 月 25 日 「再生可能エネルギー導入による CO2 削減計画」環境省経産省が 2 市で認定 9月9日 05年の南極オゾンホール、過去最大級となる見込みを気象庁発表 9月9日 独環境省「地球温暖化防止への廃棄物処理業界の貢献と今後の可能性」発表 9 月 26 日 IPCC CO2 回収・貯蔵に関する報告書発表 9 月 27 日 CO2削減テーマに、2005サステナブル建築世界会議東京大会 sa mp le 4月8日 10 月14 日 05年9月の世界平均地上気温、9月としては1880年以降最高と気象庁 6 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 10 月20 日 クリーン開発メカニズム(CDM)理事会、初めての排出削減クレジット発行 10 月21 日 04年度の日本の温室効果ガス総排出量速報値、90年比7.4%増と発表 10 月24 日 欧州委員会、第 2 次欧州気候変動プログラム(ECCP II)のスタートを宣言 10 月25 日 環境省、税率炭素1トン2400円の環境税案公表 11 月4 日 「メタン・トゥ・マーケット・パートナーシップ」の第 2 回年次会合 17 カ国に 11 月11 日 05年10月の世界平均地上気温、10月としては観測史上最高と気象庁発表 11 月28 日 第 11 回気候変動枠組み条約締約国会議・第 1 回京都議定書締約国会合 12 月1 日 ドイツ、医薬品への CFCs の使用禁止 12 月21 日 イギリス・中国、石炭火力発電での炭素回収・貯蔵事業に合意 sa mp le 化学物質管理関係 月日 事項 1 月 13 日 EPA 無機金属のリスク評価に関する枠組み案を公表 1 月 14 日 神栖町で高濃度のジフェニルアルシン酸を含むコンクリート様の塊発見 1 月 19 日 欧州議会 1 月 31 日 欧州委員会、2011 年までに水銀の輸出を禁止の水銀汚染対策戦略を提案 2月1日 産総研、物材機構、環境研、衛生研で「ナノテクと社会」シンポジウム 2 月 17 日 食品中カドミウム国際基準値案 2 月 23 日 学術会議・英国王立協会で「ナノテク影響」ワークショップ(東京) 2 月 24 日 中環審VOC排出抑制制度についての2報告書案 2 月 25 日 UNEP 3 月 14 日 環境省、内分泌かく乱物質についての新取組方針「ExTEND2005」公表 3 月 18 日 届出排出・移動総量は約53万トンと15年度PRTRデータ公表 3 月 24 日 化審法既存化学物質の安全性情報収集・発信事業へ3省合同検討委員会設置 3 月 29 日 化審法第一種特定化学物質に「ジコホル,ケルセン」 「六塩化ブタジエン」を追加 4月1日 環境省製品中有害物質による環境負荷低減を検討開始へ 4 月 27 日 欧州委員会、新化学物質規制についてハイレベル協議 5月2日 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs 条約) (COP1)開催 5 月 11 日 EPA、2003 年の有害物質排出インベントリーを公表 6月1日 化審法既存化学物質の安全性情報収集・発信プログラム開始 7月5日 欧州議会・閣僚理事会、EPER を包括化した欧州版 PRTR について合意 7月5日 EU「REACH 試験に関する戦略的パートナーシップ(SPORT)」成果発表 7月9日 第28回コーデックス委員会総会、食品中カドミウム国際基準値案を採択 7 月 11 日 政府が5つのアスベスト対策示す 7 月 12 日 学術会議・英国王立協会第二回「ナノテク影響」ワークショップ(ロンドン) 新化学物質規制(REACH)について公聴会を開催 JECFAが評価結果公表 水銀など重金属への取組みについて合意 7 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 8月9日 化学物質の環境リスク評価 8 月 11 日 廃棄物焼却施設からの 16 年ダイオキシン類排出総量 15 年比約 8%削減と発表 8 月 12 日 環境省検討会、RoHS 対象物質など、製品中有害物質の情報開示強化を提言 9 月 13 日 資源有効利用促進法改正概要案で製品内のRoHS規制6物質管理へ 9 月 24 日 国際化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM) 9 月 24 日 EU ロッテルダム条約締約国会議 SAICM 準備会合でアスベスト全面禁止要求 第4次取りまとめ分の結果を公表 最終案作成 10 月12 日 ドイツ、合成ナノ粒子が労働者や環境に与える影響についてシンポジウム開催 11 月17 日 EPA 有害化学物質の排出に関する施設レベルデータを公表 11 月30 日 イギリス、ナノ粒子の潜在的なリスクについて調査計画 12 月7 日 EPA ナノテクノロジー白書の草案を公表 sa mp le 12 月13 日 欧州閣僚理事会、EU 新化学物質規制(REACH)に合意 資源・循環型社会関係 月日 事項 1月1日 「使用済自動車の再資源化等に関する法律」 (自動車リサイクル法) 本格施行 1 月 12 日 ドイツ・デポジット制度 1 月 21 日 14年度の産廃総排出量約3億9,300万トン、一般廃棄物5,161万トン 連邦内閣が簡素化案を承認 1人1日では1,111グラム排出と環境省発表 1 月 21 日 産構審WGアジア域内での資源循環促進のための課題検討を報告 2 月 11 日 仏、スーパーのレジ袋対策検討開始 2 月 14 日 中環審、市町村の一廃処理の方向で廃プラ「焼却・熱回収」処理を提言 2 月 14 日 イギリス政府新たな廃棄物戦略の協議文書を発表 2 月 18 日 独「電気・電子機器の販売・回収・環境に配慮した廃棄処理法」承認 2 月 21 日 循環型社会形成推進基本計画第1回点検「個別リサイクル法の強化」を 3 月 24 日 独「電気・電子機器の販売・回収・環境に配慮した廃棄処理法」施行 3 月 30 日 英、産業廃棄物削減・資源効率の改善に向けたプログラム創設 3 月 31 日 16年の有害廃棄物等の輸出14,057トンと発表 4月1日 イギリス、廃棄物処理当局間で「廃棄物排出枠取引スキーム」実施 4 月 22 日 16年度の家電4品目引き取り台数、約1,121万台と発表 4 月 25 日 製品3R高度化中間報告廃棄時要注意物質の含有マーク表示提案 4 月 28 日 21 カ国が東京で3Rイニシアティブ閣僚会合 日本政府、「ゴミゼロ国際化行動計画」を発表 8 5 月 11 日 産構審・中環審専門委員会合同会合で自動車用バッテリーのリサイクルを検討 5 月 25 日 独、廃車令改正、重金属の使用禁止を、乗用車の部品や原材料にも拡大 5 月 26 日 廃プラの焼却・熱回収盛り込み「廃棄物の減量・適正処理推進基本方針」改正 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 5 月 27 日 16年度家電4品目のリサイクル実績を公表 7月1日 産構審、自治体収集・処理コスト開示求める容リ法見直し中間報告案、 7月1日 独、改正化学物質禁止令施行、有害物の分離・リサイクルが可能に 7 月 16 日 英、有害廃棄物基準変更、モニター、テレビ、蛍光灯なども有害廃棄物に 7 月 22 日 仏、EU の WEEE 指令・RoHS 指令を国内法に転換 7 月 25 日 産構審・中環審専門委合同会合で自動車バッテリーのリサイクル義務づけ検討 8月1日 中部商品取引所、鉄スクラップを商品先物市場に上場へ 8月1日 EPA 水銀を含有する機器をユニバーサル廃棄物とする最終規則公表 8 月 12 日 3Rシステム高度化WG、製品内のRoHS規制6物質管理など提言 8 月 18 日 EU 新包装廃棄物指令(2004/12/EC)を国内法制化期限(法制化 5 カ国のみ) 9月8日 広域認定制度追加で10県で廃FRP船のリサイクルシステム稼働へ 9 月 15 日 16年度実績ペットボトル、分別収集量増えるも生産増に追いつかずと発表 sa mp le 4年連続で法の基準値上回る 10 月11 日 フランス議会、生分解性でないレジ袋の販売・配布禁止を決定 10 月22 日 第 7 回日中韓環境大臣会合で循環型社会構築に向けセミナー開催等決定 11 月4 日 15年度のごみ総排出量5,161万トン1,106g/一人一日と発表 11 月15 日 環境省「3Rイニシアティブ」に関する今後の取組み内容を発表 11 月18 日 中環審に「国際循環型社会形成と環境保全に関する専門委員会」設置 11 月28 日 15年度産廃総排出量、前年度より約4.7%増最終処分量は2割減少と発表 12 月7 日 欧州議会・閣僚理事会、鉱業廃棄物指令に合意 12 月21 日 欧州委員会、廃棄物の発生抑制とリサイクルに関する新戦略提案 全般 月日 事項 2月8日 グリーン購入法の特定調達品目に 6 品目追加 3月3日 日本学術会議「環境と経済の調和」など 10 項目の推進目標 3 月 10 日 国連ミレニアムプロジェクト「環境と人類の幸福−実践的戦略」報告書 3 月 18 日 初の G8 環境開発大臣会合(英国ダービーシャー) 6 月 14 日 EU・中国環境担当閣僚級協議 7月5日 第七回エコマテリアル国際会議(シンガポール) 7月8日 中環審が日本の国際環境協力の方向性を答申 8 月 15 日 エコプロダクツ普及促進策について経産省の研究会が報告書作成 10 月11 日 イギリス・インド、持続可能な開発宣言に調印 研究・開発関係でのこの一年間の進歩は著しい。 特に、2005 年 4 月 8 日に新たに完成した首相官邸に世界商用一号機が導入された燃料電 9 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 池の技術的前進は著しい。それに先立つ 3 月には03ー04年度に NEDO で行われた燃料 電池の実証運転の結果が報告され、定置方は1ー5kw級の33台を都市ガス、LPG、 灯油改質、純水素で実施し、発電と熱の総合効率15ー20%、CO2 削減率 20%であり、 FC(fuel cell:燃料電池)車では14台で10か所の水素ステーションを使って水素605 kg充填し29600km走行し、燃費は28km/Lでハイブリッドより15%、ガソ リンの 2.3 倍燃費が優れることが報告された。現在、固体酸化物型1ー数千kw、47ー5 9%の発電効率、固体高分子型250kW以下で30ー40%、リン酸型100kw以下 で35ー42%熔融炭酸塩型1ー10万kwで41ー54%が技術レベルとなっているが、 この間は、特に固体高分子型での進歩が著しい。ちなみに、商品化を意識して各メーカー が開発している小型燃料電池には、1)水素ガス型として、a)金属水素化物改質型,b) メタノ ール改質型 があり、前者はSIIが1W5V規模のものを 125X50X30 のサイズで、後者 sa mp le はカシオ 200X 数十 X 数十 mm のサイズのものを発表している。また、2)ダイレクトメタ ノール型(DMFC)は、東芝が出力 12W11V サイズ 275X75X40mm、日立が 1W5Vk の出力、 NECが 290X275X57mm のサイズのものを発表しており、DMFCとリチウムポリマー 二次電池の複合の 3)ハイブリッド型として三洋と IBM が出力 12ー72W16V、サイズ 270X282X16ー54mm のものを発表している。 このような前進を支えているのが新しい材料の技術である。固体高分子型で、特に問題 となる電解質膜では、フッ素系のナフィオンが多く用いられているが、このナフィオンは、 親水領域と疎水領域が総分離し連結しあった構造で優れたプロトン伝導性と耐久性を両立 させているが、多段階の反応による合成が必要で高価、スルホン酸の分量を高めることに 限界でこれ以上のプロトン導電性は難しいとされており、さらに耐久性や DMFC の場合の メタノール透過性とそれに伴う出力低下や発熱などの問題が残されている。それに対し、 従来の膜からメタノール易透過構造を除外した炭化水素系の新材料や、水素透過性を向上 させさらに高メタノールにも使用できる電解質膜などが開発され、膜厚 45μm で出力 80mW/cm2 を出したと報告されている。ほかにも、ポリイミド+スルホン酸で 50%の高メ タノールに対応し、50W/cm2 の出力を出した例や、同じくするフォン酸基ベースで、ハロ ゲンを含まずにフレオンの 4 倍の導電性をもつ電解質膜の報告もある。さらに、フラーレ ンを硫酸根などで共有結合させた誘導体を用い 200 度でも安定で加水分解しない電解質膜 も報告されている。他方、フッ素系でも放射線照射で 6 倍の耐久性と 2 倍の出力を達成し た例や 100℃で 4000 時間の耐久性を実現したとの報告もある。また、高分子系以外にも、 ガラス電解質として、ゾル溶液中に白金担持カーボンと分散剤のポリビニルピドリドン をゾルゲル法で固化して得、無加湿で加湿状態と同様の出力を出したとの報告もある。 SOFC 用の固体電解質の分野でも新たな前進があり、ランタンガレート系セラミックス電 解質で燃料極のニッケルとの反応抑制にせリア系セラミックスを用いて内部抵抗を半減さ せ500度で出力28W、600度で37Wの世界最高水準に達し、50ー1kw程度の 電源として電動車椅子など携行電源を対象とできるものとして期待されている。 10 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 電極触媒材料の進歩も著しい。DMFC 用の負極材料として Pt-Ru が用いられてきたが、 資源的に負担の大きいこれらの素材に対して、Ru の代わりに CeO2 を用いた PtCeO2 電極 が開発され、能力的にも 1.5 倍の電流密度が実現され Ru だけでなく Pt の使用量も 1/3 に することができるようになった。また、Ru は使用するものの、粒子径を従来の 2∼10nm から 1.95∼2.05nm へと制御することで PtRu 系の出力を 1.5 倍にできるとの報告もある。 セパレータでは、さまざまな材料が競い合っている。カーボン系では厚さ 1mm が可能と なり金属系の 1/4 の重量で腐食しないことを特徴としている。さらにカーボンを導電性高分 子と混合したもので低溶出でカーボンの弱点であった成形性に優れ 200 円/枚が目標とでき る低コスト化も進んでいる。金属系ではチタンのクラッド材の DMFC 用セパレータ材が開 発され、厚み 1/2 で耐食性優るとされている。またステンレスに異種金属をコーティングし たクラッド材では、厚さ 0.1mm でカーボン系セパレータと同等の発電性能をもち体積、重 sa mp le 量ともに 1/2 にできたとの報告もある。 燃料電池基盤材料の開発も進んでいる。感光性ガラスを利用した DMFC 用基盤材料が開 発され、それを用いると 50∼200μm の穴に電池が内蔵され、 2cm のコイン型で 25mW/cm2 とリチウム電池並みの出力が可能であると報告されている。なお、感光性ガラスを用いる のは紫外線パターン転写を行い加熱現像するもので、その穴にナフィオン溶液が注入され る。 燃料電池の多くは水素ガス型であるが、水素の製造のための触媒材料や酸素分離膜の開 発も進んでいる。水素製造触媒では、酸化チタン-Pt 系で CO が酸化除去可能とし従来の Ru-Pt 系では 6%あった水素の酸化ロスを 0.9%に低減できたとの報告もある。酸素分離膜 では、酸化物系セラミックに特殊な材料構造をもたせることで 37cc/cm の世界最高の投下 性能を達成したとの報告があり、天然ガスから液体燃料を製造する GTL 技術の分野への適 用も期待されている。また、酸素透過セラミックスとステンレスセパレータを一体化して 6cm角の酸素透過膜モジュールを20スタックもちいて、従来は水蒸気改質で700度 で水蒸気と反応させていたのに対して、一方から空気を供給し酸素のみをイオンとして透 過し他の管からのメタンと反応させて CO と水素を得る部分改質の小型改質器も登場して いる。 水素吸蔵合金では、従来773K6.5MPa で水素活性化処理が必要であったの に対し、FeTi をメカニカルアロイイングで1.8wt%の吸蔵率が300度加熱で実現され ている。その他の水素用構造材料でも、JRCM水素案全利用NEDOプロジェクトの 2003、 2004 年の成果が報告され、高圧特性、水素脆化、疲労・トライボロジーやSUS304N、 316Lの拡散接合 母材と同等以上の引っ張り、シャルピー衝撃吸収特性、水素暴露後 の引っ張り試験、CFPRのは断強度の時間依存性などの基礎データが取得されるととも に、水素スタンド用FRP製の水素貯蔵容器設計基準へと進んでいる。 燃料電池システムとしては、改質水素ガス型以外にもさまざまなアプローチがなされて いる。同じ水素を用いながらも、固体化合物から水素を取り出すSBHタイプは水素化ホ ウ素ナトリウムから水素を取り出すパッシブ型であり、水素発生、発電セル、昇圧制御回 11 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 路の3部構成からなり、固体のSBHにリンゴ酸が滴下され水素を発生する。このタイプ は常温でも高出力高効率が期待され、CO2も発生せず、圧力の変動だけで水素の発生制 御できる利点があり、現在の到達点は5V1Wを8h発電である。都市ガスやLPGから の燃料電池はこけまでもあったが、液体の灯油からも触媒活性化で灯油燃料電池も可能に なっている。また、バイオマス利用光燃料電池の研究も進んでおり、多糖類、蛋白質、有 機物、食品系廃棄物、アンモニアなどの水溶液に、TiO2 の n 型アノードで起こる光照射に よる電荷分離を用い、ホールでアンモニアなどを酸化的に分解し、電子はカソードに流れ、 酸素を還元して水にするシステムが報告されている。その反応は、 2NH3 -> N2 + 6H+ + 6e 6H+ + 3/2O2 + 6e-> 3H2O であり光電荷収率(IPCE)で20ー45%、1kW/m2 まで可能となっている。また、バイ オエタノールに対しても、シリカライト膜とアルミナを含まないゼオライトでバイオエタ sa mp le ノール浸透気化分離シリカ膜が開発され、疎水性で疎水性の高いエタノールを優先的に透 過して、40時間以上安定で70%のエタノールが得られ、従来のバイオエタノール西方 は酵母が作るので数%の濃度でバッチで個液分離後濃縮が必要だったのに対し、これで発 酵を行いながらエタノール抽出可能となると期待されている。さらに、リチャージャブル ダイレクトカーボン燃料電池も報告されており、固体炭素を燃料としてCO2への反応を 利用、5分の燃料チャージで83分52mW/cm2、44ー50mWの出力が得られて いる。この場合もキーテクノロジーは燃料側電極に用いた Ni 含有多孔質セラミクスである。 他のエネルギー変換素子で重要なものが太陽電池である。太陽電池では従来のシリコン 系に対して製造エネルギーがシリコン系より低いCIS素材 Cu In Se が開発され、光電気 転換効率12ー13%(Si15%)実験値は 19%が達成され、エネルギーペイバックタイム が Si の3ー4年に対し CIS は1年と優位性が報告されている。さらに2ー3ミクロンの 薄さで塗布でき、パネルと発電装置を一体化できるなどの優れた側面があり、年間20M W規模の生産が予定されているという。さらに、ナノレベルの結晶シリコンに非結晶シリ コンの組み合わせで200ミクロン厚薄膜とすることで、曲がる太陽電池が開発され、変 換効率18%と報告されている。また、有機薄膜太陽電池として透明電極を形成したガラ ス基盤(フィルム基盤)上に、ホール取り出し層と光電変換層を積層し、電子取り出し層 と金属電極を組み合わせ、p型材料は導電性ポリマーのポリチオフェン、n 型フラーレンを 使ったバルクへテロ接合型素子で、変換効率 3.4% (以前0.8%)とした 0.4cm2角 のものが報告され、100mW/cm2の出力を達成している。有機薄膜としては、ほか にも、n 型にフラーレンの30ナノ、p 型に亜鉛フタロシアニンの5ナノ、その間に真性半 導体となる i 層を15ナノ積層し、厚さ1ミクロンで変換効率 10%を達成したことも報告 されている。 色素増感太陽電池では、素子変換効率が 0.5cm2 セルで 8.1ー8.2%、65 度 1000 時間の 耐久性をもつものが、導電性高分子電極、非腐食性透明機能性有機化合物電解質、白金電 12 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 極で実現され、よう素系電解質から代替することで低コスト化が図れるとの期待がある。 また、電解質にポリマー材料としてPETフィルム間にイオン伝導性ポリマー=ポリビニ ルビリジニウム誘導体をはさんだものが開発され、5x9mmの試用電池で光変換効率 3.9%で1000時間劣化しなかったとの報告があり、従来の有機溶媒で問題であった劣化 しやすい、壊れた時発火するなどの問題の解決が期待され、さらにシリコン太陽電池と比 べ材料費が安いのも魅力である。また、TiO2 のナノ化で効率11%が達成され、5mm角 10cmまでの大型化が目指されている。 熱電材料では、耐熱温度800度が熱膨張差による破損抑制で達成され、1W/cm2 の出力を示し、目標は2W/cm2 に置かれている。低温域では Ag,Tl,Te 系でこれまで、43 0度で 0.8 以下であった指数を400度付近で 1.23 にし発電所、ゴミ焼却所 自動車排ガ スで利用も期待されている。 sa mp le リチウム二次電池では、正極に炭素の表面を2ー3ナノの二酸化マンガンで被服したも のを用い、電極の表面積が増し出力密度が5から6倍になり、127ミリアンペア容量の 電池を36秒で充電できるようになった。しかし、充放電の繰り返しで容量低下の課題が 残っているという。また、1分で充電できるリチウムイオン電池も登場し、現行1%/1 分に対して1分で80%、全体の充電に3分という高速充電が可能となった。これは、1 00ナノの金属系ナノ粒子の均一固定負極を用い、電解液も温度変化に耐えられる有機系 溶液に替えており、1000回充放電を繰り返しても容量低下1%である。さらに、有機 ラジカルを用いたゲル状利用の曲がる充電池も開発され、30秒以内の高速充電の後LE Dを20分点灯できており、ICタグなどに有望視されている。 瞬間に充放電が可能で有害になる可能性のある金属を使わないキャパシタについて注目 が集まっており、LCCO2で鉛蓄電池の1/27、ニッケル水素の1/50といわれて いる。当初、は蓄電量の少なさが問題であったが、活性炭素電極で蓄電量がリチウムイオ ン電池の半分と初期の60倍になるにいたっている。さらに、電極に新炭素材料で内部抵 抗大幅低減させることで2倍以上の高エネルギー密度の電気二重層キャパシタも登場した。 また。活性炭のフラーレン付着によるフラーレン電極で電気容量 3.2 倍 150mA/cm2 という報告もされている。 家庭用電気器具の省エネルギー化にはインバータ回路などのパワーデバイスの開発が大 きく貢献してきた。現在は、さらに性能の優れたワイドバンドギャップのパワーデバイス 素子の開発が進められており、2005 年もいくつかの前進があった。炭化珪素パワートラン ジスタでは、耐圧700VでON抵抗 1.01mオームcm2の世界最高性能スィッチング素 子が開発されており、今後10ー20Aの電流容量と 1.2∼2kVの高耐圧化が目指されて いる。SiC は Si のバンドギャップの約3倍であり絶縁破壊電界強度10倍となり耐熱性耐 電圧性に優れる超低電力損失パワー素子が可能であり、特に静電誘導型は SiC 結晶中の高 い電子移動度をそのまま生かせるとして、超低オン抵抗、高速スイッチング素子として期 待されている。その際、オン抵抗が小さいほど電力損失が小さく、現在市販のものではS 13 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) ITで耐圧1200V、オン抵抗12になっている。 超伝導も、エネルギー損失のない電力輸送として魅力的である。高温超伝導ケーブルと して線材20本をケーブル条にし1459Aに達したとの報告があり、2015年をメド に実用化が目指されており、ビスマス系20円では1Amあたり約 20 円のものが、5円と 銅と同等の価格レベルに設定できると期待されている。さらに19000mA級の高温超 伝導材も開発され、出力400kWの全超伝導モーターも完成し500トンクラス低速船 向けに発売が目指されるに至っており、従来型モーターより10%高い効率でかつ大きさ 1/10となり、船舶につけると年間11%の CO2 削減とも試算されている。 超伝導ではないが、電磁材料による損失ロスの低減の効果が実際の電力搬送で大きいこ とが知られている。2005 年も新たな電磁材料が開発され、メトグラスと呼ばれる非鉄アモ ルファスで電磁鋼板の損失30%減とすることができるに至った。国内の変圧器をすべて sa mp le メトグラスにすれば原発が4基いらなくなる計算になる。 エネルギーの発生、貯蔵、輸送の側面だけでなく使用段階でのエネルギー消費を抑える 努力も重要である。特に近年は、発光ダイオードや EL などの開発に見られるように発光系 の新素材の開発が相次いでいる。白色LEDでは、オフィス空間で蛍光灯10器790W を490Wと蛍光灯照明の40%の電力消費の低減が報告され、他にも25wで100w 電球並 4万時間の長寿命で白熱灯の26倍になるとの報告もある。街灯への応用でも1 0m離れて20ルクスと水銀灯と同等の明るさで消費電力20Wと水銀灯の1/10、発 光時の熱が従来の80度から50度と下がり、水銀灯1万2千時間に対して寿命7万時間 が見込まれ、価格も水銀灯の3倍程度の24万円になっている。JLEDS(LED照明 推進協議会)ではロードマップを作成し、現在50ルーメン台であるが、2008ー20 10年めどに100ルーメンを目指し、2010に一般照明に普及、自動車ヘッドライト に採用することで市場規模が現在の2500億から2015に6500億へ膨らむと見込 んでいる。その際、機能寿命の延長、光速維持率を50%からフィラメントと同様70% に見直しも必要としており、高電流化に伴い、封止材料、ボンディング材料、蛍光材料の 進化が求められている。LEDは照明器具だけでなくバックライトなどの応用でも省電力 化に貢献しており、2.5 インチサイズ液晶パネルに4個のLEDを用いて6000カンデラ /m2で電力20%削減が報告されている。また発光素子を直列に接続した二つの回路を 交互に作動させることで直流変換不要とした交流駆動LEDも報告されている。白色 LED は青色LEDをYAG入りの樹脂で覆い青の一部がYAGで吸収されて黄色とし、その黄 色と残りの青で白色を出しているが、LED用YAG蛍光体を40ナノと微細化し光の散 乱制御を行うなどの改善や。赤:ユーロピウム、緑:テルビウム、青:セリウムなどの発光材料 を1∼2ナノのクラスター合成をするなどの試みが積み重ねられている。これまで LED 用 蛍光体としては緑色がなく青と黄色で不自然な発光だったが、窒化珪素、窒化アルミ、酸 化ユーロピュームを用いたLED用緑色蛍光体が開発され、太陽光に近い色濃度6500 14 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) Kで発光効率28ルーメン/W、Ra 値(演色指数)81(蛍光灯60)ときれいな全色発 光が可能となってきている。 発光の基本となる青色LEDでも、サファイヤ基盤に膣化ガリウム系を綴じ込め層、下 地層、発光層、ガイド層と何層も積層し、下地層と発光層を連続性膜、発光層の加工を8 00℃以下の温度で行うことにより、処理をしない場合の1。4%程度から71%と発光 効率が従来の2倍と赤色レーザーと同程度に達している。LED 関連技術としては、他にも、 LED の平行光源を得る試みとして3cm角を均一にミニ反射板で点光源を平行化し厚さ CCFL(冷陰極蛍光管)並みとした例や、ブロックコポリマーの自己組織化によりナノ サイズ凸凹を GaP 化合物半導体基板上に作成し(大きさ100ナノ、間隔150ナノ、深 さ450ナノ)光の反射防止効果で臨界角以上に入射した光を取り出しLEDの光取り出 し効果を従来の数%から100%近くにした例がある。 sa mp le このような中で注目されているのが ZnO である。青色 LED では GaAs より省電力と期 待され、n 型 ZnO 単結晶の上にp型単結晶薄膜で pn 接合も可能となり窒素ドーピングで 紫外線域から可視光域の発光が確認されており、サファイヤ基盤に GaAs 素子から ZnO 基 盤 ZnO 素子となり結晶密度もアップし、明るさ10倍規模 消費電力、販売価格1/10 規模と期待されている。ZnOはTFTにも期待されており、そこでは液晶の各画素毎に TFT を置き液晶に加える電圧を制御して液晶を通過する光の量を制御することになるが、 ZnO-TFT の動作指標は電子移動度 50.3 平方センチ/ボルト秒(目標100)、しきい電圧 1.1V(従来は10V)が達成されている。ZnO の電子素子応用の課題としては薄膜の高純 度化、膜安定性と表面平坦性などを実現することが課題とされ結晶粒制御技術が期待され ている。さらにフォトリソグラフィーなどを用いることができれば、第八世代液晶基盤に も対応できると期待されている。さらに ZnO は ITO に替わる低抵抗 ZnO 透明電極として ディスプレイ、タッチパネル、太陽電池セル窓層、センサーなどの応用が期待されており、 0.00022 の低抵抗でばらつきも5%以下に抑えたとの報告もある。なお透明導電膜では TiO2 にニオブ添加でITO並みの 0.001 オームcmが実現されたとの報告もある。他にも 発光源としては、電界放出光源(FEL)ランプがあり、電子放出薄膜(陰極)と蛍光体 (陽極)をガラス管に真空封入したブラウン管と同じ原理で、粒径10nm のダイヤモンド 薄膜を用いた水銀を用いない蛍光管として、面発光源50ミリ角、1700カンデラ/m2、 0.35W の消費電力で60ルーメン/ワットと蛍光灯と同等で白熱灯の6倍の発光効率に相 当し表面温度上昇10度以下の報告がある。 ELは電流を流すと発光する材料であり無機と有機があり、有機は 低電流、青色可能、 発光効率がよい。有機ELは携帯のディスプレイ、カーオーディオなどが対象とされてい るが、将来は薄型テレビディスプレイにも期待されており、寿命が鍵とされ材料開発が進 んでいる。新規有機発光材料として熱に強い分子構造で、青はエネルギーが大きいが発熱 も大きく劣化しやすいのに対し青で23000時間と従来の2、3倍と携帯に必要な10 000時間以上を実現している。また有機EL層の電気伝導性を高め、緑色で90ルーメ 15 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) ン/Wと蛍光灯並みの77をしのぐ発光効率が実現されており、他にも、ワイドギャップ 材料で37ルーメン/W、直流5Vで700カンデラと従来の200ー300カンデラを 数倍凌ぐ発光材料も開発されている。発光素子と制御トランジスタを一体化することで発 光面積が広がり高輝度になり発光効率を 0.8%と高めた報告もあり、実用化に必要な2ー 5%に近づいてきている。無機ELでは、電圧をかけると発光する Mn,Cu,Ce などを利用 する薄型ディスプレイの開発があるが、高電圧の交流電源が必要、高輝度、長寿命の青色 材料がなかなか見つからなかった、有機は発光する有機物の組み合わせで多彩な色が可能 などの理由で相対的に有機に遅れをとっているが、有機は酸化や湿気による劣化が進み安 く輝度半減が1万時間との問題があり照明灯などへの応用面では無機 EL も期待されてい る。現在の到達点は低電圧高輝度3ー10Vで35万カンデラ(従来の無機100 有機 1000)に達し2万5千時間でも輝度が落ちない耐久性もあると報告されている。もた、 sa mp le その基礎となるフォトニック結晶の研究では、発光の多くは屈折率の高い半導体の内部に 止まり最終的には熱エネルギーとなり2割程度しか光として出ないが、発光体をフォトニ ック結晶に加工し特定の波長を存在できなくすると光エネルギーはそのまま外部に放出さ れ、450ナノ間隔の穴でその波長の光を存在できなくしてELの理論値の光取り出し可 能性が証明されるという前進があった。また、アゲハチョウにも鱗粉にフォトニック結晶 が存在し屈折率の異なる物質がナノオーダーで規則化した層状構造が拡散反射板となり特 定の光を透過/遮断していることも確認され今後の応用が期待されている。 このような機能素子の材料開発においては、ナノテクノロジーが期待されている。特に カーボンナノチューブの応用が多様に検討されているのが特徴的である。ひとつの例が、 LSI放熱に活用するもので、チップ電線とパッケージ電極をバンプで接合するフリップ チップLSIの受手側基盤バンプに用いるもので、従来の放熱性が不十分だった点の改善 効果が期待されている。また、大気中低電圧有機アクチュエータ材料として有機に導電性 炭素ナノ粒子を入れジュール熱の熱膨張で伸縮を数から数十ボルトで行う試みもある。キ ャパシタ電極への利用も取り組まれ、目標はエネルギー密度20Wh/kg、パワー密度 10kW/kgとリチウムイオン電池の10倍が目指されている。導電性樹脂としても含 有率1%で導電性発揮し、10%以上必要となるカーボンブラックより大きく優れている。 電界放出ディスプレーテレビ(FED)にもディスプレーのガラスにナノチッププリント で数ナノのチップに電子を振り分け画面に照射することが試みられ、大画面に強いと期待 されている。内層電導でもタングステン並みであり、LSIピア配線に多層CNTを用い ピアあたり 0.7 オームの低抵抗が達成されている。また、アルミに1%CNTをゴムを交ぜ 混合可能にして添加し、強度が鋳鉄の 1.3 倍、耐熱性も同等で熱伝導率アルミの 1.3 倍を実 現し自動車の軽量化 ブレーキにも応用が期待されている。 使用段階の環境負荷の削減を考えると構造材料の軽量化、高強度化の効果も大きい。ハ 16 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) イテンの構成比率を 47%としたワゴン車が発表され、軽量のマグネシウムも 400MPa の高 強度鍛造品が実現している。また耐熱性の向上も熱機関の効率化にとって不可欠であるが、 1000℃の温度変化に耐えるセラミックスがチタン酸アルミニウム+珪酸塩主成分の添加物 で実現されている。接合技術としても、亜鉛メッキ鋼板とアルミの拡散接合が可能となり ハイブリッドボディの実現に貢献すると期待されている。また、高強度銅合金では、銅ベ リリウム合金と同等の強度で 3.5 倍の導電率をもつ合金が熱処理でマトリックス中の銀を 最大限析出で実現され、従来トレードオフ関係とされていた強度と導電率の関係を覆した。 導電性の材料としては、他にも、高分子の細線を1分子レベルで制御して基板上に並べた 導電性高分子細線や、金属を上回る熱伝導率の炭素ファイバーで600W/m・K(銅は3 90)を実現した素材も登場している。摩擦も使用時のエネルギーロスの重要な要素である が、イオンプレーティングでBを含む TiN の厚さ3ミクロンの薄膜とし摩擦係数を 0.8 か 、歯車などの潤滑油不要とし、ピストンリングの摩 sa mp le ら 0.2 へと1/4にした報告もあり 擦半減で燃費1%改善が見込まれている。さらには黒煙薄膜とフラーレンの複層化で摩擦 を 0.4 ナノニュートンとほぼゼロにできる潤滑剤も開発されている。制震材料も Cu,Ni,Fe 含有 Mn ワイヤで減衰率 0.4 から 0.7(Mgなどは 0.2)を達成した報告があり、鉄板の締 結に使うと鉄板にも制振効果をもたらすと期待されている。ガラスでは二酸化バナジュウ ムにタングステンにモリブデン添加で太陽熱エネルギー自動制御ガラスが発表されている。 光触媒分野では、さまざまなアプリケーションが開発されている。住宅応用では親水性 で水膜をつくることで2ー3度冷却を行うシステムが開発された。また、ハイドロオキシ アパタイト上に薄膜化して蛋白質の高速分解を行う例や、表面積700倍の塗料化を可能 にした例の報告がある。さらに、表面流動ゾルゲル法で400ナノ厚のセラミクスナノシ ート化でトルエンなどの分解能が向上させる高機能化が可能になることも報告されている。 これらにあわせて酸化チタンの精製技術も検討され、塩素ガスや強酸を使わず硝酸浸出で ナトリウム+希土類熔融プロセスが報告されている。将来性が期待されている可視光で水 から水素発生は、GaN ZnO の固溶体で光吸収端500nm フォトン利用量子収率1%、 0.3%触媒量で450W高圧水銀灯1h100ccの水素と 50ccの酸素発生が報告され波長 600nm 領域での 30%が目指されているが現在の GaN での水素発生エネルギー効率はまだ 0.5%程度で、これからの研究が期待されている。 リサイクルの面での新素材は易解体ネジの開発があり、TiNi で使用時400N、90ー 95℃過熱で締結が外れるねじが実現され6円/本と通常の3倍の価格レベルまで低コスト 化されてきた。さらに、ある種の液体金属を用いることで電子基盤上の LSI などの実装物 をピンポイントで取り外せるリサイクル技術も開発されている。また、リサイクルを支え る物質識別技術として、Mn チェッカーが開発され 、電解・発色液を染み込ませた電解紙 に乾電池で電流10秒で200系ステンレス(省 Ni 高 Mn)を識別できるようになった。 17 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) センサー技術は有害物質の認識にも不可欠であり、水素修飾ダイヤモンド表面の巨大光伝 導効果が発見され、0.4Vの引加圧で紫外線照射に対し1000万倍の光電流が得られるこ とを利用して有害物質などを検出する紫外線センサーへの応用が考えられている。製品中 に含有される環境影響懸念物質の対応では。金属ガラス積層の溶射法でクロムに替る表面 処理が可能となり、0.3 から 1mm厚までの板厚 900MPa 20%以上の破断のびをもつ Ni フリーステンレスが開発されている。 また、現時点では直接的な環境負荷削減には結びつきにくいが、設計とうまく結びつい たり、他の環境負荷削減要素と組み合わせると、これまでにない効果も期待しうる新規素 材も登場している。プラスチックでは、ナノ混合からの自己組織化で不均質部分を無くし、 PCの透明、耐熱、耐衝撃とPBTの耐薬品を兼ね備えた透明でいずれにも強いプラスチ sa mp le ックナノアロイが開発され、今後、ナイロンの水分で寸法が変わり強度低下などの弱点に ポリエチレンの水分の影響が低く耐衝撃性を持つ性質を持たせるなどの応用が期待されて いる。また、金属ポルフィリン内包ナノサイズリボソーム3%を結晶成長の核とし通常7 5%の結晶化率を95%にして強化した添加型ナノハイブリッドカプセルも開発され、1 8ミクロン厚であったポリ袋を10ミクロンでさらに強くでき、今後、ポリ乳酸をカプセ ルにいれれば生分解も獲得できると期待されている。なお価格はキロ2800円である。 無機系でも、新たな特性を持つ素材が登場している。Mn3XN X=Zn Ga の一部を Ge 2 0ー70%で置換した負膨張物質は3ー20マイクロ/℃従来の数倍の負膨張をしめした。 また、衣服に使用できる程度の柔軟性をもつ直径200ナノのアルミナ繊維も開発された。 さらに、ガラスでは酸化ヴァナジウム主成分として酸化バリウム、酸化鉄を用いることで 電気を通すガラスが開発され食塩水並みの伝導度が得られている。 このように、この一年間をみてもさまざまな材料が開発されているが、その可能性は大 きいものの環境負荷改善のシステムに結びつくものはまだまだ少なく、なおいっそうの材 料開発が期待されている。 材料技術開発関係(エネルギー) 18 月 事項 1 窓ガラスで赤外線吸収制御金ナノ粒子(三菱マテリアル) 1 光増感太陽電池用銀ナノペースト(フジクラ) 1 メタノール用燃料電池高性能フッ素系電解質膜のロール製造(原研) 1 燃料電池用炭化水素系電解質膜(トクヤマ) Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) SOFC用金属粒子分散複合材料(ホソカワ技研) 1 ナノポーラス材でリチウム二次電池パワー密度二桁向上(産総研) 1 中赤外波長レーザー光効率変換素子(物材機構) 1 CNT使用省エネ性の高い液晶ディスプレイバックライト(日機装) 1 発光素子一体型高輝度有機トランジスタ(京大) 1 ナノ構造化で有機薄膜太陽電池のエネルギー変換率 4%に(産総研) 1 光触媒と白金で CO 除去効率の高い水素発生触媒(埼玉工大) 1 素子内部の膜成長制御で発光効率 2 倍省エネ長寿命青色レーザー(NTT) 2 CNT で電界放出型ディスプレーFED 基幹材で消費電力 1/2 に(筑波大) 2 燃料電池、ガラス電解質で 300℃発電(東邦ガス) 2 定置型燃料電池用低加湿タイプフッ素系高分子膜で 4000 時間の耐久性(旭化成) 2 電極にフラーレン使用で電源用キャパシタの電気容量 3 倍に(静岡大) 2 結晶のナノ化でシリコン素子が発光(カルフォルニア工科大) 2 白色 LED 向け蛍光体月産 100kg 以上に(三菱化学) 2 2 層 CNT 安定供給技術(信州大) 2 ZnO 基板上に GaN 結晶成長で素子の発光効率向上(KAST) 2 FED や水素貯蔵に利用可能なカーボンナノウォール(横市大) 2 大画面有機 EL に向け非晶質シリコントランジスタの電圧変動 1/6 に(北陸先端大) 2 白色 LED のイカ釣り船適用で電力 1/60 に(香川大) 2 チタン系耐食金属クラッド材のナノメタル導電処理燃料電池セパレータ(日立電線) 2 交流駆動LED(徳島大) 2 25Wで 100W電球並みのLED照明器具発売(松下電工) 2 希土類のナノクラスター化で次世代白色LED材(KRI) 2 携帯電話に搭載可能な小型燃料電池(NTT) 2 SiC 半導体でシリコンの 4 倍の低損失化(京大) 2 電圧制御で鏡と透明の切り替え可能なガラス(産総研) 2 銀担持多孔質膜の多色フォトクロミック材(東大) 3 低溶出・成形性に富む炭素/ボニフェニレンサルファイド(PPS)セパレタ材(信越ポリ) 3 愛知万博にメタノール燃料電池による携帯型情報端末(日立) 3 膨張化炭素繊維で表面積拡大キャパシタの大容量化、バブリッド車応用も(大分大) 3 動作時の抵抗値世界最小の SiC-MOS 電界効果トランジスタパワー素子(産総研) 3 耐用温度 1100℃のタービン用ニッケル基合金(IHI) 3 耐食・導電性に富む固体高分子燃料電池用金属セパレータ(大同特殊) 3 炭素材料電極の電気二重層キャパシタで、二倍の体積エネルギー密度(帝人) 3 定置型燃料電池で CO2 削減率 20%以上を実証(新エネルギー財団) sa mp le 1 19 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 人造黒鉛系 SCMG でリチウム二次電池用負極材を量産化(昭和電工) 3 燃料電池車に使える Mg-Ca-Li 系水素吸蔵合金の安定製法(産総研) 3 ITO で低電圧で動作する透明 TFT(東工大) 3 電力損失 1/10 の SiC パワートランジスタ(山梨大) 3 1 分で充電できるリチウムイオン電池(東芝) 3 Pt-Ru-P 触媒の微細・均質分散で燃料電池の出力 70%向上(日立マクセル) 4 首相公邸に家庭用燃料電池発電システム 4 白色 LED 用緑色蛍光体で全色を LED で発光可能に(物材機構) 4 Si 基盤上にコバルト酸カルシウム基熱伝素子(ブルックヘブン研) 4 水素化ホウ素ナトリウム直接型燃料電池でエタノール型の 30 倍の電力(信州大) 4 灯油型家庭用燃料電池の実証試験着手(出光) 4 磁性流体で外部電力不要の熱交換技術(ダ・ビンチ) 4 ZnO 半導体で新会社(高知工科大) 4 超伝導フライホイール試作機開発へ(NEDO) 4 Fe による H2O 還元で高圧水素を電力 1/10 で製造(東邦ガス) 4 PZT 膜状化で 1.5 倍の巨大圧電特性(東工大) 4 出力 400kw 容積 1/10 の完全超伝導モーター(IHI) 4 人工水晶技術で青色 LED 用酸化亜鉛結晶量産へ(東京電波) 4 ブロックコポリマーによるナノ構造形成で LED の光取り出し効率倍増(東芝) 4 コーティング技術開発で赤外線透過膜をカラー化(東海光学) 4 500m 高温超伝導ケーブルフィールド試験完了(古河電工) 5 LED 用 ZnO エピタキシャル成長で薄膜化(村田製作所) 5 色素増感型太陽電池で変換率 11%に(東理大) 5 SiC 単結晶成長技術量産体制へ(日新電気) 5 イカ釣り船いさり火に青色 LED 試行(水産庁) 5 CNT 利用の次世代ディスプレー試作(モトローラ) 5 一眼レフに水素化ホウ素ナトリウム燃料電池(SII) 5 印刷法で生産可能な有機薄膜太陽電池変換効率 3.4 へ(大日本印刷) 5 体内埋め込み器具用に血液で発電できる燃料電池(東北大) 5 CNT に 8wt%の水素貯蔵能をコンピュータ予測(NIST) 5 炭素正極を数ナノの MnO2 被覆で出力密度 5-6 倍高めたリチウム二次電池(産総研) 5 自動車用燃料電池経産省が官民一体で研究開発(固体高分子型燃料電池先端基盤センタ) 5 ポリマー電解質色素増感太陽電池(横国大) 5 低濃度メタンで発電できる希薄燃焼システムガスエンジン(三菱重工) 5 Bi 系超伝導酸化物で冷凍機で直接冷却可能な冷媒不要のリニアモーターカー(JR) sa mp le 3 20 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 放射性ガスの電子を用いる原子力電池の発電効率 10 倍に(ロチェスター大) 5 Mn 系リチウムイオン二次電池、2 年後に電気自動車搭載へ(富士重工,NEC) 5 VO2,W,Mo 添加で太陽熱を自動制御するガラス(日本板硝子) 5 太陽光近似セラミクス発光管メタルハイドライトランプ消費電力 3 割減(東洋製作) 5 発光体のフォトニック結晶加工で数倍明るい LED を検証(京大) 5 19,000Am 級の長尺高温超伝導線材を蒸着法改良で実現(ブジクラ) 6 送電能力 100 倍以上の高温超伝導ケーブルの実験に成功(古河電工) 6 太陽電池グレードのシリカ直接電解還元法(京大) 6 Co-Ni-Mn 三元系リチウムイオン正極材量産へ(田中化研) 6 消費電力 1/100 の超小型磁気センサ(大同特殊鋼) 7 ワイドギャップ材料で 37 ルーメン/W の青色有機 EL 素子(山形大) 7 酸化エルビウム添加で交流電圧で赤外線発光の ZnO 膜(JFCC) 7 1W あたりの光度が電球の 3 倍の白色 LED(フジクラ、物材機構) 7 LED 信号機東京で 28%、全国 9.3% 7 ノンハロゲンのスルホン酸基燃料電池用電解質膜、プロトン伝導性 4 倍に(首都大) 8 タンタルシリサイド電極で高性能トランジスタ 8 20%以上の変換効率の Ag-Tl-Te 熱電変換材料(阪大) 8 蛍光灯並みの照度、電力 1/5 の LED 照明器具(進栄電子) 8 光触媒で水膜冷却住宅(NEDO) 8 発光の強さを熱で制御できる有機化合物(東大生研) 8 耐熱 800℃の熱電モジュール(東芝) 8 8%水素吸収のグラファイト系水素貯蔵材(広島大) 8 電力 1/5 寿命 15 年の大型広告版用高輝度 LED(アートレーザー技研) 9 ノート PC に白色 LED 採用(ソニー) 9 電池などで活性二倍の白金ナノ構造体を合成(宮崎大学) 9 超イオン伝導体中のリチウムイオンの拡散挙動を直接観察(原研) 9 蛍光灯並みの転換率ゅ(90 ルーメン/W)の緑色有機 EL(山形大) 9 CNT による高密度キャパシタ電極開発へ支援(経産省) 9 MgB2 で超伝導素子(大阪府大) 9 TiO2 に Nb 添加で ITO ど同等特性の透明導電膜(東大) 9 消費電力水銀灯の 1/10 の白色 LED 街灯(エプセル) 9 高温ガス炉ヨウ素硫酸循環水分解で水素製造(原研) 10 高濃度メタン対応ポリイミドベース FC 用電解質膜(山口大) 10 小型低温動作の SOFC ランタンがレート/セリア・セルスタック(TOTO) 10 理論値に近い性能のFe−Ti水素吸蔵合金(都産技研) sa mp le 5 21 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) ZnO-TFT で 6 万画素の液晶ディスプレー(高知工大) 10 ZnO で青色 LED(岩手大) 10 明るさ 3500 倍耐久性に優れるの無機 EL(クラレ) 10 YAG 蛍光体の粒子径 40 ナノで白色 LED の発光効率向上(日東電工) 10 LED バックライトの形状改良で明るさ 20%向上(ミネベア) 10 色素増感太陽電池、白金電極ヨウ素系電解質代替素材で低コスト化(第一工業) 10 6cm 角の酸素透過性セラミクスと耐熱ステンレスセパレータで 10L/分の水素(東北大) 10 白色 LED で消費電力 40%減の照明機器(松下電工) 10 ダイヤモンド薄膜電子放出型光源(FEL)の発光効率向上(高知産振センタ) 10 酸化物系セラミクスで 27cc/分 cm2 の酸素分離膜(ノリタケ) 11 電力損失 3 割以上削減の変圧器用非晶質非鉄材料(日立金属) 11 CNT で逐電容量 10 倍の蓄電装置開発を計画(経産省) 11 高性能蓄電池に有用な CNT シート量産技術(日立造船) 11 SiC 基盤で 30 ルーメン/W の白色 LED(名城大) 11 MgB2 粒子分散で高温超伝導アルミ押し出し棒材(富山大) 11 シリコーンゴムコートでバイオエタノール高濃度化用シリカ膜(産総研) 11 シャープペンシル芯素材化技術で薄く軽く強い FC セパレータ(三菱鉛筆) 11 青色有機 EL の寿命 2.3 倍化(出光興産) 11 スピントロニクスで新型ダイオード(阪大) 11 固体炭素でリチャージャブル・ダイレクトカーボン燃料電池(東工大) 12 CNT による LSI 放熱(富士通) 12 CuInSe 合金で Si の 1/100 厚みの高出力太陽電池(昭和シェル) 12 有機ラジカルで曲がる充電池(NEC) 12 亜鉛ニオブ酸鉛-チタン酸鉛で既存材比 10 倍超の圧電材(東工大) 12 フラーレン誘導体で加水分解しない燃料電池電解質膜(阪大) 12 10nmYAG 蛍光体で明るさ 256 倍の白色 LED(出光興産) 12 40-70%の変換効率のバイオマス光燃料電池(茨城大) 12 炭化水素系電解質膜で高出力耐久性小型メタノール燃料電池(東レ) 12 電解質幕のメタノール高濃度対応で燃料電池出力 33%向上(ポリフェオール) 12 フラーレン誘導体で DMFC 電解質膜(ソニー) 12 有機 EL 向け塗布型リン光材料で青色で効率 2 倍に(三菱化学) 12 電子整列の強誘電体を発見(高輝度センタ) sa mp le 10 22 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 材料技術開発関係(浄化・保全) 事項 1 酸化チタンを劇物を使用せず 3 割安く精製(新潟大) 1 多孔質化樹脂に酸化チタンで 700 倍の表面積、可視光光触媒塗料(丸紅) 1 汚れを落とす水系アクリル・シリコン樹脂塗料(恒和化学) 2 光触媒脱臭装置発売(国際衛生) 2 極小パラジウムで反応効率 10 倍のスーパー触媒 3 炭素をナノポーラス化した高性能メタン吸着材(産総研) 3 木材炭化時に生成する螺旋構造炭素物質を発見(宮城木材利用技術センタ) 3 油滴層表面の化学反応で自ら動く油滴(京大) 3 ナノサイズ酸化チタンの直接合成法(京大) 3 飲料水向け光触媒の水浄化フィルター(宇部興産) 4 CNT 加工素材で活性炭の 70 倍のダイオキシン除去能力(北大) 4 二硫化鉄を用いた感度 5 倍の赤外線センサー 4 光触媒でレジオネラ殺菌浴槽濾過装置(大茂) 4 光触媒コーティング材で屋外看板の耐久性 3 倍の 10 年に(JSR) 4 活性炭と酸化チタンで再生可能な多孔質光触媒ブルー活性炭(産総研) 5 GaN と ZnO の可視光応答光触媒で太陽光・水から水素生成(長岡技大) 5 酸化チタン光触媒薄膜化でたんぱく質高速分解(東工大) 5 光触媒による汚れにくい窓(JR 東海) 5 光触媒で打ち放しコンクリの 20 年防水塗料(ブラザ・オブ・レガシー) 5 ハイドロオキシアパタイト使用細菌感染防止機能カテーテル(物材機構) 5 超伝導磁石で不純物に酸化鉄を結合、再生紙工場廃液浄化(阪大) 5 石炭灰をゼオライト浄化で有効利用(中部電力) 6 アルミナセメント利用でオゾンの 1000 倍の酸化力のイオン発生(オキシジャパン) 6 酸化チタンに一部窒素置き換えで蛍光灯下で反応する光触媒(豊田通商) 6 セラミックナノシートで光触媒を高機能化(物材機構) 7 金超微粒子でアルコール酸化の効率化(分子科研) 7 フロン分解物質を混合加熱でアスベスト無害化(群馬高専) 7 ウイルス除去フィルタなど応用可能水分無し界面活性剤のシャボン玉 (物材機構) 8 光触媒による汚染土壌処理シート実用化(東大) 8 触媒機能を持つ高硬度チタン合金(電中研) 8 水素発生装置用電極などの多用途チタン繊維(ベキニット) 9 廃棄物海面処理場の遮水用ポリピニルアルコール混合セメント固化処理土(大産研) 9 酸化チタン光触媒で癌抑制(TOTO) sa mp le 月 23 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 光触媒の持続性維持コーティング技術で純水製造装置(小松電子) 9 光触媒や電極に応用可能な酸化チタンナノシート(石原産業) 9 メソポーラス珪素で水中の有機金属を除去(金沢工大) 9 活性 2 倍を超えるナノ白金担持の光触媒(日本板硝子) 9 センサーに利用できる水素水素修飾ダイヤの巨大光伝導効果(物材機構) 9 反応選択性に富む貴金属・有機・メソ多孔体複合ナノ触媒(広島大) 10 窒化ガリウムで光触媒効果(東理大) 11 チタン酸アルミナで熱膨張係数の小さいディーゼルパティキュレートフィルタ(コーニング) 12 ナノ細孔の水酸化鉄分子ふるいで廃液浄化(滋賀産業支援プラザ) 12 酸化チタン極細繊維の高性能光触媒で分解倍速(帝人) 12 TiO2 にリン添加でアセトアルデヒドの分解速度 5 倍化(茨城工技センタ) 12 珪素修飾 TiO2 に窒素添加で 2-4 倍の光触媒活性向上 sa mp le 9 材料技術開発関係(構造材料・包装材料) 24 月 事項 1 機械工作構造物用ロータス型ポーラス金属(阪大) 1 スクラップを原料、超微細結晶粒厚板 1 CNT添加で導電性窒化珪素セラミクス、軸受、摺動部品に(横国大) 1 フラーレン採用で耐衝撃強度 30%向上(ヨネックス) 1 1000 度の温度変化に耐える高強度チタン酸アルミニウム・セラミック材(京大) 1 引張り強さ 2490MPa の高強度鋼(神奈川県産総研) 2 変形量 10 倍の形状記憶効果を持つ強磁性合金(産総研) 2 結晶粒微細化で強度 2 倍のチタン合金(豊橋技科大) 2 フラーレンと黒鉛で摩擦をほとんど生じない新材料(愛知教育大) 2 CNT と絹複合で導電性の高い新素材(シナノケンシ) 3 低温鋳造で長寿命化(千葉工大) 3 導電で長さ二倍に伸縮するプラスチック(山梨大) 3 固有抵抗値が高く(ニクロム線比 1.5 倍)加工性に富む Fe 系合金(東北大) 3 軽量高強度マグネシウム系金属ガラス(東北大) 3 Cu-Al-Mn で制振能 1.5 倍の形状記憶合金(東北大) 3 アルミニウム水素熱処理によるナノ結晶化で 1.7 倍の機械的強度(東北大) 3 高強度・低弾性率のアルミ合金炭素繊維複合材料(産総研) 3 愛知万博にバイオプラスチック食器 4 6 ナイン以上の超高純度鉄量産化(東北大) 4 傷に強いめがねレンズ用コート技術(ニコン) Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 多重磁極マグネトロンスパッターでさびにくい金属薄膜生成(広島工大) 4 低熱膨張率、高熱伝導性の液晶製造装置用 MMC(セランクス) 4 Mn,ZrO2,Ag 添加 Al-Zu-Mg-Cu 合金で強度 950Mpa のアルミ合金(京大) 4 粒界割れの仕組みをスパコンで解明(原研) 4 車体向け炭素繊維複合材料の量産技術(東レ) 4 Pd-Cu-Si,Zr-Cu-Al の金属ガラスの飴状加工で立体的マイクロ構造化(東工大) 5 V2O5,BaO,FeO 添加で食塩水並みの電気伝導度を持つガラス(近大) 5 自己組織化を利用した低コストのナノコーティング技術(物材機構) 5 トルコ遺跡から世界最古の鋼(紀元前 18 世紀)確認 5 バルクメカンカルアロイングで引張り強さ 400Mpa の Mg 合金(東大先端研) 5 1.7 倍容量の燃料電池車水素タンク(トヨタ) 5 中国で直接還元鉄事業拡大(神鋼) 6 磁性を持つアルミ複合材料(富山大) 6 鋼板とアルミ材の摩擦接合、新車に採用(マツダ) 6 アルミ複合材に CNT とゴムで強度と耐熱性(日信工業) 6 粉末繰り返し圧延で強度二倍の Mg 合金(栗本) 6 先進鉄鋼研究・教育センターを東北大が新設 6 金属を上回る熱伝導率の樹脂コンパウンド用新炭素ファイバー(帝人) 6 急冷微細化で強度 1.4-1.7 倍のチタン合金(日本サーモテック) 6 ハイテン比 47%のミニバン(ホンダ) 7 フラーレン利用も摩擦ほぼゼロの潤滑剤(成蹊大) 7 水素吸蔵合金とペルチェ素子でアクチュエータ(コベル電子) 7 茨城県が次世代マグネシウムプロジェクト 8 SiC、ダイヤモンド超微粒子含有ニッケル複合めっきで耐摩耗性 5 倍(東工大) 8 Ni,Mo 含有ゼロの高耐食 Cr 系ステンレス(JFE) 8 Fe の黒鉛化触媒機能でダイヤモンドを鉄で切削(千葉大) 8 白金の摩擦攪拌接合に成功(阪大) 9 水素脆性機構解明の研究センター設置計画(経産省) 9 W 添加で二割長持ちのステンレス(住金) 9 FRP 水素貯蔵容器開発へ(高圧ガス保全協会) 9 リサイクル性向上に 200 系ステンレス判別の Mn チェッカー(NSSC) 9 CNT 利用(1%未満)の導電性樹脂(大日精化) 9 原発プラント用高純度鉄クロム合金(日製鋼) 10 ポリベルオキシドで数時間で分解する樹脂(大阪市大) 10 Mn 基合金製制振性ワイヤ(鈴木金属、物材機構) sa mp le 4 25 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) ロータス型ポーラス銅の量産技術(ASABA) 10 半導体レーザーで鉄・アルミ溶接(阪大) 10 CVT(無段変速機)用形状記憶合金バネをベンツ向け供給(古河電工) 10 添加するだけでプラ強度を二倍化する金属ポリフィリン内包ナノハイブリッドカプセル(日本ボロン) 10 金属ガラス積層溶射技術(トピー工業) 10 ポリカーボネイト・ボリブチレンテレフタレートのナノ混合で金属以上の耐衝撃性プラスチック(東レ) 11 耐食性と硬度を両立させたステンレス鋼(大同特殊鋼) 11 白金担持カーボン分散で無加湿で動作可能な FC 用ガラス電解質(名工大) 11 金属表面に窒化チタン 3μ膜で摩擦 1/4 に(横国大) 11 セラミックスをナノ繊維化、耐熱衣服等に応用可(帝人) 11 アルマイト微空孔にヨウ素化合物で抗菌・摺動性アルミ(菱化マックス) 12 ガス遮断性と耐磨耗性を持つシリカ複合ポリビニルアルコール・ポリアクリル酸被覆材(三井化学) 12 Cu-Be に匹敵する高強度・高導電率 Cu 合金(物材機構) 12 平均結晶粒径 100nm の高精度加工用超硬合金(JRCM) 12 Mn窒化物の Zn,Ga の一部 Ge 置換で負の熱膨張物質(理研) 12 形状記憶合金で解体性のワッシャー(シャープ・東海大) sa mp le 10 材料技術開発(物質安全性・資源確保) 26 月 事項 1 鉛はんだゼロの液晶テレビ発売(シャープ) 1 有機バインダー半減のセラミクス成形法(産総研) 5 錫ナノ粒子にビスマス蒸着で低融点アモルファス(阪大) 5 銀ナノ粒子で高温用無鉛はんだ 7 化学物質調査新ガイドライン JIG に変更 7 ナノテクノロジーの社会受容に関する調査研究(文科省振興調整費) 8 厚労省ナノ物質の健康影響評価を次年度に計画 9 苛性ソーダと塩素製造のガス拡散電極法が試験段階終了(山梨大) 9 「人体の安全、環境にかかわる物質」の「計量基準」整備に着手(経産省) 9 次世代 HD 用 Fe-Pt 規則合金強磁性体の無毒物合成(筑波大) 10 薄型 TV 電極膜からインジウム回収技術(三菱マテリアル) 10 使用済み触媒からの回収ニッケルで鉄鋼原料に(JFE) 11 炭素含有で鉛フリーの快削性黄銅(サンエツ金属) 11 石綿代替ステンレス繊維(日本)精線 11 窒素を用いた Ni フリーステンレス量産化(明道メタル・物材機構) 11 Ru を使用しない DMFC(ダイレクトメタノール型燃料電池)用負極材料(物材機構) Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 3.ワーキンググループ成果報告(概要) ワーキンググループは、下記の3分野(社会技術、将来技術、実践技術)を設け、各分野で複数の テーマを設けて、活動した。以下はその成果報告の概要である。より詳細な報告書は、アニュアルレ ポート正規版に掲載した。 【今年度の活動テーマ】 分 科 ワーキンググループテーマ名(リーダー) 将来技術 産業廃棄物、とくに建築廃材の循環型処理技術の調査 (岡部敏弘) 先端環境界面科学による環境修復/環境調和プロセス技術の開発と普及 (鈴木淳史) mp le エネルギーシステム素子用材料の設計指針 (篠原嘉一) Nature Inspired Materials (垣澤英樹) 実践技術 地方における具体的材料環境問題を共同討議するためのラウンドテーブル (小野修一郎) 個別の学協会における環境問題を共同討議するためのラウンドテーブル (加納 誠) 社会技術 社会学から見た材料価値、環境価値の多角的検討 (石原慶一) sa 社会蓄積量から見た資源有効利用の評価 (醍醐市朗) ナノテクノロジーの社会影響検討 (黒田光太郎) 27 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 1 . ワーキンググループ名 :「産業廃棄物、とくに建築廃材の循環型処理技術の調査」 ワーキンググループ名: 2 . 設置期間 : 平成 1 7年8月 1 日∼平成18年3月31日 設置期間: : 3 . メンバー メンバー: ○青森県工業総合研究センター 岡部 敏弘 湘北短期大学 小棹 理子 岩手県工業技術センター 波崎安波治 職業能力開発総合大学校 須田 敏和 芝浦工業大学 工学部 村上 雅人 東京農工大学名誉教授 伏谷 賢美 弘果総合研究開発(株) 中村 信吾 mp le 4 . ワーキンググループの目的 : ワーキンググループの目的: 本ワーキンググループでは、 社会的重要度の高いテーマをとりあげ、 調査研究活動を行っており、 このたび、 「産業廃棄物」の中で、特に「建築廃材」等の処理方法の調査を行いました。 ・視点 ・方法 : 活動の内容・ 視点・ 方法: 5.活動の内容 5. 活動の内容 日本ではここ2年余りの間に多くの環境関係の法律が制定されています。 循環型社会に向けたもの としては、2000年にその概念を示した「循環型社会形成推進基本法」が公布され、これに合わ せて「廃棄物処理法」と「再生資源利用促進法─リサイクル法─」の改正が行われました。この「改 正廃棄物処理法」と「資源有効利用促進法」をベースとして、さらに個別の4つの法律が整備され、 2005年 7 月には新たに「自動車リサイクル法」も制定されました。また、これらを支援するも のとして「グリーン調達法」が施行されています。産業廃棄物とは,工業、建設業、製造業、サー ビス業など全ての事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、表1に掲げる20種類のもの、並びに輸 sa 入された廃棄物のうち航行廃棄物及び携帯廃棄物を除いたものです。 これら以外のものは一般廃棄 物である。 種類 (1) 燃え殻 具体例 石炭がら,コークス灰,重油灰,廃活性炭(不純物が混在すること 等により泥状のものは汚泥)産業廃棄物の焼却残灰・炉内掃出物 (集じん装置に補足されたものは,(19)ばいじんとして扱う。) (2) 汚泥 工場廃水等処理汚泥,各種製造業の製造工程で生じる泥状物,ベン トナイト汚泥等の建設汚泥,生コン残さ,下水道汚泥,浄水場汚泥 (3) 廃油 廃潤滑油,廃洗浄油,廃切削油,廃燃料油,廃食用油,廃溶剤(シ ンナー,アルコール類),タールピッチ類 (4) 廃酸 廃硫酸,廃塩酸,廃硝酸,廃クロム酸,廃塩化鉄,廃有機酸,写真 定着廃液,酸洗浄工程その他の酸性廃液 (5) 廃アルカリ 廃ソーダ液,写真現像廃液,アルカリ洗浄工程その他のアルカリ性 廃液 28 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 種類 具体例 (6) 廃プラスチック類 合成樹脂くず,合成繊維くず,合成ゴムくずなど,固形状及び液状の すべての合成高分子系化合物,廃タイヤ(合成ゴム),廃イオン交換 樹脂なども該当する。 (7) 紙くず 建設業に係るもの(工作物の新築,改築又は除去に伴って生じたもの に限る。),パルプ,紙又は紙加工品の製造業,新聞業(新聞巻取紙 を使用して印刷発行を行うものに限る。),出版業(印刷出版を行う ものに限る),製本業,印刷物加工業に係るもの PCBが塗布され又は染み込んだもの(全業種) (8) 木くず 建設業に係るもの(工作物の新築,改築又は除去に伴って生じたもの に限る。),木材又は木製品製造業(家具製造業を含む。)パルプ製 造業及び輸入木材卸売業に係るもの PCBが染み込んだもの(全業種) mp le (9) 繊維くず 建設業に係るもの(工作物の新築,改築又は除去に伴って生じたもの に限る。),繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く。) PCBが染み込んだもの(全業種) (10) 動植物性残さ (食料品製造業,医薬品製造業,香料製造業)原料として使用した動 物又は植物に係る固形状の不要物−醸造かす,発酵かす,ぬか,ふす ま,パンくず,おから,コーヒーかす,ハムくず,その他の製造く ず,原料かす (なお,卸小売業,飲食店等から排出される動植物性の固形状不要 物,厨芥類は,事業系一般廃棄物となる。) (11) 動物系固形不要物 と畜場において屠殺し,又は解体した獣畜及び食鳥処理場において処 理をした食鳥に係る固形状不要物 (1 2 ) ゴ ム く ず 天然ゴムくず(合成ゴムくずは(6)廃プラスチック類) 切削くず,研磨くず,空缶,スクラップ sa (1 3 ) 金 属 く ず (14) ガラスくず・コンクリ ートくず及び陶磁器くず ガラスくず,耐火レンガくず,陶磁器くず,セメント製造くず (1 5 ) 鉱 さ い 高炉,転炉,電気炉等のスラグ,キューポラのノロ,鋳物廃砂,不良 鉱石 (16) 工作物の新築,改築又 は除去に伴って生じたコンク リートの破片その他これに類 する不要物 コンクリート破片(セメント,アスファルト),レンガの破片,かわ ら片などの不燃物 (17) 動物のふん尿 畜産農業に係るもの (18) 動物の死体 畜産農業に係るもの (19) ばいじん(ダスト類) (大気汚染防止法に規定するばい煙発生施設,汚泥,廃油,廃酸,廃 アルカリ廃プラスチック類の焼却施設)において発生するばいじんで あって集じん施設(乾式,湿式)によって捕捉したもの (20) 処分するために処理し (1)∼(19)に掲げる産業廃棄物又は輸入された廃棄物のうち航行廃棄物 たもの 及び携帯廃棄物を除いたものを処分するために処理したものであって, (政令第2条第13号廃棄物) これらの産業廃棄物に該当しないもの−コンクリート固形化物など 29 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 本ワーキンググループでは、廃生物資源系材料にターゲットをあてて循環型処理法の調査を 行いました。具体的には、有機物と無機物への分別方法、さらには木材、古紙や高分子が主体 となる有機物の分別・処理方法等についての調査研究を行いました。この結果を踏まえ、既存 の技術の適用の可能性を検討し、廃材のうち、生物系材料廃棄物(農業廃棄物や木質材料、古 紙など)のリサイクルについて調べました。建築資材リサイクル法は、平成14年5月30日 より義務づけられ、建築解体は、分別解体義務化・リサイクル促進・ゴミ減量化が図られてい ます。また、80㎡以上の建築物に分別解体義務づけられています。また、木材などの「特定 建築資材」廃棄物のリサイクル義務づけ(再資源化義務付品目(1)コンクリート片(2)アスファルト、コンクリー ト片(3)プレキャスト鉄筋コンクリート片 c$ 木材)などが上げられます。解体業者の登録制度と解体工事 の事前申請があり、建築資材リサイクル法では木くずの再資源化が義務づけられています。た だし、再資源化が義務づけられている4品目の内、廃木材は、工事現場から50㎞以内に再資 mp le 源化施設がない場合・地理的条件、交通事情等により経済性の面で制約がある場合は、焼却な ど縮減に代えることが可能であり、中間処分場で縮減されます。 6. 成果の概略 6.成果の概略 第一回ワーキングでは、 「 地球環境保護と先端技術」、 「 湿式摩擦材の廃棄処理の取り組みにつ いて」、 「産業廃棄物の熱分解ガスの分析」、 「産業廃棄物の粉砕処理技術」、 「樹木根等の爆砕 処理技術による利用方法について」、 「産業廃棄物の樹脂成型技術について」、 「小型バイオマ スガス化発電システムについて」等の話題提供があり、建築廃材を中心とした産業廃棄物の 処理技術や利用技術について論議しました。第二回ワーキングでは、 「産業廃棄物としての家 電製品の処理方法について」、 「廃棄物を利用した遠赤外線素子材による融雪技術開発につい て」、 「産業廃棄物リサイクル材料の公共事業における利活用について」、 「未利用資源を活用 した環境資材の試作開発事例について」、 「畜産廃棄物を原料とした鶏糞ウッドセラミックス」、 sa 「木材及び古紙を原料とした多孔質炭素材料ウッドセラミックスのセンサーへの応用」、 「 木材 及び古紙を原料とした多孔質炭素材料ウッドセラミックスの水素貯蔵材料への応用」、 「木材 及び古紙を原料とした多孔質炭素材料ウッドセラミックスの室内空気汚染対策への応用」等 の話題提供があり、産業廃棄物としての家電製品、建築廃材、古紙、畜産廃棄物などの処理 技術や利用方法を論議しました。 第三回ワーキングでは、 「 複写機のリサイクルの取り組みについて」、 「リサイクルトナーの取 り組みについて」、 「天然ロジンの現状と樹脂成形加工への応用」、 「産業廃棄物の建築廃材処 理方法と対策」、 「木質系建築廃材の炭化と環境浄化への応用」、 「ウッドセラミックスの電磁 波吸収体の開発」、 「段ボール(古紙)のリサイクル技術と現状について」、 「廃プラスチックス リサイクルの現状と問題点」等の話題提供があり、特に複写機とトナーのリサイクルが進ん でいる報告があった。また、建築廃材・ダンボール古紙の処理方法と利用方法について報告 が会った。特にダンボールのリサイクルは、約100%近い。また、建築廃材は、防腐剤や 塗料などが付着して燃焼によるダイオキシンの発生の恐れがあるのでボート化や炭素化によっ て利用することが、有効であると考えられます。 30 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 今後の方向性 産業廃棄物の規制に沿った分別方法や処理方法が望まれています。特に建築廃材等の防腐処理さ れたものを燃焼させた場合、ダイオキシン等の発生の原因になるので炭素化技術や成型技術を用 sa mp le いたリサイクル技術の開発が強く望まれています。 31 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 1. ワーキンググループ名 : 1.ワーキンググループ名 ワーキンググループ名: 先端環境界面科学による環境修復/環境調和プロセス技術の開発と普及 2. 設置期間 : 2.設置期間 設置期間: 平成 17 年 9 月から平成 18 年 3 月 3. メンバー : 3.メンバー メンバー: 横浜国立大学大学院環境情報研究院基軸プロジェクトメンバー ○鈴木淳史(横浜国立大学大学院環境情報研究院) 4. ワーキンググループの目的 : 4.ワーキンググループの目的 ワーキンググループの目的: 21世紀は、循環型で持続可能発展を、文字通りグローバルに推進することが求められている世 紀である。環境問題を根源的に解決するためには、環境調和材料(環境負荷の低減・環境修復機 mp le 能など)と環境調和型プロセスに関する要素技術の開発と普及が不可欠である。その目的を達成 する有効な手段として、新規材料の創製、新規シンプルプロセス、新規機能の探索に関する研究 の推進が期待される。環境調和材料・プロセスの創製、界面の物性評価と微細構造制御などの要 素技術研究の推進は、広い産業分野(医薬、農業、食品、生活用品、機械、土木、化学など)に おいて、環境と調和した持続可能社会を発展させるための最も重要な科学・工学分野と位置づけ られる。しかし、従来は個々の研究分野における研究推進という分野毎の縦割りの研究体制を とっており、学際間の交流もごく限られていた。本プロジェクトでは、材料科学・工学(金属、 セラミックス、高分子) 、コロイド溶液化学、化学工学、トライボロジーの研究者が結集し、材料 科学、界面科学を基礎にして、領域融合的に界面微細構造制御手法を構築し、界面評価、制御法 の高度化を基に環境低負荷・修復材料と環境調和型クリーンテクノロジーの戦略的創出をはかる ものである。 ・ワーキンググループ設置の背景 (社会・学問的意義、国内外の状況など): sa 「材料のエコマテリアル化」の中でも、エコマテリアル開発当初からの中心課題は、長寿命化、再 生材利用、リサイクル容易化、毒性物質の代替化、再生資源による枯渇性資源の代替化、再生可 能資源の有効利用、生分解可能材料、廃棄の容易化のための材料・技術開発などであった。実際、 エコマテリアルに関する研究は、金属、無機、木材、有機、高分子の多様な材料分野において多 様なベクトルで強力に推進され、国内外の多くの学協会で、エコマテリアル研究に関するシンポ ジウムが数多く開催されてきた。現在では、異なる材料を研究対象としている材料科学・工学の 研究者・技術者と材料関連企業が結集し、産官学の連携のもとで異分野の研究者の共同作業に よって、エコマテリアル研究の重要課題を解決し、広く社会に貢献する必要に迫られている。 エコマテリアルを設計するための基本的な考え方は、エコマテリアル研究会が中心となって、 (2002年)が提案され、エコマテリアルのコンセプトがよ 「エコマテリアル設計の17箇条」 り具体的に示された。すなわち、資源やエネルギーを最大限に有効利用し、環境負荷の高い物質 を使用しないという基本的な考え方に加え、環境負荷物質を使用しないで性能を維持できる材料 技術、天然物質を用いた自然に優しい環境修復技術、環境負荷物質の排出が少ないプロセスの開 発なども重要な研究課題と考えられるようになった。 高いパフォーマンスを示す高機能性材料や、 すでに人工環境により作り出された多種多様の地球環境汚染に対して、それらを検知し修復する ための材料開発も重要な項目と位置付けられている。このような背景から、エコマテリアルコン セプトは「ライフサイクルのいずれかの段階で、低環境負荷資源、環境浄化性、低環境負荷プロ セス、環境影響物質低減、使用時の高生産性、高リサイクル性などに対して特徴的な環境影響改 32 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 善(あるいは環境効率改善)の効果があること」と規定されるに至った。最近では、すでに実用化さ れている従来材料だけではなく、インテリジェント材料、ナノマテリアル、ナノテクノロジーによる 新材料などの未来材料もエコマテリアルの対象と考えられるようになった。今日では、身のまわりに 存在するプロダクツ、システムに持続可能性と環境への配慮が強く求められており、このことはエコ マテリアルがマテリアル(素材)の一部ではなく、全てのマテリアルに対する広範かつ高度な社会的 な要求に直結する段階に入ったことを意味している。それらの要求は、最新の物理的、化学的、生物 学的、地球科学的な知見の集約と、リスク評価を考慮した材料設計でのみ達成できるものである。す なわち、これからのエコマテリアルは分野横断的な材料研究の推進により生まれ、かつ先進材料研究 の最終目標であると考えられる。一方、これらのエコマテリアルが、持続発展可能な社会を形成する という目的を達するためのシステムの改善にとって、極めて重要な技術の 1 つであり、産業の活性化 と地球環境問題を両立させるための革新的な技術の 1 つとして位置付けられる。以上の観点から、本 プロジェクトでは、次世代エコマテリアルの基盤要素技術として、将来大きな利用が期待できる素材 mp le とその技術を対象に、分野横断的に最新のシーズと新規な機能について討論を積み重ねている。 高性能・高機能型 ハード界面 ナノ・ミクロ科学 ソフト界面 ナノ・ミクロ科学 高耐久長寿命セラミックス ナノ/メソポーラス材料 高性能活性炭 ナノ分子集合体 マイクロエマルション ゲルテクノロジー アドバンスト 環境界面科学 sa ナノ・ミクロ界面 制御科学 基盤界面科学の先端化 界面トライボロジー 異種材料界面の形態・特性制御 ・活動の内容・視点・方法: 環境問題の解決、環境調和型持続発展可能な社会を形成するために、化学物質の排出や廃棄物によ る環境問題を根本的に解決し、持続発展可能な社会を形成するためには、有機溶剤などの汚染物質を 放出しない水ベースの生産過程・製品、あるいは水ベース中での有機物合成技術などの技術、また、 汚染物質回収・環境修復技術を発展させ、さらには廃棄物質の放出を極小化する高寿命耐久素材の開 発と高効率機械要素技術の開発を推進する必要がある。そのためには、固体・液体表面、固 - 固界面、 固 - 液界面、液 - 液界面の界面精密制御の科学と技術の飛躍的な発展が不可欠である。科学研究費補 助金における申請分野別キーワードに「界面」あるいは界面関連のものは多くの申請分野にまたがっ て記載されており、界面科学・工学は非常に重要であると同時に多くの研究分野の中で個別に研究を 発展させてきたことを意味している。マルチスケール(ナノからミクロレベルまで)の微細構造制御 33 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 技術には高度な機器分析能力と新規のアイデアによる研究展開が必要とされる。以上の観点から、 異分野間での実質的な共同研究を行なうために、以下の3つのサブグループに別れて、研究体制の 整備を行ってきた。 1.ソフト界面科学:ソフトマテリアル機能探索と微細構造制御: 土壌の洗浄、石油三次回収、電子部品洗浄、切削油・農薬の水ベース化に用いるマイクロエマ ルションの基礎技術の確立、流出原油処理・高機能溶液としての界面活性剤絡uェ子ナノコンポ ジット溶液の構造制御、 三次元網目構造のナノ構造、 マイクロ界面制御による機能性土壌改質剤 の開発、生分解性、保水性、植物への水分供給機能を持つハイドロゲルの開発、ネットワークポ リマーによる高リサイクル性接着剤の開発。 2.ハード界面科学:無機材料機能探索と微細構造制御: 界面活性物質でスラリー状に分散させたセラミック粒子の焼結制御によるゼロエミッションを 目標とした材料の開発、高機能・長寿命のベアリング、半導体基板などの開発、環境汚濁物質回 収のための高機能活性炭の開発、 自己組織体をテンプレートとした無機多孔体の合成と細孔の高 mp le 次構造制御による耐環境性多孔体の開発、 有機テンプレートによって形成されるメソポーラス構 造とナノ細孔構造制御を自在に変換し、 所望の細孔構造と精密制御された活性点を有する新しい 触媒機能の開発、選択的細孔構造を有する多孔体の創製。 3.界面制御科学:摩擦振動材界面の微細構造制御: 摩擦振動低減のための表面改質技術、 低摩擦振動材による機械の性能・効率アップのための界 面改質の設計指針の構築、機械の摩擦振動低減、寿命向上、小型化、高速化等、摩擦振動制御に よる環境負荷低減。 実験的かつ理論的検討による摩擦振動の発生限界の特定、設計段階で利用可 能な防止指針となり得る不等式、 微小動荷重のフィードバック制御による摩擦振動の新しい抑制 手法の提案、その有効性の実験的検討による実証。 5. 成果の詳細 : 5.成果の詳細 成果の詳細: 「相転移/相分離現象による有機−無機複合体のナノ構造制御とその応用の研究」 異種共存系での相分離は、 モビリティーや相分離の駆動力等の諸条件によりその空間スケールが sa 大きく変わる。この原理を利用して、一般に 1 μ m 以下の機械的加工が難しいとされている固体に 高い体積分率でナノスケールの孔を発生させる方法を考案した。また、高分子架橋体のエントラッ プメント効果を使用して分離機能性種を固定化し、 ハンドリング性の高いゲル利用型分離精製工程 を考案し、従来の液液系抽出分離技術に匹敵する性能を発現させることに成功した。 「ミクロ構造制御による先進的窒化物セラミックスの創製」 本研究では、窒化ケイ素セラミックスの用途を広げるべく、新規機能の付与、安価な製造プロセ スの開発を試みている。窒化ケイ素セラミックスに導電性を付与させることができれば、静電気の 影響を除去させることができ、使用用途の拡大につながる。カーボンナノチューブ(CNT)添加は 導電性発現の有力な手段であるが焼結中にCNTが反応・消失してしまいうという問題があった。そ こで、本研究では低温焼結が可能な助剤を添加することにより上記の問題を克服し、世界に先駆け CNT添加系導電性窒化ケイ素セラミックスの開発に成功した。 「ゲル表面の特異な構造を利用した新しい粘着方法の開発」 水を含んで膨潤した希薄で複雑な網目構造をもつハイドロゲルの表面は、 バルク構造とは異なり、 より希薄で高分子の末端鎖がブラシ状に飛び出した構造をしていると考えられている。 このゲル表 面の特異な網目構造と外部環境の無限小の変化に応答して示すゲル特有の性質である体積相転移を 34 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 利用し、ゲルの表面間に、分子間力とブラシの絡み合いによりマクロな力を生み出す原理について研 究した。 数十∼数百ナノ領域におけるゲル表面の網目構造、ミクロ相分離構造の観測結果を基に、様々 な測定条件下で熱応答性ゲル間の粘着力と剥離仕事を求めた。その結果、ゲル表面の特異構造を利用 した新しい粘着方法とその基本原理を示し、実証例を提示することに成功した。 「ゲルの微細構造と機能を利用した溶媒流れの基礎・応用研究」 本研究では、ゲルの外部環境変化による膨潤/収縮相転移に着目し、この相転移が誘起されるときの ゲル内の微細構造変化を利用して、溶媒の流れ速度の制御に成功した。この三次元架橋高分子網目を用 いたソフトな送液システム用のバルブは、流路の管壁に密着されたゲル(平均孔径1∼1000nm)中を液 体が流れるシンプルな構造で、毎分1μL以下の微少流量の精密制御が可能である。機械的な制御部材が 不要であり、液体を加圧するだけで、目的物質を任意の速度で長期間注入することができ、マイクロマ シンへの応用に適している。流速の絶対値と外部環境変化により増減の制御が可能な、ソフト、シンプ mp le ル、マイクロなバルブを提供できることを示した。 「ナノソフト界面の精密制御による溶液のレオロジーコントロール」 親水性界面活性剤のミセル水溶液に親油性の非イオン界面活性剤を添加することにより溶液の粘性、 弾性が急激に増加する現象を見いだした。これはミセル構造が球状から棒状に変化し、最終的に高分 子鎖のように 1 次元方向に延びた Worm-like ミセル(紐状ミセル)を形成することにより生じること を明らかにした。 「摩擦振動の防止指針の獲得とその抑制手法の確立」 摩擦振動は、摩擦面の滑らかな運動を妨げ、場合によっては不快な騒音を発生する。摩擦振動の防 止指針の獲得と抑制手法の確立を目指している。 実験的かつ理論的検討によって摩擦振動の発生限界 を特定し、設計段階で利用可能な防止指針となり得る不等式、微小動荷重のフィードバック制御によ る摩擦振動の新しい抑制手法を提案し、実験的検討によってその有効性を実証した。 sa 6. 今後の方向性 : 6.今後の方向性 今後の方向性: 持続可能な循環型社会の構築に寄与するシステムの素材技術として、 エコマテリアルに大きな期待 が寄せられている。ここでは、循環型社会に望まれる先進エコマテリアルの要素技術は今後ますます 重要になる。本プロジェクトは、素材の高付加価値化に結び付く微細構造制御法の体系化を目指して いる。金属・炭素 / セラミックス・アモルファス / ソフトマターの代表的三分野における専門家を結 集し、領域融合的な情報交換を行ないながらこれらの代表分野をカバーし、微細界面構造マニピュ レーションの方法論の確立と技術移転の促進を目標としている。 異なる研究分野を融合した先端的な 環境低負荷・環境修復材料とシンプルプロセスの創製技術に関する研究を行なうことで、広範囲な産 業分野における基盤拠点が整備できるため、民間企業からの基礎研究部門のアウトソーシングの受け 皿となる。今後は、国内外の民間企業と連携することにより、界面科学・工学を専攻する学生、関連 産業の企業技術者へ、界面科学・工学を基礎にした環境低負荷・環境修復材料の系統的な教育も取り 入れ、実学的見地からの研究ニーズに対応した環境修復・低負荷の技術、材料の創製を図る方向に展 開して行く計画である。本年度は、グループの体制強化に努め、次年度以降、実質的な活動に入る。 35 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 1. ワーキンググループ名 :多元的なエネルギーシステムとデバイス材料の検討 1.ワーキンググループ名 ワーキンググループ名: 2. 設置期間 : 2.設置期間 設置期間: 平成17年6月∼平成18年3月 3. メンバー 3.メンバー ○篠原嘉一(( 独 ) 物質・材料研究機構) 本間 格(( 独 ) 産業技術総合研究所) 森 利之(( 独 ) 物質・材料研究機構) 内田 聡(東北大学多元物質科学研究所) 米田征司(神奈川大学) mp le 4. ワーキンググループの目的 4.ワーキンググループの目的 燃料電池、太陽電池、熱電発電池などは効率良く十分な出力を得ることが難しいために単独の製 品として普及は進んでいない。そこで本WGでは、これらの新しいエネルギー源・システムの問題 点の整理を通して、これからのデバイス材料のあり方および開発の方向性、エネルギーデバイス開 発の方向性、多元的システムのあり方について検討を進める。 5. 活動の内容 ・視点 5.活動の内容 活動の内容・ 視点・ ・方法 燃料電池、太陽電池、熱電発電地、二次電池など、次世代の分散型エネルギー源として注目され ているデバイス分野の専門家が集まって、各分野における技術の現状と技術的課題、デバイス材料 のあり方および開発の方向性、高機能デバイス開発の方向性、そこから見出される多元的エネル ギーシステムのあり方などについて、情報収集と議論を行う。 今年度は各分野のトップランナーを委員として集って、 新エネルギー源の各分野の技術現状につ いて情報収集を行うと共に、 デバイス材料のあり方および開発の方向性についてエコマテリアルの 観点から基礎的に検討を行った。 sa 6. 成果 6.成果 6−1.各分野の現状の紹介 各委員の研究テーマ紹介の形で、技術の現状について情報収集を行った。 6−1−1.高分子系熱電材料 a)題名: 高分子系における熱電材料の新規開拓 b)概要: 熱電現象とは、荷電キャリア(電子、正孔、イオンなど)の移動にともなってエネルギーが輸送 される現象のことである。熱電現象は100年以上前に金属で発見され、現在は金属間化合物、ホウ 化物、酸化物などの無機系で材料研究が行われている。代表例はBiTe系、PbTe系の化合物である。 フロンなどの地球温暖化物質を用いない冷蔵庫、LSI冷却素子、超小型ヒートポンプや、身近な廃 熱(体温を含む)を利用した発電への応用が進められている。ただし、製造エネルギー、安全性、 コスト、資源、分離回収性などを総合的に考慮したライフサイクルコストを考えると、多くの無機 材料系はトータルバランスが崩れている。トータルバランスに優れた材料として、また構造の自由 度の高い材料として高分子系に注目した。 熱電材料としては、導電率が高く、熱起電力(材料に温度差を与えた時に生じる電位差。1 K 当 36 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) りの熱起電力をゼーベック係数と呼ぶ)の大きな材料が求められる。高分子の場合にはこれらの物 性は基本的に分子構造、分子量、分子の配列、ドープ量で決まる。無機材料との大きな違いは、分 子内および分子同士の3次元構造は不明確であること、分子内および分子間の導電機構の詳細は不 明であること、化学ドープであること、すなわち添加剤は単に主鎖近傍に留まっているだけで不安 定なこと、添加剤の位置は不明であること、物性の定量測定が難しいことなどである。構造の自由 度が高いことの裏返しとして、実に多くのことがブラックボックスの中にあると言える。 NIMSと東北大学多元物質科学研究所(多元研)との人事交流の一環として行った研究ではポリ チオフェン系を中心として、分子構造や分子量の制御、添加剤の安定化について検討を進め、他の 高分子よりもゼーベック係数が大きくかつ安定なポリチオフェン系を開発た。ただしBiTe系と比 較すればゼーベック係数が 1/10 と小さく、まだ実用材料の性能レベルには届かない。現在は多元 研との連携ラボ制度を活用しながら、 ブラックボックス部分の解明と高性能化のための材料開発を 進めている。 mp le 6−1−2.二次電池材料 a)題名: ボトムアップ型ナノ電極の作製による高出力型リチウム 2 次電池の開発 b)概要: 酸化マンガンやチタニアなどを対象としたボトムアップ型ナノ構造プロセスを検討し、 低抵抗で 高イオン導電性を有する金属酸化物ナノ結晶電極を合成し高容量かつ高速充放電可能な2次電池用 ナノ構造電極を開発した。ナノ結晶ネットワークからなる低抵抗・高比表面積の電極をボトムアッ プ的アプローチで溶液合成し、その基礎プロセスと電極構造さらに電池特性を評価した。ナノ構造 電極を利用することにより高いイオン拡散性と電子導電性を用いて10C以上の高速充放電電極を 開発することが出来た。ハイブリッド車回生電源や負荷平準化電源への応用を検討した。 6−1−3.燃料電池用材料 a)題名: sa 超長期を見渡したうえでの環境エネルギー材料の開発のありかた b)概要: 本レポートは、東京大学大学院工学研究科 堤 敦司助教授の研究成果の一端を、先生の講義資 料をもとにまとめさせていただきました。冒頭にまずは感謝の意を表したいと思います。 超長期(2050年以降2100年まで)に、日本はどのような視点で環境とエネルギー問題に向 かいあっていかなくてはならないか?という極めて難しい問題にふれるまえに、まずは、持続型社 会構築のための制約条件を今一度思い起こす必要があるのではないでしょうか? 制約条件とは、 主として以下の3点で言い表すことができます。 1. CO2 排出量の制約 2. エネルギー資源量の制約 3. 廃棄物の問題 こうした問題の解決に取り組むためには、リサイクル、省エネルギーおよびエネルギー変換効率の 向上といった面のみに着目するのではなく、エネルギー・物質生産体系そのものを変革する必要が あります。個別要素技術開発あるいは特定材料開発ではなく、現実社会においてエネルギー・物質 生産トータルシステムの構築を図る必要があります。その考えのなかで鍵を握るのが、コプロダク ションという考えかたです。 37 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 従来のエネルギー技術とコプロダクションの相違を図2に示しましたが、 ・廃熱のマッチングをはかる取り組みから、廃熱の発生を最小化する取り組みへ。 ・熱エネルギーのみの再利用から、 熱―電気―化学エネルギー相互変換を考える取り組みへ。 sa mp le ・小規模分散型熱電併給から、産業構造の中でのエネルギーと物質の最適生産・供給を行う 取り組みへ と変えていくことが、コプロダクションの基本であろうと思います。 図3に、従来型のエネルギー・物質生産体系とエネルギー・物質コプロダクション型との違いをフ ローチャートにして示しました。 熱―電気―化学エネルギーを効率よく回収・再生・再利用することが、今後の超長期の社会を考 えるうえで必要不可欠であると考えられます。 こうしたエネルギー・物質コプロダクション型の取り組みの利点は、なんといっても、高度エネ ルギー有効利用の実現にありますが、その他にも、 化学エネルギーを介した柔軟なエネルギーシス テムの構築やこうした新しい生産技術をもった新産業の育成と国際競争力強化が考えられます。 もちろん、こうしたエネルギー・物質コプロダクション型生産技術を構築するためには、いくつ かの開発するべきエネルギー機関技術が存在します。それは、ガス化技術、燃料電池技術、システ ムインテグレーション技術とタービン技術です。 ここには、すでに存在している技術ですが、これら基幹技術をエネルギー・物質コプロダクショ ンの理念のもとに再構築していくことこそが、 超長期の日本のエネルギー事情を大きく左右するこ とにつながると考えられます。 ご存じのように、熱やエネルギーは、貯蔵性が低く、次第に損なわれてしまいます。そこで、真 にエネルギー・物質コプロダクションを実現するためには、 貯蔵性に優れた化学エネルギー媒体で ある水素を有効に活用する必要があります。 この水素を有効に活用するためには、熱化学技術、熱電技術、燃料電池技術をさらに高度化し、 さらに燃料生産におけるバイオマスや化石燃料有効利用技術なども育成する必要があります。 燃料電池技術も、これまでに開発されてきた代表的な4種類の燃料電池(リン酸形、溶融炭酸塩 形、固体酸化物形、高分子形)にはない、水素貯蔵性の高いリバーシブル燃料電池のような新たな 発想にもとづく、燃料電池システムの再構築も必要になるものと考えられます。 こうした考えにたち、2050年以降の日本、すなわち100年後の日本のエネルギー長期需給 を予測しますと(予測の表参照) 、 ・一次エネルギー供給面では、 石油はほぼ完全に枯渇し、天然ガスも減少します。 よって石炭やバイオマスにたよることになり ます。 ・二次エネルギー需要面では、 石油系燃料は2100年には、ほぼ完全に枯渇していますので、水素とメタノール(石炭やバイ オマスから生産)が主要燃料となるでしょう。 よって、まさに100年後の日本が、今と同じような成長を続けるためには、まさに、これまで のべて参りました、エネルギー・物質コプロダクション型の環境・エネルギー用システムの発展に 資する材料(システム材料とよぶ)の開発が急務といえるのではないでしょうか。 冒頭にもふれたように、本レポートは、堤先生の長年のご研究成果にもとづくお考えと、先生が 所属されておられる超長期エネルギー技術研究会の研究成果をもとにまとめさせていただきました ことを明記いたします。 参考文献 1)堤敦司講義ノート 「コプロダクションによる産業部門消費エネルギーの大幅削減の可能性」 2)堤敦司講義ノート 「燃料電池技術の進展と未来社会の位置づけ」 38 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 6−1−4.有機系太陽電池用材料 a)題名: 有機系色素太陽電池の現状 b)概要: 地球温暖化対策の観点から自然エネルギーへの期待は高まる一方だが、 太陽光発電は世界をリー ドする日本でさえ現状は 90 万kW、全エネルギー消費量の 1% にも満たない。しかしながら太陽光 発電の世界市場(総発電出力)は 2004 年実績で対前年比 61% の伸びを示し、急激に成長している。 中でも再生可能エネルギー導入者がメリットを享受できる制度を導入したドイツの伸びが大きく約 4割を占め、この他スペイン・ギリシャ・アメリカ・中国等が新たな太陽光発電の市場として期待 されている。次世代の発電システムの開発は待ったなしの状況にあるが、世界市場の9割を占める 結晶シリコン系太陽電池は未だ原料の高純度シリコン供給に不安を抱えており、 明るい見通しが立 たない。 mp le 太陽光発電の飛躍への課題は一にも二にもコストであると言えるが、こうした背景の中、近年劇 的に低コストが見込まれる新型の有機系太陽電池 (色素増感太陽電池)が注目されるようになった。 とりわけ本太陽電池のフィルム化・プラスチック化は悲願の一つでもあった。なぜなら、透明電極 にガラスではなくPET樹脂等が使用できれば更にコスト低減が計れるばかりでなく、大面積化や曲 面への対応が見込めるからである。即ち、これまで電力用途として主に屋根上に設置するしかな かった制約が取り払われ、軽量性を生かして建物の壁面も利用可能になるなど、大きな用途の拡大 が期待できるからである。難しさは、酸化チタン粒子膜を電極上に焼成しなければいけないが(通 常 500 ℃、 1 h) 、樹脂基板は痛めないようにしなければならない点にある。 我々は特殊なマイクロ波を用いて酸化チタン膜のみを選択的に加熱することでこれを実現した。 本フォーラムにおいては最新のマイクロ波焼結技術、並びに新たな材料開発を通じて、 “軽い、薄 い、フレキシブルで柔らかい”三拍子揃った次世代型の大面積色素増感太陽電池を紹介した。色素 増感太陽電池は安価で作りやすいことから、日本だけでも 200 社を超える企業が調査・研究開発 sa を行っている。実用化に至るには性能とコストと耐久性の全てをバランスさせる必要があり、まだ まだ解決すべき課題も多い。しかしながら柔軟性・軽量性の他にも色調を変えられる意匠性や透光 性といった多くの特徴を有することから、用途開発も含めて今後の展開が大いに期待される。 6−1−5.金属間化合物系熱電材料 a)題名: 中温度域熱電発電モジュールの作製 b)概要: 化石燃料を使用することによる地球温暖化などの環境問題が叫ばれる中, 熱電発電技術は廃熱の 有効利用の観点から注目を浴びている。中温用(800K)熱電発電材料としてn型ヨウ化鉛添加鉛テ ルルとp型鉛錫テルルを、 試作した攪拌溶解ロッキング炉を用いて合成した。 合金を出発原料とし、 放電プラズマ焼結を使用して、焼結体化および電極としてのNi接合を行った。作製した 17 対の π型素子を配置・接着することによって、熱電発電モジュールを試作した。試作モジュールを評価 した結果、電流 1.8A のときに最大出力 2.4W を得ることができた。 39 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 6−2.デバイス材料のあり方および開発の方向性について デバイス材料のあり方および開発の方向性について、 エコマテリアルの観点から基礎的に調査を 進めた。以下に調査結果を纏めて紹介する。 mp le 6−2−1.はじめに デバイスを含めて製品の LCA 評価手法はまだ確立されているわけではなく、製品メーカーのシ ステム境界のとり方で評価結果が大きく異なってくる。 これはリサイクルのループが閉じていない 場合(多くの製品がこれに属する)に生じる問題で、製品の寿命は尽きても材料の寿命が尽きない ため、 使用後に廃製品からカスケードリサイクルされる材料をどのように取り扱うかがポイントと なる。 今後、廃製品や再生可能資源の使用率が増加していくことを考えると、資源が何であるかによっ て環境負荷を分けて取り扱うことは、LCA 評価時の取り扱いを複雑にするだけでなく、無意味に なってくるように思われる。素材メーカーは、資源が何であれ(地中からの採掘資源であろうが、 廃製品であろうが、再生可能資源であろうが) 、高機能な材料を応分の価格で製品メーカーに提供 するようになる。廃製品から生み出される材料が仮に低品質であっても、目的に合致した機能を有 していればそれも立派な商品である。資源から材料を製造して納品するまでの環境影響を管理・低 減させながら、高機能の材料を開発・製造するという素材産業の姿を合わせ考えると、廃製品は前 世の環境負荷を背負わない“資源”の一つとして、大くくりで取り扱われるようになるであろう。 以上を踏まえながら、エコマテリアルの概念、エコマテリアルとしてのデバイス材料開発の方向 性を検討した結果を以下に紹介する。 6−2−2.エコマテリアルとは エコマテリアルとは環境を意識した材料 (Environment Conscious Material) のことで、もう少し sa 具体的に言えば、ライフサイクル全体を通じて地球環境負荷低減に貢献できる材料である。 Fig.1 Compositions of raw materials 正に LCA 的発想に基づいた材料概念である。ここでいう“地球環境負荷低減に貢献”というの は、触媒や吸着剤のように環境に放出されようとしている、または環境中に放出された汚染物質を 除去するような浄化機能のみを指すのではない。従来材料を代替することにより、それを使用しな かった場合よりもライフサイクル全体を通じて地球環境負荷を低減することができる材料を広く指 している。 40 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) エコマテリアルの具体例の一つとして、エコセメントを紹介する。図1に示すように 1)、通常のポ ルトランドセメントの原料の約 8 割は石灰石であるが、エコセメントでは原料の半分近くが焼却 灰や汚泥である。焼却場の廃棄物を原料の約半分として使用するエコセメントは、廃棄物最終処 分場の不足問題に大きく貢献できると共に、焼却灰中の重金属を長期間にわたって安定化させる という効果も併せ持っている(図2参照 2)) 。ライフサイクルを通して地球環境負荷低減に貢献で きるエコマテリアルの好例といえる。 Fig.2 エコセメントの環境負荷評価例 An example of environmental burden assessment of ecocement Eco-system Resource mp le Health 6−2−3.デバイス材料開発の今後の方向性 sa エコマテリアルは、なにも具体的な環境への効果が明らかなものばかりではない。材料は製品に 組み込まれて使用されてこそ材料である。すなわち、高機能材料を提供することによって、製品使 用時の環境負荷を総合的に低減させることも十分にあり得る。現実に自動車、家電製品、OA 機器 など、高機能材料の活用によって使用時の環境負荷を低減させているものも多い。そこでエコマテ リアル開発の今後の方向性について、ここで少し触れたい。 結論から先に言えば、環境を特別に意識しなくとも、製品の商品価値を高める材料を開発するこ とで、製品の環境負荷低減につながっていくと考えられるということである。ただし、唯一注意す べきは資源である。天然由来の資源でもリサイクル資源でも再生可能資源でも良いけれども、とに かく環境影響が小さい資源(資源品質の高い資源)を使用することである。 製品の環境効率は、図3に示すように、多くの因子に分解することができる。商品価値、製品製 造の歩留、材料製造の歩留、資源品質、 (資源の環境負荷)/(製品のライフサイクル環境負荷)で ある。環境効率を高めるために材料として効果的に貢献できることは、商品価値を高めること、材 41 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 料製造の歩留を高めること、資源品質の高い資源を用いることの3つである。資源品質が高いとい うことは、資源の環境負荷が小さいということである。資源の環境負荷が小さくなってくると、 (資 源の環境負荷)/(製品のライフサイクル環境負荷)の分子が小さくなるから、分数全体として小 さくするのは大変なことがわかる。材料開発の段階で環境影響ばかり意識するのは得策ではなく、 資源を考慮しながら優れた機能の材料を開発することが一つの方向性といえよう。 6−2−4.おわりに デバイス材料のあり方および開発の方向性について、 エコマテリアルの観点から基礎的に検討を 進めた。廃製品や再生可能資源を含めた環境負荷の小さい資源を用いることで、自由な発想に基づ いて材料開発を進めることにより、 ライフサイクル思考に基づいた環境負荷低減に貢献することが 可能であることを明らかにした。 7.今後の方向性 mp le 文 献 1) 太平洋セメント HP:http://www.taiheiyo-cement.co.jp/ 2) 東京大学生産技術研究所 山本研究室 HP:http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ sa 本ワーキンググループでは、燃料電池、太陽電池、熱電発電地、二次電池など、次世代の分散型 エネルギー源として注目されているデバイス分野の専門家が集まって、 各分野における技術の現状 と技術的課題、デバイス材料のあり方および開発の方向性、高機能デバイス開発の方向性、そこか ら見出される多元的エネルギーシステムのあり方などについて、情報収集と議論を行う。 今年度は各分野のトップランナーを委員として集って、 新エネルギー源の各分野の技術現状につ いて情報収集を行うと共に、 デバイス材料のあり方および開発の方向性についてエコマテリアルの 観点から基礎的に検討を行った。 今年度の検討結果を元にして、 高機能デバイス材料開発の方向性および多元的エネルギーシステ ムのあり方について材料とシステムの観点から検討を行い、 各デバイス分野で共同して目指すべき システムのあり方および材料開発の方向性を明らかにしたい。 42 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 1. ワーキンググループ名 :Nature Inspired Materials 1.ワーキンググループ名 ワーキンググループ名: 2. 設置期間 : 2.設置期間 設置期間: 平成17年6月∼平成18年3月 3.メンバー 3. メンバー ○ 垣澤 英樹(物質・材料研究機構) 石田 秀輝(東北大学大学院環境科学研究科) 細田 奈麻絵(物質・材料研究機構) 4. ワーキンググループの目的 4.ワーキンググループの目的 地球環境の有限性と限界の可能性が最初に指摘されてから 30 余年、この間、様々な環境問題が mp le 顕在化し、同時に人類も知恵と技術をふりしぼりこれに立ち向かってきた。技術者、研究者は環境 負荷を下げつつより価値の高い製品やサービスを生み出す努力を続けているが、しかし、地球環境 は悪化の一途をたどり続けている。中国を筆頭とする第三世界の経済成長、世界規模の人口増加、 先進国の限りない便利と快適への欲求、 科学技術の進歩だけでカバーしきれない問題に人類は直面 している。 「成長の限界 人類の選択」のメドウズらは、すでにテクノロジーの進歩だけでは持続 可能な成長を維持することはできず、人口、工業生産の抑制、すなわち、規制による生活価値の低 下なしには人類の存続が約束されない状態にあると主張している。 我々科学技術に関わる者のこれ までの取り組みに間違いはないと思いたいが、生活価値を下げずに環境負荷を低減するためには、 さらにまったく新しいコンセプトのモノ作りのテクノロジーが要求されている。 「本当に地球に負 荷をかけない技術とは一体どんなものだろう?そのヒントはどこに?」 という視点で自然や生き物 を眺めた時、自然がやっている方法でモノを作り、自然がやっている方法で機能を発現させること が、一番無理なく自然なソリューションとして浮上した。 バイオミメティクスの考え方は、これまでも複合材料や構造体設計、化学プロセスなど多くの sa 「もの作り」の分野で古くから取り入れられ、優れた材料や化学合成技術が生み出されてきた。最 近では、分子レベルの生体類似プロセスが盛んになっており、また、材料分野でも生物材料のナノ オーダーの機能発現機構を解明し応用しようとする動きが起こっている。 フォーラム会員の中でも、 貝殻真珠層のナノ構造を再現し高靭化機構を得る試みや、生物の肢の「はりつく」機能の解明から 新しい接合技術を目指す研究など、自然にヒントを得た材料技術「Nature Inspired Materials」が 提唱されている。昨今のナノテクノロジー技術の進歩によりナノオーダーの計測、加工ツールが整 いつつある現在、ミリ∼マイクロメートルオーダーの単なる形態模倣を超えて、自然の仕組みのす ごさに迫るブレークスルーの可能性が各方面で高まっている。 各々の研究分野に目を向ければ、COE プログラムのような大型プロジェクトも含め、こうした 流れを後押しする動きは非常に充実している時期と言える。しかし、研究分野を超えて「自然をお 手本にする」という思想のもとに研究者・技術者が集うコミュニティは、実は、意外と数少ない。ま して、 地球環境に負荷をかけない材料技術のヒントを自然に存在する仕組みやプロセスに見出そう とする考えを前面に打ち出した集団はこれまでのところ見当たらない。 特にエコマテリアルのよう に学際的な知識や経験の結集が求められる分野では、異分野の研究者、技術者間で人的交流や情報 交換を行える場を提供する母体の必要性が非常に大きい。そこで、本WGは、環境問題を念頭にお いて自然に学ぶ材料研究および開発、具体的には (1) 天然材料が持つ優れた特性の発現機構の解明 (2) 天然材料が持つユニークな材料系の組み合わせ、微細組織、構造を応用した省資源、省エ 43 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) ネルギー、有害物質フリーな材料のデザイン、開発 (3) 生物が行うプロセスを応用した安全で低エネルギーな材料プロセス技術の開発 に携わっている人たちの分野や立場を超えた人的交流、意見交換を図り、新しいエコマテリアルの 考え方を提唱することを目的とする。 5. 活動の内容 ・視点 ・方法 5.活動の内容 活動の内容・ 視点・ ○ 内容 環境負荷を低減する材料技術のヒントを自然や生物に求めるコンセプトのもとに、 分野や立場を 超えたコミュニティ作りを行う。 特にエコマテリアルのように学際的な知識や経験の結集が求めら れる分野では、 異分野の研究者間で人的交流や情報交換を行える場を提供する母体の必要性が非常 に大きい。多種多様な人的交流や情報交換を行える場を提供する母体として、本 WG を提案する。 今年度は、 mp le ( 1 ) 自然をお手本にして新しいエコマテリアルの展開を志す研究者のネットワーク作り ( 2 ) 自然から学んだことをどうエコマテリアルに生かすか、 自然にヒントを得たエコマテリアル とはどういうものか議論を深め、今後の展開の足場を築く ことに重点をおいて活動を行う。 ○ 視点 自然の素晴らしさを解き明かし真似ることは、科学技術にとって常に古くて新しい興味の的で、 人類のモノ作りのよきお手本となってきた。環境問題が日々深刻化している現在、 「無害でありふ れた材料系」と「温和なプロセス条件」で優れた特性を実現している自然や生物の偉大さを再認識 すれば、そこに、新しいエコマテリアル創造の指針があるはずである。そうした視点から、これま でにある研究のサーチと協力の呼びかけ、および、今までにない研究の創出を目指す。 ○ 方法 sa ワークショップ、勉強会を通じて異分野の研究者が意見を交わし、お互いのバックボーンを共有 する。それをもとに、環境に優しい材料設計、材料開発の新しい軸となりうるコンセプトを打ち出 すとともに、グループとしての求心力を生み出す。 6. 成果の概略 6.成果の概略 I. ワークショップの開催 10 月 4 日、茨城県つくば市でミニワークショップ「Nature Inspired Materials」(物質・材料 研究機構並木地区 大会議室)を物質・材料研究機構と共同で主催した。ドイツ、国内から招待し た 9 名の講演者が、生物の仕組みを解明する研究や生物をお手本にした応用技術を紹介した。 II. ネイチャーテック研究会との提携 9 月 16 日、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくりを標榜する『21 世紀の環境・経済・ 文明 - 産官学連携プロジェクト -』のものつくり WG として、 「ネイチャーテック研究会」が発足 した。 「ネイチャーテック」とは、自然の循環を科学の目で観、それをリ・デザインした技術で「も 44 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) のつくり」を行うことで、地球環境に負荷をかけない『あたらしいものつくりや暮らしかたのかた ち』を提案しようという考え方である。ネイチャーテックとして生み出されたテクノロジーは、ネ イチャーインスパイヤードマテリアル実現の鍵を握る技術ツールとなると考えられる。あるいは、 ネイチャーテック側から見れば、 ネイチャーインスパイヤードマテリアル自身がネイチャーテック のひとつの具現例となるであろう。ネイチャーテック研究会、本 WG ともに、自然に学んだモノ作 りによって環境負荷低減を目指す点において志を同じくするグループであり、 積極的に交流を行っ た。 II-I 人的交流 ネイチャーテック研究会の主宰者は本 WG のメンバーでもあり、また、他の本 WG メンバーもネイ チャーテック研究会のプロジェクトに参画し、深く関わっている。両グループの講演会に互いの関 係者が出席するなど、情報交換も盛んに行った。 mp le II-II ネイチャーテック研究会発足講演会を協賛 ネイチャーテック研究会の発足を記念して茨城県つくば市で開催された 「第1回ネイチャーテッ ク研究会」 (物質・材料研究機構並木地区 大会議室)を協賛し後援した。 7. 今後の方向性 7.今後の方向性 自然に学んで環境負荷の小さな技術を生み出そうという動きは最近になって国内でいくつか出て きている。環境問題が注目を集め、自然や生物のすばらしさが改めてクローズアップされている現 在、 「エコ」と「バイオ(ネイチャー)ミメティクス」の 2 つのキーワードを絡めた動きは今後さ らに増える可能性がある。エコマテリアルフォーラムとしては、ほかのグループとも連携をとりつ つ材料分野のイニシアティブをとって、Nature Inspired Materials の主旨に合う研究の掘り起 sa こしと協力の呼びかけを行っていくべきであると考える。 45 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 1. ワーキンググループ名 :環境問題のための自治体ラウンドテーブル 1.ワーキンググループ名 ワーキンググループ名: 2. 設置期間 :平成 17 年 6 月 ∼ 平成 18 年 3 月まで 2.設置期間 設置期間: 3.メンバー 3. メンバー ○小野 修一郎 千葉工業大学経営情報科学科 ・杉 義弘 岐阜大学工学部機能材料工学科 ・篠原 嘉一 独立行政法人 物質・材料研究機構 ・中村 和史 太平洋セメント株式会社 中央研究所 mp le 4. ワーキンググループの目的 4.ワーキンググループの目的 自治体の抱える環境問題を中立的な立場から取り上げ、 制約のない場での自治体間の自由な情報交 換が可能なネットワークを形成することを目的とする。将来的には、このような情報交換から今後 必要な技術開発の方向性を提言することを目指す。 5. 活動の内容 ・視点 ・方法 5.活動の内容 活動の内容・ 視点・ 5.1 活動内容 本ワーキンググループの本来の目的である 「制約のない場での自治体間の自由な情報交換が可能な ネットワークの形成」の具体的な題材として“産業廃棄物の不法投棄問題”を取り上げる。しかし、 “産業廃棄物の不法投棄問題”は自治体内あるいは自治体間において複雑な事情を有している場合 sa もあり、題材として取り上げるには事前に十分な調査を行った上で検討すべきと考えられる。 そこで、今年度は事前調査として、全国レベルでの産業廃棄物の処理状況、不法投棄の現状や対応 状況の把握、さらに、代表的な自治体の産業廃棄物対策に関する調査を行うこととした。 5.2 活動の視点と方法(手順) “産業廃棄物の不法投棄問題”は、県境を越えた全国レベルの問題となっており、その対策は自治 体にとどまらず国を巻き込んだ大規模なものとなっている。このことを踏まえ、以下の手順に従い 調査活動を実施する。 ① 広い視野に立ち、国内における産業廃棄物処理の全体像を既存資料の調査により把握する。 ② 不法投棄に関する国としての対応状況や施策を確認し、その実施状況を調査する。 ③ 次いで、各自治体が国の施策を受け、どのような取組みを考え、実施しているのかあるいは実 施しようとしているのかを調査する。特に、先進的な取組み、あるいは独創的な取組みを行ってい る自治体をピックアップし、その取組み内容に関してヒアリング調査を行う。 46 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) ヒアリングにおいては、自治体の取組み状況と合わせ、本ワーキングの取組みへの期待や要望に関 する情報も得るようにする。 ④ 調査結果を統合し、来年度の実質的な活動へ向けた計画を策定する。 6. 成果の詳細 6.成果の詳細 6.1 産業廃棄物の発生、処理、有効利用状況 平成 14 年度の産業廃棄物の総排出量は約 4 億トンであり、その内訳は、再生利用:1 億 8200 万ト ン、減量化:1 億 7200 万トンおよび最終処分:4000 万トンとなっている。近年の推移は、総排出 量はほぼ横ばいで、再生利用および減量化が少しずつ増加し、結果として最終処分量が減少傾向に mp le ある。 (環境省資料より) 6.2 産業廃棄物の不法投棄の現状 不法投棄件数は平成 5 年頃から急増し、平成 10 年の 1197 件をピークとし、それ以降はばらつきを 伴いながら僅かずつ減少傾向にある。しかし、不法投棄量は件数によりまちまちで傾向は掴みにく い。どこかで大規模な不法投棄が発生した場合に大きく増加することになる。 (環境省資料より) 6.3 産業廃棄物不法投棄問題に対する国の対応状況 細かな取組みは様々な外郭団体を通して実施されているが、大きな対応として、特定産業廃棄物に 起因する支障の除去等に関する特別措置法(産廃特措法)の施行が挙げられる。この法律に基づき、 自治体への産業廃棄物不法投棄による支障の除去に関する費用の補助を実施している。 6.4 産業廃棄物処理の問題点 sa 現在、各自治体が抱える産業廃棄物処理に関する問題点は以下のように整理できる。 ○ 解体系建設廃棄物の処理管理 排出時は建設リサイクル法に準拠し地方建設局の管轄だが、処理時は地方環境局の管轄になり、加 えて県境を越えると管轄する自治体も変わってしまうので、 適正処理確認のトレースが不可能であ る。 ○ 不法投棄発覚時の対応 国費を投入し支障除去を行う場合の行政の管理責任の追及。 ○ マニフェストの形骸化 廃棄物の移動実態とマニフェストの流れが一致しない事態が発生。 ○ 再発防止対策 ・基本的に産廃管理は国が統括するが、管理実務は県等に委託している(排出事業者責任の明確化 の必要性) 。 47 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) ・県等は要員不足、専門家不足(行政担当者のサポートの必要性) ・国から県等への通達により上記は対策不備の言い訳にはできない。 6.5 自治体間情報交換の現状 2005 年 10 月 1 日より、環境省が全国各ブロックに地方環境事務所を設置し、産廃の県境問題対応 を含め、自治体連携の強化を図っている。 また、(財)産業廃棄物処理事業振興財団により「産廃処理ネットワーク」(インターネットによる優 良処理業者と排出業者のマッチングサイト)が運営されている。 6.6 本ワーキンググループに求められる役割 ヒアリング調査結果より、 本ワーキンググループに期待される役割として以下のことが挙げられる。 報提供。 mp le ○ 法規制整備、マニフェスト制度の強化、不法投棄監視制度の強化など行政の取組みに関する情 ○ 自治体の先駆的取組みや独自の取組みに関する情報提供 6.7 自治体ヒアリング調査 (1)ヒアリング実施状況 ・財団法人産業廃棄物処理事業振興財団 :2005 年 11 月 11 日 ・東京都環境局廃棄物対策部 :2006 年 1 月 25 日 ・千葉県:2006 年 3 月予定 sa ・青森県:2006 年 3 月予定 ・岩手県:2006 年 3 月予定 (2)ヒアリング調査結果 a)財団法人産業廃棄物処理事業振興財団(2005 年 11 月 11 日実施) ・平成 4 年設立 ・債務保証 :適正処理事業実施を目指す中小企業の資金調達を支援 ・適正処理事業推進 :不法投棄の防止および支障除去の支援 ・助成事業 :技術開発、起業支援 ・振興事業 :調査研究、出版広報 ・その他関連事業 :セミナー等 ・産廃処理ネットワーク:インターネットによる優良処理業者と排出業者のマッチングサイトを運 営 48 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) b)東京都環境局廃棄物対策部(2006 年 1 月 25 日実施) ・医療廃棄物 :バーコードによる管理(東京都医師会方式)の支援 IC タグによる追跡システムの試行 ・産業廃棄物 : 「報告・公表制度」を導入。 ・八都県市の連携 :建設廃棄物の総合的管理の仕組みを国に共同提案中していくことを目指す。 ・産廃スクラム27 :関東甲信越+静岡県+福島県、27都市間の広域連携による不法投棄の相 互監視を強化 mp le 7. 今後の方向性 7.今後の方向性 7.1 ヒアリングの継続 これまで全国の産業廃棄物処理の現状を把握するために、 (財)産業廃棄物処理事業振興財団を訪ね ヒアリングを行った。次いで、国内最大自治体である東京都を訪ねヒアリング行い、産業廃棄物処 理適正化へ向けた最新の取組みについて情報を得た。 この後も、首都圏に近く産業廃棄物の最終処分場を抱える千葉県を訪ね、不法投棄対応への取組み 状況および計画をヒアリングする予定。さらに、大規模な不法投棄が発覚し、その対応を実施した 青森県および岩手県にもヒアリングを行う予定である。 7.2 ワークショップ開催 平成 18 年度は、これまでのヒアリング先を招致し、体験談あるいは先進的取組み事例として報告 を依頼する。これをワークショップとして広く公開し、自治体間の情報交換の場として提供するこ sa とを計画している。 49 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 1. ワーキンググループ名 : 1.ワーキンググループ名 ワーキンググループ名: 「個別の学協会における環境教育を共同討議するためのラウンドテーブル」 2. 設置期間 :平成 17 年 6 月 ∼ 平成 18 年 3 月まで 2.設置期間 設置期間: 3. メンバー 3.メンバー 東京理科大学理学研究科理数教育専攻 座長 加納 誠 国立教育政策研究所統括研究官 五島 政一 生産開発科学研究所(財団) 奥 彬 みどりのテーブル共同代表 小林 一朗 東京理科大学名誉教授 古谷 圭一 フェリス女学院中学校高等学校教諭(東京理科大学大学院理学研究科) 冠木 英克 mp le 諏訪東京理科大学教授 奈良 松範 湘南科学史懇話会代表 猪野 修治 4. ワーキンググループの目的 4.ワーキンググループの目的 21 世紀の「環境教育」が極めて重要であることは論をまたない。小学校から大学まで、さらに 一般の社会人に、いかなる環境教育が必要かを具体的・総合的に模索するのが主要な目的である。 個別学問領域における教育実践を閉じた世界で議論するのではなく、 それらを他領域の環境実践の 中に相対化することによって相互互換性のある環境教育の指針を広く社会に示すことにある。 具体 的には研究所、中学・高校・大学、市民活動等々で活躍する研究者が一同に会し、多くの一般参加 者を交えて徹底的な議論・討論を行うことにある。 sa 5. 活動の内容 ・視点 ・内容 5.活動の内容 活動の内容・ 視点・ 「地域で学校で〈環境 2005 年 11 月 23 日、東京理科大学神楽坂校舎 11 号館 1101 教室において、 教育〉を考えよう」というサブテーマで、公開討論会を開催した。まず加納 誠氏(座長)の趣旨 説明があった。加納氏は東京理科大学理学研究科理数教育専攻で学生を教育・指導しつつ、日本物 理学会では「環境物理学分野代表」として全国の研究者を組織化するなど、日本の環境科学を先導 する立場にある。 同氏はこれまで個別散漫に議論されてきた種々の環境問題を物理学の立場から体 系的に論じ、他の領域との協調を図ることの重要性を主張した。 第 1 部では、この問題意識を共有して、五島政一氏(藤国立教育政策研究所)が一般講演「アー スシステム教育と地球環境」 を行った。 五島氏は長年中学現場で具体的な教育実践を体験された後、 研究者となった立場ゆえ、同氏の講演は具体的かつアクチャルであった。その思想は近年話題のア メリカ発の「アースシステム」なる教育概念とその実践である。主要な内容は「総合的な科学教育 とはなにか」ということである。具体的には、分析的・還元的な科学の特徴と限界、総合的な地球 システム科学、アースシステム教育、アースシステム教育7つの理解目標と理科の授業の展開、アー スシステム教育の指導方法、アースシステム教育の評価方法、アースシステム教育の教師像と人間 像、持続可能な開発のための教育としてのアースシステム教育、等々である。 第 2 部では、これを引き継いで 5 人のパネラー(奥 彬氏、小林 一朗氏、古谷 圭一氏、冠木 英克氏、奈良 松範氏)が、それぞれの立場からの実践報告を行った(第 2 部) 。まず、奥氏は 「地球システム科学の学習はだれのためにあるのか」の問題意識から、有限地球システムの中の人 50 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 間活動の現状を批判し人間社会に節約精神を加えることの重要性を述べた。小林氏は、 「市民派政治・ 市民運動分野の視点」から、抽象的に論じられる環境問題を具体的な政策として実現するにはどのよ うな姿勢と視点が必要かを訴えた。同氏によると「里山教育」が重要であり、里山は人間社会が介入 できる限界と循環のメカニズムを教えてくれる力説した。古谷氏は「専門領域を超えた環境教育 高 等教育の場からの発題」として、環境問題は現代科学技術の専門分化が生み出した危機的な課題であ ると述べ、子供の時代から「なまの自然と接触すること」の重要性を学生に指導する様子を述べた。 冠木氏は「中等教育における環境教育の実践」として、学校現場が「地球系・自然系・生活系の重複 領域」を意識し持続的な環境教育の重要性を述べた。最後に奈良氏は八ヶ岳の麓にある「諏訪東京理 科大学における環境教育の事例」を具体的に披露した。その特徴は環境教育のおける教員のポリシー を問題として「教員と学生の協同作業による環境配置型大学の構築に向けた」取り組みと、大学外で も教員と学生が一体となってボランティア活動を行っている様子を報告した。 第 3 部では、講演者(五島氏) 、パネラー(奥氏、小林氏、古谷氏、冠木氏、奈良氏) 、参加者との 総合討論を行った。いわゆる会場を交えた円卓会議である。多義にわたる提言・議論・討論が展開さ mp le れた。このような環境シンポでもっとも重要なことは「総合討論」である。自由闊達な総合討論なく して学問の進展は望めない。このことを強く主張しておきたい。不特定多数の一般参加者が講演者・ パネラー・参加者の提言・発言・議論を踏まえつつ、それらをたたき台にして、十分な時間を設けて 思いのたけをぶつけることが大切なのである。そこでこそ、語る「主体性」が発揮される。その詳細 は本文に譲るが、学協会横断を横断する討論の先駈けの役割は果たせたものと確信する。 6. 成果の概略 6.成果の概略 この円卓会議は東京理科大学の大学祭の最中に開催されたこともあり、中学高等学校の教員を志望 する多数の学生諸君の参加があったが、それぞれの立場の第一線で活躍する人々たちが、各自の持ち 場から限りなく真摯に真剣に議論する姿それ自体が、 学生諸君にとってはもっとも重要で有用な環境 教育であったものと考える。さらに、主体的に環境教育にあたる語り部の当事者自身が、日常生活の 中で身をもって行動すべきことがもっとも肝要であることを知りえたことである。次回はより実践的 sa な討論に絞り込み、広く公開して行きたいと考える。 51 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 1. ワーキンググループ名 :エコマテリアルの社会経済学 1.ワーキンググループ名 ワーキンググループ名: 2. 設置期間 :2005 年 7 月 から 2006 年 3 月 まで 2.設置期間 設置期間: 3. メンバー : 3.メンバー メンバー: ○石原慶一(京都大学) 中村慎一郎(早稲田大学) 醍醐市朗(東京大学) 横山一代(東北大学) 山末英嗣(京都大学) 目的:材料の価値を歴史的にどう捕らえてきたか、そこにエコマテリアルが加わったときどのよう に変化するのか、生産価格、市場価格の実勢価格との差はどこに生じているのかを明らかにするた mp le めに、社会的な価値、経済的な価値、生産価値、付加価値を精査しながら、新しい価値の容認と市 場価格への反映を目指し、その学問的基礎を築く。 活動内容・視点・方法:本テーマは全く新しい領域を開拓しようとするものであり、メンバーそれ ぞれが模索し考察することが必要である。その後、多学協会と連携をとり、広い立場から意見を伺 いながら、学問領域としての基礎を築き上げる。 成果の概略:本年度は基本方針の策定を行った。まず、材料の社会学と材料の経済学についてそれ ぞれどのような視点が必要か、また、過去の研究としてどのようなことがやられているかについて 詳細に検討した。その結果、経済学との連携や社会学の視点を取り入れつつ、工学的な手法を用い ることにより体系化できることが分かった。さらに、これらの成果を分かりやすく伝えるためには 自動車、 家電などの具体的なものに適用した場合のケーススタディを行うことが重要であるとの認 sa 識を得た。 今後の方向性:適宜研究会を開催するとともに材料学会エネルギー・環境材料部門委員会、電気学 会新再資源化ネットワーク技術調査専門委員会と連携をとりつつさまざまな視点から議論を行い、 3 年後に本を出版する予定である。 52 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 1. ワーキンググループ名 :社会蓄積量から見た資源有効利用の評価 1.ワーキンググループ名 ワーキンググループ名: 2. 設置期間 :2005 年 4 月∼ 2006 年 3 月 2.設置期間 設置期間: 3. 社会蓄積量から見た資源有効利用の評価ワーキング ・グループ メンバー 3.社会蓄積量から見た資源有効利用の評価ワーキング 社会蓄積量から見た資源有効利用の評価ワーキング・ 梅澤 修 横浜国立大学大学院工学研究院システムの創生部門、助教授 玉城 わかな(株)日鉄技術情報センター 市場調査部 ○醍醐 市朗 中島 謙一 東京大学大学院工学系研究科、助手 東北大学大学院環境科学研究科、助手 橋本 征二 (独)国立環境研究所 循環型社会形成推進・廃棄物研究センター、主任研究員 布施 正暁 (独)産業技術総合研究所 ライフサイクルアセスメント研究センター、研究員 村上 進亮 (独)国立環境研究所 循環型社会形成推進・廃棄物研究センター、NIES ポス ドクフェロー 京都大学大学院エネルギー科学研究科、助手 mp le 山末 英嗣 横山 一代 東北大学大学院環境科学研究科、助手 (○:主査) 4. ワーキンググループの目的 4.ワーキンググループの目的 本 WG では、まず社会蓄積量が資源有効利用の観点から、どのように定義され、どのような分類が なされるべきか検討することを本年度の目的とした。次に、社会蓄積量は、モニタリングが困難で あるため、それら分類ごとの社会蓄積量の推計方法を確立し、最後に、資源循環に関する政策、企 業における製品設計(マテリアル・セレクション)などの資源利用に関する意思決定のための指標 を検討することを目的としている。 5. 活動の内容 ・視点 ・方法 5.活動の内容 活動の内容・ 視点・ 本WGでは、資源の有効利用について評価することを念頭に、社会蓄積として存在している物質量を sa 分析するための基礎研究をおこなった。本 WG の取組みは、近年のマテリアルフロー分析(MFA)など のフロー量を基本とした資源の循環に関する研究とは、 異なったストック量を基本とした研究であり、 新たな知見の得られる可能性も大きく、新規性もある。本WGで得られた結果より、資源循環に関する 政策や社会システムに対する提案や、企業における製品設計(マテリアル・セレクション)に対する 提案が可能となると考えられる。 53 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 6. 成果の概略 6.成果の概略 本年度得られた成果は 2 つに大別できる。1 つは社会蓄積の定義であり、もう 1 つは社会蓄積の 区分である。それぞれについて、以下に簡単にまとめる。 6−1.社会蓄積の定義 6.1.1 用語の定義 社会蓄積とは、人工物圏に蓄積されている物質のことを指し、その物質量を社会蓄積量とする。 社会蓄積の例として、建築物、土木構造物、機械類などとして用いられている物質などが挙げられ る。なお、人工物圏とは、空間のうち人間活動に関わる部分のことを指し、それ以外の空間を環境 圏とする。人工物圏と環境圏の境界を設定することは容易ではないため、境界に関する詳細につい ては次節で詳述する。 mp le 6.1.2 社会蓄積 (1)人工物圏と環境圏の境界 本節では、既に述べられてきた考え方を勘案し、社会に蓄積されている物質を考えるときに依然 として残る境界の不明瞭な点を指摘する。不明瞭な境界は、大きく以下の3つに分類できると考え られる。 i)動植物の活動と人間活動との区分 動植物の活動と人間活動との区分に関しては、人工林、農地、家畜、人体が区分の不明瞭な物質 として考えられる。人間により管理されているが自然に生育しているため、人工物圏とも環境圏と も考えられる。 ii)投入プロセスにおける境界 投入プロセスにおける境界に関しては、hidden flows として議論されている。環境圏から人工 物圏に移動したかどうか不明瞭な物質についての議論であり、人為的に移動した物質であるが、利 用されることのない物質などが挙げられる。例えば、建設のために掘削された土や岩、港で浚渫さ sa れた堆積物、採鉱や採石で発生する表土、収穫して利用しないバイオマスなどがある。 iii)排出プロセスにおける境界 排出プロセスにおける境界に関しては、 使用済みとなった後の物質が環境圏に排出されたかどう かの区分が不明瞭な物質についての議論である。例えば、埋立地、hibernating materials、 dissipative materials がある。管理された埋立地については、Eurostat (2001)のガイドライ ンで、環境の一部とするが、MFAの実施者が選択してよいとしている。hibernating materials(冬 眠中の物質)は、地下に埋められ使われなくなったケーブルなどの主に地中に残存している物質の ことである。dissipative materialsとは、製品の利用による故意のあるいは不可避な結果として の環境中への排出であり、例として、肥料、堆肥、凍結防止剤などの製品の散逸的利用、車のタイ ヤや道路の摩耗分、溶剤の揮発分などの散逸的ロスがある。現状の枠組みでは、hibernating materials は蓄積されていると考えられるが、 「冬眠している」というよりは、ほとんど自然と同 化しており、廃棄されているとも考えられる。また、明確な意思を持って我々が環境に戻すかどう かで蓄積されているか環境に戻るかが決定されるとも考えられる。一方、これらの議論は、社会蓄 積を一様のものとして扱うため、人工物圏と環境圏の境界を決定する必要があるが、境界が曖昧な ものを別に区分することも考えられる。区分に関しては次章に記す。 (2)蓄積とフローの区分 本節では、蓄積されている物質と取引されており蓄積されていると言えない物質(フロー)との 54 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 区分について検討する。既存の MFA(Material flow accounts)に関する Eurostat (2001)が作成 したガイドラインでは、国民経済計算における項目に順ずる形で「経済に属する物質ストックは、主 に国民経済計算で定義される固定資産である。すなわち、土木構造物、建築物、車、機械、在庫など である。国民経済計算では固定資産と考えない耐久財についても、物質フロー勘定では考慮すべきで ある。 (Eurostat (2001)3.15) 」としている。また、WG においても国民経済計算を基礎とした社会 蓄積の把握を検討した。国民経済計算の統計の1つである産業連関表と社会蓄積の関係について考え ると、耐用年数が 1 年未満の製品寿命のものはフローとなる。しかし、これは統計が 1 年を単位とし ているためであり、社会蓄積とフローとの区分は、データの入手可能性に依存して変わる可能性のあ るものであり、製品寿命の短い製品や在庫の取り扱いに留意する必要があることがわかる。 6−2.社会蓄積の区分 社会蓄積の区分に関しては、分析の実施者や目的によりいくつかの可能性が考えられる。以下に記 mp le した区分のほかに所有者による区分や地域による区分が考えられる。 6.2.1 利用状況による区分 社会蓄積の中には、有効に利用されているもののほかに、先般から指摘しているように飛散してし まっているものや、認識されずに廃棄されているもの、埋設されたままの冬眠しているものなどが含 まれる可能性がある。そこで、現在の当該物質の利用状況による区分と、現在の勘定による区分が考 えられる。また、利用状況においても、有効に利用されているかいないかという視点の他に、製品寿 命が残っているか、終わっているかという視点も考えられる。2 つの視点により、指すものが少し異 なるが、この区分により得られることは、今すぐ再生資源の原料として社会から排出することのでき る資源として、社会中にどれだけのバッファが存在するかということである。 6.2.2 回収可能性による区分 回収不可能なものが区分されると、回収不可能な製品として社会に投入することを避けることによ sa り、資源の投入量が減少できることが想定される。また、回収不可能な製品の回収システムあるいは 表 1 回収可能性による区分案 55 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 再利用技術を新たに創造することによって、資源の再利用が促進されることが想定される。このよ うな目的のために、回収可能性による区分に従った社会蓄積の分析が、資源循環の促進に有効であ ると考えられる。WG で検討された 4 つの区分案を A, B, C, D として、回収可能性を 4 つの視点 mp le から区分することを試みた。 sa 表 2 区分案に対応した物質の例 7. 今後の方向性 7.今後の方向性 社会蓄積量を分析することは、今後の資源循環や資源枯渇に対し大きな意味を持ち、早急に取り 組まれるべき研究課題であるといえよう。 本年度の成果として得られたように社会蓄積の定義の不 明瞭な点について、区分とともにさらに検討し、それら分類ごとの社会蓄積量の推計方法を確立す ることが次の課題である。 56 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 4.フォーラム活動カレンダー (2005 年 4 月~2006 年 3 月) 1.国際会議 第 6 回エコマテリアル国際会議 2005 年 7 月 3 日-8 日 サンテック国際会議場(シンガポール) 2.主催ワークショップ・シンポジウム 「エコマテリアル・フォーラム設立記念シンポジウム」 2005 年 5 月 12 日-13 日 タイム 24 ビル(東京都江東区青海) 「産業廃棄物、特に建築廃材、古紙等の処理方法の調査 第 1 回ワークショップ」 sa mp le 2005 年 10 月 6 日 13:00-17:00 芝浦工大工学部本館校舎(東京都港区芝浦) (岡部 WG) 「産業廃棄物(家電・建材)の処理および利用方法 第 2 回 ワークショップ」 2005 年 12 月 9 日 13:00-17:30 芝浦工大工学部本館校舎(東京都港区芝浦) (岡部 WG) 「産業廃棄物(家電・建材)の処理および利用方法 2006 年 2 月 17 日 13:00-17:30 第 3 回 ワークショップ」 創業サポートセンター (東京都港区芝浦) (岡部 WG) 「先進エコマテリアル-新用途開発素材 ~持続型社会に期待される新発想エコマテリアル~」 2005 年 12 月 17 日 9:30-17:00 東京ビッグサイト会議室 608 号室 (東京都江東区有明) 鈴木 WG、篠原 WG、垣澤 WG(合同) 「サステナビリティ懇話会」 2006 年 1 月 11 日 13:00-18:00 虎ノ門パストラル(東京都港区虎ノ門) 3.共催・後援行事 「NIMS mini Workshop “Nature Inspired Materials”」 (垣澤 WG) 2005 年 10 月 4 日 物質・材料研究機構(茨城県つくば市) 「ナノテクの社会受容促進に関する調査研究」 第 2 回ワークショップ-倫理・社会影響に関する研究-」 (黒田 WG) 2005 年 9 月 15 日 経済産業省別館(東京都千代田霞ヶ関) 「個別の学協会における環境問題共同討議するためのラウンドテーブル ~環境教育をテーマにして~ -地域で学校で“環境を考えよう”-」(加納 WG) 2005 年 11 月 23 日 13:30-17:00 東京理科大学 (東京都新宿区神楽坂) 57 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート(簡易版) 4.ワーキンググループ(WG)活動実績 (1) 「社会学から見た材料価値、環境価値の多角的検討 WG」 石原慶一 2005 年 9 月 21 日 第 1 回会合 (2) 「社会蓄積量から見た資源有効利用の評価 WG」 醍醐市朗 2005 年 8 月 12 日 第 1 回会合 2005 年 10 月 7 日 第 2 回会合 2005 年 12 月 9 日 第 3 回会合 2006 年 1 月 11 日 第 4 回会合 (3) 「ナノテクノロジーの社会影響検討 WG」 黒田光太郎 ※「H17 年度科学技術振興調整費ナノテクノロジーの社会受容促進に関する調査研究」の 一部として活動 ナノテクノロジーの社会受容促進に関する調査研究第 2 回 WS [経産省別館] 2005 年 11 月 9 日 ナノテクノロジーの社会受容促進に関する調査研究第 3 回委員会 sa mp le 2005 年 9 月 15 日 [NIMS 東京会議室] 2006 年 1 月 25 日 ナノテクノロジーの社会受容促進に関する調査研究第 4 回委員会 [NIMS 東京会議室] 2006 年 1 月 27 日 ナノテクノロジーの社会受容促進に関する調査研究第 5 回委員会 [NIMS 東京会議室] 2006 年 3 月 8 日 ナノテクノロジーの社会受容促進に関する調査研究公開シンポジウム [NIMS 並木会議室] (4) 「産業廃棄物、とくに建築廃材の循環型処理技術の調査 WG」 岡部敏弘 2005 年 10 月 6 日 第 1 回ワークショップ [芝浦工大] 2005 年 12 月 9 日 第 2 回ワークショップ [芝浦工大] 2006 年 2 月 17 日 第 3 回ワークショップ[建築会館] (5) 「先端環境界面科学による環境修復/環境調和プロセス技術の開発と普及 WG」 鈴木淳史 12 月 17 日 ワークショップ開催(グループ6,7と共同開催) (6) 「エネルギーシステム素子用材料の設計指針 WG」 篠原嘉一 8 月 19 日 10 月 18 日 第 1 回会合 第 2 回会合 (7) 「Nature Inspired Materials WG」 垣澤英樹 10 月 4 日 Nims mini ワークショップ[物材機構] (8) 「地方における具体的材料環境問題を共同討議するためのラウンドテーブル WG」小野修一郎 8 月 18 日 第 1 回会合 10 月 7 日 第 2 回会合 11 月 11 日 取材調査実施(産業廃棄物振興財団) 1 月 23 日 取材調査実施(東京都庁) 3 月 23 日 取材調査実施(千葉県庁) 3 月 27 日-28 日 取材調査実施(岩手県庁、青森県庁) (9) 「個別の学協会における環境問題を共同討議するためのラウンドテーブル WG」 加納誠 11 月 23 日 58 環境教育をテーマにした円卓会議 [東京理科大] Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 5.委員会等開催実績 2005 年 5 月 12 日 設立総会 2005 年 5 月 24 日 第 1 回幹事会 2005 年 6 月 8 日 第 1 回企画審議会 2005 年 11 月 2 日 第 2 回幹事会 2005 年 7 月 15 日 第 1 回エコマテリアルデータベース小委員会 2005 年 8 月 30 日 第 1 回広報委員会 2005 年 11 月 21 日 第 2 回情報広報委員会 2006 年 2 月 3 日 第 2 回企画審議会 第 2 回エコマテリアルデータベース小委員会 2006 年 3 月 10 日 第 3 回エコマテリアルデータベース小委員会 sa mp le 2005 年 12 月 8 日 59 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 5.委員会等開催実績 2005 年 5 月 12 日 設立総会 2005 年 5 月 24 日 第 1 回幹事会 2005 年 6 月 8 日 第 1 回企画審議会 2005 年 11 月 2 日 第 2 回幹事会 2005 年 7 月 15 日 第 1 回エコマテリアルデータベース小委員会 2005 年 8 月 30 日 第 1 回広報委員会 2005 年 11 月 21 日 第 2 回情報広報委員会 2006 年 2 月 3 日 第 2 回企画審議会 第 2 回エコマテリアルデータベース小委員会 2006 年 3 月 10 日 第 3 回エコマテリアルデータベース小委員会 sa mp le 2005 年 12 月 8 日 59 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート (簡易版) 5.トピックス紹介 (エコマテリアル・フォーラムメールマガジン再掲) フォーラムは各分野で活躍している会員の皆様が、分野を越えた横断的な情報交換や交流がで きることをめざしています。トピックスのページでは、 「エコマテリアル」に関連する最新情報や 興味深い話題を、会員限定でお知らせしています。詳細はエコマテリアル・フォーラムのホームペ ージをご覧ください →http://www.sntt.or.jp/eco/topics.htm メールマガジン編集担当:エコマテリアル・フォーラム情報広報委員会 垣澤 英樹 (物質材料研究機構) 田中 良平 (森林総合研究所) 山下 宏一 (理化学研究所) 山口 明 (岩手大学) sa mp le 2005 年度 トピックス見出し一覧 ¾ 2005 年 10 月 「バイオマス資源・オイルパーム」 「微生物ポリエステルの高強度化」 「ネイチャーテック研究会発足」 「17 年度 3R 推進月間」 ¾ 2005 年 11 月 「産業廃棄物の循環型処理技術の調査」ワークショップ開催報告」 「バイオマス.誤解と希望」 「硫黄化合物系エミッションの無害・資源化とゴミメタルからの鉄銅回収」 ¾ 2005 年 12 月 「愛知万博で使用された生分解性プラスチック製食器はどこへ?」 「第 6 回 グリーン・サステイナブル ケミストリーシンポジウム」 「貴金属使用量を大幅に減らした高性能燃料電池用電極」 ¾ 2006 年 1 月 「都市・地域構造に適合した資源循環型社会システムの構築」研究プロジェクト終了のご報告」 <研究室紹介1>「理化学研究所 環境ソフトマテリアル研究ユニット」 「青森インダストリーフォーラム」の案内 「将来技術ワーキンググループ、講演会『先進エコマテリアル−新用途開発素材』を開催 」 「ジャニン・ベニュス氏、グンターパウリ氏が来日、2 月 1 日講演会を開催」 「NIMS フォーラム 2006 開催」の案内 ¾ 2006 年 2 月 「バイオポリエステル熱安定性の鍵」 「物材機構が『物質・材料研究アウトルック』を刊行」 「『愛・地球博』、その後」 「ジャニン・ベニュス『Biomimicry』の翻訳書がオーム社から刊行」 ¾ 2006 年 3 月 <研究室紹介2>「神戸製鋼所 機械研究所 化学環境研究室」 「新刊『環境適合設計ツールの活用入門』のご案内」 「NIMS イブニングセミナーを開催します」 60 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) トピックス本文(エコマテリアル・フォーラム HP を再掲載) 2005 年 10 月掲載 「バイオマス資源・オイルパーム」 パーム油産出に関わるバイオマス資源の実態に迫ります オイルパームをご存知でしょうか?これはパーム油を産出するヤシ科の植物で,日本では洗剤の原料として 有名ですが,世界的には食用として広く供されています。その栽培はマレーシアやインドネシアなど熱帯諸国 において大々的なプランテーションにより行なわれており,世界合計の生産量は年間 3,300 万トン,植物油脂 全体のおよそ 30%を占めています。このようにオイルパームは食用油の供給や産出国の経済を支える大変有 用な植物ですが,その一方で,油を搾る際に発生する木質の果房,幹,茎などは貴重な木質バイオマス資源 にも拘らず,ほとんどが未利用のまま焼却または廃棄されているのが現状です。その量,年間で推定1億トン以 上に達します(乾燥重量)。何という資源の損失でしょう!私たちは,こうした未利用資源を『エコマテリアル』とし て有効に利用するための技術開発研究を,マレーシアなどパーム油産出国の研究機関や大学と共同で日夜 進めています。 (独)森林総合研究所 成分利用研究領域セルロース利用研究室 sa mp le 〔文責〕田中良平 〔参考文献〕 森と木の先端技術情報(APAST),15, pp52∼55 (2005) Japan Agricultural Research Quarterly (JARQ), 38, pp275∼279 (2004) 熱帯林業,55, pp44∼51 (2002) 2005 年 10 月掲載 「微生物ポリエステルの高強度化」 これまで微生物ポリエステルの欠点であった硬くて脆いという問題を解決する技術が開発されました 微生物によって糖や植物油などから生合成されるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、環境中で微生物によっ て完全に分解される環境にやさしい材料の一つとして注目されています。代表的な PHA であるポリ[(R)-3-ヒド ロキシブタン酸]は他の熱可塑性ポリマーと同じように成型加工が可能ですが、硬くて脆いという物性のため に、これまで単独での実用化は困難とされてきました。しかし最近、溶融押出しした P(3HB)を、冷延伸法、二段 階延伸法および微結晶核延伸法で処理することで超高強度繊維を作製する技術が開発されました。この技術 によって、分子量 500∼2000 万の超高分子量 P(3HB)から破壊強度 1.3GPa、破壊伸び 35%、ヤング率 18.1GPa の繊維が作製され、野生株産 P(3HB)からも破壊強度 650MPa の高強度繊維の作製に成功しています。さら に、この技術は高強度フィルムの作製に応用されるとともに、様々な共重合体にも適用できることが明らかとな ってきました。 〔文責〕山下宏一 理化学研究所 中央研究所 化学分析チーム 〔参考文献〕 特願 2004-29044. Macromol. Sym., 224, 11 (2005). Macromol. Biosci., 5, 840 (2005). Macromol. Rapid. Commun., 25, 1100 (2004). Polym. Degrad. Stab., 79, 209-216 (2003). Polym. Degrad. Stab., 79, 217-224 (2003) 61 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート (簡易版) 2005 年 10 月掲載 「ネイチャーテック研究会発足」 自然の知恵に学び、環境に負荷をかけない新技術を追究するグループが発足しました 外気温が一日で 0℃から 50℃まで変化するサバンナで常に内部を 30℃に保つ「エアコン完備」のシロアリ 塚。鉄の 1/6 の軽さで「鉄より強い」クモの糸。天井を走り回る「瞬間脱着自在」のヤモリの足。自然や生物のす ごさを学び、応用することで、環境に負荷をかけない技術を生み出せないか? 46 億年の知恵の結晶を人間 のテクノロジーでリ・デザインし、新しいモノつくりと暮らしの形を提案する「ネイチャーテック研究会」が 9 月 16 日、発足しました。 発足を記念して行われた第 1 回講演会(物質・材料研究機構)では、主宰者の石田秀輝・東北大学大学院教 授ら 8 名の講演が行われました。石田教授は、人間の欲望を肯定しながら、豊かな暮らしと持続可能な社会を 両立するために「自然のすごさを賢く学ぶ」ことを提唱。物質・材料研究機構の田中順三・生体材料研究センタ ー長ら招待講演者からは、自然に学んだ環境調和型技術の実例が示され、参加者と活発な討論が交わされま sa mp le した。 また、研究会は今後、最初の活動として「自然のすごさ」を集めたデータベース作りに着手することを発表しま した。データベースは来年 Web 上での公開を目指しており、異分野の研究者のネットワーク作りにも役立つも のになりそうです。 次回の研究会は 12 月、仙台で予定されています。1997 年アメリカで出版され大きな話題となった 「Biomimicry」の著者ジャニン・ベニュス女史、ゼロエミッションの提唱者グンタ・パウリ氏が来日します。エコマテ リアルフォーラム Nature Inspired Materials ワーキンググループもネイチャーテック研究会に協力しています。 〔文責〕垣澤英樹 物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター 〔参考文献〕読売新聞による紹介記事 (2005 年 9 月 14 日読売新聞科学面) 2005 年 10 月掲載 「17 年度 3R 推進月間」 経産省が 10 月の「3R 推進月間」での活動内容を発表しました 興味深いシンポジウムや研究会も各地で行われるようです 9 月 29 日、経産省は、10 月の「3R 推進月間」での 3R 普及啓発活動の内容を公表しました。 リデュース・リユース・リサイクルの「3R」推進に対する国民の理解と協力を求めるため、毎年 10 月を「リデュー ス・リユース・リサイクル推進月間」(略称 3R 推進月間)と定めています。期間中、7府省と協力し、様々なイベン トやキャンペーンが展開されます。 ○九州地域の環境産業のテーマ展示(19-21 日、北九州) ○3R 推進シンポジウム in 中部(20 日、名古屋) ○環境・リサイクルセミナー2005 北海道(26 日、札幌) など、フォーラム会員にとっても興味深いイベントがありそうです。また同省の関連機関も、(財)クリーン・ジャパ ン・センターが「資源循環技術研究発表会」(7 日、東京)、 (財)古紙再生促進センターが「紙リサイクルセミナ ー」(31 日、東京)などを行います。 (詳細はこちら→ http://www.meti.go.jp/press/20050929004/20050929004.html) 〔文責〕垣澤英樹 物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター 62 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 2005 年 11 月掲載 「産業廃棄物の循環型処理技術の調査」ワークショップ開催報告 「産業廃棄物の処理技術」をテーマにしたワークショップが開催されました エコマテリアル・フォーラムでは、社会的重要度の高いテーマをとりあげ、ワーキンググループを設け、調査 研究活動を行っております。このたび、「産業廃棄物」の中で、特に「建築廃材」、「古紙」等の処理方法の調査 を行う目的で、第 1 回のワークショップを日時:平成17年10月6日(木),芝浦工大工学部(東京都港区芝浦 3-9-14)で開催しました。 グループ代表の千葉工業大学小野修二郎教授による挨拶で始まり、「産業廃棄 物、特に建築廃材の循環型処理技術の調査」ワーキングの取り組みについて、ワーキンググループリーダーの 青森県工業総合研究センター岡部敏弘氏より紹介がありました。 つづいて、芝浦工業大学工学部村上雅人 教授による超伝導技術を使った「地球環境保護と先端技術」、(株)ダイナックス材料開発グループ向 一仁氏 によるオートマチック車の「湿式摩擦材の廃棄処理の取り組みについて」、(株)リガク熱分析グループ 有井 忠 氏による木材、リンゴ絞りかす、鶏糞ウッドセラミックスなどの「産業廃棄物の熱分解ガスの分析」、ラサ工業(株) sa mp le 機械事業部坂田博志氏による建築廃材などの木材を中心とした「産業廃棄物の粉砕処理技術」、鶴見曹達 (株) エコロジー事業部牧野澄夫氏による木材などの「樹木根等の爆砕処理技術による利用方法について」、 エァ.ウォーター.ベルパール(株)技術開発部吉永直人氏による木材、鶏糞ウッドセラミックス、オカラセラミックス などの「産業廃棄物の樹脂成型技術について」、日本油脂(株)化薬事業本部中地章氏による製材所の廃材を 用いた「小型バイオマスガス化発電システムについて」の紹介がありました。 第1回ワーキングには、51名の 参加者があり、活発な質問と意見が交わされました。 当グループは、ひきつづき、第2回ワークショップを、平成17年12月9日(金)に、第3回を平成 18 年 2 月 17 日(金)に開催します。産業廃棄物の処理技術にご関心のある方は、ぜひワーキンググループの活動にご参加 下さい。 プログラムの詳細はこちらをご覧下さい ⇒ http://www.sntt.or.jp/eco/ws051006.htm ※次回(17 年 12 月 9 日)ワークショップ案内 ⇒ http://www.sntt.or.jp/eco/ws051209.htm 〔文責〕岡部敏弘 青森県工業総合研究センター 2005 年 11 月掲載 「バイオマス.誤解と希望」 奥 彬 著:シリーズ“地球と人間の環境を考える”10巻、日本評論社(2005). バイオマスや生分解性プラスチックに少しでも関心がある人や研究者技術者に読んでもらいたい本 バイオマスを環境資源問題や持続型社会の救世主のように思っていませんか?研究者や産業やジャーナリ ストは、プラスチックの実がなりバイオマス燃料が搾れる植物があるかのように、この言葉を地球温暖化防止に 結び付けてはいませんか?これまで有機資源には石油がおもに使われてきましたが、決して正しく使われてき たとはいえず、大量生産と廃棄のなかに利益と安易さを求めたので環境問題が生じています。この癖はバイオ マスで改まったのでしょうか?かえって再生可能資源やグリーン、カーボンニュートラルなどの言葉を用いて、 バイオマス材料は大量に作っても安易に廃棄しても地球にやさしそうだと誤解させていませんか?資源の差を 問わず産業品の製造にはエネルギーと有限な金属資源等の消費が必ず伴うことを忘れてはいませんか?植 物は再生可能でも原料と産業品はちがうでしょう。技術と経済と便益を至上とする考えがバイオマスの大切さを 損ねないように、これを研究し技術開発する人の理念と倫理とは何かを本書は考えさせてくれるでしょう。 〔文責〕奥 彬 (財)生産開発科学研究所 63 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート (簡易版) 「硫黄化合物系エミッションの無害・資源化とゴミメタルからの鉄銅回収」 廃棄物からの有価資源生成のための基礎およびプロセス研究を行っています 岩手大学工学部材料物性工学科 飯島・山口(勉)研究室のご紹介 私ども研究室では現在エコマテリアル研究テーマとして、硫黄化合物系エミッションの無害・資源化およびゴミ メタルからの鉄銅回収に取り組んでいます。 金属資源の鉱石の多くは硫化鉱であるため、これらを取り出した後には不可避的に硫黄化合物系のエミッショ ンが発生します。熱力学シミュレーションと電気炉を用いた小型試験を行い、廃プラスチックを還元剤として、硫 化物を還元し元素硫黄を生成し無害化するプロセスを研究しています。 一方、一般廃棄物の溶融処理により発生する合金は主に鉄と銅より構成されます。これらを分離することで資 源化が可能ですが、熱力学的性質の制約から分離プロセスの構築が困難なのが現状です。そこで、相平衡の sa mp le 測定などを通して有効なプロセスの提案を行っていきます。 研究室スタッフ 飯島嘉明教授、山口勉功助教授、植田滋助手 岩手大学 工学部 材料物性工学科 のホームページ (http://www.mat.iwate-u.ac.jp/index.html) 2005 年 12 月掲載 「愛知万博で使用された生分解性プラスチック製食器はどこへ?」 愛知万博で使用された生分解性プラスチック製の食器が再利用されます 愛知万博では、生分解性プラスチックでできた食器やごみ袋が導入されました。(財)バイオインダストリー 協会の試算によれば、これによって樹齢 50 年のスギ約 10 万本が半年間で吸収する量に匹敵する約 720 トン の二酸化炭素排出が削減されたとのことです。さて、万博の閉幕後、使われていた食器類の行き先はどうなっ たかというと、先日、経済産業省から「食器具で万博閉幕後においても使用可能なものについて、資源の有効 活用及びバイオマス(生分解性)プラスチックの今後の普及促進の観点から、関係府省及び要望のあった全国 都道府県庁の職員食堂で再活用(リユース)することとなりました」という発表がありました。 (詳細はこちら→ http://www.meti.go.jp/press/20051031001/20051031001.html 〔文責〕山下宏一 理化学研究所 中央研究所 化学分析チーム 2005 年 12 月掲載 「第 6 回 グリーン・サステイナブル ケミストリーシンポジウム」 グリーン・サステイナブル ケミストリーに関するシンポジウムが 2006 年 3 月に開催されます グリーン・サステイナブル ケミストリー(GSC)に関する第 6 回シンポジウムが、グリーン・サステイナブルケミスト リーネットワークの主催で、2006 年 3 月 7 日(火)∼8 日(水)、学術総合センター・一橋記念講堂(東京)で開催さ れます。 このシンポジウムは、「GSC 活動を実践する産官学の関係者が一堂に会し、最新情報の報告を行うとともに今 後の展望を討論することによって、わが国における GSC 活動をいっそう推進させることを目的としている」という ことで、主要テーマは、1. 産業界・学会における GSC 実践と展望、2. GSC の最先端、3. アジア・オセアニアと 64 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) の連携、4. GSC に関する最新の研究成果です。なお、事前参加登録の期限は 1 月 16 日(月)までとなっていま す。 (詳細はこちら→ http://www.gscn.net/event/index.html) (連絡先) (財) 化学技術戦略推進機構(JCII)内 GSC シンポジウム事務局 〒101-0051 東京都千代田区神田神保町 1-3-5 E-mail: [email protected]、Tel: 03-5282-7270、Fax: 03-5282-0250 〔文責〕山下宏一 理化学研究所 中央研究所 化学分析チーム 2005 年 12 月掲載 「貴金属使用量を大幅に減らした高性能燃料電池用電極」 安価で大量に存在する材料で市販電極の 1.5 倍の性能 sa mp le 独立行政法人物質・材料研究機構エコマテリアル研究センターの森利之主席研究員と高橋基研究員は、ダ イレクトメタノール型燃料電池のアノード材料(負極材料)として、Pt(白金)と CeO2(酸化セリウム)という金属と セラミックスの複合電極を開発しました。市販の Pt と Ru(ルテニウム)の合金電極に比べて安価な材料で 1.5 倍 の電流密度と市販の電極のオンセットポテンシアルを低下させる(電極反応損失を低下させる)優れた特性を 達成しており、携帯機器用燃料電池の大幅な普及促進、家庭用コージェネレーションのさらなる発展につなが るものと期待されています。 開発したアノード材料は高価で希少な Ru をまったく用いず、環境にやさしく、かつ安価な高性能電極を提供す ることが可能です。 また、Pt の使用量も最大で 34%程度削減できると期待されています。現在、さらなる高性 能化を目指し、CeO2 上に分散した Pt 粒子の微細化を進めています。 この成果は、今年11月30日からつくば市で開催される「第4回機能性発現のための材料創製に関する国際会 議」や12月10日に都内日本大学で開催される「第16回日本マテリアルリサーチソサエティー学術シンポジウ ム」などで発表されます。 〔文責〕垣澤英樹 物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター 2006 年 1 月掲載 JST 研究プロジェクト 「都市・地域構造に適合した資源循環型社会システムの構築」の終了 成果内容およびワークショップ等の資料概要の一部を未踏協会ホームページに公開しました 平成 14 年 4 月に(社)未踏科学技術協会内に設置いたしました「循環型材料技術委員会」では、皆様のご 支援のもと、平成 14 年 11 月より平成 17 年 10 月の 3 年間にわたり、(独)科学技術振興機構社会技術研究開 発センターの公募型プログラム研究領域Ⅱ:循環型社会において、研究プロジェクト「都市・地域構造に適合し た資源循環型社会システムの構築」を実施いたしました。研究成果の公開につきましては、(独)科学技術振興 機構社会技術研究開発センターにおいてなされますが、研究チームにて取りまとめた成果内容およびワーク ショップ等の資料概要をホームページ(http://www.sntt.or.jp/eco/junkan/junkan051202.htm )に公開しまし た。今後ともご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。 〔文責〕梅澤 修 横浜国立大学大学院 工学研究院 システムの創生部門 65 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート (簡易版) 2006 年 1 月掲載 研究室紹介 1 独立行政法人理化学研究所 環境ソフトマテリアル研究ユニットのご紹介 独立行政法人 理化学研究所 環境ソフトマテリアル研究ユニット 〒351-0198 和光市広沢 2-1 (独)理化学研究所 電話:048-467-7963 Fax:048-462-4668 ユニットリーダー 丑田 公規 研究室 URL : http://www.riken.jp/lab-www/eco-soft/ http://www.riken.jp/r-world/research/lab/unit/eco-soft/index.html (Japanese) http://www.riken.jp/engn/r-world/research/lab/unit/eco-soft/index.html (English) 1.研究室名について sa mp le 「環境ソフトマテリアル」という耳新しい名前について説明しなければなりません。実は英語にするとわかりや すく「エコマテリアル(Eco Material)」「ソフトマテリアル(Soft Material)」という2語の合成であることがわかります。 所内では研究室名はできるだけ日本語にするという要請があって、環境省からいただいた予算でプロジェクト 研究を進めていることもあって「環境」という日本語を使うことになりました。 ソフトマテリアルあるいはソフトマターという言葉は、物性物理学で最近よく使われている言葉です。たとえば Physical Review E の指定する領域は、"Statistical Nonlinear, and Soft Matter Physics"と書いてあります。もと もと、固体物理(Solid State Physics)に対する用語として「やわらかい物」という意味の用語が使われたのですが、 高分子、液晶、ガラス、膜、ゲル、生体物質、生物そのもの、といった、不定形の複雑系を総称してソフトマター と呼んでいます。こういった物質は「化学」の立場から語られることは多かったのですが、「物性物理学」「化学 物理学」といった物理学の見地で、複雑系を考え直そうという機運が高まってきたのです。環境保全や廃棄物 処理を考えるサイエンスやエンジニアリングを進める上で、物性物理学の見地からの知見や考察が大変重要 になります。その中で、私たちの身の回りにある物の多くが「ソフトマテリアル」であることに気づきました。「ソフト マテリアルならではの物性や反応性」を利用して環境保全や廃棄物処理に役立てるということができないもの だろうか、と考えたわけです。ソフトマテリアル物理を駆使して環境改善の方法を発見しようという考え方です。 ユニットという研究単位は、プロジェクト予算が進行しているだけの間認められる研究単位で、いわば「期限付 き研究室」です。予算がなくなれば私は普通の研究員に戻ります。理研では流動的かつ効果的に研究を進め るためにこのような制度を持っています。 2.廃棄プラスティックの脱塩素処理の必要性 現在、生産量の3/4を占める主要プラスティックには、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピ レン(PP)、ポリスチレン(PSt)の4つがありますが、このうち PVC のみが塩素を含んでいます、元来プラスティック はどのプラスティックでも可塑剤、安定剤、増量剤、色素というような添加物が大量に含まれており、それを調整 することによりプラスティックの素晴らしい特性を引き出しています。例えば PVC の場合、水道管などに用いら れている硬質塩ビ、電線被覆などに用いられている白色配合塩ビ、自動車のシートなどに用いられている軟質 塩ビでそれぞれ PVC の含有量が違います。硬質塩ビでは90%以上 PVC ですが、白色配合では約半分、軟 質塩ビでは約1/3しか PVC が含まれていません。他のプラスティックでも似たような事情です。ですから、それ をもう一度集めて作り直しても、もとのプラスティックと同じ成分を再調製することは困難です。ですから、もっと も理想的なプラスティックのマテリアルリサイクル(プラスティックとしてのリユーズ)は、大きな技術的困難が伴う とともに、コスト的に全く見合うものではありません。つまり、企業ゴミのようにある程度分別されたプラスティック 66 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) が集積するならば処理はより簡単ですが、ご承知のように分別技術にはまだまだコストのかかる物が多く、複雑 な廃棄物を扱うには万能ではありません。 一方、プラスティックゴミの焼却による熱利用、すなわちサーマルリサイクルは現在のところ法的に許可されて いません。そこで、マテリアルリサイクルの次善の策としてケミカルリサイクル(またはフィードストックリサイクル) が試みられています。バルク量として、もっとも大きな事業は鉄鋼業界で石炭の代用として、コークスの原料に なるか、直接高炉に吹き込み還元剤として用いられているものです。これは間接的に炭酸ガス排出の削減に つながる重要な技術です。 さて、主要プラスティックのそのまた1/4を占める PVC にしか含まれていない塩素は、加熱すると塩化水素 (塩酸)として放出されます。高炉による利用にしても、サーマルリサイクルにしても、加熱処理をする場合には プラントへのダメージはさけられません。そこであらかじめ塩素をプラスティックから除去する必要があります。目 安は自然の石炭にも含まれている塩素の 0.5%程度以下に下げることです。 sa mp le このような処理方法として、JFE(旧日本鋼管)のロータリキルンを用いた輻射加熱方法と、2軸射出機を用い た摩擦加熱方法が存在しています。(http://e-solution.jfe-holdings.co.jp/product/b-012.html)前者は特に PVC 含有量の多い廃プラ、後者は PVC の少ない廃プラで特に効果的であるとされています。それらはいずれ も窒素雰囲気で加熱することが特徴ですが、それぞれ原理的にある程度 PVC(塩素)含有量を調整しなけれ ばならないことと、加熱時間が平均30分以上かかることが技術的問題点でした。 3.誘電加熱を用いた混合廃プラの脱塩素処理 ソフトマテリアルならではの物性を使った廃棄物処理方法として、今現在我々は以下のような研究を進めてい ます。 主要廃プラの中で PVC のみが誘電感受性が強いことは、キュアリングの現場ではよく知られていました。た だし、このデータは数 100MHZ の周波数領域の話です。そこで、 我々は、混合廃プラでも 1GHz 以上のマイクロ波による誘電加熱で PVC のみ選択的に加熱できるのではないかと考えました。この原理 を図1に示します。 この方法だと原理的に、どんな量の PVC が含まれていても、その 部分だけが加熱されますから効率的な脱塩素ができるはずです。吸 収マイクロ波エネルギーは体積に比例しますが、熱の逃散は表面積 に比例するので、実際はあまり小さな PVC の断片はあまり効率よく加 熱できません。しかし、含有量そのものには依存しませんから、一般 廃プラのように毎回 PVC 含有量が変動する廃棄物の処理にはうって つけです。つまり選別されていない廃プラをそのまま処理できること が最大のメリットです。 図1 マイクロ波で選択的に PVC が脱塩素化 されるメカニズム この方法での試験については(株)神戸製鋼所機械研究所化学環境研究室との共同研究を2000年から 続けており、神鋼が主体となって、(社)プラスティック処理促進協会、文部科学省の平成14年度独創的革新技 術開発提案公募(産学官連携イノベーション研究)制度の補助をいただいて研究を推進してきました。写真1 は、写真2の神鋼の試験装置で PE の中に PVC の入ったモデル廃プラを処理した例で、予想通りに PVC のみ が炭化して処理されているのがわかり、この手法は一応の成功をすることがわかりました。特にうまくいく場合に は1−2分で処理できる模様で、処理速度が速いことが特徴です。この手法は日本経済新聞(2003/7/25)、化 67 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート (簡易版) 学工業日報(2003/11/4)、朝日新聞(2003/12/6)、Chemical Engineering 誌(2003/9)、日刊工業新聞 (2003/11/13)などで紹介されました。 写真 1 処理前後の PVC と PE の混合物。処理前の混合物(右側)が 処理後に PVC のみが黒化しているのがわかる 写真 2 マイクロ波処理装置の製作例((株)神戸製作所) sa mp le この手法については「電子レンジ」をイメージされることと思います。しかし、電子レンジはものを「マイルドに 暖める」装置で、急速加熱する装置ではありません。実際我々の研究では強い電界強度での加熱が必要であ ることが判明しています。しかも処理速度が速いほうが有害物の再合成(ダイオキシン生成のリスクが高まる)の 可能性も低いと言うことになります。そのためには高い電界強度(数kV/m 以上)を発生させなければならないと いうこともわかってきました。そこで、マイクロ波を印加する装置(アプリケータ)の設計を根本からやり直す必要 があることがわかりました。 現在第3のフェーズとして、平成16年度から環境省の廃棄物等処理科学研究費で3年のプロジェクト研究を 進めています。この研究の概要を説明しましょう。 マイクロ波誘電加熱では、電界強度の分布設計が重要な鍵となります。この実態を実験的に調べる実験は難 しいので、コンピュータによるシミュレーション解析が有効です。誘電加熱の効率は材料の誘電率に依存しま す。その上、過去の実験では、熱の放散が重要なファクターになることがわかってきました。そこでプラスティッ ク材料の誘電率と熱物性(熱容量、熱伝導度、熱拡散率)を実際に各温度で測定し、データベース化し、これ を理研のスーパーコンピュータ(Riken Super Combined Cluster : RSCC)System で計算、可視化するスキーム を考えました。この方法を用いると、多数のアプリケータを製造する手間や費用が省けます。プラスティックを処 理するアプリケータに関する技術は、未開拓で蓄積がありませんから、様々な設計のアプリケータをシミュレー ションで検討するのがもっとも効率的なアプローチです。 「それは簡単だろう。熱物性も誘電率もすでに確立した測定だから。」とよく言われるのですが、これは大きな 誤りです。まずプラスティックはすべて混合物で個々の材料製品によって物性が大きく異なります。これではそ れぞれの製品を各社から集めて自前で測定評価するしかありません。ましてや100−200℃程度以上の加熱 時の物性は公的に明らかにされたデータが存在しません。さらに、1GHz 以上の誘電率は測定が困難で今まで 測定例がありませんでした。誘電率はkHz 領域までは簡単に測定できます。これは、こういった周波数の電磁 波の波長が十分に長く、交流の電流として捕らえるのが容易だからです。しかし、例えば電子レンジに使われ る 2.45GHz のマイクロ波の波長は約 10cm 程度ですから、より微細な測定電極が必要ですし、ケーブルなどか らの電磁波の漏れを十分に小さくする必要があるので、精密微細加工した測定セルが必要です。我々は北海 道大学理学部野嵜助教授の研究室の技術を提供して頂き、プラスティック材料の 1-20GHz 領域の誘電正接ス ペクトルを 100℃程度までの温度領域で測定することができました。現在は、さらに温度領域を高温側に広げて いくためにケーブルやコネクタの材料を変更した精密測定セルを、理研の微細加工技術を使って製作してい 68 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) ます。現在熱測定とともに、各種エンジニアリングプラスティックやプラスティックシートなどのデータベース化に 取り組んでいます。 一方、シミュレーションプログラムについては理研の情報基盤センタ ーの姫野室長の協力の下、電磁波解析と熱流解析を連結した連成 解析のシミュレーションプログラムを開発中です。この2つの解析とも 有限要素法を用いたシミュレーションプログラムはすでに市販されて います。しかし、これらを連結したシミュレーションプログラムは存在し ていませんでした。誘電加熱の場合、最初にプラスティック材料を入 れたときの電磁波を解析すると電界強度が求まって、誘電加熱効率 が計算できます。しかし、その次の瞬間、温度が上昇し熱伝導が起き ますから、誘電率や熱伝導度が変化します。ですから、その段階で、 再び電界強度計算をし直さなければなりません。電磁波のダイナミク sa mp le スと熱伝導のダイナミクスは、時間領域が全く異なりますから、2つの 独立したプログラムの連成解析をすることができます。まだ途中の結 果ですが図2にそれを示します。 本研究プロジェクトで目標にしているのは、 1)塩素含有量に左右されない脱塩素処理:どのような混合廃棄プラ スティックでも、受け入れ時の成分調整なしに高効率で脱塩素処理で きるような、アプリケータを設計する。 2)迅速な脱塩素処理:1−2分で処理を終了し、可塑剤系などで起こ 図2 誘電加熱シミュレーションの例:下のようなアプリ ケータ中央に PVC のシートをおいたときの過熱 状況。マイクロ波定在波の腹の部分で温度上 昇が激しい る副反応を抑制し、有害物の生成を最小限に抑える。 の2点です。こればかりでなく、最近電気炉でのプラスティック焼却が許可されるようになったことでもわかるよう に、閉鎖系で廃棄物が散乱しないと言う性質が、結局は環境負荷を低減し、安全性の価値を高めるというメリッ トを生むと考えています。 69 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート (簡易版) 2006 年 1 月掲載 「青森インダストリーフォーラム」 の案内 青森県が東京で技術発信のイベントを行います 2006 年 1 月 18 日、東京国際フォーラムで、青森県の技術発信のイベントが開催されます。青森県の大学、 研究所、企業など 35 社が出展します。 青森県工業総合研究センターからは、「鉛はんだ代替レーザ接合技術の開発」、「機能性炭素材料ウッドセ ラミックスの開発」、「環境循環型非塩素系凍結防止剤の開発」、「新規有用有機材料-不溶性シクロデキストリ ンポリマー」などの研究成果を発表する予定です。入場無料ですので、興味のある方は、ぜひご参加下さい。 「青森インダストリーフォーラム」 日時:平成 18 年 1 月 18 日 10:00∼17:30 場所:東京国際フォーラム ホールB7[東京・有楽町] sa mp le 詳細案内 および 参加申込書 → PDF ファイル 2006 年 1 月掲載 将来技術 WG「先進エコマテリアル−新用途開発素材」を開催 (シンポジウム開催報告) エコプロダクツ 2005 と同時開催、出展も行う 2005 年 12 月 17 日、将来技術ワーキンググループは、エコプロダクツ 2005 併設シンポジウムとして「先進エ コマテリアル−新用途開発素材」を開催しました。 企業で開発に携わる技術者を中心とする 15 名の講演者から、社会的要請によって急速に転換しつつある技 術ニーズとそれに対する新しい取り組み、ユニークな発想による新材料開発の事例、企業としての戦略などが 紹介されました。会場の 63 名の参加者からは多数の質問やコメントが出され、新用途開発素材を切り口に先 進エコマテリアル開発の現状と問題点が討論されました。 また、14 万人を超える来場者が訪れたエコプロダクツ 2005 にもエコマテリアルフォーラムとして出展を行い、フ ォーラムの活動をアピールしました。 〔文責〕垣澤英樹 物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター シンポジウム詳細プログラムはこちら → http://www.sntt/or.jp/eco/ws051217.htm 70 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 2006 年 1 月掲載 「ジャニン・ベニュス氏、グンターパウリ氏が来日、2 月 1 日講演会を開催」 『バイオミミクリー』、『ゼロエミッション』の提唱者の講演を同時通訳で 2 月 1 日、仙台国際センターで、自然の叡智を活用した技術革新『バイオミミクリー』の提唱者ジャニン・ベ ニュス氏、『ゼロエミッション』の提唱者グンターパウリ氏を招き、「人と地球を考えた環境・経済・ものつくり国際 セミナー」が開催されます。あたらしいものつくりの在り方について先進的な提案と方向が示されるものと思いま す。同時通訳付で、しかも定員 200 名と制限がありますので、お早めに申し込みください。参加無料です。 詳細はこちらをご覧下さい→ PDF ファイル 「東北産業クラスター計画・東北大学環境フォーラム合同国際セミナー」 日 時:平成18年2月1日(水)13:00-17:00(12:00開場) 場 所:仙台国際センター大会議室「橘」 sa mp le 参加料:無料 募集締切:1月27日(金) ジャニン・ベニュス氏は自著「Biomimicry」の翻訳書が今春出版予定(翻訳書名:自然と生体に学ぶバイオミミク リー)で、1 月 30 日、2 月 3 日にもそれぞれ東京と大阪で講演会が開催されます。有料です。 1 月 30 日 東京 http://www.zeri.jp/annaijyo.html 2月3日 大阪 http://www.eco-design.net/23.PDF 〔文責〕垣澤英樹 物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター 2006 年 1 月掲載 「NIMS フォーラム 2006 開催」 の案内 物材機構(NIMS)発足から 5 年の成果とこれからの取り組みがわかります 「NIMS フォーラム 2006」 日時:平成 18 年 2 月 15、16 日 場所:東京国際フォーラム ホールB7、B5 2 月 15、16 日、東京国際フォーラムにおいて「NIMS フォーラム 2006」が開催されます。独立行政法人物質・材 料研究機構(NIMS)は平成 18 年 3 月で設立から 5 年を迎え、第1期の中期計画が終了します。今回の NIMS フォーラムでは、第 1 期中期計画における 5 年間の研究成果、最新の技術移転シーズおよびこれからの NIMS の取り組みが紹介されます。また、国内の著名な研究者による物質・材料研究の将来についての講演、パネル ディスカッションが予定されています。フォーラム開催期間中、エコマテリアル関連を含む NIMS 最先端の研究 テーマ 119 のポスター展示も行われます。参加無料。 詳しい情報、参加申し込みはこちら→ http://www.nikkan.co.jp/nims2006/index.html 〔文責〕垣澤英樹 物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター 71 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート (簡易版) 2006 年 2 月掲載 「バイオポリエステル熱安定性の鍵」 生分解性プラスチックの熱安定性、本当は高い? 再生可能資源から合成されるバイオポリエステルは、代表的な生分解性プラスチックですが、熱安定性が 低く、熱成型時に起こる熱分解が問題となっていました。しかし最近になって、バイオポリエステル自身の熱 安定性は低くないことが分かってきました。再生可能資源を原料として化学重合で生産されるポリ乳酸の場 合、ポリマー中に残存する重合触媒由来の金属イオンが熱安定性を著しく低下させているということが報告さ れていますが、さらに、驚くべきことに微生物合成されるポリ(3-ヒドロキシブタン酸)においても、ポリマー中に は細胞由来のカルシウムイオンなどが含まれており、それが低い熱安定性の原因であることが分かってきまし た。これらの金属イオンは、ポリマーの酸処理あるいはポリマー鎖末端を化学修飾すると大部分を取り除くこ とができ、ポリマーの熱安定性も非常に向上するということです。 〔文責〕山下宏一 理化学研究所 中央研究所 化学分析チーム sa mp le [参考文献] Polym. Degrad. Stab., 91, 769 (2006). Biomacromolecules, 5, 1480 (2004). Biomacromolecules, 5, 1606 (2004). Polym. Degrad. Stab., 81, 515 (2003). 2006 年 2 月掲載 「物材機構が『物質・材料研究アウトルック』を刊行」 国内外の物質・材料研究、政策、施策の動向を分析 物質・材料研究機構(NIMS) は、国内外の物質・材料に関わる政策、施策、研究活動等の全般的動向を 分析した情報分析誌「物質・材料研究アウトルック」2005 年版を刊行しました。 「アウトルック」は、国内外の物質・材料研究に関係する政策担当者、研究機関の運営管理者、研究者等を対 象とし、活動方針策定のための分析情報として活用されることを目的としています。物質・材料の主要分野に ついて、最近の研究動向や将来の見通しがまとめられているほか、日米欧を中心とした各国の物質・材料に関 わる研究政策や研究機関の調査・分析も行っています。 ご興味のある方は、こちらまで→ http://www.nims.go.jp/jpn/news/outlook/index.html 〔文責〕垣澤英樹 物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター 2006 年 2 月掲載 「『愛・地球博』、その後」 愛知万博で推進されたバイオリサイクルやマテリアルリサイクルの成果が開示されています 愛知万博では、環境に配慮したバイオリサイクルやマテリアルリサイクルが推進されました。万博終了後も、 12 月号のメルマガで一部紹介したような試みが継続的に実施されています。経済産業省から「バイオプロセス 実用化開発事業」を受託してこれらの事業を推進している(財)バイオインダストリー協会では、その成果を下記 のホームページで開示しています。 詳細はこちら→ http://www.jba.or.jp/katsudou/aichikyuu/aichikyuutop.htm 〔文責〕山下宏一 理化学研究所 中央研究所 化学分析チーム 72 Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 2006 年 2 月掲載 「ジャニン・ベニュス『Biomimicry』の翻訳書がオーム社から刊行」 「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」2 月から店頭に 「自然と生体に学ぶ バイオミミクリー」 Janine M.Benyus/著 山本良一/監訳 吉野美耶子/訳 1997 年ジャニン・ベニュスが著し話題を呼んだ「Biomimicry」の日本語版が刊行されました。自然に学び生 体に似た機能を応用することにより持続可能な社会を形成することを提案し、その先進的な事例を紹介して います。遅すぎた感すらある日本語版の出版ですが、その考え方は 10 年たっても色あせず、むしろますま す重要になっています。環境負荷低減に関わる技術開発に取り組む方にとって大いに興味の持てる一冊 だと思います。 sa mp le ご興味のある方は、こちらまで→http://ssl.ohmsha.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=4-274-50065-9 〔文責〕垣澤英樹 物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター 73 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート (簡易版) 2006 年 3 月掲載 研究室紹介2 「(株)神戸製鋼所 機械研究所 化学環境研究室のご紹介」 sa mp le 神戸製鋼所は、鉄のほかアルミ銅、機械の事業部門を持っており、さらに特長ある製品を生み出す関連会 社も数多く存在します。私達は、神戸製鋼グループの化学分野の技術を支える専門集団として、機能性素材、 プロセス工学、環境浄化に資する技術開発に取り組んでいます。 連絡先: ㈱神戸製鋼所 機械研究所 化学環境研究室 〒651-2271 神戸市西区高塚台 1 丁目 5-5, Tel: 078-992-5635, Fax: 078-992-5547 URL: http://www.kobelco.co.jp 74 sa mp le Ecomaterials Forum 2005 Annual Report (Digest Version) 75 エコマテリアル・フォーラム 2005年度アニュアルレポート (簡易版) 2006 年 3 月掲載 「新刊『環境適合設計ツールの活用入門』のご案内」 製品設計に環境配慮性を如何に取り込むか?そのための具体的方法が本になりました 新刊 『環境適合設計ツールの活用入門』-コアツール LCA,QFDE,TRIZ の活用- のご案内 日科技連出版社より、2006 年 1 月に表記の書籍が刊行されました。エコマテリアルの研究・開発・普及に携わっている 皆様方には、マテリアルからエンドユーザに一段と近づいた製品レベルでの設計に環境配慮性を取り込む手法をご 紹介するものです。 【本書の使い方】 ・ 製造業社内での環境適合設計の研修テキスト・実務用手引きに ・ 大学・大学院での環境適合設計の講義用テキストに ・ エコマテリアルの効果的な製品への利用の手掛かりに 【本書の対象読者】 sa mp le (a) 製造業の実務者:日々の実践に有効 (b) EMS(環境管理システム)の実務者:製品のライフサイクルの管理への橋渡しに有効 (c) 学生:環境適合設計の基礎習得から研究の参考に有効 【本書の特徴】 (1) 実践的:「環境適合設計=従来の設計に対して"環境配慮"という新たなトレードオフの要素が加わった設計」を従 来の設計と対比して実践的に詳説 (2) 具体的:概念だけでなく、LCA・QFDE・TRIZ という 3 つのツールを順に利用することで、効果的な設計が行えるよう 具体的に作業手順を詳説 (3) 適用事例付き:3 つの異なる製品に適用した事例を詳説 ご興味のある方は 日科技連出版社 HP →「2006 年度刊行図書」→「1 月」→「環境適合設計ツールの活用入門」→「詳細」 または、書店にてお尋ね下さい: 坂尾知彦, 増井慶次郎, 笠井肇 著:環境適合設計ツール活用入門−コアツール LCA, QFDE, TRIZ の効果的活用 方法とその事例, 173 pages, 坂尾知彦 編, 日科技連出版社, 2006, ISBN4-8171-9174-0 〔文責〕坂尾 知彦 ドイツ・ダルムシュタット工科大学 ゲストリサーチャ 2006 年 3 月掲載 「NIMS イブニングセミナーを開催します」 自然(昆虫や土など)から学んだエコマテリアルの発想を生かす 3 月 17 日、物質・材料研究機構は、東京・虎ノ門で NIMS イブニングセミナー(10)を開催します。今回のテーマ は「自然(昆虫や土など)から学んだエコマテリアルの発想を生かす」です。 自然界に存在する材料の素晴らしさを解き明かし真似ることは、古くからモノづくりのよきお手本となってきまし た。天然材料や生物にヒントを得た新しいエコマテリアル技術「ネイチャーインスパイヤードマテリアル」につい て、NIMS エコマテセンターの研究者が紹介します。聴講費無料です。 日時 H18 年 3 月 17 日(金) 16:00-18:00 詳細、申込はこちら→ http://www.nims.go.jp/jpn/techtrans/evening-seminar/index.html 〔文責〕垣澤英樹 物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター 76 sa mp le エ コ マ テ リ ア ル・フ ォ ー ラ ム 事務局 社 団 法 人 未 踏 科 学 技 術 協 会 〒105-0001 東京都港区虎ノ門 2-5-5 桜ビル 9F Tel 03-3503-4681 Fax 03-3597-0535 e-mail [email protected] URL http://www.sntt.or.jp/eco/ 無断転載・複写不可
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