「デング熱ってどんな病気？」関西空港検疫所片山友子これまでデング熱は毎年 200 名前後の患者が報告されていますが、すべて海外で感染して帰国した人で、国内で感染した事例は 60 年以上ありませんでした。しかし、今年 8 月に東京の代々木公園を中心として 9 月 26 日現在 147 名の患者が国内発生しました。デング熱は、デングウイルスによりおこる感染症で、感染症法（正式名称：感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律）では４類感染症に指定されており、医師は患者を診断した場合には直ちに届出が必要となります。主な流行地域は、熱帯や亜熱帯の全域で、東南アジア、南アジア、中南米で患者の報告が多く、その他、アフリカ、オーストラリア、南太平洋の島でも発生があります。最も日本に近い流行地域は台湾で、南部の高雄では毎年デング熱の流行が起こっています。また、全世界では、年間約 1 億人がデング熱を発症し、約 25 万人がデング出血熱を発症すると推定されています。デング熱は、蚊が媒介します。主な媒介蚊はネッタイシマカ（日本には常在していません）ですが、日本のほとんどの地域（秋田県および岩手県以南）でみられるヒトスジシマカも媒介します。これらの蚊は、空き缶などに溜まった水でも発生するため、都会でデング熱が流行することも多いです。デング熱の患者を刺した蚊の体内ではウイルスが増えて、その蚊が次のヒトを刺すことで感染がおこります。ヒトからヒトに直接感染することはありません。感染して（蚊に刺されて）から、 2～ 14 日（多くは 3～ 7 日）後に、突然の高熱（ 38～ 40℃ ）、激しい頭痛、目の奥の痛み、関節炎、筋肉痛、発疹がみられます。この発疹は風疹と同じような小さな紅斑（こうはん）で、痒みや痛みはありません。また、感染しても発症しないことも多くみられます。臨床検査では血小板、白血球の減少、肝機能障害等が特徴的です。診断は、血液中のデングウイルスの抗原や遺伝子、デングウイルスに対する IgM 抗体を検出することで行われます。症状は 1 週間程度で消失し、通常、後遺症なく回復し、予後は良好です。デングウイルスそのものに効く抗ウイルス剤はなく、治療は対症療法となります。痛みや発熱に対してアスピリンの投与は、出血傾向を増悪させる可能性があり避ける必要があります。デングウイルスには 4 つの型があり、ひとつの型のデングウイルスに感染して回復し、その後、別の型のデングウイルスに感染すると、デング熱の一般的な症状に加え出血症状を示すデング出血熱となる可能性があり、適切な治療がなされないと死亡することもあります。現在ワクチンの開発がすすめられていますが、現時点で有効なワクチンや予防する薬はありません。蚊に刺されないようにすることが唯一の予防法です。流行地にでかける際は、蚊に刺されないように注意が必要です。長袖、長ズボンの着用が推奨されます。また、蚊の忌避剤などの使用も有効な方法です。 -------------------------------メモ ----------------------------------