5.4 ブレースの設計 5.4.1 S ブレース 5.4 ブレースの設計 5.4.1 Sブレース INDEX: 設計概要・軸力に対する計算・検定計算・引張ブレース指定された場合の取り扱い・ 圧縮ブレースの幅厚比チェック・注意事項 (1)設計概要 鉛直ブレースにはピン接合ブレースと剛接合ブレースという分類がある。一端でも剛接指定されたブレ ースは剛接合ブレースとなる。また、ピン接合ブレースは引張ブレース指定ができる。これらはブレー スの形状パターンとは無関係に指定できるので、注意が必要である。 水平ブレースはピン接合引張ブレースのみである。 溝形鋼・アングル・平鋼・丸鋼には剛接合指定はできない。 Y 型、M 型、W 型ブレースは中央節点が必ず剛接合となるので(ユーザーは変更できない)自動的に 剛接合ブレースとして扱われる。 水平荷重に対するブレースの設計時の扱いを次表にまとめて示す。これらの扱いと別に、鉛直荷重に有 効か無効かの指定が可能である。なお、引張ブレースを「鉛直荷重」に有効指定すると、長期応力が圧 縮となった場合、長期応力に対する設計、検定がされないので注意すること。 表-5.4.1.1 ブレースの設計時の扱い 1 次設計応 材端接合条件指定 力解析 ピン接合ブレース 剛接合ブレース 引張ブレース指定 存在応力に対し柱設計 有り 無し 弾性 剛性 1/2 の存在軸力 存在軸力に対して を 2 倍して引張の 引張・圧縮で設計 み設計 存在軸力に対して 存在応力に対し柱設計 存在軸力で引張の 非線形 引張・圧縮で設計 み設計 (NL)* *:1 次設計の応力解析に非線形(NL)解析を指定した場合、弾性解析と非線形(NL)解析の両方が実 行される。そのときの弾性解析は上表の弾性解析欄の扱いになっている。 引張ブレースの 1 次設計(弾性)時の扱いの「軸力を 2 倍する」とは、組合せ応力が引張軸力の場合は その値を 2 倍とし、圧縮軸力の場合は軸力を 0 と扱っている。なお引張ブレースのこの扱いは、引張側 と圧縮側のブレースが対称配置されている場合によい近似をあたえる。対象配置されていない場合等で は、モデル化の妥当性に注意すること。 B-5.4.1-1 5.4 ブレースの設計 5.4.1 S ブレース 1)使用断面と設計時の扱い ブレースは使用断面の種類により設計時の扱いの選択範囲が制限される。選択可能範囲を次表に示す。 断 面 H、□、○ [ L、-、 ・ 表-5.4.1.2 使用断面と設計時の扱い ピン接合 剛接合 圧縮全強 座屈耐力 圧縮全強 座屈耐力 ○ ○ ○ ○ △ △ ○ ○ △ △ × × 引張ブレース ○ ○ ○ △:チャンネル、アングル、平鋼、丸鋼は剛接ブレースは構成できないが、部材端条件は自動的に ピン設定にはならないので注意すること。また、剛接ブレースとしての断面設計は計算できない ため、注意メッセージが出力される。安全限界、保有耐力計算はH型鋼に近似して計算される。 剛接合ブレースは鉄骨柱に準じて設計する。ピン接合ブレースの設計は(2)~(4)による。 (2)軸力に対する計算 1)許容耐力 許容引張力は下式による。 Nt Ae ft 許容圧縮力は下式による。 Nc Ae fc ここで Ae :有効軸断面積 ft :許容引張応力度 fc :許容圧縮応力度 2)許容応力度 許容引張応力度は下式による。 ft 1 F 1 .5 許容圧縮応力度は下式による。ただし、非線形(NL)解析時特性指定で降伏考慮かつ圧縮全強を選択した 場合、弾性・非線形(NL)解析結果共通で、fc=ft とする。 (座屈補剛ブレースのモデル化が可能) λ>Λ 18 fc 65 F 2 B-5.4.1-2 5.4 ブレースの設計 5.4.1 S ブレース λ≦Λ 2 1 0. 4 F fc 2 3 2 2 3 π2E 0. 6 F ここで F :鋼材の F 値(組立断面ではフランジとウェブの最小 F 値) E :鋼材のヤング係数 細長比は断面形状に応じ下記による。 ① H 形、角形管、円形鋼管、チャンネル max( kx ky 、 ) ix iy ② ダブルチャンネル、ダブルアングル形 max( λx、 λy ) x kx ixa y ky iya 1 d i ただし、1>20 のときは y y 2 1 2 ③ アングル形 max( kx ky 、 ) iv iv ここで kx :強軸方向最大座屈長 ky :弱軸方向最大座屈長 ix 、 iy :座屈軸についての設計位置断面の断面 2 次半径 d :組立圧縮材の区画長さ i : min( ix , iy , iu , iv ) ixa 、 iya :組立後の断面の主軸に関する断面 2 次半径 iv :最小の断面 2 次半径 細長比は 250(指定値があれば指定値)以下とする。 座屈長さは指定によるが、指定がない場合は部材の支点間距離(2.3.3 部材の形式と断面形状を参照) とする。 B-5.4.1-3 5.4 ブレースの設計 5.4.1 S ブレース 3)有効断面積 アングル材、チャンネル材以外の部材では全断面を有効とし、アングル材、チャンネル材は、引張時に おいては下図の突出部を除いた有効断面とする(圧縮時は全断面) 。さらに 5.6.1 鉄骨の有効断面 に示 すように、ボルト孔欠損、スカラップなどを考慮した有効率を乗じる。ウェブの軸力に対しての有効率 はせん断に対する値とする。 h/2 h/2 h 図-5.4.1.1 有効断面 (3)検定計算 σ/f の最大値を検定比として保存する。 (4)引張ブレース指定された場合の取り扱い 引張ブレースは圧縮力に対しては設計しない。 引張ブレース指定されたブレースは弾性応力解析モデル上は軸剛性(断面積)を 1/2 に低減してモデ ル化している。設計では、弾性解析の組合せ応力が引張軸力の場合はその値を 2 倍とし、圧縮軸力の場 合は軸力を 0 と扱っている。引張ブレースを弾性解析ケースにて設計する場合は、モデル化の妥当性に 対して充分注意する必要がある。 B-5.4.1-4 5.4 ブレースの設計 5.4.1 S ブレース (5)圧縮ブレースの幅厚比チェック 引張のみ指定でない鉛直ブレース(ピン・剛) 、水平ブレース(ピン)について、設計ルートによらず、 「鋼構造限界状態設計指針・同解説(1998)」の 2.1(2)による幅厚比のチェックを行う。なお本チェックは 中間情報を出力せず、メッセージ出力のみ行う。 検討位置、検討対象断面は以下とする。 ・端部、中央それぞれ検討する。 ・適用鋼材は、 H 形鋼は SS400, SM400, SM490, SN400, SN490, SA440、 角形鋼管は、 SS400, SM400, SM490, SN400, SN490, BCP235, BCP325, BCR295, BCP325T、円形鋼管は、STK400, STK490 とする。適用鋼 材から外れる場合は検討を行わず、補助メッセージを出力する。 ・フランジとウェブの強度が異なる場合(ハイブリッド断面材の場合)は検討を行わず、補助メッセ ージを出力する。 ・角形鋼管が正方形でない場合、また、角形鋼管でフランジ、ウェブの板厚が異なる場合は検討を行 わず、補助メッセージを出力する。 検討条件は以下とする。検討条件を満たさない場合、補助メッセージを出力する。 (鋼構造限界状態設計指針・同解説(2002)より) 【p.121, 表 2.2 より】 (ii)H 形断面(SN400, SN490, SA440)形鋼およびビルド材 b / tf 2 kf / de Fy de / tw 2 kw / 2 Fy 2 1 d / tw 700 / Fy かつ、 1 2 ny Af 1 ny Aw 2 tw ただし、 Aw ny 1 2 Af Aw のとき、de =d ここで Fy:鋼材のF値(N/mm2) b, tf:片側フランジ幅(=B/2)、フランジ厚 d, tw:ウェブせい(=H-2tf)、ウェブ厚。 Af, Aw: Af = 2×b×tf, Aw = d×tw ny:Ncmax/Ny γ:Fyf/Fyw = 1(フランジ強度=ウェブ強度) Ncmax:作用軸力(最大圧縮力) Ny:Ny = A×Fy A:圧縮断面積(フル断面) B-5.4.1-5 5.4 ブレースの設計 5.4.1 S ブレース kf, kw は鋼材種別に応じた係数で、以下による。 kf kw 鋼材 SN400 220 700 SN490 260 620 SA440 270 440 (iv)正方形中空断面(SN400, SN490, BCP235, BCP325, BCR295, BCP325T) B 24 (冷間成形)、 t B 500 (ビルド材) t Fy ここで Fy:鋼材のF値(N/mm2) B, t:正方形中空断面の 1 辺の長さ、板厚 (vi)冷間成形円形中空断面(BCP235, BCP325, BCR295, BCP325T) D 36 (冷間成形) t ここで Fy:鋼材のF値(N/mm2) D, t:円形中空断面の直径、板厚 (6)注意事項 ➀継手位置 継手位置は柱・梁中心からの位置を取るが、継手位置が柱または梁フェイス位置より端部に設定された 場合、継手なし扱いとなり、全長にわたり端部の断面が採用されるので、注意を要する。 ②端部接合部 本システムではガセットプレートやボルト本数、位置を設定できない。よってブレース端部接合部の設 計は内部計算しない。ブレースとフレームの取り付き位置を考慮したい場合は、偏心による付加応力を 追加荷重として与えて評価する必要がある。端部接合部は設計者によってその安全性を確認する必要が ある。 B-5.4.1-6
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