設計・建設規格及び材料規格の 個別検討項目の

資料3-1
設計・建設規格及び材料規格の
個別検討項目の技術評価案
(その2)
平成26年1月24日
設計・建設規格及び材料規格の
技術評価に関する検討チーム
第3回会合
ー 本日の検討項目 ー
設計・建設規格
1. 耐圧試験圧力の上限値の規定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.3
2. ボルトの評価断面積及び幅厚比評価式の見直し・・・P.8
材料規格
3. 許容引張応力に関する変更①・・・・・・・・・・・・・・・・・P.16
(設計引張強さ(Su値)に対する設計係数の変更)
4. 許容引張応力に関する変更②・・・・・・・・・・・・・・・・・P.30
(設計降伏点(Sy値)に対する設計係数の変更)
5. SS400への特別要求事項 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.36
6. SFVQ1B材の登録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.43
※1: 1. 3. 4. は第2回会合からの継続検討項目 資料内の赤字は第2回会合資料2-1からの主な修正箇所
※2: 2. 5. 6. は新規検討項目
2
1.設計・建設規格 耐圧試験圧力の上限値の規定
(記載箇所)
「設計・建設規格(2012年版)」PHT-2230等、検討チーム第1回会合 資料1-3 p.20-23
(前回までの検討)
検討チーム第2回会合 資料2-1 P.9-13
3
1.耐圧試験圧力の上限値の規定
1.変更の内容
クラス2、3機器に対する耐圧試験圧力の上限を「106%未
満」に制限し、それを超える場合には応力評価を行い、設
計・建設規格の1次応力制限を満足することを規定した。
4
1.耐圧試験圧力の上限値の規定
2.変更理由
(検討チーム第1回会合 資料1-3より)
以下の理由により、クラス2、3機器の最高許容耐圧試験圧力に対し
て106%を超える場合の規定を追記している。
低圧機器の系統耐圧試験の場合、耐圧試験圧力を6%の範囲内で
制御することは実運用上困難となることが懸念される。
ASME規格においても、Class NB, NE機器については機器の応力制
限に達する圧力を上限とし、Class NC, ND機器については試験圧力
の106%で制限し、これを超える場合は試験中に生じる全ての荷重
を考慮して上限を定めることとしている。
5
1.耐圧試験圧力の上限値の規定
【設計・建設規格 新旧対照表】
2005年版/2007年追補版
PHT-2200 クラス2機器
PHT-2230 最高許容耐圧試験圧力
耐圧試験圧力は、PHT-2211またはPHT-2212に規定される
耐圧試験圧力を6%以上超えないこと。また、系統で耐圧試
験を行う場合は、試験圧力は全ての機器において、この条
件を満足すること。
PHT-2300 クラス3機器
PHT-2330 最高許容耐圧試験圧力
耐圧試験圧力は、PHT-2311またはPHT-2312に規定される
耐圧試験圧力を6%以上超えないこと。また、系統で耐圧試
験を行う場合は、試験圧力は全ての機器において、この条
件を満足すること。
2012年版
PHT-2200 クラス2機器
PHT-2230 最高許容耐圧試験圧力
耐圧試験圧力の上限は、PHT-2211またはPHT-2212に規定
される耐圧試験圧力の106%未満に抑えること。ただし、これ
を超える場合、最高許容耐圧試験圧力がPVB-3111(4)a.の応
力制限を準用し、これを満足すること。また、系統で耐圧試
験を行う場合も同様の扱いとする。
なお,PHT-2211(2),PHT-2212(2)の規定に基づき耐圧試験
を行った場合は、試験圧力はPHT-2130に定める圧力を満足
すること。
PHT-2300 クラス3機器
PHT-2330 最高許容耐圧試験圧力
耐圧試験圧力の上限は、PHT-2311またはPHT-2312に規定
される耐圧試験圧力の106%未満に抑えること。ただし、これ
を超える場合,最高許容耐圧試験圧力がPVB-3111(4)a.の応
力制限を準用し、これを満足すること。また,系統で耐圧試
験を行う場合も同様の扱いとする。
(参考)PVB-3111 各供用状態における一次応力評価
各供用状態において生じる応力解析による一次応力強さは、次の(1)から(4)の規定を満足すること。
(略)
(4) 試験状態における応力強さは、次のa.からc.の規定を満足すること。なお、この場合においてSyは試験温度における値と
すること。
a. 一次一般膜応力強さ:Pm
Pm ≦ 0.9Sy
b. 、c. 略
6
1.耐圧試験圧力の上限値の規定
3.技術評価案
本変更は、クラス2、3機器について、PVB-3111(4)a.に基づく応力評価により耐圧試
験時の一次一般膜応力Pmが材料の一次応力制限 0.9Sy(Sy: 設計降伏点)を超えな
いことを設計・建設規格で規定されている計算式による計算で確認すれば、耐圧試
験時に規定された耐圧試験圧力の106%以上となることを許容し、機器等をそのま
ま利用できることを規定するものである。これは、耐圧試験時に過度の塑性変形を
生じさせることがないよう耐圧試験時の一次一般膜応力を設計降伏点Syに対して余
裕をもって制限している耐圧試験規定と整合しており、妥当と考えられる。
7
2.設計・建設規格 ボルトの評価断面及び
幅厚比評価式の見直し
(記載箇所)
「設計・建設規格(2012年版)」SSB-3130 添付8-1、検討チーム第1回会合 資料1-3 p.45
8
2.ボルトの評価断面及び幅厚比評価式の見直し
1.変更の内容
「鋼構造設計規準」2005年版に基づき、設計・建設規格の
支持構造物の規定を見直した。
(1)ボルトの応力評価における断面積の取り方に関し、呼
び径断面積*1からボルトネジ部の有効断面積*2に変更した。
(2)幅厚比の評価式に関し、縦弾性係数を考慮した式に変
更した。
*1:ネジを切る前の円柱状の部分の断面積(軸部断面積(ネジの円筒部の断面積)
と同じ)
*2:ネジの有効径を基準に計算式により算出される断面積(計算式はJIS B 1082「ね
じの有効断面積及び座面の負荷面積」に規定)
9
2.ボルトの評価断面及び幅厚比評価式の見直し
2.変更理由
(検討チーム第1回会合 資料1-3より)
設計・建設規格の支持構造物の規定では従来日本建築学会の「鋼構造設計規準」
1973年版に基づいていた。「鋼構造設計規準」の最新版は2005年版であり、変更内容を
評価し設計・建設規格への反映を行った。
10
2.ボルトの評価断面及び幅厚比評価式の見直し
【設計・建設規格 新旧対照表】
2005年版/2007年追補版
2012年版
SSB-3131 供用状態AおよびBでの許容応力
SSB-3131 供用状態AおよびBでの許容応力
供用状態Aおよび供用状態Bにおいて呼び径断面に生じ
供用状態Aおよび供用状態Bにおいてボルトネジ部の有
る応力は,次の値を超えないこと。
効断面積に基づき算出される応力は,次の値を超えないこ
と。なお,ネジ部の有効断面積の代わりに軸部断面積の
75%を用いてもよい。また,せん断面が必ず軸断面となるこ
とが明らかな場合は,せん断応力算定に用いる断面積とし
て軸部断面積を用いてよい。
(1) 引張応力
(1) 引張応力
引張応力については,次の計算式により計算した値。
引張応力については,次の計算式により計算した値。
ft =
F
2
(SSB-1.25)
ft =
F
1.5
(SSB-1.25)
ft :許容引張応力(MPa)
ft :許容引張応力(MPa)
F
:SSB-3121.1(1)に定めるところによる。
F :SSB-3121.1(1)に定めるところによる。
(2) せん断応力
(2) せん断応力
せん断応力については,次の計算式により計算した値。
せん断応力については,次の計算式により計算した値。
fs =
F
1.5 3
fs :許容せん断応力(MPa)
F :SSB-3121.1(1)に定めるところによる。
(SSB-1.26)
fs =
F
1.5 3
(SSB-1.26)
fs :許容せん断応力(MPa)
F :SSB-3121.1(1)に定めるところによる。
11
2.ボルトの評価断面及び幅厚比評価式の見直し
【設計・建設規格 新旧対照表】
2005年版/2007年追補版
SSB-3132 供用状態Cでの許容応力
供用状態Cにおいて呼び径断面に生じる応力は,SSB3131(1)および(2)に定める許容応力ft,fsの1.5倍の値を超えな
いこと。また,SSB-3131(3)に定めるftsの式において,ft0を1.5倍
として求めた値を超えないこと。
SSB-3133 供用状態Dでの許容応力
供用状態Dにおいて呼び径断面に生じる応力は,SSB3131(1)および(2)に定める許容応力ft,fsの1.5倍の値を超えな
いこと。また,SSB-3131(3)に定めるftsの式において,ft0を1.5倍
と し て 求 め た 値 を 超 え な い こ と 。 こ の 場 合 に お い て , SSB3121.1(1)a.本文中SyおよびSy(RT)は、1.2Syおよび1.2Sy(RT)と
読み替えるものとする。
2012年版
SSB-3132 供用状態Cでの許容応力
供用状態Cにおいてボルトネジ部の有効断面積に基づき算
出される応力は,SSB-3131(1)および(2)に定める許容応力ft,f
sの1.5倍の値を超えないこと。また,SSB-3131(3)に定めるfts
の式において,ft0を1.5倍として求めた値を超えないこと。な
お,ネジ部の有効断面積の代わりに軸部断面積の75%を用
いてもよい。また,せん断面が必ず軸断面となることが明ら
かな場合は,せん断応力算定に用いる断面積として軸部断
面積を用いてよい。
SSB-3133 供用状態Dでの許容応力
供用状態Dにおいてボルトネジ部の有効断面積に基づき算
出される応力は,SSB-3131(1)および(2)に定める許容応力ft,f
sの1.5倍の値を超えないこと。また,SSB-3131(3)に定めるfts
の式において,ft0を1.5倍として求めた値を超えないこと。こ
の場合において,SSB-3121.1(1)a.本文中SyおよびSy(RT)は、
1.2Syおよび1.2Sy(RT)と読み替えるものとする。なお,ネジ部
の有効断面積の代わりに軸部断面積の75%を用いてもよい。
また,せん断面が必ず軸断面となることが明らかな場合は,
せん断応力算定に用いる断面積として軸部断面積を用いて
よい。
12
2.ボルトの評価断面及び幅厚比評価式の見直し
【設計・建設規格 新旧対照表】
2005年版/2007年追補版
添付8-1 幅厚比の条件
1.幅厚比の条件
本添付は,支持構造物を構成する部材で,圧縮力または
曲げによって面内圧縮力を生じる平板要素等の幅厚比等の
条件について示したものである。
(1) 1縁支持および他縁自由の板突出部分
a. 単一山形鋼およびはさみ板を有する複山形鋼
b
≤
t
20
/100
(添付8-1-1)
F :SSB-3121.1(1)に定める値
b :板の幅(mm)
t :板の厚さ(mm)で、板の厚さが直線的に変化
している場合は、その平均値を用いてよい。
2012年版
添付8-1 幅厚比の条件
1.幅厚比の条件
本添付は,支持構造物を構成する部材で,圧縮力または
曲げによって面内圧縮力を生じる平板要素等の幅厚比等の
条件について示したものである。
(1) 1縁支持および他縁自由の板突出部分
a. 単一山形鋼およびはさみ板を有する複山形鋼
b
≤ 0.44
t
(添付8-1-1)
F :SSB-3121.1(1)に定める値
E :材料規格 Part3第2章表1に規定する材料の縦弾性
係数(MPa)
b :板の幅(mm)
t :板の厚さ(mm)で、板の厚さが直線的に変化してい
る場合は、その平均値を用いてよい。
13
2.ボルトの評価断面及び幅厚比評価式の見直し
(参考)
SSB-3121.1 供用状態AおよびBでの許容応力
供用状態Aおよび供用状態Bにおいて生じる一次応力は、(1)から(5)の値を超えず、かつ(6)を満足すること。
(1) 引張応力
一次引張応力については、次の計算式により計算した値
ft = F/1.5
ft : 許容引張応力(MPa)
F : 次のa.またはb.に定める値
a. 溶接部であって溶接規格N-1100の規定に準じてそれぞれ放射線透過試験、超音波探傷試験、
磁粉探傷試験または浸透探傷試験を行った場合に合格する部分、または溶接部以外の部分に
ついては、次の値
(a) 使用温度が40℃を超えるオーステナイト系ステンレス鋼および高ニッケル合金については、次
のうちいずれか小さい方の値
・ 1.35Sy
・ 0.7Su
・ Sy(RT)
Sy
: 材料規格 Part3 第1章 表6に規定する材料の設計降伏点(MPa)
Su
: 材料規格 Part3 第1章 表7に規定する材料の設計引張強さ(MPa)
Sy(RT) : 材料規格 Part3 第1章 表6に規定する材料の40℃における設計降伏点(MPa)
(b) 上記の(a)以外のものについては、次のうち小さい方の値
・ Sy
・ 0.7Su
Sy, Su :
(a)に定めるところによる。
b. 溶接部であってa.に掲げる部分以外の部分については、a.に定める値の0.45倍の値
14
2.ボルトの評価断面及び幅厚比評価式の見直し
3.技術評価案
(1)ボルト断面積に関する規定の変更
改訂された鋼構造設計規準2005年版では、呼び径断面積(軸部断面積)に生じる応
力の制限から、ボルトネジ部の有効断面積に基づき算出される応力の制限に変更し、
あわせて、許容引張応力をft=F/2からft=F/1.5に変更している。ここで、許容引張応力
を示す式の分母が2から1.5に変更されているが、従来の規定では、有効断面積を呼び
径断面積(軸部断面積)の75%としていたことから、改訂前の応力は改訂後の応力の
0.75倍に相当しており、応力の制限を実質的に変更するものではない。
また、呼び径断面積を有効断面積に変更することについては、より精度よく引張応力
の評価をするものであるから、本変更は妥当と考えられる。
「なお、ネジ部の有効断面積の代わりに軸部断面積の75%を用いてもよい。」との規定
については、軸部断面積の75%を用いた場合、引張応力の制限は変更前と同一である
ことから妥当と考えられる。
(2)幅厚比評価式に関する規定の変更
改訂された鋼構造設計規準2005年版では、新たに幅厚比評価式の温度依存性を考
慮することとしており、本規定においても同様の変更を行うものである。変更された幅厚
比評価式では、材料の縦弾性係数を導入することで温度依存性が考慮され、本評価式
を用いることによってより正確に強度評価ができることから、本変更は妥当と考えられる。
15
3.材料規格 許容引張応力に関する変更①
(設計引張強さ(Su値)に対する設計係数の変更)
(記載箇所)
「材料規格(2012年版)」Part 3第1章 表3~表5、検討チーム第1回会合 資料1-4 p.16-28,31-32
(前回までの検討)
検討チーム第2回会合 資料2-1 P.17-29
16
3.許容引張応力に関する変更①
1.変更の内容
(1) ASME規格相当材について、当該材料の許容引張応力(S値)を
求める際の設計引張強さ(Su値)に対する設計係数を4から3.5に
変更。
(2) ASME規格相当材以外で設計応力強さ(Sm値)が規定されてい
る材料について、当該材料の許容引張応力(S値)を求める際の
設計引張強さ(Su値)に対する設計係数を4から3.5に変更。
(3) 上記以外のASME規格相当材以外について、ASME Sec. IIを参
照して作成された新規材料採用ガイドラインに基づき、S値の見直
しを実施(設計係数4を維持)。
17
3.許容引張応力に関する変更①
2.変更理由
日本機械学会での検討内容及びその他の設計係数に関する国内外の
動向
Ⅰ.海外の動向
ⅰ)設計係数を巡るASME規格の動向(WRC Bulletin 435等)
戦前、ASMEでは、Su値に対する設計係数(以下「設計係数」という。)を5としていた
が、第2次世界大戦中に4に変更した。大戦後まもなく従来の5へと戻したが、設計係
数4で設計された容器類は特に問題なく使用された。このため、産業界から設計係
数を4へ引き下げる要望があり、その後、再度設計係数として4が採用された。それ
から約50年後、ASMEでは設計係数を合理化するための検討を行い、1999年に4を
3.5に引き下げた。
ⅱ)ASMEが設計係数を変更した根拠(WRC Bulletin 435)
(設計係数を含む)ASMEコードの不適切さに起因した損傷事例はほとんどないこと、
技術的進歩により質の高い材料の製造が可能となったこと、経年劣化への対応の
一つである非破壊検査技術も向上していること、さらに、品質保証体制が確立してき
たこと等を踏まえ、総合的に判断すれば設計係数3.5を導入できるとした。
18
3.許容引張応力に関する変更①
ⅲ)設計において防止すべき破損モードへの影響に関する検討
(a)日本機械学会による検討(検討チーム第1回会合 資料1-4)
日本機械学会によれば次のとおり。
①塑性崩壊の防止及び延性破壊の防止
S値は、以下のように定められる。まず、材料の引張試験で得られる応力-歪み線
図(荷重-伸び線図)からSy値及びSu値が求められる。このSy値に2/3を乗じた値
とSu値に1/3.5を乗じた値を比較して小さな方をS値とする。
このことから、設計引張強さに対する設計係数3.5を採用する意味は、現在の設
計の枠組みを変更せずに結果的にSu値の項を大きくして降伏点設計に近い設計
を採用することであると言える。すなわち、設計係数3.5の採用は、一次応力制限
の基本的な考え方を変更するものではなく、塑性崩壊及び延性破断の防止に有
意な影響を与えるとは考えられない。
②脆性破壊の防止
材料の製造技術の進歩により,不純物が著しく低減されていることから、著しい
低温以外では脆性破壊が生じる可能性はなく、原子力発電所の機器の設計温度
は脆性破壊が生ずるような温度に至らないように設定しているため、Su値に対す
る設計係数に関わらず脆性破壊は生じないと判断できる。
19
3.許容引張応力に関する変更①
③疲労破損の防止
疲労限界と引張強さとの関係については古くから多くの検討が実施された結果、
経験的に次式のような関係にあることが知られている。
疲労限界≒σu/2
(σuは引張強さ)
この関係から引張強さに対する設計係数が4の場合でも3.5の場合でもS値は上
式に対応する応力(σu/2)よりも小さく設定されることから特に影響を与えるもの
ではないことがわかる。
20
3.許容引張応力に関する変更①
(b)ASMEによる検討(WRC Bulletin 435等)
①延性破壊の防止
カンザス大学等において行われた安全裕度に関する実験結果は、構造不連続部
がある試験体や腐食減肉による板厚が薄い箇所を多く有する試験体を除いて、
設計係数以上の安全裕度が確保されていることが明らかとなっている。
②ラチェット(進行性変形)の防止
供用状態において繰り返し荷重を受ける容器に対して疲労解析が行われる場合、
一次+二次応力強さの最大値と最小値の差に対する制限(Section VIII, Div. 2や
Section IIIではSyの2倍で制限)がラチェットと漸増崩壊の防御となるため、設計係
数を3.5に引き下げることによりSection VIII, Division 1容器に悪影響を与えることは
ない。
21
3.許容引張応力に関する変更①
(参考)破壊に対する安全裕度に関する試験結果
破壊に対する安全裕度
実施時期
1974年
1987年
1984年
1980年代
中期
試験
試験条件
・試験体:①ノズル、溶接部及びエンドクロー
ジャ付
②軸方向に厚さの15,25.及び30%の
切欠きを有する。
・材料:Type304ステンレス鋼、SA-516Gr.70
炭素鋼,SA-517Gr.F高強度低合金鋼
CBI周方向溶接 の厚さを減 ・周方向溶接の厚さを減じた試験体(10試験体)
じた圧力容器の試験
・材料(SA-333Gr.6)・直径20in.Sche80pipe)
・許容応力は一定
1995
設計係数4の場合
(SectionⅧ Division2ベース)
カンザス大学の破裂試験
CBI楕円形鏡板モデル試験
Sandia国立研究所の
格納容器モデル試験
・直径192in、公称厚さ3/16in、1/4in)
・材料(SA516Gr.70)
・SectionⅢ NE(クラスMC機器)で製作した
試験体4体
・直径43in、厚さ0.045in(構造不連続部有)
・SectionⅢ NE(クラスMC機器)で製作した
試験体1体
・直径168in、厚さ0.045in
PraxairのTrispherical鏡板 ・直径60in、公称厚さ0.25in、0.32in試験体2体
モデル試験
・材料(SA516Gr.70)
Sandia国立研究所の
格納容器モデル試験
1994年
設計係数3の場合
(SectionⅧDivision1ベース)
MPCの局所減肉付き長期使 ・容器1(内径48in,7/16in)、材料SA285Gr.C(
用容器試験
減肉60箇所)
・容器2(内径78in,1in)、 材料SA515Gr.65
3.35~3.62*
-
3.24~3.38
4.32~4.5
-
6.27~6.62
SectionⅢ NEベース
2.75~3.5**
3.02~3.85**
SectionⅢ NEベース
4.88
5.37
-
8.2,9.8
-
容器1:2.91(リーク
時)***
容器2:3.16(リーク
時)***
* :破壊に対する安全裕度の値は切欠き付試験体を除いた試験体のものである。
** :本試験体は重大な構造不連続部がある試験体である。この構造不連続部が設計余裕を減少させていると推定されている。
***:容器1及び容器2は腐食減肉による板厚が薄い箇所を多く有する試験体であり、設計時点の容器厚さは満足しない試験体である。
出典:Phase2 Studies, D. study of Vessel Test Results, WRC Bulletin 435
22
3.許容引張応力に関する変更①
ⅢⅡ.国内の材料製造技術の進歩(検討チーム第1回会合 資料1-4)
日本機械学会によれば次のとおり。
より厳しい環境下での使用に対するユーザー要望により、より高品質な材料が求
められるようになり、不純物が少なく、強度と靱性のバランスに優れた材料を製造
する技術開発が行われた。国内では鉄鋼の炭素、硫黄、リン、窒素などの不純物
元素の低減技術が進歩し、1985年ころからはメーカによらず不純物の量がある一
定の値以下となるような管理技術が確立された。
不純物を低減させる製造技術が確立された1985年頃からは、強度と靱性のバラ
ンスに優れた材料が製造されている。
23
3.許容引張応力に関する変更①
(参考) 高圧ガス保安法等に関する設計係数の変更(材料規格等)
平成13年、経済産業省原子力安全・保安院は、「高圧ガス設備に係る技術基準国
際整合化研究会」を設置し、欧米等における圧力容器に係る規格・基準の動向及
び国際動向を踏まえた我が国の高圧ガス設備の技術基準の在り方を検討した。
平成13年6月、同研究会は「高圧ガス設備に係る技術基準国際整合化研究会報
告書」をとりまとめ、その中で、実機の損傷経験、日本の鋼材製造技術の発展、非
破壊検査技術の発展等を総合的に判断すると、Su値に対する設計係数を3.5に変
更しても問題がないとしている。この結果、高圧ガス保安において、設計引張強さ
に対する設計係数3.5を適用できるように改正された。
これに関連して、電気事業法、ガス事業法、高圧ガス保安法及び労働安全衛生法
の引用規格を整備するため、圧力容器関係JISにおけるSu値に対する設計係数が
3.5に変更され、JIS B8267として2008年に発行された。
24
3.許容引張応力に関する変更①
3.技術評価案
(1)設計において防止すべき破損モードへの影響に関する検討
日本機械学会は、従来の技術基準(告示第501号)において考慮されている破損モード
について検討を行っている。
(a) 塑性崩壊の防止
塑性崩壊の防止に有意な影響を与えるとは考えられないとの日本機械学会による評
価は、塑性崩壊がSyに依存しており、Su値に対する設計係数を変更しても塑性崩壊を
防止するための制限に変わりはなく、妥当と考えられる。
(b) 延性破壊の防止
カンザス大学等において行われた安全裕度に関する実験は、試験体の材料、構造及
び形状は限られているものの、構造不連続部がある試験体や腐食減肉による板厚が
薄い箇所を多く有する試験体を除いて、設計係数以上の安全裕度が確保されているこ
とを示すものであり、設計係数を3.5としても延性破壊の防止の観点で影響を与えること
はほとんどないと考えられる。
25
3.許容引張応力に関する変更①
(c) 脆性破壊防止
材料の製造技術の進歩により、不純物が著しく低減されていることから、著しい低温
以外では脆性破壊が生じる可能性はなく、原子力発電所の機器の設計温度は脆性破
壊が生ずるような温度に至らないように設定しているとの日本機械学会における検討
に示されている内容を踏まえれば、Su値に対する設計係数の変更により脆性破壊の
防止に対する影響はないとの判断は妥当と考えられる。
(d) 疲労破損の防止
疲労限界と引張強さとの関係については、「圧力容器の構造と設計JIS B 8265及びJIS
B 8267」(編集委員長 小林英男、日本規格協会)に述べられており、経験的に疲労限
界≒σu/2としていることは妥当であり、また、引張強さに対する設計係数が4の場合で
も3.5の場合でも、S値は上式に対応する応力(σu/2)よりも小さく設定されることとなるた
め、疲労破損の防止に影響を与えるものではないと判断されることから、日本機械学
会における検討は妥当と考えられる。
26
3.許容引張応力に関する変更①
(e) ラチェット(進行性変形)の防止
ラチェットを防止するためには、一次一般膜応力の最大値と二次応力の変動範囲を
許容限界内に制限しなければならないが、このような荷重の組み合わせの制限値は、
例えば以下のように、設計降伏点Syに依存するため、Su値に対する設計係数を3.5とし
てもラチェットの防止に影響を与えることはないと考えられる。
弾完全塑性体の単純な熱応力ラチェットモデル(図13.12)
において、荷重Pにより同一材料棒A,棒Bにかかる一次一
般膜応力をσm 、棒A,棒Bの降伏応力をSy、棒Bが棒Aとの
温度差が最大値ΔT(棒Aの温度は一定)の繰り返し熱応
力σTを受けるとすれば、熱応力ラチェット機構の形成を防
止する領域を与える公式はσm+σT/2≦Syとなる。
出典:「原子力プラントの構造設計」(安藤良夫・岡林邦夫著 東京大学出版会)
27
3.許容引張応力に関する変更①
(2)設計係数を4から3.5に変更することに対する評価
(ア)ASME規格相当材
以下の点を総合的に判断すればASME規格相当材について設計係数を3.5とすること
は妥当であると考えられる。
ASMEの動向・実績(1999年の設計係数3.5への引き下げ後、現在に至るまで、約15
年間の設計係数3.5を規定した規格の運用実績も含む)
破損モードへの影響評価(前述3.(1)参照)
日本機械学会では、ASME規格相当材と認めるにあたって、ASME材と化学成分がほ
ぼ同等であり、常温、高温のSu、Syの差異が10MPa以下であることを確認しており、
ASME規格相当材はASME材と概ね同一の化学成分及び機械的性質を有すると言え
ること
日本機械学会によれば技術的進歩により質の高い材料の製造が可能とされている
こと
なお、参考として我が国の高圧ガス分野でも実績がある。
28
3.許容引張応力に関する変更①
(2)設計係数を4から3.5に変更することに対する評価(つづき)
(イ)ASME規格相当材以外でSm値が規定されている材料
日本機械学会は、ASME規格相当材以外でSm値が規定されている材料について、
Sm値が規定されている材料は、高品質が要求されているクラス1機器に使用可能な
材料であることを設計係数3.5への変更理由としているが、以下の点から設計係数を
3.5に変更する十分な根拠とは認められず、引き続き4とする。
ASME規格相当材について設計係数変更の根拠としているASMEの動向・実績等
は、ASME規格相当材以外でSm値が規定されている材料に全て当てはまるわけで
はないこと
日本機械学会では、ASME規格相当材以外でSm値が規定されている材料をASME
規格相当材と認めていないこと
(ウ)上記以外の材料
設計係数を変更するものではない。
29
4.材料規格 許容引張応力に関する変更②
(設計降伏点(Sy値)に対する設計係数の変更)
(記載箇所)
「材料規格(2012年版)」 Part 3第1章 表3~表5
(前回までの検討)
検討チーム第2回会合 資料2-1 P.30-35
30
4.許容引張応力に関する変更②
1.変更の内容
ASME Sec.Ⅱにおいて、許容引張応力(S値)を求める際の設計降伏
点(Sy値)の設計係数が1.5であり、同様に設計係数を8/5から1.5に変
更。
31
4.許容引張応力に関する変更②
2.変更理由
材料の応力-ひずみの関係を弾完全塑性体で近似し、塑性
崩壊を考える上で引張荷重(一次一般膜応力Pm)と曲げ荷重
(曲げ応力Pb)が同時に矩形断面に作用したと仮定した場合、
塑性崩壊の曲げモーメントに関する公式(図-4)
(Pb /σy=3/2(1-(Pm /σy)2)(σyは降伏応力(Syと同じ))から、
Pm=0の時、Pb=3/2σyの関係が得られる。
すなわち、これは、運転状態Ⅲ※でPm+Pbの値がPm=0の時
に、設計条件の応力強さの限界が3/2Syであることを意味す
る。
図-4 塑性崩壊と許容限界
(「Lecture 「安全率を考える」第4回(小林英男、J. of the Japan Landslide Soc., Vol,44 No.5(2008))」等より)
※「運転状態Ⅲ」とは、設計基準事故時及び設計基準事故に至るまでの間に想定される環境条件において、発電用原子
炉施設の故障、誤作動その他の異常により発電用原子炉の運転の停止が緊急に必要とされる状態をいう。(「実用発
電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則」第2条第2項第47号より)
32
4.許容引張応力に関する変更②
そして、「Lecture 「安全率を考える」第4回」には、
塑性崩壊に関する許容限界は図-4において原点0を中心として、曲線ABCを相似縮小する
ことで設定できる。縮小率の逆数が安全係数※となる。一方、実際の設計条件では、塑性変
形を許容せず、応力を弾性変形の範囲に制限する。
すなわち、許容限界の縦軸の値はA点に対して安全係数1.5のA’となり、次式で与えられる
Pm+Pb =σy
(略)
機器の設計では、応力を想定する破壊モードに対応する基準
強度以下に制限する。前章で示したように、塑性崩壊に対応す
る基準強度が降伏応力であり、裕度が安全係数となる。しかし、
機械分野では慣習的に許容応力の概念を用い、安全係数は表
舞台に現れないことが多い。圧力容器の設計規格を例にとる。
設計では、引張応力σmと曲げ応力σbを以下に制限する。
σm <σa
σb <1.5σa
ここで、許容応力σaは次式で定義される。
σa =min.〔σy /1.5, σB/S〕(σBは引張り強さ、SはσBの安全係数※)
と記載されている。
※「安全係数」は「設計係数」と同じ
図-4 塑性崩壊と許容限界
(再掲)
33
4.許容引張応力に関する変更②
また、「Companion Guide to the ASME Boiler & Pressure Vessel Code, Second Edition,
Volume 1」及び「圧力容器の構造と設計JIS B 8265及びJIS B 8267(編集委員長 小林英男、
日本規格協会)」においても、許容応力σaは前述と同様にσa =min.〔σy/1.5, σB/S〕とされてい
る。
なお、矩形断面と仮定すれば、Pm=0の時、Pb=3/2σyであるが、中実円形や三角形断面の
場合はPb>3/2σy となり、また、弾完全塑性体は応力が降伏応力に達すると延性不安定にな
り塑性崩壊するものであることから、矩形断面及び弾完全塑性体をモデルとした解析は安
全側の解析である。
ASMEにおいても、1980 年代から設計降伏点(Sy値)の設計係数を1.5としており、30年以
上の実績がある。そして、「Evaluaton of Design Margins for ASME Code Section Ⅷ,
Division1」によれば、ASMEコードの不適切さに起因した損傷事例はほとんどないとしている。
また、1993年に高圧ガス設備(JIS B 8270)もSy値の安全係数を1.5としている。
「Evaluation of Design Margins, Section Ⅷ, WRC Bulletin 435」には次のように記載されてい
る。
(オーステナイト鋼等を除き)降伏応力の設計係数はこれまで例外なく(universally)1.5で
ある。降伏応力の定義はコードによっていくらか変わるが、設計係数が大きく変わることは
ない。一方で、引張り強さの設計係数は、長い年月の間に変更され、また、コードによって
も大きく変わる。
34
4.許容引張応力に関する変更②
3.技術評価案
以下の点を踏まえ、許容引張応力(S値)を求める際の設計降伏点(Sy値)の設計係数を
8/5から1.5に変更することは妥当であると考えられる。
設計係数を1.5としても、「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する
規則」第17条第9号以下に規定されている、クラス2機器等について設計上定める条
件で全体的な変形を弾性域に抑える要求を満足していること。
許容引張応力(S値)を求める際の設計降伏点(Sy値)の設計係数を1.5にすることに関
して、弾完全塑性体、矩形断面であることを前提に純曲げに対して全断面降伏までの
余裕を1.5倍としていることとのバランスにおいて、純一次一般膜応力に対しても同様
の余裕を1.5に設定することは、十分に安全側であり、安全性を低下させるものではな
いこと。
日本規格協会等の文献等において、Sy値に対する設計係数は1.5とされていること。
NRCは、ASME Sec.ⅡにおけるS値を求める際のSy値の設計係数の1.5をエンドースして
おり、既に30年以上の実績があること、また、WRC Bulletin 435によれば、この間、
ASMEコードの不適切さに起因した損傷事例はほとんどないとされていること。
高圧ガス分野でも20年の実績があること。
設計降伏点(Sy値)の設計係数の変更に関して、許容引張応力(S値)の変化は6.7%
に過ぎないこと。
なお、参考として我が国の高圧ガス分野でも実績がある。
35
5.材料規格 SS400への特別要求事項
(記載箇所)
「材料規格(2012年版)」Part2第2章、検討チーム第1回会合 資料1-4 p.33
36
5.SS400への特別要求事項
1.変更の内容
(1)SS400について、100mmを超える板厚の場合、機械的性
質は降伏点215MPa以上のものに限定する規定を追加。
(2)溶接を行う場合のSS400に対して、C含有量を0.30%以下、
P及びS含有量をそれぞれ0.035%以下に制限する規定
を追加。
37
5.SS400への特別要求事項
2.変更理由
(検討チーム第1回会合 資料1-4より)
(1)100mmを超える板厚の場合、降伏点215MPa以上のものに限定して
いる理由は、2004年のJIS改正において100mmを超える板厚の材料
に「降伏点の規定(205MPa以上)」が新たに追加されたが、従来から
の要求を継続したため。
機械的性質 JIS G 3101(2004)(2010)
降伏点又は耐力 N/mm2
種類の記号
SS400
鋼材の厚さ mm
16以下
16を超え40以下
40を超え100以下
100を超えるもの
245以上
235以上
215以上
205以上
機械的性質 JIS G 3101(1995)
降伏点又は耐力 N/mm2
種類の記号
SS400
鋼材の厚さ mm
16以下
16を超え40以下
40を超えるもの
245以上
235以上
215以上
38
5.SS400への特別要求事項
2.変更理由(つづき)
(2)溶接を行う場合に炭素含有量が0.30%以下のものに限定している理
由は、溶接性を考慮※Aしたため。なお、0.30%以下とした理由は、日
本機械学会 発電用原子力設備規格 溶接規格の制限を満足する
SS540の規定を準用したため。P(リン)及びS(硫黄)の制限はSM材※B
に合わせた 。
※A:
炭素量が多い場合、溶接による急熱急冷によって熱影響部が著しく硬化し、溶接部の伸び
が少なくなり、溶接割れなどの欠陥が生じ易くなる。
※B: SM材はJIS G 3106 「溶接構造用圧延鋼材」。
(参考)
溶接規格(抄)
N-1020 溶接の制限
炭素含有量が0.35%を超える母材は、溶接を行ってはならない。
39
5.SS400への特別要求事項
2.変更理由(つづき)
化学成分 JIS G 3101(2010)
単位 %
種類の記号
C
Mn
P
S
SS400
-
-
0.050以下
0.050以下
SS540
0.30以下
1.60以下
0.040以下
0.040以下
化学成分 JIS G 3106(2008)
種類の記号
厚さ
C
SM400B
50mm以下
0.20以下
50mmを越え
200mm以下
0.22以下
単位 %
Si
Mn
P
S
0.35以下
0.60~1.50
0.035以下
0.035以下
40
5.SS400への特別要求事項
【材料規格 新旧対照表】
2005年版/2007年追補版 付録材料図表
(Part 1 使用する材料の規格(備考))
1~30 略
(Part 2 第2章)
2012年版
日本工業規格JIS G 3101(2010)「一般構造用圧延鋼材」
1. 100mm を 超 え る 板 厚 の 場 合 、 機 械 的 性 質 は 降 伏 点
31 最高使用圧力が1.0MPaを超えるクラス3容器、クラス3配
215MPa以上のものに限る。
管またはクラス4配管には、次に掲げる材料を使用してはな 2. 最高使用圧力が1.0MPaを超えるクラス3容器、クラス3配
らない。
管又はクラス4配管にはSS400を使用してはならない。
イ 日本工業規格JIS G 3101(2004)「一般構造用圧延鋼材」 3. 溶接を行う場合にあっては、炭素の含有量が0.30%以下で
ロ 略
あってP及びSの含有量がそれぞれ0.035%以下のものに
ハ 略
限る。
41
5.SS400への特別要求事項
3.技術評価案
(1) SS400について2010年版JISを引用しつつも、2010年版JISとは異なり
鋼材厚さ100mmを超える場合に、1995年版JISと同様に降伏点215
N/mm2以上を要求することは、従来の規定よりもSS400の使用条件
を厳しく制限するものであり、本変更は妥当であると考えられる。
(2) SS400を溶接する場合、炭素含有量の制限値を0.30%以下、P及びS
含有量をそれぞれ0.035%以下とすることを新たに設定している。炭
素含有量の制限値については日本機械学会溶接規格(2012年版、
エンドース済みの2007年版)において溶接の制限として「炭素含有
量が0.35%を超える母材は、溶接を行ってはならない。」としているこ
とと整合している。また、P及びS含有量の制限値についてはそれぞ
れ溶接構造用圧延鋼材として認められるSM材と同一であることから、
溶接を行う上での問題はないと考えられる。
以上より、本変更は妥当と考えられる。
42
6.材料規格 SFVQ1B材の登録
(記載箇所)
「材料規格(2012年版)」全般、検討チーム第1回会合 資料1-4 p.34
43
6.SFVQ1B材の登録
1.変更の内容
(1)すでにエンドースされている設計・建設規格2005年版/2007
年追補版において原子炉材料として登録されている圧力容
器用調質型合金鋼鍛鋼品SFVQ1Aの熱処理を変えて強度を
高めた材料であるJIS G3204 SFVQ1Bを材料規格に追加する。
(2)研究等で取得した材料データとASMEの規格値(Su、Sy)との
比較を実施。375℃におけるSuは350℃と400℃の最小値か
ら補間。それ以外のSu値とSy値は保守的なASME規格値を
採用。(検討チーム第1回会合 資料1-4より)
各温度における設計応力強さSm値
* 第1回検討チーム会合資料1-4, p.34より
44
6.SFVQ1B材の登録
(別添)
* 第1回検討チーム会合資料1-4, p.35より
45
6.SFVQ1B材の登録
2.変更理由
(検討チーム第1回会合 資料1-4より)
SFVQ1Bは、SFVQ1Aの熱処理を変えて強度を高めた材料で
あり、取替蒸気発生器の胴材として多くの国内製造実績を有
す。これら製品は全て輸出用であり、海外で使用されている。
SFVQ1Bの使用実績は好ましいもので不具合事例の報告は
ないため、国内でも使用できるよう規格に採用した。
46
6.SFVQ1B材の登録
3.技術評価案
(1)JIS G3204 SFVQ1Bは、別添のとおりASME規格でClass 1
Component(日本機械学会のクラス1機器に相当)等に使
用が認められている高強度鍛鋼品SA508 Grade3 Class2と
化学成分及び機械的性質(降伏点又は耐力、及び引張強
さ等)がほぼ同等であることから、SFVQ1BをASME相当材と
して材料規格に追加することは妥当であると考えられる。
47
6.SFVQ1B材の登録
(2)SFVQ1BのSu値は保守的な値となる(SA508 Grade3 Class2
の)ASME規格値を用いることとしている。しかしながら、
375℃におけるSFVQ1BのSu値は実測値が存在しておらず、
かつ、400℃におけるSu値の試験データがASME規格値に
対し保守的でないことから、375℃のSu値がASME規格値を
下回る可能性がある。このため、350℃と400℃における試
験データの最小値の平均から算出した値を採用している。
この点については、日本機械学会からの説明を踏まえ
て評価する。
48
6.SFVQ1B材の登録
SFVQ1B材とASME SA-508 Grade3 Class2(SFVQ1B相当材)の材料データ
(別添)
(化学成分)
化学成分(%)
C
Si
Mn
P
S
Ni
Cr
Mo
Cu
V
JIS G
1.20≦
0.40≦
0.45≦
3204 ≦0.25 ≦0.40
≦0.030 ≦0.030
≦0.25
- 0.05≦
≦1.50
≦1.00
≦0.60
SFVQ1B
SA-508
0.15≦ 1.20≦
0.40≦
0.45≦
Grade3 ≦0.25
≦0.025 ≦0.025
≦0.25
- 0.05≦
≦0.40 ≦1.50
≦1.00
≦0.60
Class2
Ni+Cr+M
Nb N Co Fe Al Ti
o+Cu+V
-
- - - - - -
-
- - - - - -
(機械的性質)
降伏点又は耐力
(N/mm2)
引張強さ
(N/mm2)
伸び
(%)
絞り
(%)
衝撃試験
温度(℃)
JIS G 3204 SFVQ1B
451
618~794
14≦
35≦
SA-508 Grade3 Class2
450
620~795
16≦
35≦
種類の記号
シャルピー吸収エネルギー(J)
3個の平均
個別の値
20
47
40
21
48
41
*1月10日の事務局と日本機械学会との面談時に日本機械学会から提出された資料
49