CN NEWS 今回はがん化学療法分野が担当します。 テーマは現在幅広いがん腫で使用されているパク リタキセルについてポイントを復習してみます。 パクリタキセル(PTX):微小管阻害薬:タキサン系 商品名:タキソール.パクリタキセル注「NK」 適応:卵巣がん・子宮体がん・進行または再発の子宮頸 がん・乳がん・非小細胞肺がん・胃がん・再発または遠 隔転移を有する頭頸部がん・再発または遠隔転移を有 する食道がん再発または難治性の胚細胞腫瘍 作用機序:チュブリンに結合し、脱重合を阻害して安定 化→細胞周期をG2/M期で停止 PTXの成り立ち パクリタキセルは太平洋イチイという植物の樹皮 抽出液中に強力な抗腫瘍性物質が含まれている ことがわかりました。細胞内の微小管に作用し、 抗腫瘍効果を発揮します。 PTXは白色~微黄白色の粉末ですが水にほとん ど溶解しないためバイアル中でポリオキシエチレ ンヒマシ油(クレモホールEL)とエタノールを含ん だ溶媒に溶解された液薬として提供されます。 Q.パクリタキセル投与時、事前にH1ブロッカー、H 2ブロッカー、ステロイドを投与するのはなぜでしょ う? A.パクリタキセルの特徴的な有害事象に、初回投与 開始10分以内に起こる呼吸困難、血圧低下、血管性 浮腫といった過敏反応があります。クレモホールELが 原因とされいます。これらの過敏反応を予防するため H1ブロッカー、H2ブロッカー、ステロイドが前投薬と して投与されます。パクリタキセル投与30分前にこれ らを投与するのは血中の薬物濃度が上昇し、抗ヒスタ ミン作用が期待できるまで30分ほどかかるからで す。 当院のレジメンでは必ずPTXの前投薬にはクロールト リメトン(H1ブロッカー)、ザンタック(H2ブロッカー)、 ステロイド(デカドロン)が組み込まれています。 その他の注意点 PTXはアルコールで溶解されています。PTXを260 mg投与した場合の無水エタノールは20mlとなりこ れは400mlのビールに相当します。また前投薬とし て使用されるクロールトリメトンなどのH1受容体拮 抗薬は副作用として眠気が出現するものが多い為、 入院中はともかく通院患者さんには自分で車を運転 しないよう事前の説明が必要となります。 顔面紅潮や動悸などの症状が出現した場合はアル コールによる症状なのか、アレルギー反応/過敏症 との判別をよく観察する必要があります。PTXはビ シカント(壊死性)なので血管外漏出にも注意が必 要です。 Q.PTXではフィルター付きのラインを使用す るように指示されています。なぜでしょう? A.PTXの結晶が析出する可能性があるので 0.22μ以下のメンブランフィルターを用いたイ ンラインフィルターを通して投与しなければなり ません。 当院には化学療法委員会で作成した急性症状に 対するマニュアルがあります。 アレルギー過敏症対処マニュアル、血管外漏出マ ニュアルを使用し対処していきましょう。 担当:蒲原
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