半導体工学 pn接合の定量的解析

2014/10/2
半導体工学
名城大学 理工学部 材料機能工学科
岩谷 素顕
4-1
本日の内容
回数
項目
内容
1
電子統計1
2
電子統計2
不純物半導体 n型 p型
3
電気伝導
移動度 ホール効果 拡散係数 アインシュタイン関係式
4
ダイオード1
ポアソン方程式 バンドダイヤグラム 空乏層 空間電荷層
拡散電位 階段接合 キャリア寿命
5
ダイオード2
傾斜接合 接合容量 逆方向飽和電流 温度特性 電子雪崩
6
バイポーラトランジスタ1
エミッタ効率 ベース輸送効率 ベース接地電流増幅率
7
バイポーラトランジスタ2
エミッタ接地電流増幅率 アーリー効果
8
バイポーラトランジスタ3
周波数特性
9
サイリスタ
ターンオン条件 GTO
10
金属と半導体の接触
ショットキー障壁 オーム性接触 リチャードソン定数
11
FET1
MESFET 静特性 高周波特性
12
FET2
MOSTFETのバンドダイアグラム 静特性 Nチャネル Pチャネ
ル
13
FET3
エンハンスメント ディプレッション CMOS
14
IMPATT、PD、太陽電池
LED、LD
衝突イオン化、光吸収、量子効率、フィルファクター、タンデム
セル 直接遷移、間接遷移、発光色とバンドギャップ、反転分
布、キャリア閉込、光閉込、ファブリ・ペロー共振器
4-2
次元の制御と状態密度 真性半導体
TTL
本日のテーマ
pn接合の定量的解析
4-3
1
2014/10/2
Si pn接合ダイオードの電流(I) -電圧(V)特性
電流 [A]
20mA
10mA
電圧 [V]
0V
0.6-0.7V
電流の立ち上がり電圧
4-4
なぜ、立ち上がり電圧が存在するか?
Current [A]
なぜ、逆方向に流れないのか?
180m
160m
140m
120m
100m
80m
60m
40m
20m
0
-1.0
4-5
立ち上がり電圧
逆方向
順方向
-0.5
0.0
0.5
Voltage [V]
1.0
p型半導体とn型半導体の接合
仮想的に接合した瞬間の粒子の流れ
p型半導体
n型半導体
+
+
+
+
+
+
電子
4-6
+
+
-
-
+
+
-
-
-
+
-
-
-
+
+
+
+
-
-
-
-
-
正孔
-
-
2
2014/10/2
p型半導体とn型半導体の接合
n型半導体
+
+
+
-
-
-
-
-
+
-
+
+
-
-
-
+
+
+
+
-
+
+
+
p型半導体
+
-
-
+
-
-
-
界面に固定電荷層が形成される。
⇒電子や正孔は拡散できなくなる。
⇒キャリアがないので、空乏層と呼ばれる。
4-7
p型半導体とn型半導体の接合
界面で原子の結合がしっかり
できるように接着すること。
接合とは?
接合の基本 → 双方のフェルミエネルギーが一致する。
伝導帯
EC
Efn
Efp
EV
n型半導体
価電子帯
p型半導体
4-8
n型 p型 半導体のフェルミエネルギー
n:自由電子密度
 EC  E f n
n  N C  exp 
k BT

p:自由正孔密度



NC:伝導帯実効状態密度
EC:伝導帯下端のエネルギー
Efn:n型半導体のフェルミエネルギー
 E f  EV
p  NV  exp  p
k BT





NV:価電子帯実効状態密度
EV:価電子帯上端のエネルギー
Efp:p型半導体のフェルミエネルギー
Siの場合、室温(T=300K)では
n型:n=ND
p型:p=NA
4-9
3
2014/10/2
p型半導体とn型半導体の接合
伝導帯
EC
Efn
不純物濃度によって決まる
Efp
EV
価電子帯
n型半導体
p型半導体
接合の基本 → 双方のフェルミエネルギーが一致する。
4-13
p型半導体とn型半導体の接合
p型半導体
n型半導体
+
+
+
+
+
+
+
+
+
-
+
-
-
-
-
-
+
正の固定電荷層
=全体のポテンシャルエネルギー減少
-
-
-
+
-
-
-
+
+
+
電子
-
正孔
-
-
負の固定電荷層
=全体のポテンシャルエネルギー増加
4-14
p型半導体とn型半導体の接合
接合させる
Efn
Efp
n型半導体
p型半導体
n型界面にプラスの電荷層 p型界面にマイナスの電荷層
4-15
4
2014/10/2
接合後のpn接合バンドラインナップ
真空準位
電子親和力
空乏層
ECp
正にイオン化したドナー
エネルギー qVD
(拡散電位 VD)
ECn - - ---- - +
アクセプタ準位EA
+
フェルミ
ーー
E
Vp
+
+ + ++ +
エネル
ドナー準位ED
ギーEf
負にイオン化したアクセプタ
EVn
4-16
p型半導体
n型半導体
pn接合への逆電圧の印加
+
n型半導体
+
+
+
+
+
4-17
+
-
+
-
-
+
-
-
-
+
p型半導体
-
-
+
+
+
+
-
+
+
+
ー
-
-
-
-
-
ー
-
空乏層が拡がり、電流は流れない。
pn接合への逆電圧の印加(電圧印加前)
真ん中の抵抗が非常に高い
キャリア多数→低抵抗
伝導帯下端EC
- -
-
- --
---- -
+ ++++ + 価電子帯上端EV
キャリア多数→低抵抗
n型半導体
4-18
p型半導体
空乏層 キャリアなし 高抵抗
5
2014/10/2
pn接合への逆電圧の印加(電圧印加後)
電圧は殆ど抵抗の高い
空乏層に加わる。
p型半導体
n型半導体
4-19
pn接合への順電圧の印加
n型半導体
p型半導体
+
ー
伝導帯下端EC
--
---
--
-
--
- ---
--
--- - -
+ ++++ + 価電子帯上端EV
+
+ ++ +
+ + + + ++
p型半導体
+
n型半導体
電圧印加前
電圧印加後
4-20
電圧は空乏層に加
わる。
正孔:p⇒nへ
電子:n⇒pへ
pn接合の解析
エネルギー
EC
EF
EV
p型半導体
n型半導体
電気磁気学を用いて解析する。
⇒基本方程式はマクスウェル方程式
4-21

  D
 H  J 
t


B
 E  
t

  D   (は電荷)

B  0
6
2014/10/2
pn接合の解析
EC
エネルギー
EF
EV
4-22

  D
 H  J 
t
この中で使うのは、


B
 E  
t

D  

B  0

  D   及び


D  E
のみは電位)

E  
半導体の誘電率=0r
pn接合の解析
エネルギー
EC
EF
EV

 D  
D  E

E  
ポアソン方程式
より
 2  


が、導き出される。
半導体の誘電率=0r
4-23
附録:ポアソン方程式の導出


D  E

E  
を

D  
に代入する。
 


  D    E    ( )    ( )   2  
誘電率は場所に寄らず一定
4-24
7
2014/10/2
電荷ρの分布
EC
n型半導体
エネルギー
EF
EV
p型半導体
x=-xn
x=0
ND+
x
x=xp
マイナスの固定電荷層
プラスの固定電荷層
NA
x
-
4-25
エネルギー
電界分布の導出

より、積分して


   x  C

x<0の領域では、
x=-xnで電界Eはゼロ
EC
低抵抗
⇒電界ゼロ
 2  
EF
低抵抗 EV
⇒電界ゼロ
x=-xn
ND+
x
x=xp
E   
C1  
qN D

qN D

x>0の領域では、
x x=x で電界Eはゼロ
p
NA-
E   
4-26
( xn )  C1  0
xD
x=0
C2  
 qN A
qN A


x p  C2  0
xp
電界分布の導出
EC
x<0では
エネルギー
E ( x)  
EF
EV
x=-xn
x=xp
電界F
qN D
x=0
x
qN D

xn
x>0では
qN A
qN A
E ( x) 
x
xp


x
x=0で電界が一致する
ためには?
x
N x =N x
D n
4-27

A p
n層とp層の総電荷量は等
しい。
8
2014/10/2
X<0において
電圧分布の導出
p型
電位の基準は、どこに
とってもよいのでx=-xnで
=0とすると、 C   qN D x 2
3
n
2
従って
EC
エネルギー
n型
EF
EV

x=xp

拡散電位VD

x=0
拡散電位 VD
p型
 
エネルギー

qN A 2 qN A
qN
2
x 
x p  x  D xn
2

2
拡散電位VDは、
VD=0-(xp)=
x=xp
q
2
2
( N A  x p  N D  xn )
2
電位
x=0
qN D 2 qN D
qN D 2
x 
xn  x 
xn
2

2
x>0 (p型)
EF
EV
4-29
qN A 2 qN A
qN
2
x 
x  x  D xn
2
 p
2
x<0 (n型)
EC
n型
x=-xn
qN A 2 qN A
x 
x p x  C4
2

x=0で、電位が連続
C4=C3
従って
x
4-28
1 qN D 2 qN D
1 qN D 2
x 
xn  x 
xn
2 

2 
X>0において
x
x=-xn
1 qN D 2 qN D
x 
x n  x  C3
2 


拡散電位VD 電位(電圧)とエネルギーは
上下逆転
pn接合への電圧の印加

n型
電圧基準

E   電界
-xn

qN D

x
qN D

xp
0
xn
p型
qN A

x
qN A

xp
x=0で連続 → NA・xp=ND・xn
4-32
9
2014/10/2
pn接合 印加電圧ゼロのとき
空間電荷
ND+
x=xp
x=-xn
x=0
電圧基準

x
NA拡散電位 VD
VD 
x<0

x>0

1q
2
2
( N A x p  N D xn )
2
qN D 2 qN D
qN D 2
x 
xn  x 
xn
2

2
qN A 2 qN A
qN D 2
x 
xp  x 
xn
2

2
4-33
電圧Vを印加したときの空乏層幅
X=0で連続 → NA・xp=ND・xn
(x=-xn)-(x=xp)=VD-V
空乏層xD=|xn|+|xp|
これらを用いると
xn 
2
NA
(VD  V )
qN D N D  N A
2
q
xD 
xp 
2
ND
(VD  V )
qN A N A  N D
 1
1 

VD  V 

 N A ND 
4-34
pn接合の単位面積あたりの接合容量C
空乏層以外は低抵抗=金属電極と同じ
C 
xD 
C

S
S ( 1)


d
xn  x p x D
2
q
 1
1 

VD  V 

 N A ND 
より
q N A N D
1
2 N A  N D VD  V
となる。
4-40
10
2014/10/2
pn接合における拡散電位VDについて
n  N C  exp(
p  NV  exp(
EC n  E fn
k BT
EV p  E fp
k BT
 n 
E fn  EC n  k BT  ln 

 NC 
 p 
E fp  EV p  k BT  ln  
 NV 
)
n型
)
ECn
Efn
qVD
p型
ECp
Eg
Efp
EVp
EVn
この図より、
Eg=EC-EV=qVD+(ECn-Efn)+(Efp –EVp)
従って、それぞれの層のキャリア濃度
n,pにより拡散電位VDが決まる。
4-45
pn接合に逆電圧を加えると
空乏層xDは拡がる。
接合容量Cは小さくなる。
4-46
11